碧の遊戯(中編) 作:toshi9 挿絵:kさん 「おねえちゃん、怖かったよ」 秋奈に抱きついた偽春奈は、腕にぎゅっと力を込めた。 「春奈、おにいちゃんは出て行ったから、もう大丈夫だよ」 「うん、ありがとう、秋奈おね〜ちゃん」 満足そうに秋奈の顔を上目遣いに見上げる偽春奈。そんな妹のことを、秋奈は優しく見下ろした。 「それにしても……なんなのよ、この服は」 部屋にはおさむが脱ぎ捨てた学生服や男物の下着が散乱したままだ。それを怪訝そうに見つめながら、秋奈は首をひねった。 「あ、あたしが帰ってきたら部屋がこんな風に荒らされてて、きっと誰かが忍び込んだんだよ、気味が悪い」 「そっか、警察を呼んだほうがいいかな」 「おねえちゃん、それよりも、ねえ」 「え?」 「お風呂に入ろうよ」 「お風呂?」 突然の春奈の言葉に、秋奈はきょとんと妹を見返した。 「うん、だって汗びっしょりなんだもん、ねえ、おねえちゃんも一緒に入ろうよ」 「どうしたのよ、こないだもうあたしと別々に入るって言ったばかりじゃないの」 「だって……こわいもん」 うるうると秋奈を見つめる偽春奈。 「そうか、うん、わかった。じゃあ今日はあたしと一緒に入ろうか」 春奈の仕草や話し方がいつもと違うことを怪訝に思いながらも、秋奈は『余程怖かったんだな』と勝手に納得していた。 (帰ってきたら自分の部屋がこんなに荒らされてて、おまけにおにいちゃんまであんな調子じゃね。それにしてもあんなおにいちゃんを初めて見たな。いったい何があったんだろう) そんなことを考えながら、秋奈は春奈をじっと見つめた。偽春奈はそんな秋奈の胸に再び顔を埋めて抱きついた。 「わっ! 春奈ったら」 「ねえおねえちゃん、早く入ろうよ」 「わ、わかったわかった」 秋奈がドアを開けると、外にはまだ陽介が立っていた。だが秋奈は何か言いたそうな陽介を無視して自分の部屋から下着とスウェットの上下を持って階段を下りると、浴室の湯船にお湯を張り始めた。 そんな秋奈の後ろから、陽介は声をかけた。 「秋奈、お前まさか春奈と一緒に風呂に……」 「うん、春奈ったら今日はあたしと一緒に入りたいんだって」 「馬鹿、やめろ、あいつは春奈じゃないんだ。偽者、赤の他人だぞ。それもお前が嫌がってた……」 「おにいちゃんったらまだそんなこと言ってるの? 偽者? そんなこと馬鹿なことある訳ないじゃない。全く今日のおにいちゃんってどうかしてるよ。そう言えばおにいちゃん、春奈の部屋に脱ぎ捨てられてた学生服ってどうしたのか知ってる?」 「あれは俺のクラスの河村が脱ぎ捨てた服だ。その河村が春奈に化けてんだよ」 「おにいちゃん! 春奈の部屋にクラスメイトなんか入れて何してたのよ!!」 振り向いて陽介をじっと見つめる秋奈。その目が再び怒っている。 「お前、何を聞いてるんだ。俺の話をよく聞けよ。俺は何も……」 その時陽介の後ろに人が歩み寄ってくる気配がした。 「おね〜ちゃん」 陽介が振り向くと、そこには春奈の下着と部屋着を手にした偽春奈が立っていた。 「おねえちゃん、早くお風呂に入ろうよ。ほら、おにいちゃん、どいて」 「き、きさまあ」 自分の脇をすり抜けようとする偽春奈の腕をぎゅっとつかむ揚介。 「いやっ、いたい! やだ、おにいちゃん、はなしてよ」 「おにいちゃん、止めなさい! 春奈、早く入ろ。ほら、おにいちゃんは出て行った出て行った」 そう言いながら揚介の背中を両手でどんどんと押してお風呂場から追い出した秋奈は、扉をピシャンと閉めた。 「駄目だ、やめろ、秋奈、おい、開けるんだ」 だが扉の中からは姉妹の嬌声が聞こえるだけだった。 「ちがうんだ、秋奈、そいつは、そいつは河村なんだ……くそう、どうすれば秋奈に信じてもらえるんだ。このままじゃあ……」 一方脱衣室の中で、偽春奈はさっさと自分の服を脱ぎ捨てていた。 「ほら、おねえちゃんも早く脱いじゃいなよ。あたし風邪ひいちゃうよ」 小さく膨らんだ胸もほとんど陰毛の生えていないつるっとした股間もまるで隠そうともせずに、素っ裸になったまま偽春奈はじっと秋奈を見上げていた。 「わかったわかった」 秋奈は両腕を回してセーターを脱ぐと、スカート、スリップ、ブラジャー、そしてパンティと手早く脱いでいく。 そんな彼女の一挙手一投足を、偽春奈は目をらんらんと輝かせながら見詰めていた。 