女騎士と魔女の入れ替わり
 作:verdsmith7


この辺りに手配書の魔女が隠れているらしい。
周囲に何かないか探りながら辺りを警戒した。
私は騎士として魔女を捕らえに来た。
生死は問わずだったが命までは取らないのが信条だ。

魔女は最近この近辺に現れた。
報告書では王都や大きな街で金持ちの男や有力者をを誘惑したらしい。
ただベッドで一緒に寝ただけならこんな手配書は作られなかっただろう。
その後魔女は疲れて眠った男の家から金品を奪っていった。
当然大金を奪われた彼らは激怒して魔女に懸賞金を掛けた。
しかし、何度か魔女を倒そうと騎士が向かったが今の所捕まえることに成功はしていない。
そこで今回は私にその指令が下った。
しかもわざわざ盗賊を捕まえる為に遠方に出ていた私を半ば無理矢理戻した。
恐らく被害に遭った金持ちや有力者達が騎士団に何かを言ったのだろう。
そうでなければ確実に辺境の村々を襲っている盗賊を捕まえる方が優先されたはずだ。

私が選ばれたのは恐らく騎士団の中でも優秀だったからだろう。
今までその手の魔女や盗賊は逃したことがない。
早く魔女を捕まえたい彼らが私を差し向けたと私は思っている。
それでも上からの指示が出たのであれば仕方がない。
早く魔女を捕まえて盗賊に専念したい。
もちろん魔女の方も油断するつもりはなかった。

私は最後に魔女が目撃された場所の周辺を探索していた。
幸いなことに魔女の目撃情報は多く探索自体は楽だった。
魔女が派手な格好をしていたからだ。
特に男性の目撃者は多くその格好と美しい顔を鮮明に覚えているようだ。
おかげで魔女の向かった先は大体分かっていた。



「こんな所に屋敷がある。地図にはないずなのに・・・」
見つけたのは大きな屋敷だった。
しかし、この付近に建物はないはずだ。
地図で何度も確認した。
いつの間にこんな建物ができたのだろう。
この地図もそれほど古くはないはずだ。
もっともこの地図が描かれた後に建てられた可能性はある。
建物は王都でもあまり見られない程の壮麗さだ。
余程の金持ちか有力者でなければ絶対に建てられないだろう。
しかし、そんな豪華さとは逆に不自然な点がいくつもあった。
これほどの大きな屋敷なのに人の気配が全くしないのだ。
それなのに毎日手入れや掃除をしているような清潔感が漂っていた。
それにここへ来るまでに大きな道もなかった。
明らかに周囲とは異質だった。
私は外から何か分からないか見回っていた。
心なしか屋敷の窓から誰かに見られている気がした。

すると屋敷の門が大きな音を立てながら勝手に開き始めた。
私は周囲に誰かいないか警戒したが人はおろか動物すら見えない。
「こんな重い門がなぜ!?」
少なくとも風などで勝手に開くような門ではない。
私は確信した、この中に魔女がいると。
その時屋敷の中へといざなうような風が吹いてきた。
どうやら私の事を歓迎してくれるようだ。
私は遠慮なく門を潜り抜けて屋敷の中へと入って行った。

中も外見に劣らぬ豪華さだ。
大きな赤い絨毯が床に敷かれている。
天井には大きなシャンデリアがつるされていた。
壁には多くの絵が飾られていた。
それはリアルな人物画であり勇ましい騎士の男性達が描かれている。
しかし、描かれている騎士の顔にはどこかで見覚えがあった。
私は歩きながら考えてやっと思い出すことができた。
それらは魔女を討伐して帰ってこなかった騎士達の絵だった。
よく見ると日付まで書かれている。
彼らが行方不明や死亡が確認された日だ。

どうやら向こうは私が何者で何の目的で来たのか知っているようだ。
私は剣をいつでも抜ける準備をした。
もうどこから襲われてもおかしくない。
その後も私を誘うように次々と屋敷の中の扉が勝手に開かれていった。
もちろん中に入ってからも誰にも会ってはいない。

しばらく歩くととある部屋に辿り着いた。
そこには横長の大きなテーブルが置かれその上には豪華な食事が並べられていた。
どれも貴族や王族が食べるような豪華な品々だ。
それに輪を掛けるように美味しそうな匂いが漂っていた。
しかし、私はそれに目もくれずに先へ進んだ。

やがてひと際大きな扉が現れた。
もちろん今までと同じように勝手に開いた。
でもここは今までの部屋とは違った。
誰かがいる気配がする。

予想通り中には人がいた。
その人物は私が来るのを見越したかのように笑顔で待ってくれていた。
「ふふふ、また騎士のお客さんね。でも折角豪華な食事を用意してあげたのに食べなかったのね」
ここに来るまでの部屋で豪華な料理を見かけた。
やはり魔女が用意していたようだ。
「わざわざ食事をしに来たのではありません。あなたを捕まえに来ました。あなたが手配中の魔女ですね」
「ええ、確かにあたしだわ。でももっとセクシーに描いて欲しかったわね」
あっさりと手配書の人物だと認めた。
それだけの余裕があるという事だろう。
それにこういう経験にも慣れているように見えた。


とても戦う装備だと思えないエッチなボンテージのような衣装だった。
ボディラインはくっきりと分かるデザインだ。
そして至る所が露出していた。
肩は何も身に着けておらず魔女の首元や鎖骨が丸見えになっている。
魔女の胸に触れないわけにもいかないだろう。
というのもその端正な顔から下で一番目立つのが魔女のその大きな胸だった。
胸は先端から下のわずかな部分以外は溢れ出そうなほどに露出していた。
嫌でもそのくっきりできた胸の谷間が目に入ってしまう。
派手な金髪はとても長いが綺麗に整えられていた。
特徴的なとんがり帽子を被っている。
腕まで伸びる長手袋をしている。
踵の高いロングブーツを履いていた。
他にも耳飾りや腕輪などのアクセサリーをしている。
どう考えても戦闘の邪魔になるだろう。
私に言わせればそれは魔女というより娼婦に見えた。
私が来ることも分かっていたはずなのにこの格好だ。
私からすればふざけているようにしか見えない。
しかも魔女からは香水の香りが漂っている。

「あら、よく見たら久しぶりの良い女じゃない。ふふふ、あたしの好みよ」
魔女は私を食い気味に見て来た。
これから戦うかもしれない敵にいきなりジロジロ見られて戸惑った。
顔から足元までイヤらしく舌を出しながら眺められた。
「な、何ですか!?私の事をジロジロ見て!?」
これも魔女の策略なのかとさえ思った。
魔女は私の周りを歩きながら見てきた。
なんなら今私が飛びかかればあっという間に魔女を倒せそうだ。
一瞬戸惑ったが私は平常心を保ちながら魔女に隙を作らないように構えた。
もし魔女が何かしてこようものなら返り討ちにすればいい。
「ふふふ、クールな女騎士さんね。ますます気に入っちゃった♪」
ペロッと舌を出して唇の舐めた。
その瞬間私の背筋がゾクっとした。
この魔女は本当に何を考えているのか分からない。



「じゃあ、そろそろ始めましょうか」
そう言って魔女は杖を持つと雰囲気が変わった。
さっきまでとは違い鋭い目つきになった。
どうやらやっと戦う気になったらしい。
私としては大人しく捕まって欲しかった。
でもこうなったのなら仕方がない。
それに私の事を変な目で見られるよりは幾分かマシだった。

「ていっ!」
また魔女に攻撃を避けられてしまった。
どうやら転移魔法で私の攻撃を避けているようだ。
呼吸が全く乱れていない。
それでも魔女が少し動くと胸が波打っているのが見えた。
なるほど、騎士の男達が負けるわけだ。
でも私にはそんなのは通じない。
私は遠慮なく魔女に攻撃を仕掛けた。

魔女は様々な魔法を使ってきた。
火、風、氷といった初歩的なものやレベルの高い爆裂魔法など様々だ。
どうやら魔法使いとしても相当な腕をしているのは間違いない。
それでも勝てない敵ではなかった。
魔女は明らかに弱っていた。
少しずつだが使用する魔法の頻度が落ちている。
そろそろ魔力が少なくなってきた証拠だ。

私はフェイントを掛けてわざと魔女に転移魔法を使わせた。
今までの傾向からそう遠くへ行かないのは分かっていた。
そして出現した所で魔女に足払いをした。
「しまった!?」
魔女の身体が床に倒れそうになった。
その時私は魔女の身体を支えた。
「え!?」
「これで勝負はついたのですから、これ以上怪我をさせる必要はないですよね」
そう言って私は魔女から手を離した。
魔女は驚いた表情を見せながらも床にゆっくりと倒れた。
やはり魔力が底をついていたのだろう。
最初の余裕はもはやなかった。
「さあ、観念しなさい。今降参するなら命は保証します」
私は改めて魔女に剣を向けながらそう告げた。
どんな悪党でも命までは奪いたくなかった。


「ふふふ♪」
魔女は突然薄気味悪く笑い始めた。
「な、何を笑っているのですか?」
この状況で笑い出すなんてどうかしている。
おかしくなったのか或いはまだ奥の手でも隠しているのか。
どちらにしても気味の悪い行動だ。
「やっぱりあたし、あなたのこと凄く気に入ったわ。顔だけじゃないわよ。あたしの魔法をものともしない身のこなし、そしてその気高い精神も全部よ」
魔女は戦いの最中の私の動きをずっと観察していたようだ。
次から次へと私への賞賛の嵐を送ってくる。
油断させようとしているのではないかと思う程だ。
「私を褒めても見逃しはしませんよ。さあ、一緒に来て罪を償ってもらいます」
冷静に私は魔女へそう言った。
今までにも命乞いをする悪党はいたが今回のは初めてだった。


「あんたの全てを気に入ったわよ。貰うわね、その全てを!」
その言葉と共に魔女は手をかざした。
「うっ!まぶしい!」
突然魔女の周囲に閃光が走った。
あまりにも眩しくて目を開けていられない。
完全に魔女の姿が見えなくなってしまう。
「し、しまった!?」
これでは魔女を視認できない。
どこにいるのか何をしようとしているのかも分からない。

私は焦ってしまった。
魔女が目をくらまして攻撃してくるのではと思ったからだ。
「く、くそ、目が見えない!」
どこに何があるのか魔女がどこへ行ったのかも分からない。
「時間を稼がせてもらうわ。次の魔法はちょっと時間が掛かるの。それまで大人しくしててね♪」
魔女の甘い声だけがどこからともなく聞こえてきた。
「くっ、そこか!」
声を頼りに攻撃を仕掛けたが武器はかすりもしなかった。
部屋中から魔女の詠唱が反響しているようだった。
私は完全に追い詰めたはずの魔女に時間とチャンスを与えてしまった。

少しずつだが目が見えるようになってきた。
だがまだ完全に視界が戻ったわけではない。
早くしないと魔女がどんな攻撃を仕掛けてくるか分からない。
幸いにも魔女からの攻撃はなかった。
恐らく詠唱が間に合わなかったのだろう。
その分目が見えない間にその強力な魔法で攻撃されたら危なかった。
やっと視界が戻りはっきりと周囲を見渡せるようになった。
「さあ、魔女さん。今度こそ終わりです。無駄なあがきはやめなさい」


「ふふふ、観念するのはそっちよ騎士さん。もうあたしの準備はできているわ」
「え!?」
そう言って魔女は最後の魔法を使った。
まだこんな力があったのかと思わせるほどの力を感じた。
すると床に大きな魔法陣が浮かんだ。
色々な魔法陣を見てきたがこんなのは見たことがない。
膨大な魔力を使うのは間違いない。
魔女は一体何をしようというのか。
私は魔女の残った魔力で最後の攻撃をしてくるのかと思い、いつでも避ける準備をした。

「うう・・・」
呻き声が響くと同時に身体が倒れていった。
しかし、倒れたのは私ではなく魔女の方だった。
魔女は突然床に倒れてしまった。
「え、どうしたの!?」
何かをしてくる様子だっただけに拍子抜けしてしまった。
もしかして魔力を使い果たしてしまったのだろうか。
浮かんでいた魔法陣も消えていた。


いきなりだったので何が起きたのか分からず混乱した。
倒れた魔女はぐったりと横たわり動く気配すらない。
魔力を使いすぎて気絶してしまったのだろうか。
「勝ったの!?」
私は警戒しながら魔女の様子を更にうかがった。
どうやら本当に気絶しているようだ。

魔女が目を覚まさない内に捕まえようと思った時だ。
私は何かを感じた。
それは魔女からの方からだった。
でも魔女は何かをするどころか倒れたままでいる。
もしかして気のせいだったのかもしれない。
再び魔女の方へ向かおうとした時に再び違和感を抱いた。

魔女が動いた。
しかし、起き上がる様子はない。
それでも魔女の身体はピクピクと動いていた。
すると魔女の口から光のオーブが飛び出した。
「あ、あれは何!?」

それが何なのか分からない。
こんなのは初めて見た。
動物でも虫でもモンスターでもない。
光の玉という表現が合っている気がした。
しばらくそれはフワフワと魔女の身体の上を浮かんでいた。
すると周囲をぐるぐると浮いたまま動き始めた。
その動きから何かの意志があるように見えた。
「あれは一体何なの?」

するとオーブは私の声に反応した。
動きを止めてなぜかその場で浮かび続けている。
私の様子をうかがっているのだろうか。
とりあえず私は何があってもいいように構えた。
突然もの凄いスピードで私の方へと動いた。
「な!?」
目で追うのがやっとだった。
気が付くとそれは私の側まで飛んで来ていた。
鍛え抜かれたこの脚力でもそれを避けることができないと直感した
それはスピードを落とさないまま私の顔面を目掛けて来た。
「くっ!」
私は咄嗟に頭を腕でガードした。
これで致命傷は避けられるはずだ。
しかし、当たると思った瞬間光のオーブは角度を寸前で変えた。
そしてその方向は私の口になっていた。
「え!?」
そこへ来ると思ってなかった私は口を少し開けていた。
気付いた時には手遅れだった。
わずかに開いた口の隙間から中へと飛び込んできた。
そしてそのまま入ってしまった。
「うっ!」
口を手で押えた時にはそれは既に口の中だった。
「ん!?んぐぐ・・・」
卵よりも少し大きぐらいだった。
それが今私の口の中に入っている。
咄嗟のことだったのでほとんど何もできなかった。
感触や味覚を感じる暇さえない。
少し暖かいと思ったぐらいだ。
「うっ、んん!?」
私は急いでそれを口から出そうとした。
しかし、全然出すことができない。
むしろ奥へと入ってしまう。
「うう!んんん!んぐ!」
遂に喉にまで入ってしまった。
あとはもう私の身体の中へとあっという間に入るだけだった。

