理想の身体(前編)
 作:verdsmith7


目覚まし時計が「ピピピ」という音を出し始めた。
その音はベッド眠っていた田中麻里の耳にも届き、朝の到来を告げた。
「うーん、もう朝ね。さあ今日も学校に行く準備をしないと」
朝食のコーヒーと食パンを食べ終えると、着ていたパジャマを脱いだ。
服で隠れていた彼女の細い身体つき、スラリと伸びた手足が出てきた。
この体型は生まれ持っての体型だと思われているが、実はスポーツジムに通って手に入れたものだ。
麻里は鏡を見てジムの成果が表れた引き締まった自分の身体に笑みを浮かべた。

体型のチェックを終えると今度は学校に着ていくスーツを着た。
このスーツも細くなった体型だとスッと入ってしまう。

高校教師の田中麻里にとって身だしなみは大切だ。
しかも通っている学校がこの地域では有名なお嬢様学校とあっては尚更気を付けねばならなかった。
なぜならこの学校は偏差値が非常に高く入学する女子生徒も名家の出身が多い。
そこで保護者からの信頼を失えばどんな事になるか容易に想像できた。
そんな学校で麻里は教師をしていた。
とは言え堅苦しいだけかといえばそうでもなく、学校の生徒達は勉強熱心で学則を重んじ教師である麻里の指導も熱心に受け入れてくれるので、守るべきところを守っていれば過ごしやすい。
麻里も教師としては評判が高く、担当しているクラスの生徒達はもちろん他の教師達からの信頼が厚かった。
色々大変ではあるが麻里はそんな教師生活を誇り思いながら充実した毎日を送っていた。

住んでいるマンションの部屋に鍵をして学校へと歩き始めた。
マンションから出ると一軒家に住んでいる家族が父親の仕事を見送っていた。
「はあ、いつになったら結婚できるのかな?」
麻里は生まれて28年、結婚はおろか異性と付き合ったことすらなかった。
一応顔やスタイルにはそれなりの自信はあったが、真面目過ぎる性格が災いして男性から声を掛けられることはなかったし、麻里自身も積極的に動いてこなかった。
そして気が付けば彼氏いない歴と年齢が重なったまま今に至っている。
そんな独身生活が続く麻里を最近結婚した友人がアドバイスとして「今の麻里は顔も良いからもう少しお洒落をして肩の力を抜いてれば向こうから寄ってくると思うよ」と言ってくれた。
「お洒落とか肩の力を抜けって言われても今更あんな子達みたいにできないし」
麻里は通り掛かっていく他校の女子生徒をチラっと見た。
学生なのに化粧をして髪の毛も目立ちすぎないように少し茶色に染めていた。
その隣には彼氏らしき爽やかな男子と楽しそうに登校している。
「私もあんな風になれるのかな?」



マンションから歩き続けると少しずつ学校の大きな建物が見えてきた。
小さな建物がほとんどのこの町ではお嬢様学校の校舎はひと際大きく感じる。
今日もいつもと同じように学校で生徒達に勉強を教える1日になる。
その時まで麻里はそうなると信じて疑わなかった。
「きゃあー!」
しかし、学校の門までもう少しの所まで来た時何やら女の子の悲鳴が聞こえてきた。
麻里は何事かと周囲を見回してみる。
すると学校の門から離れた人が少ない場所で女の子達が何やら言い争っているのが見えた。
そして麻里は急いでその場所へと駆け出した。


二人に近づいていくと少しずつ誰が言い争っているのか見えてきた。
一人は自分の学校の女子生徒でしかもその人物は麻里が担当しているクラスの女の子だ。
もう一人の女の子は見かけない顔だった。
着ている制服もこの学校の物ではなく、どうやら他所の学校の制服のようだ。
この他校の女子生徒はパッと見ただけで少なくとも真面目ではなく不良の側の人物だと分かった。
髪は派手な金髪に染められ、着ている制服も着崩して着ていた。
いわゆる不良のギャルだろうか。

「ほら、ほんの少しあたしに付き合ってよ」
感じの悪いそのギャルはお嬢様学校の女子生徒にしつこく絡んでいた。
麻里は一瞬で生徒がかつあげをされていると思い足を速めた。
しかし、何とかそのギャルから逃げようと女子生徒も距離を取ろうとしてる。
「いやです。私これから学校に行かないといけないんです」
何とか断ろうとするがギャルは引き下がる気はないようだ。
ギャルは相手の腕を掴むと無理矢理裏路地へと引きずり込もうとした。
「ほらほらもう逃げられないよ。そろそろ観念しな」
このままでは大事な自分の生徒が大変なことをされてしまうと思った麻里は大きく叫び怒りを露わにした。
「そこの貴方! うちの生徒に何をしているの!?」
麻里の声が響き渡るとギャルは「やばっ!」と遠目でも分かる表情になった。
そして掴んでいた手を放すと一目散にそこから逃げ出した。

「最悪っ! もうちょっとだったのに」
ギャルはぶつぶつ言いながら少しでも遠くに逃げようと走る。
「待ちなさい!」
麻里も急いでギャルの後を追った。
自分の生徒を襲うような人物を麻里は逃がす気はなかった。
幸いなことにギャルの足はそれほど速くなく、段々とギャルの背中が近づいていった。
そして遂に追いついた。
麻里がギャルの腕を掴むとやっとのことで追いかけっこは終わった。
「うわっ! 放してよ! あたし何もしてないよ!」
捕まったギャルはジタバタと暴れ自分は無実だと叫んだ。
しかし一部始終を見ていた麻里にそんな戯言は通じるはずもない。

「くそっ! もう少しであいつの身体が手に入ったのに!」
捕まったギャルはぶつぶつと文句を言って捕まったことに納得がいっていないようだ。
「何を言ってるの。あなたこそ観念してついて来なさい!」
麻里は掴んだ腕に力を入れ学校まで引っ張っていった。
まさかここでジムのトレーニングが役に立つとはジムに通い始めた頃の麻里には想像もつかなかった。
「放してよ! あたしは無実だって!」
学校の敷地に入ると喚きながら連れていかれるギャルを何事かと生徒達は眺めた。
金髪の長い髪を揺らし他所の制服を着崩したギャルはお嬢様学校の中ではまるで凶悪犯のようだった。



麻里は「重村唯奈」と名乗るその他所の学校の生徒を学校の面談室へと連れて行った。
唯奈は金髪以外にも派手なメイクをしている。
鮮やかなピンクの口紅を塗り、着ていたシャツのボタンは上側を外しその隙間からは唯奈の豊満な胸の谷間が見えた。
爪にはきらきらしたマニキュアが塗られ耳にはイヤリング、腕にはブレスレットを身に着けている。
その格好はとても学校で勉強する生徒の姿とは思えない。

かつあげをしていたのかと問い詰めると「違うって!あたしは何もしてない」ととぼけてばかりで話は全く進まなかった。
しかし、教師である麻里があの現場を見た以上言い逃れをさせるつもりはなかった。
これから唯奈が通う学校へ連絡するつもりだ。
そうなれば唯奈も教師や親から叱られ反省をしてくれるだろう・・・少なくともそうなって欲しいと麻里は願った。

