その身体を得た先に(前編)

 作:verdsmith7


梅雨も終わり暑い夏の到来を予感させる季節。
二人の高校生のカップルは学校を終え家に帰っていた。
学校の授業から解放され好きな相手と楽しくお喋りをしながらの下校は至福の時であった。
しかし、それゆえ周囲の注意を怠ることになってしまった。
前から誰かが歩いて来ることに気付かなかったのだ。
一瞬身体に衝撃が走る。
「いってっ!」
衝撃で尻もちをついてしまった。
陽太にぶつかった相手はどうやらおばさんのようだ。
おばさんは40代か50代ぐらいだろうか、陽太達の両親ぐらいの年齢に見えた。
ブランドの服を着て、いかにも高そうなバッグを持っている。
しかし、そのおばさんの一番の特徴はその服から今にも飛び出しそうな大きな胸だった。
胸元の隙間から大きな胸の谷間が覗かせ男性なら誰もがまずそこに視線が飛び込むだろう。
陽太も一瞬ぶつかったおばさんの胸に目が行ってしまったが、すぐにその人物が自分達にぶつかって来た相手だと理解した。
どうやら歩きスマホをしていたらしい。
おばさんの手の中にはスマホが電源が入ったまま握りしめられていた。
それを知って陽太はガツンと言ってやりたくなってしまった。
「おばさん、どこを見て歩いてんだ!」
暑さでイライラしていたこともあったのかその時の陽太はいつになく興奮してあたってしまった。
鋭い目つき声を張り上げてぶつかったおばさんを罵倒する。
しかし、ぶつかったおばさんも黙って聞いているだけではなかった。
「何よ、余所見しながら歩いてたのはあなた達も同じでしょ!」
おばさんも陽太に負けじと声を大きくして言い返すが、その度におばさんの大きな胸が揺れていた。
「お願いやめてよ、二人とも」
ヒートアップをする二人を見かねて一華が彼氏を止めに入った。
「私達もちゃんと前を向いてなかったでしょ」
彼女の言葉を聞いてやっと落ち着きを取り戻した陽太は捨て台詞を吐いて立ち去ることにした。
「ちっ! こんなおばさん一生会いたくねえよ!」
相手にも聞こえる舌打ちをしておばさんに背を向けると謝罪もせず歩きだしてしまった。
それを見た一華はおばさんにぺこりと頭を下げて彼氏の代わりに謝った。
「もう陽太ったら! おばさん、ごめんなさい」
誠実な彼女の行動におばさんも少しだけ落ち着きを取り戻したがそれでも陽太の態度にはかなり腹を立てているようだ。
「あんたもあんな彼氏と付き合って大変ね」
おばさんは一華にそう言うと立ち去っていった。
「まったく近頃の若い子ときたら私が学生だった頃なんか・・・」
そう言うとおばさんは何か思いついたかのようにニヤッと笑った。
「ふふ、そうだ折角だからアレを試してみましょう。私に二度と会わないどろこかずっと離れられないようにしてあげるわ」
そして不敵な笑みを浮かべおばさんは足を進めていった。
「もうあんな事でムキにならないでよ」
「悪い悪い、でもあのおばさんだって悪いんだぜ」
少し歩いてようやく陽太も機嫌を直してきた。
だが、自分のやってしまった事は反省の気配さえ見せず彼女を呆れさせるのであった。

あれから数日が経ち陽太はおばさんにぶつかった事すら記憶から消えかけていた。
何であんなにムキになったのか陽太自身も思い出せないぐらいになっていた。
その夜、食事や宿題を終えて一日の終わりの自分へのご褒美として隠していたエッチな本を見ていた。
グラビアアイドルの写真集を眺めていると大きな胸に目が留まった。
その胸を見ているとパッとあの日ぶつかった大きな胸のおばさんの事を思い出した。
「そういえばあのおばさんもこれぐらい大きかったな」
ぶつかったおばさんの大きな胸を思い出すと陽太の股間はムズムズと変な気分になっていった。
「おいおい、おばさんの身体なんか想像して大きくなるなよ」
しかし、あの胸だけは男性の本能を刺激するのは確かだった。
陽太は一華と付き合っていたが彼女の全てが理想的かと言われればそうでもなく不満な点があるのも確かだった。
特に陽太にとって一番の不満点は一華の胸の大きさだ。
このグラドルやあのおばさんまでとは言わないまでももう少し大きかったらなと常に思っていた。
