その店は路地裏のビルの2階にあった。
 そこは、ある願望や欲望を抱いた人間の集う場所。
 名前は《TSショップ》。
 そこで売られているのは色々な種類の「ゼリージュース」

 今日も一人の男が店のドアを開ける。

 さて、彼はどのゼリージュースを選ぶのか。





ストーカーの見る夢は

作:toshi9





「もうあたしに付きまとわないでよね」

「どうしてだい。僕はいつも君と一緒にいたいんだ。君だって本当は僕のことを好きなくせに」

「何言ってるの、このストーカー。早くあっちに行って」

「どうしてそんなことを言うんだい。そうか恥ずかしいんだね、須美香ちゃん」

 パシッ

「痛いなぁ、何するんだ」

「もういや! 私に触らないで!」

 須美香はそのまま逃げるように走り去った。

「あーあ、どうして逃げるんだ。もしかして僕って嫌われているのかなぁ。須美香は僕のことを好きじゃないのかなぁ。いや、そんなはずないよなぁ。それに僕は須美香の傍にいたい。須美香のことは何でも知りたい。いつでも須美香のことを見ていたいんだ」

 その男、山本保彦(21歳)は女子大生島村須美香(19歳)をずっと追いかけていた。そしてその行為は段々エスカレートしてきていたのだが、それがストーカー行為なんだということを本人は全く気づいていなかった。



その夜、保彦がインターネットであちこちのサイトを覗いていると、偶然不思議な店が紹介されているサイトを見つけた。そこに売られている商品は奇妙な、しかも俄かには信じられないようなものばかりだった。しかし保彦にとってそれらのものはさして興味が湧くようなものではなく、最初は何気なく見ているだけにすぎなかった。

「ん? 待てよ」

 しかし、眺めているうちに、保彦の中にある考えが閃いた。

「そうか、これを使えば僕はこれからずーっと須美香と一緒にいることができる。いつだって見たいときに須美香のことを見ていられじゃないか。嫌われることだって絶対にない、僕だけの須美香ちゃんが・・ふふふ」

 保彦は体の中から湧き上がってくるぞくぞくした興奮を感じていた。 

 早速ID登録を済ませると、パソコンのディスプレィには店舗と通販の紹介画面が映し出された。しばらく考え込んだ保彦は、店舗の場所がさして遠くないこともあって、店のほうに行ってみることにした。



 店は少し分かり難い路地裏のビルの2階にあった。狭い階段を上がっていくと、上から女子高生が降りてくる。白いブラウスにグレーのプリーツのミニスカート、胸に青いリボンタイを付けたショートカットのその娘は、下にいるこちちからはミニスカートの中身がまる見えなのに、さして恥ずかしそうにもせず、ペットボトルの首を片手で掴んでぶらぶらさせながらゆっくりと降りてきた。

 おいおい、見えてるぞ。

 そう思いながらその娘と階段ですれ違うと、目が合ったその娘はこっちを見てにやっと笑った。

「あんたもかい。まあお楽しみに」

 ぎょっとして振り返ると、その女子高生はそのまま振り向きもせず道路の角を曲がっていった。

「うーん、何だ今の娘は・・・もしかして・・こりゃ本物かな」
 
 2階のドアを開けて店の中に入ると、そこには確かにインターネットで紹介されていた商品が売られていた。保彦は内心興奮にどきどきしながらも、店主と思われる男にそれらの商品の説明をしてもらった。


「・・・じゃあこれってしばらく経つと元に戻るというわけかい」

「はい、そのようなことをお望みの方に安全に体験して頂くためのアイテムですから」

「一度使ったら元に戻らない物って無いのかい」

「そのようなものはこちらでは取り扱っておりません!」

「そ、そうか」

「・・と言いたいところですが、どうしてもそれをお望みでしたら、夜もう一度お越し下さい。正規の商品ではございませんが、注文販売で裏のレアものも扱っておりますので。でもそれはあなたの人生を失うということですからよくよく考えてくださいよ」

 人生を失うか・・いや、それでもかまわないさ。これから先、ずっと須美香として生きていけるんだったら。






 島村須美香がその日大学から帰ってみると、ワンルームマンションの彼女の部屋の鍵が開いていた。

「え! 確か鍵は閉めたはずなのに」

 彼女が恐る恐る中に入ってみると、そこにはあの保彦が立っていた。彼は背が彼女より低く少し小太りで黒ぶちの眼鏡をかけた須美香が一番嫌いなタイプだ。保彦は写真立てに入れて飾っていた彼女の写真をにやにやと笑いながら見詰めてるではないか。

