最後のデート 作:verdsmith7 朝日が昇り目覚まし時計がやかましく部屋中に鳴り響いている。 「う、うーん」 いっこうに鳴りやまない目覚まし時計の音に、布団の中ではモゾモゾと動き始める人物がいた。 布団から腕が伸びる。肌は白く細くて長い腕が目覚まし時計を掴んだ。 そして布団の中へ引き寄せると、うるさい目覚まし時計の音はやっと鳴り止んだ。 目覚まし時計を止めた本人はゆっくりと布団から顔を出す。まだ眠た気な表情をした少女の顔と長くて綺麗な髪が布団から出てくる。 「ふぁーあ」 少女は大きなあくびをすると、ゆっくりとベッドから起き上がった。 やっとの事で布団から少女の全身が出てきた。 細くスタイルの良い少女の身体はピンクの可愛いパジャマを身にまとっている。 まだ眠いのか目をこすりながら彼女は洗面所へと向かった。 洗面所に到着すると彼女は水道水で顔を洗った。冷たい水が彼女の顔を刺激し、少しだけ眠気が取り除く。 少女が鏡を見るとさっきより目が大きく開いた美少女が写っていた。 まだその顔は幼い感じを残しているが身体は成長期を迎えていることは明白だった。 パジャマからふっくらと膨らんだ胸がそれを象徴している。 少女は鏡の自分に向かってニヤッと笑いかけると自分の胸を優しく撫で始めた。 「ああ、やっぱり気持ちいいな。今日は色々と面倒そうだから、今の内にちょっとだけ楽しむか」 可憐な少女に似つかわしくない表情と口調で自分の胸を少しの間揉むと、ぼりぼりとお尻をかきながら洗面所を後にした。 自室に戻った少女は壁に掛けてあった高校の制服を取った。 いつも少女が着ている制服をなぜか少女は微妙な表情で眺めた。 だが少女は何か観念したかのように着替えを始めた。 パジャマの下から可愛い下着が出てくると少女はそれをニヤニヤとしながら眺めた。 「もう少し楽しみたいんだが、もうすぐあいつも来るからな」 名残り惜しそうに少女はそう言うと、制服に身体を通していった。 しかし、どこかぎこちなく少女は制服を着ている。まるでその制服を初めて着るかのように。 制服を着替え終わるのと同時に家のチャイムが鳴った。 少女は玄関へと向かい扉を開けた、出てきたのは学生服を着た青年だった。 校章は少女と同じ物を付けているので恐らく同じ高校に通っている生徒だ。 男子は出迎えた少女を見ると冷たい表情で言った。 「用意はできたか、じゃあ行くぞ」 ぶっきらぼうな物言いで少女の返事を待たずに歩き始めた。 少女は急いで鞄を持つと、彼の後を追いかけた。 道中二人は無言のまま進んだ。時折彼は少女の方をチラチラと横目で見て何かを気にしているようだった。 少女はそんな彼を気にする素振りも見せず頭をかいたり、大きなあくびをしながら足を進めた。 見た目は可憐な少女だったが歩き方はガニ股でどこか不自然な感じだった。 しばらく進むと古いアパートに到着した。 二人はアパートの一室に辿り着くと部屋のドアをノックした。 コンコンという叩く音がドアから響く。 「はい、今行きます」 部屋の中から大きな足音が聞こえてくると、ドアはガチャリと開いた。 中から姿を現したのは白髪交じりの中年男性だった。皺も目立ち始めお腹も出ている。 男は訪ねてきた男子を見ると不愛想な表情から明るい笑顔になった。 「良かった、来てくれたんだ。さあ、中に入って」 男は男子を嬉しそうに部屋の中に招き入れる、一方男は後ろの少女を見ると急に表情を曇らせてしまった。 男が何か言いたげな表情をしていると少女はそれに気づいた。 「何だ、俺には彼氏みたいな歓迎はなしか。そう怖い顔するなよ、ちゃんと来てやっただろ」 その言葉に男は何も答えず少女を部屋に通した。 少女はくすっと笑いながら部屋に入っていく。 (まあ、無理もないか。可愛い華の女子高生だったのが、よりによってそんなリストラされたばかりの冴えない中年男と入れ替わってしまったんだからな) 少女は昨日起こったあの出来事を思い出していた。 昨日までの俺はこの可愛い女子高生じゃなかった、あの汚い中年男だったんだ。 最近長年勤めた会社をクビにされた俺は目標もなく何もしない日々を過ごす生活を送っていた。 そして昨日俺はブラブラと外を出歩きデパートへ行ったんだ。買い物をする気だったわけではない単に気晴らしがしたかった。 だが、その日はイベントか何かでデパートは凄く混んでいた。どこのコーナーに行くにも人混みをかき分けないといけない。 気晴らしのつもりで来ていた俺は段々とイライラしていった。 そんな時だ、俺の肩が今朝俺を呼びに来た男子とぶつかったのは。 俺はイライラしていた。会社をクビにされ何も目標がなくなったことなどの怒りを合わせて、それらをあの男子にぶつけてやろうとした。 