理想の身体(後編)
 作:verdsmith7


夜の静かなマンションの一室で男性教師は緊張しながらその時が来るのを待っていた。
スーツを脱ぎ下着姿になって教師の田中麻里が奥の部屋から戻ってくるのを待っている。
以前から憧れていた彼女を気遣ってマンションまで送ったが、まさか部屋に招かれるとは想像すらしていなかった。
今もマンションの部屋の前で抱きつかれた時の彼女の柔らかい感触が忘れられない。
その上部屋から漂う女性の部屋特有の甘い香りが男性教師を悶々とさせた。

「お待たせ。じゃあ早速やりますか♪」
部屋の奥から服を脱いで下着姿になった麻里(唯奈)が出てきた。
いつもはスーツでよく分からなかったがくびれのあるお腹とほっそりした手足が印象的だ。
単に服を脱いで来ただけかと思っていたが顔にはメイクがしてある。
学校では薄い化粧だったのでその化粧が麻里の大人の色気を更に高めた。

「田中先生、本当によろしいんですか?」
この質問は部屋に入ってから何度もしていた。
男性教師にとっても初めての経験で怖気づいているのが麻里(唯奈)には分かっていた。

「だって私もこうやって先生とセックスしてみたかったんです。いつも私のこと見てくれていましたよね」
「気付いていたんですか?!」
男性教師はいつも麻里を見ていたことを気付かれていたことに驚いていたが、普段から周囲ですら男性教師が麻里に気があることはバレバレだった。
それは麻里の身体になった唯奈もあっさり気付いていた。
「ええ、勿論です。だから私もこうすることができて嬉しいです」
その言葉は真っ赤な嘘だ。
本当は男性教師に見つめられて嫌悪感さえあった。
元の麻里も彼に好意すらなく、それは麻里の身体になっている唯奈も同じだ。
だが、麻里(唯奈)は早く麻里の身体でセックスをする為にこの男を利用することにした。
正直な所エッチをできるのなら誰でもよかったのだ。
そして目論見通り男性教師はそれに気付かぬまま麻里(唯奈)の甘い言葉にまんまと乗せられてしまった。

この男性教師でなくとも気になっている女性にこんな事をされれば引き下がることはできないだろう。
麻里(唯奈)は近づくと男性教師に優しいキスをした。
温かい唇の感触が伝わってくる、そして腰には麻里の手が回ってきた。
甘い香水の香りがする。
恐らくさっき付けてきたのだろう。
男性教師の股間は既にエッチの準備が完了していた。
そしてとどめにとばかり麻里(唯奈)は男性教師に最後の一言を浴びせた。
「いい加減そろそろやりませんか? 私もう我慢できないんです。ほら、私と一緒に気持ち良くなりましょう」
興奮の限界を超えた男性教師はその言葉を聞くと、麻里(唯奈)をベッドに押し倒してしまった。
そして中身が本物の麻里だと気付かぬままその身体とセックスを始めてしまった。


夜の闇が更に深まり出した頃、底辺学校の女子高生の唯奈の身体になった麻里は深い眠りに入っていた。
自分の身体がまさかその時初めてのセックスを行われているとは知ることもなく夢を見ていた。
その夢の中で麻里はいつもと変わりない日常を送っていた。
いつものように朝目覚めるとスーツを着て薄い化粧をしてお嬢さま学校へと向かう。
派手な格好やお洒落とは無縁の麻里として。

やがて担当しているクラスの教室へと入り生徒達に元気よく挨拶をした。
「皆さんおはようございます。今日も一日頑張りましょうね」
しかし麻里が予想した返事は返ってこなかった。
どうしたのだろうと教室を見回してみると生徒達は妙にそわそわしている。
自分の方を見て怖がっているようにさえ思えた。
「ど、どうしたの皆? さあ授業を始めるわよ」
もう一度声を掛けてみるが、それでも誰も返事もしれくれない。
すると生徒達がざわつき始めた。
「何なのあの人?」
「他の教室から先生を呼んできて!」
「早く逃げよう!」
まるで不審者でも入ってきたかのような反応を生徒達が向けてくる。
一体何が起こっているのか訳が分からない。
「な、何なのどうしたの!? 皆私よ、先生よ!」
だがそう説明しても生徒達は「うわ、何か騒ぎ出した」とパニックになるだけだった。


麻里はなぜ生徒達が自分を怖がるのか理解できないまま教室から逃げ出すとトイレへと駆け込んだ。
「はあ、はあ。皆一体どうしちゃったの?」
するとトイレに一人の女性が入ってきた。
急いで逃げようか迷っているとその人物を見て麻里は驚愕した。
「私!?」
その女性は麻里自身だった。
しかし、目の前にいる麻里の姿をした女性はなぜかサイズの合わない他校の学生服を着崩して着用していた。
凛とした真面目な麻里の身体には不釣り合いな格好をしている。

「あ、あなたは誰!?」
突然現れた自分そっくりの女性に動揺しながら質問をしてみる。
すると麻里の姿をした女性は静かに話し始めた。
「私は田中麻里よ」
淡々とそう説明をした。
「違う! あたしが田中麻里よ!」
声を張り上げて麻里の姿をした女性にそう主張した。
自分こそが本物の麻里であり目の前の女性がいかに自分に似ていようが本物の麻里なわけがない。
しかし、それをあざ笑うかのように麻里の姿をした女性は話し続けた。
「うふふ、あなたが田中麻里のわけないじゃない。だってあなたは底辺学校に通っている重村唯奈なんだもの」
「え?」
そう言われて麻里はトイレの鏡を見てみた。
映っているのは教師の田中麻里ではなく、底辺学校に通う不良ギャルの重村唯奈だった。
確かに服は仕事で着るスーツだが、身体は重村唯奈その人物で間違いない。
金髪に染められた長い髪に幼さの残る顔、そして大きく膨らんだ胸が明らかに自分が重村唯奈だと証明していた。
「それでもまだ自分が田中麻里だって言い張るつもり?」
その言葉を否定できる証拠は何も無かった。
そして自分が麻里だと思い出そうとしても出て来る思い出は唯奈として成長した記憶だけだ。
「あたしは・・・唯奈」
そう呟くと途端に気持ちが楽になった気がした。
「そうよね。あたしが唯奈よね。何で忘れてたんだろ」
「やっと思い出せたのね。ほら服もちゃんと交換しましょう。これはあなたの服でしょ」
そして二人は着ている服を交換していった。
麻里の身体をした女性が着ていた学生服に着替えると、鏡に映る姿は身体も服装も普段の唯奈と同じになっていた。
「さあ、早く学校に行った方がいいわよ」
スーツに着替えた麻里の姿をした女性はそう言うと唯奈(麻里)は嬉しそうに駆け出した。
「じゃあ、あたしはもう行くわね。あなたも先生頑張ってね♪」
そう言ってお嬢様学校を後にした。
そして唯奈が通っている学校に向かいながら自分の身体を大いに楽しんだ。
「この可愛い顔も大きな胸も全部あたしのなんだ。ふふっ、これからいっぱい楽しまなくちゃ」
そこで夢は終わった。



