会社の同僚と憧れのOLが入れ替わってしまった

 作:verdsmith7


今俺はいつものように会社で仕事をしている。
それは普段と変わらない事だった。
大量の書類に目を通しパソコンを見つめてキーボードを打つ。
周囲も俺と同じ事をしている。
俺の隣には腐れ縁の同期がいた。
なぜか同じ会社で同じ部署に入り席まで隣になっている。
休日もよくつるんでいた。
社会人になっても変わらぬ友人と言える存在だった。
だが今俺の隣にいるのは中年のおっさんのあいつじゃない。
社内で皆から憧れている藤江さんだった。
「おい、どうした?さっきからジロジロ見て俺に何か用か?」
別に異動があったとか席が変わったわけじゃない。
見た目こそ藤江さんだが同期のあいつなのだ。

会社に来た時に隣のあいつの席に藤江さんが座っているのを知った時は驚いた。
「え、なんで藤江さんがそこに!?」
「おいおい同僚の顔も忘れたのかよ」
藤江さんから呆れたようにそう言われた。
そもそも忘れてもないし見間違うはずもない。
その顔は確かに藤江さんの顔だ。
「いつもここに座ってるだろ。おいおい、また休日に夜更かししてまだ寝ぼけてるのか?」
この現状を目にしている俺も寝ぼけているだけだと思いたい。
見ると名札には同期のあいつの名前が書かれている。
「本当にお前なのか?」
「まあ最近太ったから雰囲気は変わったかもな」
それは冗談で言っているつもりなのか。
それに雰囲気どころか全部変わっていた。
変わっていないのは服装ぐらいだ。

上司達もこの光景は見ているはずだ。
でも二人がこうなっても注意もせずいつも通りに仕事をしていた。
まるでこれが普通の事だと
あの厳しい部長が何も言わないのはおかしい。
もしかしてイタズラかドッキリで皆が俺を困らせようとしているのではないか。
そう思って俺は誰かが撮影をしているのではないかと思って周囲を見回した。
スマホやカメラを持った人間はおろか俺を見ている自分さえいない。
普段と同じように仕事をしている。

どこをどう見ても身体は藤江さんで間違いない。
背丈も長い髪も綺麗な顔も豊満な胸も、でもそれ以外はあいつだ。
まず格好は男性用のスーツを着ている。
藤江さんがまるで男装しているようだ。
しかもお洒落なスーツではなく長年あいつが身に着けていた古いスーツだ。
あの藤江さんが好んでそんなのを着るはずがない。
いつもなら社内の制服やそのスカートを着こなしていたはずだ。
しかもサイズが合ってないのかぶかぶかになっている。
袖は長すぎて萌え袖のようだ。
足元のズボンも地面を擦っていた。
しかし、胸周りだけは逆にきつそうだった。
無理矢理着ているせいか胸のラインがはっきりと分かった。
藤江さんの胸の形が本当に全部視認できる。
美味しい光景ではあるが見ているこっちの方が恥ずかしい。
「おい、どうした、さっきから俺の事をジロジロ見て、何か用か?」
喋り方も振る舞い方もあいつだ。
今もガニ股で椅子にどっしりと座っている。
「い、いや、何でもない・・・」

まだ信じられない俺は本来の藤江さんがいる所に向かってみた。
別の部署で本来ならあまり関わりはない。
同じ会社の建物の中だがこの部屋に来るのも久しぶりだ。
内心いるはずがないと思っていた。
多分皆が俺をドッキリで困らせて部屋に戻ったら驚かせようという魂胆だろう。
俺はそう思いながら部屋の中を探した。

「あ、本当にいた!?あいつだ!」
間違いない、そこにはいつも俺の隣に座っている同期のあいつがいた。
そしてあいつと同じように周囲は藤江さんではなくあいつが座っているというのに気にしている様子はない。
俺はもっと近寄って確かめてみた。

あいつが当たり前のように藤江さんの席で背筋を伸ばして仕事をしている。
しかも他の女性達と同じように制服とスカートを履いている。
「うっ、あいつがスカートを履いてる。皆何とも思わないのか?」
しかも足元にはモジャモジャのすね毛が見える。
俺は一応確認の為名札を見てみた。
そこには「藤江」と彼女の名前がしっかりと書かれていた。
「あ、あいつだ・・・」
でも俺にはあいつが藤江さんの名札を着けて女装しているようにしか見えない。

「あ、あの、藤江さん?」
俺は試しにあいつにそう呼びかけてみた。
これで無視されるのが普通だろう。
「はい、何でしょうか?」
『藤江さん』と呼ばれて当たり前のようにあいつは返事をしてきた。
返事をしたからと言って今ここにいるあいつが藤江さんだという証明にはならない。
でも俺が何かを確かめようとすると全部二人が入れ替わっている事を示していた。
声は完全にあいつだ。
なのにしおらしく振舞っているのが不気味だった。
いつものあいつなら俺にこんな風に接するはずがない。
しっかりとした表情で俺を見てくる。
しかもその顔には化粧もしていた。
向こうと全く同じだった。

「あの何か用ですか?私まだ仕事があるんですけど・・・」
あいつは困った顔でそう言ってきた。
このまま見ているだけだと不味いと思った。
「藤江さん、あの最近おかしな事はないですか?」
もっと他に聞き方があるだろとは思う。
でも、そう尋ねるのが精いっぱいだった。

「いえ、いつも通りですけど」
「そうですか、そうですよね・・・」
当然のようにそう返されてしまった。
少なくともいつも通りの要素はどこにもない。
声はあいつだが他人行儀な喋り方だ。
いつのものあいつならもっとフランクに話しているはずだ。
「分かりました。ちょっと雰囲気がいつもと違ったので、えーと失礼しました」
「いえ、別にかまいませんよ。それに私最近ジムに通い始めたのでそのせいかもしれないですね」
雰囲気が変わった事に気付いてもらえたのが嬉しかったのか藤江さんはあいつの顔でそう言ってくれた。
あー、やっぱりこれは藤江さんだ。
怠け者のあいつなら絶対にジムになんか通うはずがない。
あいつの身体になった藤江さんは見ていて痛々しい。
いつも着ている藤江さんの制服はあいつの身体のせいでピチピチになっている。
本人は普通に過ごしているが俺から見ると息苦しそうに見えた。
本人が知らないのがせめてもの救いだ。



それ以上は何もできなかった。
やった事といえば隣に座っている藤江さんの身体をチラチラ見たぐらいだ。
あいつが少し動くと長い髪がなびいた。
そして胸もシャツ越しに上下左右に動いて俺を飽きさせない。
何もしていない時でさえ藤江さんんお横顔も凄く綺麗だ。
化粧をしていなくても美人でそんなのを真横で眺めたら仕事に集中なんてできやしない。
そんな事をしながら落ち着かないまま午前の仕事を終える事となった。

午前の仕事を終え俺達はいつも通り一緒に昼食を取っている。
少し前なら考えられない状態だ。
藤江さんは職場内では特に男性社員からの憧れの存在だった。
同性にも友達がもの凄く多い。
だから彼女の周りには常に人がいた。
少なくとも俺が彼女と一緒に食べられるはずがない。
俺以外には他は誰もいない、完全に二人っきりだ。
今藤江さんは俺の目の前で美味しそうに牛丼を食べている。
普段の彼女なら絶対にもっとヘルシーな野菜中心のメニューにするはずだ。
牛肉と白米を大量に箸で掴むと一緒にガツガツと口の中に運んでいた。
普段の食堂で見る事は絶対にない光景だ、しかもこんな間近でた。


「で、その時の課長の驚いた顔が傑作でさ♪」
藤江さんは食べながら課長の失敗談を嬉しそうに話してくる。
でも正直話半分でしか聞いていなかった。
聞ける余裕なんてない。
こうやって面と向かって座っているだけでいっぱいいっぱいだった。
真正面からこんな近くで憧れの藤江さんを見たことがない。
頑張って藤江さんの顔を視界に入れようとした。
笑う度に綺麗な白い歯が見える。
それが余計に藤江さんの笑顔を輝かせた。
普段向こうが話し掛けてきてくれるのに顔を合わさない事もあって目を逸らしてしまう。

「おい、今日は随分素っ気ないな」
「そ、そうか!?」
俺が視線を逸らした先にはいつも一緒に食べていたはずのあいつがいる。
今日も一緒に食べて無駄話で盛り上がるはずだった。
それが今はとても遠い場所にいる気がする。
勿論今も女性用の制服を着ている。
ずっとあの格好で仕事をしていたらしい。
藤江さんには悪いが下手な女装をしているようにしか見えない。
でも他のOL達とはいつも通り楽しそうに会話をしながら食事をしていた。
俺にとっても今目の前で嬉しそうにしている藤江さんの身体になったあいつを見るよりそっちを眺める方がはるかにハードルは低い。


あまりにも不思議な光景だった。
そもそもどうして俺だけがこう見えているんだ。
俺はおかしな二人を交互に眺めながら食堂で買った既に冷めてしまった唐揚げを口に運んだ。
もう今日がおかしすぎて味なんて分からない。

「食事に誘いたいのか?」
あいつが藤江さんの顔で突然そんなことを言ってきたので心臓が飛び出るかと思った。
「うっ、こほっ!こほっ!」
「なんだ図星かよ。無理だ、無理、やめとけ、俺達には高嶺の花だ。俺達みたいな昇進の望みもない平社員じゃ一生掛かってもデートどころか同じ席で食事なんかできねえよ」
あいつを見ていたら急に諦めるように言い続けてきた。
そう言われると俺も腹が立ってきた。
でも俺は本当の事を言ってやりたい。
もう藤江さんとは既に一緒に食べていると・・・
本当の事を言ってやりたかった。

お前が彼女になっていると・・・
でも言わなかった、いや、言えなかった。
逆に俺がおかしいと思われるかもしれない。
俺以外の皆が二人をいつも通りに見ているとしたら俺の目が変になっていると思うだろう。
あいつが藤江さんで今皆が憧れの藤江さんになっているのがあいつだ、なんて突然俺が言ったらどう思うだろうか。
いきなり誰かにそんな事を言われたら俺なら冗談だと考えるだろう。
しかも質の悪い冗談だと・・・
だから今は黙っておくしかできなかった。
もちろん俺がこんな事を考えている間にもあいつは藤江さんの顔で話し続けていた。

「なあ、さっきから全然食べてないな。食欲でもないのか?」
藤江さんになったあいつが心配そうに聞いてきた。
「え、ああ、ちょっとダイエットをしててさ」
「何だそういう事か。なら俺が食ってやるよ」
あっさり残った唐揚げを取られてしまった。
藤江さんに食べてもらうならそれも本望というものだ。
中身はあいつかもしれないがその身体は本物だ。
せめて俺の渡した唐揚げが藤江さんの身体の栄養になるなら悔いはない。

正直食事どころじゃなかった。
憧れの藤江さんと話をしているんだ落ち着く暇は全くない。
しかも薄っすらとシャツ越しに胸が見えてしまっていた。
藤江さんの自慢の豊満な胸が透けて見える状態だ。
つまり藤江さんはノーブラだ。
そしてあいつが動くとその胸も一緒に動いた。
これで落ち着いて食事なんてできるわけがない。


「あのさ、変な事を聞くけど、胸、変じゃないか?」
俺はさりげなく目の前の藤江さんに聞いてみた。
本当に気付いてないのか確認しておきたかった。
「ああ、そういえば変な感じがするな。妙に重いっていうか。脂っこい物食べてるからな。多分胸焼けだろ」
絶対にそうじゃない。それにそんな事を聞きたいんじゃない。
「いや、そうじゃなくてさ。最近その辺がさ変わったんじゃないかと思ったんだよ。その、大きさとか・・・」
これでどうだと、今度はさっきよりも深く聞いてみた。
「ああ、最近少し出ちゃってさ」
「や、やっぱりそうだよな!」
やっと聞きたい事を言ってくれたと思った。
やっぱり本人にも自覚があるじゃないか。
その時俺はそう思った。

「俺もやっぱり年かな。腹がどんどん出ちまってよ」
「え、腹?」
「そうだよ、見てくれよ俺の腹を!」
そう言いながら触っているのは腹ではなくて藤江さんの大きな胸だった。
「やっぱりこんだけ出たら気付くよな。俺も諦めてそろそろダイエットでも始めるかな」
そう言って見せるように膨らんだ胸を触った。
本人は全く気にしている様子はない。
あいつは胸のラインに沿って撫でている。
そして思いっきり触っているのか撫でるとペタンと胸は潰され手が離れるとまた膨らんだ。