「どうしたのよ春奈、あたしのことそんなにじっと見て」 「え? ぐふっ、おねえちゃんってきれいだなって思って、ぐふふっ」 「やだ、なに変な笑い声あげてるのよ。そんなお世辞言っても何もでないわよ」 「……欲しい」 「え? 欲しい? 何を」 「えへへ、おねえちゃんが」 「あたしを?」 「ううん、なんでもないよ。ほら入ろっ」 服を全部脱いで裸になった二人は、浴室に入った。 「ねえおねえちゃん、あたしのこと洗ってくれない? そしたらあたしもおねえちゃんのことを洗ってあげる」 「ええ? いいよ、自分でやるから」 「ねえ、お願い」 「もお、しょうがないわねえ、ほんとに今日の春奈って変なんだから。ほらじゃあ後ろ向いて」 「このままでいいよ。はい」 秋奈を見上げて、両腕を広げる偽春奈。 そんな妹のことをやれやれと思いながら、しゃがみ込んだ秋奈はスポンジで体を拭き始める。 一方偽春奈はにやにやと笑いながら秋奈の乳房を、そして惜しげもなく目の前に晒されているその股間を見つめていた。 勿論春奈の体を拭いている秋奈にはその表情は見えない。 「はぅ〜、気持ちいい」 スポンジで泡立てて秋奈が春奈の体をこする度に偽春奈は嬌声を上げた。 「春奈ったら、そんなに気持ちいいいの?」 泡立てたボディシャンプーをシャワーで洗い流しながら、秋奈は問いかけた。 「うん、おねえちゃんに擦られるのってとっても気持ちいい。ねえおねえちゃん。今度はあたしにやらせて」 そう言いながら秋奈の持っているスポンジをさっと取り上げると、偽春奈は秋奈の胸に押し付けた。 「ちょ、ちょっと、春奈、ひやっ!」 偽春奈がスポンジを動かすと、秋奈の胸がくにゅくにゅと変形する。 「もう、やめてよ春奈。おねえちゃん怒るよ」 「ぐふふ、おねえちゃんの胸とっても柔らかいね」 「何が『柔らかいね』よ、もお」 スポンジを春奈から強引に取り上げる秋奈。 「さてと、体も洗ってもらったし、暖まろうっと」 偽春奈は浴槽に入ると、張られた湯の中に体を沈めた。 「あ〜気持ちいい」 浴槽の中で背伸びしている偽春奈を横目に、秋奈やれやれといった表情で体を洗い始める。 秋奈が自分の体を洗い始めたのを見た偽春奈は、湯の中で自分のほのかに膨らんだ胸を、そしてつるんとした股間をゆっくりと撫で始めた。そして時折ぴくっと顔を上げる。 (ぐふふふ、触ってると気持ちいいけど、でもやっぱりアレが欲しいな) 指を動かしながら、偽春奈は体を洗い続ける秋奈を浴槽の中からじっと観察していた。 「あ〜もうだめ」 そう言いながら立ち上がった偽春奈は、浴槽から上がると、突然自分の体をぎゅっと秋奈にもたれかかった。 「どうしたの? 春奈」 「気持ち悪い……」 そう言いながら、秋奈の股間に顔を埋める偽春奈。 「のぼせたの?」 「……そうみたい。でもこうしていれば治る」 「しょうがないなあ……ひあっ!」 突然股間にねろっとした刺激を感じ、秋奈が小さな悲鳴をあげる。 「な、なにするのよ!」 「ぐふふふ」 顔を秋奈の股間に密着させたまま腰に両手を回した偽春奈は、舌を伸ばして、その先をちろちろと動かしていた。 「お姉ちゃんのココ、きれいだね」 「こら! そんなことばっかりしていると、ほんとに怒るんだから」 「ごめ〜ん、ぐふふ、おねえちゃん、お風呂から上がったらジュース飲まない?」 「ジュース?」 「うん、あたしが買ってきたおいしいジュースのがあるんだ」 「ふーん、それじゃ早く上がろうか。だからもう止めなさい」 「は〜い」 だが二人が浴室を出ると、そこにはまだ陽介が立っていた。 「貴様、よくも……この変態が!」 偽春奈に殴りかからんばかりの勢いの陽介に、秋奈は慌てて二人の間に入った。 「おにいちゃん、いいかげんにしてよ!! 春奈、あたしの部屋に行こう」 「は〜い(ちっ、まあいい、お楽しみはこれからさ。ぐふふふふ)」 春奈にすり替わってまんまと森崎家の末の妹という立場を手に入れた河村おさむ。その姿は誰がどう見ても春奈本人と見分けが付かない。だから陽介がいくら「この春奈は偽者だ」と言っても、秋奈はもとより夜になって帰ってきた母親も信じようとしなかった。 その夜、陽介が机に向かって悶々としていると、トントンと誰かがドアを叩く。 