入れ替えられた悪の女幹部(前編)
 作:verdsmith7


悪の組織は地下深くに基地を作り世界征服を狙っていた。
基地では多くの戦闘員が組織に忠誠を誓い来るべき戦いに備えて訓練を行い、研究員は日夜新兵器の開発や改良を行っている。
最近いよいよ地上での活動が活発になり基地も慌ただしくなっていた。
以前まで組織は静かに諜報活動などを行っているにすぎなかったが、いよいよ世界征服に向けて大きく行動を起こし始めていた。
ニュースでは日に日に組織が起こした事件が取り上げられ政府もその影響力を無視できなくなった。
ようやく政府は重い腰を上げて組織に対して闘う人材を集め、新部隊を作った。
そして、その日を境に悪の組織は敗北を続けるようになる。
主に戦闘の指揮を任されていたのが組織の幹部のヴァニラという女性だった。
女の身でありながら戦闘能力は高く、知略にも長けており、幹部という地位を与えられている。
容姿は日々の鍛錬もあり、無駄な脂肪はなくスラリとした身体で美しい顔立ちも合わさって美女として人気があったが、組織の制服着用以外に関しては「こんな物に時間を掛けるくらいなら訓練をするわ!」と身なりには無関心だった。
愚直に仕事に専念するタイプの女性であり当初は戦闘の勝利が続き部下の士気も高かったのだが、最近の敗北で彼女は焦り出していた。
長年組織の為に働いてきた彼女は失敗を何よりも恐れた。
幹部という地位を与えられたにも関わらずこのまま失望されるのではないかと懸念もあり、部下の前で苛立つことも増えていった。
「今回も作戦に失敗だわ! 全くあなた達は何をしていたの、実戦では役に立たないし訓練はちゃんとやってるの!」
その日も地上での戦闘で敗北してしまった。
ヴァニラ怒りを隠さず戦いで疲弊した部下達を怒鳴った。
特に戦闘で活躍できなかった下っ端の戦闘員への当たりは強かった。
「ダランは特に酷かったわよね! すぐに敵に見つかるわ、戦闘ではすぐ負けるわ、足を引っ張ってばかりで本当に役立たずなんだから!」
「すみませんヴァニラ様。次の作戦では必ずや活躍してみせますので」
ヴァニラに怒鳴られながら、ダランは申し訳なさそうに皆が見ている前で謝罪をした。
「その言葉、今回で何度目かしら? 私は謝罪でなく結果が欲しいの!」
彼の謝罪にも関わらずヴァニラは彼の叱責を続ける。
他の戦闘員達は目の前で繰り広げられる光景に気が滅入ってしまった。
戦果を得られず悔いる気持ちを引きずりながら基地に帰ったと思ったら今度は幹部の叱責である。
当然これでは落ちた士気が上がるはずもなく、落ちていく一方だった。
「またかよ」「俺たちだけのせいじゃないのにな」
そんな言葉がチラチラと飛び交う。
戦果を得られない停滞した現状と苛立ちを隠せないヴァニラに、当然部下の士気も下がっていく。
「次の作戦で失敗したらただじゃおかないわ。今度はちゃんとしなさい!」

ようやくヴァニラの説教から解放された戦闘員達はトボトボと自室へと戻っていた。
その中にヴァニラから酷く叱責されていた戦闘員のダランがいた。
彼も長年組織で働いていたが、なかなか活躍できず未だに下っ端の戦闘員という立場に身を置いていた。
本人も訓練や勉強など努力はしていたのだが、生まれ持っての才能の無さのせいか結果に現れないままであった。
「くそ、言いたい放題言いやがって・・・」
ぶつぶつと今まで自分を責めていた幹部のヴァニラへの不満を呟きながら歩いていた。
すると前を歩いていた一人の男が何かを落としてしまった事に気付いた。
「おい、お前何か落としたぞ!」
だが男はダランの言葉に気付かないまま角を曲がり、見えなくなってしまった。
「あれ、どこに行ったんだ?」
男が落とした物は軽くポケットに入るくらいの小箱であった。
「何だこりゃ、取り敢えず開けてみるか?」
すると中には文字が書かれた紙とその下に何かが入っていた。
紙に書かれた内容をしばらく読んでいたダランは小箱をポケットに入れるとニヤッと笑った。