「っぷは!はあ!はあ!」
やっと息を吸えるようになったが問題は全く解決していない。
あの光のオーブが私の喉を通りすぎてしまった。
つまりは飲み込んでしまったのだ。
正体の分からない物が私の身体に入ってしまった。
「な、何!?何だったの!?そ、それより吐き出さないと!」
混乱しながらもなんとか吐き出そうと咳き込んでみた。
しかし、もうお腹まで入ったであろうそれを出すのは手遅れと言ってよかった。
「うっ、こほ!こほ!」
あれから何度も咳をしたり指を喉に入れて吐き出そうとしたがダメだった。
魔女から出てきた妙なものを体内に取り込んでしまい私は完全に取り乱してしまった。
「くっ、私の中に一体何が入ったというの!?」
理解できないモノが自分の身体に入ってしまった。
私はそれが今もいるであろうお腹を手で押えた。
「一体どうなるの!?」

あれからしばらく経ったが異変はない。
今の所変わった様子はない。
魔女の攻撃魔法かと思ったがもしかしたら何かしらの呪いだったのかもしれない。
すぐに効果が表れない所からしてその可能性はある。
呪いの中には発動者の命を捧げて相手に重い呪いを掛ける者もいる。
そうだとすれば早く解呪をしないといけない。


早く屋敷から出て街へ戻ろうとした時だ。
「ふふふ、驚いているようね♪」
どこからともなく笑い声が聞こえてきた。
しかもそれはさっきの魔女の笑い方だった。
あの特徴的な笑い方を忘れるはずがない。
私はすぐに身構えて魔女がいる方に向きを変えた。
でも魔女は向こうで倒れたままだ。
あれから時間は経っていたが動いた形跡もない。
ずっと気絶したままのようだった。
「もしかして他に誰かいるの?」
魔女以外の仲間でもいるのだろうか。
周囲を警戒したが気配はなく物音すら聞こえてこない。

何かないか私は更に周りを見回した。
するとひと際大きな鏡が部屋に置かれていた。
魔女が身なりを整える為に使っていたのだろう。
私は何気なくそれを見た。
少し心臓が高鳴っている。
もしかして写ってはいけないものがあるのではないかと思った。
私は鏡を恐る恐る覗き込んだ。

ゆっくりと私は鏡に写った自分の姿を見た。
そこにはいつもの私が写っている。
何も変わった所はない。
女騎士の私がそこにいるだけだった。
「ふう・・・もう、私は何をしているの。早くここから出ないと」
少し安心できたが今はこんな事をしている場合じゃない。
私は今度こそ外へ向かおうとした。
「え、あれ?」
でもなぜか私は鏡を見つめ続けた。
どうしてこんな事をしているのだろう。
自分でも分からない。
「へえ、あたしってこんな身体になったんだ」
またどこからともなく声が聞こえた。
私はすぐに身構えて襲撃に備えた。
しかし、周囲を見回したが気配はない。
「探しても誰もいないわよ。だって私はここにいるんだもの♪」


「ふふふ、アハハ♪」
はっきりとした笑い声が響いた。
今度は絶対に気のせいではない。
やはりここには誰かいる、そう確信した。
しかし、どこにいるのだろうか。
「あたしはここよ」
笑っていたのは他でもない私だった。
笑おうと思ったわけじゃない。
それにそんな事をする必要もなかった。
「え!?何、どうして口が勝手に動いたの!?」
私は慌てて手で口を塞いだ。
おかしいと思われるかもしれないが私は本当に何もしていない。
私の意志とは関係なく勝手に動いていた。
「ど、どうなっているの!?」
口だけではないそれ以外の身体の部位も勝手に動き始めていた。
さっき口に当てていた手を離すと私はそれを見つめた。
なぜこんな事をしているのか当の本人である私にも分からない。
一つ確かなのは私以外の別の誰かが私の身体を動かしているという事だった。

「へえ、これがあたしの手なのね。ゴツゴツしてるわね。もう少し大事に扱わないとダメよ」
私は手を眺めながらそう言った。
その時にようやく私は気づいた。
もう自分で自分の身体を動かせていない事に気付いた。
もはや口だけでなく手や足も自由に動かない。
自分がしたい動きもできず自分がしたい表情もできない。
そして私は気づいた。
完全に身体が自由に動かなくなっていた。
もうこれは私の身体であって私の身体でなくなっていた。

「ふう、やっと自由に身体を動かせるようになったわ」
顔が勝手ににやけ始めていた。
私は本当は驚いているのになぜか顔は笑っている。
声を出したいのに声が出せない。
「新しい身体を手に入れたわ」
頭の中でパニックになる私とは逆に私の口からはそんな言葉が出ていた。
何が起こっているのか理解できない。
意識ははっきりとあるのに私は自分の身体を自分で動かせかった。

「これがあたしの新しい身体ね。顔立ちもまあまあね。もう少し色気が欲しいけど♪」
置いてある鏡を見ながら私はそう喋っている。
「前のあたしの身体とは違うわね。凄く動きやすいわ♪」
腕を触ったり、横を向いたり、髪の毛を触ったり、唇に触れたりした。
私が勝手に私の身体を確認している。
「素材は良いんだからもっとお洒落をしないとだめよ。こういう風にね♪」
魔女の頭から髪飾り取って今度は私の頭にそれを着けた。
外そうと思って手を伸ばそうとするが私の腕は岩のようにびくともしない。
ど、どうなっているの!?
なんで私の身体が勝手に動いているの!?
「驚いているようね。これはもうあたしの新しい身体になったよ」
その喋り方や振る舞い方で私は理解できた。
私の身体を奪ったのがさっきの魔女だと。

「さて新しい身体を手に入れたことだし今度はこっちを確認しようかしら」
そう言って服の上から胸を触りだした。
な、何をしているの!?
魔女は勝手に私の身体で胸を触り始めて私はパニックになった。
触りたくないのに手がスリスリと服の上から撫でてしまう。
今度は服の中に手を入れ胸を触りだす。
私の手が直接私の胸に触れていた。
「ふふふ、これが女騎士さんの可愛いおっぱいね。ちょっと小さいのは残念だけど、でも形と手触りの感触は悪くないわ」
私の口で恥ずかしい事を喋り続けていた。
や、やめて、触らないで、そんな所!
私は心の中でそう叫んだ。
こんな事したくないのに!
それでも魔女は私の言葉を気にすることなく触り続けた。
でも身体の方は魔女によってどんどん激しく触っていくばかりだ。

「やっぱり新しい身体で感度を確かめるのは必須よね。さあ今度の身体はどうなってるのかしら♪」
やめなさいって言ってるでしょ!
私は頭の中でこれでもかというぐらいに大きく叫んだ。
するとやっと動きを止めてくれた。
でもそれは善意でしたのではなかった。
私の顔がニヤッと笑う。
「やめないとどうなるのかしら?」
そう言って魔女は私の身体でさっきより激しく揉んだ。
んん!わ、私の身体で、か、勝手なことを、くうう!
頭の中でそう思うも言葉にできない。
歯ぎしりをしたいが歯で噛むことさえできない。
私の身体は今完全に魔女の支配下にあった。
今の私にできることは早く魔女がやめて私に身体支配権を返すことを願うしかできない。
つまり今の私には何もできなかった。

「今の私達は一心同体よ。もちろん今私を殺せばあなたも死ぬことになるのよ。それは嫌でしょ。だったら一緒に楽しみましょ♪」
その時激しい衝撃が胸から生じた。
あん!、や、やめて、そ、そこは!
今度は胸の先端まで触られた。
最悪なのは触っている手の感触も触られている胸の感触もちゃんとあるという事だ
痛みも快感も全てお互いに分かってしまう。
今の私の事は魔女に全て筒抜けだった。

「あたしと一緒に気持ち良くなりましょうよ。ほら、もっと揉んであげるわよ」
鏡には私が嬉しそうに胸を揉んでいる姿が写っていた。
違う、これは私じゃない。
「ふふふ、これが今のあなたよ。自分の顔ぐらい覚えてるでしょ」
そう言って私がしない表情をしてみせた。
気持ち良さで顔を歪めながらニヤニヤと笑っている。
私は自分のそんな情けない姿を見せられ続けた。
「ほら、気持ち良いでしょ。分かってるわよ。今は私もあなただからね」
魔女には全てがお見通しだった。
今私と魔女は同じ感覚を全て共有していた。
もちろんこの胸を触っている感触も私が感じているこの刺激も魔女は知っている。
その証拠に私が感じると魔女は私の身体でエッチな声を出し身体を震わせた。
「ん、女騎士さんの身体だとこう感じるのね。ふふふ、屈強な女騎士さんもこっちの方は弱いようね」
戦闘はともかくこっちの訓練はしたことがない。
それに私はこっちの経験は浅かった。
逆に魔女はそっちの経験は豊富らしく慣れた手つきで私の身体を触っていく。
こんなイヤらしい手つきで胸を触った事なんかない。
自分の胸でこんなに感じられるなんて初めて知ったぐらいだ。
「女騎士さんの身体はだいぶ開発し甲斐があるようね。たっぷり気持ち良さを教えてあげるわ♪」
そんなもの教えられたくない。
だが、魔女は手を緩めることはなかった。
「焦らずゆっくり気持ち良くなりましょうね」

魔女は私の着ている上半身の服を脱いでしまった。
もう上は何も身に着けていない。
胸が丸見えになっていた。
当然魔女は私の胸を見てクスクスと笑った。
「あらあら、可愛いおっぱいね♪」
そしてニヤニヤとイヤらしい笑みを浮かべて私の胸を触りだした。
「はあ、はあ、私魔女を倒しに来た女騎士だけどエッチな気分になって自慰をしています♪」
魔女は鏡を見ながら私の身体と声を使って私のフリをしながら自慰を続けた。
「ああん、私普段は真面目な女騎士だけど本当はこういうのが好きなの♪」
それは私にとって耐えがたい酷い光景だった。
私が絶対にしないようなはしたない表情を浮かべて胸を揉んでいる。
最悪なのはそれを私も強制的に見せられている事だ。
自分のこんな姿をジッと眺めさせられるなんて騎士としてのプライドが許さなかった。


「はあ、はあ、い、いい加減にしなさい。あ、あれ?喋ることができる。どうなってるの!?」
突然口を動かせるようになていた。
でも逆に口以外は全然動かせない。
「口だけは喋れるようにしてあげたわ。この方が一緒に楽しめるでしょ・・・あんん!こ、こら、やめて、そ、そんな風に触らないで!・・・ふふふ、ほら、この方が興奮するでしょ」
私は今大変な事になっていた。
同じ口から私と魔女の言葉が混ざって出てくるようになっていた。
同じ声なのに喋り方や口調が違う。

「さあ、これでいっぱい楽しめるわね♪」
私の声で嬉しそうに笑った。
この魔女は私で遊ぶ気だ。
喋る事はできてもむしろ私の情けない声が溢れ出てしまうだけだ。
しかも口を塞ごうにも口は閉じられず手も動かない。
それを分かって魔女は私に口だけ喋れるようにした。
「く、はあ、はあ、は、早く私の中から出なさい・・・ふふふ、そんな事するわけないでしょ」
素直に身体から出てくれるのならこんな事はしないだろう。
だからと言ってこのまま簡単にやられたくなかった。
無駄な抵抗かもしれないが私は必死に抗った。

「じゃあ今度はこっちを見てましょうか。楽しみだったのよね、女騎士さんの大事な所がどうなってるのか・・・や、やめて、脱がないで!」
下半身の着ている物を脱ぎ始めた。
上だけでも十二分に辱められた。
それなのに今度は下を見ると言う。
「やだ、やめて・・・あら随分嫌がるのね。なら、もう少しゆっくり脱いであげる♪」
魔女はわざと時間を掛けて脱ぎだした。
私はその間も必死で止めるよう叫び続けた。
手は動きを止めることなく衣服を脱がしていった。
表情もずっと笑みを浮かべている。
やがて装備を外し下着も脱いでしまった。
もう私は裸になっていた。

「ふふふ、これがあたしの新しい身体ね・・・これは私の身体よ!あなたのじゃない・・・いいえ、これはもうあたしのモノよ」
鏡の前でニヤニヤと腰に手を当ててエッチなポーズを取った。
ウインクをして投げキッスをした。
「うう、よくも私にこんな事を・・・ふふふ、嫌がるあなたの身体でどんどん裸になるの興奮しちゃった」
敵である魔女に私の全てを見られている。
もちろん大事な所も全てだ。
私は悔しくてたまらない。
でもそれを魔女は喜んでいた。
私の身体を奪って私がしない事をして私が困っている所を見て喜んでいる。
「み、見ないで!・・・へえ、これがあなたのなのね。全然使ってないんでしょ。凄く綺麗だわ。これからはあたしのだけど♪」
指で隙間を開いて興味深そうに中を見た。
自分でも見たことはほとんどない。
それを私は今日初めて会った魔女に無理矢理一緒に見せられていた。
これが恥ずかしくないわけがない。
「じゃあ、入れるわよ・・・ああ、や、やめて!」
私の指が私の股間の隙間に入っていく。
引き抜きたい、でも私の指がぎゅっと中に押し込まれていくだけだ。
「ふふふ、興奮していたのかしら。もう濡れ濡れね・・・うう、は、早く、出して、奥へ入れないで、ああ!」
それは私の意志とは逆に奥へ入っていった。
もう指の根本まで入ってしまった。
そして魔女は私の手を無情にも動かし始めた。
「ああ、き、気持ち良い、ああん、もっと動かしちゃおうかしら・・・ああ、やだ、は、早く、ぬ、抜いて!」


「やめて、こんなの、いや・・・これが女騎士さんのオナニー姿ね。とってもエッチでイヤらしいわ♪」
見たくない、自分のこんな姿を!
脚を大きく開いて股間に手を入れて嬉しがっている。
そして私が絶対言わない卑猥な事を喋っていた。
聞きたくなくても耳がこの言葉を聞いてしまう。
「はあ、はあ、ああ、いや、こ、これ以上されると私・・・そろそろいくのかしら、早く一緒にいきましょう。とっても楽しみだわ♪」
魔女と一緒にいきたいわけがない。
でも身体中がもう興奮しきっていた。
彼女の言う通りもうすぐいってしまいそうだ。
それなのに魔女はとどめとばかりに指を激しく動かした。
「や、やめて!は、早く私の身体から出ていって・・・ざ〜んねん、これはもうあたしの身体よ。これからずっとね♪」
私の声で耐える言葉と嬉しそうにする言葉が入り混じり続けた。
しばらくするとそれさえなくなってただの喘ぎ声だけが聞こえるようになった。
「あ、ああ!んん!」
自慰をしながら喘ぎ続けてしばらくになる。
もう私が言っているのか魔女が言っているのか分からない。
私が言っていても不思議じゃない程の気持ち良さになっていた。
汗が大量に出ている。
それに股間に入れた指を動かしている実感もある。
もう私は変になっていた。
「はあ、はあ、いく、いっちゃう・・・ふふふ、いいわ。一緒にいきましょう♪」