唯奈(麻里)は妙な感覚のまま眠りから覚めた。
見ると自分の胸には手が載せてあった。
どうやらオナニーをして疲れて眠ってしまったようだ。
夜遅くまで起きていたせいか中々眠気が取れない。
「う〜ん、怠いなー」
重い身体を引きずりながら洗面所に顔を洗いに行くと、そこには鏡がかけられていた。
「やっぱりあたし唯奈になってるんだ」
唯奈のハスキーな声そう呟く。

そして眠気を堪えつつ学生服に着替え始めた。
スルスルと制服を着ていく。
入れ替わる前に最後に学生服を着たのは10年近く前だったが、今は唯奈の身体のおかげかスルスルと着ていくことができた。
自分が通っていた高校と違って可愛い制服を着ることに少しだけ嬉しくなる。

鏡をもう一度見てみると唯奈の顔は昨日と違う印象に見えた。
化粧をしていないからだ。
幼い顔つきでこれでも可愛いように思うが、どこか物足りない。
そう思った唯奈(麻里)は急いで化粧道具を手に持った。
なぜかスッピンだと落ち着かない心を抑える為にメイクを始めた。
普段はあまり化粧をしない麻里だったが今は唯奈の身体自身が覚えているかのように化粧道具の場所や化粧の仕方が手に取るように分かった。
やがてメイクが終わるとその顔は昨日の唯奈と同じ顔になっていた。
「まあまあかな」
化粧をした唯奈の顔を見ると唯奈(麻里)は安心できる気がした。
まるでいつも見ている自分の顔のように落ち着くことができた。

そしてきちんと着ていた制服も昨日唯奈がしていたように着崩してみた。
ピシッとした制服姿が一気にフランクなギャルになった感じだ。
「ふふ、可愛いかな」
そんな自分の姿に少し満足してしまう。
これが本来の自分であるかのように思えた。

まだ学校に行くまでには時間がある。
「少しだけいいよね」
そして唯奈(麻里)は胸を揉みながらトイレへと入っていった。




「おはようっす! 唯奈っち!」
後ろから聞き覚えのある元気な声が飛んできた。
「かえちゃん、おはよう。って、何してるの!?」
かえでは昨日と同じように唯奈(麻里)の胸を後ろから揉んできた。
「うわっ、こらっ、やめてよかえで!」

かえでとはこの高校に入学してからの親友だった。
麻里にとっては他人の親友のはずだが、唯奈の精神と記憶の影響でずっと前からの親友のように思えた。
学校はダルいが彼女に会えるのは楽しい。
「うりうり〜、おお唯奈っちのおっぱいは今日も気持ちいいな♪」
色々と思う所があるが唯奈(麻里)に遠慮なく胸をぐにぐにと揉み続けてくる。
いつもの光景と分かっているが未だに慣れない。
「こらっ! いつまで揉んでるの!?」
流石に人前でこれはやばい
周囲の男子達は二人の百合をほんわかしながら楽しんでいるようだが流石にレズだと思われるのはまずいと思った。
やっとのことでかえでは唯奈の大きな胸から手を離した。
「ついでにおはようのキスだよー」
そう言ってかえでは唯奈(麻里)の唇にキスをした。
「もお、朝から何やってるの!?」
朝会ってからずっとかえでに振り回されてばかりだ。
それでもそんな彼女と会えて楽しいと思ってしまうのだから不思議だ。
「昨日は調子が悪いみたいだったから遠慮したんだけど、今日はいつも通りみたいだから、ね!」
笑って許してもらおうとする意図が丸見えの子憎いスマイルだったが、なぜかそれを見て許してしまいたくなった。
「はあ、もう分かったから。さっさと教室行くよ」
唯奈(麻里)はかえでの暖かい手を握りクラスへと向かった。

ただ学校に行くのは楽しいと言ってもそれは親友のかえでに会えるからであって授業が楽しいわけではなかった。
やがてそんな退屈な授業が始まると案の定先生の話をボーっと聞いてしまった。
どうせ簡単な授業だ。
ちゃんと聞いてなくても理解できている。
そう思っていた。
しかし、そんな思いが態度に出てしまっていた。
「こら! また先生の話を聞いてないな!」
真面目に教師の話を聞いていない唯奈を怒る声が教室に響いた。
明らかに教師はイライラしている。
「聞いてるよー」
唯奈っぽい素っ気ない返事をする。
それが余計に教師の怒りに火をつけてしまった。
「ならこれを解いてみろ。今説明していた所だ。ちゃんと聞いてたなら簡単だよな」
唯奈(麻里)は面倒そうに黒板に書かれた問題を見てみる。
こんな問題朝飯前だと思いすぐに答えようとした。
「えーと、うん? これは、その・・・分かりません」
黒板に書かれた問題を見た瞬間凍り付いた。
なぜなら全く解き方が分からないからだ。
教師の麻里の記憶から確かに見た記憶はある。
しかしその解き方はすっぽり頭から抜け落ちていた。
いや、むしろ最初から存在しなかったようにさえ感じる。