「この姿がもうすぐ・・・へへへ」

「あ、あなた、どうして此処に」

「おっと、おかえりなさい、須美香ちゃん。じゃあちょっと大人しくしていてくれよ」

 保彦はキラリと光るナイフを彼女に向けた。それを見て、彼女はバッグを床に落としたままその場に立ち竦んでしまった。

「君の行動は何でもわかるのさ。何処に鍵を隠しているのかもね」

 保彦は足元に置いていたナイロンロープで須美をの両手両足をぐるぐると縛り上げると、床にごろんと転がした。

「あなた、何しようって言うのよ。こんなことしてただじゃすまないわよ」

「うん、そうだね。きっとただじゃすまないだろうなぁ。刑務所行きかなぁ。へへへ」

 保彦は意味ありげに床に転がった彼女を見てにやーっと笑うとクローゼットを開け放ち、須美の下着や服を物色し始めたのだ。

「な、何するの! 止めてよ。警察には届けないから早く出て行って頂戴」

 そんな須美香の言葉を無視するように、中から彼女のピンクのブラジャーとショーツ、それに赤いセーターとフレアのミニスカートを取り出した。保彦はそれらを目の前に広げてじっと見詰めていたかと思うと、いきなり自分の服を脱ぎ捨て、ショーツとブラジャーを身に付け始めた。

 しかし彼の体格には少々小さすぎたようだ。ブラジャーはいくら無理やりホックを留めようとしても結局止めることができず、ショーツからは彼の一物がはみ出している。それはまさに変態とでも言うべき姿であった。

「何考えてるのよ、この変態」

「へへへ、変態は君なんだよ」

「何言ってるの、ばっかじゃないの」

「さあて、それはどうかな」

 保彦は鞄からペットボトルに入ったクリーム色の飲み物を取り出すと、それをごくごくと飲み始めた。

 半分程一気に飲み終えると、ふーっと息を継いだ。

「げふ、バナナみたいな味だな。げふっ、さあてこれでいいのかな」

 保彦はじっと須美香を見詰めている。

「さあて、須美香ちゃん。これから面白いものを見せてやるからね。ぐぷっ、お、来たぞ来たぞ。うっ、こみ上げてくる」

 保彦は須美香の鼻をつまんでむりやり口を開かせた。

「んんー、何するのよ」

 そしておもむろに須美香の唇を自分の唇で塞いだ。

「んー、んー」

 口移しに何かが保彦の口の中から須美香の口の中にどんどんと押し込まれていく。

 ごくっ、ごくっ

 鼻を塞がれた須美香は、いやいやながらもそれを飲み込んでいく。

「ぷはぁー、ごちそうさま。須美香ちゃんの唇、おいしかったよ」

「な、なんてことするのよ、ひどいよぉ」

 保彦が口の中から出したものを無理やり飲まされてしまった須美香は、あまりのことにショックを受け涙ぐんでいた。

「いや、まだだよ。これからする、いや、起こるのさ。須美香ちゃん、何かおかしな気分じゃないかい」

「そりゃあ・・こんなことされれば、うっ、なに?」

 その時、須美香は何かお腹の中からこみ上げてくるのを感じていた。

「うぅ、き、気持ち悪い」

 思わずその感覚に顔をしかめると、保彦は再び須美香の唇に自分の唇を押し当てた。

(やめて、だめ〜、いや、で、でるぅ)

 須美香はどんどんとお腹の中から押し上がってくるものをこらえることが出来ず、それは段々須美香の口の中に満たされていった。

 それを保彦は口移しに吸い取って、ごくごくと飲み込んでいく。

「ぷはぁ〜、うん、これもなかなかおいしいぜ」

「ば、馬鹿ぁ、この変態、け、けほっ」

 須美香は再び叫んだ。

 でも何かおかしい、喉に引っかかるようなものを感じ、うまく声をだすことができない。

「さあて、これから何が起こるのか、楽しみだなぁ」

 須美香はそんな保彦をにらみつけた。でも何かおかしい、段々視界がぼやけてくる。

「おぉ! どうやら始まったみたいだな」

 保彦が叫ぶと共に、彼の体に変化が訪れ始めた。まず突き出た腹が徐々に凹んでいき、平たくて滑らかなお腹になってしまった。へその形も何となくきれいなものに変わっている。さらに平たくなったお腹の周り・・ウエストがきゅーっと細くなっていく。