もう動いているのは指だけじゃなかった。
足がパタパタと上下に揺れ動いた。
背中も前後に揺らしていた。
その間にも私と魔女は快感を得ていた。
この感覚を魔女も感じていると思うと情けない。
私はこんな淫らな女じゃない。
だが、これはもはや精神力でどうにかなるという状態ではなかった。
私はもう魔女と共に快楽を感じるしかなかった。
「うう、い、いく!」
私の身体はもう限界を迎えていた。
もう既に我慢して耐えられるような状態じゃない。
全身の血流が沸騰しそうだ。
「んん!くく・・・ふんん!」
激しい衝撃と共に私の股間から液が溢れ出た。
私と魔女の声が同じ口を通して同時に鳴り響いた。
それは私と魔女は文字通り一緒にいってしまった事を示していた。

「はあ、はあ、わ、私の身体で、な、なんて事を・・・ふふ、思ったより感じちゃった」
床に倒れながら私と魔女はそんな言葉を口にしていた。
そして魔女は中に入れた私の指を出してペロペロと舐めだした。
もちろん私はそんな事はしていない。

やっと身体が落ち着いてきた。
相変わらず私の身体は魔女に主導権を奪われたままだ。
しかもまた喋れなくなっていた。
これから一体どうなってしまうのだろうか。
「さて、もっとあなたと一緒に楽しんでいたかったけどそろそろお別れね」
何をするの!?
私の身体を奪った魔女が勝手に動き出した。
「動けないと不便でしょ。あなたには新しい身体をあげるわよ」
私の身体で魔女はどこかに歩き出した。
向かった先はもはや力なく横たわっている魔女の元だった。
今は魔女の魂が抜けているせいか抜け殻の状態になっている。
「そうよ、これがあなたの新しい身体よ」
それって、まさか!?
「さあ、新しい身体に入りなさい。女騎士さん♪」
そう言って魔女の顔にどんどん近づいて行った。
魔女になんかなりたくない。
私は必死で抵抗しようとした。
でも身体を動かせない私にはただ見守ることしかできなかった。

そう言って抜け殻になっていた魔女の真っ赤な唇にキスをした。
唇を重ねているだけじゃない。
舌を魔女の口に入れると更に中で動かしていた。
勿論その感触は私にも伝わってきた。
うう、こんな事したくないのに・・・
今私と魔女の口は完全に繋がった。


すると私の視界は突然変わってしまった。
気が付くと真っ暗な場所にいた。
やがて私は何かに送り込まれるように移動し始めた。
少し周りが明るくなったかと思ったがすぐにまた暗くなってしまった。
そして私は自分がどこにいるのか気づいた。
私は自分の口から魔女の口に入っていた。
今私は自分の身体から押し出されてしまった。
重なった口を通じて私は私の身体から魔女の口へと入ってしまった。
自分の身体から離れていくのが分かった。
私はなんとか戻ろうと魔女の口の中でもがいた。
でも身体が上手く動かせない。
遂に魔女の喉を通ってしまった。
私は魔女の身体へと流し込まれていった。
まるで悪夢を見ているかのようだった。
夢なら目が覚めて欲しい。
そう思いながら意識を失っていった。


「ん?」
次に意識が戻った時だ。
上手く呼吸ができない事に気付いた。
私は今何かで唇を塞がれていた。
「んん!?」
辛うじて鼻から空気を吸っている。
すると何かの匂いを嗅ぐことができた。
とても甘い香りだ。
私はゆっくりと目を開けた。
信じられない光景を見てしまった。
なぜなら目の前にあるのは私の顔だったからだ
私の口を塞いでいたのは私の唇だった。
まだ気が付いたばかりで頭がぼんやりしている。


眠いのに無理矢理起きて寝ぼけているような感覚だった。
私はなんとか現状を理解しようとさっきまでの事を思い出そうとした。
ゆっくりとだが頭が覚醒していった。
私は自分自身とキスをしていた。
「んん!?っぷは!はあ、はあ!」
慌てて目の前の自分を引き離してやっと呼吸ができるようになった。
しかし、その瞬間私は足元から崩れるように倒れてしまった。
「うう、何これ!?う、上手く立てない?」
身体が凄く重たくそれを支えることができなかった。
床に倒れてしまったまま動けなくなってしまった。
いや意識をすれば多少は動かせる事はできる。
しかし、まるで力が入らなかった。
これも魔女の魔法のせいかと思った。

そういえば魔女はどうなったのだろうか。
そこでさっき私は自分とキスをしている事を思い出した。
あまりの突然の事だった。
その人物はまだ近くにいる。
「目が覚めたかしら。女騎士さん、いや今は魔女さんというべきかしらね」
その声の主をよく見ようとするも起き上がれない。
這いつくばって顔を上げるのがやっとだった。
「あ、あなたは!?」
現れたのは私の姿だった。
「どうして私がそこにいるの!?」
私と瓜二つの女性がそこにいた。
身に着けている服も剣も私のだった。
そして、その顔は私そのものだ。
そこには私の身体を奪った魔女がニヤニヤしながら私のことを見下ろしていた。
私が絶対にしない人を見下したような視線だった。
「ふふ、この身体だと前のあたしは凄く軽いわね。よーく見なさい、これが今のあなたよ♪」
私は抱えられて無理矢理鏡見せられた。
それは私にとって悪夢の続きのようだった。

短い髪は金色に輝く長い髪になっている。
着ている服は魔女が着ていた衣装だ。
私がここに来た時に装備していた甲冑はなく薄く露出度の高い魔女の服装になっている。
手には真っ赤なマニキュアが塗られ
足にはいかにも歩きにくいであろう黒いロングブーツ
そして大きな胸の谷間が見えた。

「こ、これが私!?ど、どうなっているの!?な、何なのこの声は!?」
どれだけ喋ってもいつもの私の声が出てこない。
まるで別人のような声になっていた。
「これで分かったかしら。あたし達は入れ替わったの。だから今日からあたしが騎士であなたが魔女になるのよ」
そう言っているのは私の身体だ。
今の言葉が本当なら中身は魔女という事になる。
そして私は・・・
「ふ、ふざけないで!私が騎士であなたが魔女よ!こんな事が・・・え、バランスが!?」
抱えられた私はそれを振りほどいたのはいいもののなぜか立つことができなかった。
「残念だけどあたしの身体全然体力ないのよね。それなのにさっき久しぶりに動いたでしょ。もう限界だったのね」
私の身体を奪った魔女がにやにやと見下ろしながらそう言った。
彼女の言う通り今の私は激しい運動をした後のような感じだった。
力が入らない、身体中が痛い。
鍛錬を続けている私にとっては長い間無縁のものだった。
久しぶりに味わった。

「それじゃあ、そろそろお別れね」
「え、どこへ行くの!?」
まさか自分の身体で悪事を働くつもりではないだろうか。
今の私の身体なら魔法は使えないはずだが鍛えられた身体がある。
それに女騎士としての立場もある。
「決まってるじゃない。あなたの代わりに騎士団に帰るのよ」
魔女が騎士団に何の用があるというのか。
「まさか騎士団を私の身体で襲う気じゃ!?」
「そんな物騒な事はしないわよ。それに今はもうそんな事をする必要もないしね。とりあえず騎士団に戻ったら魔女には逃げられちゃったって報告しようかしらね。それとも魔女の居場所が分かったと言って応援を送ってもらうのも悪くないかも♪」
それを聞いて私は魔女の狙いを理解してしまった。
「そ、それってまさか!?」
「ふふふ、そうよ、早く逃げた方がいいわよ。さもないと怖い騎士の男の人達に捕まっちゃうわよ♪」
今の私は正真正銘魔女の身体だ。
という事は騎士団が私を見れば何をするのか明白だろう。
「じゃあ、そろそろお別れね。これからは魔女として頑張ってね。あら、この身体じゃ転移魔法は使えないのね。仕方ない久しぶりに歩いて移動しようかしら」
私の身体を奪った魔女は意気揚々と立ち去ろうとした。
このままでは私の全てが彼女のモノになってしまう。
私は最後の力を振り絞った。
「はあ、はあ、ま、待ちなさい!私の身体を返しなさい!」


「へえ、やるじゃない。普通の人間ならしばらくは立つこともできないのよ」
正直足元がガクガクしていた。
フラフラだったがそれでも立った。
正直これでは戦いにはならないのは分かっていた。
でもこのまま行かせられない。
「ふふふ、良い表情ね。思った通りやっぱりあなたの事は気に入ったわ」
「そんな言葉は要らない。そ、それより早く私の身体を元に、うぐ!?」
話をしている最中に私は軽く足払いをされてしまった。
今の私にとってはそれが十分すぎるほどに効いた。
ロングブーツの不安定な踵を狙われたからだ。
当然私はバランスが取れなくなった。
私はまた床に倒れそうになった。

視界が一気に反転した。
しかし、私に倒れた衝撃は起こらなかった。
「え!?」
「無理をしちゃダメよ。今のあなたはか弱い魔女なんだからね♪」
なんと私は彼女にお姫様抱っこをされていた。
「なっ!?」
「怪我がなくて良かったわ。折角だから最後によくお互いの顔を見ておきましょう。これでお別れなんだから」
そう言って魔女は私の顔でニコッと笑った。
自分の顔のはずなのに一瞬ドキッとした。
「ふふふ、可愛い魔女さんね♪」
「んん!?」
私は自分自身にお姫様抱っこをされたまま更にキスをされていた。
自分の顔が目の前にあった。
しかし、この体勢では身動きが取れない。
その上今は慣れない魔女の身体で自由がきかない。
私はただキスをされ続けていた。
できる事といえば多少身体を揺らすぐらいだ。
「んんー!」
私は魔女の喉でそう唸りながらキスをされ続けていた。

しばらくすると口の中に舌が入ってきた。
できれば噛んでやりたいと思った。
やろうと思えばできたはずだ。
でもそれはできない。
なぜならそれは私の舌だ。
噛んだところで傷つくのは私の身体だ。
身体を奪われた上に人質に取られている気分だ。

「これで私のことは忘れないわね♪」
長いキスを終えて私の身体になった魔女はそう言った。
そもそも忘れられるはずがない。
自分の身体を奪われた挙句にキスまでさせられた。
一生忘れられない。
「お、覚えてなさい!」
私は負け犬のようにそう言うしかできなかった。
「じゃあね、淫乱な魔女さん。縁が会ったらまた会いましょう♪」
そう言って私の頬にまたキスをした。
私の身体になった魔女は立ち去って行った。
「うう、ま、待ちなさい!」
私は魔女の身体で、魔女の声でそう叫ぶことしかできなかった。


やっと思い通りに身体を動かせるようになってきた。
それでもまだ前の時のように上手く力が入らない。
まっすぐに歩くだけでもう相当に大変だった。
一歩一歩をしっかり歩かないとすぐ転んでしまいそうだ。
早く追いかけないとおけないという焦りから何度も転んでしまった。
幸い屋敷の中は絨毯が敷かれており怪我をすることはなかった。

私はこの状況を必死で理解しようとした。
身体を入れ替える魔法なんて聞いたことがない
私自身がそうなのだから他の人がどう思うかは想像に難くない。
この姿で騎士団に戻ったらあっという間に手配中の魔女として捕まるだろう。
だとすれば私の身体を奪った魔女に元に戻させるしか方法はない。


「いたた・・・」
もうこの身体で何度転んだか分からない。
その度に魔女の身体で呻いた。
でもここで諦めたくなかった。
私は魔女の身体で何度も立ち上がった。
それにしてもこの身体は本当に動きにくい。
この身体に慣れてないのもあるが前の身体と今の魔女の身体ではバランスが全然違った。
特にこの胸が原因だ。
大きいだけでなく重みがある。
そのせいで前の私と比べて上半身と下半身のバランスが大きく変わってしまった。
それに加えてこの歩きづらいロングブーツだ。
私は今まで戦いに備えて動きやすい履物を選んできた。
それなのにこれは全くと言っていい程動きにくかった。
踵が高すぎる。
「どうして私がこんなの履かないといけないのよ!?」
いっそ脱いで捨ててしまおうかと思った。
でもすぐにその考えはやめた。
裸足なら確かにこの絨毯を敷き詰めた屋敷では歩きやすい。
しかし、この屋敷の外はどうか。
ずっと整備もされていない道を歩き続けないといけない。
そうなれば流石に裸足は無理だ。
元の私の身体ならそれでも問題ないだろう。
魔女の身体は貧弱で足も例外ではない。
そんな道を履く物もなく歩いたらボロボロになってしまう。
そしてそれによって苦痛を味わうのは魔女ではなく私だけだ。

「はあ、はあ、やっと出られた・・・」
屋敷の中は広く外へ出るだけでも一苦労だった。
そして私が屋敷から出て少しすると屋敷は跡形もなく消えてしまっていた。
後になってもう少し中で休んでおけば良かったと思えた。
屋敷の外は今の私にとって過酷な世界だ。
ここは人里離れた場所、周りには何もない。
ここへ来るまでも大変だった。
しかし、今度はそれを魔女の身体で戻らないといけない。

「はあ、はあ、疲れた・・・」
屋敷を出てそれほど歩いていないのにもう疲れてしまった。
足元がガクガクする。
息も上がってしまいもう動けない状態になっていた。
「はあ、はあ、し、仕方ない、ここで休もう」
丁度良い木陰があったのでしばらくそこで休憩する事にした。

無駄な時間を過ごしたがやっと体力が戻り始めていた。
そろそろ出発しようかと思っていた時だ。
近くで何かが動く気配がした。
私は警戒した。

草むらから現れたのはスライムだった。
「なんだスライムか。ほら、あっちへ行きなさい」
それは魔物の中でも最弱と呼ばれる存在だった。
騎士どころか村人でも倒せる程弱い。
一瞬凶悪なモンスターにでも襲われるのかと思ったので驚いてしまった。
私は手でシッシッと追い払おうとした。
いつもならこれで逃げてくれる。
しかし、今日は向こうへ行くどころかこっちに迫ってきた。
ズルズルと身体を地面に這わせながらこっちへとやって来る。