「な、ちょっとやばいだろ」
嬉しそうに見せびらかしながらそう言ってきた。
正直ちょっとどころではない。
「え、あ、ちょっとやばいな」
軽く返事をしてやったが本当にやばいと思った。
俺の目の前で藤江さんが大きな胸を触っているんだから無理もない。
しかもこうして俺が食べ物を口に入れている時でさえあいつは胸を撫でていた。

「やっぱそう思うよな。俺もこれを凹ませるよう頑張らないとな」
そう言ってポンポンと音を出しながらその大きな胸を手の平で叩いた。
その弾みでプルンプルンと震えているのがシャツの上からでも分かった。
「ふふ、あれ見てよ、やーね」
周りで見ていた他のOL達がクスクスと笑っていた。
「お、おい、皆見てるぞ!?」

「何を怒ってるんだよ?むしろこんなの見てもらった方が面白いだろ」
再び胸を叩くとまた「ポンッ!」と軽快な音がなった。
OL達はまた大笑いしていた。
こんなの一番近くにいる俺の方が心苦しい
俺の気も知らないで本人は満足気なのが腹が立つ。
笑われているのはお前じゃなくて藤江さんの身体なんだ。
でも嬉しそうにしている藤江さんの顔を見るとそれ以上怒ることができなかった。

「最近全身がやけに筋肉が落ちてきてよ」
「い、いや、別に頑張らなくても良いんじゃないか」
素直にそう言ったつもりだ。
藤江さんのプロポーションは完璧だ。
それでダイエットなんかしたら痩せこけてしまう。
「いやいや、俺達も結構良い年だぞ。気を付けておかないとな」
そう言って俺の前で平気で胸を触っている。
いや、それはお前のビール腹じゃない。
藤江さんの胸なんだ。
まったく、それは俺を揶揄っているのか?
それとも誘惑のつもりか?
どちらにしても俺にとっては刺激的な事に変わりはない。

なら今度はこっちからだ。
「な、なあ、それちょっと触らせろよ」
自分でもこれはやばいと思う提案だ。
でも流石にこんな頼みは断るだろうと思った
「はは、これは作り物じゃないぞ。なんなら俺の腹で良いならいくらでも触らせてやるよ」
「え!?」
予想外な返事にこっちの方が驚いてしまった。
ありえないぐらいにあっさりと
「ほら、ここだ、ここ!」
わざわざ自分からここを触れと言ってきた。
本人はそこを自分のでかい腹と思っているようだ。
でも俺にはそこが藤江さんの大きな胸に見えている。

「な、なら、さ、触るぞ・・・」
「ああ、遠慮せず触っていいぞ♪」
そう言われるとかえって手が震えてしまう。
そして俺はぷるぷると震える指で触った、藤江さんの胸を。
「どうだ、内臓脂肪たっぷりだろ♪」
「え!?あ、ああ・・・」
俺が胸を触っているのに堂々とそう言ってきた。
触られているのに恥ずかしがる様子もない。
俺の方が恥ずかしくなる。

確かに今俺が触っているのは脂肪だろうが・・・
これはただの脂肪じゃない、本物の女性の胸だ。
中年のおっさんのお腹じゃない。
「ほら、こんなにブヨブヨになってるだろ」
「ほ、本当だな・・・」
そしてこの触り心地は明らかにノーブラだった。
本当にシャツ以外にこの下は何も身に着けてない。
俺はそれを触り続けていた。

「ほら、遠慮せずもっと触れよ」
あいつが藤江さんの顔でそう言ってくる。
今でも変な汗が出ている状態だというのにまだ促してきた。
もう俺を誘ってるとしか思えなかった。
でもここでやめるのも変だと思った。
だからもう少しだけ触る事にした。

俺の手は胸の先端がシャツ越しに触れていた。
少し硬い部分が手に当たっていた。
早くやめるべきだ、そうしないとおかしくなりそうだ。
いや、でも、触っていいって言ったし・・・
自分の中で葛藤が沸き起こる。
触っているこちらの方が罪悪感にやられそうだ。

「あれ、もういいのか?」
「あ、ああ、や、やっぱりダイエットはした方がいいかもな」
そういう返事しかできない。
これ以上触っていたら本当におかしくなってしまう。
「な、やっぱりそうだろ。お前もやっと分かったか」
十分すぎる程理解できた。
こいつが藤江さんの身体と入れ替わっている事を、でも本人達はそれに気づいていない。
「さて、そろそろ午後の仕事を片付けるか」
そう言ってあいつは食器を片付け始めた。
俺は貴重な昼休憩を結局落ち着かないまま終えるしかなかった。

あいつは藤江さんの身体で立ち上がるとその綺麗なお尻をポリポリと掻いた。
社内でもアイドル的な存在が堂々とそんな事をした。
これを知っているのは俺だけだ。
それに今日は藤江さんの自慢の胸を触ることができた。
そう思うとこの状況が少し美味しく思えた。


身体は入れ替わったが立場は以前と変わっていない。
正直見た目を覗けばいつも通りだ。
しかし、今の俺にはその変わってしまった部分があまりにも大きい。
しかもそれを認識しているのは俺だけだ。
俺だけが落ち着かない中仕事を続けなければならなかった。
こうなってくると逆に俺の方が変なのではと思えた。


「おい、トイレか。俺もちょうど行こうと思ってたんだ」
俺がトイレに行こうとすると藤江さんは俺にそう言った。
その言葉を聞いた時は何を言ってるんだと思った。
だって藤江さんは女性なんだぞ。
それが俺とトイレに行くって・・・
「え、えーと・・・」
「なんだ、一緒に行っちゃいけないのか?」
「いや、駄目というわけじゃないが・・・」

今日の藤江さんの行動には驚かせられてばかりだが今がそのピークに到達しようとしていた。
俺の隣で小便器の前に立って立ちションをしようとしている。
本当に信じられない光景だ。
しかも本人は何とも思っておらず堂々とガニ股で立っている。
「今日も疲れたよな。でもあれは課長が最初に言わないといけないよな」
あいつは藤江さんの身体で呑気に課長の愚痴を言ってきた。
「え、ああ、それは課長が悪いな」
俺は適当に相槌を打った。
でも俺が気になっているのはあいつの話ではなくて真横にいる藤江さんの身体だ。

俺はあいつに悟られないようにこっそりと隣の藤江さんの身体を見た。
すると綺麗な手でズボンのチャックを下ろしていた。
そして中に手を入れるとガサガサと何かを探し始めた。
もしかしたら何か出てくるのかと思う程の手つきだ。
勿論そこから飛び出す物は全くない。
いや、本当に何か出てきたら驚いだろう。
とりあえずは色々な意味で安心した。
本人は何かを出したように思っているのか
取り出したような手つきになり男がする構えになった。
小便器に腰を突き出しいよいよアレをしようとしている。

「そういえば最近トイレが近くなる事が多いな。前なら少しぐらいなら我慢できたんだけどさ。俺も年かな」
女の身体で男の身体とは勝手が違うからだろうか。
そもそもあいつは藤江さんの身体でそんなにトイレに行ったのだろうか。
その度に藤江さんの身体で用を足しているのは間違いない。
ちょっと羨ましい。

「さあ、そろそろ出す物出してさっさと戻ろうぜ。あまりゆっくりしてるとまた課長に怒られちまうからな」
そう言ってあいつは藤江さんの身体で力を込め始めた。
股間を突き出し今まさにやろうとしている。
これでもしこの隣にいるのが本物の藤江さんだったらやばいのは明らかに俺だ。
俺は真横で藤江さんが用を足す所を堂々と覗いているのだから。
すると藤江さんの身体がブルっと震えた。
間もなく小便器へ水の落ちていく音が聞こえ始めた。
それが本来なら男が聞いてはいけない音だ。
信じられない、本当にしている。
あの憧れの藤江さんが俺の隣で立ってしている。
恥ずかしがるどころか嬉しそうに出している。


「はああ・・・」
安堵からなのか切ない声を出している。
ずっと我慢をしていたのか下半身から出ている液体の勢いは衰えることはない。
もう俺はそんな光景から目が離せなかった。
「ふんふん♪」
気分が良くなったのか鼻歌まで歌い始めた。
あいつとはいえ藤江さんが嬉しそうにしているのを見ると俺まで嬉しくなってきた。
やがて小便器の中から聞こえていた水の音は小さくなり遂に聞こえなくなった。
あいつは満足そうにチャックを上げた。
やっと終わった、もうずっと終わらないのかと思ったぐらいだ。
そしてやっと小便器から離れて行こうとした。
「あれ、まだ終わってないのか?」
俺が動こうとしないのを見てそう言った。
「ああ、先に行っててくれ。もう少ししたら行くから」
あいつは藤江さんの身体でやっと男性用トイレから立ち去って行った。
「ふう、やっと行ったか・・・」
そこで俺はやっと落ち着くことができた。
あんな光景を見てしまったら出るはずがない。
俺の股間はパンパンになっていた。
あいつに見つからなくて本当に良かった。
こんな状態ではトイレから出られそうにない。
仕方なく俺は個室に入ってしばらく時間を過ごした。
その間にも頭に浮かぶのは藤江さんの立ちション姿であり、結局出るまでに長い時間を掛けてしまった。
それでも俺は得をした気がした。

やっとトイレから出られた。
本当に落ち着かない時間を過ごしたものだ。
その時俺の前を通り過ぎる人物がいた。
「え、今のは!?」
見ると女性用のトイレにあいつが入って行った。
今のは恐らくというより確実にあいつの身体になっている藤江さんだろう。
俺は見てはいけないものを見てしまった気がした。
あいつは藤江さんの身体で堂々と小便器で用を足していた。
「ということは藤江さんはあいつの身体で・・・」
これ以上は想像したくない。


「おい、今日はやけに親切だな」
「え、そ、そうか?」
「だってやたら仕事を手伝ってくれたり、重い荷物を運んでくれるじゃないか」
あいつの言っている事は正しい。
俺はあいつが重い物を運ぶ時はなるべく手を貸した。
そして俺がなるべく運んでやった。
でもそれは藤江さんの身体の為だ。
お前の為じゃない。

「なんだ、その、手伝ってくれてありがとうな♪」
あいつは照れくさそうに藤江さんの身体で俺にそう感謝してきた。
「うっ!?」
その笑顔にドキッとする。
単純に感謝されただけでも嬉しくなってしまう。
冷静になれ、違う、これは藤江さんじゃない。
見た目はそうかもしれないが中身は中年のおっさんのあいつだ。
俺は心の中で自分にそう言い聞かせようとした。
「じゃあ、お礼に一杯奢ってやるよ」
「い、いや別にそんなつもりでやったわけじゃ・・・」
でもまあ奢ってもらえるなら悪い気はしない。
しかも藤江さんのからなら尚更だ。


仕事がひと段落した時だった。
「よし、そろそろ行くか」
あいつは藤江さんの身体で席を立つとそう言った。
まさかまたトイレに行くんじゃないだろうか。
それなら一緒に行きたい気もする。
あんな事があったのに俺は性懲りもなくまた見たくなった。

「また、トイレか?なら俺も一緒に・・・」
「いや、一服しに行くんだよ。お前も疲れてきただろ。一緒に来いよ。少し休もうぜ」
こいつとはよく喫煙室へ向かって煙草休憩をしていた。
そう、大体いつもこれぐらいの時間だ。
「な、なあ、今日はやめとかないか・・・」
俺は何とかやめるよう説得しようと適当な言い訳をしている。
「何言ってんだよ。そろそろ休んでおかないとまたどうせ忙しくなって抜けられなくなるぜ」
言っている事はもっともなのだ。
それに藤江さんの顔で言われると逆にこちらが説き伏せられそうだ。
あいつは藤江さんの身体でどんどん歩いていく。

俺は結局止められなかった。
遂に喫煙室に到着してしまった。
中に入ると煙草のあの臭いが鼻をついた。
「おい、今日はやけに煙臭いな」
あいつは藤江さんの鼻を摘まんでそう言った。
「え、そうか?」
確かに煙臭いがいつもと同じぐらいだと思う
むしろ最近は若い後輩は吸わない奴が多いので昔に比べたらこれでもだいぶマシだ。

流石に他人の身体、しかも社内の憧れの女性の身体で吸うのはまずいだろ。
藤江さんは元々煙草なんて吸わないし喫煙室で会ったこもない。
そんな藤江さんの身体で吸ったら藤江さんの綺麗な身体を汚してしまう気がした。
煙臭くなってしまうし、それに単純に健康に悪い。
流石に良心が傷む。
こんな事なら以前人間ドックで言われた時にさっさと一緒に禁煙しておけば良かった。
今更そんな事を思った。