麻里は話を続けている内に唯奈からの視線を感じた。
最初は気のせいかと思っていたが唯奈の目を見るとその視線は麻里の全身へと向けられていた。
麻里は今までにも生徒を注意したことはあったが、そういう場合生徒は俯いたり視線を逸らす事が多い、教師の説教を聞きたくないからだ。
しかし、この唯奈はそれとはまた違った雰囲気があった。
麻里の顔をジロジロ見たかと思えば首やお腹や手足をまるで品定めでもするかのように観察しているようだった。
「重村さん人の話を聞いてるの? さっきから何をそんなに見ているの?」
そう言われて唯奈は妙に笑顔になりながら麻里に顔を向けた。
その顔の表情は今まで会ったどの生徒よりも不気味な気がした。
「ふふ、よく見てたらあんたも結構美人ね。年上って最初は嫌だと思ってたけど案外悪くないかもね」
「何よ突然笑い出して!?」
突然麻里に不敵な笑みを浮かべ何かよくないことを唯奈が企んでいると感じた。
美人だと言われ最初はお世辞でも言って見逃してもらおうと思っているのか、それとも揶揄っているのかとも思った。
しかし、唯奈のその表情はそのどちらでもないと感じさせた。

「ねえ、ちょっといいかしら?」
唯奈は突然小声で何か話し始めた。
「何よ、もっと大きな声で話しなさい!」
唯奈の声があまりにも小声だったので麻里はつい前のめりになって耳を傾けてしまった。
すると突然唯奈は椅子から立ち上がると麻里に抱きついてキスをしてしまった。
「ん! んんー!」
麻里の唇はピンクの口紅が塗られた唯奈の唇と触れ合っている。
抱きついてきた唯奈を引き離そうとするが麻里の力では離れなかった。
不思議なことにキスをしている時間が長くなる程麻里の力は抜けていった。
まるで唯奈の唇から力を吸い取られていくように、段々と麻里の全身に力が入らなくなってしまった。
その間も唯奈は麻里とキスを続け、唇の中に舌まで入れて麻里の舌と絡ませることまで始めた。
すると麻里の目からは生気が失われやがて麻里の身体は椅子にぐったりと座り込んでしまった。
「ふう、美味しかった♪」
ようやくキスを終えた唯奈はぐったりと座り込んだ麻里の前に来ると手を振ったり指をパチンと鳴らして麻里の反応を確認した。
しかし、そんな唯奈に麻里は何も反応を示さなかった。
「本当に効いてるのかな? じゃあ試しにあんたの事を色々教えて。名前以外のこともね」

唯奈がそう指示すると麻里は急に催眠術に掛かったように口を開いた。
「田中麻里、28歳独身。この学校の2年生のC組の子を教えてる。趣味は趣味は休日に一人で映画を見ること・・・」
麻里は初めて会った唯奈に次々と仕事やプライベートのことを話してしまった。
それはジムに通っているという些細な事からキャッシュカードの暗証番号まで大事な事を包み隠さず全てを話した。

「どうやらちゃんと効いてるみたいね。これで知っておきたい事は分かったわ。じゃあ、今度は服を脱いであんたの身体をあたしに見せてちょうだい」
「はい・・・」
普段の麻里ならずとも普通の人なら人前で服を脱ぎたがらないだろうが、その時の麻里は言われた通り着ていたスーツを脱ぎ始めてしまった。
服を脱ぐよう命令された麻里は恥ずかしげもなく椅子から立ち上がると服のボタンを外していった。
上着やスカートを脱いでいき少しずつ麻里の肌が露わになっていく。
「あははっ、本当に脱いでる。超ウケルー」
「・・・」
目の前で唯奈が大笑いしているにも関わらず麻里は気にも留めることなく服を脱ぎ続けた。
そして麻里に残された衣服は下着だけになってしまった。
「ほらほら、それも早く脱いじゃってよ」
唯奈は麻里の裸を早く見せるよう急かした。
「はい・・・」
言われるがまま最後まで着ていた下着を脱ぐと、麻里は遂に裸になってしまった。

「思った通り良い身体ね。少し回ってもっと見せて」
言われた通り麻里はクルっと身体を回し、背中やお尻までも唯奈に見せた。
前からは見えなかった麻里の引き締まった背中やお尻がよく分かり唯奈はとても満足気だ。
「うんうん、あたしの思った通りだね。それにジムに通ってるからスタイルは抜群ね。本当気に入ったわ」
麻里の身体に興奮気味の唯奈は立ち上がると麻里に近づいた。
そしてペタペタと麻里の全身を舐めまわすように見まわしペタペタと触り始めた。
細くスベスベの腕、細く引き締まったお腹やお尻、長い脚を触って確認していく。
麻里はそれをまるで何も感じていないかのように唯奈に好きに触らせた。


「じゃあ麻里ちゃんがあたしの言う事を素直に聞いてくれたから今度はあたしも脱いじゃおうっと♪」
麻里はもちろん誰も頼んでいないのに唯奈は嬉しそうに着ていた服を脱いでいった。
制服を脱ぎ派手な下着を下ろすと胸の谷間を形作っていた唯奈の大きな胸が飛び出た。
水風船のように大きな唯奈の胸の大きさは平均的な胸の大きさである麻里の胸の大きさの違いは歴然だった。
「あたしより年上なのに胸はこんなに小さいのね」
唯奈は自分より小さな麻里の胸を撫でその感触を楽しんだ。
次に麻里のコンパクトな胸の乳房をクリクリと弄ってみる。
胸を触られても相変わらず顔色ひとつ変えない麻里だったが次第に息が荒くなっていった。
「はあ、はあ。唯奈の胸大きくて羨ましい・・・」
唯奈の膨らんだ胸をジッと見て麻里はポツリとそう呟いた。
するとそれを聞いた唯奈はニヤと笑った。
「あたしの胸欲しい?」
唯奈は自分の大きな胸を麻里の小さな胸に押し当てるとそう言った。
麻里の小さな胸は唯奈の豊満な胸に沈み込む。
まるで麻里の胸が唯奈に吸い込まれていくようだ。
「欲しい・・・唯奈みたいな大きな胸が」

「じゃあ、あたしのこの髪はどう?」
唯奈の長い金髪に染められた髪を麻里に見せつける。
恐らく美容室にも通っているのだろうその髪に触れた麻里はふわふわとした感触が当たった。
麻里は唯奈の髪を撫でながら言った。
「長くてフワフワで凄くきれいな髪、私もこんな風に染めてみたい・・・」
麻里は今までショートヘアで過ごし髪を染めるなどしたことがなかった。
しかし、内心は他の女の子がやるようなお洒落な髪に憧れていたのだ。
「そうなんだ。あたしの髪褒めてくれて嬉しいな。それに麻里ちゃん全然お洒落とかしてないみたいね。メイクも薄いし。麻里ちゃんもあたしみたいにお洒落したい?」
麻里の目の前には今まで正反対の生き方を送ってきた唯奈がいる、それは麻里の心の内に秘めていた憧れの姿だと思えた。
「したい・・・もっと可愛くなりたい」