「そら見ろ! 授業を真面目に聞かんからだ!」
皆が見ている前で唯奈(麻里)に恥をかかすことができた教師は少し満足気味に言うと授業を続け始めた。

唯奈(麻里)は呆然としながらガラスに反射した自分を見た。
「もしかしてあたまの中も唯奈になってるの?」




同じ頃お嬢様学校では生徒達が次の授業に備えて教科書や道具を準備していた。
麻里(唯奈)はクラスの出席確認を終えると面倒そうに職員室へと向かっていた。
「ふう、やる事は分かってるとはいえ教師の仕事も面倒ね。それに昨日は夜遅くまでエッチしてたから眠いしいっそ有休でも取れば良かったかしら」
麻里(唯奈)の口からつい以前の口調に戻ってしまっていた。
そんな麻里(唯奈)に対し声を掛けてきた人物がいた。
「あの、先生・・・」
後ろを振り返ると、そこには麻里の担当している女子生徒が不安そうな表情で見ていた。
「昨日は助けてくれてありがとうございます。ちゃんとお礼を言ってなかったので」
その女子生徒には見覚えがあった。
それもそのはずだ、その女子生徒は最初に唯奈が襲っていた女の子だ。
本来なら今頃彼女の身体になっているはずだった。
それをこの身体の元の持ち主である田中麻里に見つかり計画を変更したのだ。

「あなたはあの時の!・・・千里ちゃんだっけ?」
女子生徒に付けてある名札をこっそり確認した。
そこには「北村千里」という名前が書かれていた。
麻里の記憶が少し分かるようになっていたが、まだ表層部分程度にしか分からなかった。
出席確認の時は出席表を順番に読み上げるだけだったので一々生徒の顔まで確認はしていなかったのだ。
それに昨日は田中麻里という新しい身体を手に入れたことに浮かれていたため、まさか担当している教室に最初唯奈が襲った女の子がいるとは気づけなかった。

「先生、昨日はあの後大丈夫でしたか?」
言われてみればあの時麻里に見つかった後、千里とは会っていない。
しかも麻里が唯奈を追いかける所を見ていたのであの後何があったのか気になるのは当然だろう。
「え、ええ。もちろん大丈夫よ」
予想外の人物に声を掛けられ少し動揺してしまうが何とか説明をしようとした。
何とか冷静になろうと心掛ける。
大丈夫、流石に自分達が入れ替わっていることは知らないはずだ、と自分に言い聞かせる。
「それであの人はどうなりました?」
「へ!?」
その質問が来ることは予想していなかった麻里(唯奈)は急ぎ適当な言い訳を考えた。
「あ、あのね。先生あの後あの子と話したのよ。そしたら千里ちゃんの誤解だって分かったのよ」
「え? 先生それどういう事ですか。私昨日あの人に襲われて何かとられそうになったんですよ」
正真正銘襲われていた当人からすれば誤解だと言われれば納得できないだろう。
しかし、既に言ってしまった事で後には引けなくなってしまった。
「と、とにかく無事解決はしたから大丈夫よ。ごめんなさい、先生ちょっと用事があるから! また今度説明させて」
ここは唯奈としてボロを出さないようにその場を離れる必要がある、そう思い急いでいるフリをした。
そう言って麻里(唯奈)はそそくさと千里から離れて行った。

残された千里は何か釈然としない気分になっていた。
先生の説明もあやふやだったのはもちろんだが、それ以上の違和感も感じていた。
「先生、何だかいつもと様子が変・・・」
いつもの田中先生と明らかに様子が違うと千里は感じ取っていたのだ。
「どうしたんだろ。先生が私を見た時の目なんか昨日襲ってきたあの人みたい・・・」

「ふう、危ない所だった。流石に身体を入れ替えたとは気づいてないようだけど注意しておかないとね。今度千里ちゃんに会うまでには適当な言い訳を考えておかないと」
千里と別れた後麻里(唯奈)は今後の事を少し考えていた。
そして自分の身体を見下ろしながら言った。
「千里ちゃんか。あの子も可愛いけど、やっぱりこっちの身体にして正解だったわね。うふふ、さあ次の授業を頑張ろうかしら先生として」



太陽が西に傾き始めた頃ようやく退屈な授業が全て終わった。
「はあー、やっと全部終わったー」
そう言って唯奈(麻里)は背を伸ばして授業から解放された喜びをかみしめた。
しかし、喜んでばかりもいられなかった。
昨日は単に唯奈と身体を入れ替えられただけと思っていた。
しかし、実際には精神も記憶も入れ替わった唯奈に近づいているのだ。
このままずっとこの身体でいれば本当に唯奈になってしまうかもしれない。
そんな不安を感じ唯奈(麻里)は一刻も早く元の身体に戻らないといけないと思い始めた。


「おーい、唯奈。久々にこれからカラオケでも行かない?」
「え!?」

正直な所元の身体に戻る為にそんな所に行っている場合ではなかった。
「最近あんた付き合い悪いよ。ほら、今日は逃がさないんだから!」
そう言ってかえでは唯奈(麻里)に抱きつくと脇腹をくすぐり始めた。
「あははっ、ちょっと止めてよ!」
「嫌だね。行くって言うまで止めてあげないんだから」
くすぐられた所から強烈な笑い声をあげてしまう。
息が詰まりそうになるほど笑わされてしまい遂には観念してしまった。
「あははっ! わ、分かったから止めてよ! はあ、はあ」


「ほら、あんたカラオケ好きでしょ。先に歌いなよ」
そう言ってかえではマイクを渡してきた。
普段麻里はカラオケ自体来た事すらなく、せいぜい学生時代の打ち上げで行ったきりだった。
なので何を歌えばいいかまるっきし分からなかった。
そこで一先ず昔カラオケで歌って盛り上がった昔のアニソンを歌うことにした。

少し緊張をしながら一所懸命に歌った。
正直上手く歌えているかとかは二の次だ。
歌い終えるとかえでから拍手をされ歌い切った解放感を味わった。
「いえーい! それにしてもあんたそんなの歌うんだ。最近流行りの曲しか歌わなかったから意外だな」
本当は久々のカラオケで引かれるかと思っていたが、意外にも評判は悪くないようだ。