「な、なあ、今日はやめとこうぜ。コーヒーでも飲むぐらいにしてさ」
「どうしてだよ?いつもこの時間に一緒に吸ってるだろ」
当然のように聞いてきた。
別に普段のこいつの身体なら何とも思わないが今は違う。
何とか上手い言い訳を考えようとした。
「えーと、そうだ、さっき健康がどうとか言ってたじゃないか。今日から禁煙するのはどうだ。なんなら俺も協力するぞ」
本当は煙草をやめるつもりは当分なかった。
でも藤江さんの為に禁煙するなら安いもんだ。
「なんだ、さっきは興味なさそうな雰囲気だったのによ。結局俺の身体が心配か、このツンデレめ♪まあ、分かったよ」
いや、別にお前の身体を心配しているわけじゃない。
藤江さんの身体の事を気にしているだけだ。
もちろんそれは口に出さなかったが
でも俺の努力が実ったのか吸うのは諦めてくれたようだ。

「じゃあ、これで最後にするか」
そう言って煙草を一本取り出した。
「おい、俺の言ってた事聞いてたのか。もうやめるんだろ!」
「まあ、そう言わず、これが本当に最後の一本にするよ」
「え、お、おい!?」
そのセリフを何度聞いたか分からない。
今までやめると言っては吸い続けて今に至るんだ。
「これで煙草をやめるから最後の一服を楽しませてくれよ。なあ♪」
俺は何とか引き留めようとした。
でも、藤江さんの顔で頼まれると何も言い返せなかった。
「う!?わ、分かったよ。でも絶対こで最後だぞ・・・」
「分かってる、分かってる!?」
藤江さんの身体でそう言われても信じられない。
やっぱり中身はあいつだと思えた。
そして結局俺の言う事も聞かず火を点けてしまった。
綺麗な唇にそれを咥えて「スーッ」と吸う音が聞こえる。
煙草の先が真っ赤になって光を発した。
そして遂にあいつは藤江さんの身体で煙草の煙を吸ってしまった。
それはいつものあいつの吸い方だった。
でも藤江さんの見た目のせいか煙草を吸う姿は綺麗だった。
しばらく俺はそんな藤江さんの煙草を楽しむ姿に見惚れてしまった。
どうしてただこうやって吸っているだけで絵になるのか。

「うう!!こほっ、こほっ!!」
それは突然だった。
あいつは急に苦しそうに咳き込みだした。
しかもすぐにおさまらずまだ酷い咳をしている。
「お、おい、大丈夫か!?」
俺は慌てて藤江さんの身体を支えた。
柔らかい藤江さんの肌が触れる。
ちょっと役得な気分だ。
いや、今はそんな事を考えている場合じゃない。
『身体の方』は大丈夫なのだろうか。
「う、うう、す、すまん。あ、ありがとうな、こほっ、こほっ!」
咳き込みながらも藤江さんの声でそう感謝された。
無理して作るその笑顔の可愛さも相まってドキッとした。
少しずつだが咳もおさまっているので少し安心できた。
「いや、随分苦しそうだったからな。それより本当に大丈夫か、な、何ともないか?」
俺は恐る恐る聞いてみた。
藤江さんの身体に何かあっては大変だ。
あいつが苦しむのは勝手だが見ているだけなのは流石にできない。

「おい、もうやめておけって!やっぱり身体に悪いんだって、煙草なんて!」
「ちょっと咳き込んだだけだろ。ほら気を取り直して・・・」
そう言ってあいつはまた吸おうとした。
「あ!?おい、マジでやめろって!」
俺が制止するのも聞かず性懲りもなくまた吸い始めた。
それはお前の身体じゃなくて藤江さんの身体だというのに・・・
「う!こほっ!こほっ!」
さっきりよりも酷い咳を出した。
「お、おい、本当に大丈夫か!?」
見ているこっちが不安になってくる程苦しみ始めた。
「こほっ、こほっ!おええっ!」
藤江さんが咳き込みながら苦しんでいる。
しかも藤江さんらしからぬ酷い声を出している。
酷い光景だ、藤江さんのこんな姿は見たくなかった。
吐かなかったのがせめてもの救いだ。
あいつはまだ蹲って苦しそうにしている。
とても見ていられない。
「ほら手を貸してやるから」
俺は手を伸ばしてそう言った。
「ううっ、すまねえ、こほっ、こほっ!」
藤江さんの手が俺の手を掴んだ。
「ううっ!」
手が触れただけなのに俺の心臓が高鳴った。
「ほら背中も貸してやるから、乗れよ」
「わ、悪い」
今度は背中に藤江さんの身体が密着する。
俺は藤江さんの身体を支え続けた。
咳き込む度に俺に身体を預けてくるのが分かる。
その度に藤江さんの身体が密着した。
柔らかい、それに良い匂いがする。
それに胸の膨らみが俺の背中に当たっていた。
その隙間には俺とあいつのシャツぐらいしかない。
ほぼ直接当たっているようなものだ。
これで何も感じないはずがなかった。
ドキッとしている場合じゃないのは分かっている。
でもそれを抑えられない。

さっきと違いあいつは藤江さんの身体で未だに苦しそうにしている。
でも俺も別の意味で苦しかった。
密着する身体を意識しないわけにはいかない。
気持ちの良い肌の触り心地と接触する胸が俺を無理矢理落ち着かなくさせてくる。
うう、は、早く、落ち着いてくれ!
これ以上くっ付いていたら変になりそうだ!
「はあ、はあ、す、すまん、もう、大丈夫だ。手を離してもいいぞ。やっとおさまってきた」
「え、そ、そうか」
そう言われて慌てて距離を取った。
密着していた身体が離れていく。
ちょっと名残惜しいとは感じつつ何もなくて本当の良かった。

俺は異常がないかしっかりと確認した。
「あ、ああ、いつも通りに吸ってただけなんだけどな。それに今日はやけに不味く感じるな。なんだか初めて吸った時みたいだ。吸ってむせるなんてな」
よほど辛かったのか今も膨らんだ胸に手を当てて苦しそうにしている。
時折咳き込むと俺の顔に藤江さんの口から飛び出た空気が当たった。
俺はそれをひっそりと体内に取り込むように息を吸った。
「ほ、ほら、言わんこっちゃない。早くそれを寄越せよ。あと今から禁煙な。絶対吸うなよ」
俺は藤江さんの手の中にある煙草を奪い取った。
流石にこれ以上は好きに吸わせてたまるか。
「こほっ、こほっ、もう五月蠅いな。ああ、分かった、分かったよ。じゃあ俺は先に戻ってるぞ」
藤江さんの顔でつまらなそうな顔をして戻っていった。
喫煙室に残った俺はあいつから取り上げた煙草を見た。
そして藤江さんの口で咥えていた吸いかけの煙草で一服した。
それはいつもより美味く感じた。
「俺もこれで最後にするかな・・・」

「さあ、終わりだ。さっさと帰ろうぜ」
あいつは藤江さんの身体で立ち上がるとそう言った。
やっと仕事が片付いた。
もっとも俺にとっては仕事以外の面で忙しかった。

今日は本当に不思議な日だった。
あいつと藤江さんが入れ替わるなんて・・・
そしてそれは元に戻ることはなかった。
仕事を終えて帰る時もあいつは藤江さんの身体のままだった。
「じゃあ、お疲れ。また明日な」
会社を出てそう言いながら別れた。

部屋に戻って考えるのは藤江さんの顔だった。
色々あったが結果的に藤江さんの身体とほぼ一緒に過ごせた。
そう思うと俺にとってはラッキーな一日だった。
どうせ二人は入れ替わった事に気付いてないんだ。
誰かが困っているわけでもない。
得をしているのはつまり俺だけだ。
心の中でできれば二人がしばらく入れ替わったままでいて欲しいと思った。
「さて、そろそろ寝るか」



次の日の朝も俺にとってはいつもと同じだった。
けたたましい目覚まし時計の音がする。
まだぼんやりしている頭を無理矢理起こそうとしてきた。
「ああ、もうこんな時間か・・・」
本当は凄く眠い、まだ寝ていたい。
布団の中の居心地の良さをもっと感じていたかった。
冷たい空気が肌に伝わると自然と温かい所に引き寄せられていく。
「あと、少しだけ・・・」
ゆっくりと布団の中に戻っていきそうになった。
しかし、目覚まし時計は早く起きろと言うかのようにやかましく鳴り続けた。
「ああ、もう分かったよ!」
ヤケクソ気味に起き上がった。
やっと目覚まし時計を静かにさせる事ができた。

「ふああ!」
大きなアクビを漏らしながら背伸びをしたり腕を伸ばしてみた。
身体をほぐしたがまだ眠気が取れない。
二度寝をしたい衝動を抑えながら洗面所へ向かった。
途中何度か床に置いてある物に足をぶつけては悶絶した。
「いてて!誰だよ、こんなの置いた奴は!?」
それは置いたのは他でもない自分だ。
まあ、おかげで眠気は少し取れた。

顔を洗い鏡を見ると今日もそこには自分の顔がある。
寝起きという事もあるが酷い顔だ。
顔を洗った直後なのになぜか不潔に見える。
細い目の周りには大きなクマができている。
それにシミも顔中にある。
冴えない中年のおっさんの顔だ。
もっと綺麗な顔だったらなと思えて悲しくなる。

パジャマ代わりに着ていた短パンとシャツを脱ぎスーツを手に取った。
これもそろそろ新しいのを買わないといけない。
随分着過ぎたせいかヨレヨレになっていた。
その使い古したスーツと同じぐらいに自分の身体も酷いものだ。
「ああ、また太っちまったな」
ポッコリと膨れた腹が見える。
運動不足に毎日バランスの悪い食生活や飲酒をしていれば無理もない。
何とかしたいと思いはするものの何もできずに今に至る。
藤江さんの身体になったあいつが健康に気を遣い始めた理由が分かる。
もっとも本当にダイエットが必要なのは藤江さんの身体になったあいつじゃなくて俺だろう。
あいつは藤江さんの綺麗な身体になれて正直羨ましい。
当の本人が気づいてないのが残念だ。
もっともあいつの身体になっている藤江さんはショックを受けるだろうからやっぱり知らない方が良いのかもしれない。

着替えを終えて俺は朝のテレビのニュースを見ながら一息ついていた。
まだ少しだけ時間がある。
憂鬱な朝の貴重なのんびりできる時間だ。
後少しだけゆっくりできると思うと心が落ち着いた。
会社に行けば大量の仕事と藤江さんの身体になったあいつできっと落ち着かなくなるはずだ。
それまでに少しでも精神を休めたかった。


テレビでは最新音楽を特集している。
新作のランキングが次々に紹介されていった。
「あ、瑞奈ちゃんの新曲が入ってる」
彼女はアイドルグループで活動している有名な人物だ。
しかも高校に通って勉強しながらアイドル活動もしている。
ルックスも当然良いのだが更には勉学もアイドルとしての活動もしっかりこなしている。
アイドルをしながら勉学に励む姿は俺もだいぶ元気づけられた。
なにしろ彼女は俺の一押しののアイドルだ。
今までに出たCDは全て買ってるしライブにも行った。
グッズもたくさん持っている。
当然何度か握手会で握手をして少し話したこともある。
多分本人は忘れているだろうが・・・

そして彼女は割と俺の近くに住んでいるらしい。
というのも通勤の電車でよく見かけるからだ。
そんな身近な存在が頑張っている姿がまた格好良いと思った。

話は逸れたがテレビでは瑞奈ちゃんの所属するグループの新曲が流れている。
少し前に発売された曲でもちろん俺も買っている。
こうやって大々的に取り上げられて俺も自分の事のように喜んだ。
好きなアーティストが世間で認められると自分が褒められたように感じられる。
「やっぱり良いな、またライブに応援に行かないとな」
俺は画面に流れる瑞奈ちゃんを見ながら質素な食事を食べた。

歌も流れ終えると俺は静かな時間を過ごしていた。
するとテーブルに置いたスマホが鳴り始めた。
俺はドキッとした、会社からの連絡なら最悪だ。
まさか何かあったのではないか。
嫌な予感がする、俺のミスで何か重大な事故が起きたのか、それとも他の誰かが・・・
少なくとも緊急の呼び出しならすぐに向かわないといけない。
まさかあいつと藤江さんの身に何かあったのではないか。
そんな不安が頭を次々によぎった。
俺はコーヒーを一口飲むと恐る恐るスマホを起動してみた。

「ふう、なんだ、ただの広告か。驚かせやがって・・・」
幸いな事にそれは仕事絡みの連絡ではなかった。
一気に肩の荷が下りて安心した。
それはただの広告だった。
新しいアプリのサービス開始だと書かれている。
どこで情報が洩れているのか知らないが最近はやたらとこんなのが多い。
色々と面倒だがそろそろメルアドを変えるべきかもしれない。
最近はまともなメールの方が来るのが少ない。
いつもなら送られてきた得体の知れない広告なんか無視するはずだ。
でも俺は興味本位で何が送られてきたのか覗いて見た。