もちろん一華のせいではないのは重々承知はしていたが、陽太も年頃の男の子らしく大きな胸に憧れていたのだ。
そんな事を思いながらグラドルの胸を目に焼き付けていた。
「いいなー、俺もいっそ爆乳美女になれば誰にも文句言われずに自分で揉み放題なんだけどな」
そんな独り言を言いながら陽太は自分のアレに手を伸ばした。
一華とは付き合っているが、まだ身体の関係までには至っていない。
だから陽太は今でもエッチな雑誌などを見ては毎晩オナニーをしていたのだ。
「はあ、はあ。ああ、早く一華とやりたいな。でもどうせならこんな爆乳の女の人がいいかもな」
そんな事を妄想しながら股間を動かした。
「うう、ふう・・・」
そしていつもと同じように陽太は絶頂を感じた。
だが、その時はいつもと違う感じがした。
「うわっ!」
天にも昇る気分を味わった気分を味わったのは確かだが、一瞬自分がフワッと浮いている気がしたのだ。
訳が分からずジタバタと暴れるがとても地上に戻れそうになかった。
見ると床には陽太の身体が横たわっているのが見える。
「どうなってるんだ。俺死んだのか?」
肌の色などからどうやら死んではいないようだ。
うっすらと息をしているのも分かった。
「良かった、でも俺一体どうなったんだ?」
状況が理解できぬまま空中に浮いていると今度は窓からボヤっと輝く光の玉のような物が現れた。
それはフワフワと浮かび部屋に散らばっているエッチな雑誌の周りを飛ぶとやがて自分の方に近づいてきて語り掛けてきた。
「ふふ、こんな女性が好きなんだ。じゃあ、望み通りそうしてあげる。だけど私はあなたの身体を貰うわね」
そう言うとその光の玉はスーッと地上に降りていくと、一直線に陽太の口に入ってしまった。
「おい、それ俺の身体だぞ!」
必死でそう叫んだが、光の玉はそれに構わず陽太の身体の奥へと移動していった。
やがて陽太の身体は深い眠りから目覚めたかのように起き上がるとニヤッと笑いながら自分の方を見て言った。
「じゃあね元陽太君。これから私の身体をよろしくね」
その言葉を聞いた瞬間陽太の意識はなくなった。



翌朝陽太は酷く息が苦しいことに気が付き目を覚ました。
まるで身体の上に誰か乗っているのではないかと思う程の圧迫感を感じたのだ。
「はあ、はあ。んー」
うっすらと目を開き確認してみるが布団の上には誰もいないどころか重みになるような物さえなかった。
「何だ、気のせいだったのか?」
しかし、つっかえるような息苦しさは今も感じ続けたままだ。
最初風邪でも引いてしまったのかもしれないと思った。
息苦しく、それに妙に声もいつもと違った感じで聞こえたからだ。

それに目を開けた瞬間いつもとは違う違和感に気付いた。
「あれ、俺の部屋の天井ってこんなんだったか?」
まだ夢から覚めきっていない頭だったが段々と頭が働くようになると自分が置かれている状況がいつもと違う事を確信していった。
「えっ?! ここどこだ?」
陽太が目を開けるとそこはいつも寝ている自分の寝室とは全く違う部屋だった。
というより建物自体が全く違うと言ってよかった。
そこは陽太が今まで見たことのない部屋であり周囲には高そうなアンティークが並べられていた。
そんな場所に心当たりのない陽太はパニックになった。
もしかしたら寝ぼけて勝手に人の家に上がり込んで眠ったのかもしれない。
そんな想像をした。
「やばい、この家の人が来る前に帰らないと!」
慌てて布団から身体を起こそうとしたがいつものように身体に力が入らず、まるで全身に重りでも付けているようだ。
「うーん、どうしたんだ俺? 身体が凄く重いぞ」
腕を伸ばしベッドの手すりを持つと、やっとのことで身体を起こすことができた。
すると身体の揺れとほぼ同時に胸の上で揺れ動く妙な物体が目に入った。
「何だこれ?」
それはぶるんと揺れた胸の上にある二つの球状の物体だった。
それを見て一瞬陽太は自分の服の中にボールでも入っているのかと思った。
「服の中に何か入ってるのか?」
服の中に手を入れてそれらを取り出そうと掴んだ。
「んん!?」