「趣味は一人で映画を見ることだよね。そういえば彼氏はいないの?」
「・・・いない」
麻里はしかも未だにエッチの経験もなかった。
「へえ、そうなんだ。美人なのに勿体ないね。あたしはもう何十人と付き合ったよ。もう何回かエッチもしてんるんだ。いいでしょ?」
勝ち誇ったように唯奈は今までの男子と付き合ってきたことの思い出を語った。
彼女の自由な性格と豊満な胸に魅了された男は唯奈自身が数えるのを忘れるほどだった。
「羨ましい・・・あなたみたいに男の人といっぱい付き合いたい」

「じゃあ、最後の質問ね。麻里ちゃん、あたしの身体になってみない? そうすればこの胸も髪もあたしの全部が自分のモノになるよ♪」
すると麻里は唯奈にこう返事をした。
「・・・私、唯奈になりたい。自由で楽しそうなあなたになりたい」
その答えを聞いて唯奈は待ってましたといった感じで笑みを浮かべた。
「決まりね、じゃああたしの全てをあげるわ」
「本当? 嬉しい・・・」

「その代わりあたしはあなたの全てをもらうわね」
唯奈は麻里にめいっぱい顔を近づけるとそう言った。
これが麻里に残された最後の拒否の機会となったが、麻里はそれを受け入れてしまった。
「いいわ、私の全部あげる。だから唯奈の全部を頂戴」
そしてその答えが唯奈にとって待ちに待った瞬間だった。

「うふふ、これで全部決まりね。これからはあんたが唯奈よ」
唯奈はそう言って持ってきた鞄の中からピンクの口紅を取り出し自分と麻里の口に塗り始めた。
そして麻里の唇は唯奈と同じような鮮やかなピンク色の唇になった。
「私の名前は唯奈・・・」
麻里は自分の新しい名前を確認するようにそう言った。
「そうよ唯奈。そしてあたしがこれから麻里になるの」
唯奈も自分を麻里と名乗り二人は新しい自分の名前を受け入れた。
「分かった。よろしくね麻里」
そして二人の全ての準備は整った。

お互いの名前を交換すると唯奈は麻里を抱き再びキスをした。
さっきと違い今度は麻里も唯奈を抱き返し、自分も唯奈に積極的にキスを返す。
舌を唯奈の口に入れて自分の舌を唯奈の舌と絡みつかせた。
そして二人はお互いの中身を全て吸い取るように深いキスを始めた。
更に抱きついた二人は胸を押し付け合い相手の胸を自分の胸に当てるとお互いの乳首をこすりつけ合った。
麻里は大きくて柔らかい唯奈の胸を、唯奈はバランスと形が整った麻里の胸を求めた。
そして二人はお互いの秘所へと手を伸ばした。
麻里は唯奈の使い慣れた股間に、唯奈は異性の経験がない麻里の股間に手を入れていく。

お互いの身体に入った手はやがて上下に動き始めた。
「はあ、はあ」
「あん!」
先に男性経験が多く感度の高い唯奈が声を漏らし始めた。
「あんっ、いよいよね。さあ、あたしにその身体を早く頂戴。はあ、はあ」
少しずつ二人の身体は熱くなってくると二人は更にお互いを求めていった。
「はあ、はあ。気持ちいい。もうすぐ私唯奈になれるのね」

二人の股間に入った手は更に激しさを増していった。
「はあ、はあ。あんんー」
麻里は気持ちよくなるたびに麻里としての大事な物が流れ出ていく気がしていた。
今までの記憶、精神、身体・・・麻里を構成する全てが目の前にいる唯奈に流れていく。
しかし、その喪失感は別のモノが満たし麻里を満たしていった。
それを与えてくれているのは他でもない目の前にいる唯奈だ。

「あんっ。麻里、私もうだめ。い、いっちゃう!」
麻里は目の前にいる唯奈にそう叫ぶ。
「はあ、はあ。あたしも我慢できないの、唯奈一緒にいこう」
唯奈も麻里にそう告げる。
二人はまるで動きがシンクロするかのように息も動きも同じになっていった。
そして二人は激しくなる動きに遂に終止符を打った。
「あああ!」
「んんー!」
ビクッと二人の身体は大きく揺れた瞬間二人の股間からは液が漏れた。
そして二人の声が重なり合うように響いた。

「麻里・・・」
「唯奈・・・」
絶頂を味わった二人はお互いを新しい名前で呼び合いなおも相手求めた。
そして残った力を振り絞ると唇を重ね最後とのキスをした。
二人の鮮やかなピンクの唇が接すると力尽きたかのように麻里と唯奈は気を失った。
しかし、二人が気を失うと唇に塗られているピンクの口紅は、意思を持っているように動き始めた。
麻里の口紅は導かれるように麻里の唇から離れると唯奈の口の中へ、一方の唯奈の口紅は麻里の口の奥へと入ってしまった。
「うう・・・」
「ああ・・・」
口紅が全てお互いの中に入ると麻里と唯奈の呻き声のような声が出てきた。
唯奈の口からは可愛らしい呻き声が、麻里の口からは気怠い声が漏れ出ると二人は静かな息を立て始めた。



麻里が気が付いたのはそれからしばらく経った後だった。
「うーん・・・」
目を覚ました麻里はなぜ自分が意識を失っていたのか理解できていなかった。
ただ妙に息が苦しく身体が重いと感じた。
大きく息を吸おうと麻里は口を動かすと自分の口が何かに触れている。
それはプニプニとした温かい感触で自分の唇に重なっている。
どうやらそれが呼吸を邪魔しているようだ。
口の中にも触れている物がある、しかもそれは自分の舌と絡みついているようだった。
「んん・・・」
少しずつ意識がはっきりしてくるとようやく重いまぶたを開けることができた。
すると目の前にはは目を閉じた女性がいた。
しかもその女性とキスをしているようだ。
「ぷはっ!」
慌ててその女性から口を離すとようやく新鮮な空気が口に入り込んできた。
「はあ、はあ。何がどうなってるの? 何で私キスなんかしてるの?!」
自分に何があったのか思い出せない麻里は混乱しつつも必死で冷静になろうと努めた。
「た、確か私は生徒がかつあげされていたから唯奈って他所の学校の生徒を捕まえたのよね。それで・・・」
そこから麻里の記憶は途絶えていた。