「ひょう、僕の腰がこんなに細いなんて・・」

 両手を腰に当てた保彦は、己の体の変化に思わず声を上げた。そして、その間にも彼の体はどんどんと変化を続けていった。

 太かった腕がどんどん細く白くなっていく。ごつい指もすっと細く長く伸びていった。爪がきれいなピンク色に変わっていく。

「これが僕の指? きれいな指だなぁ・・」

 ショーツがくい込んでいたでっぷりと弛んだお尻の肉は徐々に引っ込んで引き締まり始め、丸く優しい線を描いていった。腰がぐぐっと持ち上がり、引き締まったお尻がつんと形良く突き出した。そして醜くショーツを盛り上げていた股間もそこからはみ出していたものが中に引っ込み、さらにすーっとその膨らみを失くしていった。やがてそこには盛り上がりは何も無くなって、彼の穿いているショーツはすっきりと美しいラインを描いていた。

 脇腹の贅肉はどんどん無くなり、胸の周りがどんどんスリムになっていった。肩幅は勿論体の骨格全体も細く変わっているようだ。彼が後手でブラジャーのホックを止めようとすると、今度は無理なくぱちっと止めることができた。ブラジャーは彼の胸周りにぴたっと形良くフィットし、そして両胸に当てられたカップは内側からむりむりっと押し上げられていき、そこには間に谷間が出来るほど大きな乳房が生まれていた。脛毛の無くなった脚はすすっと長く伸びていき、お尻から太股にかけて艶かしいラインを描いていた。

 そんな自分の体の変化を楽しむように保彦は体をまさぐり続けていた。

 最後に彼の顔の輪郭がしゅーっと小さくなったかと思うと、目、鼻、唇とその形をかわいく変えていった。そしてぼさぼさだった髪もさらさらと伸びていった。

 今やそこに立っている保彦の姿は、眼鏡をかけてはいるが下着姿の須美香にしか見えなくなっていた。

「や、やったぁ。へへへ」

 保彦の口から出てくるその声も、もはや須美香のかわいい声だった。

 一方の須美香の体はどんどん大きく、いや背は縮み始め、体にはどんどん贅肉が付いていた。お腹がぷくっとだらしなく膨らみ、腕も足も太くなっていく。逆に胸の膨らみはすーっと無くなっていった。顔がぼてっと厚ぼったく膨らんだかと思うと、彼女の顔は・・眼鏡こそかけていないが・・保彦の顔と化していた。しかし、視界がぼやけている彼女は自分の体の変化にまだ気が付いていない。

「なに、急に視界がぼやけて・・それに服が急にきつくなったような・・え、声がおかしい」

「ぼやけているのは視力が落ちたからさ、きっとね」

「ど、どうして? え? そ、その声、誰? 」

「ほら、眼鏡」

 保彦は自分の眼鏡を外すと、須美香に指し掛けてやった。

「あ、直った・・眼鏡? 私、目は悪くないのに、なんで、え!」

 その時須美香が見たもの、それは目の前に立っている下着姿の自分自身だった。ピンクのブラジャーとショーツがスリムな体にフィットしたその姿はなかなか艶かしい。

「僕って誰に見える、変態さん」

「そ、そんな、どうして・・けほっ、けほっ、声が」

「自分の体を見てみな」

「えぇ、・・・きゃっ、なにこれ」

 須美香が見た自分の体、いやそれは彼女が知っている自分の体ではなかった。

 ワンピースの両胸の膨らみは無くなり、代わりに腹がぶくっと膨れている。しかも全体に膨らんでしまった体にワンピースは今にも破れそうだ。 

「ほら自分が今どういう顔なのか見てみな」

 下着姿のもう一人の須美香が置き鏡を彼女の前に差し出すと、その中に彼女の顔が映し出された。いや、それは彼女の顔では無かった。・・・さっきまでの保彦の顔、それが鏡の中に映っていた。