それを掴んだ瞬間陽太の身体はビクッと震えたのだ。
その刺激は何とも形容しがたく突然自分の股間を誰かに捕まれれた衝撃に近いかもしれなかった。
今度は優しく触れてみた。
その二つの物体は自分の身体にくっついているのだ。
「もしかして、おっぱいなのか・・・」
確認の為もう一度大きな膨らみに触れてみる。
ふわふわとした柔らかい感触が触れた手から伝わり、触られた膨らみからも手が触れられた感触が伝わってきた。
大きくなった胸に目が行っていたが、一方で陽太は昨日着ていたはずの服ではなく全く別の服を着ていた。
「そういえば何だよこの服? 女が着る服じゃないか」
昨日眠った時には短パンとシャツというラフな格好だった。
しかし改めて今自分が着ている物に目を向けると、それはフリルやリボンが付いたフワフワとした衣服になっていた。
明らかに男性が着ない女性が眠る時に着るネグリジェだった。
「おい、もしかして・・・」
陽太は手を下へ下へと移動させた。
そこにはいつもならあるはずだ、男の象徴が。
そして恐る恐る股間に手を触れてみた。
「嘘だろ! 無くなってる! それに何で俺におっぱいがあるんだよ!?」
朝起きて自分の平だった胸が急に大きくなって股間もアレが無くなっていれば誰もだ驚くだろう。
陽太は理解できずパニックになり身体中を触り始めた。
筋肉質な身体はぽっちゃりした身体に変わり果ててしまい鏡を見ずともそれが今までの自分の身体とは程遠い物になっていることが分かった。
「そうだ、鏡はどこだ」
とにかく今の姿を確認したい陽太は部屋の中に鏡がないか探した。
あたふたと動き回っていると同じように大きな胸が一緒に動き、それが間違いなく自分の物だと嫌でも分かった。
「あ、あった!」
壁に掛けられた大きな鏡を見つけ陽太は鏡を覗き込んだ。


「こ、これが俺なのか?」
鏡の中では女性が困惑した表情で自分の方を同じように見つめていた。
陽太が手を動かせば鏡の中の女性も動かし、後ろを振り返れば女性も後ろを同時に振り向く、それは鏡に映っている女性が今の陽太の姿だと証明していた。
じっと鏡に映った自分の姿を見ていたがふとその顔には見覚えがある気がした。
それも最近その顔を見たはずだ。
そして嫌な記憶を思い出した。
「あ、あの時ぶつかったおばさんだ!」
その顔は以前陽太と言い争いをしたおばさんそのものだった。
「・・・そうだきっとこれは夢だな。変だと思ったんだよ」
朝起きて急に自分がおばさんになってるわけがない、きっと自分はまだ夢を見ているに違いない。
自分を説得するようにそう言い聞かせると、ふっくらとしたほっぺたを早速引っ張ってみることにした。
そしていつもの男の身体で目覚めるんだ・・・そう期待していた。
しかし鋭い痛みが強く引っ張っる頬から伝わってくるだけだった。
「いてて! そんな、これ夢じゃないのかよ。」
まだ自分がおばさんになった事が信じられない陽太は鏡を見ながら自分の姿を確認した。
髪を触ればお高い美容室で整えられたであろうサラサラな髪に、ムダ毛処理をしていたのかスベスベの肌になっている。
顔は若いとはいえないが昔は美人だったように思える顔だった。
身体つきはほっそりというよりムッチリしか感じだ。
そしてその身体でひと際目立っているのが大きな胸だった。
陽太は自分にこの胸がある事を知ってから内心ずっと気になっていたのだ。
「いいよな? 今は俺の身体なんだし・・・」
念のため周囲に誰もいない事を確認してみる。
「意外とおっぱいって重いんだな。それともこのおばさんのおっぱいがこうなだけなのか?」
大きな胸を下からすくいあげるように持ち上げると胸の重さが腕に掛かってきた。
すると今度は肩が急に軽くなり楽な気分になる、女性が胸の重さで肩がこる理由がよく分かった気がした。
持ち上げた胸は手から零れ落ちそうな程大きく手に入りきらない程だ。
「これだけ大きいならアレもできるよな」
次に鏡の前でグラビアアイドルがやるように前屈みになってポーズを取ってみた。
すると自分の胸元に大きな胸が寄せられて大きな谷間を作り上げた。
その美しいフォルムは元男だった陽太に誘いかけるように綺麗な形を見せていた。