その後も順番が来るたびに歌った。
最近の曲はさっぱりだったがかえでと盛り上がることはできた。
一緒に歌い一緒に楽しむ

カラオケを終えると家に帰ることになった。
「今日は楽しかったよ。ありがとう」
それは正直な感想だ。

「唯奈、心配してたんだぞ」
突然かえでは真剣な顔になって麻里にそう言った。
「え?」
そんな事を言われると思っていなかったので少し戸惑う。
「だってあんた最近凄くテンションが低かったし、あたしらと全然遊ばなかったじゃん」

「そんなに心配してくれたんだ・・・」
今日無理矢理カラオケに誘ってくれたのもかえでなりに心配しての行動だったらしい。
それを知って唯奈(麻里)は少し嬉しくなってしまった。
カラオケ店から出ると辺りはすっかり暗くなっていた。
「じゃあね」
「またね。」
かえでと別れると軽い足取りでアパートへと向かった。
アパートに戻ると今日の事を思い出して笑みがこぼれた。
「今日は本当に楽しかった♪」
唯奈の身体になって心の底から楽しいと感じた。



「私の身体楽しんでくれてるみたいね」
アパートの部屋の前には何と麻里の身体の唯奈が立っていた。
まさか身体を奪った向こうから自らやって来るとは思ってもいなかった。
「あたしの身体!?」
「うふふ、どうせなら中に入って話さない?」

「相変わらず散らかってるわね。ちゃんと掃除してるの?」
入れ替わる前から元々散らかっていた部屋だ。
それは元々本物の唯奈がだらしなかった為である。
「五月蠅いなー。元々あんたの部屋でしょ。それよりあたしの身体を返しなさいよ」

「身体は返せないけどちょっといいことしてあげるね」
そう言って麻里(唯奈)は唯奈(麻里)にキスをした。
「ん!んんー」
自分の身体からキスをされた唯奈(麻里)は不思議な気分を味わった。
懐かしい自分の身体から発せられる体臭や肌の温もりはもちろん、唇から自分の唾液以外のモノが流れてくる気がした。
それは身体を入れ替えられてから久しく忘れていたもののように思えた。
「ふう、あたしの味ってこんなんだったんだ。それに久しぶりにこの口調で話すのはやっぱり楽でいいね。あんたも少しは楽になった?」
キスを終えると麻里(唯奈)は以前の唯奈と同じ口調になっていた。
入れ替わる前の話し方で楽に自分が本来話していた喋り方が自然にできて凄く気分がよさそうだ。


「今度は私に何をしたの? って私の口調が戻ってる。それに麻里の記憶も分かる」
一方の唯奈(麻里)も以前の口調に戻っていた。
久し振りに麻里として話している気分になる。
しかし、身体は相変わらず元に戻っているわけではなかった。
「どう? 少しだけ記憶と精神が戻った感想は?」
「なら今度は身体を元に戻してよ!」
何とか身体を戻すよう訴える。
しかし、麻里(唯奈)は身体は戻そうとはしてくれないようだ。
「それはダーメ。あたしこの身体気に入っちゃったんだもん。もう返さないしこの身体はあたしのだよ。あたしさ、本当はお嬢様学校の生徒やあんたみたいな先生になりたかったんじゃないんだ」
「それじゃあどうして私と入れ替えたの?」


「だって面白いじゃない。頭が良くて皆に信頼されてる美人教師が底辺学校の不良ギャルのあたしになるなんて」
「そ、そんなことで!?」
つまり唯奈は面白半分で麻里の身体と入れ替えたということだ。
「なら、もう十分楽しんだでしょ。身体を元に戻してよ」
今までの説明が本当なら十分唯奈の目的は達成されていはずだ。
なら後は元に戻るだけだ。
「うーん、最初は元に戻そうと思ってたんだけどさ。もう戻る必要ないかな」

「そんな・・・い、いやよ!私の身体返してよ」
麻里にとってそれは最悪の答えだった。
一生このままであれば、これからの人生を唯奈として生きていかねばならない。
麻里として今まで築いてきた人生を唯奈に奪われることを意味していた。
だが、唯奈はその麻里の人生をとても気に入ったようだ。
「だってあたしがその身体に戻っても何も良いことないじゃない。頭の悪い底辺学校の不良ギャルでいるよりお嬢様学校の先生の方が断然勝ち組でしょ」
麻里(唯奈)が言っていることは正しかった。
底辺学校の頭の悪い女子生徒でいるよりお嬢様学校の教師の方が社会的地位もあり、学力もある。
元に戻る理由などせいぜい若いというぐらいのものだった。

「あんたがあたしの身体であたふたしてる姿最高だったよ。あたしならあんな風に可愛くできないしね。ほら、もっとあたしの身体で可愛くしてみなさいよ」
そう言って麻里(唯奈)は唯奈(麻里)の服を無理矢理脱がし始めた。
「きゃあ! 何するの?」
「決まってるでしょ。その身体をもっと気に入ってもらおうと思ってるのよ」
鍛えた麻里の身体で次々に服を脱がせられてしまった。
そしてあっという間に裸にされてしまった。
「や、やめて。脱がさないで」
唯奈の身体の麻里は、奇妙な事に無理矢理襲われそうになっているのになぜか興奮し始めていた。
股間はぐっしょりと濡れている。
それに麻里(唯奈)が気付いた。
「あたしって男も好きだけど女同士でもすぐ興奮しちゃうんだ。あたしも最初にあんたを見た時凄く興奮してたんだよ。だから今あんたは自分自身に興奮してるのさ」

「そんな!? じゃあ、私自分に興奮してるの?」
唯奈の身体がレズだといっても中身は今まで女性に恋愛感情を抱いたことのない麻里だ。
同性、しかもあろうことか自分自身の身体に興奮していると言われ唯奈(麻里)は理性が追いつかなくなっていた。