床に倒れて女性とキスをしていたことだけでも驚きだったが麻里は他にも気になることがあった。
自分の身体やけに冷たく感じるのだ。
冷たい床に横になっていたせいもあるが、それよりも身体全体がスースーする気がした。
そして麻里は自分の身体を確認し始めてた。
「え!? 何で私裸なの?」
今の麻里は今朝着ていたスーツどころか下着すらも履いていない状態だった。
つまり裸だ。
周囲を見ると足元には脱ぎ捨てられたスーツや下着が散らばっている。
「私、一体何をしていたの?!」
記憶にないが、何かいけない事をしていた気がする。
裸で目を覚まし他人の女性とキスをしていれば良いことをしていたはずはないだろう。
麻里は頭を抱え何か思い出せないか必死で頑張ってみた。
しかし、長い髪を掻きむしりながら考えたところで何も答えは出なかった。
「ん!? 長い髪・・・」
麻里は今自分の髪を触って気付いた。
自分の髪はこんなに長かっただろうか・・・
いやこんなに肩に掛かるよりも長い髪ではなかったはずだ。
そして麻里はその髪を摘まむと目の前に持ってきた。
「私の髪、金髪になってる・・・」
そこには麻里の短い黒髪ではなく金髪に染められた長い髪が目の前にあった。
さっきまで確かに黒髪だったはずだ、それに当然こんな色に染めた覚えもない。

違和感は次々に見つかった。
髪を触っている指の爪には麻里がしたこともないマニキュアが塗られている。
それに腕や手が妙にさっきより短く感じた。
そして自分の口から出て来る声もいつもと比べて変だ。
高く透き通った麻里の声ではなくハスキーな声が喉から出ている気がした。
しかし、大きな変化は麻里の目線の下から見つけた。
それは今までの麻里の身体では信じられない光景だった。
「これ、私の胸なの・・・」
自分の胸元を覗き込むとそこには大きな胸が2つ見えた。
大きく膨らんだ胸は自分でも今までの自分の胸と違うことがすぐに分かった。
自分で言うのもなんだか自分の胸はそれほど大きいとは思っていなかった。
だからこうやって胸を押し上げて胸の谷間を作ることもできないはずだ。
麻里は試しにその大きな胸を触ってみた
「んっ!」
胸に触った瞬間身体がピクッと反応する。
それは今の麻里の胸だという証拠でもあった。

「早速あたしの身体で楽しんでるみたいね」
突然麻里の後ろから綺麗な女性の声が聞こえてきた。
麻里はすぐに胸から手を放すと後ろを振り返った。
恐らくさっき目の前で眠っていた女性だろう。
なら、そこにいるのは唯奈という他所の学校の生徒に違いない。
そう思いながら麻里が声の主を見る。
しかし、そこにいたのは唯奈ではなかった。
「そ、そんな何で私がそこにいるの!?」
先程まで目の前で眠っていた人物は麻里が想像していた唯奈ではなかった。
なぜなら目の前にいたのは麻里自身だったからだ。

「へえ、本当にあたし達入れ替わったんだ」
麻里の身体は興味深そうに自分の身体を確認している。
鞄から手鏡を出すと麻里の顔を嬉しそうに確認しペタペタと頬を触っている。
「私がいる・・・」
「おっとごめんね。早くあんたも新しい顔を確認したいよね」
そう言って麻里の身体は手鏡を差し出した。
麻里は恐る恐る鏡を覗き込んだ。
「こ、これって・・・」
鏡に映っていたのは今朝自分の生徒をかつあげしていたあの柄の悪い他校の女子生徒の顔だった。
長く派手に染められた金髪、細い眉に派手なメイク、その顔は麻里の顔とは全く違う唯奈の顔だった。
「私達身体が入れ替わったの? じゃああなたは・・・」
「やっと理解できたー。そうだよ、あたしが唯奈だよ」
麻里の身体は嬉しそうにそう語った。



身体が入れ替わることなど信じられないことだが現に麻里は唯奈に、唯奈は麻里になってしまった。
「どうして私達入れ替わってるの?! あなたがしたの?」
入れ替わる直前の記憶がない唯奈(麻里)にとって何が起きたのか理解できずにいた。
ただ自分の身体がこの唯奈という女の子に奪われたのは確実だと思った。
「さーてどうだったかな? あたしも覚えてないんだよねー」
麻里(唯奈)はしらばっくれた様子で真実を語ろうとはしない。
そもそも唯奈に人の身体を入れ替えることができるのかすら唯奈(麻里)は知らなかった。
「でもこうなっちゃったのは仕方ないから、しばらくお互いこの身体で生きていかないとね♪」
麻里(唯奈)は身体が入れ替わったにも関わらず嬉しそうにしている。
その表情から彼女が身体を入れ替えたのだとしか思えない。
「やっぱりあなたが身体を入れ替えたんでしょ! か、返して私の身体!」
身体を盗まれたと感じた唯奈(麻里)は麻里(唯奈)に飛び掛かかった。
しかし麻里の身体はサッと避けると背の高さと長い腕を活かして今朝唯奈にしたように唯奈(麻里)を捕まえてしまった。
「きゃあ! な、何で私思うように動けないの!?」
今朝の状況とは逆転してしまった状況に唯奈(麻里)は頭が混乱した。
あの時はあっさり唯奈を捕まえることができたはずだ。
「あははっ! この身体前のあたしより動かしやすーい♪ やっぱり胸が小さいのと身体を鍛えてるからかな」
身軽な麻里の身体を堪能している唯奈と違い、麻里は唯奈の身体に戸惑いっぱなしだった。
唯奈の大きな胸の重みでいつもとバランス異なり、更に唯奈は普段あまり鍛えてないのだろう身体全体が前の麻里の身体より重く感じた。

「ねえ大人しくあたしの言う事を聞いた方がいいと思うよ」
麻里(唯奈)は唯奈(麻里)を拘束して話を続けた。
「何言ってるの、嫌よ。早く元に戻して!」
このまま身体を入れ替えられるなんて唯奈(麻里)にはできなかった。
田中麻里として今まで築いてきたものを一瞬で奪われる、しかも不良のギャルに。
そんなことをさせるわけにはいかなかった。
しかし往生際悪く唯奈(麻里)が抵抗していると麻里(唯奈)を放し急にニヤニヤしながら扉の方へと歩き出した。
「ふふっ、嫌なら身体を返す前に学校で裸のまま散歩しちゃおうかな?」
「な!?」
もし本当にそんな事をされれば麻里の教師生命は一瞬で終わるだろう。