「ねえ、触って」エッチな雑誌などで綺麗な女性が言うセリフが脳内を駆け巡る。
男なら誰もが憧れる大きな女性の胸を今自分で自由に触る事ができる。
しかも自分の身体なのだから誰も咎めもしない。
鏡に映る女体が少しずつ男だった時の本能を欲望に引きずり込んでいった。
「これが俺のおっぱいなんだ」
遂に我慢できず恐る恐る指で胸をつついてみた、すると指先が胸の皮膚を押しながら沈み込んでいく。
まるでマシュマロのように柔らかく弾力がある。
「おおー、柔らかい」
次に胸全体を手で撫でるように触ってみた。
すると自分の中でもっと触ってみたいという感情がより強くなっていった。
柔らかく大きな胸を単純にもっと触れたい、触りたいという思いもあったが、実際には胸をもっと触れられたいという思いもあった。
「んん!? さっきも少し感じてたけど女の人のおっぱいって触られるとこんな風に感じるのか」
更に大きな胸の先端にある乳首にも手を伸ばすとピリピリした電気のような信号が溢れてくる、すると無意識の内に段々と乱暴に胸を弄るようになっていった。
「ん、また変に気持ちよくなってきた」
もっと気持ち良く、もっと快感を得たいという思いが手に無意識に力を入れていく。
胸を揉みたいという男の欲望と、揉まれる胸から溢れる女の快感が入り混じる。
自分は男であるはずなのに女の身体で、それもほとんど知らない他人の女性で感じているその背徳感が陽太を更に興奮させた。
「はあ、はあ、女の身体やばい」
その時鏡に写っている自分の姿は、まるで男を求める淫乱な女の顔のようだった。
息を「はあ、はあ」と漏らし胸を自分で揉みイヤらしい目で男を誘う女が鏡の中に写っていた。
「この前はあんな酷いことをしてごめんね陽太君。お礼に私の身体好きにしていいから。この胸もいっぱい触っていいわよ」
鏡を見ながらおばさんの身体を使いこの前の仕返しにとエッチな事を言ってみた。
「うふふ。ほら、この大きなおっぱいも貴方の物よ。ねえ、早く触って・・・」
自分が出した言葉なのに女性の声で言ってみるとなぜか興奮した。
そしてその時陽太は自分の股間が知らない間に濡れていた事に気付いていなかった。
鏡に写る自分を見ながら胸をムニュムニュと触り続けた。
その時陽太は頭の中で突然何か光景のような物が見える気がした。
まるでフラッシュを炊いたカメラのように漠然としたイメージが出て来る。
「どうした、何か起こってるんだ?!」
写真は動画を頭の中で思い出すようなそんな感じであった。
そこではこの身体が裸になって誰かとエッチをしているようだ。
次第に頭に浮かぶ光景は鮮明になってくる。
「これってもしかしておばさんの記憶か?」
陽太が思い出そうとすると更に記憶が蘇ってきた。
まるで自分が本当にそうしてきたかのように昔の事が頭に浮かんでくる。
初めてこの身体がエッチをしたのは女子高生の時だった。
可愛い後輩の男子と身体を重ねこの身体は初体験を経験したのだ。
まだ経験が無くドキドキしながら後輩とキスをし身体を重ねた。
その時の思いが今でもはっきりと思い出すことができる。
「あの子凄く可愛かったな」
あの時エッチした後輩を思い出すと自然にそんな言葉が口から出てきた。
しかし、突然ハッと我に返った。
「俺、今何を言ってたんだ!?」
一瞬このままおばさんの記憶に飲み込まれて自分を本当におばさんだと思い込んでしまうかもしれないと思った。
そう考えると今この状況をとても楽しんでいる場合でないとようやく気付いた。
「早く元の身体に戻らないと・・・」
急いで外に出ようとしたがこの格好のままでは他人の身体といえど人前には出られないので、何か着られる物はないか探した。
周囲を見回すと壁に服が掛けられている、恐らくこの身体の女性が着ようと用意していたのだろう。
他の服を探す時間も惜しいので陽太はその服に着替えることにした。
もちろん予想していたことだがそれは女物のワンピースだった。
女性の服を着ることは既に諦めていたが、問題はその露出度だ。
「こんなの着なくちゃいけないのかよ・・・」
それはタイトミニワンピースでピッチリと身体に合わさるような感覚だった。
