妖精郷時代の彼女たち
[デュラハン、永見 瀬亜のはなし]
作:九重 七志


妖精は、人に化けるもの。
彼らは人間社会に紛れ込み、ひっそりと生きていた……。

――なんてのは、もう随分と昔の話だ。

今や人間社会と妖精社会は完全に一元化している。
妖精のクラスメイトなんて幾らでもいるし、街に出れば三軒に一つは妖精住居だ。

とにかく全くもって珍しいものではない。
今や彼らは"そうあって当然の存在"なのだ。

人間と妖精が結婚することだってザラにある。
まあ、僕の家はほとんど人間だけなんだけれど……。

おっと、そんな事はいいや。

僕には、好きな人がいた。

妖精の女の子――クラスメイトの『永見 瀬亜』に――

"デュラハン"の彼女に、僕は恋い焦がれていた。

だから、は――


「――んっ! んんぅ……んぁんっ!!」

眼の前には、形の良い綺麗な胸。
"僕"は、"小さな口"で懸命に、乳首にしゃぶりついている。

吸い付き、舐め回し、ちろちろと舌で触るたびに、
"僕の体"に強い快感が走り、ビクビクと震えてしまう。

"僕"は向かい合う"自分の体"に抱きしめられながら、
口の端が上がるのを止められずにいる。

「んっ、んんっ……はぁ〜……」

ひとまずしゃぶるのを止め、"頭"を"首の上"に持ってくる。

近くの鏡を覗き込む。
そこには赤い髪を短くポニーテールにした、可愛らしい女の子の姿が映る。

こうして見ると、いつもの"彼女"と変わりない。

違うのは――"表情"だけだ。
いつも明るく活発な"彼女"が、こんなだらけきった表情を見せることはそうないだろう。

「ごめんね、瀬亜ちゃん。
 こんな酷いことをして――」

それでも、僕は。

彼女に近づきたかったのだ。

そう。
彼女の、永見 瀬亜の体乗っ取ってまで。

僕は、彼女のことを……知りたかったんだ――


僕は人間だ、それだけは間違いはない。
だけど、僕は"ちょっとした力"持っている。

珍しい症例だけれども、そういう人間は世界中にいるらしい。

『チェンジリング』――『取り替え子』
両親は紛れもなく人間なのに、妖精の性質を持つ子供が生まれる現象。

世にある半妖精人間とはまたちょっと違う。
完全な人間なのに、妖精としての身体的特徴を持つ。

人狼のチェンジリングは耳と尻尾だけが生えてるって話だし、
スプリガンのチェンジリングは若干人より大柄らしい。

もちろんそれが見た目に現れないことも多々ある。

一説によると、チェンジリングであることに
気付かず生活している人間は結構いるみたいなんだ。

それで、僕もそういうタイプだ。
見た目にはただの人間。角も尻尾も翼もない。

僕の人と違うところは――云うならば『魂』なんだろう。

「狐狸精」――と、いうらしい。
狐の姿をした魂を体から引き離し、自由に移動ができる。

千里眼と言われるものの一部は、
これのチェンジリングだったのではないか、
という説があるとかないとか。

ボクの場合は、更に珍しく。
もう一つできる事のある特殊な性質らしい。

それが――

「ぁ〜……んっ! んっ、ヒッ!! ぁは……」

……まあ、こういうことだ。

借体形成とかなんとか難しい名前があるらしいが、
とにかく他人の体に入り込んで、自由に操ることができる。

――謂わば『憑き物』みたいなものだ。

「ここだな……よし、れろ、れろ、れろ、れろ――――ん゛ッッ!!!」

彼女自身の口で、彼女自身の口を弄ぶ。
もちろん、片方は下の口だ。

頭が取り外せるってのは、こういうときには便利でいいなあ。

一人でもクンニができるなんて。
セルフクンニだ、えへへ。

膝のあたりに、ポニーテールの先端が当たってちょっとくすぐったい。
……そうだ、これもやってみようか。