「それが嫌ならあたしの言う事を素直に聞いた方がいいよ」
そう言って麻里(唯奈)は麻里が普段絶対しなような薄気味の悪い笑みを浮かべた。
今の麻里の身体は、文字通り唯奈が人質としているも同然だった。
そして今朝の事を思い出した。
「あなたもしかして今朝うちの生徒にしようとしていたのって・・・」
当初はかつあげをしているのだと思っていた麻里だったが、実際には唯奈は金銭以上の大事な物を奪おうとしていたのだ。
「当ったりー! 本当はあの女の子の身体を借りる予定だったんだ。でもあんたが来たから予定を変更したの」
金銭目的どころかまさか生徒の身体を狙っていた、それを聞いて唯奈(麻里)は身震いをした。
結局生徒は助けられたが自分の身体を奪われる形になってしまった。
「身体を入れ替えてこれからどうする気なの?」
他人の身体を奪ってどんな事をするのか想像すらできない。
自分の身体で悪さをされるのかはたまた麻里としての人生そのものを奪われるのではないかと不安になった。
「別にー、ただお嬢様学校の奴がどんな生活してるのか気になっただけだし」
深刻な唯奈(麻里)と違って麻里(唯奈)の口からはそんな軽い答えが返ってきた。
唯奈(麻里)は一瞬「え?」と驚きを隠せず唯奈の顔でキョトンとしてしまった。
「そんな理由で入れ替えたの!?」
「あたしらの学校って頭悪い奴しかいないし学校もボロだからさー。一度お嬢様学校でお上品に過ごしてみたかったんだよね。それになんならあんたもあたしの身体好きにしていいよ。別にオナっても良いしエッチも好きにして」
あっけない理由を聞かされた唯奈(麻里)は肩透かしをくらった感じだった。
そんな理由で入れ替えられたのかと思うと麻里(唯奈)に怒りさえ湧いてこなかった。
しかし、それでも身体の支配権は麻里(唯奈)にあることは変わらなかった。
「わ、分かったわ。でも元に戻してくれるんでしょうね」
不安になりつつ唯奈(麻里)は身体を入れ替えた麻里(唯奈)に確認した。
すると麻里(唯奈)は嬉しそうに答えた。
「もっちろん♪」


「それじゃ、取り敢えず服でも着ますか♪ほい、じゃああんたはこっちを着てね」
麻里(唯奈)は落ちていた服を拾うと、唯奈(麻里)に無理矢理唯奈が着ていた下着と制服を着せてしまった。
しかも唯奈が着ていたのは明らかに学生が着るには派手な下着だ。
そんな事を思いながらも唯奈(麻里)は麻里(唯奈)に制服を次々に身に着けられていった。
「はい、完成。うん、どこから見てもあたしだね」
「最後におまけにこれも♪」と耳にピアスを、首にチョーカーを、腕にブレスレットをつけられてしまった。
「何よこれ!? こんな格好で学校に行けって言うの?」
その姿は今朝唯奈と会った時の格好そのものであった、むしろその時よりもアクセサリーが増えている気がした。
制服のスカートも短くされてしまった。
しかも上着は腰に巻かれシャツの上のボタンはいくつかわざと外された。
その隙間からは唯奈の胸の谷間が顔を覗かせている。
学校の規則やルールを重んじる麻里にとってこの格好は罰ゲームのように感じられた。
これではまるで学校に男を誘惑しに行くようなものだ。
「凄く似合ってるよ。それともこっちのあたしが着てるこのスーツでも着るの? あたしは別にかまわないけど♪」
麻里(唯奈)はそう言って今さっき着終えた麻里のスーツを脱ぐ素振りをした。
だが、今の唯奈(麻里)があのスーツを着たところで身体が違うのであれば意味はなかった。
せいぜい女子高生が背伸びしてスーツを着ている程度だろう、それに麻里(唯奈)が学生服など着たら痛いコスプレになるだけだ。
「分かったわよ、これでいいんでしょ・・・」
唯奈(麻里)は渋々今着ている格好で唯奈の通う学校に向かうことになってしまった。
「そうそう、後その格好も直しちゃだめよ。ちゃんとあたしの言った通りの格好でいてね♪ さもないとあたしもこの身体で凄い事しちゃうから♪」
嬉しそうに麻里の胸を揉みながら語る麻里(唯奈)のその言葉は冗談ではないようだ。

その後服を着終えた麻里(唯奈)は唯奈(麻里)を校門まで送った。
「じゃあね、唯奈ちゃん。あたしの代わりよろしくね♪」
教師である麻里の身体を手に入れた唯奈はそう言って楽しそうに校舎の方に向かった。
このまま麻里の身体になった唯奈を行かせていいのか唯奈(麻里)は一瞬迷った。
「だめ! 待って、やっぱり・・・」
麻里(唯奈)の背中を追いかけようと唯奈(麻里)は走り出そうとした。
しかし、それを静止する声が聞こえてきた。
「君、ここはこの学校の生徒か関係者以外立ち入り禁止だよ」
唯奈(麻里)を呼び止めた声の主は、校門にいる警備員の声だった。
彼らは不審者が入って来ないか校門で毎日監視していた。
いつもなら学校の生徒や教師達に挨拶をしてくれる優しい人達だった。
しかし今の麻里は唯奈という他校の生徒であり、彼らから見たら今の麻里は完全に部外者として扱われた。
「違うんです! 私ここの教師をしている田中真理なんです!」
必死に唯奈(麻里)は自分が学校の関係者だと説明しようとしたが、警備員は唯奈の姿を見て怪訝そうな表情になった。
「君は他所の学校の生徒だろ。部外者は入っちゃダメなんだよ。もし用があるのなら許可を貰ってから来なさい」
今の麻里は服装はおろか身体も唯奈という他校の生徒の身体だ。
それを易々とお嬢様学校へと入れてくれるほど警備員は甘くはなかった。
途方に暮れていると、校門の奥へと入って行った麻里(唯奈)が嬉しそうに警備員に止められている唯奈(麻里)手を振っているのが見えた。
「何でこんなことに、私が本物の麻里なのに・・・」
今の唯奈(麻里)は学校にも入れず大人しく唯奈が通っている学校へと向かう他なかった。
そして未だに手を振り続ける麻里(唯奈)に歯を食いしばりながら背を向けてお嬢様学校を後にした。


唯奈の鞄に入っていた生徒手帳に書かれている学校の名前と住所を調べると、唯奈(麻里)は重い足取りでその学校へ歩き出した。
歩くと短いスカートがめくれそうになり慌てて小幅で歩く。
「もう! 歩きにくいし落ち着かないし何で私がこんな格好で歩かなくちゃいけないの」
普段はピシッとしたスーツを着ているせいか、身に着けているアクセサリーや着崩した服装が実に落ち着かない。
いっそ身なりだけでも整えたかったが麻里(唯奈)の「あたしの格好でいてね♪ さもないと・・・」という言葉が脳裏をよぎった。
「はあ、とりあえずこの子の学校に行こう・・・」
まさか生徒達の模範となるべき自分がこんな身なりの悪い格好をするなど夢にも思わなかったし、せめて悪い夢であってほしいとすら願った。
そして少し歩いていると唯奈(麻里)は気付いたことがあった。
「この子の胸私のよりずっと大きくて重い・・・」
入れ替わってからずっと上半身が重く肩が凝ると思っていたが、恐らくその原因はこの胸のせいだろう。
大きくなった胸に少し嬉しくもあったが、所詮は他人の身体の胸だ。
それに大人の麻里より年下の唯奈の方が胸が大きいことに唯奈(麻里)は何となく負けた気がした。



お嬢様学校のチャイムが鳴り響いた時、麻里のクラスでは教師の麻里がまだ来ないことを心配していた。
いつもなら時間通りに来るはずがその日は未だに姿を現していなかった。
「先生体調でも悪いのかしら?」
女子生徒達は口々にそんな心配をしていた。