しかもVネックでこの身体の胸の端がそこから見えるようになっている。
「私のおっぱいをたくさん見てね」と隙間から見える胸の谷間が強調しているようにしか見えない。
「う・・・本当早く元に戻らないと!?」
鏡に映る自分の格好は男を誘う魔性の女と言った感じだった。
できればその格好で鏡を見ながらもう一度エッチな事をしたいと思ったが、何とか理性でその欲望を抑えた。
今自分がいる場所はどこか大きな家のようだ。普通の家にしては部屋数が多く家主が金持ちであることはこの身体の通帳を見なくてもすぐ分かった。
やっとの事で玄関に辿り着いて出ようとすると、そこに置いてあるのは底の高いパンプスか歩きにくそうなハイヒールしか見つからなかった。
流石に裸足で外を歩くわけにはいかず、渋々その中で一番底が低そうなハイヒールを履くことにした。
「うわ、ハイヒールって思ってたよりも歩きにくいんだな」
普段学校でローファーや運動靴ぐらいしか使わない陽太にとって、ハイヒールは想像以上の歩きにくさであった。
もっとも昨日まで普通の男子だった彼にとってハイヒールを履かなければならないという精神的な苦痛が一番大きかったことは言うまでもない。
「俺がハイヒールを履くなんて・・・」
友人達が今の自分を見たら何と言うだろうか想像すらしたくなかった。
もっとも陽太の友人達が今の自分の姿を見て陽太だと信じてくれるかどうかは別だが。
扉を開けて外に出るとそこには大きな中庭が広がっていた。
人工芝が庭中にお生い茂り人工池が見える。
どうやらとんでもない金持ちなのは間違いないようだ。
大きな門が遠くに見える、どうやらあそこが出口のようだ。
フラフラと歩き慣れないハイヒールを引きずりなんとか門に近付こうと前へ前へと進んだ。
すると庭の手入れを行っていた二人の男が陽太の存在に気付き近寄ってきた。
「やばい・・・」
一瞬隠れようとも思ったが今の彼にその必要はなかった。
「おや恵子さん、これからお出かけですか?」
一人の男が気さくに挨拶をしてきたが今の陽太を不審に思っている素振りは見せなかった。
どうやら彼らが自分をあのおばさんだと思っているようだ。
「そ、そうなんだ、わよ。これから買い物へ行こうと思ってたの。それじゃあ俺、いや私急いでいるから!」
そう言って歩きにくいヒールで走り出してしまった。
カツカツと倒れそうになる身体のバランスを取りながら何とか出口である門に辿り着いた。
もしかしたらさっきの男達に変に思われたかもしれないが知ったことではない。後ろを振り返ると二人の男は何かを話しているようだったが今の陽太はそんな事を気にしている余裕はなかった。
大きな家というより屋敷を出ると、看板や周囲の建物から今自分がどこにいるのか大体の位置を把握することができた。
どうやら自分の家とはそんなに離れているわけではないようだが、今は一華のマンションに行くことにした。
取り敢えず事情を話して元に戻る手助けをしてもらおうと思ったのだが一つ不安な事があった。
「こんな身体で信じてくれるかな・・・」
最初自分の家に帰ることも考えたが、家族にこの身体で会って自分が陽太だと信じてもらえるのか不安だった。
もし信じてもらえなければ不審者扱いされて最悪警察を呼ばれてしまうかもしれない。
それに自分がおばさんの身体になったからといっておばさんが陽太の身体に入っている確証もなかった。
だから家族に顔がきく一華の協力を得て陽太の身体が今どうなってるのか調べてもらいたいと思ったのだ。

夏の日差しが強くなってきたこの季節走ると体力の消耗が激しいのは分かっていたが、陽太はそれだけでなく年をある程度取ったおばさんの身体でしかも歩きにくいヒールを履いて走っていた。
不安定なヒールで転倒しないか心配だったが、今の陽太にとっては服の中で上下に揺れ動く大きな胸の事が一番気になっていた。
一歩足を出す度におっぱいがぶるんと揺れる感覚は男子高校生にとっては憧れだったが、自分でそれをするのはとてつもない違和感を覚えた。
「うう、おっぱいが大きいのも大変なんだな・・・」