一方ヴァニラは幹部に与えられた豪華な部屋で報告書を読んでいた。
時折深いため息をつき、疲れを見せてしまう。
「はあ・・・」
するとドアからノックをする音が聞こえてきた。
「入りなさい」
「失礼します。ヴァニラ様、最近お疲れのようですね」
部屋に入りヴァニラに声を掛けたのは女性戦闘員のエリンだった。
階級はヴァニラより低いが、少ない女性のメンバーという事と自分を慕ってくれている為、ヴァニラは彼女の事をとても気に入っていた。
「ごめんねエリン、心配かけちゃって。最近作戦が上手くいかない事が多くて」
さっきまでの部下に見せていた威圧的な態度と違い、エリンには優しい言葉を掛けた。
ヴァニラにとってエリンだけは他の部下には見せない弱い部分を見せられる唯一の相手でもあった。
「私で良ければヴァニラ様の相談に乗りますよ」
「ありがとうエリン」

「ヴァニラ様、失礼します。」
仲良くヴァニラとエリンが話していると割って入るようにダランが部屋へと入ってきた。
「何よ折角私とヴァニラ様が話しているのに」
エリンは急にやって来たダランにあからさまな敵意を向けた。
事実エリンはダランの事が嫌いであった。
何の成果も出せずヴァニラの足を引っ張る邪魔者のように見ていたのだ。
「いいのよエリン。ダラン何の用?」
「お邪魔してすみません。総統がお呼びです」
「総統が?」
ダランの話によると総統が今後の方針について話し合いたいので、用意した部屋へ来るようにとのことだった。
(私はともかく何で彼まで?)
実力と地位のあるヴァニラに声が掛かるのは理解できたが、なぜよりによって下っ端戦闘員のダランまで呼ぶのか理解できなかった。
しかし、声を掛けてきたのは他でもない総統なのだ。それを断れるはずもない。
集合場所である小さな部屋に入る。
そこはドアが一つしかなく窓もない部屋であり、置かれているのは机と二人分のイスだけだった。
「どうやら総統はまだのようですね」
「そうみたいね。じゃあ、座って待ってようかしら」
ダランはヴァニラが椅子に座ったのを確認すると扉を閉じて鍵をしてしまった。
「え、なんで鍵なんか掛けるのよ!これじゃあ総統が入ることができないじゃない!」
これから総統が来るはずなのに、鍵などしてしまえば誰も入ってこれないのは明らかだ。
突然謎の行動を始めたダランにヴァニラは彼が何をしようとしているのか全く理解できなかった。
ただ何となくだがダランが良からぬことをしようとしていることだけは感じ取ることができた。
「はは!総統は来ませんよヴァニラ様」
状況がつかめないヴァニラに対して、ニヤニヤとダランは笑い始めた。
「何なの、どういうこと?説明しなさいダラン!」
「すぐに嫌でも分かるようになりますよ。そうやって今の内に威張っておくといいですよ。すぐに俺にそんな態度向けられなくなりますから」
そう言うとダランはヴァニラの手を握った。
「何をするの!手を放しなさい!」
ヴァニラは手を振りほどこうとしたがなぜか身体に力が入らない。
「う、力が出ない。ダラン何をしたの?」
「くく、すぐに分かりますよ」
ダランはヴァニラの手を掴むと力を込め始めた。
するとヴァニラは妙な感覚に陥った。
まるでダランの手の方へ意識が流れていくような気がしたのだ。
「ああ、何これ?私吸い込まれる・・・」
そして一瞬視界が眩しく光ったと思った瞬間意識を手放してしまった。

「な、何が起こったの?」
まだ視界はぼやけたままだったが少しずつはっきりし始めていた。
「ダラン、一体何のつもりなの?」
ようやく動けるようになった手に力を入れダランの手を振りほどいた。
キッと目の前にいるはずのダランを睨みつけて厳しく問いかけるヴァニラだったが、視界がくっきりすると目の前の人物がダランでないことが分かった。
それは男性ではなくどうやら女性のようだ。それも大きな胸を持っているようで、ぼやけた視界でも胸が大きいことが分かった。
ぼんやりと見える服装から戦闘員ではなく組織で位の高い人物だと分かる。
それも幹部クラスのようだが、ヴァニラ以外に女性の幹部はいないはずだ。
「あなたダランじゃないの?それよりどうやって部屋に入ったの?この部屋には鍵がしてあったはずだし」
そう言っている間にもヴァニラの視界はもうはっきりと見えるようになっていた。
そして目の前の人物が誰なのかもようやく理解することができた。
ただしそれはヴァニラが想像していた人物ではなかった。
「そ、そんな・・・」
ヴァニラは声を詰まらせた。なぜなら目の前にはダランでなく、そこにいないはずのヴァニラ自身の身体があったからだ。
「え、何で私がそこに?じゃあ、私は一体?」
その答えは相手から返ってこなかった、代わりに飛んできたものは自分の腹部に入った拳だった。
自分の顔が笑顔で腹部へ拳をいれている。
ヴァニラは何が起きたのか理解する間もなく攻撃をまともに受けてしまったのだ。
「うぐっ!」
その攻撃は痛みを感じる前に意識を飛ばしてしまうほどの威力であり、ヴァニラは自分の身体と共に意識がガクッと崩れ込んでしまうのが分かった。
彼女にできたのは薄れゆく意識の中顔を相手に向けて、自分の顔であるはずの相手を視界に入れることと倒れ込む衝撃を少しでも和らげることだけだった。
「おやすみなさい、元ヴァニラ様」
それがヴァニラが意識が無くなる前に聞いた最後の言葉だった。