その頃クラスから離れた場所にある教員用のトイレに一人の女性が入って行った。
もちろん麻里の身体を奪った唯奈だ。
ここは主にお嬢様学校の教員が使っているトイレであり生徒が使うことはなかった。
それにチャイムも鳴ったので他の教員がやって来る可能性もほとんどない。
麻里(唯奈)はトイレに入ると大きな鏡の前に立った。
目鼻口の整った凛々しい麻里の顔が鏡に映っている。
麻里の顔がニコッと笑みを浮かべると鏡の中の麻里の顔も笑った。
逆に怒った表情をすると同じように鏡の中の麻里も怒った表情になる。
「あたしの名前は田中麻里でーす。この学校で教師をしていますー♪」
麻里(唯奈)は鏡を見ながら突然ノリノリで自己紹介を始めた。
しかし、普段の麻里に比べると軽い感じがするし、それを行った麻里(唯奈)自身もそんな姿に「何か違うなー」と悩んでいた。
「まだ、何か違うなー。ちょっと早いけどアレをやろうかな」
そう言うと麻里(唯奈)はトイレの個室へと入って行った。

やがてトイレの中から服が擦れる音とクチュクチュという水気を帯びた音が鳴り響いてきた。
音姫による水の音でもそのイヤらしい音は完全に消せなかった。
段々とその粘り気を帯びた音は大きくなっていく。
更に時間が経つにつれてその音と共に麻里(唯奈)の声も漏れてきた。
「はあ、はあ。んんー!」
しばらくの間トイレにはイヤらしい音と声が鳴り響き続けた。

やがてトイレの個室の扉がゆっくり開くと麻里(唯奈)は息を切らしぐったりした様子で出てきた。
「はあ、はあ」と何とか息を整えながらよろよろと鏡の前へと進んだ。
しかし、鏡を見ると急に気合を入れ直したスポーツ選手のようにキリッとした表情になった。
両手で頬を叩きさっきまでのぐったりした表情も消えた。
「いけない、いけない。私としたことがちゃんと皆の模範になる私が服装は整えておかないとね♪」
乱れていた服をピシッと着こなし背筋を伸ばすと凛とした表情を鏡に見せた。
いつもの麻里がするような表情が鏡に映ると麻里(唯奈)は再び口を開いた。
「自己紹介します。この学校の教師をしている田中麻里です。お世話になります。ほら、皆そろそろ授業を始めるわよ!」
先程の軽い印象の挨拶は消えて真面目ではっきりとした挨拶になっていた。
すると麻里(唯奈)はキリッとした表情を崩し笑みを浮かべながら言った。
「悪くないわね。さあ、時間も遅くなってるしそろそろ可愛い生徒達に今日も授業をしに行こうかしら。うふふっ、さあ唯奈ちゃんはしっかりやってるかしらね」



その頃唯奈(麻里)は、やっと唯奈の通っている学校に辿り着いていた。
麻里自身は勉強ができ成績優秀であったため学生時代はお嬢様学校とは別になるが偏差値の高い高校へと通っていた。
しかし、今唯奈(麻里)が来ているのはお嬢様学校とも自分がかつて通っていた学校とも異なる偏差値の低い学校だった。
校舎はお嬢様学校の綺麗な校舎とは違い小さく壁の塗装がボロボロになっている。
通りすぎていく生徒達は唯奈程ではないが、皆髪を染めて制服を着崩していた。
まさしくお嬢様学校とは別世界だ。
唯奈(麻里)は他の生徒達に混じりながら目的地であるクラスへと目指した。
すると周囲から多くの視線を浴びていることに気付いた。
「どうして皆私を見てるの? 何なの!?」
なぜ自分がそんなに見つめられているのか最初分からなかった。
すると主に男子達が唯奈(麻里)の方をニヤニヤと見つめていることが分かった。
それでも唯奈(麻里)は見られている理由が未だ分からず男子達の視線に恐怖心を抱いてしまう。
すると一人の男子が言った。
「唯奈ちゃん今日もエッチだなー。朝から眼福眼福♪」
その男子は隠す様子もなくそんな感想を漏らしながら股間をズボンの下で大きくさせていた。
その男子の言葉と向けられている視線で唯奈(麻里)はようやく気付くことができた。
皆男子達は自分の胸をジロジロと見ているのだ。
大きな胸のシルエットが見えるようにボタンを開けたシャツの隙間からは胸の谷間が男子達にその胸の存在をアピールしていた。
最初唯奈(麻里)は空いているボタンだけでもつけようかと思ったが、ボタンを全部すると胸が凄く窮屈に感じた為泣く泣くそのまま開けておくことにしたのだ。
「こ、これのせいか。うう、恥ずかしい」
なるべく胸を見られないように脇を閉じて歩くがその分胸は前に押し出され、かえって余計にエッチなポーズを取ってしまうことになった。

男子達の視線を背に唯奈(麻里)はいそいそと遠い教室まで足早に向かっていた。
「唯奈っち、おはよー!」
すると突然後ろから唯奈(麻里)に挨拶する声が聞こえてきた。
しかし、他人に初めてその名で呼ばれた唯奈(麻里)は最初自分が呼ばれていると気付けなかった。
「おーい、唯奈ってば! ・・・シカトする奴はこうだ!」
その言葉と共に唯奈(麻里)は突然後ろから誰かに胸を掴まれてしまった。
「おー、今日の唯奈のおっぱいもフワフワだな」
突然グニグニと胸を弄られた唯奈(麻里)は頭が真っ白になってしまった。
「キャッ!」
突然胸を後ろから掴まれた唯奈(麻里)はつい悲鳴をあげてしまった。
一瞬変態にでも襲われたのかと思ったが、後ろを振り返るとそこにいたのは唯奈(麻里)と同じように髪を茶髪に染めたこの学校の女子生徒だった。
「およ? 今日は随分可愛い悲鳴をあげるなー。そんなに驚くなよ。いつもやってることじゃんか」
悪びれる様子もなくその女子生徒は唯奈(麻里)に馴れ馴れしく話し続けた。
どうやら悪意でやったわけではないようだ。
「いつも?」
唯奈(麻里)は最近の女子高生はいつもこんな事をやっているのかと想像してしまった。

女子生徒の名札を見ると「大西かえで」と書かれている。
「あ、あの大西さん?」
唯奈(麻里)は初めて会ったその人物を確認するように呼んでみた。
「何だよ改まって? いつもみたいに『かえちゃん』て呼ばないのかよ」
いつもと違う雰囲気の唯奈(麻里)にかえでは少し不思議そうな表情になる。
今は取り敢えず唯奈として振る舞う方がいいと考えた唯奈(麻里)はそのまま唯奈を演じることにした。
「ご、ごめんね。かえでさん、いや、かえちゃん・・・ちょっと私まだ寝ぼけちゃってて」
苦しい言い訳だと思ったが何も言わないよりマシだと思った発言だった。
「何だよ。また夜遅くまで起きてたのかよ」
苦しい言い訳と思ったが、意外にもかえではすんなり信じてくれたようだ。
「えへへ、そうなのよ・・・」
「夜更かしはお肌に悪いんだぞー」
かえでが純粋だったからなのか唯奈が元から夜更かしをする生活を送っていたのかは定かではないがとりあえずはごまかすことはできた。
「まあいいや、それよりもう授業が始まるよ。早く行こう♪」
そして唯奈(麻里)はかえでに手を握られ引っ張られるような形で教室まで行くことになってしまった。