つまりイチャモンをつけたんだ。 当然イチャモンを付けられた男子も怒った。 少し肩がぶつかったぐらいでグチグチ言ってたらそりゃ相手もキレるだろう。 遂には喧嘩にまでなりそうになってしまった。 そんな時だ、あの男子が付き合っている彼女が出てきて俺たちを止めようとしたんだ。 そして俺たちの間に入ろうとしてバランスを崩してしまい俺と彼女は頭をぶつけてしまった。 気が付いた時には俺はそのぶつかった彼女に、彼女は俺になっていた。 最初はあの喧嘩していた男子が俺を心配そうにしているから変だと思った。 そして自分の身体を確認したら俺はスカートを履いているわ、おっぱいは付いているわで、やっと自分が女になったと分かった。 もっとも彼女が俺の身体で目を覚ました時のパニックぶりに比べたら可愛いものだったろうが。 俺の身体が情けなく泣いてしまうから、俺と彼氏がなだめてやったんだ。 本心では謝りたくはなかったんだが、俺の身体であんなに泣き叫ばれているのを見たら仕方なかった。 やっと俺の身体になった彼女を落ち着かせると、俺たちはこれからの事を話し合った。 そして取りあえず俺が女子高生として、その彼女が俺として生活することになった。 俺は無職で一人暮らしだから、彼女が俺を演じる必要はあまりないが・・・ 問題は俺が女子高生として彼女の代わりをしないといけないということだ。もっとも彼女が俺の中年男性の身体で女子高生をやるのは無理があるのは分かっていたが。 そうして俺は女子高生をすることになってしまった。 別に俺は女子高生になって人生をやり直したいわけではなかった。 できれば金持ちの子供とかと入れ替わって悠々自適に暮らしたいと思ったほどだ。 今更学生からやり直すのも面倒に感じた。 だが俺が嫌がったところでどうにもならないだろう。 例えこの女子高生の身体で中退してバイト生活を始めてもそれは楽かもしれないが、今は嫌々ながらでも学生をしておけばこの身体の親が飯を食わしてくれる。そう考えると女子高生をやるのも悪い気はしなかった。 それに俺もこの身体に興味はないとは言っていない。 このアパートに朝早く集まったのは俺の登校の準備のためだった。 何分俺の学生時代はもう何十年も前だし、当然女子高生の経験なんかない。 だからこうやって3人が集まって俺を完璧な女子高生にする計画だった。 「まったくそんな酷い格好で表に出て本当恥ずかしいわね」 俺の格好を確認するなり彼女が早速非難してきた。 男なら朝顔を洗って手櫛で髪をとくぐらいで良いと思うのだが・・・ すると彼女は俺が持ってきた鞄を開き櫛で俺の長い髪をといていった。 サーッサーと櫛でとく度に音がする、だが櫛が髪に引っかからないのでこの髪は相当に柔らかいのだろう。 彼女の櫛が止まると俺は鏡を見た。 髪が綺麗にまっすぐに伸びた女子高生の出来上がりだ。 その後もスカートの裾を直されたり軽く化粧をされたり、まるで俺は着せ替え人形になった気分だった。 「はい、これで完成よ」 彼女は中年男性の声で一仕事終えた言葉を発した。 改めて俺は鏡を覗き込む。 「へーこれが俺か、ほう結構可愛いな」 自分でも可愛いと思ってしまった俺は、クルっと鏡の前で回ってみる。 「こら、動き回らないで。スカートの中見えちゃうでしょ」 「ああ、悪い。つい可愛くて」 確かに可愛いのだが、内心俺は女装している気分でもあった。 だから鏡に可愛い自分が写った時、内心少し嬉しいと思ってしまったのだ。 そして俺の隣ではこいつの彼氏が恥ずかしそうにしているのを俺はちゃんと見ていた。もしかしたらスカートの中が見えてしまったのかもしれない。 中身が俺だと分かってるはずなのに・・・ 「私の身体のこと頼んだわよ。気を付けてね」 おっさんの声で彼女は彼を見送っていた、いよいよ俺の初登校というわけだ。 「おじさんはちゃんと私をやってよ。さっき注意したことを守ってよ」 優しく彼氏を見送ったのと違い、俺には冷たい言葉だけ飛んできた。 まるで出来損ないの子供を叱りながら見送るお袋といった感じだった。 「何であんなのがこんな可愛い女の子だったんだ?」 俺は彼女に聞こえないようにボソッと呟いた。 できればこのまま学校には行かずパチンコや競馬場にでも行ってしまいたい気分だった。 まあ、この身体でそんな所に行っても未成年の学生として入れてくれるわけないだろうが。 登校の途中俺は彼に気付かれないようにそっと胸を揉んでいた。 あまり大きくはないが、入れ替わってからこれだけは病みつきになっていたのだ。 可愛い女子高生が胸を揉みながら登校してるなんて、そう思うと俺は少し興奮してしまった。 学校に到着すると、彼はまるで転校生に学校を案内するように靴箱や教室や職員室を俺に教えた。 