「うう・・・」
気絶していたヴァニラの意識が戻ったのは少し時間が経ってからだった。
ズキズキと痛む腹部がヴァニラの意識を覚醒させた。
「いたた・・・」
お腹にまだ痛みが残っていたが大きな怪我はないようだ。
そしてゆっくりと目を開けたヴァニラは周囲を確認した。
視界には天井が入り背中からは柔らかい布団の感触があった。
どうやらどこかの部屋のベッドで寝かされていたようだ。
「ここは?」
その部屋は先程ダランと一緒に入った部屋ではなく別の部屋のようだ。
またヴァニラが幹部の部屋として与えられた快適な自室でもないようである。
狭く動けるスペースもあまりない、少なくとも医務室でないことは散らかった部屋を見れば一目瞭然だった。
ヴァニラの記憶が正しければ、これは下っ端の戦闘員達が使っている部屋のはずだ。
「何で私がこんな所で寝かされているの?」
誰かに運ばれて休ませるなら医務室かヴァニラの自室のどちらかだろう。
なのになぜ幹部である自分がこんな部屋に寝かされていたのか。
考えても分からないヴァニラは目が覚める前の事を思い出そうとした。
「確かダランと部屋に入って、そこでダランに何かされたのよね。その後、私みたいな人に・・・」
そこではっきりと自分が襲われたことを思い出すことができた。
「そうよ、不意を突かれて気絶させられたのよ。あいつ一体何者なのかしら?・・・もしかして私に変装したスパイじゃ。こうしちゃいられないわ。総統に早く報告しないと!」
ヴァニラは部屋を飛び出すと、急いで総統の部屋へと向かった。
総統の部屋の前には衛兵が配置されている。いつもなら幹部のヴァニラはすんなりと通ることができていた。
しかし、その日は違った。
ヴァニラが部屋に入ろうとすると武器を向けられたのだ。
「総統に緊急の報告があるの!早くここを通しなさい!」
「ん?お前はヴァニラ様の部下か。お前のような下っ端が総統に直訴とは笑わせてくれる」
「な、何を言ってるの?私は・・・」
「お前のような輩はまずヴァニラ様へ報告するんだな。下っ端風情が総統に会えると思うな!」
衛兵に追い返されたヴァニラは来た道を引き返すことにした。
そしてさっきの衛兵の話を思い出していた。
「私が下っ端だと・・・」
そしてヴァニラは視線を自分の衣服へと向けた。
ヴァニラはさっきから自分の衣服が気になっていたのだ。
それは普段戦闘員達が着ている服だった。
黒を基調とし敵に恐怖と組織の偉大さを見せつけるデザインになっている。
そしてそれはいつも彼女が着ている組織の幹部のみが着ることを許された制服とは違っていたのだ。
「これは戦闘員達が来ている服、いつの間に私はこんな服に・・・」
組織の幹部には専用の衣服が与えられていたが戦闘員とは大きな違いがあった。
戦闘員は実戦でスムーズに動けるよう設計された機能性重視の服だったが、幹部の服は部下たちよりも装飾性が大きく重視されていた。
現場の人間と指揮を執る人間の違いが表れているのだ。
しかしヴァニラは今着ている服よりももっと大きな違和感を感じていた。
「私の胸が・・・」
いつも重くはみ出しそうになっている胸がなくなっていたのである。
萎んだというより元から無かったかのように、今の彼女の胸は平らになっていた。
いつもと違うのは衣服や胸だけでない。声もいつもより低い。それは女性の声ではない低い声であり男性のような声だった。
ヴァニラは今の自分の姿を確認する為、焦る気持ちを抑えながら今はほとんど使われていない部屋へと入った。
部屋に入ると壁に掛けられた鏡を覗き込んだ。
そこには黒く長い髪もスレンダーな身体も大きな胸も写っていなかった。
そしてヴァニラは顔を青ざめていった。ヴァニラの代わりに別の人物が映り込んでいたからである。
「ダ、ダラン!」
そこには女幹部のヴァニラでなく今まで役立たずと馬鹿にしていた戦闘員のダランの姿があった。