お嬢様学校の教師をしていた麻里にとって唯奈が受けている授業は復習にもならない内容だった。
しかし、突然身体を女子高生と入れ替えられてその上その生徒として授業を真面目に受けろという方が無理があった。
このまま自分はどうなってしまうのだろうか、唯奈は身体を返してくれるのだろうとかという漠然とした不安が頭でいっぱいになっていた。
席の隣にあるガラスに自分の姿が映っていた。
もしかしたらこのまま重村唯奈として生きていかなくてはならいのかもしれない、そんな不安が頭をよぎった。

そんな事を考えていると唯奈(麻里の)目の前に急に教師がやって来た。
「おい、重村! ちゃんと先生の話聞いてるのか?」
どうやら真面目に授業を受けていないのが丸見えだったようだ。
「すみません・・・」
泣きっ面に蜂ではないが身体を入れ替えられて自分に関係のない授業で怒られる唯奈(麻里)にとって反省など無意味だった。
そんな素っ気ない態度を取ったせいか教師は少しイライラした様子で黒板の問題を解いてみるよう言い始めた。
「じゃあ、この問題を解いてみろ。答えられなかったら居残りでみっちり教えてやるからな」
教師は唯奈(麻里)にお灸をすえるつもりで言ったのだろう。
「はい、この問題の答えは・・・」
そして唯奈(麻里)は黒板の問題を言われた通り解いてしまった。
全て言い終えると教師はポカンとした表情でしばらく何が起こったのか理解できないでいた。
どうやら教師としてはここで唯奈(麻里)ができないと思ったのだろう。

「な、何だちゃんと聞いてたのか。まあ、いい」
教師は唯奈(麻里)がスラスラ問題を解いたことに驚きつつも、それ以上は追及をしてこなかった。
しかし教師が黙ったのは良いがクラスメイト達の方が今度はざわつき始めた。
「おい、唯奈の奴いつの間に勉強してたんだ?」
どうやら唯奈は見た目だけでなく勉強の方もやばい人物だったようだ。
それに難しい問題だと皆思っているようだが麻里にとっては凄く簡単な問題だった。
「こんな問題、私の生徒達なら難なく解けるのに・・・」
自分のクラスの生徒と唯奈の通っている学校の生徒達をつい比較してしまう。



お嬢様学校の授業は他の一般的な高校よりも長い、その為生徒達が帰る頃にはだいぶ日が落ちていた。
唯奈(麻里)は目的の人物が学校から出て来るのをひたすら待った。
時折お嬢様学校の女子生徒が唯奈(麻里)を見るとそそくさと避けていくのが分かった。
他所の制服を着ているのはもちろん見た目からして柄が良いと言えない身体だ。
金髪でジャラジャラとしたアクセサリーを着けて鋭い目つきをしていれば確かに警戒されるのは当然だったかもしれない。
「ねえ、あの子何なの? もしかして不良、やだ絡まれないように早く帰ろう」
帰っていく女子生徒達からそんな言葉が漏れてくる。
「私が本当はこの学校の教師なのに・・・」
こうなったら見つけたらすぐにでも元の身体に戻すようにしてもらうつもりだった。

「やっと出て来たわね」
「あれ、あたしじゃん。そんな所でどうしたの。もしかしてずっとあたしのこと待っててくれたの?」
麻里の身体を奪った唯奈な悠々と出てくると校門の前で待っていた唯奈(麻里)に嬉しそうに声を掛けてきた。
唯奈(麻里)は人の身体を奪っておいて楽しんでいる麻里(唯奈)に段々腹が立ってきた。
「そんなわけないでしょ!早く私の身体返して」
興奮してしまった唯奈(麻里)はつい声を荒げてしまった。


「田中先生何か問題でも?」
すると男性の声が二人の間に割って入ってきた。
それはお嬢様学校で麻里と共に仕事をしていた男性教師だった。
「先生、この子ったらあたしに言い掛かりを付けてくるんです〜」
わざと「こわーい」とめそめそする麻里(唯奈)に唆されて男性教師はキッと唯奈(麻里)を睨みつけた。
「違うんです! 私が田中麻里なんです」
焦った唯奈(麻里)は真実をそのまま言ったつもりだったがそれが間違いだった。
今の麻里の身体は田中麻里とは似ても似つかない姿だ。
「君、ふざけるのもいい加減にしておきなさい。もし次にこんな事をしたら君の親御さんや学校にも連絡させてもらうよ」
男性教師は唯奈(麻里)が当然ふさげているものだと思った。
まさかここにいるお嬢様学校の女教師と底辺学校の不良ギャルが入れ替わっているなど夢にも思わないだろう。
唯奈(麻里)にはこれ以上自分が麻里だと説得できる物は何もなく、ただ黙って自分の身体が行ってしまうのを見届けることしかできなかった。

「じゃあ田中先生今日は僕が家まで送ります」
男性教師は頼もしくそう言って麻里(唯奈)を家まで一緒に行くことにした。
それを聞いた麻里(唯奈)は明らかに猫なで声で嬉しそうに男性教師の腕にしがみついた。
「ありがとう♪ あたしすっごく怖かったの。今度もあたしのこと守って下さいね」
男性教師はそう言われると顔を赤くしながら「はい!」と強く返事をした。
そして二人は仲が良さそうなカップルのように歩きだした。
すると麻里(唯奈)は男性教師に隠れて後ろを向くとニヤッと唯奈(麻里)に笑った。
残された唯奈(麻里)は悔しさに打ちひしがれながらもその日は唯奈の家に帰るしかなかった。



唯奈(麻里)は結局身体を元に戻してもらえず生徒手帳に書かれている唯奈のアパートへやって来た。
鞄の中に入っていた鍵で部屋に入ると鞄を置き布団に横になってしまう。
麻里が住んでいたマンションと比べると小さな部屋だ。
自分の手を見つめると爪に塗られたマニキュアがきらきらと光っている。
「私だったら絶対こんなのしないのに、とりあえずお風呂に入ろう・・・」
疲れを少しでも癒す為にお風呂にお湯を入れて浴室へと向かう。
すると浴室の鏡で唯奈(麻里)は自分の身体を改めて見ることになった。
入れ替わってから初めてじっくりと入れ替わった新しい自分の身体を見ている。
今までの麻里の身体とは正反対の身体だ。
唯奈の背は麻里に比べて一回り低い。
麻里の細めの目とは違い唯奈の目はぱっちりとした目をして、よく見るとラメのアイシャドウが塗られ目元がきらきらしていた。
アイラインが引かれた目の上下にはつけまつげがのせられていた。
「ちゃんとお洒落してるんだ」
普段化粧も最低限で済ませていた麻里にとってはやりすぎな気もしたが、それでも鏡で見た顔はオシャレをした可愛い女の子という感じがした。