すると麻里(唯奈)は唯奈(麻里)の胸に吸い付いた。
「うふふ、唯奈ちゃんのおっぱい美味しい」
乳房が麻里(唯奈)の口に吸われ更に乳首を舐められている。
しかもその舌使いは唯奈(麻里)の気持ち良いポイントを的確に攻めていた。
「あっ、そんなこと私の身体でしないで、あん!」
「うふふ、もうこの身体は私のモノよ。唯奈ちゃん」
わざと麻里(唯奈)は唯奈(麻里)をそう呼んだ。
「あん! ち、違う。あたしが麻里よ」
揉まれた胸からやって来る快感を必死に払いのけながら唯奈(麻里)は否定した。
しかし、その身体も気持ちよくなっている姿も全てが唯奈のようにしか見えなかった。
「もう無理して偉い教師として振る舞わなくてもいいのよ」
そう言うと麻里(唯奈)は唯奈(麻里)を揉んでいた手を股間の方へと動かした。
「んん!」
唯奈(麻里)は一瞬身体に火花が飛び散ったように身体を震わせた。
「これからは毎日楽しく自由に何も考えず生きていくの。私の身体でね♪」
少しずつ唯奈(麻里)の股間に入れている指を早く動かした。

「あんん!」
唯奈(麻里)は股間から出て来る気持ちいい快感に抗おうとしたがすぐに諦めてしまった。
理性が唯奈の性欲にあっさり負けたのだ。
今は麻里(唯奈)の動かしている手が与えてくれる気持ちいい衝動に完全に酔ってしまっていた。
「だいぶ身も心唯奈になってるね。麻里のことは私が代わりにやるから。だから安心して唯奈になっちゃってね♪」
そう言って麻里(唯奈)はまたキスをした。
先程まで戻っていた麻里としての精神や記憶がまた自分から離れていく気がする。
そして自分の中に再び唯奈としての精神や記憶が入ってきた。

「あ、あ! んんー!」
そして唯奈(麻里)の鋭い声が部屋に響くと同時に股間から液体を出してしまった。
「はあ、はあ、あたし・・・」
そう言って唯奈(麻里)は呆けた顔になってしまった。
すっかり身も心も唯奈になってしまったようだ。
麻里(唯奈)はそれを見て麻里が唯奈の全てを受け入れたと知ると少し何かを考えた。
そしてまたかつての自分の唇にキスをした。
「これからも唯奈として楽しんでね♪ そうだいいことをしてあげる。あなたが唯奈にすぐ変わるのもつまらないしね。少しずつ変わっていく所を楽しませてもらうわね」




あの日以来唯奈(麻里)は唯奈の精神と記憶に支配されつつあったがまだ麻里としての精神をなんとか保っていた。

今朝も鏡を見てギャルメイクをして制服を着崩して登校の準備をしていた。
最初この準備にも抵抗はあったが今では毎朝の日課になっていた。
麻里として何度かそれを止めようと思いもしたが唯奈の精神が自分にこう語った。
「あんたは唯奈でしょ。唯奈は制服をピシッと着てスッピンで学校になんか行かないわよ」
そう囁かれると唯奈(麻里)は素直に従うしかない気がした。
「そうよね。あたしは唯奈よね。だから唯奈らしくしないと・・・ち、違う。あたしは、私は麻里よ・・・」
こんな光景が毎朝続いた。
学校に行けば周囲が皆唯奈として接してくる為、必然的に唯奈として振る舞ってしまう。
日に日に麻里は身も心も唯奈になっていく気がした。



一方の麻里(唯奈)は田中麻里として教師生活を楽しんでいた。
仕事である授業をこなし麻里(唯奈)は自分より頭の良い生徒達に勉強を教え信頼されることに快感を覚えた。
皆が自分を田中先生と信じている。
そしてまさか本物の田中先生が校門の前にいるあの金髪の不良ギャルだと誰も気付かないと思うとゾクゾクした。
唯奈(麻里)はあれからも学校の前で身体を返してもらおうと待っていた。
恐らくいくら頼んでも身体は返してもらえないだろうが、何とかチャンスをうかがっていたのだ。
それを見つける度麻里(唯奈)は心の中で笑っていた。
「あははっ、今日も来てる。生徒達に怖がられて何だか可哀想になってくるわね」


「あの先生?」
呼び止めたのは最初唯奈が襲おうとした北村千里だった。
しかし、麻里の身体になってからは千里のまだ幼い身体には興味がなくなっていた。
だからその後は教師と生徒との関係を維持して過ごしてきた。
「なにかしら? 授業の質問?」
教師らしく千里に聞いてみた。
「先生最近何かあったんですか?」

その言葉を聞いて麻里(唯奈)は一瞬ドキッとした。
もしかして入れ替わっているのがバレている・・・
「え、どうしてそう思ったの?」
何とか焦りを隠しつつ無難な返答をした。
「何か雰囲気が変わった気がしていたので。以前に比べて随分オシャレになったと思ってました」
「あー、それね。友達がもう少しお洒落をしたらって言うもんだから少しイメージチェンジをしてみたのよ」
イメージチェンジというには少し印象が変わりすぎた感は確かにあった。
正直な所お金を貯め込んでいた麻里の貯金で可愛い洋服を買い漁っていたのだ。
すると千里はまだ何か言いたげではあったが一先ず納得したような顔つきになった。
「そ、そうだったんですか。最近前に比べてお洒落というかフランクな感じになってたので気になってたんです。それでは私は次の授業の準備があるのでこれで失礼します」
千里が見えなくなると麻里(唯奈)は静かに考えた。
「ふーん、思ったより勘の良い子ね。さてどうしようかな」
自分に害が出るとは思えないが、このまま見過ごすのも危険な気がした。
そこで唯奈は頭の良い麻里の頭脳を活用することにした。
麻里の脳で考えると自然と冷静に判断することができる。
唯奈はこの身体を手に入れてから何度も麻里の頭を活用していたのだ。
「そういえば千里ちゃんは麻里のことを結構気に掛けてたみたいだったわね。・・・それならそろそろあれをしましょうか」

話を終えて離れた場所に来た千里はやはり嫌な予感がしていた。
「先生やっぱり変だ。絶対何かあったんだ・・・」
千里には心に引っ掛かる事がたくさんあった。
そして自分が他校の生徒に襲われた日から変になったことを思い出した。
すると窓からあの時自分を襲った他校の女子生徒が校門の前にいるのに気付いた。
そわそわしながら誰かを待っているようだ。
「もしかして先生・・・」