ヴァニラは自分の身体を探して廊下を急いで走っていた。
身軽だったヴァニラの身体と違い今は身体がとても重く感じた。
少し走っただけですぐに息をするのが苦しくなってしまった。
唯一ヴァニラの大きな胸が無くなったことでだいぶ胸は軽くなったが、それでもダランの身体はデメリットの方が多いように感じた。
「はあ、はあ。何よこの身体このぐらいで疲れるなんて・・・」
息を整える為に少し休んでいると、通り掛かった他の戦闘員がニヤニヤしながらダラン(ヴァニラ)に話しかけてきた。
「よう!ダラン。おい、聞こえてないのか?」
初め自分に声を掛けられているのに気付かなかったダラン(ヴァニラ)だったがようやく彼らが自分に語っていることに気付いた。
「あ、私に話しかけてるの?」
「おいおいまだ寝ぼけてるのか、ヴァニラ様の所に謝りに行くんだろ?」
「謝る?何で私が?」
謝るどころか自分の方が怒りたいダラン(ヴァニラ)だったが、とりあえず彼らの話を聞くことにした。
もしかしたらヴァニラの身体が今どこにいるのか知っているかもしれないのだ。
「すっ呆けても無駄だぜ、ヴァニラ様から聞いたぞ。ヴァニラ様と大事な話をしている最中昼寝なんかしたらしいな」
「昼寝?違うわ、あの時私は・・・」
色々と彼らに反論したい気持ちはあったが、これ以上話しても信じてもらえないだろうと判断したダラン(ヴァニラ)はそれ以上なにも言わなかった。
「ほら言い訳はいいからヴァニラ様に早く会いにいけよ。まだ自室にいるらしいぜ。せいぜいこれ以上怒らせないようにな」
本来のヴァニラであればあのような口の利き方をする戦闘員にはきつい罰を与えていたが、今は自分がダランであり何もできない事に腹が立った。
しかし彼らのこともそうだが、それよりも今は本来の身体を探すべきたと考えたダラン(ヴァニラ)は足早に元自分の部屋へと向かった。
走り出すと後ろから戦闘員達が自分を笑っているのが聞こえてきた。
「おい見ろよ。血相抱えて急いでいるぞ、ははは」
「く、元に戻ったらあいつら便所掃除を1ヵ月、いや1年間はやらせてやるわ!」