あいにく今は剣は持っていなかった。
代わりに手にあったのは魔女が使っていた杖だけだった。
これだけが唯一の武器だ。
でもスライム程度ならこれぐらいで十分だ。
「仕方ない、ていっ!」
私は思いっきりスライムを杖で殴った。
「バシッ!」と鈍い音が響いた。


「さあ、そろそろ行きましょうか」
私は気を取り直して再び歩きだそうとした。
しかし、スライムは倒れていなかった。
気付いた時には遅かった。
その時私はスライムに背を向けてしまっていた。
倒したと思って油断してしまった。
「きゃあ!」
スライムに飛びかかられてしまった。
いつもなら避ける事もできただろう。
しかし、今の私は魔女の身体だった。
しかも動きづらいロングブーツを履いている。
目で追う事はできても身体がついてこなかった。

背中にスライムが乗ってしまった
気持ちの悪い感触が背中全体に広がった。
それ以上にスライムの重さで私はそれ以上支えられなかった。
「い、いや!お、重くて、も、もうダメ・・・」
少しの間耐えようと頑張ったが魔女の軟弱な身体では時間の問題だった。
ただでさえこの大きな胸と歩きにくいロングブーツのせいでバランスが上手く取れなかった。
今はそれにスライムの体重がのしかかってきた。
ロングブーツの高いヒールに乗った脚ががくがくと震えている。
スライムの重さに耐えられず地面へ押し倒されてしまった。
「くっ!まさかスライムなんかに!」
私は急いで起き上がろうとした。
しかし、ロングブーツで立ち上がるのは今の私には至難の業だ。
それに慣れない魔女の身体という状況が加わっている。
そして焦る私にスライムは更に覆いかぶさってきた。
「は、離れなさい!」
筋肉のない魔女の腕では押しのける事さえできない。
それにヌルヌルしたスライムの身体を上手く掴むこともできなかった。
私が動いたりすればするほど余計にスライムと密着してしまう
現状は何も良くなかった。
ヌメヌメとした気持ちの悪い感触が私の身体の上を這っていく。

「や、やめて、は、離れて!」
無理矢理引き離そうとしたがスライムの表面がヌルヌルとしていて上手く引き離せない。
そうしている間にもどんどんスライムは私の身体に絡んでくる。
「し、しまった!?」
液状のスライムの身体が腕や脚に巻き付いてしまった。
振りほどこうと何度も手足を動かしているがびくともしない。
ほとんど身動きが取れなくなった。
私はスライムに捕まってしまった。

スライムが人の命を奪うのは稀だ。
だからよっぽどな事がない限り助かるはずだ。
しかし、今私は魔女の身体にされているという状態になっている。
正直今の私ではスライムに命を奪われても不思議ではない。
スライムに命を奪われた事件もゼロではない。
私はなんとかスライムから抜け出そうともがいた。
すると私の動きに比例するかのようにスライムが身体を締め付けてきた。
「う!こ、こんなスライムなんかに・・・・」
それほど強い力ではないが私を拘束するのには十分だった。
私の身体に絡んだスライムがウネウネ動いている。


するとスライムにまた動きがあった。
身体の上を動いていくのが分かった。
やっと離れてくれるのかと思ったがどうやらそうではない。
「ちょ、ちょっと!?やだ、どこに入ってるの!?」
なんと私の着ている服の中に入ろうとし始めていた。
身体が柔らかくてほぼ液状のスライムにとっては服の中に入るのなんて簡単だ。
ましてや色々な所が露出している魔女の衣装はスライムにとって抜け穴だらけだ。
「ああ、こ、こら、や、やめなさい!」
モンスターに言葉が通じないのを分かっているがやめるように呼び掛けた。
当然スライムは私の言葉なんかに耳を傾けることなく服の中に入り込んでしまった。
「や、やめ、そ、そんな所に入らないで!」
魔女の服で大きく開いていた胸元からスライムが入りだした。
掴もうとしたがヌルヌルして捕まえることができない。
次の瞬間には私の手からあっさりと離れて服の中に入り込み胸の上に移動されていた。

「は、離れて!」
私の胸はほぼ完全にスライムに密着され包まれてしまった。
大きな魔女の胸の上を這っているのが分かる。
私は魔女の身体で再度スライムを引き剥そうとした。
「うう、いい加減に離れなさい!こ、この!」
更には魔女の拳をお見舞いしてやった。
だが手ごたえは全く感じられない。
恐らくだが効果は全くなかった。
逆に私の動きに反応してしまったのかスライムは大きな胸を締め付けてきた。
「んん!?」
声を出したはずの私自身驚いたぐらいだ。
突然身体に衝撃を受けた。
身体がピクッと反応する。

そういえば昔違法な娼館を調べていた時にスライムを娼婦や客に使っているのを見たことがあった。
あの時はただの変態のお遊びだと思っていた。
私は今彼らのしていた事の意味を知った。
「く!うう、こ、これをしていたのね」
そして今度は私が彼らのようにこれを味わうことになった。
スライムの感触と動きを敏感に察知する魔女の胸がジンジンしてきた。
「くうう、む、胸が!?」
胸の奥が温かくなってきた。
スライムの細かな動きと締め付けが魔女の胸を刺激してくる。
信じがたい事に私は魔女の身体で感じてしまっていた。
魔女の身体で感じるなんてごめんだ。
しかし、私がちょっとでも動けばスライムも一緒になって動いた。
「こ、この!」
それでも無駄だと分かっていても動いてしまう。
諦めるなんて私のプライドが許さなかった。
「く、くそ!離れなさい!」
いつもの身体なら簡単に引きはがせただろう。
でも今の私は非力な魔女の身体だ。
この細く筋肉もほとんどない腕ではスライムはびくともしない。
しかも、それがスライムの行動を促してしまった。
胸に巻き付いたスライムが強く締め付けてきた。
「くうう、ちょ、ちょっと!?」
胸がぎゅっと圧迫されてしまった。
苦しいわけじゃない、その逆だった。
「んん!?む、胸が!」
しかもぷるぷるとスライムが揺れるとその振動が胸に伝わってきた。
締め付けと振動が同時に襲い掛かり胸が敏感に感じ取ってしまう。

「ああ、ス、スライムごときに、わ、私が、ああ、うう!」
今の私はスライムにいいようにやられているだけだった。
魔女の胸でなんか感じたくないのに快楽を得てしまう。

すると上半身にいたスライムが動いた。
身体の柔らかいスライムはどうやら私の下半身に身体を伸ばしているようだ。
「はあ、はあ、ちょ、ちょっと、今度はどこに行くの!?」
そこで私はスライムが何に興味を持ったのか理解してしまった。
何とスライムは私の股間を目指していた。
私のお腹から下に向けてスライムが移動していく。
「だ、だめ、そっちはダメ!」
私の期待も空しくスライムはそこに興味を持ってしまった。
股間の周囲でプルプルとスライムが動いていた。

「や、やだ!は、早く、そこから出て」
遂に服の中でもぞもぞと動き始めた。
その瞬間下半身から今まで感じた事のない衝撃が響いた。
「ああ!だ、だめ!そ、そこだけは!」
ぐいぐいとスライムが下半身で動いている。
しかもよりによって股間でそれをされていた。
「や、やめて、そ、それ以上動かないで、んああ!」
胸とは違う刺激を与えられていく。
もしかしたらスライムは湿っている場所に移動しているだけかもしれない。
だとしてもそれが股間を刺激しているのは間違いなかった。
例えるなら股間を舐められているような感覚だ。
「い、いや、私、スライムなんかに、こ、こんな事を!?ぐっ、んんん!」
次第に全身から力が抜けていった。
もう力を込めても入らない代わりに身体中に電気が走ったような感覚に陥った。
「うう、ふんん!ああ、う、動かないで、こ、これ以上は、あ、ああ・・・」
あまりの刺激で抵抗できなくなっていった。
与えられ続ける快楽で段々と頭がぼんやりしてきた。
全身が温かくて気持ちが良い。
嫌だったスライムのヌルヌルでさえ快感になっていた。

「あっ、ああ、わ、私、魔女の身体で、感じたくなんかないのに、うう・・・」
スライムが股間でウネウネと動いていた。
感じたくなくてももう存分に感じさせられていた。
耐えようとしてもそれに関係なく魔女の身体が気持ち良くなってしまう。
「だ、だめ、感じちゃダメなのに、ああ、どんどん、気持ち良くなっちゃう・・・」
魔女の身体で感じる事自体に嫌悪感がなくなっていく。

私はもう呼吸すら上手くできず肩に力を入れて激しく息を吸っている状態だった。
「はあ、はあ、ふうう、うう、ああ!」
どれぐらいこの身体でスライムに感じさせられたであろうか。
しばらく私はスライムから快感を与えれ続けた。
しかもその刺激は少しずつ身体の奥へと移動していた。
スライムが動くと中がぎゅっと刺激される。
「ああ、うう!あ、うう!」
これが永遠に続くかと思った。
しかし、次第に魔女の身体に変化が起こり始めた。
魔女の身体がいきそうになっている。
私は身体を震わせながらそれに気づいた。
股間の奥から何かが溢れるような気がした。
「や、やだ、私、魔女の身体でいきたくないのに、ああ!」
私の言葉をスライムが理解できるはずもない。
「い、いっく、いっちゃう!」
魔女の身体はもういく寸前だった。
股間からは湿り気どころか液が漏れ始めていた。
「ああー!」
魔女の悲鳴のような声がこだました。
私はスライムに拘束されながらいってしまった。


その時頭の中に変化が起きた。
ぼんやりとした頭で何かが見えた。
誰かがそこにいる。
そして何かを言っていた。
『スライムの弱点は火よ』
初めて聞く声だった。
でも不思議と懐かしい声に思えた。
その言葉は私を突き動かした。
そうだ、スライムの弱点は火だ。
近くに火もなければ火種になるようなものもなかった。
『さあ、火をイメージしてやってみなさい』
私は無意識の内に火を思い描いていた。
手の中が温かく、そして熱くなっていった。
それは火の魔法だった。
「ど、どうして私が魔法を!?で、でもこれで!」
スライムは火が弱点のはずだ。
すると突然現れた火を怖がったスライムが身体から離れた。
そして梃子でも動かなかったスライムが逃げ出そうとしている。
今がチャンスだ。
私は逃げようとするスライムに手をかざした。
「火を放て!ファイア!」
私はそう叫んで最後の力を振り絞り手のひらに現れた火をスライムに向けて放った。
すると手のひらの炎はスライムを目掛けて飛んで行った。
辺りに大きな衝撃と爆音が響いた。
土煙がなくなるとそこではスライムが跡形もなく吹き飛んでいた。
今度こそ本当に倒せたようだ。
「はあ、はあ、や、やった・・・」
いった直後という事もありもう足元は既にがくがくになっていた。
そしてペタンと地面に座り込んでしまった。
「はあ、はあ、危なかった・・・」
私はベトベトの身体のまましばらく動けなくなってしまった。


「うう、汚い・・・」
身体中がスライムの粘液だらけになってしまった。
魔女の服はもうずぶ濡れだった。
髪の毛や下着までスライムの粘液が付着して気持ち悪い。
ロングブーツの中にまで入り込んでいる。
歩くたびにグチャグチャしたものが足全体に絡みついた。
長手袋の中も同じ状態で腕を振るとベトベトの感触が腕に当たった。
できる限り手で取り除いたがそれでも全部は無理だ。
気持ちが悪いというレベルではない。
これに魔女の股間から出たあの液が混ざっていると思うと余計に嫌だった。
「私、そういえばしちゃったんだ。この身体で・・・」
ヌルヌルとしたスライムに身体中をまさぐられた時の事を思い返してしまう。
魔女の身体で、しかもスライムによっていかされてしまった。
最初は嫌な記憶として残るかと思った。
でも思い返すとあの気持ち良さまで蘇ってきた。
そして身体がまた震えた。
「ちょっとは気持ち良かったかな・・・」
取り敢えずはそう思うことにした。


その後もベチャベチャと嫌な音を立てながらしばらく歩き続けた。
すると運よく近くを流れている川を見つけた。
流れも穏やかで水も綺麗だ。
今の私にとっては救いの神に思えた。
早くこのスライムの粘液を洗い落としたかった。

太陽の光に照らされて水面が鏡のようになっている。
私はゆっくりと覗き込んだ。
「はあ、やっぱりこれが私なんだ」
川の水面にはスライムの粘液で全身がベトベトになった魔女が写っていた。
同じ女性とはいえ全然違う身体になってしまった。
その上立場も全く逆だ。
私は魔女を追う女騎士だったはずなのに今は騎士団から追われる魔女になってしまった。
しかもこんな恥ずかしい魔女の格好までしている。
更にはその姿でスライムに襲われてこんなにベトベトになっていた。
今日は私にとって本当に酷すぎる一日だ。



私は周囲を何度も見回した。
どうやら近くに人はいないようだ。
それにここは人里離れた場所で滅多に人は来ないはずだ。
一度大きく深呼吸した。
そして意を決して私は魔女の着ていた服に手を掛けた。
やっと魔女の服とこのベトベトした粘液から解放される。
それでも私は脱ぐのをためらってしまった。
「ぬ、脱いでいいのかな?」
水面には綺麗な魔女が不安そうな顔をしていた。

着ている物を全て脱げば当然裸になる。
元々露出の多い格好だったが辛うじて大事な所は隠れていた。
それが全部見えてしまう。

もちろん私は他人の裸に興味はない。
しかも同じ女の身体だ。
でも今はどう否定しようが私は魔女という別人の身体になっていた。
今の自分の身体がどうなっているのか興味がないかと言えば嘘になる。
服を着た上では何度もこの身体を確認してきた。
でも今度は魔女の普段は絶対見られない所まで見てしまう。


そもそも魔女が自ら私と身体を入れ替えたのだ。
それなのになぜ私が魔女の身体に気を遣わないといけないのか。
なりたくて魔女の身体になったわけでもないし着たくてこんな格好をしているわけでもない。
少なくとも自分に邪な考えはない。
仕方なく汚れた服を脱いで洗うだけだ。
そう、自分に言い聞かせた。

ベトベトになった魔女の服は本当に汚かった。
よくさっきからこんな格好でいられたと思う。
早く脱ぎたかったが身体にベタベタとスライムの粘液が張り付いて中々脱げない。
恐らくこの服は魔女のボディラインにピッタリのサイズだったのだろう。