「だれだ」 「あたしだよ、おにいちゃん、ぐふふふ」 「お、お前」 陽介がドアを開けると、そこにはかわいいピンクのパジャマを着た春奈が、いや春奈に成りすましたおさむが立っていた。その手に碧色のジュースが入ったペットボトルを握っている。 「入っていい?」 だが陽介の返事を待つまでもなく、偽春奈は扉が開くやいなや部屋の中に入ってきた。 「どうだい、このパジャマ姿もなかなかかわいいだろう。ぐふふ、今日はとっても楽しかったよ。これからずっとかわいいこの姿で秋奈さんに遠慮なく甘えられるかと思うと、身震いするほど嬉しいよ」 「貴様、いい加減にしろ!」 わなわなと体を震わせる陽介は手を偽春奈に伸ばそうとする。 「おっと、また僕の首を絞めようというのかい? 大声出すよ。秋奈さんは今度こそ君のことを許さないだろうなあ、それにお母さんだってね、ぐへへへ」 「くっ!」 にやにやと笑いながら、偽春奈は陽介のベッドに腰を下ろした。 「それよりおにいちゃん、今からあたしが気持ちいいことしてあげようか」 「き、気持ちいいこと?」 「そうだよ、ほら、おにいちゃんってあたしにこうしてもらいたかったんでしょう?」 そう言うと、偽春奈は陽介のスエットパンツの股間に手を伸ばしてすすっとその膨らみを撫でた。 「な、何をする!」 「何をって、あたしが一発抜いてあげようって言ってるんだよ」 小さな手を伸ばして陽介の股間をくにくにと摩り続ける偽春奈。段々とその膨らみが大きさを増していく。 「うぐっ、や、やめろ」 「やめろ? おにいちゃんの体はそう言ってないみたいだよ」 そう言いながら偽春奈がスエットパンツを下ろすと、怒張した陽介のペニスがピンと弾き出た。 「ほらね、妹の手コキに興奮するなんて、そうか、おにいちゃんって変態だったんだ」 「変態? ち、違う、違う」 「違う? これのどこが違うって言うの? どお、おにいちゃん、気持ちいいでしょう、あたしって上手でしょう」 偽春奈は、なおもその小さな手で陽介の怒張したペニスをさらにスッスッと摩り続ける。 ひんやりした手の平の感触、時折蠢く指先の刺激に、陽介のモノはみるみる硬さを増していった。 「あ、ぐぅ、や、やめ……ろ……」 抑えようとしても抑え切れずに快感がこみ上げてくる。 「うぐっ!」 仰け反る陽介のペニスから、その瞬間白い精液がほとばしり出た。 母親と妹二人に囲まれた生活ながらスポーツ一筋だった陽介は、今まで自慰に耽るなどということは無かった。 そんな彼にとって、妹の手で己のモノを弄ばれる感触は刺激が強すぎたのだ。 「うわぁ、いっぱい出たぁ」 春奈の声で大げさに驚く偽春奈。 陽介のペニスの先からほとばしり出た精液は、握る偽春奈の手をべっとりと汚し、たらたらとベッドにこぼれ落ちていく。 自分をコントロールできなかった陽介は、あまりの情けなさに顔を落とした。 「く、くそう、こんなことって」 「ぐふふふ、やったね、森崎君、君は妹の手コキでいっちゃったんだ。あ〜あ、こんなにベッドを汚して、こりゃ変態だ、いや大変だ」 「お、おまえ……」 睨み付ける陽介にまるで動じる様子もなく、偽春奈は陽介を見返した。 「ところで陽介君、僕と取引しないか?」 「取引だって?」 「そうさ、これを飲めば君の妹を君に返してあげるよ」 偽春奈は持ってきたペットボトルを陽介に差し出した。 「それを飲めば春奈を返すだって? お前、何を企んでる」 「企んでる? そんなのどうでもいいじゃないか、さあ飲むのか飲まないのか。飲まないのなら別にそれでもいいよ。そしてら僕はずっと君の妹さ、そうだ、あたし毎晩手コキしてあげる。あ、そうか、おにいちゃんってあたしに手コキしてもらいたいんだ」 「な、何を!」 「妹に毎晩手コキしてもらいたいなんて、やっぱりおにいちゃんって変態だね、ぐふふふ」 「ち、ちがう、よこせ」 逆上した陽介は、偽春奈の手からペットボトルをひったくると、ごくごくと飲み干していった。 碧色のゼリーが陽介の喉をぷるぷると下りていく。 な、なんだ……これ…… ぐるぐると天井が回り始める。吐き気を催す。そして次の瞬間、陽介の意識は途絶えてしまった。 「森崎君、たくさん飲んでくれたね。ぐふふふ、楽しみはまだまだこれからだよ」 偽春奈は不気味に笑いながら、己の唇をゆっくりと陽介の唇に寄せていった。 (続く) |