やっとヴァニラの自室へと到着することができた。
今まで自分が使っていた部屋だが、今はそこを快適な部屋とは違う違和感があった。
そこにいるのはヴァニラ自身ではないからだ。
ダラン(ヴァニラ)はそっと部屋に入ると部屋の中を見回した。
「ノックぐらいしたらどうなんだ?ここは幹部のヴァニラ様の部屋だぞ。下っ端戦闘員のダラン」
聞いたことのある声がダラン(ヴァニラ)の耳に届いた。
それもそのはずだ。あの声を出していたのはヴァニラ自身であったのだから。
「私の身体を返しなさい。貴方はダランね?」
「その身体で挑むのか?自分が今誰になっているのかまだ理解できてないのか?その身体になって知能まで下がっちゃったのかなヴァニラ様?ふふ、でも今のお前はお強いヴァニラ様じゃなくて最下級戦闘員のダランなんだぜ」
「五月蠅い!私の身体を返しなさい!」
ダラン(ヴァニラ)は相手の挑発にまんまと乗せられ真正面からヴァニラ(ダラン)へと飛び掛かった。
しかし相手はそれを見越していたかのようにひらりと攻撃を避けると、素早い動きで一瞬にしてダラン(ヴァニラ)の首筋を掴んでしまった。
「かはっ!」
「うーん、やっぱり幹部になれるだけあって戦闘能力はその身体とは比べ物にならないぐらい強いな。おっと感動してる場合じゃないな元幹部のヴァニラちゃんが死んじまいそうだ」
ようやく掴んだ手を放すとダラン(ヴァニラ)は苦しそうに咳き込み始めた。
「ごほっ、ごほっ!」
「悪い悪い、まだこの身体に慣れてないせいで力の加減がまたよく分からないんだ」
「この、よくも・・・」
ダラン(ヴァニラ)は再度攻撃を仕掛けようとしたがヴァニラ(ダラン)はそれをあざ笑った。
「おっとまだやる気か?このまま君を反逆者として扱ってもいいんだぜ。なにせ今の俺は組織でも指折りの幹部だからな。組織の他の人間は幹部と下っ端の戦闘員のどちらを信じるだろうな?はは、試してみるか?」
相手の言葉通り、今誰かに来られたらダランの姿をした自分が疑われるのは一目瞭然だった。
「く!」
怒りと悔しさを抱えたまま、その場は大人しく振り上げた拳を下ろすしかなかった。
「はは、そうだ、やっと理解できたみたいだな。ああいい気分だ。あのヴァニラ様が下っ端の俺の言う事を素直に聞くなんてよ」
成すすべなく相手の言う通りにするダラン(ヴァニラ)を見てヴァニラ(ダラン)は勝ち誇ったように笑った。
「じゃあ、素直なヴァニラちゃんには良い物を見せてやろう」
そう言ってヴァニラ(ダラン)は自分の胸についた大きな胸に手を置いた。
「な、何をしているのよ!?」
「折角女の、それも美人の身体になったんだから男がする事は一つだろ。おっと邪魔するならヴァニラ様が俺を襲ったと報告して独房に入れるからな。そこで大人しくしてな」
「うわ、やっぱり女の胸は柔らかいな。それに思ってたより気持ちがいいぜ」
ヴァニラ(ダラン)は嬉しそうに服の上から丸く膨らんだ胸を手で円を描くように触った。
かつて自分の身体だったヴァニラの身体が今目の前で好きなように扱われていた。しかしダラン(ヴァニラ)は歯を食いしばって見ていることしかできなかった。
「く、よくも私の身体を・・・」
身体も力も地位も全て奪われてしまったヴァニラ(ダラン)にとって、今目の前の屈辱的な行動を止める手段はない。
さきの戦闘で力の差は歴然だった、闘って勝てる相手ではないのだ。
「こんな良い物持ってるのにもっと見せないと勿体ないよな。それにこの制服を着てるとさっきから胸が苦しいし、いっそ脱いじまうか」
そう言って制服のボタンに手を掛ける。
「この、もういい加減に!」
流石に我慢の限界が来たダラン(ヴァニラ)は止めようとするが、ヴァニラ(ダラン)は大声で叫んだ。
「おい誰かいるか!?」
「ヴァニラ様どうしました!?」
何事かと見回りをしていた番兵が部屋に入ってきた。
現状を理解できていな番兵はヴァニラとダランを見回して必死で状況を把握しようとしている。
「ふふ、ダラン何か言いたいことはあるかしら?」
ヴァニラ(ダラン)はニヤニヤしながらダラン(ヴァニラ)に答えようのない質問をした。
ここで正直に話した所で、番兵が自分達が入れ替わっていると信じてくれるわけもない。
恐らく戯言だと言ってヴァニラ(ダラン)を信じてダランの身体である自分を捕まえるだろうことは容易に想像できた。
「く!いえ、何もありません・・・」
何も言えないと分かると、ヴァニラ(ダラン)は番兵に嬉しそうに命令した。
「悪いわね。何でもないわ、下がっていいわよ」
「はあ、何かあれば呼んで下さい」
終始状況が理解できない番兵は頭を捻りながら部屋を出て行った。
番兵が去り大人しくなったダラン(ヴァニラ)を確認すると、ヴァニラ(ダラン)は先ほどと同じように制服のボタンを外し始めた。
「さて、続きを始めるか。良いよな、ヴァニラ様?」
「く・・・」
遂に制服のボタンを外してしまったが、もはや見ているだけしかできない。
次々とヴァニラの衣服を脱いでいき、その度にヴァニラの白い肌が表に出てきた。
下着姿になると長い手足と細いウエストのヴァニラの身体が露わになる。
ただし痩せすぎているというより普段から身体を鍛えていることもあって、健康的な肉体という表現の方が合った。
「この手も足も今じゃ俺の物か、最高だな」
そして全体的にほっそりした身体の中で唯一大きいのがヴァニラの胸だ。
「ヴァニラ様可愛いブラしてるんだな。こんなリボンの付いた白いブラなんて想像してなかったよ。それに思った通り胸の谷間ができてるな。これから毎日これが見放題だぜ」
そしてまたブラの上に手を置いて胸を触り始めた。
制服の上から触っていた時と比べ、今回はブラの間から肌も見える。触る度に胸が大きくゆれ、触った指はプニっと胸の中へと沈み込んでいた。
「さて下着姿も楽しんだし、いよいよ生まれたままの姿になるか」
その間ダラン(ヴァニラ)は妙な感覚に襲われていた。
目の前にいるのは自分の身体のはずなのに、なぜか胸が高鳴る気がするのである。
(何で私こんなにドキドキしてるの?)
最初は気のせいかと思っていた。しかしヴァニラの身体が裸に近づくにつれ次第の胸の鼓動は激しさを増していき、自分でも自覚するほどまでになっていた。
そんな事を気にすることもなくヴァニラ(ダラン)は着々と下着を脱いでいく。
しかしブラのホックが外れにくいのか手を後ろに回して悪戦苦闘をし始めた。
するとヴァニラ(ダラン)はダラン(ヴァニラ)を見てニコッと微笑んだ。
「悪いがブラのホックを外してくれないか?何せ初めて外すもんでな」
満面の笑みを向けてダラン(ヴァニラ)にブラを外すよう頼んだ。
「な、何で私が?」
「あれ一緒に見たいと思ってたんだけどな、ヴァニラちゃんのおっぱい。見たくないのかこの綺麗な巨乳を?」
ヴァニラ(ダラン)は胸の谷間を指さしたり、ブラを少しずらして乳首をぎりぎりで見えないようにしながらダラン(ヴァニラ)へ見せびらかした。
「わ、私は・・・」
同意も拒否もできずアタフタしていると、ヴァニラ(ダラン)はニヤッと笑いながらなおも胸を見せびらかした。
今度は胸を下から持ち上げるように抱えフワフワと動く胸を見せたと思ったら、今度はぎゅっと左右から胸を押して大きな谷間を作りダラン(ヴァニラ)に見せつける。
(うう、私のなのに。でも目があそこから離せない)
「はは、興奮してるのは分かってるぜ。何せそれは俺の身体だったんだからな」
ヴァニラ(ダラン)は視線をダラン(ヴァニラ)の下に移す、そこには大きくなったダラン(ヴァニラ)の股間があった。
既にダラン(ヴァニラ)が我慢の限界に来ていることに気付いていたのである。
それを知らないのは男の身体になったばかりのダラン(ヴァニラ)だけだった。
「ほら、早く外してくれよ。一緒に見ようぜ、ヴァニラちゃんのおっぱいとそれに下の股間もな」
ゆっくりと視線はダラン(ヴァニラ)に向けたまま背中を向けてブラのホックを見せた。
そしてダラン(ヴァニラ)はゆっくりと手を伸ばすと遂にホックを外してしまった。
「く・・・」
ブラを外すと、ほんのりとヴァニラの体臭が漂ってきた。
まるで衣服の中に閉じ込まれていたヴァニラの匂いが一気に放出されたようにダラン(ヴァニラ)の鼻へと入ってくる。
(これ私の匂いなんだ・・・なんだか良い香り)
ブラを取ると重量感のあるヴァニラの胸が露わになった。
ふっくらとした丸い胸の上にピンと張った乳首が上を向いている。
それをヴァニラ(ダラン)は手の中へ丸め込むように触った。
「はは、ずっとこの胸を直接触りたかったんだ。見ろよこの大きさ、それにこんなに柔らかいんだぜ。うわ、ぷにぷにだ」
「ああ、私の胸なのに・・・」
他人の男にいい様に弄ばれる自分の身体を悲観すべきだが、実はこの時ダラン(ヴァニラ)はさっきより更に興奮していた。
自分の身体が胸をイヤらしく触っている光景を見て、遂に男性の股間が反応し始めていたのだ。
それは女性の身体では味わえない男の興奮だった。
しかしダラン(ヴァニラ)はそれをまだ理解できず、自然と股間が盛り上がっている自分に気付けないままヴァニラ(ダラン)のエッチな行動を凝視し目をくぎ付けにさせた。
「ん?胸が段々ジンジンしてきたな。これが胸で感じるってことか・・・」
最初は胸の感触を楽しんでいたヴァニラ(ダラン)だったがやがて胸から別の感覚が沸き起こりそれを感じ始めた。
それを見ていたダラン(ヴァニラ)も最初と比べてヴァニラの胸が段々と大きくなり上を向いていることに気付いた。
ヴァニラの身体もだいぶ興奮しているのが分かる。
ただそのヴァニラの身体に入っているのはヴァニラ本人ではなく、下っ端のダランという戦闘員でヴァニラ自身はダランとしてそれを見ているしかできなかった。
「それじゃあ、そろそろ胸でイッテみるか」
そして乳首を試しに摘まんでみるとヴァニラの身体はビクッと一瞬震えた。
「あは、男の胸とは全然違うなこの感じ。あん!ピリッと来たと思ったら全身に快感が広がっていくみたいだ」
ヴァニラ(ダラン)は乳首を両手で摘まみ身体全体で感じている。
目を閉じ乳首から沸き起こる刺激を味わっていた。
「あん、凄ぇー、どんどん気持ち良くなってくる。ああん!いいわー、この身体最高ね!」
するとさっきまで乱暴な口調だったヴァニラ(ダラン)が段々と本来のヴァニラが話すような喋り方に変わっていた。
まるで身体で快感を味わえば味わう程ヴァニラの口調に近づいているように聞こえる。
「わ、私のマネしないでよ!」
「マネ?うふふ、マネじゃないわよ、私が私らしく振る舞って何がおかしいの。あなたこそダランらしく振舞ったら」
そう言ってヴァニラの身体の探索を続けた。
「じゃあ、次はお待ちかねの下の部分ね。私、この身体のあそこを見るの凄く楽しみだったんだ」
ヴァニラ(ダラン)は唯一最後まで身に着けていたショーツを脱いでしまった。
ショーツの下から女性の股間が出てくると、ダラン(ヴァニラ)は固唾を飲み込んでその様子を眺めた。
ダラン(ヴァニラ)の股間はもうビンビンに膨れ上がり、服を大きく盛り上げている。
身なりを気にしないヴァニラではあったが、ムダ毛の処理など最低限女性としての身だしなみには気を遣っていたため下の方も綺麗に整えられていた。
長く白い両脚が合わさる彼女の股は美女に相応しい綺麗な光景であった。
「意外ね、ファッションには疎いのにこういう所はきっちりしてたのね。さあ、あなたが大切にしていたここを楽しませてもらおうかしら」
「も、もう止めて、私の身体をこれ以上汚さないで!」
股間を大きく立たせたままダラン(ヴァニラ)は懇願した。
「そんな事言って自分も楽しんでるじゃないか。ほらいい加減気付きなさいよ。そんな大きなモノ立てて」
「え、何これ?私の股間どうしちゃったのよ?何でこんなに大きく、それに興奮して・・・」
相手から指摘されてようやくダラン(ヴァニラ)は自分が股間を大きく膨らませていることに気付くことができた。