私は長手袋の端を無理矢理引っ張った。
そうしないと腕が出て来ない程中でくっついていた。
生地が破れても良いと思うぐらいに力を込めたが意外と丈夫だった。
すると中から綺麗な腕と手が出てきた。
ロングブーツからも細長い脚が現れた。
この手足だけで前の私のと違うことが分かった。
「綺麗な手・・・」
少しずつ露わになっていく魔女の身体に私はドキドキしていた。
いけない事をしているように思えた。
いわば私は他人の身体の服を脱がしている状態だ。
「これは仕方なくやってるだけ・・・」


しかもやたら脱ぎ辛いので苦労した。
普段ならもっと脱ぎやすいのだろうが少なくとも今回は力もそこそこ要した。
そもそも私はこの魔女の服の着方はもちろん脱ぎ方も知らないのだ。
でもやっと出てきたその美しい身体を見ると脱いだ甲斐があると思えた。
魔女は毎回この服を脱ぐときにこんな苦労をしているのだろうか。
そうまでしてこの格好になりたいと私は思わなかった。



あと残すは下着だけとなった。
とりあえず私は魔女の服から解放された。
少しだけ心が晴れた気がした。
着心地の悪い服がなくなったおかげか妙な解放感があった。
私は下着姿のまま魔女の服を洗った。
魔女の服を洗うのはまた一苦労だった。
「はあ、はあ、何で私が魔女の服を洗わないといけないの!?」
この細腕で魔女の服をゴシゴシと洗う必要がある。
しかも洗濯の道具は一切ないから本当にこの腕だけしかない。
終わった頃にはヘトヘトになっていた。
「はあ、はあ、やっと終わった・・・」
明日はきっと筋肉痛になっているだろう。
山積みの問題の中で些細な事だが。
次は自分の身体を洗う番だ。
いよいよこの時を迎えてしまった。



下着だけとはいえこのままスライムの粘液でベトベトのままなのは更に嫌だった。
「早く脱いで終わらせよう」
私は胸と股間に身に着けていた下着を脱いでいった。
どちらも辛うじて大事な部分を隠せる程度の薄いものだ。
それでも有るのと無いのとでは大違いだ。
私はそれらをゆっくりと外していった。
周囲には誰もいない、それにこれは自分の身体でなく魔女の身体だ。
それでも私の中の羞恥心が勝ってしまっていた。
こんな所で服を勝手に脱いだ上に私は魔女の生まれたままの姿を見ようとしている。
そう思うと緊張が増してしまった。
自分でもドキドキしてしまう。
まだ自分の裸ならもう少し我慢できたかもしれない。
今は他人の身体の裸を見てしまうのだから無理もない。
たとえそれが憎き魔女の身体であってもだ。

豊満な魔女の胸に着けられた派手なブラジャーを外した。
すると胸が解放されて一気に楽になった。
同時に重力が加わり重みを増した。
上半身の肩がやたらと重くなった気がした
下着の有無でここまで違うとは思わなかった。
「うう、大きすぎ。そ、それに凄く重い。こ、これが魔女の胸・・・」
下を見ると魔女の大きな胸が露わになっている。
その大きさは嫌でも目に入り、更にそのせいで足元が見えない。
服を着ている時でも気になっていたが今はその比ではない。
自分の胸とは全然違う。
色も形も大きさも重さも全部と言っていい。
そして私は下半身の下着にも手を出した。
正直胸のせいで見えなかったが股間が空気に触れて冷たくなるのを感じた。
「うう、早く入って洗おう・・・」
川の中へとゆっくりと入って行った。
最初は少しひんやりと感じたが腰まで入ると心地よく感じることができた。
川底もそれほど深くなく足で立てる
屈んで肩まで浸かると凄く気持ち良かった。
「ふう、冷たくて気持ち良い」
今の私にとって気持ちの良い冷たさだった。
火照っていた身体がひんやりとした冷たさに包まれていく。


水の中に潜って顔を洗った。
この手に触れているのは魔女の顔だ。
肌は私のよりも柔らかい。
鼻は私より少し高く唇も少し細長い。
少し触っただけでも前の自分の顔と違うことが分かった。




手で擦っているとスライムの粘液が落ちてスベスベの肌になっていく。
身体が綺麗になっていくのが実感できた。
また川の水流で身体に付着していたスライムのベトベトが流れ落ちていき全身が洗われる気分だった。
それが凄く嬉しく感じられた。
私はしばらく手で身体を洗いながら水浴びを楽しんだ。
石鹸や身体を拭ける衣でもあれば良かったのだが贅沢は言ってられない。
水の中で身体を擦ると凄く気持ちが良い。
この魔女の肌は本当に綺麗だ。
日焼けはなくシミもない。
そして全身がスベスベだった。
つい触って前の自分の身体と触り比べてしまった。
ゴツゴツとした筋肉がないから全身が柔らかい。
胸ばかりに目が行っていたがお尻も大きかった
私はそれを丁寧に洗っていった。
丸みを帯びたそのお尻も相当綺麗だった。
以前の自分の引き締まったお尻とは違う。
柔らかくてフワフワしていた。
胸とも違う触り心地がした。
私はスタイルの良い魔女の身体を実感した。
「これが魔女の身体なのね」

長い髪の毛が水中で揺らいだ。
金髪がキラキラと輝いていた。
「この長くて綺麗な髪も私のなんだ」
水の中でサラサラと波に揺られている。
私はそれを手で撫でるように洗った
この綺麗な髪を手に取るともう鬱陶しいとは思えなかった。
街の女性が髪を伸ばしている理由が少し分かった。
最後に手を伸ばしたのは股間だった。
できればあまり触りたくなかった。
しかし、スライムに奥まで入られたので念入りに洗いたかった。
魔女の股間とはいえ今は認めたくなくても自分のでもある。
それが少しでも汚れたままなのは嫌だった。

私は指を入れてそこを洗った。
エッチの為ではない綺麗にする為だ。
でもこの身体はそれを快感の為だと認識していた。
「んん!」
気持ち良くなる必要はないのに勝手に感じてしまう。
もう少しで終わる。
私はなるべく早くすませようと奥へ入れて力を入れた。
すると頭に何かが思い浮かんできた。
それはスライムの時にも見た光景だった。
そこでは幼い魔女が魔法の練習をしていた。
そこで私はこれが魔女の記憶だと分かった。



空はすっかり暗くなった。
星空以外はほとんど暗闇で見えなくなってしまった。
まだ人がいる場所までは距離がある。
元の身体なら無理をしてでも歩いただろう。
でも今の私は体力もなければ歩きにくいブーツを履いた魔女の身体だった。
今日は野宿をしなければいけない。

服は魔法で火を起こして乾かしていた。
揺らめく火がパチパチと音を立てて燃えているのを聞くと安心できた。
濡れた服が渇くまでもう少し時間は掛かる。
それまでに私はするべき事があった。
「はあ、しないといけないのね、この身体で・・・」
私は今や自分のものとなった魔女の身体を見回しながらそう呟いた。
川から上がったがまだ裸のままだ。
一応身体は乾いたが何も着ていない。
着る服がないからという理由の他にもう一つある。
さっき魔法が使えた時のきっかけを思い出した。
それはスライムにいかせられた時だ。

色々な事をあれから考えたが残念ながら、それ以外に要因が思い当たらなかった。
それにさっき身体を洗っていた時の事もある。
断片的にだが何かの記憶が蘇っていた。
もしかしたら見落としている要因が他にあったのかもしれない。
でも今は早く魔法を使わなければいけなかった。
武器は身体を入れ替えられた時に一緒に持って行かれてしまった。
そもそもこの魔女の身体であの重い剣を扱えるかは疑問だが。
今回はスライムの襲撃を撃退できたが次は何が起こるか分からない。
正直魔女の身体がどうなろうと私の知ったことではない。
でも認めたくはないがこれが今の私の身体だ。
今は魔女の身体の私には戦える術が魔法しかない。
その為にも試す必要があった。
「くっ!どうして私が魔女の身体で!?」
魔女の声で悪態をついた。

私は元の自分の倍以上もある魔女の胸の上に手を置いた。
しかも、これは私の身体を奪った魔女の身体なのだ。
その身体でやるなんて屈辱の他ない。
こんな事をしている暇があるのなら早く自分の身体を探すべきだとさえ思った。
「本当にやらないといけないの!?」

今は簡単な火の魔法ぐらいしか攻撃手段がない。
こんな状態では私の身体を奪った魔女どころかさっきのようなスライムにさえ勝てない。
スライムに襲われた時の事を思い出した。
あんな事は二度とごめんだ。
それに次の村や街へ行くだけでも距離がある。
運が悪ければ盗賊や山賊に襲われるかもしれない。
「そうよ、これは魔法を使う為に仕方なくするのよ」
私は自分にそう言い聞かせた。
気高い女騎士としてのプライドは今は捨てるべきだ。
そして早く魔法を使えるようになって自分の身体を探すのが今できるベストな方法だ。
非力な魔女の身体では使える魔法は多ければ多いほどよかった。


私は魔女の大きな胸をその手で包み込んだ。
「はあ、本当に大きい」
ため息のでる大きさで魔女の細長い手でも収まりきらないほどだ。
少なくとも自分の以前の胸よりは大きい。
私も一応は女だ、こういう胸に憧れたことはある。
今まではなるべく魔女の身体は見ないようにしていた。
改めてじっくりと見ることとなった。

魔女が美しいというのは噂で聞いていたし実際に会った時もそうだと思った。
膨らんだ胸やくびれのある腰で女性なら憧れるスタイルだろう。
私は騎士として今まで見た目にこだわったことはない。

でも今は魔女という立場に目をつぶれば美女の見た目になっていた。
綺麗な女性になれた事は確かに嬉しさもある。
本来の自分では味わえない見た目になれた。
これが魔女の身体でなく自分の身体ならもう少し喜べたかもしれない。

私は再び視線を魔女の胸に戻した。
感想はさっきも言った通りとてつもなく大きいということだ。
それなのに形は綺麗でその重みに垂れるどころかしっかりと上を向いていた。
シミ一つない綺麗な白色をしていた。
男性はこういうのが好きなのだろうか。

私はそんな豊満な魔女の胸を少しだけ撫でてみた。
まだスライムの粘液が少し残っているのかヌルヌルしていた。
でもそれがかえって撫でやすくさせた。
胸の表面に沿って手の平が動いていく。


火に照らされて肌が更にはテカテカと光っている。
余計に妖しさが増している気がした。
「これが私の身体・・・」
気が付けば私は今の自分の身体をジッと眺め続けていた。
豊満な魔女の身体から目が離せなくなっていた。

あまりにも大きくて綺麗な胸だったので本物か怪しいとさえ思った。
魔女の事だ、作り物という可能性もある。
私は確かめる為に更にその大きな胸に顔を近づけた。
よく見ると胸の表面には薄っすらと血管が通っている。
これが作り物でなく本物の証拠だ。
「これが魔女の胸なんだ。そして今は私の・・・」
私は魔女の細長い指でぎゅっと掴んだ。
その瞬間魔女の甘酸っぱい声が辺りに響き渡った。

見れば見る程その綺麗さにどきどきしてしまう自分がいる。
他人の身体をそんなに観察したことはない。
それに他人のスタイルに興味もなかった。
今まで騎士として働くことを第一に考えてきた。
でもいざ自分が綺麗な身体になるとそれに興味が出てしまった。

今触っているこの手も魔女の手だ。
白くて細長い指の先端には鮮やかなマニキュアが塗られていた。
私はその手をそっと胸に置いてゆっくりと触りながらその感触を確かめた。
「うう、凄く柔らかい」
それはとてつもない柔らかさだった。
しかし、単に柔らかいだけでなく張りもちゃんとある。
そして悔しいが触っているだけで気持ちが良かった。
今まで触った中で五本の指には確実に入るだろう。
それぐらいの触り心地だった。
前の自分の胸とは比べ物にならない。
胸なんて戦いには余計なものだと思っていた。
この時私は戦い以外での扱い方を知ってしまった。

「こ、こうかな?」
騎士の仕事や生き方以外に興味のなかった私には次にどうすればいいのか分からない。
全くやったことがないと言えば嘘になるが、それでも肉欲に溺れることはなかったし異性に興味もなかった。
とりあえず私はゆっくりと魔女の大きな胸に手を這わせていった。
指に力を入れて胸を包むように力を入れた。
胸が圧迫されると不思議な感覚が沸き起こった。
それは悪い感触ではなかった。
むしろもう少し触りたくさせてきた。
最初は魔女の胸を触るのが嫌だった。
でも少しずつ嫌悪感が消えていった。
「あ、これ、い、良いかも」
ゆっくりとした手つきで胸を触った。
別にスライムの動きの真似をしているわけではない。
でもあの時の快感が記憶のトリガーになったのであればあの気持ち良さを再現しなければいけない。
私はしたくてこんな事をしているわけじゃない。
自分に言い訳をしながらも私は魔女の胸を触り続けた。
気高い私の精神とは裏腹に魔女の淫乱な身体、相反するものが一つになっている。

徐々にだが触っている胸が反応をし始めた。
最初は少しだけ何かを感じてる程度のものだった。
下手をすれば虫が肌にくっついたぐらいだ。
しかし、すぐに刺激は強さを増していった。
「ん、ちょっと感じてきたかも」
スライムに襲われた時と同じ感覚になってきた。
徐々に身体が熱くなっていく。
呼吸が早くなってきた。
でもまた足りない。

「はあ、はあ、胸ってこんなに気持ち良くなるんだ」
あれから私は頑張って魔女の胸を触り続けていた。
撫でるだけでなく揉んだりした。
そして本当は触りたくない魔女の胸の先端も触った。
「んん!ま、まだ、だめなの?!」
身体がビクビクと反応した。
この時にはだいぶ気持ち良くなっていた。
でもまだ何も変化はない。

普通に生活していたら味わえない感覚だった。
いけない事をした上で手に入る魅惑の刺激だ。
私はそれを身体中で感じ取っていた。
悪くないかもしれない、いや、むしろ良い。
それに合わせて私も手の力を増していく。
「やだ、私ったらまた魔女の身体で感じてきちゃった」
感じる為にしているのだがやはりこの魔女の身体で感じる事には抵抗感がある。
私はそれを必死で捨てようとした。
そうしないといけない。
少なくとも今はこの魔女の身体でいかなくてはいけなかった。