『あなたの望む新しい人生をお届けします。マッチングした理想の方と人生を交換してみませんか?まずはお試しモードで楽しんで下さい』
そこにはそう書かれていた。
「あなたの望む人生だって、何だこりゃ?」
その後の文章も多少読んでみたが怪しい内容が続いている。
見ると俺のスマホには知らないアプリが入っていた。
やばい、変なモノを見てしまったと今更後悔した。
でも俺は興味本位でアプリを開いてしまった。
『理想の相手を教えて下さい。なければ自動的にお相手を選びます』
中にはそう書かれていた。
「理想の相手か・・・よし瑞奈ちゃんの名前でも書くか」
俺の理想の相手といえば彼女しかいなかった。

それ以降は長々とした規約やよく分からない説明書きが出てきた。
難しい単語や訳の分からない言葉が並んでいる。
俺は無駄な時間を使ってしまったと後悔しながらメニュー画面に戻ろうとした。
「あ、やべ、何か押しちゃった!?」
俺は誤って画面に表示されたボタンを押してしまった。
『それではお試しモードをお楽しみ下さい』
そう書かれていた。

俺は急いでページを戻ろうとした。
その時焦った俺はまた同じ事を繰り返していた。
「お客様の認識モードはオフになりました。設定はいつでも変更可能です」
また変な表示が出てきた。
しかもそれが何の設定かよく分からないまま次々にページを戻ってしまった。
最後に表示されたのは「それでは新しい人生をお楽しみ下さい。」という文字だった。
そして急に眠気に襲われた。

「あ、あれ、俺どうしたんだ?」
意識が戻ったのは少し後の事だった。
俺は床に倒れていた。
どうやら二度寝をしてしまったようだ。
もうすぐで仕事なのに疲れでもたまっていたのだろうか。

起き上がると妙に身体が軽い気がした。
それに身体も凄く動きやすい。
一応身だしなみをチェックする為に鏡を覗いた。
「ん!?」
俺は目を疑った。
まだ寝ぼけているのだろうか。
鏡に写っているのは俺の情けない顔じゃない。
俺はペタペタと綺麗な手で触って確かめてみた。
スベスベの肌が当たる。
というよりいつもの脂っぽさは完全に消えていた。
その顔を俺はよく知っている。

「これって瑞奈ちゃん?!」
それはアイドルの瑞奈ちゃんだった。
後ろを振り返ったが誰もいない。
もう一度鏡を見て確かめた。
この髪型に、この顔、そしてこの声、間違いない。
瑞奈ちゃんが俺の短パンとシャツを着てそこに立っている。
「ど、どうなってるんだ!?」
いつもの低い俺の声じゃなくて可愛い声が出る。
それはCDで何度も聞いた声だった。
やはりプロのアイドルの喉のせいか凄く綺麗な声が出せる。
「え、これが俺の声なのか!?」
透き通るような声、俺の低くて濁った声とは大違いだ。
確かめる為に柔らかな頬をつねってみた。
白くてスベスベの肌が横に伸びていく。
そして激しい痛みが走った。
「いてて、夢じゃないのか!?」
試しに長い髪も引っ張ってみた。
「あいてて、や、やっぱり痛い!」
少なくとも夢じゃない事は分かった。
それよりもこれ以上瑞奈ちゃんの身体を傷つけたくはない。

「これ、俺なのか?」
俺は鏡を覗き込んで自分の顔を確かめた。
大きな瞳、シミ一つない白い肌、高すぎず低すぎない整った鼻、ピンクの瑞々しい唇、柔らかくてスベスベの肌、俺の顔じゃないのは一目瞭然だ。
こんな綺麗で可愛い顔が俺の顔のはずがない。
それは俺が持っている写真集やCDのジャケットに乗っている顔と同じだ。
なんなら目の横にあるホクロも同じ位置にある。
「でも、どうしてこんなことに!?」
俺は柔らくてぷにぷにした頬に手をそえながらそんな事を考えた。
「やばい、もうこんな時間だ!」

俺は突然の出来事があったのにもかかわらず表に飛び出していた。
会社に向かう時間になっていたからだ。
結局遅刻に焦っていつも通りに会社へと向かっている。
もう、いっそ体調が悪いからと休んでしまえばよかった。
少なくともいつもの体調ではないから嘘ではない。
なんなら熱だって今測れば高くなっている事を証明できる自信もある。
すっかり会社の社畜根性になってしまった自分が今は憎い。
それでも引き返す勇気はなく諦めて出勤した。

当然のことではあるが俺は男物の服しか持っていない。
だからこの身体でスーツを着るしかなかった。
かなり焦っていたから着る時は何も考えてなかった。
後で考えてみれば本当にやばい。
なにせ女の子の身体で着替えていたんだ。
だから、あんな所やこんな所を見ていたはずだ。
でも急いでいた俺はそれを意識する前に着替え終わってしまった。
なにかお惜しい事をしてしまった気がする。

着たのは良いがサイズが大きすぎてブカブカだ。
ベルトをきつく締めたがそれでも緩すぎる。
これでも俺が一番痩せてた頃の物
瑞奈ちゃんのスタイルが良すぎるせいだ。
いや、それは悪くない事ではるが今の俺にとっては問題だ。
何度も落ちそうになるズボンを引き上げた。
シャツは大きすぎて萌え袖のようになってしまっている。
いや、これはいわゆる彼シャツってやつか、もっとも彼氏ではないが。
瑞奈ちゃんの身体に俺の服を着させている
そう思うとちょっと興奮してしまう
いや、今はそんな事を考えている場合じゃない。

俺は瑞奈ちゃんの身体で駅まで歩き続けた。
中でも革靴の大きさが合わないのは相当に辛い。
もの凄く歩きにくく常に脱げそうになっている。
無理をして歩くから転んでしまいそうになった。
大事な瑞奈ちゃんの身体に怪我をさせないよう注意した。
駅がもの凄く遠い気がした。


そして俺の中に余計な事が頭に浮かぶようになっていた。
一番はこの胸の膨らみが気になっていた。
明らかにいつもとは違う。
自分の平らな胸には有ってはならないはずのモノがある。
胸部にあるこの丸いモノが視界に入り続けていた。
分かっている、これが女の胸だという事ぐらい。
家を出る前にもっと確かめておけばと今更ながらに思った。
もちろんブラジャーなんかしていない。
シャツの下に薄っすらと胸の先端が透けて見える。
肌の色とは違うのでそこは余計に目立っていた。
これが何かなんて答えは明白だ。
でも今は意識しないようにした。
気にしたら本当に危ない、でも俺の興味はそこに向いてしまう。
男なら当然だろう、特に気になっている異性なら尚更の事だ。

そしてそれは意外に大きかった。
胸は特に大きいと思ってなかったが男の身体と比べたら全然違う。
やっぱり女性なんだと思えた。
家を出てから常にこれが揺れていた。
上に跳ねたと思ったら重力で今度は下に落ちる。
それを何度も味わった。
落ち着かないし気になっても仕方がない。
「これ、本物なのか?」
俺の胸にあるこの丸いモノをできれば服を脱いで見た上で触って確かめたい。
この俺の腹の上の方にあるものの正体が何なのか知りたい。
でも周りには人がいる。
今こんな所でそんな事をすれば変人だ。
いやそもそもこの身体になってこんな格好で歩いている時点でおかしいのだろうが・・・

俺はまた自分の格好を確認した。
ブカブカになったスーツ姿で歩いている。
身体が元よりだいぶ縮んでしまったのが分かる。
全く服のサイズが合っていない。
こんな身体でこんな格好をしているというのに周囲の人は俺を見て驚くどころか何の反応もしない。
それとも気付かないフリをしているのか。
不特定多数の人達が見て何も反応がないのだ。
皆で俺を騙そうとしているわけじゃないだろう。


家に帰ってもう少しマシな格好にするべきか迷う。
せめて昔痩せてた時に着ていたスーツにするべきだ。
でもそんあアイデアを出した所でもう遅い。
乗り込んだ電車が動いてしまった。
これで俺はこの姿のまま会社へ行くしかなくなった。

俺はいつも通りに電車に乗っている。
周囲の光景も全く変わってないはずだ。
なのに俺だけはすっかり変わってしまった。
まず気付いたのは電車の手すりが高すぎるという事だ。
背伸びをしてぎりぎり届くか届かない位置にある。
無理をしていると背中がつりそうになる。
しかも周りには背の高いサラリーマンに囲まれてしまっていた。
元の俺の身体ならそれほど変わらない身長なのだろうが今は皆が大柄に見えた。

やっと大きな駅で乗客が降りて席に座ることができた。
このカバンも瑞奈ちゃんの細腕ではとても重かった。
足元に置いてやっと一息付けた。
会社に着けば仕事という過酷なものが待っている。
それを考えると憂鬱だ。
しかも俺は瑞奈ちゃんの身体で働かないといけない。


駅で電車が止まるとまた人が乗って来た。
「え、あれ!?」
その中には見知った顔があった。
友人、知人、家族、全部違う。
そこにいたのは他でもない俺の身体だった。
「お、俺がいる!?」
それは確かに俺だった。
鏡で毎日見ていた冴えない顔だ。
見間違えるはずもない。
目は細く目立つクマ、濃い髭と俺の汚い顔がある。
しかも俺の身体は女子高生の制服を着ていた。
そのせいで制服のサイズは明らかに合っていない。
今の俺がブカブカのスーツ姿なのにあっちはピチピチの制服姿になっている。
そう、俺の身体が制服姿になっている。
しかもそれは男子の制服でなく女子高生の方だ。
当然スカートを履いており、足もとにはすね毛も見えている。
自分で言うのもあれだが実に嫌な光景だった。

異様な姿だったが俺がこうなっているのと同じで周囲は誰も気にしていない。
少なくとも俺と違いあれに気付かないわけがないだろ。
中年のおっさんが電車の中で堂々と女装しているんだ。
でも藤江さんとあいつの時と同じで気付いているのは俺だけだ。

「あれって瑞奈ちゃんだよな?」
俺が瑞奈ちゃんの身体になっているんだから瑞奈ちゃんが俺の身体になっているのは可能性として高い。
確信はないがあの振る舞い方や座り方を見ていると瑞奈ちゃんだと思えた。
なにせ俺は瑞奈ちゃんの大ファンだから身体が違うぐらいで見間違える事はないはずだ、多分。
でも向こうは俺の身体と入れ替わっている事に気付いていないらしい。
気付いていたらすぐに俺の方に駆け寄ってくるはずだ。
あの皆から愛されている可愛いアイドルが突然中年のおっさんである俺の身体になったんだ。
驚かないわけがない。

「見て、あれってアイドルの瑞奈ちゃんだよ。うわ、可愛い♪」
すると周囲からそんな声が聞こえてきた。
見ると別の学校の制服を着た女の子達がおっさんの俺の身体の方を見てはしゃいでいた。
「やっぱりあれは瑞奈ちゃんなんだ・・・」
女の子達は「きゃあきゃあ」とおっさんの俺の身体を見て大喜びしている。
俺は複雑な気分だった。
でも俺の身体になっている瑞奈ちゃんは気にすることなく今は静かに座っていつも通りにスマホを弄るだけだった。
俺はそんな変わり果てた彼女をしばらく見守った。
よく見るとスカートの中が見えた。
中には可愛らしい下着が履いてあった。
俺は思った、これが本物の瑞奈ちゃんの身体ならどれだけ良かっただろうと。
今は俺の一物を包む汚い下着にしか思えない。
こんなの見たくもない。
俺はげんなりして窓の景色を眺めた。

「おじさん、さっきから私の事をジロジロ見てなんですか!?」
「え!?」
見ると俺の顔が頭上から見下ろしていた。
余所見をしている時にいつの間にか俺の身体をした瑞奈ちゃんが近くに来ていたようだ。
正直驚いたが、それ以上に近くで女の子の制服姿を見るのは辛い。
でも今はそれどころじゃない。
俺は俺に声を掛けられていた。
「い、いや、俺は別に・・・」
「いつも私の事を見てきますよね!」
「え!?」
確かにこっそりと見ていたが気付かれていたのか。
いや、だってあのアイドルの瑞奈ちゃんなんだ。
俺以外にだって見た奴は周りにいくらでもいるだろう。
「今日もジッと私の事を見てきましたよね!しかも私のスカートの中まで!」
どうやら瑞奈ちゃんはスカートの中を覗かれた事に怒っているようだった。