鼻も麻里の高い鼻とは違い少し低い、眉毛は麻里の自然のものと違い可愛く綺麗にかかれている。
背の高いクールビューティーな麻里と違い唯奈は背の低めの可愛いギャルという感じだった。
「これが今の私なんだ」
そしてペタペタと唯奈の頬を両手で触ってみた。
瑞々しい顔の皮膚の柔らかさが伝わってくる、10歳以上も若い唯奈の肌を感じる。
自分の新しい顔を見ていると麻里は本当に自分が重村唯奈そのものになってしまったのだと実感した。

「私の名前は重村唯奈です」
試しに鏡に映った自分に自己紹介をしてみた。
しかし、ラフな格好をしているのに真面目に挨拶しようとしてどこか違和感があった。
「はあ、私なにやってんだろう・・・」

服を脱いで裸になると唯奈の裸が見えてしまった。
お風呂に入るのだから全裸になるのは仕方ない。
しかし、唯奈の身体を見た唯奈(麻里)は当然前の麻里の身体と比較してしまう。
同じ女性とはいえ年齢もスタイルも大きく違うのだ。
唯奈の身体は女子高生というだけあって張りのある肌で腕を触ると潤いのある皮膚の感触が伝わってきた。
「本当この子の胸大きいわね。どうしたらこんな風になるのかしら?」
麻里のコンプレックスの一つに胸の小ささがあった。
それが今回こういう形で解消できることになったのだがまさか身体ごと取り替えられるとは夢にも思っていなかった。
できれば大きな胸だけくれれば良かったのに・・・そんな事を唯奈(麻里)は思った。

「いいわよね。今は私の身体なんだし」
一人暮らしの唯奈のアパートには誰もいないはずだが、念のため周囲を見ました。
そして誰もいない事を確認すると唯奈の大きな胸をおそるおそる触ってみた。
「んっ、柔らかい」
元の麻里の胸とは全くサイズが異なる唯奈の胸であったが、その感触もまた別物であった。
それは単に唯奈の胸が大きいからなのか、それとも唯奈の身体が感じやすいのか唯奈の身体になったばかりの麻里には分からなかったが、今沸き起こってくる快感だけは麻里の身体とは別物だと分かった。
触り続けていると少しずつ胸だけでなく身体が暖かくなってくるような気がした。
まるで胸の温もりが触ることによって全身に運ばれていくようだ。
「ああっ、このおっぱい凄く気持ちいいい」
唯奈の胸から感じる快感に少しずつハマっていく唯奈(麻里)は自然と胸を触る手に力を入れていった。
今度は手のひら全体で胸を覆ってみる。
「はあ、暖かい・・・」
手に胸の温もりが伝わってくる。
そして円を描くように胸の上に置いた手を動かしていった。
麻里は元の身体でもこうやっていたわけではなかったが、不思議とこうすると気持ちがよくなる気がした。
「んん!」
すると唯奈(麻里)の乳首はピンと立ちどんどん大きくなっていった。


ほんの少し触るつもりが、気が付けばもう少しだけ、もう少しだけと自分に言い聞かせながら触ってしまう。
柔らかくも弾力のある唯奈の胸は触っている手も触れられている胸どちらも快感だった。
麻里も元の身体の時にオナニーの経験ぐらいはあったが、唯奈の身体は明らかにそれ以上だ。
何度ももうやめないといけないと思ったが唯奈の身体は満足していないようだ。
胸以外にも気持ち良くなりたい、唯奈(麻里)はそう思ってしまった。
そして手が自然に自分の股間に触れると女性の股間にある溝へと指を入れていった。

クチュッという音と共に手を唯奈の股間へと入れていく。
「あっ! ん!」
自分の中に指が奥へと入るとつい唯奈(麻里)は声を出してしまった。
この気持ち良さも麻里の身体の時とは異なっていた。
唯奈の身体はすぐに快感があふれ出ると唯奈(麻里)の頭はその気持ち良さでいっぱいになった。
「はあ、はあ。ああー」
もう何度もこの唯奈の身体は一人エッチは当然ながら男性ともセックスをしているのだろう。
気持ちよくなる度に頭に一人エッチをした時の思い出や男性と身体を重ねた時の記憶が頭に流れ込んできた。
「あん! ダメ、私いっちゃう! この身体私のじゃないのに、あたしいっちゃう!」

気持ち良さが上がるにつれて股間に入れた指の動きもヒートアップする。
「あっ! んんー!」
ふと鏡を見ると、全裸の唯奈(麻里)が裸でオナニーをしていた。
一瞬その姿が自分だとは思わなかったが自分の動きと鏡に映る唯奈の動きが同じだと知って唯奈(麻里)は鏡を見ながらオナニーを続けた。
「はあ、はあ。私、唯奈なんだ。この姿があたしなんだ。あん!」
気持ちよくなればなるほど段々と身も心も唯奈になっていく気がした。
そしてそれは唯奈(麻里)にとって凄く心地が良いものであった。
「私は唯奈、あたしは唯奈・・・」
まるで自己暗示をかけるように自分のことを「唯奈」と呼び少しずつ溢れてくる快感と共に受け入れてしまった。
そして身体は限界にまで激しく動きを強めた。
「あっ! あっあっ・・・ん!」
身体をぶるっと震わせた瞬間股間から何かがあふれ出てくるのが分かった。
「はあ、はあ。あ、あたしの身体やばい・・・」
鏡を見ると鏡の中の唯奈は凄く満ち足りた表情になっている気がした。
そして鏡に映った自分にキスをした。
「はあ、はあ。あたし可愛い・・・」




一方の麻里(唯奈)は男性教師と共に麻里のマンションへとたどり着いていた。。
「じゃあ、田中先生また何か問題に巻き込まれたら僕を頼って下さい。それではまた明日学校で」
「待って先生」
麻里(唯奈)を家に送り家に帰ろうとする男性教師を麻里(唯奈)が引き留めた。
「どうかしました?」
まだ何か用事でもあるのかと後ろを振り向こうとしたがそれはできなかった。
なぜなら麻里(唯奈)が男性教師の後ろから抱きついていたからだ。
「今日あんな事があってあたしすごく怖いの。よろしければ泊ってくれませんか? お願い・・・」
普段の麻里を知っている男性教師は潤んだ瞳でそう頼み込んでくる麻里(唯奈)の言葉を断れるはずもなかった。
そして男性教師は部屋の中に麻里と入ってしまった。
部屋に招き入れた麻里(唯奈)は鍵をしめながら男性教師に聞こえないように言った。
「ふふっ、本当ちょろいわね。さあて今晩はこの身体の初めてをたっぷり楽しませてもらおうかしら♪」














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