「なに、こ、これ、あたしじゃない、これって保彦、なに、なんなの」

「わかっただろう変態さん」

「あなた、だれよ」

「僕かい? 見ればわかるだろう。この顔、この体、島村須美香に決まっているじゃないか」

「違う、そんなわけない」

「さあてと、服着るかな」

 須美香を無視するように、保彦はさっきクローゼットから取り出したセーターとミニスカートを着込み始めた。

 それを縛られたままの須美香は呆然と見ていることしか出来なかった。

 そこで着替えているのはあたし? じゃああたしは誰なの? 保彦? そんな馬鹿なことって。

 保彦がすっかり着終えた時、そこに立っているのは普段着姿の須美香だった。

「どお、きれい」

「あ、あなた・・」

「言ったでしょう、あたしは島村須美香。あなたは山本保彦、あたしの部屋に侵入してあたしの服を着ている変態よ」

 もう一人の須美香はいきなり須美香のワンピースをぺろっとめくった。彼女の目に飛び込んだのは、ショーツの股間をもっこりと膨らましている自分の下半身だった。

「きゃはは、ほんと変態そのものだね」

「どうしてこんなことが・・」

「僕も実際試してみるまでは信じられなかったけれどね。今は僕が須美香ちゃんで、君は僕なんだよ・・・ということは・・そうか」

 須美香の姿になった保彦は何かと思いついたようににやりと笑うと、床に寝転がされている須美香の両肩に手をあてて、その顔をじっと見詰めた。

「保彦くん、あたし本当はあなたのことが大好きだったんだ」

「へ?」

「今までわざと冷たくあしらっていたけれど、心の中ではずっとあたしのほうを見てって思っていたのよ」

「な、何を言い出すのよ」

「好き! お願い保彦くん、それをあたしの中に頂戴」

「や、やめて! あたしの真似して変なこと言わないでよ」

「ふふふ、僕は今須美香ちゃんに告白されているんだなぁ」

「あたし、告白なんかしないわよ」

「僕は君、君は僕なんだ。これから僕のものが君の中に挿入されるんだな。さあてと、君の感覚を楽しませてもらおうか」

 保彦は縛られたままの須美香の足元に座ると、その顔を須美香の股間に近づけていった。そして須美香のスカートを胸までまくり上げ、ぼってりした腹に食い込んでいるショーツをペロリと下にずらした。

 彼の目の前に、今や彼女のものになっている一物が顕わになった。





「へぇ〜自分のものをこんな角度から見ることになるとはなぁ。ほら、君の股間にこんなものが付いているんだぜ。自分でもわかるだろう」

 保彦は彼女の一物の先端をピンと指先で弾いた。

「いやぁ!」

 保彦は、それをそっと片手で握り締め、じっと見詰めていたかと思うと、かぷっとそのかわいい口でくわえ込んだ。

 ゆっくりと口を上下に動かし、しゃぶり上げる。

「あぁ、何、この感じ」

「それが男の感覚さ。どうだい、こうされると気持ち良いだろう」

「いや! 気持ち良いなんて、そんな」 

「へぇ、でも体は正直のようだよ」

 保彦の口の中で須美香の一物は段々と大きく、硬さを増していった。

 そして保彦自身も元の自分のものを口に咥えているという行為に興奮し、その股間をじゅんと湿らせ始めていた。

「あぁ、何か体の中から熱くなってくるようだよ。これを僕の中に入れたらどんな感じがするのかな」

「なに言って・・もう止めて」

「さあて、じゃあそろそろいいかな。ふふふ、保彦くん、入れるわよ」

 保彦はスカートを両手で捲り上げてショーツをするすると脱ぎ捨て、仰向けに寝転がされた須美香の上に馬乗りになった。そして硬くなったそれを持ち、自分の股間にあてがった。