元々この身体は普段から運動をしていなかったのだろう、そんな身体でしかも慣れないヒールで走っていれば息を切らし身体もひどく疲れてしまうのにそれほど時間は掛からなかった。
まだ一華のマンションまでには距離があるが既に限界が来ていた。
「はあ、はあ・・・もう駄目だ」
このままでは元の身体に戻る前に疲労と息切れで倒れかねない。焦る気持ちを抑え息を整える為にも立ち止まって休まざるをえなかった。
「ぜえぜえ、この身体全然体力がねえ」
体力が有り余っている男子高校生の陽太の身体と違い、この恵子と呼ばれていたおばさんの体力は陽太にとって無いも同然に感じた。
「ふう、ふう・・・」
仕方なく近くの手すりに掴み身体を休めることにした。
いつもと同じように少し休めば何とかなるだろうと考えていたが、今のおばさんの身体ではいくら休んでも中々体力が戻る気配がない。
休み始めてか数分ぐらい経っただろうか、未だに息は苦しいままだった。

「あの、おばさん大丈夫ですか?」
すると陽太の背後から心配そうに声を掛けてくる人物がいた。
その人物は身に着けている服装や鞄から陽太の年齢と同じぐらいの男子高校生だった。
どうやら陽太が辛そうにしているのを見て心配になったのだろう。
陽太も「大丈夫だ」と言おうとはしたが声が息切れで思うように出ない。
「あの、本当に大丈夫ですか?」
男子は何の返事もせず苦しそうにしている陽太に更に近づいて来た。
もう目と鼻の先に男子が立っている。
陽太はぼんやりとした頭でそんな男子を見つめた。
「ふう、ふう。お願いがあるんだ」
「ん、何ですか?」
息を切らしながら何か伝えようとする陽太に男子は顔を近づけた。
すると突然陽太は男子の首に腕をスッと回すと彼の身体を引き寄せた。
しかし苦しかったから彼にもたれ掛かったわけではない。
目的は別の為であった。
「んぷ!」
陽太はなんと近づいてきた男子にキスをしていたのだ。
自分の大きな胸がわざと男子の身体に密着するように抱きしめた。
「んん!」
すると男子はジタバタと暴れ始めてしまったので陽太は抱きしめていた手を放すしかなくなった。
「な、なにをするんですか?!」
男子はそんな陽太を跳ね除けるとようやくキスから解放された。
しかし、突然のキスに困惑しているのは男子だけでなかった。
「え!? いや俺は・・・」
キスを自分からしたはずの陽太も何で自分がそんな事をしてしまったの分からなかった。
ボーっとした頭で男子を見ていたら何となくエッチな気分になり・・・気付いた時には男子に抱きつきキスをしていたのだ。
勿論それは陽太が自分で意図してやったことではない。男子なんかキスどころか抱きつきたいとさえ今まで思ったことはなかった。

「まったく、折角心配したのに! じゃあ、俺はこれで失礼します!」
親切心で体調が悪そうなおばさんに声を掛けたと思ったらいきなりキスをされては誰でも怒るだろう。
無理矢理おばさんにキスをされてしまった男子はムッとした表情のまま陽太の前から立ち去ってしまった。

残された陽太はボーっとその場に立ち尽くしているとまたもや彼に声を掛ける人物がいた。
「お嬢さん、見てたぜ。まだ満足できてないんだろ? なんなら俺が相手になってやるぜ。」
その人物はさっきの若い男子と違って白髪の見え隠れするいかにもな中年男性だった。
「いや、俺急いでいるから・・・」
陽太は別にさっきの男子とも本心ではやりたいわけではなかった。
それなのにこんな男なんか相手にもする気になれなかった。
「なあ、ちょっとでいいんだ」
男は陽太の肩を掴むと強引に迫ろうとしてきた。
「いい加減にしろよ、俺はお前なんか全然興味ないんだ!」
陽太は声を荒げて男から離れようとするが、男は全く引く気はないらしい。
しかも今の陽太の身体は女性の身体だ、しかも運動なんかもほとんどやっていない軟弱な身体だった。
「なあ、そんな事言わずに俺と良い事しようぜ」
陽太を掴んだ手に力が入ると強引に陽太を連れ去ってしまった。
男は廃墟となったビルに陽太を連れ込むと身体を逃げられないように身体をおさえつけてしまった。
「ぐ・・・や、止めろ。俺はお前なんかとやりたくなんかないんだ!」