「え、確かに、見てはいたけど・・・」
今日は別の意味で見ていただけなのだが・・・
事情を説明したいがこの状況を上手く言葉に言い表せられない。
「ち、違うんだよ。見ていたのは・・・」
「もう言い訳は結構です!」
その後も俺は俺に怒られ続けた。
それに見ていたというのならそっちの身体の方だろう。
なんで俺が俺の身体を見ないといけないんだ。
「だから俺は君の身体を心配して・・・」
「私の身体を?余計なお世話です。私達は他人なんですから!これ以上付き纏うなら警察を呼びますからね!」
その身体を使って他人と言われるのはあんまりだ。
この身体だって彼女のだろ。
本当はそう言いたい、でも言えなかった。
「これが最後の警告ですからね!もう私にかまわないで下さい!」
瑞奈ちゃんはそのまま女性専用車両へ行ってしまった。
しかも向こうからは運悪く車掌さんがやって来た。
そんな所俺の身体が見つかれば捕まってしまう。
俺は無理にでも引っ張ってこようかと思った。
そう思ったがいつまでたっても何も起こらない。
悲鳴もざわつきさえも聞こえてこない。
奥を見ると周りの女性達も気にしていないようだった。
やっぱりこの入れ替わりに気付いているのは自分だけらしい。
俺の変わり様を見てもいつも通りだ。


はあ、いつも通りに過ごしたい。
今の俺の願いはそれだけだった。
最近は色々ありすぎた。
俺の周りでも俺自身にもだ。
俺は今女子高生の身体になっている。
若返ったとも言えるが結局変わったのは身体だけだ。
立場は前と変わらない。

「それではいつも通りこれを運んでおいて下さい」
周り、特に女性達から当たり前のように力仕事を頼まれた。
資料が詰まった段ボール箱がいくつも積み重なって置かれてある。
今からこれを全部運ばないといけない。
この瑞奈ちゃんの身体でだ。
「くうう、お、重い、重すぎる・・・」
瑞奈ちゃんの細い腕でこれはきつい。
腕の感覚がなくなりそうだ。
俺は我慢ができなくなって少し休憩する事にした。
このままでは瑞奈ちゃんの腕が壊れてしまう。

「ああ、時間が掛かっていると思ったら、サボらないで早く運んで下さい。まだまだあるんですよ。いつもならこれぐらい余裕でしょ」
俺がクタクタになって休んでいると冷たい言葉を浴びせられた。
どうやら俺がサボっていると思っているらしい。
とんでもない事だ。
俺は今必死で運んでいるんだぞ、今の俺は瑞奈ちゃんなんだぞ!
少なくともアイドルがする仕事じゃない。
折角瑞奈ちゃんの身体になったというのに俺は何をしているんだ。
いつも通り地味な仕事や力仕事ばかりだ。
本当の瑞奈ちゃんだったらステージで歌や踊りを披露してファンを熱狂に包んでいたはずだ。
「はあ、はあ、俺もできればそうしたいよ」
俺は疲労困憊の瑞奈ちゃんの身体で心底そう思った。
その後も何度も荷物を下ろしながら資料室へと運んだ。

終わる頃には完全にくたくたになっていた。
それにもう全身が汗だくだ。
俺は誰もいない資料室で息を切らせながら休んだ。
汗で濡れたせいでシャツが身体に張り付いている。
それによって下が透けて見えた。
瑞奈ちゃんの身体のラインがくっきりと浮かび上がってしまっている。
「こ、これが瑞奈ちゃんの身体・・・」
それを今俺は瑞奈ちゃんの視点という特等席で見ている。
本来は瑞奈ちゃんだけがこれを視界に入れる事ができる。
俺は周囲に誰もいない事を確認するとそれを触った。

それは重労働の後のご褒美に思えた。
瑞奈ちゃんの身体で頑張ったんだ。
これぐらいしても許してくれるだろう。
「こ、これが瑞奈ちゃんのおっぱいか・・・」
凄くドキドキする。
どれだけグッズを買ってもこんな事させてもらえないだろう。
本当に短い時間を握手できるぐらいだ。
こんな風に触るなんて夢のようだ。
自分の身体だから多少触ってもいいはずだ。
それに今は俺がその瑞奈ちゃん自身なんだ。
瑞奈ちゃんが自分の胸を触っても特に問題はないはずだ。
最後にたっぷりと体臭を吸い込んだ。
凄く良い香りだった。

勿論その日は煙草休憩には行かなかった。
藤江さんの身体になったあいつは昨日のが懲りたのか行こうと提案すらしてこなかった。
俺も瑞奈ちゃんの身体の為に吸わなかった。
代わりにコーヒーを買ってみたがいつも以上に苦くて結局藤江さんの身体になったあいつにほとんど飲んでもらった。


そして俺は次の苦難を迎えていた。
何度も耐えて我慢しようとした。
でもこれ以上は無理だ。
俺は席を立ちあがると急いで移動した。
「はあ、はあ、良かった。誰もいない」
そう、俺はトイレに行きたくて仕方がなかった。

それまではできもしないのに仕事が終わって帰るまで我慢しようとしていた。
しかし、それで返って意識しすぎたせいか少しずつ尿意が強くなるのを感じてしまった。
下半身から溢れ出そうになっていくのが分かる。
瑞奈ちゃんの下半身が早くトイレに行けと悲鳴を言っていた。
もう限界だった。

俺は憧れの瑞奈ちゃんの身体でトイレをしようとしていた。
流石にこれは罪悪感が半端ない。
でもやらないわけにはいかない。
その時トイレの扉が開くと誰かが入ってきた。
それは藤江さんの身体のあいつだ。
「なんだ、お前も小便か?」
「え!?ああ・・・」
馬鹿正直にそう言ってしまった。
無理してでも大きい方だと言えば良かったと思ったが今からではもう遅い。
あいつは俺の隣の小便器の前に立った。
瑞奈ちゃんの背が低いせいか小便器がいつもよりも高い。
背伸びをしてなんとか入る位置に来るよう頑張った。

「ご、ごめんよ」
隣でしているあいつに聞こえないように言った。
口に出した所で何かが変わるわけじゃないが言わずにいられなかった。
入れ替わった女の子の身体で小便器で立って用を足すんだ。
謝らないわけにはいかない。
しかもこの身体は俺の憧れのアイドルの身体だ。
俺がそんな葛藤している間もあいつは藤江さんの身体で普通にしている。
相変わらず綺麗な藤江さんが立ちションをしているのは変な感じだ。
でも今日は俺にそれを楽しむ余裕なんてなかった。
あいつが外に出るのを待とうかと思ったがこれ以上は無理だ。
そもそもトイレに入るまでにだいぶ我慢していた。
早くしないと大変な事になる。
最悪このままだと瑞奈ちゃんの膀胱が破裂してしまう。
それぐらいやばい状態だった。
憧れのアイドルの身体で漏らすなんてファン失格だ。
もう最悪の事態になるよりはマシだと思った。

「も、もうだめだ・・・」
小さな声でそう言って俺は急いで遂にズボンのチャックを開けた。
そしていつものようにしようとしたが、その時気付いた。
「な、ない・・・」
チャックを開けた中には何もないという事を。
そうだ、瑞奈ちゃんの股間に何かあるわけがない。


どう焦点を合わせればいいのか分からない。
女の子の股間からどう出るのか見た事があるわけがない。
当然した事もない。
仕方なくできるだけ小便器に近づいた。
なるべくチャックの口を広げて腰を突き出した。
できる限りの事はした。
「よ、よし、やるぞ!」
俺は気合を入れて腰に力を込めた。
すると股間から温かい物が流れ落ちていくのを感じた。
小便器からこぼれ落ちないよう必死だった。
ただ早く終わってほしい気持ちだった。
しかし、長時間我慢して溜めてしまった水分は中々減らない。
ずっと流れ落ち続けていくように感じられた。
トイレの中に瑞奈ちゃんと藤江さんの用を足す音が響いた。
俺はなるべくそれを聞かないように努力した。
聞いちゃだめだ、それに俺は絶対に下を見ないぞ!
心の中で俺は頑張った。
すると藤江さんの身体になったあいつが話し掛けてきた。
俺にとっては救いの神だ。
「なあ、今日は暇か?」
「ああ、そうだな。」
「じゃあ今日は帰りに飲まないか?」

俺は早く帰ろうと思っていた。
でもあいつは一杯奢りたいからと強引に飲みに誘ってきた。
一度は断るも、あいつは藤江さんの顔で俺にお願いをしてきた。
「なあ、一緒に飲もうぜ♪」
俺はそんな頼みを断ることができなかった。
そうだ、今から藤江さんと一緒に飲めると思えば楽しいものじゃないか。
俺はそう思ってあいつと飲みに行った。

しかし、俺は店に着いてから大事な事を思い出した。
瑞奈ちゃんの身体で酒なんて飲めるわけがないという事を。
「なんだよ、折角飲みに来たのにビールも飲まないのか?」
「ああ、俺も健康に気を遣う事にしたんだよ。ほら、お前は俺に遠慮せず飲めよ」
俺だって飲めるなら飲みたい。
だけどそれ以上に瑞奈ちゃんの身体を守りたかった。

「おい、もう一軒行くぞ!」
店を出てあいつが最初に言った言葉がそれだ。
あいつは藤江さんの身体でベロベロに酔ってしまっていた。
いつものあいつなら全然酔わないはずだ。
という事は藤江さんの身体が酒に弱かったのかもしれない。

そんな時にスマホの通知がやって来た。
でも来たのは俺のじゃなくてあいつのスマホだ。
「うん?何だこれ、ああ、もう適当に押しちゃえ♪」
送られてきた画面を開くと中身を一切確認しないまま操作してしまった。
この状態で何が送られてきたか理解しているとは思えない。
「おい、変な事になったら大変だぞ。それぐらいでやめとけって!」
俺はあいつからスマホを奪い取った。
「まったく世話の掛かる奴だ。今日は俺の部屋に泊まれ。送ってやるから」
「おお、ありがとうよ!お前は本当に良い奴だ。心なしか顔も凄く綺麗に思えてきたぞ!」
「そりゃどうも。お世辞はいいから行くぞ」

案の定俺はあいつを半分担いでいく状態になった。
瑞奈ちゃんは藤江さんの身体に比べて小柄だ。
元の俺の身体なら楽に運べただろうが今はとてつもなく重く感じた。
酔って千鳥足になっている藤江さんの体重がのしかかってくる。
「お前の肌結構つやつやだな。それに良い匂いがするぞ♪」
俺が苦労して運んでやっているのに呑気な奴だ。
あいつはすっかり酔いつぶれている。

「ほら、着いたぞ」
やっとの事で俺の部屋に到着した。
「布団を持って来てやるから待ってろ」
俺が布団を引っ張り出してくるとあいつはすっかり寝ていた。
このまま布団を掛けて俺も寝ようかと思った。
しかし、俺は良からぬ事を考えてしまった。
「これが藤江さんの寝顔か」
寝姿を見るのは初めてた。
こんなの一緒に暮らさないと見られない。

呼吸をすると藤江さんの胸がそれに合わせて上下に動いた。
「藤江さんのおっぱいか」
少しだけだと思いながら俺は手を伸ばした。
指先にプニっとした感触が伝わってくる。
「う〜ん・・・」
するとあいつは藤江さんの身体で切ない声を出した。
俺は慌てて手を引っ込めたが起きる気配はない。
それが分かると俺はもう少し触っていたいと思ってしまった。
なんなら今は同じ女同士だ。
少しぐらい触るのは問題ないはずだ。
これで俺が男の身体のままだったら大変だろうが今は気にする必要はない。
散々今までこいつに苦労させられてきたんだ。
少しぐらいは貸しを返してもらわないとな。

今度は両手で撫でるように触った。
フワッとした感触が手の平に当たる。
やっぱり藤江さんの胸は大きくて柔らかくて気持ちが良い。
いくらでも触れる気がした。
今度は少し握ってみた。
「あうう・・・」
あいつが少し唸るような声をあげた。
でも起きてこない。
よっぽど酔っていたのだろう。
そうなればこっちのものだ。
調子に乗った俺は藤江さんの胸を鷲掴みにしてやった。

さあ、これで今度こそ終わりしようと思った。
俺は最後に藤江さんの唇にキスをした。
その瞬間藤江さんになったあいつはパチッと目を開けた。
しかし、今度は目を閉じない。
俺をしっかりと見ると驚いた顔になった。
急いで唇を離したが手遅れだった。
「あ、あの、これは・・・」
適当な言い訳を考えないといけない。
でも何も思い浮かばなかった。
「え、どうしてあの瑞奈ちゃんがそこにいるんだ?」
あいつは俺の顔を見てそう言った。