「男はね、興奮するとそうなるのよ」
そう言ってヴァニラ(ダラン)はダラン(ヴァニラ)に裸で近づいて来る。
もう相手との距離はほとんどない状態まで近寄ると、ニコッとを笑みを浮かべた。
「あ・・・」
ダランはその行動にどう対応すればいいか分からず、ただ向けられた笑みとその下に広がっている元自分の身体に興奮するだけだ。
するとヴァニラ(ダラン)はかつての自分の身体に興奮しているダラン(ヴァニラ)の衣服を無理矢理脱がしてしまった。
「きゃっ!な、なにをするの!」
衣服を無理矢理脱がされてダラン(ヴァニラ)も裸になってしまった。
長年組織へ尽くしてきたヴァニラは異性との経験はほとんどなかった。
部下の男性に指示を出すことはあれどそれはあくまで仕事の中での事であり、私生活で異性と接する機会などなかったのだ。
そして今男になったダラン(ヴァニラ)が男性の象徴を見下ろすと、恥ずかしそうに顔を赤くしてしまった。
「こ、こんな物が私の股間に・・・」
「ふふ、今の貴方にはお似合いの姿ね」
情けなく起立した股間を手で押さえるダラン(ヴァニラ)を見てヴァニラ(ダラン)は笑った。