「そんな風に言ってるけどあんたも股間を随分濡らして興奮してるじゃないか」
そう言われて陽太は自分の股間を覗くと股間に染みが浮かび上がっていることに気付いた。
「え!? こ、これは・・・」
その染みは陽太が女の身体で性的に興奮していることを意味していた。
「真昼間にこんなに濡らしてとんだ淫乱女だな」
「ち、違う! 俺はそもそも女じゃ・・・あん!」
中年男性は陽太の言葉には耳を貸さず背後から無理矢理身体を触り始めた。
抵抗しようにも非力な女の身体では抵抗すらできず男のされるがままだ。
「や、やめ・・・んんー!」
男の手が下着の中に入り、やがて股間に触れた。
そして女性の溝に男の指が入ると男の身体では感じたことのない衝撃が陽太を襲い始めた。
「はあ、はあ。くううー!」
「ほら、気持ちいいだろ。本番をやる前にちゃんとお前を気持ちよくしてやるからな」
男が股間に入れた指を前後に動かし始めた。
最初こそ男に股間をまさぐられ気持ち悪いと思ったが、すぐにビリビリとした別の感覚が生じるのが分かった。
股間が少しずつ熱くなっていき、それが全身へと広がっていった。
陽太自身もそれが女として気持ち良くなっているのだと分かった。
それを裏付けるように股間からクチュクチュと水気を帯びた音が聞こえてくる。
「うっ、んんー!」
「ほら、俺にやられて気持ちよくなってんだろ? 早くいっちまえよ。そして今度はあんたが俺にするんだ」
少しずつ身体の奥から何かが沸き起こってくる、いよいよ終わりが近いのだと感じた。
身体がガクッと震えた瞬間、陽太は何かが弾けたのが分かった。
「あっ、あ・・・あーん!」
まだ頭はボーっとしていたが女の身体の股間から何かが溢れてくるのを見て陽太は、自分が女としていったことを理解した。
「はあ、はあ。お願いもう止めて・・・」
息を切らしながら必死で男に止めるよう懇願した。
しかし女の身体で上目遣いで頼むその姿は更に男に火をつけてしまっただけだった。
「さっきまで口は乱暴だったけど、随分と可愛い声を出すようになったじゃないか」
そう言うと男は自分が着ている服を脱ぎすて、陽太の服も無理矢理脱がせた。
「キャア!」
女のように悲鳴をあげるが周囲には誰もいない。
それをいいことに男は次々と着ている服を脱がせ遂にはブラも取ってしまうとポロンと大きな胸がこぼれ落ちた。
丸々とたわわに実った大きな陽太の胸が出ると男は興奮しながら襲い掛かった。
「へへ、美味そうなおっぱいだ」
「ま、待って・・・話を、んん!」
自分で胸を弄った時の快感以上の刺激が胸が引き起こされとても説明ができる状態ではなかった。
仮に男に説明できたとしても自分が男であると信じてもらえる保証などもない。
こんな大きな胸を揺らして男に吸われて喘いでいる姿を見て誰が元男だと信じてくれるだろうか。
「あううー」
胸を吸って楽しんだ男は陽太が唯一着ていた最後のショーツまで脱がせる。陽太はついに裸にされてしまった。
そこには初めてみる女性の股間があった。
陰毛は丁寧に剃られておりその中から女性の溝が口を開けていた。
「こ、これが私の・・・」
初めて他人の女性の股間を見て陽太は言葉を失ってしまった。
しかもそれは今では自分の身体の一部になってしまっているのだ。
そして今男にその中へ男の象徴を挿入されかかっていた。
「よ、よし! そろそろ中に入れるぞ!」
陽太も固唾を飲んで自分の中に男のアレが入るのを見届けた。
ズブズブと自分身体に男の物が入り込んでくる感覚は男だった陽太にとって辛いものだった。
しかし、精神的に嫌悪感を感じる反面、身体は陽太の意思に反して男を求めていた。
「う、うぐっ!」
「へへ、あんたやっぱり相当やり慣れてるな。スッと入っちまったよ」
男が嬉しそうに大きく腰を振ると陽太の身体の中に入っているアレが大きく動くのを感じた。
「あん、あん。んんー!」
「気持ちいいだろ?そろそろあんたも動いて俺を気持ちよくしてくれよ」
男だった自分が今は女性の身体で感じてしまっている事を認めたくはなかったが、それは事実だった。

「あっ、あっ、んんー」