空が赤くなって少し時間が経つとお嬢様学校の生徒達が下校を始めた。
唯奈(麻里)はそこから目的の人物が出て来るのをこっそりと待っていた。
すると近くを歩いていた男性に呼び止められてしまった。
どうやらお嬢様学校の警備員のようだ。
以前は校門の外を歩いていることはなかったはずだ。
「君こんな所で何をしているんだい? 最近この辺でかつあげをされたっていう生徒がいてね。ちょっと話を聞かせてほしいんだけど」
どうやら前回唯奈がかつあげをしているという話が警備員の耳に届いたようだ。
それで警戒が強まっているのだろう。
唯奈(麻里)は自分の身体を見ると固唾を飲んだ。
もし捕まってしまえば自分が前回のかつあげの犯人ということにされてしまうだろう。
何せそれをしようとしていたのは正真正銘この身体だったのだから。
唯奈(麻里)はその場を逃げるしかなかった。

「あ! こらっ、待ちなさい」
逃げていると後ろから警備員の声が聞こえてきた。
どうやら追いかけて来ているらしい。
しかもこの唯奈の身体は麻里の元の身体より運動神経は良くない上に大きな胸が揺れるせいで走り辛い。
このままでは捕まってしまう。
そう思った時だ、息を切らしながら走っていた唯奈(麻里)の腕を突然誰かに捕まれると薄暗い通りに引っ張られてしまった。
「あれ? どこに行ったんだ?」
間一髪の所で警備員はどうやら見失ってくれたようだ。

「はあ、はあ。ここなら大丈夫ですね」
女の子が心配そうに声を掛けてきた。
そして唯奈(麻里)を匿ってくれた正体は予想外の人物だった。
「北村さん!?」
それは麻里が担当しているクラスにいる女子生徒の北村千里だった。
最初麻里が唯奈から助けた女の子だ。
「先生・・・田中先生なんですよね!? やっぱりそうじゃないかと思ってました」
唯奈(麻里)が千里の名前を呼ぶと千里は確信したかのような表情になった。

「あの後先生の様子が変だと思ってました。まさか入れ替わっていたなんて・・・」
「うん、こんな身体だけどね・・・」
入れ替わる前の麻里とは雲泥の差がある唯奈の身体だったが、千里は真剣に身体を入れ替えたことを聞いてくれた。
それでも千里は中身が本物の麻里だと気付いてくれて本当に嬉しかった。
千里からあの後麻里の身体を奪った唯奈はだいぶ雰囲気が変わったことを知らされた。
派手な格好が増え男性との噂も絶えなくなっていた。
千里が聞いただけでも学校の男性教師数人とは関係を持っている噂が流れているらしい。
「はあ予想通り、私の身体で好き放題やってくれてるわね」
身体を無理矢理奪った相手が元不良女子生徒だから麻里の身体で地味な生活をしているとは思わなかったが、改めて聞かされるとショックだった。

「とにかく元の身体にもどらないと」
しかし、元に戻るにしても良い方法が思い浮かばない。
かと言って素直に身体を戻してくれと頼んだ所で拒まれるのは前回の時点で分かっていた。
すると千里は神妙な顔になりながら提案をした。
「先生、実は私、心当たりがあります」

そこは麻里が元の身体の時に住んでいたマンションだった。
今は麻里の身体の唯奈が住んでいる。
「先生開きました。どうやら誰もいないみたいです」
千里は麻里(唯奈)の鞄からこっそり部屋の鍵を盗んでいたのだ。



「あ、あった! ありましたよ先生」
千里が見つけたのは唯奈が持っていたあの口紅だ。
入れ替わる前にも入れ替わった後にも何度か同じ口紅を使っているのを見ていた。
これをもう一度使えば元に戻れるはずだ。
「これで先生が元に戻れるんですね」
千里は自分のことのように喜んでくれている。
さあ、あとは元の身体を見つけて口紅を使えばいいだけだ。


「二人ともこんな所で何してるのかな?」
突然女性の声が二人の耳に届いた。
部屋の主であると共に麻里の身体を奪った唯奈がマンションに戻っていた。
「あなたもこれまでね。これで元に戻れるんだから」
千里が持っている口紅を使えば全てが元に戻る。
長く続いた悪夢もこれで終わりにできるはずだ。

「北村さん、私が彼女を押さえているから。その間に口紅を使って」
千里と二人で協力すれば何とかなる。
そう思い唯奈(麻里)は自分の身体を奪った唯奈へと駆けだした。

しかし、それはできなかった。
後ろから唯奈(麻里)を誰かが抑えつけたからだ。
部屋の中にはこの3人以外誰もいないはずだ。
自分を掴んでいる人物を確認する為に顔を後ろに向けた。
「き、北村さん何をしているの!?」
そこにいたのは協力してくれているはずの千里だった。
突然唯奈(麻里)は千里に羽交い絞めにされてしまったのだ。
なぜ千里がそんな事をするのか理解できずにいると千里は薄気味悪く笑い始めた。
「あははっ、唯奈っちの身体はそれでしょ。他人と身体を入れ替えるなんてダメだよ」
そう言いながら後ろから唯奈(麻里)の大きな胸を揉み始めた。
その手の動かし方や揉む強さには思い当たる人物がいた。
「・・・もしかしてかえでなの?!」
「やっと気づいたんだね。そうだよ。かえちゃんだよー」
千里はさっきまでの大人しい雰囲気は消えていた。


時は数日前にまでさかのぼる。

学校から家に帰ろうとしていたかえでは突然前から歩いて来た女性に声を掛けられた。
「久し振りだね、かえちゃん」
突然見知らぬ年上の女性から馴れ馴れしく呼ばれたかえでは警戒した。
「ん、あんた誰だ? おい、あたしあんたなんか知らないぞ。人違いじゃないの?」
「ほら、あたしだよ唯奈だよ。って言ってもこの姿じゃ分からないよね」
かえでから見れば見ず知らずの女性が親友だと語る危ない奴にしか見えなかった。
それに唯奈とは共通点もない見た目はスーツを着た堅そうな格好である。