「さて、折角入れ替わったんだし、仲良く一緒に気持ちよくなろうかしら。それにあなたにとってもその身体に慣れてもらった方が便利だしね」
「な、何をするつもり?」
「何ってあなたを早くその身体に慣れさせてあげようとしてるんじゃない。それに男の身体も気持ち良いのよ、ほら」
そう言ってヴァニラ(ダラン)は大きく立っているダラン(ヴァニラ)股間を手で包み込むように触った。
「うぐっ!あうう!」
ヴァニラ(ダラン)の手が股間に触れた瞬間、ダラン(ヴァニラ)はとてつもない衝撃に襲われた。
柔らかい手の感触が股間を通り全身を駆け抜けていくような気分を味わった。
「は、はあ。あんん!」
ヴァニラの手が股間を触って動くと、まるでダランの股間は快感を爆発させるように気持ちよくなった。
「凄いあなたのチン〇どんどん大きくなっていくわ。もうビンビンね」
「はあ、はあ。言わないで!私の、俺の口でそんなはしたないこと!・・・お、お願いだ」
今、自分の目の前で自分の身体が裸でエッチな言葉を投げかけている。
ヴァニラとして過ごしていた時は鏡を見ても自分の身体に興奮することなど当然なかった。
しかし、今はダランの身体に入ってダランの頭で物事を見ている。
だから今目の前にいるのは自分の身体でなく女性として見ていた。
ヴァニラという美女が甘い声で大きな胸を揺らし、自分を誘惑している。そして男のダランとして興奮してしまっていたのだ。
「うふふ、あなたもすっかりダランの身体を気に入ってくれたみたいね。じゃあ私も新しい股間を試そうかしら」
そう言ってダランの股間を握っていない別のもう片方手を自分の股間に入れていった。
「くぅ!入る、私の中に入ってくぅ。ああ、これが女性の中の感覚なのね。凄く素敵、ああん!」
ヴァニラ(ダラン)は前の股間と今の股間を一度に手で扱い始めた。
女性の暖かく湿った中を指で動かす。するとクチュクチュという音が股間から鳴り響いた。
「ああ、私の股間濡れてる。イヤらしい音出して」
自分の中から出て来る音に興奮し手を動かす。するとヴァニラの大きな胸もぶるんと揺れた。