今度は指だけでなく爪で胸の先端をコリコリと触った。
「んん!?」
上半身がビクッと反射的に動いてしまった。
さっきと大きく反応が変わった。
胸が大きいせいなのかどうかは知らないが元の自分の胸より確実に気持ちが良い。
「はあ、はあ・・・いい。」
上半身がビクビクする。
そうだ、この感覚だ。
私はスライムにされた時の感覚を再現した。
身体が熱くなっていき準備が整っていった。

「はあ、はあ、もっと気持ち良くならないと」
これでも十分に感じているはずだ。
息は早くなっているし身体も反応している。
それなのにまだ次の魔法の事が思い出せなかった。
「はあ、はあ、どうして思い出せないの?」
胸の先端は勃っていた。
それに身体も十分すぎるほど熱くなっていた。
心臓がどきどき鳴っている。
もうだいぶ興奮しているはずだ。
何度身体を震わせただろう。
それなのに私はまだ魔法を思い出す事ができなかった。

「ど、どうして!?」
魔法の事が頭に浮かんだ時のことを思い出した。
確かあの時はスライムに股間に入られてしまった。
そして少しずつ思い出していたはずだ。
そうだ、あれで思い出す事ができた。
私は胸から手を離すと足を広げた。




「さあ、いよいよね。入れるわよ」
胸が邪魔で良く見えないが感覚を頼りに指を入れていった。
長い魔女の指が奥へと入る。
入口に指が触れた時から刺激は既に伝わっていた。
「ああ、んん、は、入ってる」
そして行けるだけ奥まで入れた
それはかき乱されるような感覚だった。
私は股間に入れた指をぐりぐり動かした。
「ああ、くうう!」
魔女の声が勝手に漏れた
エッチな魔女の声が響いていく。
出したくないのに出てしまう。
「はあ、はあ、私、魔女の身体で、こんな事してる」
以前の私ならこんな事をするなんて想像ができなかっただろう。
「ち、違う、これは魔法を使う為よ。だから仕方なくしてるだけよ」
私は自分にそう言い聞かせた。
それで背徳感や恥ずかしさを打ち消そうとした。

「も、もっと、思い出さないと、あん!」
まだ何も思い出せない。
スライムの時と同じなら気持ち良くなると記憶が鮮明に蘇ってくるはずだ。
その為に私は股間に入れた指を動かした。
「はあ、はあ、も、もっとよ!」
上下や前後に揺すると快感と共に魔女の経験した事が頭に浮かんできた。
記憶の中の魔女は可愛らしい女の子で魔法を師匠から学んでいた。
「んん!そ、そうよ、そこで何を使えるようになったの?」
しかし、そこで記憶が途切れてしまった。
気付けば指を止めてしまっていた。
「はあ、はあ、ま、まだ足りないの!?」

私は左手で胸を、右手で股間を弄った。
今度こそ最後まで見られるようにしないといけない。
「ん!んぐぐ!」
魔女の身体から快感が溢れてくる。
もう迷う事なく私は手を動かしていた。
ぼやけている記憶の霧を払い除けるように私は快楽を求めた。
「はあ、はあ、こ、今度こそ、お、思い出さないと、うう!」
頭の中にまた記憶の光景が見えてきた。

『さあ、やってみなさい』
記憶の中で師匠にそう言われた。
私はもういく寸前だった。
「はあ、はあ、わ、分かりました」
記憶の中の魔女の代わりに私はそう言った。
師匠の教えの通りに私は構えた。
そして教えられていた強い風をイメージした。
それは全てを吹き飛ばせる風の魔法だ。
「そ、そうよ、あ、ああ、あとは、使うだけよ」
記憶ははっきりと思い出せた。
同時に私の身体は気持ち良さで震えていた。
でも今指を止めたらまた思い出せなくなってしまう。
記憶の中の出来事とオナニーを同時にする必要があった。
「う、ああ、お、思い出すのよ。あ、あたしが初めて使った魔法を、んん!」

私は左手を胸から離して記憶の中の魔女と同じように手をかざした。
その一方で股間を弄る右手はクチュクチュと音を立て続けている。
記憶の中の魔女はまだ自信がないのか他の魔法使いの女の子のようになかなか魔法が使えない。
「はあ、はあ、で、できるはずよ。さ、さあ」
私はその女の子を促すように、更には自分を励ますようにそう言った。
すると記憶の中の女の子はさっきと違い自信に満ちた笑みを浮かべた。
「そう大丈夫よ、今度こそできるはずよ。だってあたしは魔女なんだもの」

記憶の中の魔女と今の私は完全にシンクロしていた。
もう少しだ、もう少しで、やれる。
「はあ、はあ、ふんん!か、風よ舞え!」
身体を震わせながら風を感じ始めた。
もう自分にできないはずがない。
「い、いく!や、やれる!んん!」
私は手と腰を思いっきりに張り上げた。
そして洞窟の中に魔女の悲鳴ともとれる最後の声が響いた。

「ふんん!、ま、舞いなさい、風の魔法!」
その瞬間左手の指を入れていた股間から液が溢れた。
そして右手の中からは荒れ狂う風が舞った。
「はあ、はあ、や、やった、できた・・・」
今の私と記憶の中の魔女が同じ事を言った。
そして辺り一面を塗らすほど私は股間から液を出してしまった。

いくのと同時に魔法を使った。
その事で私の体力と魔力はもう使い果たしてしまった。
「はあ、はあ、もうダメ・・・」
目がとてつもなく重い。
でももう起きている必要はなかった。
なぜならその日の目的は達成できたからだ。

新しい魔法が使えた達成感と安堵感が同時に覆ってきた。
段々と意識が薄くなり気持ちの良い睡魔が襲ってきた。
夢の中でで師匠があたしを褒めてくれた。
『はい、もっと勉強して魔法を覚えます♪』
幼い魔女の私はそう返事をしていた。


疲れていたせいか長く眠っていたようだ。
記憶があやふやになっている。
私は起き上がる前に胸を触った。
大きな丸い胸の肌が当たった。
残念ながらこれだけで分かった。
自分が魔女の身体のままだということが。
「まあ、戻ってるわけないわよね」
魔女の声でそう呟いた。
触っていると別の事に気付いた。
「え、あれ!?私裸じゃない!?」
魔女の身体になっていることよりも裸でいる方に驚いてしまった。
一晩中この格好で眠っていたようだ。
そういえば昨夜はオナニーをして疲れ果ててそのまま眠ってしまった。
風邪を引かなかったのは幸いだ。


「うう、いたた!何、この痛み!?」
起き上がろうとした時身体が悲鳴をあげた。
背中に激痛が走った。
この痛みが何なのか分からなくてパニックになった。
背中が張ったような痛みが走っている。
「くうう、何なのよ!?」
しばらくこの苦痛に悶えた。
少ししてやっと痛みが引いてきた。
まだ動くとヒリヒリするが動けない程ではない。

昔小さい時に堅い床で寝た時にこうなった事がある事を思い出した。
その後両親にベッドの上で寝ないからだと言われた。
それも遠い昔の話だ。
騎士として遠出する私は寝床が悪い所で眠るのは珍しくない。
野宿も何度も経験した。
でもこんなのは初めてだ。
「ああ、この身体のせいか・・・」
この派手な魔女が野宿や寝床の悪い場所で寝るだろうか。
そうは考えられない。
あの屋敷でもふかふかのベッドは置いてあった。
つまりこういうのに慣れてないのだ。
「ああ、もう本当不便な身体ね」
デリケートな魔女の身体にここでも悩まされた。
痛みに耐えながら私は洗濯した服の元へ歩き出した。
その間むき出しの大きな胸が上下に大きく揺れてしまった。
「うう、早く元に戻りたい」
自分の身体が恋しかった。

昨日干していた服はすっかり乾いていた。
とはいえまたこれらを着なければならない。
「はあ、またこれを着ないといけないのね。」
そもそも他に着る物がない。
裸でいるよりマシと思うしかない。
私にとってはどちらもそれほど変わらない程恥ずかしい。
昨日やっと魔女の服から解放されたと思ったのに今日はまた着ないといけない。

結局私は嫌々それらを着ていった。
「うう、胸がきつい」
今は下着を履こうとしている最中だ。
でも中々入らずに苦戦していた。
大きな胸を持ちやっと下着に入れることができた。
元の身体でこんな苦労はなかった。
それに自分で着てみるとサイズが合ってないのではないかと思えるほどきつく感じた。
そして苦労して出来上がったのがこの胸の谷間だ。
本当に魔女の服は着心地が最悪だった。
魔女のスタイルの良い身体を見せつける為だけの格好だ。
動き辛いし見た目以外の機能性は最悪だ。
早く街で新しい服を着たかった。
とはいえ騎士の装備はこの身体には無理だろう。
少なくともこれよりはマシなのを着たい。
いや、それよりも自分の身体を探さないといけない。
今は格好を気にしている場合じゃなかった。
でも魔女の装備を確認していると耳飾りや腕輪には魔力を高める効果がある事が分かった。
今はレベルの低い火の魔法しか使えない。
これらのアクセサリーの効果も今の私にとっては重要だった。
長手袋を腕に通しロングブーツの中に足を入れた。
これで私は再び格好も完全に魔女になった。
「うう、恥ずかしい」
至る所がスースーする。
改めて自分で着て川でその姿を見ると恥ずかしさがこみ上げてきた。
最後に魔女の尖がり帽子を被ると私は出発した。


森の中をこの格好で進んでいくのは辛い。
なんであんな所の屋敷で暮らしているのにロングブーツなんか履いているのか。
慣れないし歩きにくい。
それにこの衣装も酷いものだ。
あらゆる所が露出している。
周囲に人がいなくて本当に良かったと思えた。
歩きにくい道を進む度に胸が揺れた。
「もう、何なのこの身体は!?本当落ち着かない!」

しかも魔女の身体は体力が全くないのだ。
「つ、疲れた、休まないと・・・」
すぐにバテテしまい何度も休憩した。
街はまだまだ先だ。
この調子だといつ到着できるか分からない。
身体を取り戻す前に倒れてしまいそうだ。
「はあ、はあ、本当、この身体もこの格好も最悪」
私は蒸れた胸の谷間に手で風を送りながら休んだ。
しかし、今度はその動かしている手が疲れてしまった。
本当に不便な身体だ。

外では太陽が高くまで昇っている。
どうやらお昼になっていたようだ。
日差しがきつく昨日よりも暑く感じた。
私は魔女の帽子を深く被って強い太陽の光をなんとか避けた。
ただ暑いだけならいいのだが、魔女の白い肌にこの紫外線は相当にきつかった。
じりじりと焼かれるように感じた。

流石に今日は昨日よりは長く歩けた。
少しだが魔女の身体やこの履いているロングブーツに慣れたのかもしれない。
それでも私の身体を奪った魔女が向かった先には程遠い。
日が暮れ始めていた。
空が赤色になっていた。
その日は宿で泊まることにした。
元の身体なら平気で野宿もできただろう。
でも今の私は柔らかなベッドが恋しかった。
起きた時からの身体の痛みがまだ残っている。
今日だけはふかふかのベッドと布団で寝たかった。

魔女の服の中に幸運なことにいくらかのお金が入っていた。
少し汚れてはいたがこれで何とかなるはずだ。
ただしそのお金の出所は考えたくなかった。
今は緊急事態なので余計な詮索はしなかった。


宿屋に入ってから重大な事に私は気づいた。
今の私の身体はは手配中の魔女だ。
店主や他の客がこの顔に見覚えがある可能性はゼロではない。
でもその時にはもう遅かった。
「いらっしゃい、何拍ご利用されますか?」
「え、えーと一晩だけ部屋を借りたいのだけどいいかしら?」
「はい、こちらの部屋をお使い下さい」
それは宿屋での普通の会話だった。
私はそう思っているし、恐らく周囲からはそう見られているはずだ。
しかし、私は店主の不審な動きを見逃さなかった。
さっきから店主が私の事をチラチラ見ている。
もしかして私が手配書の魔女だと気付いたのだろうか。
いや、そうではないようだ。
少なくとも私を疑っているわけではない。
宿の主人が考えていることが分かった。
見ているのは私の顔ではなくこの胸の谷間だった。
さっきからそれを必死で隠そうとして視線を合わせないようにしていた。
前の身体の時は絶対になかった事だ。
こんな経験は初めてだった。
だから私の方が戸惑いそうだった。
でも不思議と良い気分に浸れた。
綺麗な女性になれたと実感できた。
その時私の頭の中で騎士にあるまじき悪だくみを思いついてしまった。
「ねえ、あたし長旅でとても疲れているの。もし良ければもう少し良い部屋に泊まりたいんだけどいいかしら♪」
自分でもよくそんなセリフが言えたなと思った。
私が思いつく限り最高の女を演じてみた。
「え、い、いいですよ。今日はお客が少ないので使って頂いてかまいません」
店の主人は少し戸惑っていたようだが私のお願いを聞いてくれた。
これで余計なお金を使わないで良い部屋を借りることができた。
こんな事をしたが悪い気はしない。
むしろ凄く得した気分だ。

「ありがとう♪」
私は部屋向かう前に店主に魔女らしくそう感謝した。
すると店主の顔が赤くなっていた。
「い、いえ、また何かあれば遠慮なく言って下さい」
ああ、凄くゾクゾクする。
美貌で男を手玉に取るのは本当に快感だった。

期待して鍵を開けて中に入ったがお世辞にもそこはあまりいい部屋とは言えなかった。
これでもこの宿では一番高い部屋らしい。
正直思っていたものとは違った。
でも贅沢は言ってられない。
普通に泊まればもっと酷い部屋に泊まることになっていた。
それを考えたらマシだと言えよう。

「仕方ない、今日はここでゆっくりしましょうか」
そう言って私は部屋のベッドに横になった。
古いベッドだが今の自分にとってはありがたかった。
用意された食事も質素なものだった。
でも昨日から何も食べてないのでこれでもよかった。
ただし魔女のお腹の方が早々に限界を迎えてしまった。
私の精神としてはもっと食べたいのに魔女の身体が受け付けてくれなかった。
なので無理矢理にでも魔女の口の中へ食事を入れた。
「ふう、何とか食べられたわ」
しかし、その後私は魔女の身体でお腹を壊すこととなった。
「ほ、本当この身体は・・・うう・・・」
そして苦労して食べた物がほとんど無駄に終わってしまった。