あいつは自分の身体が藤江さんに、一方の俺の身体は瑞奈ちゃんになっている事に気付いた。
どうして突然分かるようになったのか考えたがこれが分からない。
そもそも俺達がどうして入れ替わったのかさえ分からないんだ。
そんな時にあいつのスマホに通知が鳴った。
「なんだよこんな時に、ってまた広告のメールかよ」
「ちょっと見せてくれ。あれ、これって俺のスマホにも来た広告と同じだ」
それは先日俺のスマホにもあったあの広告メールだった。
内容も全く一緒だった。
そしてあのアプリがスマホに入っていた。
俺もこいつも特に気にしてはいなかった。
だって新しい人生を得られるなんて言葉真に受けられるはずがない。
でもそれが得られた今となっては信じる他ない。
「新しい人生ってこういう事だったのか!」
俺達は二人ともこの広告のメールを開けて適当にボタンを押していたらしい。
でもその代わりに得たのは瑞奈ちゃんと藤江さんの身体だった。


「なんだよ、こうなっているのなら早く言ってくれたらよかったのによ」
あいつは鏡で藤江さんの顔を食い入るように見ながらそう言った。
「いや、だって絶対に信じないだろ。今までだって気付いてなかったんだ。昨日俺が本当の事を言ったら信じたか?」
「まあ、そうだよな」
そう言いながらあいつは嬉しそうに藤江さんの胸を持ち上げたりしている。
「そんなに触るなよ。それ藤江さんの身体なんだからな」
まあ、俺も瑞奈ちゃんの胸を多少触ったから人の事は言えないが。
それでも限度というものがあるだろう。
「いいだろ。今は俺の身体なんだ。それに本人は気づいてないし誰も怒らないって♪それにお前もこれ触ってただろ」
イタズラな笑みを浮かべながら藤江さんの胸を指さした。
やばい弱みを握られてしまったものだ。
「いや、だって、あれは・・・」
したくても言い訳ができない。
「言わなくても分かってるって♪別に怒ってもないし気にしてもないさ」
そう言ってウインクをした。
あいつは今藤江さんの胸を鷲掴みにしていた。
そしてそのまま胸を揉みながら近寄って来た。
不敵な笑顔がちょっと怖い。
それは不審な女性といった印象を俺に与えた。
「な、なんだよ!?」
俺は後ずさりを
「なあ、折角こうなったんだし少し楽しまないか」
「え!?」
あいつは藤江さんの顔でイタズラな笑みを浮かべた。

俺達は大量の荷物を抱えて帰ってきた。
女二人には重すぎる量だ。
「はあ、はあ、疲れた・・・」
瑞奈ちゃんの身体になってから重労働ばかりしている気がする。
この細腕で力仕事は向いていない。
もう少し労わって欲しい。
特に目の前にいるあいつは俺が瑞奈ちゃんの身体なのを知っている。
藤江さんの身体はジムに通っているせいか俺よりだいぶ余裕そうだ。
疲れた表情を一切見せず荷物を置くと休む間もなく言った。
「じゃあ、早速着替えるか♪」
あいつは藤江さんの顔でニヤッと笑うと袋の中を取り出していった。
その顔で笑えば全部許されると思うなよ。
俺は心の中でそう呟いた。
「まったく、どうしてこんな事に・・・」

突然俺はコスプレをする事になってしまった。
「折角憧れの女の身体になったんだから着ているのがダサい私服とスーツだけって勿体なさすぎるだろ」
「まあ、そうだけどさ」
言っている事はもっともだ。
普段藤江さんや瑞奈ちゃんが着るような服は一度も身に着けていない。
別に女装趣味があるわけじゃない。
憧れの女性が可愛い格好をしているのを間近で見たいだけだ。
そしてこの大量の資金は自分達の財布からだ。

「今日は仕事の疲れを私が癒してあげるね♪」
そう言ってあいつは藤江さんのチャイナドレス姿で出てきた。
ファッションショーのように優雅に歩いてくる
そして俺の目の前に来るとニコッと笑った。
そしてクルッと回った。
ドレスが風になびいて中が見える。
俺はそれに釘付けになっていた。
スッとドレスから伸びる長い脚がまた藤江さんの魅力を引き出している。
それにしても藤江さんとチャイナドレスの相性は抜群だ。
こんなのは普段仕事だけで関わっていたならば絶対に見られない。
スーツ以外の服を着るだけでここまで雰囲気も変わるものなのか。
「今日は楽しみましょうね♪」
あいつは藤江さんの顔で嬉しそうに言った。

なんだか俺も楽しくなってきた。
今度は俺の番だ。
勿論着るのは瑞奈ちゃんが普段ステージで着ているアイドル衣装だ。
こんなの普段の俺なら絶対に着れない。
着たとしても全然似合わない。
だけど今の俺は瑞奈ちゃんだ。
俺は服を脱ぎアイドル衣装を着ていった。
「今の俺は瑞奈ちゃんだ」
着替え終わったあいつの前に出る前にそう自分に暗示をかけた。
折角瑞奈ちゃんの身体なんだ。
それなら最後まで成りきってやる。

「今日も応援ありがとう♪」
俺は瑞奈ちゃんになりきった。
ライブで見る瑞奈ちゃんと同じ動きをする。
笑みを浮かべ手を振った。
最初は恥ずかしいと思っていたアイドル衣装も今はいつも着ているスーツのように着こなせている。
それにこの身体にしっくりくる気がする。
この可愛い衣装に負けない程の可愛い瑞奈ちゃんの身体になっているからだ。
そう思うと羞恥心は消え活力が湧いてくる気がした。

「ねえ、新曲を歌ってよ」
藤江さんが瑞奈ちゃんの俺にリクエストを送ってきた。
「いいよ♪じゃあ、一生懸命に歌うね」
普段の俺なら絶対にそんなに軽々と人前で歌なんか歌わない。
でも今日の俺は違った。
音楽が鳴ると俺は息を吸った。
そして感情を込めて歌った。
俺はカラオケにさえほとんどいかないし上手くない。
それなのに綺麗な歌声が喉から自然に溢れてくる。

「凄く良かったよ、瑞奈ちゃん♪」
歌い終わると藤江さんが拍手を送ってくれた。
気持ちの良い汗が俺の額から流れ落ちた。
こんなに嬉しい気分になるなんて自分でも信じられない。
その時には俺の中で次の衣装を着てみたいという意欲が湧いていた。
瑞奈ちゃんがどんな格好になるのか気になる。
これがコスプレの魅力なのか。
気が付けば次々に新しい衣装を掴んでどれを着ようか迷った。


想像していたよりはるかに楽しい時間を過ごせた。
俺とあいつは今バニーガール姿でになっている。
そして嬉しそうに缶ビールを飲んでいった。
もちろん俺は瑞奈ちゃんの身体ではまだ酒は飲めないので遠慮した。
「おい、あまり飲みすぎるなよ。昨日は大変な事になったんだから」
酔いつぶれた藤江さんの身体を運ぶのに苦労した。
本人は酔っていてほとんど記憶にないだろう。
しかし、また瑞奈ちゃんの身体で動かすのは辛いのであらかじめ言っておいてやった。

「ああ、分かってるよ」
そう言ってまた缶ビールの蓋を開けた。
とても分かっているとは思えない行動だ。
まあいい、ここなら酔いつぶれたとしてもこのまま寝させればいいだけだ。

顔はみるみる赤くなっていった。
「おい、そろそろやめておけよ」
「いいだろ、今は俺の身体なんだ。なんならお前もこんな風に触らせてやってもいいぞ♪」
そう言ってあいつは藤江さんの大きな胸を揉んでみせた。
バニーガールの衣装のせいで触られた胸がどうなっているのかはっきり分かってしまう。

「汗かいたからシャワーを浴びるぞ。お前は大人しくしてろよ。藤江さんの身体に変な事をするなよ!」
俺は居ても立っても居られずその場を立ち去る事にした。
汗もかいていたし時間を置いた方がいいだろう。

「分かってる、分かってるよ♪ゆっくり入って瑞奈ちゃんの身体を楽しみな」
どこまで信用していいか分からない返事だ。
それに俺は瑞奈ちゃんの身体でエッチな事をする為にシャワーを浴びるんじゃない。
瑞奈ちゃんの身体を綺麗にする為だ。
シャワーを浴びる事にして浴室へとやって来た。
この間にあいつも頭を冷やしているだろう。
瑞奈ちゃんの身体のせいだろうか浴室が広く感じた。
流れ落ちるシャワーのお湯が気持ち良い。
憧れの女の子の身体で浴びるシャワーなら尚更だ。
すっかりリフレッシュできた。

本当なら瑞奈ちゃんの身体で少しぐらい楽しんでも良かった。
でも今はあいつもいるから変な事もできない。
それに俺自身瑞奈ちゃんの身体に変な事をしたくなかった。
まあ、コスプレはぎりぎり普通の事だと思う。
シャワーを浴び終わりタオルで身体を拭いていた時だ。
俺は着替えの服を準備する事を忘れていた事に気付いた。

「おい、何でも良いから着る物を持って来てくれ。」
しかし、いくら呼びかけても返事がない。
それに来てくれる様子もなかった。
「また酔いつぶれて寝ているんじゃないだろな」
それならそれで別にかまわない。
さっきの様子だと爆睡していても不思議じゃない。
仕方なく俺は身体にタオルを巻いて様子を見に行った。
寝ていたら起こさないようにして服を取って着替えればいい。

「なんだ起きてたのかよ」
でも様子がおかしい。
あいつは座ったままガサガサと何かをしているようだった。
「はあ、はあ、気持ちいい」
しかし、俺は声を掛けられなかった。
それは誰が見ても藤江さんがオナニーをしている姿だったからだ。
俺がいない間にこんな事をしていたのか。
でも俺は止めなかった。
俺の理性は藤江さんの喘ぎ声で吹き飛ばれていた。
「くうう、こ、これが、藤江さんの身体か。だめだ、止められない、もっと気持ち良くなりたい。あうう!」
バニーガールの衣装の股のハイレグ状になっている所から手を入れている。
そして何かをかき乱す様に腕を動かしていた。
「はあ、はあ、俺、藤江さんの身体で感じているのか」
藤江さんの身体を時折震わせながら胸と股間を弄っている。

「あん、これが藤江さんの身体の快感か。前の身体なら絶対に味わえないよな」
あの藤江さんが男口調でオナニーをしている。
普段とのギャップからかそれが俺を興奮させてくる。
止める事を忘れて見入っていた。
「お、俺、藤江さんの身体でいくのか。はあ、はあ、いいよな、だってこれは俺の身体だし、うう!」
ビクビクと身体を震わせ続けた。
もう肩で息をしているような状態だ。
いくのも時間の問題だった。
「い、いく!」
その瞬間、股間から噴き出した。
「ふんん!」
藤江さんの液が股間から飛び散っていった。
「はあ、はあ、藤江さんの身体、すげえ気持ち良かった♪」
あいつは藤江さんの身体で満足したように横たわった。
嬉しそうに天井を見ながら荒い呼吸をしている。

「おい、藤江さんの身体で何をやってるんだよ!?」
しばらくしてやっと俺はあいつにそう言葉を掛けた。
「あれ、瑞奈ちゃん、そんな所にいたのか。っていう事は全部見てたのか♪」

あいつは嬉しそうにフラフラと近寄ってくる。
足元がおぼつかない、完全に酔っているのが分かる。
「おい、ふざけるのはそれぐらいに・・・うぷ!」
突然あいつは抱き着いてきてキスをした。
そして俺を押し倒してしまった。
「んん!?」
「現役アイドルとのキスなんかそうそうできないからな。お前も藤江さんのキスをたっぷり味わえ♪」
もの凄く酒臭い。
あいつは完全に理性を失っている。
「や、やめろ!これは瑞奈ちゃんの身体なんだぞ!」
「なら瑞奈ちゃん、チューしよ♪それとも私のこと嫌い?」
あいつは藤江さんの顔で切なそうな表情をしながらそう言った。
「や、やめろって、その顔でそんな風に言うなよ」
男なら絶対に断る事ができない。
「別に嫌ならいいんだよ。でも今は瑞奈ちゃんと凄くしたいの♪」
ゆっくりと唇を近づけてきた。
俺は瑞奈ちゃんの唇でそれを受け入れた。
その後に続いたのはキスの嵐だった。
やめさせないといけない。
少し残った理性が俺を引き留めようとしてくる。
しかし、引き離そうとするも抱き着かれてしまって身動きが取れない。
藤江さんの手が強く外すことができなかった。
俺はただキスをされ続けるしかなかった。
時間が経てば経つほど俺と藤江さんのキスは深くなっていく。
やがて俺は力を抜いていった。
気が付けば俺も藤江さんの身体を抱きしめていた。
「瑞奈ちゃん、やっと私を受け入れてくれたんだ」
その言葉に俺はもう完全に溶けてしまいそうになっていた。
身体が熱くなり藤江さんの身体を求めてしまう。
すると藤江さんの身体が俺の上に跨ってきた。
これから俺は藤江さんに襲われるのが分かった。
でも嫌ではなかった。