そこで麻里(唯奈)は二人しか知らない秘密を言うことにした。
「あんたと初めて付き合ったのは高校に入って購買部だったよね。それにかえちゃんのお尻にはホクロがあるんだよね」
それを聞いてかえでは表情が変わり始めた。
「どうしてその事を・・・ほ、本当に唯奈なの?」
「やっと信じてくれたね。そうだよー、あたしが唯奈だよ」
親友がやっと気づいてくれたので表情を崩して笑顔になる。
「はえー、唯奈がまさかおばさんになってるとはなー」
かえでは親友がだいぶ年上の女性になって驚いていた。
どういう原理でこんな事になったのかは分からなかったが、その喋り方や反応は確かに親友の唯奈だと思った。
「失礼ね! まだ28よ!」
年齢の事を指摘されると共に親友からおばさん扱いされてつい麻里の口調で怒ってしまった。
麻里の身体は気に入ってはいたが、年齢に関してまで満足しているわけではなかったのだ。
「何だ十分おばさんじゃん(笑い)」
麻里(唯奈)がぷんぷんと怒っているのも気にも留めず笑うかえでだったが、相手の反応を見て確かに中身が唯奈だと信じてくれたようだ。

そして麻里(唯奈)はこれまでの経緯をかえでに説明した。
かえではまだ完全には信じられないという感じではあったが話は聞いてくれた。
「それでどうするの? 元に戻るの?」
かえでとしては本物の唯奈に戻ってもらいたいと思った。
「実はね面白いこと考えたんだ」
そう言ってイタズラな笑みを浮かべると鞄の中から口紅を出してかえでに渡した。



「あたしの演技も中々だったでしょ。先生・・・田中先生なんですよね? やっぱりそうじゃないかと思ってました」
唯奈(麻里)と会った時の演技をするかえで、つまりは最初から千里(かえで)に騙されていたのだ。
「あたしもお嬢様学校に興味があったんだ。そしたら本物の唯奈からじゃあ行ってみないかって誘われちゃってさ。それでこんな身体になってみたんだ♪」
嬉しそうに新しく得た千里の身体を自慢する。
長い黒髪に、白い肌、可愛らしい顔に声と女子高生としては理想の身体だ。
「じゃ、じゃあ。本物の北村さんは?」
入れ替えられた本当の千里はどうなったのか不安がよぎる。
「今頃あたしの身体でオナニーでもして楽しんでるんじゃないのかな。すっかりあたしの身体気に入ってたみたいだし」
千里はどうやら麻里(唯奈)に呼び出された所をかえでに襲われたらしい。
「千里ちゃんとのキス美味しかったよ。全然抵抗もしなくてずっとプルプル震えてて可愛かった♪」
千里は襲われた恐怖で動けないまま無理矢理キスをされたようだ。
信じていた先生だと思っていた人物は中身は別人で更に他校の女子生徒と共に襲われたのだ。
そこで怖くなって動けなかったのだろう。

「入れ替わってすぐに何度もあたしがいかせてあげたんだ。最初は嫌がってあたしの身体で泣いちゃったんだけど。その姿が可愛くてさ。ついあたしも熱が入っちゃったんだよ」
かえでの身体になった唯奈はそのまま何度も唯奈の身体になったかえでにいかされそして・・・
「でね、あたしの身体で気持ちよくなる度にドンドン口調も変わってさ、あたしそれを見てゾクゾクしちゃった。最初は大人しかった女の子が段々あたしみたいになっていくんだよ」
千里(かえで)はなおも入れ替わった後の千里の事を話した。
できれば聞きたくないとも思ったがそれに構わず千里(かえで)は耳元で説明を続けた。
「そんな、酷い・・・」
「でも、何度もいってたら急に自分からオナニーを始めるようになってね。最初はあたしの方がびっくりしたよ。『あははっ!この身体こんなに気持ちが良くて楽しいなんて本当最高!』って言いながらオナニーするんだもん」


「お願い! 北村さんだけでも身体を返してあげて!」
必死で生徒を助ける為に懇願する。
せめて千里だけでも助けたいと心の底から願った。
しかし、その願いは届くことは無かった。

「先生あたしはこの身体気に入ったからもう戻らなくてもいいよ♪」
嬉しそうな声で奥から出て来たのはかえで(千里)本人だった。
「あははっ、田中先生本当に唯奈っちになったんだね♪」
その姿その喋り方はどう見ても聞いてもかえでとしか思えない。
千里の要素が何一つないのだ。
「北村さんなの?」
違うよ、という答えを期待したがそれをきいたかえで(千里)は笑いながら答えた。
「そうだよー、千里だよ。今はかえでになってるけどね♪ 先生も唯奈っちになったんだからほらもっと楽しもうよ♪」
嬉しそうに近寄って来るとかえで(千里)は唯奈(麻里)を押し倒すと無理矢理服を脱がせ始めてしまった。
「きゃあ! 北村さん、な、何をするの!?」
押し倒されてしまった唯奈(麻里)はかえで(千里)が何をしようとしているのか理解できなかった。
いや、正確には理解したくなかった。
「あたしがかえでになったみたいに先生も唯奈っちになれば全部楽しくなって元の身体なんかどうでもよくなるよ。ほらあたしが手伝ってあげるよ。先生が唯奈っちに身も心もなれるようにね♪」