宿の外はすっかり夜が更けて真っ暗になっていた。
急ぎたい気持ちもあるが今の私では夜道は危険だった。
この身体と格好では頑張ってもそう遠くまではいけない。
次の宿がある場所はまだしばらく先だ。
また野宿はごめんだった。
明日も早いので今日は早く寝る事にした。
ベッドの上で温かい布団で寝られる。
これだけで幸せに感じられた。
しかし、その幸福感は長く続かなかった。
昨日はあれだけ早く眠ることができたのに今日は全く寝られる気がしない。
なぜか目が冴えていた。
それに頭も良く働いた。
そんな時にする考えは良くない事ばかりだ。


「ああ、私、元の身体に戻れるのかな?」
ぼんやりとそんな事を呟きながら鏡を見た。
もし戻れなかったら一生この魔女の身体のままだ。
もちろんそんなのは嫌だ。
しかし、自分の身体を奪った魔女と再会できたとして元に戻れる保証はない。
今の所魔女があの時使った魔法は思い出せないでいた。
私が使えるようになったのは簡単なものばかりだ。
魔法が使えない私でさえ見たことはあるし存在も知っている。
しかし、あの時魔女が使った魔法は全く未知のものだ。
そもそも人間の身体を入れ替える魔法なんて聞いたことがない。
そんなものをいくら魔女の身体になったとはいえ私が扱えるだろうか。
鏡には不安な表情を浮かべた魔女が写っていた。



「はあ、はあ!」
静まった部屋で私の呼吸だけが聞こえていた。
それも静かな息ではなく激しい音だ。
「うう、くう!」
今のこの魔女の身体は疼いていた。
激しい息遣いで体温も上がっている。
これが疼きだと理解するには時間が掛かった。
最初は何かの病気かと思った。
昨日は裸で寝たから今頃になって風邪を引いたのかと心配したほどだ。
それにしては意識ははっきりしている。
身体もよく動いたので違う何かが原因だと分かった。


とりあえず今日は無理矢理にでも眠ることにした。
ベッドに入り布団を顔まで掛けて目を閉じた。
しかし、しばらく経ってもでも眠ることはできなかった。
その時、辺りから凄く良い匂いがした。
甘い香りで凄く良い気分になれた。
私は布団から顔を出して周囲を見回した。
でも部屋の中には花も草木もない。
どこからその匂いが出ているのかとしばらく考えた。
そして、私は再び布団に入り理解した。
それは自分の身体から出ていた。

今の自分からこんな匂いがしているのに今の今まで気が付かなかった。
考えてみれば入れ替わった後にスライムに襲われたり自慰をしていたので体臭を嗅ぐことはしていない。
改めて嗅いでみると凄く良い香りだった。
身体を洗ったりしたから香水は落ちているはずだ。
それなのに凄く良い匂いがする。
私は布団に付いた匂いだけでは飽き足らず自分の身体の匂いを直接嗅いだ。
「スンスン」と鼻を鳴らしたっぷりと腕の匂いを吸い込んだ。
「私ってこんな匂いだったんだ」
しばらくして私はもっとその香りを楽しみたいと思った。
そして自分が着ている服さえ邪魔に思えてしまった。
もっとこの香りを楽しみたい。
その一心で服を脱いだ。
そして脱いだ服に顔を押し付け「スーッ」と鼻から息を吸い込んだ。
「はあ、はあ、私っていい香り。凄く良い・・・」
いつしか私の身体はどんどんムラムラしていった。

私は更に求めだした。
それはもう匂い以上のものだ。
私は横になりながらそっと胸を触った。
「あん!」
声を出した自分が驚くほどの声が出てしまった。
軽く触ったつもりだった。
なのにそれ以上の刺激が沸き起こった。
昨日よりも感度が上がっている。
明らかに昨日とは違っていた。
同じ胸だとは思えない。
私は試しにまた触った。
「んん!」
服の上から触っただけでこれだ。
そしてまだまだ物足りない。
その時になって気付いた。
この身体は欲求不満になっている事を。
胸や股間が早く触れと言ってくる。
「はあ、はあ、いいわ、触ってあげる」
もはや私に最初の頃の抵抗感はなかった。
仰向けのまま両手で胸を掴んだ。
その時に思った。
今日は長い夜になると・・

部屋の中ではクチュクチュという音と私の吐息が聞こえた。
身体を揺らすからベッドがガタガタ揺れていた。
「はあ、はあ、ああ、気持ち良い、気持ち良いよ。こ、これが私の、あたしの身体なのね。もっと気持ち良くなりたいの!」
服を全部脱ぎ捨て私は自慰に夢中になっていた。
ただ気持ちが良いだけじゃない。
気持ち良くなればなるほど精神が身体と強く結びついていくようだった。
魔女の身体になった当初は慣れない他人の身体を動かしているようだった。
しかし、今はこれが元の自分の身体と同じかそれ以上に上手く動かせている。

「ああ、また思い出してきた」
そして思い出すのは魔法のことだけではなかった。
これまで旅をしてきた記憶も蘇っていた。
騎士の私とは違う自由奔放な旅だ。
魔女が経験してきたであろう楽しい経験が頭に溢れてくる。
生真面目な私では体験できない事をこの身体は今までしてきた。
そして危ないこともだ。
「ち、違う、こ、こんな事を思い出したくないのに、か、勝手に思い出しちゃう」
でも溢れ出る記憶は留まることを知らなかった
私が思い出したい魔法の事とは別の記憶まで勝手に思い出してしまう。
私は一刻も早く元の身体へ戻るという目的の為にしているはずだ。
それなのに今はこの身体の虜になろうとしている。
それでも私はやめなかった、やめたくなかった。

それは別の人生を追体験するようだった。
それがまた心地よかった。
魔女の家に生まれて育ってきた。
魔法の才能があると言われて喜んだ。
そして師匠に様々な魔法を教えてもらった。
ただし覚えた魔法は自分の為に使った。
「ああ、あたしの記憶がどんどん蘇ってくる」
次々に思い出す魔女の記憶にすっかり私は夢中になっていた。

これは魔女がこの身体で初めて自慰をした時の記憶だ。
成長して大人の身体になりかかっている時だ。
恥ずかしがりながらも楽しんでいた。
初めて味わうオナニーは本当に最高だった。
「ふふふ、懐かしいわね・・・ち、違う、こ、これは私の記憶じゃない」
魔女が経験してきた初めての記憶と感触が手に取るように分かってしまう。
それはあたしにとってとてつもない快楽だった。
これ以上はやめないといけない。
このままでは本当に魔女になってしまう。
「わ、私の、あたしの記憶が、どんどん溢れて、くる!あ、あたし魔女、じゃないのに、なっちゃう!」
自分の中にある騎士としての今までの記憶は魔女の記憶になっていた。


「ふんん!」
それは今までで一番気持ち良さだった。
あたしは魔女としていってしまった。
「あたし、やっちゃった」
今回は魔法とは関係なくやってしまった。
それなのにそれなのに高揚感があった。

鏡を見ると魔女の身体が映っている。
私はそれを抱きしめた。
「ああ、好き、好きよ・・・」
あたしは鏡にキスをしていた。
そして今の自分自身を抱いた。
この柔らかくて良い匂いが好きだ。
この綺麗な顔が好きだ。
このスベスベの肌が好きだ。
あたしはこの身体が好きだ。
「ふふ、凄く綺麗よ」
鏡の中に写る魔女があたしにそう言った。
「これが今のあたし♪」
魔女らしく言うと更にどきどきした。
あたしは本物の魔女ではない。
でも今の自分は完全に魔女だった。
でもまだ物足りない気がした。
現に身体の疼きが止まらない。

「店主さん、ちょっといいかしら♪」
私は宿の主人を呼び部屋に招き入れた。
「はい、何でしょうか?こんな夜更けに・・・え!?」
「ちょっと今日は眠れないの。だから少しだけあたしの相手をして頂けるかしら♪」
その日は長い夜になった。

翌朝身なりを整えて店主に挨拶に行った。
「は、はい、昨夜の約束通りお代は結構ですよ」
店主は眠たそうにそう言ってきた。
「気が向いたらまた来るわね♪」
あたしはそう言うと宿から出発した。





最初は身体を取り返す事が本当の目的だった。
その為に魔女の魔法を思い出していたはずだ。
それなのに最近はそれに関係なくしていた。
やらないと落ち着かない。
この身体の疼きが収まらない。
仕方なくあたしは自慰を繰り返した。
月夜の明かりの中あたしは魔女のようにこの身体を触った。
すると記憶が蘇っていった。
そして更に魔女へと近づいていった。
鏡を見てもこの顔に驚かなくなった。
むしろこれがあたしの顔であると思えた。
長い髪の毛も邪魔に感じるどころか自分の大切なモノのように扱い毎日整える事を欠かさなかった。
大きな胸やくびれのある腰はあたしの自慢に思えた。
そしてこのボディラインを活かす派手な服もお気に入りだ。
このエナメルの長手袋やロングブーツはあたしの妖しさを強調してくれる。
何度も新しい服に変える機会はあった。
でもそうしなかった。
でも今はこの格好じゃないと落ち着かない。


あれからあたしは当初の目的の為に彼女を探した。
街へ到着した頃には既にいなかった。
なら彼女の次の目的地は分かっている。
あたしは人気のない所で転移魔法を使った。
もうこの魔法も当たり前に使える。
あとは本来の目的を達成するだけだ。


「まさか自分から姿を現してくれるなんてね。手配中の魔女さん♪」
懐かしい声でそう言われた。
今あたしの目の前にいるのはあたしの前の身体になった魔女だ。
「お久しぶりですね。あら、もう私の顔を忘れてしまいましたか?」
「ファイア!」
油断している所を狙ったが避けられてしまった。
「ちっ、外したわ!」
「ふふふ、今度はこっちから行きますよ!」
彼女は剣を抜きこちらへ猛スピードで迫ってきた。

危ない所を転移魔法で避けることができた。
一回でも当たればひとたまりもないのは確実だ。
「しっかり魔法を使いこなせていますね。さすがは魔女さんですね」
その言葉は皮肉にも聞こえた。
そして余裕のある言葉通り彼女にいくら魔法を撃ち込んでも避けられてしまった。
遂にあたしの魔力は無駄に消耗していくだけだった。

あたしは勝負を決める為に最上級の魔法を使った。
これなら避けられてもダメージを与えられる。
「失敗しましたね♪」
その言葉と共に彼女はあたしの元へと駆け出した。
今が攻撃のチャンスだ。
あたしはありったけの攻撃魔法を放とうとした。
しかし、何も起こらなかった。
「え!?」
「強力な魔法を使うには長い詠唱が必要なんですよ。もう忘れてしまったんですか♪」
その言葉を聞いて思い出した。
そうだ、この魔法を使うには詠唱が必要だった。
魔法自体は使えたはずだが実戦経験がないせいでそんな事も忘れていた。
「さあ、終わりですよ」
「きゃあ!」
彼女はあたしのロングブーツを目掛けて足払いをした。
「しまった!?」
このまま倒れるかと思った。
しかし、その衝撃は一向に来なかった。
なぜなら私は彼女に支えられていたからだ。
「これで勝負はついたのですから、これ以上怪我をさせる必要はないですよね」
そう言って彼女は微笑んだ。
どうしてだろう、その笑みが頭から離れなかった。
凄く優しく、格好良く、素敵に思えた。

更に彼女は手を離すと私に告げた。
「大人しく捕まるなら命の保証はしてあげます」
どこかで聞いたセリフだった。
喉元に剣先を突き付けられてしまった。
少しでも動けば刃が当たる距離だ。
ほとんど無駄がない動きだった。
「ふふふ、立場が完全に逆になってしまいましたね」
この光景も以前あったはずだ。
ただしお互いの身体も立場も逆だった。
今はあたしが魔女で彼女が騎士としてこの場にいる。
そして追い詰められたのはあたしだ。
「下手なマネはしないで下さいね。私はあなたと違って何かあればすぐにトドメを刺しますから」
それは彼女からの最後の警告だった。
以前のあたしは最後で油断したが彼女は同じミスはしないと宣言までした。
遠くへ転移する魔力ももうない。
もはや為す術がなかった。
「あたしをどうするつもり!?」
「このまま騎士団へ連れ帰って手配書の魔女として引き渡します。ご愁傷様ですね・・・ふふふ、アハハ、いや、面白かったですよ。高貴な女騎士さんを淫乱な魔女にするのも悪くないですね。特に堕ちていく様は見ている私も興奮しました」


「高貴な女騎士になるのも悪くなかったですよ。騎士として人々に尊敬され感謝されるのも思ったより悪く感じませんでした。むしろ今の私にとってはそれが快感ですけどね」
その後も彼女は入れ替わった後の事を聞かせてきた。
彼入れ替わった後もずっと騎士として動いていた。
しかも、あたしの予想に反して真面目に働いていたようだ。
手配書の人物を既に数人捕らえていた。
しかも全員生きているらしい。
それを騎士団に引き渡し仲間や街の人達から感謝された事を自慢した。
それらは本来あたしがするべき事だった。

しかし、彼女の口から出たのはそれだけじゃなかった。
「あなたもその身体で自慰をしましたよね。しかも一回や二回じゃなくて何度も♪」
「どうしてそれを!?」
彼女が知るはずがない。
周囲は念入りに確認したが誰もいなかったはずだ。
「見る方法はいくらでもあるんですよ。たとえばこの耳飾りとかを使えば簡単にできるんですよ♪」
よく見ると今の彼女の耳にも同じ耳飾りがしてあった。

「なら私もあなたの身体でしても責められませんよね」
そう言ってあたしの目の前で彼女は服の上から小振りな胸を揉み始めた。
「ふふふ、誰かに見られながらするの恥ずかしいですね。でもあなたにはだけは見てもらいます。その方が興奮しますからね、お互いに♪」
あたしの目の前で服を脱ぎだした。
地味な装備がなくなり彼女の逞しい身体が出て来る。
鍛え抜かれた身体だが男とは違うしなやかさもあった。
「この身体になってからずっと我慢をしていたんですよ。でも精神力の強いあなたの身体のおかげか我慢できました。だから今の私は凄くムラムラしているんですよ」
あたしは彼女のやる事を見続けてしまった。
目を閉じれば見ないですむだろう。
でも彼女はあたし分かるようにわざと大きな声で何をしているのか伝えてきた。
「あなたの精神が私を恥ずかしくさせてきますね。でもそれが良いんですよね。元のあなたが絶対しない事を私がする。こんな事人前では絶対にしないですよね」
そう言って舌を出しながら淫乱女のように胸を触ったり股間を触り始めた。
それは騎士というよりも娼婦のようだった。
「はあ、はあ、気高い騎士である私がこんな事をするなんて・・・んん!」
以前のあたしが絶対言わない事を言って彼女があたしを煽ってくる。
でも全然怒りが沸いてこない
むしろ私に向けられるそれらの言葉にどきどきしていた。
世俗的なことに無関心の真面目な女騎士が卑猥な言葉を言いながら自慰をしている。
それが今のあたしを興奮させていた。
「はあ、はあ、我慢した甲斐がありましたね。凄く気持ちが良いですよ。あん、ほら、こんなに身体がビクビクしてます♪」
股間に入れた指を動かしては上半身を揺らした。
そんな彼女の姿から目が離せなかった。
「ん!ああ!」
遂には最後までやる所を見てしまった。