「瑞奈ちゃんの唇をたっぷり味わったから今度はこっちを楽しもうかな♪」
巻いていたタオルを剥ぎ取られてしまった。
「瑞奈ちゃんのおっぱい頂きます♪」
「こ、こら、その辺でもう、うわ、や、やめろ!ああ!」
瑞奈ちゃんの胸が藤江さんの口の中に入ってしまった。
藤江さんの唇の柔らかな感触の後に暖かい空間に包まれる。
もう完全に瑞奈ちゃんの胸は藤江さんの口の中だ
「チューチュー」と吸われている。
しかも吸っているのは藤江さんだ。
乱暴に扱うこともできない。
俺はただ吸われ続けるしかなかった。
「こ、こら!いい加減にやめろ!す、吸うな!あ、ああ・・・」
瑞奈ちゃんの声で切ない声を出てしまう。
「チュパチュパ」という音になった。
吸いながら舐めている。
ウネウネと動いて胸の表面を這って行く。
「んん!?な、なんだこれ!?」
藤江さんの舌が胸を撫で上げてくる。
胸の先端に触れると違う刺激がやって来た。
「ふふ、瑞奈ちゃんはここが弱いんだね。たっぷりしてあげるね♪」
俺の反応を見てピンポイントで攻めてくる。
何度もそこを舐めてきた。
「あう、そこは、やめてくれ!んん!」
しかもわざと強く舐めてきた。

「はあ、瑞奈ちゃんのおっぱい凄く美味しかった♪」
あいつは藤江さんの舌を出しながらは嬉しそうに言った。
でも自分の胸ではないがそう言ってくれて嬉しくなった。
「はあ、はあ、うう・・・」
不思議な感覚だった。
胸を吸われただけなのに幸福感が溢れてくる。
俺は今瑞奈ちゃんの身体で女として興奮しているのか。
分からない、でもまだ終わりたくない。
もう中身があいつだなんてどうでもいい。

「瑞奈ちゃん、一緒に気持ち良くなろよ♪」
もうその言葉を拒むことはできなかった。
藤江さんと一緒に気持ち良くなりたかった。

瑞奈ちゃんの身体で藤江さんの身体と抱き合った。
お互いの胸を合わせくっつけ合う。
先端がぶつかり合い気持ちの良い刺激が身体に沸き起こる。
これだけでも凄く気持ちが良い。
熱いキスを終えて今度は下半身を動かした。
今藤江さんの暖かい股間が俺の瑞奈ちゃんの股間に重なり合っている。
そして股間を擦りつけ合った。
腰を振って当たっている部分が凄く熱い。
だけれどもやめようという思いは既にない。
ジンジンしながらも気持ち良くなる。
男の股間とは違う快感に俺はもう夢中だった。

「瑞奈ちゃん、気持ち良い?」
「はあ、はあ、藤江さん、凄く気持ち良いよ。」
腰を擦りつけ合いお互いの名前を呼びながら俺達は続けた。
今の俺達は瑞奈ちゃんと藤江さんになっていた。

瑞奈ちゃんの身体はもういきそうだ。
俺はまだ女としていったことがないが自然に分かった。
もうすぐ憧れのアイドルの女の子の身体でいける。

「ああ、い、いく!俺、瑞奈ちゃんの身体でいっちゃう!」
「さあ、一緒にい気持ち良くなろ♪」
お互いに激しく腰を振った。
そのせいで胸が上下に大きく揺れた。
だから俺達はお互いの揺れ動く胸を掴み揉んで気持ち良くなった。
身体が熱すぎて汗が全身から流れていく。
「い、いっくう!」「あ、ああっ!」
瑞奈ちゃんと藤江さんの声が重なった時俺達は一緒にいってしまった。
憧れの女の子の身体で憧れの女性といけた。
もう元に戻りたくない。
ずっと瑞奈ちゃんでいたい。
そしてこの藤江さんとずっとやり続けたい。
そう思いながら俺はキスをした。



その日もいつも通り会社へと向かっていた。
瑞奈ちゃんの身体にも慣れていた。
男性客を避けてなるべく女性客(同じ年齢ぐらいの女の子)の近くに行った。
女子高生達は俺が近くに来たのを見ると不機嫌そうな表情になったが俺は気にしない。
ここなら男性客に囲まれるのと違って少しは余裕がある。
そして席が空いた瞬間を見計らって素早くそこへ座った。


すると次の駅で俺の身体になった瑞奈ちゃんが乗って来た。
相変わらず瑞奈ちゃんは俺の身体で頑張っているらしい。
前にテレビで俺の顔が出た時は驚いたと共に笑ってしまった。
俺の身体になっても今まで通りに頑張る姿に俺はちょっと感動した。
たとて俺の姿になっても瑞奈ちゃんは瑞奈ちゃんだ。
そして心の中で応援してあげた。

そんな時に瑞奈ちゃんは突然通知が鳴りスマホの画面を見つめた。
するとさっきまでとは違い驚いた表情を浮かべた。
何が送られてきたのかは向かいの席に座っている俺には分からない。
でもそれが良くない事であるのは確かなようだ。

少しして瑞奈ちゃんはなぜか俺の方を見つめてきた。
顔色がどんどん変わっている。
驚愕の表情と言った表現がぴったりだろう。
そして今度は俺の身体になった自分の姿を確認した。
「な、何これ!?どうなってるの!?」

「どうしたんだ?」
俺は不思議そうに瑞奈ちゃんを見ていた。
すると彼女は起こった表情で俺の方へ近づいてきた。
そしてこう言った。
「私の身体を返して下さい!」
「な、何を言って!?」
「分かってるんですよ!あなたが私の身体と入れ替えたの知っているんですよ!」
ドキッとした、何でその事を知っているんだ。
今までは入れ替わった事さえ気づいてなかったはずだ。
瑞奈ちゃんの背中に変な汗が流れていく。
「逃がしません!私の身体を返してもらいます!」
俺の身体になった瑞奈ちゃんが肩を掴んだ。
「や、やめてくれ、い、痛い!」
でも手を離してくれなかった。
逃げられない、自分の顔なのに怖いと思った。
俺は怖くて動けず言いなりになるしかない。

俺と瑞奈ちゃんは次の駅で降りた。
というより瑞奈ちゃんに無理矢理降ろされたと言った方が正しい。
「早く私の身体を返して下さい!全部知っているんですよ!」
そう言って見せてきたのはスマホの画面だった。
そしてそこにはこう書かれていた。
『相手方からの延長はありませんでしたのでお試し期間は終了しました。これよりお客様の認識を元に戻しますので元の身体に戻りたい場合は入れ替わった相手と相談して下さい』
俺は慌てて自分のスマホを開いた。
そしてやっと自分にもそのメッセージが来ていた事に気付いた。
しかも延長しない場合は相手が入れ替わった事に気付くと書かれていた。
「え、何だよこれ!?」
考えてみれば最後まで読んだ事はないし、今まで注意書きをよく読んでいなかった。

遂に入れ替わっている事が相手に知られてしまった。
「この変態!よくも私の身体を!絶対に許しませんから!」
瑞奈ちゃんは俺の顔で真っ赤になりながら激しく怒った。
「ま、待ってくれ!俺だってこうなると知っていたら躊躇ぐらいはしていたさ」
「うるさい!早く元に戻すよう言ってるでしょ!」
瑞奈ちゃんは俺の言う事を一切聞いてくれない。
それにここまで言う事はないだろう。
「もういいです!早くそのスマホを渡して下さい!」
「ちょ、ちょっと待てって!」
俺の身体になった瑞奈ちゃんは無理矢理俺からスマホを取り上げようとした。
このままだと俺はまた元の自分の身体に戻ってしまう。
それは目の前にいるあの冴えない姿になる事を意味していた。

「い、嫌だ!」
「うぐ!?」
気が付けば俺は俺の身体になった瑞奈ちゃんの股間を蹴り上げていた。
「あ、ああ!?」
俺の身体になった瑞奈ちゃんが力なく地面に崩れ落ちて行った。
瑞奈ちゃんは訳が分からず悶絶しているようだ。
「ああ、な、何これ!?う、動けない、く、苦しい、うう・・・」
股間を押えながらうずくまって動けなくなっている。

今が最初で最後のチャンスだ。
俺は急いで瑞奈ちゃんのスマホを取り上げて画面を開いた。
俺は自分のスマホと瑞奈ちゃんのスマホを同時に操作した。

送られてきた広告のページを次々に飛んでいく。
そして目的のサービスまでやって来た。
もう後戻りはできない。
俺は必死で操作した。
「ちょ、ちょっと何をしているんですか!?」
「み、瑞奈ちゃんが悪いんだよ」

最後の警告の表示が出てきた。
また長々とした警告文が出てくる。
でもそんなものを一切見る時間はなかった。
二つのスマホの画面をスクロールし続けた。
早くしないといけないと焦りながら俺はそのボタンを押していた。
『ありがとうございます。それでは新しい人生をお楽しみ下さい』
そう表示されていた。
「な、何をしたの!?」
「さようなら、瑞奈ちゃん。あとは俺が代わりをするから」
そして意識は揺らいでいった。




優しい目覚まし時計の音で目が覚めた。
爽やかな朝で気分が実に良い。
軽やかに布団から出ると支度を始めた。
水で顔を洗って笑顔の練習をする。
いつも通りの自分の顔がそこに写っている。
ピンク色のパジャマから制服に着替え、髪を整えた。
向かう場所は周りの社会人が行く会社ではなくて勿論学校だ。
「おはよう、瑞奈さん」
学校に到着するなり皆が私に挨拶をしてくる。
同じ教室の生徒はもちろん他の学年の先輩や後輩までいる。
そして私も皆に挨拶を返した。
今日もいつも通りの学校生活を過ごしている。


藤江さんとは今も時間があれば会っている。
大人の女性としてのファッションの意見を聞いたりしている。
藤江さんももう少し若かったら私と同じようにアイドルになりたかったと言っていた。
藤江さんのアイドル衣装姿はとても似合っている。
今日も私が先日ステージで身に着けていた衣装を着てもらった。
本当に何を着ても似合う。

異性と交際はしていないと公言している。
少なくとも嘘は言っていない。
もちろん男子達が告白してきたこともあった。
でもそれらは全部断ってきた。
それに彼氏を作る必要もない。

学業とアイドルの両立は本当に難しい。
昼間は学校、夜や休日はレッスンをしている。
華やかなアイドルだがその裏では地道な努力をしている。
またそれをなるべく見せないようにした。
だからこそステージの上でファンの前に立つ時の応援が身に染みた。
そして私はそのお返しに満面の笑みを見せてあげた。
この身体も新しい人生にも満足している。

私は電車でいつものように学校へ向かった。
女性専用車両にはあえて乗らない。
友達は用心の為にするべきだと言ってくる。
でも私はそうしなかった。
皆が私を見て来る。
特に男性達からの視線が熱い。
女性専用車両では味わえない。
アイドルの瑞奈として見てきた。
「可愛い」「ほら、アイドルの瑞奈ちゃんだ」
という声が聞こえてきた。

しばらくスマホを見た後に顔を上げた。
私の向かい側にはいつもと同じく男の人が座っている。
それは見知った顔だ。
だからわざと足を組んで座ってあげた。
気にしないフリをしながら私のスカートの中の下着を見てくる。
でも私は気づかないフリをしてあげた。
「おじさん、今日も私の事を見てたでしょ」
するとおじさんは驚いた表情になった。
やっぱり私が気付いていたのを知らなかったようだ。
「ご、ごめんよ・・・」
申し訳なさそうに謝ってくれた。
見てただけだし見やすいように足を組んだのは私だからそんなに謝る必要もないのに本当に真面目な人だ。
「別にいいですよ。今度またライブがあるから応援して下さいね。じゃあ今日もお仕事を頑張って下さいね、おじさん♪」
おじさんは意外そうな顔をした。
「え、うん、分かった。絶対に応援に行くよ!」
後ろではおじさんが嬉しそうに手を振ってくれている。

「ただいま」
自分の部屋に帰って私は一人鏡を見ていた。
「ふふ、これが私♪」
服を脱いで私は裸になった。
そして私は膨らんだ胸をぎゅっと触った。
「んっ!」
私はしばらく胸を触り続けた。
毎日学校から帰るとこうしている。
学校やステージの私とは違うもう一人の私。
でも全部私だ。
「はあ、はあ、私ったらまたこんな事をしてる。でもこの身体がいけないのよ」
そして私は股間に手を入れた。
一日の中でこの時間が一番好きだ。