頭にボンヤリと前と同じようにイメージが出てきた。
それも以前よりもはっきりとした感じであり、その中で陽太はおばさんが今まで経験をしたことを追体験していた。
社長の娘として育てられ何一つ不自由ない暮らしをしていた。
やがて成長して様々な男達と付き合い始めた。
だが、歳を重ねるごとに男たちは自分の周りからいなくなっていた。
そんな時身体を入れ替えることができる方法があることを知った。
東南アジアに行き、現地の人から特別に教えてもらったその言葉・・・
これで若い身体でまた楽しむことができると思った。
そしてそんな時生意気な男子学生が自分にぶつかって生意気な態度を取られたことを理由に、あの身体に苦労して得た呪文を使ってみようと決めたことを思い出した。
「ふふ・・・」
陽太はこの身体での記憶を思い出すとつい笑みを浮かべてしまった。
「ん、どうした急に笑い出して?」
今まで無理矢理攻め続けられ嫌がっていた女が急に笑い始め男は不思議そうな顔をした。
「ねえ、腰だけ振ってないで私の胸も揉んでもっと気持ちよくさせてよ」
陽太はわざと男の目の前で自分の胸を大袈裟に揉むと男性に上目遣いでお願いした。
今までの抵抗が嘘のように、急に色気たっぷりに誘う相手を見て男は更に興奮してしまった。
「やっとその気になってきたか。へへ、いいぜ。たっぷりそのでか乳を揉んでやるよ」
「あん、凄く気持ちいい」
男に胸を揉まれ本物の女性のように喘ぐ。男も気持ち良く声を出す目の前の女を見て更に興奮した。
陽太も負けじと腰を振り男に甘い言葉を浴びせた。
どうすれば自分が気持ちよくなれるのか、相手を気持ちよくできるのか手に取るように分かった。
「あー、こんな気持ちいいの久しぶりだ」
男のそんな感想に陽太は少し安心してしまった。
「そう、良かった。だって私はこの身体で初めてのセックスだから」
「そんなにやり慣れてるのに初めてとか分かりやすい嘘だな」
男は陽太の言葉を信じようとはしなかった。
確かにこの身体は今まで相当にセックスの経験があっただろう、しかし中身が男子高校生である陽太にとっては初めてのセックスで間違いなかった。
陽太が入っている女性の身体はまだまだ快感を貪りたいという欲求がある。逆に経験の浅い陽太の精神は上手くできているのか不安だった。
だが男が明らかに陽太とのエッチで満足しているのを見て自信が湧いてきた。
「初めてなのは本当よ。だけどエッチのやり方はたくさん知ってるの。だからもっと気持ち良くしてあげるわ」
そう言って腰をさっきよりも大胆により大きく振った。
「うふふ」
「おお!」
そして廃墟となったビルに男と女のイヤらしい声がしばらく響き続けた。

「ふうー、気持ち良かった。またやろうな」
脱いだ服を袖を通しながら満足した様子で男は言った。
「気に入ってくれた? 私の身体」
陽太はスッと背中でブラのホックを留めながら男に質問をした。
すると男は迷わず答えた。
「ああ、最高だったぜ」
男の素直な感想に陽太はクスっと笑ってしまった。
「恵子よ」
「何がだ?」
脱がされたワンピースを身に着ける目の前の女性に男は何の事を言っているのか聞いてみた。
「ふふっ、私の名前」
服を着終えた陽太はそう言うと笑みを浮かべながら男から立ち去っていった。
ハイヒールの歩き方も前とは違い慣れた足取りで進んでいた。
その歩く姿は少し前まで男子高校生だったとは誰も思わないだろう。
予想外の事で時間を潰してしまったが得た物は多かった。
「このおっぱいも私の物なのね」
その時陽太はビルのガラスに自分の姿を写っていることに気付いた。
そこには若くて綺麗というには年を取りすぎた女性が見えた。
「はあ、やっぱりこの身体はもう若くないわよね・・・」
そんな時恵子の記憶からあの身体を入れ替える呪文の事を思い出した。
この身体が嫌ならあの呪文を使えばいいのよ・・・陽太の中で恵子がそう誘ってくる気がした。
「ふふ、色々あったけど取りあえず一華の所に行かなくちゃね」













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