「そんなに私のことが好きですか?さっきから私のことを物欲しそうに見てますよ♪」
「ち、違う、そんな事してるわけないじゃないわ!」
あたしは必死で否定した。
「そんな事言って淫乱な魔女さんにはぴったりじゃないですか♪」
「く!」
否定はしたいが今のあたしは本当にそうだと思う。
こんなエッチな衣装を自分から着ている。
他人の身体で一人でエッチをした。
男を誘惑して手玉に取るのが面白かった
かつての自分に興奮してしまう。
以前のあたしなら考えられない。
自分でも分かっている。
それにこんなのはおかしい、あたしがあたしに興奮するなんて・・・
でも我慢ができない。
そして目の前のかつての自分が気になって仕方がない。
しかもそれを嫌なことだと思えなかった。

「あ、あたしをこんな身体にして、それに精神までこんな風にして許せない!」
「ふふふ、どうやらあなたは誤解をしていますね」
「これは呪いか何かでしょ。そうじゃなければたしがこんな風になるはずないわ」
そうとしか思えなかった。
あの騎士としてプライドの高かったあたしは今や淫乱な魔女になっていた。
身体だけでなく心までも魔女そのものになっていた。
これが呪いや洗脳でなければなんだと言うのだろうか。
「それはあなたが望んだ事です。あなたが私になりたいと思ったからそうなっただけですよ」
「そんなはずないわよ!あたし別にあなたになんかなりたくなかったのよ!」
「なら教えてあげます」
彼女はあたしの事を話しだした。
それはあたししか知らない事だった。


家は代々騎士の家系だった。
それで幼い頃から騎士になるべく育てられた。
それ故に周りの女の子達とは違う環境で過ごした。
可愛い洋服を着る周りの女の子達が羨ましいと感じた。
化粧をして綺麗になりたいと思った。
そう、普通の女性として美人として生きてみたかった。
そして自由に過ごしてみたかった。
それは昔のあたしが感じていた事そのものだった。

「ほら、それが今のあなたになったわけです。あなたの願いが叶いましたね。じゃあ今度は私の願いを聞いてもらいますよ」
何を言われるのかと思った。
すると彼女は突然真顔になってこう言った。
「私、あなたの事が好きなんです」
あたしの目をまっすぐ見てそう言った。
「え!?」
突然の告白に驚きを隠せなかった。
ふざけているようにも冗談にも見えない。
さっきまでの表情とは違い真面目な顔だった。
「ちょっとふざけて・・・」
「私は本気ですよ。それとも私じゃだめですか?」
その時私はさっき倒れそうになった際に助けてもらった事を思い出した。
ああ、そうか、それでか。
あたしは自分の中で納得してしまった。

すると彼女は手を差し出してきた。
私はそれを掴み立ち上がった。
心臓がドキドキとなっている。
そしてあたしは意を決してキスをした。
軽くだったがそれでも当たった。

やってしまったと思い顔が赤くなる。
「ほら、もっとして下さい」
彼女は静かにそう言ってあたしの目の前に唇を近づけた。
「ん・・・」
あたしは自ら唇をくっ付けていた。
瑞々しくて柔らかな唇が触れた。
ああ、こんなキスはいつ以来だろう。
唇が重なる時間と共に幸せな気分になる。
さっきまで戦っていたとは思えない。
今のあたしは彼女を求めていた。
それに彼女もあたしを求めている。
求められることがこんなにも嬉しい。
凄く心が満たされた気分になる。
誰でもいいわけじゃない。
誰でも良ければあの男共で十分満足できていたはずだ。
彼女だからこう思えた。


「どうですか、魔女さん♪」
あたしは彼女に胸を触られていた。
「あ、ああ、す、凄く、良い・・・」
力強いかと思ったが時折優しく撫でる。
彼女の性格を表したかのような触り方だった。
こんな彼女にならいくら触ってもらってもかまわないと思えた。
「ああ、そ、そんな風に触ったら・・・」
「まだいくのは早いですよ。ほら久しぶりに見せ合いましょう。お互いの身体を♪」
あたしは彼女に服を脱がされていった。
でも嫌じゃない、それどこか早く脱がして欲しかった。
今のあたしは早く彼女とやりたかった。
かつてのお互いの身体を見せ合った。
「久しぶりですね、その身体をじっくり見るのも♪」
彼女に裸を見られるのが恥ずかしく感じた。
それに凄く緊張してしまう。
今までこんな事はなかったはずだ。
でも彼女の前では違った。

「知っていますよ、あなたはその身体で男性と寝ましたよね。別にあなたを責めるわけじゃありませんよ。だったら綺麗にしないといけませんよね」
彼女には全てお見通しだった。
今まであたしが密かにしてきたことも全部知っている。
「私が綺麗にしてあげます。ほら見せて下さい」
彼女はそう言うと私の脚を大きく広げた。
恥ずかしい、あそこを見られていると思うと恥ずかしくてたまらない。
「凄く綺麗ですよ。では中身も綺麗にしましょうか♪」

あたしがあたしの股間を舐めていた。
以前のあたしなら止めるか、嫌がって拒絶しただろう。
でも今は邪魔することなく、更には受け入れていた。
彼女にもっとして欲しい。
「はあ、はあ、はうう!」
どうしてそんな状態になっているのかあたしにも説明ができない。
ただして欲しかったとしか言いようがない。
彼女の舌が這っていくのが手に取るように分かる。
同じ場所ではなくて少しずつ移動している。
そうしている内に敏感な場所に触れた
「ああ!?」

あの時のスライムより気持ちが良い
「凄く美味しいですよ」
料理の品評のような言葉だった。
それでも褒めてくれている事に変わりはない。
今のあたしにとってその言葉は何よりも嬉しかった。
そのまましばらく舐め続けられた。
もはや気持ちが良いとかそういう問題ではなかった。
彼女に舐められている。
それが今のあたしにとって重要だった。

「私が欲しいですか?」
「あ、あなたが欲しい」
あたしは彼女に抱きつきありったけのキスをした。
心の底から彼女が欲しかった。
もうあたしは彼女の事しか見ていなかった。
身体を密着させ胸同士が重なっていた。
彼女の身体を肌で感じることができた。
もっと欲しかった、彼女が欲しくて欲しくて仕方がない。
もう一時も離れたくなかった。
「さあ一緒にいきましょう♪」

もう元の身体なんてどうでもよかった。
気高い騎士としてのプライドも今は邪魔でしかない。
あたしと彼女はお互いの股間を重ねながら揺らした。
そして唇をくっつけた。
下半身と同じように重ね合わせて動かした。
「凄くいいですよ、魔女さん、さあ、一緒にそろそろいきましょう♪」
股間も胸も口も激しく絡み合った。
あたしも彼女ももういきそうだった。
汗は大量に流れ身体は激しく揺れ動いていた。

そしてあたし達はお互いに腰を振った。
あたしは彼女を離さないよう口を押し付けて手強く抱きしめた。
「んん!」「んうう!」
そしてキスをしたままあたし達は一緒にいった。
いった後もあたし達はお互いを離さなかった。

唇を離したのはしばらく後だった。
「はあ、はあ、凄く良かったわ、あれ、何か変?」
あたしの声がおかしくなっている。
それに目の前には騎士の彼女はいなかった。


「も、元に戻ったの?」
胸を触ってすぐに分かった。
それは前のあたしの身体だった。
身体が驚く程軽くなっていた。
全身が凄く動きやすい。
そして目の前にはあたしがいた。
いや、それは本来の魔女だった。

「はあ、はあ、良かった・・・」
でもなぜあたしは自分の身体に興奮しているのだろう。
これは本来の自分の姿のはずだ。
本来ならこの鍛えられた身体が懐かしむはずだ。
なのにあたしはこれをさっきまであたしの事を攻めていた彼女の身体として見ていた。

「はあ、はあ、やっぱりあたしとは違う。でもこれも良いわ♪」
小さな胸だが触ると感じる。
まだ身体が温かいままだ。
魔女だった頃の自分と比較したくてしょうがなかった。

脚を大きく開けて下を見た。
そこには視界を邪魔する胸はない。
そしてあたしは股間の中へと指を入れた。
ああ、そうだ、こんな感じだった。
「前のあたしの身体ってこんなのだったのね♪」
それは久しぶりの感覚だった。
でもまるで他人の身体でやっている気分だった。
鍛えた腕で動かしているせいか全然疲れなかった。
「はあ、はあ、この身体は体力があって便利ね。全然疲れないわ」

元の自分の身体に戻れて嬉しいはずだ。
でも、この説明できない喪失感は何なのか?
あたしは自分の身体を確認した。
あの大きな胸がなく当然谷間など影も形もなかった。
あの綺麗で長い金髪ではなく短くて荒いショートヘアになっている。
違う、この顔も、スタイルも声も、全部・・・
「違う、これはあたしじゃない」

もはやこれは自分の身体ではないように思えた。
「じゃあ、あなたの身体はどれなの?」
すると魔女の身体になった彼女はそう問いかけてきた。
その顔を見てあたしは彼女を力強く押し倒していた。
そして無理矢理抱き寄せて唇を重ねた。
ああ、これだ、あたしのは!
「ねえ、あたしに頂戴、あなたを!」
「いいですよ、私もあなたが欲しいです。では、ずっとこうしましょう♪」
あたしは彼女をぎゅっと抱きしめた。
彼女もそれを返すようにあたしを抱き返してくれた。
身体は違うのに動きは同じだった。
逆に身体が違う事でこうも感じ方が変わるのかという実感もあった。

あたしは二度とその身体を離さないと心に誓った。
そしても身も心も捧げた。
「もうずっと一緒よ♪」
そして彼女はこう言った
「戻りましょう。私達の身体に♪」
そしてあたし達は再び唇と身体を重ねた。



随分と懐かしい夢を見ていた気がする。
あれから時間がだい経った。
「目が覚めましたか?」
目の前にいたのは騎士である愛しいあたしの彼女だった。

「ああ、今はあたしが魔女だったわね」
念の為あたしも胸を触って確認した。
あたし達は入れ替わりを繰り返していた。
自分が騎士だったのか魔女だったのか、それさえどうでもよくなっていた。
もはや彼女とその身体はもう一人の私であり私の半身と言っていい。
いや、もしかしたら私が彼女の半身かもしれない。
でもそんな事はどちらでもいい。
私達はお互いの全てを知っている。
あたし達はもうコインの裏表のようになっていた。
今は彼女が騎士であたしが魔女になっている。

「そういえばまた手配書の賞金が上がりましたよ」
「あら、本当ね。でも手配書のデザインはずっとこのままなのね。そろそろ今のあたしに相応しくもっと美人に描いて欲しいわね」
手渡された手配書には昔から変わらないあたしの顔が描かれていた。
これではあたしの美貌の半分も伝わってこない。


噂の魔女はあの有名な女騎士が逃した唯一の存在となっていた。
そしてその後も男を誘惑したり金目のものを拝借させてもらった。
その結果がこの手配書の賞金となっていた。
確かに何度か騎士団に襲われたが今のあたしの魔法で簡単に逃げられた。
そして女騎士としての立場も有効に活用していた。
騎士団に堂々と入れて更には情報も得る事ができる。
魔女の情報を掴んだと知らされたらすぐに動けた。
まさかあたし達が協力しているとは誰も思っていない。
もちろん騎士らしく仕事もこなし信頼を得ることも忘れなかった。
今度は山賊が遠方の村で暴れているので捕まえに行く事になっている。
もちろんあたし達二人でだ。
魔女の自由な生活と皆から尊敬される騎士の生活、あたし達はその二つを楽しんだ。

今日は彼女が出発前に騎士団へ顔を見せに行く事になっていた。
「ではそろそろ行きますね。こら、エッチな事ばかりしないで下さい。今度は私がその身体になるんですからね」
当然のように彼女は私が一人でいる時に何をしているか知っている。
でもそれはあたしも同じだ。

「では、いってきますね」
あたしは部屋から出ようとする彼女の手を掴んだ。
そしてありったけの熱いキスをしてあげた。
「もう遅刻しちゃうじゃないですか」
そうわ言うものの彼女はちゃんと私にキスを返してくれた。
「そうなったらあたしが代わりをしてあげるわよ♪」
「ふふふ、本当に困った魔女さんですね♪」
「それより良い事を思いついたのだけど聞いてくれるかしら♪」



おまけ

「騎士様、こんな所に私を連れて来てどうしたのですか?」
「ええ、姫様にこちらを見て頂きたいのです」
「まあ、この女性は手配書の魔女ではありませんか。遂に捕まえたのですね。でも規則では騎士団に引き渡すはずでは?」
「ふふふ、姫様、誰が魔女を捕まえたと言いましたか?」
「え、それはどういう意味ですか?」

「ほら、それを見て下さい」
「な、何なのですか、この光の玉は!?んぐ!?んんん、こほっ、こほっ、何かが私の口の中に・・・はあ、はあ、ふう、やっとこの身体を動かせるようになったわ♪」
「どうやら成功したようですね」
「ええ、それにしても若い身体というのも良いわね。体力も性欲もあって気に入ったわ。それにこれであたしもお姫様ね。見て、この豪華なドレス似合ってるかしら♪」
「ほら、お姫様の身体で楽しむのは後ですよ。誰かが来ない内に次の計画に行かないと」
「ふふ、分かってるわよ。ほら、お姫様、これがあなたの新しい身体ですよ」

「うう、私は一体!?え、どうして私がそこにいるのですか!?」
「何を言っているのかしら。あなたは手配書の魔女ではありませんか。ほら、見て御覧なさい」
「ああ、どうして私が魔女の顔に!?それにこの身体は・・・」
「まだ思い出せないようですね。では私と姫様で思い出させてあげますよ」
「や、やめなさい、私は姫なのですよ!こ、こんな事をしてただで済むと思ったら・・・ああ、や、やめて!」

「ふふふ、お姫様ももうすぐ私達の仲間ですね。あの女騎士さんと同じように♪」


おわり
















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