アイドル活動をするのも大変だ。
表向きはきらびやかに見えるが裏では多くの苦労がある。
レッスンやステージの活動は苦ではない。
大変なのはグループ間の人間関係の方だ
他のメンバーと協力し合ってステージを盛り上げないといけないはずだ。
それなのに足を引っ張る存在があった。
少なくとも向こうが私に敵意を向けているのは分かった。

そんなある日私は握手会でファンと交流をしていた。
すると一人の男の子が握手をしてきた。
彼は熱心なファンでずっと私の事を応援してきてくれた。
だから顔もずっと覚えていた。
その時私は良い事を思いついた。
「私と一緒にアイドルをやらない?」
そして私はおススメのアプリを紹介してあげた。
それはかつて私に送られてきたあの広告メールのアプリだ。

次の日レッスンにやって来たのは私の嫌いなメンバーではなくあのファンの男の子になっていた。
もちろん本人は自分が異性の身体になっている事に気付かずいつも通りレッスンを受けている。
「あれ、今日はやけに身体が堅いわね。なんだか動き辛いな」
慣れない男の子の身体で苦労する姿は実に滑稽だ。
でも男の子の身体にアイドル衣装を着せるのはちょっと面白い。
しばらくそんな日が続いた。

そしてそんな姿に飽きた頃私は行動に移った。
嫌いなその子のロッカーからスマホを取り出した。
そして中を開くとアプリを開きボタンを押した。
「じゃあ、準備はいい。これからは私の大切なメンバーとしてよろしくね」
私の隣にはかつて嫌いだったメンバーの女の子が嬉しそうに立っている。
そして彼女もまたスマホのボタンを押した。

「今日もお疲れ様♪」
彼女はかつては嫌いなメンバーだった。
性格が合わず一方的に私の事をライバル視していたからだ。
でも今はかけがえのない親友となっていた。
お互いに応援し合い時には競い合った。
メンバーとも別れて一人になった私はこう言った。
「さあ、次はどの子を変えちゃおうかな♪」




おまけ「瑞奈ちゃんの場合」

最近おかしい。
何がとは上手く説明できない。
でも変わってしまった。
そういえばムダ毛が増えた気がした。
ちゃんと定期的に処理はしていたはずだ。
それなのにこんなに生えている、それも妙に濃い。

今まで着ていた服も随分ときつくなってしまった。
ステージで着る衣装も中々入らない。
気を付けていたのに太ってしまった、ダイエットをしなきゃ。
でも最近太るような事をした覚えはない。
ちゃんとレッスンは欠かさずして自主トレにも励んでいる。
食生活にも自分なりに気を付けていたはずだ。

学校でも変わった事がある。
更衣室で一緒に着替える時だ。
妙にムラムラする機会が増えた。
股間が酷くきりきりする気がした。
ただ他の女の子達と一緒に服を着替えているだけなのに・・・

アイドル活動でグループの他のメンバーと一緒にいる時はもっと酷かった。
前はそれほど仲が良くなかったメンバーの女の子が凄く可愛かくなっていた。
気が付けばずっと一緒にいる気がする。

その他にも変わってしまった事が多い。
でも周りの友達もメンバーも気にしていない。
一応仲の良い友達に何か変じゃないか聞いたことがある。
その度に気のせいだと言われた。

私に言わせればむしろ皆が変わってしまった。
皆こんなに可愛かっただろうか。
見ているとなぜかドキドキしてしまう。
家に帰っても同じだった。
自分の部屋に入る。
そこはいつもと同じ場所のはずだ。
でも違う、同じなのに同じじゃなかった。
私はベッドに入り布団の中に入った。
そしてたっぷりと香りを吸い込んだ。
この匂いも自分のはずだ。
「私どうしちゃったんだろう?」
全く違う身体になってしまった気がする。



いつもと同じように学校へ向かう電車に乗った。
この何もせず電車に乗っている時間が数少ない私の時間になっている。
周囲で私の事で盛り上がっても関係ない。
私は一人スマホを開いて時間を過ごした。

その時スマホが鳴った。
なんだろうと思って通知を開いた。
「お試し期間が終わりました、って何これ?」
そこには変なメッセージが表示されていた。
何かのイタズラかと思った。
それかよく来る迷惑メールだろうか。
読み終わる頃に急に頭がくらくらした。
貧血でフラフラしたのかと思ったが違う。
すぐに意識がはっきりした。
でも様子がおかしい。
その時になってやっと私は今の自分が別の誰かになっている事に気付いた。

私は自分の身体を見た。
ごつごつとした手、大きなお腹、すね毛の見える脚、ざっと見ただけでもそれらが目に入った。
自分の身体とは全部違う。
「な、何これ!?」
野太い声でそう言った。
私は急いで鞄の中から鏡を取り出して覗いた。
それは私の顔ではなかった。
電車でよく私の事を見てくるおじさんだった。


「全部知ってるんですよ!」
事情を知った私は私の身体を奪ったおじさんに詰め寄った。
まさかこんな事になっていたなんて!?
私は一刻も早く元の身体に戻りたかった。
さっきのアプリで元に戻れる事ができるのは分かっている。
だから私は私の身体になったおじさんに急ぐように迫った。
でもおじさんは中々スマホを出して元に戻ろうとしてくれない。

「もういいです!そのスマホを渡して下さい!」
私は自分で操作しようとおじさんからスマホを取ろうとした。
その時私の股間に衝撃が走った。
どう説明すれば良いのか分からない。
一瞬世界が止まった気がした。
「ああ、な、何これ!?う、動けない、く、苦しい、うう・・・」
少しして股間から激痛が走ってきた。

「ちょ、ちょっと何をしているんですか!?」
おじさんは私のスマホを取って何かを操作していた。
「み、瑞奈ちゃんが悪いんだよ」
その言葉を聞いて私は意識を失った。


俺は地面に倒れていた。
「いてて、あれなんで俺はここで寝てたんだ?」
思い出そうとするも記憶がない。
また酔って変な所で寝てしまったのだろうか。
「目が覚めましたか、おじさん♪」
「え、瑞奈ちゃん!?」
俺の目の前にはあのアイドルの瑞奈ちゃんがいた。
テレビや雑誌で見たままの顔だ。
俺は瑞奈ちゃんに会えて嬉しくなった。
でも様子がおかしい。
なぜか古びてヨレヨレのスーツ姿になっていた。
「あの、おじさん、そろそろ服を返してくれるかな?こんな格好じゃ学校に行けないの」
瑞奈ちゃんは申し訳なさそうにそう言った。
そして気付いた、俺はなぜか制服を着ていた。
いつの間にこんな格好をしていたのだろう。
「え!?あれ?!」
状況を飲み込めた。
俺は今瑞奈ちゃんの服を着ている。
「ご、ごめんよ!」

どうして俺が瑞奈ちゃんの服を!?
俺はパニック状態になっている。
だっていつの間にか服が瑞奈ちゃんの制服に変わっていたからだ。
必死で何度も謝った。
警察を呼ばれても仕方がない事態だ。

「気にしないで下さい。服を返してくれたらそれでかまいませんから♪」
こんな事をしてしまったのに許してくれるらしい。
「え、え、何だこれ!?」
まさかと思った。
俺は下着までも瑞奈ちゃんのを履いていた!
俺の汚いトランクスではなく女の子が履く可愛らしいものになっている。
「ええ、い、いや、違うんだ!俺、いつの間にかこうなってて!」
事情を説明したいのに上手く言葉にできない。
何が起きているのか分からず俺自身が戸惑っているんだ。
それを瑞奈ちゃんに説明できるはずがない。
「こ、これは、その・・・」
見ると俺が履いている破れてもおかしくない状態になっている。
服だけならともかくこれでは本当に警察を呼ばれてもおかしくない。
俺は内心びくびくしていた。
いつ瑞奈ちゃんが知って怒り出すか不安で仕方がない。
「ふふ、いいんですよ。それより早く着替えましょう」
予想外の返答に俺は安心するというよりあっけにとられた。

俺と瑞奈ちゃんは着替える為に同じトイレの個室に入っている。
これは俺が言ったんじゃない、瑞奈ちゃんからの提案だった。
誰からも見られない場所という事でここに決まった。

俺はさっきまでの事があったから断ることなんて考えもしなかった。
でも入って気付いた。
もの凄くこの空間は狭いということを。
油断すれば身体が触れる程度しかない。

「ほら、早く服を交換しましょう。おじさんも仕事があるから急いだ方がいいですよ」
瑞奈ちゃんはそう言って服を脱いでいった。
流石に瑞奈ちゃんは後ろ向きで着替えていたが後ろ姿だけでも俺には最高だった。
生の瑞奈ちゃんのお尻を拝めたんだから。
やばい、興奮してきた。
股間が大きく勃ってしまっている。
それよりお尻も見ていてやばいはずだ。
俺も後ろを向いて着替えようとした。
その時突然俺の背後から手が伸びてきた。
「はう!え、み、瑞奈ちゃん!?」
「それじゃあ外を歩けないでしょ。私が手伝ってあげます。それにこれはお礼ですから♪」
なんと瑞奈ちゃんはズボンの上から俺の股間を掴んでいた。
そして掴んでいる綺麗な手を上下に動かした。
「ああ!瑞奈ちゃん、ど、どうして、こんな事を!?」
「ずっとこうして欲しかったんです・・・いえ何でもありません。さあどんどん気持ち良くなって下さい♪」
一瞬瑞奈ちゃんの顔が暗くなった気がしたがすぐに明るい笑みを浮かべた。
俺にとっては天国のような時間だった。
憧れの瑞奈ちゃんにこんな事をしてもらっている。
俺の股間は大喜びで大きくなっていった。

それにしても手つきが上手すぎる。
嫌がることなく俺の下半身を触っているだけでも凄い。
その上瑞奈ちゃんは男がどうすれば気持ち良いのか知っているようだった。
「気持ち良いですか?」
「凄く気持ち良いよ」
「それは良かったです。その身体でたっぷり楽しんで下さいね」
「ううっ、くく!」
俺の下半身から白い液体が出たのはすぐ後のことだった。

「それではこれでお別れですね。最後にその顔をよく見せて下さい」
そう言って俺に近づいてくると最後に瑞奈ちゃんにキスをされた。
服を返しただけなのに・・・今の俺にとって彼女は天使に思えた。
いや、それどころか女神と言っていいぐらいだ。
俺は瑞奈ちゃんが来ていたスーツの残り香を楽しみながら会社へと向かう事ができた。
「瑞奈ちゃんも学校頑張ってね!アイドル活動も応援してるから!」
俺は精一杯に瑞奈ちゃんへ声援を送った。
「ふふ、私も応援してるよ♪じゃあね、おじさん♪」
別れ際に俺にそう言ってくれた。
笑顔がまぶしかった。


休日にだらだらと過ごしていた時だ。
突然部屋のインターホンが鳴った。
「なんだ宅配か?」
俺は扉を開くと出てきたのは瑞奈ちゃんだった。
「瑞奈ちゃん!?どうしてここへ!?」
「ふふ、入ってもいいですか?」
なぜか瑞奈ちゃんは俺の住んでいる部屋を知っていた。

「はあ、全然変わらないですね・・・」
部屋の中を見回してそう言った。
「え、どういうこと?」
「いえ、何でもありません。それより今日はおじさんの事を応援に来たんです」

その日から瑞奈ちゃんは定期的に俺に会いに来てくれた。
談笑だけで終わることもあったし生で歌を歌ってくれたりもした。
未発表の新曲を目の前で披露してくれた時は嬉しさのあまりに涙が出た。
仕事の相談にも乗ってくれた。
不思議な事に瑞奈ちゃんは俺の会社や俺がしている仕事に詳しかった。
そして瑞奈ちゃんは俺よりだいぶ年下のははずなのに凄く良いアドバイスを俺にくれた。
おかげで前よりも仕事ができるようになり自信も持てるようになった。
これも全部瑞奈ちゃんのおかげだ。

「さあ、おじさん。今日は私がたっぷりサービスしちゃいますね♪」
俺は瑞奈ちゃんが着ていたアイドル衣装を着て、瑞奈ちゃんは俺のスーツを着ている。
なぜこんな事をするのか分からないが、これも瑞奈ちゃんの頼みだ。
瑞奈ちゃんの衣装は俺には小さく汚い中年のおっさんの俺が着ても変なだけで似合わない。
でも身に着けているとなぜか懐かしい気がした。

ヨレヨレのスーツ姿になった瑞奈ちゃんは俺の上に跨るとこう言った。
「おじさんは私にとって特別ですから♪」
それを聞いて俺は一生瑞奈ちゃんのファンでいる事を決心した。
「ふふ、これからも応援よろしくね。おじさん♪」

















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