「お、お願い! き、北村さん! お、思い出してあなたはかえでじゃない・・・あん!」
かえで(千里)に襲われながらも何とか理性を取り戻すよう訴えかけた。
しかし、千里は既にかえでそのものになっていた。
かえでがいつもするように胸を揉み何度もキスをされる。
「あははっ、思い出すのは先生の方だよ。ほら、あんたは唯奈なんだからもっと唯奈らしくしないとね」
そう言うとまるで唯奈(麻里)の気持ちの良い所を全て把握しているようにかえで(千里)は気持ちよくさせた。
「うっ! んっ、んっ!」
かえでの指が乳首をクリクリと弄るとつい声が出てしまった。
段々と気持ち良くなってくる胸からの感触、それと同時に唯奈がかえでと今まで一緒に過ごしてきたことの記憶が溢れてきた。
「はあ、はあ。かえで・・・」
「そろそろ思い出してきた? あたし達今まで親友以上の関係をしてきたって」
そう言われて記憶が完全に蘇った。
初めてかえでと会った時のことからその後すぐに仲良くなり唯奈とかえでが何度も女同士でエッチをしてきたことを。
だから麻里が唯奈の身体で初めて会った時もその後もかえでと会うと妙に楽しく安心できたのだとやっと理解できた。
そして自然に唯奈(麻里)はかえで(千里)を求めてしまった。
「はあ、はあ。か、かえちゃん。お願いもっと気持ちよくしていつもみたいに・・・」
甘えた切ない声で親友にそう頼んだ。
たとえ元に戻らなくてもこうやってずっと一緒にいることができればそれで満足だと思えた。
「うん、大好きな唯奈の為だもん。しっかり気持ち良くなってね」
やがて唯奈(麻里)の身体が大きく震え始めた。
「あっ、あっ、んんん!ああ!」
そして唯奈(麻里)が身体を震わせると股から液が溢れ出た。
「はあ、はあ。かえで・・・」
絶頂した後も親友の名を呼び続ける。
麻里はもう親友のかえでを求める唯奈そのものになっていた。
「これからはずっと一緒だよ先生、親友としてね♪」
かえで(千里)がそう言うと親友の唇に軽くキスをした。
「はあ、はあ。ああ、かえであたし達ずっと一緒よ」
すると唯奈(麻里)もキスを返してきた。
お互いを求める二人の親友の深いキスはしばらく続いた。


「うふふ、上手くいったみたいね」
部屋の奥から二人の情事を楽しんでいた麻里(唯奈)と千里(かえで)は全てが終わったことを知るとひょっこり顔を出してきた。
「さあ、次はかえでの番よ。千里ちゃんになる準備そろそろはいいかしら?」
「あたしはこのままでもいいんだけどなー」
千里(かえで)は別に中身まで千里になる必要性は感じていなかった。
どうせならかえでの精神のままお嬢様学校に千里の身体で通いたかった。
「だめよ。あなたはもう底辺学校のギャルじゃなくてお嬢様学校の優秀な女子生徒なんだから。大丈夫よ私が優しく教えてあげるから」
そう言って麻里(唯奈)は千里(かえで)の服を脱がしながらキスをした。
すると千里(かえで)は笑みを浮かべた。
「分かったよ、先生♪」



その後、唯奈(麻里)とかえで(千里)は親友として底辺学校に通うようになった。
しかし、かえでの方が頭が良かったせいか今では元教師だった唯奈(麻里)の方が元生徒のかえで(千里)に教えられる立場となってしまった。
今日もかえでに勉強を教えてもらっている。
「ごめんな。勉強なんかに付き合わせちゃって」
本当は今日もカラオケや買い物に一緒に行きたかったのだが、かえでの方から勉強をしないとダメだと言い聞かされてしまった。
「あたしはこうやって唯奈っちに教えるの楽しいから別にいいよ」
「元の身体ならこれぐらい簡単だったと思うんだけどなー」
今も唯奈(麻里)はポリポリ金髪に染めた髪を掻きながら難しい問題にお手上げ状態となっている。
何となく昔は解けたような気がするが今はそのやり方も忘れ、解こうとする気力さえ起きなかった。
「ほーら、もう少し頑張りな。そしたらまた気持ち良くしてあげるからさ」
かえでの言葉の通り本当の目的は一緒に勉強することではなくこっちが目的だった。
「分かったよ。でもすぐにやる気を出すからキスだけでもしてよ」
そう言ってかえで(千里)に唇を出した。
「もう本当にエッチなって。本当仕方のない先生ね」
呆れながらも唇を重ねる、その瞬間が二人にとって最高に幸せだった。
この身体になって教師と生徒という関係ではなくなった、しかし今はお互いに大切な親友の関係となっていた。
そう思うとこの身体は理想の身体であるような気がした。



エピローグ

「まさか私がこんな優等生になって一番頭の悪かったあんたが今では先生とはなー」
千里(かえで)はまっすぐに伸びた黒い髪をサッと手で撫でた。
「あーあ、私も教師と入れ替わっておけば就職とか楽だったのにな」
そして少し残念そうに今の身体を見た。
それでも今のかえでは以前よりはるかに金持ちの子供になっており不自由のない生活を送っている。
今年の夏はフランスに家族で旅行が行けると自慢もしており何だかんだで今の千里の身体を気に入っているようだ。

一人だけ大人の身体を手に入れた唯奈に対して少し不満はあったようだが、そんな時麻里(唯奈)は教師としてこう言った。
「うふふ、皆も私みたいにすぐ大きくなって素敵な旦那さん見つけられるわよ」
その薬指には結婚指輪がはめられていた。
「それまではしっかりお上品になって女として磨いておかないとね」

「ほら、そこ胸を揉まないの。もうあなたはお嬢様学校の優秀な生徒で下品で頭の悪い男子じゃないのよ」
膨らんだ胸を物珍しそうに触っているのはスタイルの良い学級委員だ。
中身は底辺学校の問題児だった男子でもある。
まだ入れ替わってから日が浅い為未だに入れ替わって得た女体を男性目線で見ているようだ。
「あ、先生ごめんなさい。おれ、いや私まだ女の子に慣れてなくって」
男口調は抜け切れていないようだが、それももう少しで何とかなるだろう。
麻里(唯奈)はそんな新しいクラスのメンバーを優しく迎えた。
「いいのよ少しずつ慣れていけば。何なら先生が個人的に女を教えてあげるからね」
そう言って嬉しそうにウインクをした。

「あの口紅全部なくなっちゃったけど予備はあるの?」
千里(かなえ)は不安そうに言った。
すると麻里(唯奈)は教師らしく待ってましたといばんばかりに答えた。
「だって前の身体に戻る必要あるかしら?」
その言葉に誰一人として異論を唱える者はいなかった。
理想の身体を手に入れた底辺学校の生徒達はすっかり今の身体に満足していたのだ。
異論がないと分かると麻里(唯奈)は教壇の前に立って出席簿を開いた。
「じゃあ皆今日も先生と楽しく授業を始めましょうか♪」














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