一方ダラン(ヴァニラ)は触れられている股間と目の前でイヤらしく喘いでいるヴァニラ(ダラン)を見て心も体も興奮しきっていた。
「ああ、俺が俺の前で興奮してる。凄くエッチに興奮しておっぱいを揺らしてる」
やがてもう限界にまで膨れ上がっていた男のそれは、更に興奮すると大きくなる以外の変化をもたらした。
股間の奥底から何かが溢れてきたのだ。
「な、何だ?何かが俺の中から溢れてくるみたいだ」
それを聞いてヴァニラ(ダラン)はダランの身体に何が起きているのかすぐに理解した。
もうすぐ終わりが近くないっているのだ。
だからヴァニラ(ダラン)は最後の瞬間に行く為にダランを握っている手と自分の股間に入れている手の両方を激しく動かした。
「はあ、はあ、その我慢してるものを私の前でぶちまけなさい。わ、私も貴方の前でイクから。あん!」
そして二人は身体全体をブルブルと震わせていった。
息を荒げ身体を大きく動かし快感に身を落とす。
もう終わりは近い。
そして最後の力を振り絞りヴァニラ(ダラン)は手を大きく動かした。
「俺もうだめだ。イク!出る!ああー!」
「私もダメ!イク!出ちゃう!ああーん!」
そしてダランとヴァニラの身体はそれぞれの股間から液を出してしまった。


お互いの身体で初めて絶頂を味わった二人はしばらくその余韻を楽しんだ。
「はあ、はあ。女として感じるのも悪くないわね。むしろ男より断然良いわ。ふふ、私この身体とっても気に入っちゃった」
「うう、俺の身体を汚してもう満足だろ。早く俺の身体を返せよ!」
「あら、まだイキ足りてないようね。本当しょうがない奴ね」
そう言ってイッタばかりのダラン(ヴァニラ)の股間をまた掴んでしまった。
「あうう!」
「ふふ、貴方を生かすも殺すも私次第なの忘れないでね。どうこのままイキたいでしょ?それとも止める?」
ヴァニラの甘い声でダラン(ヴァニラ)を誘う。
もう戻れない道へと。
「う、俺イキたい。気持ちよくしてくれ」
「うふふ」
ヴァニラ(ダラン)はそのままダラン(ヴァニラ)の股間を握ったまま甘い声で語り続けた。
「安心しなさい、元の身体のよしみだから前線には出さず私の側に置いてあげる。そこで私の活躍を見てるといいわ。前のヴァニラよりもっと凄い指揮を執ってあげるわ。だから貴方はしっかりダランをやりなさい。・・・返事は?」
ダラン(ヴァニラ)はそれに拒否する選択肢など用意されていなかった。
「・・・はい、ヴァニラ様」
力なくそう返事をするしかなかった。
「そうよ、素直に言うことを聞いたらこれからはこんなご褒美もあげるわ」
そう言ってヴァニラ(ダラン)はふっくらした唇でダラン(ヴァニラ)の頬にキスをした。
するとダランの股間からまた白い液体が噴き出してしまった。
「うふふ、これからも私の部下としてよろしくねダラン」


そんな二人の光景を終始息を潜めて見ていた人物がいた。
「そ、そんな!ヴァニラ様があんな奴に・・・」

つづく















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