 その先端が自分のものになったそこに触れると、ぞくぞくした感覚が保彦を襲った。

「ひ、ひゃぁ、はぁ、はぁ、僕のこれが・・今から僕の・・須美香ちゃんの中に入っていくんだ」

 保彦は、静かに腰を沈めて行った。

 そのぐっしょりと湿った場所はすでに小さく口を開きかけていたが、大きくなった一物に押し広げられて一気にそれを飲み込んでいった。

「くぅ〜、入ってくる、入ってくる、体の中が熱い。気持ちいい〜」

 ゆっくりと体を上下させてそのにゅるにゅると体の中で擦れる感触を楽しんだ保彦は上下運動を段々早くしていった。

「ほらぁ、保彦君のものがあたしの中を出たり入ったりしてるよ」

「いや、こんなこと、でも・・・ああ、なにこの感じ」

「あっ、あっ、あっ」

「いやぁ、やめて、動かさないで」

「あ、あん、あ、あ、あん」

「いや、何か来る、出てくる」

「い、いい、くふっ」

「いや、出るぅ、いやぁ〜、いやだぁ〜」

「いい、はぁはぁ、あ、い、いく、いくぅー」

 その時、須美香の体の中から白いものが勢い良く保彦の中に噴出していった。




「あぁ〜、気持ち良かったよ。これが君の、女の感覚なんだ。いいもんだねぇ」

「あなたこんなこと・・・もういいでしょう。元に戻してよ」

「これからずっと僕と一緒にいてくれるかい」

「だ、誰があんたなんかと」

「そうかい、じゃあ仕方ないね」

 保彦は股間をティッシュでふき取ってショーツを穿きなおすと、床に転がったままの須美香のバックの中をまさぐった。

「お! あったあった」

 それは須美香のケータイだった。

「もしもし、すみません、家に変な奴が入り込んで、あたし無理やり・・ぐすっ・・はい、すきを見てうまく気絶させて縛ってあるんで、早く連れて行ってください。もうあたし恐くって・・はい、はい、そうです・・お願いします」

 ケータイの電話を切ると、須美香の姿をした保彦は、保彦の姿になっている須美香の方を見てにやっといやらしい笑いを浮かべた。

「あなた、何処に電話したの」

「なに、けーさつに君を連れて行ってもらおうと思ってね。君は僕・・いや、あたし・・か・・あたしの部屋に進入してあたしの服を着て、しかもあたしを強姦した変態というわけさ」

「そ、そんな」

「きょうからあたしが須美香をやらしてもらうから。僕の思い通りの須美香ちゃんをね。ばいばい、元の須美香ちゃん。いや保彦くん」

「い、いや、そんなの、いや、いやぁ〜」





「お嬢さん大丈夫ですか」

「はい、こんな変態早く連れて行ってください。ぐすっ」

 あたしの姿をした保彦は、駆けつけた警官の前でさも悲しそうに涙ぐんでいた。

「違う、須美香は私よ。騙されないで。そいつはあたしじゃない。そいつが、そいつがあたしをこんな姿に・・」

「何わけのわからないことを言ってるんだ。早く来るんだよ。こんなことしてただで済むと思っているのか。たっぷりと刑務所で償ってもらわなきゃなぁ。こんなかわいいお嬢さんを・・全くひどい奴だ」

「違うの、信じて! お願い」

 しかし今の須美香の容姿、低いだみ声では、いくら泣き叫んでも警官には気持ち悪いものにしか聞こえなかった。

「いいから早く乗るんだ」






 そしてパトカーのサイレンが遠ざかっていく。

「へへへ、今日から僕が島村須美香、僕の思い通りの須美香ちゃんだ・・・あ、あん」

 警官が須美香を連れて行った後、残された保彦は鏡の前で自分の胸を両手で揉み上げては一人悦に入っていた。





 翌日女子大の前。

「須美香おはよう」

「あ、お、おはよう」

「昨日、大変だったんだって」

「え、うん、でももう大丈夫。今までのことは忘れて、生まれ変わったつもりでやり直さなきゃね、きゃははは」






(了)
  
                                2003年5月14日脱稿



後書き

 Tiraさん、リニューアルオープンおめでとうございます。ニュー「Ts・TS」のこれからのますますの発展楽しみにしています。運営がんばってくださいね。
 さて、この話は新しい裏ゼリージュースの1本として書いたものです。入れ替わりタイプですが、黄色(パイナップル味)と違って元に戻れない裏バージョンのクリーム色(バナナ味)です。入れ替わりの方法はちょっとエグかったかもしれませんね。一度飲んだゼリーを吐き出して相手に口移しで飲ませると相手に自分の姿が移ってしまう。相手は代わりにもう一度ゼリーを吐き出すので、それを飲むと相手の姿がこっちに移る。そんなプロセスですね。しかし我ながら暗い作品だなぁ。
 それではお読み頂きました皆様、どうもありがとうございました。
inserted by FC2 system