僕は首を反対側に向け、あそこに長い艷やかな髪が当たるようにする。

このままでは見えないので、体の感覚を頼りに、
手探りで髪の束を掴み、ゆっくりと股間に持っていく。

「ん――!?」

先端が触れ、ちょっとチクチクする。
じゃあこのまま、撫ぜ回すように。

箒を履くように、掴んだ髪の毛を上下させる。

サッ、サッ、サッ――


「――ひゃうんッッ!!!」

突然の刺激的な快感に、思わず恥ずかしい所が濡れる。

「あ――」

ビクンビクンと体が跳ね、粘ついた液体が溢れ出す。

「汚しちゃった……瀬亜ちゃんの髪。
 瀬亜ちゃんの愛液で……なんだか興奮してきた……!」

気分が高揚してきた僕は、ひとしきり髪を濡らすと。
また首を体側に向け、今度は太ももでがっちりホールドした。

「はあっ、瀬亜ちゃんの太もも……挟まれてる……
 でも、この挟まれてる頬も瀬亜ちゃんの……すべすべして、いい匂い……」

頭は股間に固定したので、空いた腕は乳房の方へ持っていく。

「んっ……これなら、全部っ!」

揺れる乳房が真上に見える。
これが一人でできるんだから、デュラハンっていいなぁ。

「じゃぁ、よし……瀬亜、はしたなく淫らに乱れちゃいますぅ♪」

乳首を抓り乳房を揉みしだき、自分の舌で自分の秘部にディープキスをする。
溢れ出る愛液をじゅぶじゅぶと吸出し、飲み込み、甘い匂いに包まれて窒息しそうになる。

「……ふぁ……」

体が仰け反り、ぴくぴくと震え、『もう限界だ』と悲鳴をあげる。

だから僕は、我慢するのをやめ。

溢れ出る快楽に、その身を任せた――

「ふぁ、ふぁうぅ……っひいやぁぁぁぁぁぁぁぁっぁぁあぁぁぁぁあぁ!!!!」

――快楽の奔流に飲み込まれ、意識は薄れ――


――永見 瀬亜の体は崩れ、頭はごろんとカーペットを転がった――



目を覚ますと――死体のように転がる、びしょびしょに濡れた女の体があった。

どうやら気を失ってしまったらしい。
さいわい、まだ彼女の体の中のようだ。

「さて、後片付けしないと……うわっとと」

体を立ち上がらせようとして、少しふらついてしまう。

……ちょっと派手にやりすぎたかもなあ。

きっと明日は大変だろう。
……学校、来れるかなぁ?

とりあえず彼女の首を持ち上げて、部屋に掛けられた大鏡を覗いてみる。

「うへぇ……ぬるぬるだよぉ……」

全身が愛液や唾液、小便や涙に鼻水までに塗れてぬめぬめだ。

「"タライ一杯の粘液"をぶっかけられたみたい……
 あれ、かける側だったっけ? 血液?」

どうでもいい事をいいながら、部屋においてあったタオルなどで拭い取っていく。

「シャワー浴びたほうが早いかな……
 でもこんな時間だし、これ以上は危険かな」

とりあえずできる限りの粘液を拭い終え、脱いでおいた寝間着に着替える。
そして彼女に憑依した時そのままの状態に、戻していく。

「たしか、頭はこの揺り籠みたいなのに入れてたよね」

人間であれば枕を置くような位置に、
クッションを詰めた籠のようなものが置いてあった。

置いてみると、これがなかなか楽な態勢になるようだ。
妖精の寝具ってのも真新しくてちょっと新鮮だ。

「さて、と――」

彼女の体を寝床に戻すと、僕は彼女の体から抜け出した。

(おやすみ、瀬亜ちゃん)

小さな狐のような形をした魂の姿となった僕は、
寝床の籠の中をちらりと見ると、そのまま壁を抜けて、

夜明け前の街を翔けて行ったのだった――

【妖精郷時代の彼女たち】    
[デュラハン、永見 瀬亜のはなし]
おわり



[遅刻/欠席者 名簿]
・永見 瀬亜:寝坊のため。
・鳥居 朝日:病欠。

・羽崎 柚子:家庭内行事のため。

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