クラスにも初めて入るから緊張する、本当に転校生になった気分だ。 「おはよう」 クラスの女子たちが俺を見ると挨拶してきた。 「お、おはよう」 「あれ今日は何だか暗い表情だね、どうしたの? 気分が悪いとか」 「い、いや別に何でもない、わよ。おれ、私はいつも通り元気だよ」 そう言って俺は彼女たちから離れて席へ向かった。 彼女たちは不思議そうに俺を見ている。 初対面の人間に普通に挨拶されている。少し前までこの身体は当たり前だったのだろうが、今の俺にはそれが不思議な光景に思えた。 俺は座席に着くと辺りをキョロキョロ見回していた。 すると彼が俺にひそひそと声を掛けてきた。 「おい、脚を閉じろ。見えてるぞ」 俺は足元を見ると確かにいつもの癖で脚を広げて座っていた、中からは白い下着がチラチラ見えている。 幸いだが彼がすぐに気づいてくれて助かった。 「本当気をつけろよ。彼女の身体なんだから」 彼は顔を真っ赤にして隣の席へ着いた。 「へへ、あいつ本当この身体の事好きなんだな」 昨日あれだけ憎い相手だったがこうやって接すると何だか可愛い奴に思えた。 休み時間、俺は担任の男性教師に呼び止められた。 この教師でさえ元の俺より年下だが、今は俺が生徒なんだと心の中で確認した。 「はい、俺いや私に何か用でしょうか?」 「ごめんな、次の授業でこれを使うから配っておいてくれ」 「え・・・」 俺が返事をする前に教師はプリントを俺に渡して行ってしまった。 仕方なく俺は他の生徒にプリントを配っていく。 「ふふ、いつも先生の手伝い偉いね。今日もありがとう」 プリントを配っていると一人の女子生徒が俺にそう言ってきた。 どうやらこの身体の少女はいつも周囲の友達や先生の手伝いを自分からしているようだった。 俺はそんなの面倒だったからあまりしたことはないが、改めてそう感謝の言葉を言われると素直に嬉しいと思ってしまった。 「ありがとうって言われたの久々だな・・・」 いざ授業が始まると、俺は教師の話を聞くでも教科書を読むでもなくボーっとしていた。 今更勉強を頑張る気もなかったんだ。 しかしその事を見ていた彼は、放課後俺を呼んで怒ってきた。 「ずっと見てたけど、先生の話も聞かないでボーっとしてただろ。もうすぐ受験だし彼女の身体なんだからちゃんとしてくれよ」 「へー、じゃあお前は授業中ずっと俺を見てたんだな。とんだ変態だな」 俺は彼をあざ笑うかのように言ってやった。 「な、俺は彼女の身体が心配だから・・・」 俺の言葉に戸惑いを隠せない彼は顔を赤くしながら否定する。 「身体が心配か、じゃあ確かめてみる?」 俺はニコッと笑顔を作って彼に質問をした。 「た、確かめるって何を?」 「決まってるだろ、愛する彼女に見知らぬおっさんが入ったんだ。無事かどうか確認したいだろ?」 俺はわざと自分の胸を揉んでウインクをする。 彼はそれを見るとますます顔を赤くしていった。 「はは、風呂の時とか最高だったぞ。こうすると凄く気持ちよくなってな。ああん、こう喘ぎ声を出してね、ううん」 俺は胸を力強く揉んで昨日のお風呂の時の事を話してやった。 あまり昨日は時間がなくてほとんどできなかったが、お風呂の時だけは少し確認はしていたんだ。 すると彼の股間はムクムクと大きくなっていくのが分かった。 そして俺はそんな彼の手を握ってウルウルした瞳で語りかけた。 「ねえ、一緒に確認しない? この子の身体の隅々を一緒に、ね」 このまま折れるかと思ったが、彼は寸前の所で理性を保って断ってきた。 「や、やめろ彼女の身体でそんな事するな!」 そう言って、彼は俺に背を向けて立ち去ってしまった。 「ちぇ、もう少しだったのにな」 彼は立ち去ってしまったが、俺はそのまま胸を揉み続けた。 一方中年の男性になった少女は仕事を探していた。 職業安定所に行って何か良い仕事がないかを探している。 別にこの身体の男性の為に仕事を探しているわけではない。 一日中何もせず部屋にいても変な事を考えてしまいそうだったので、気晴らしも兼ねてやっているのだ。 しかし、たまに良さそうな仕事は見つかっても募集要項の段階で受け付けてもらえないことがほとんどだった。 学歴なし、資格なし、スキルもないこの身体では中々受け入れてくれる会社はなかった。 それを思い知らされる度に彼女は精神的に疲弊していくのを感じた。 「私の身体じゃないのに、何だか私が否定されてるみたいで嫌だな」 それまでの彼女は勉強熱心で真面目だったため周囲からの信頼も厚かった。 それが今では真逆の人生の男性として過ごしていると思うと気が変になりそうだった。 結局その日は仕事も見つからず、へとへとになってアパートへ戻ってきた。 テレビを見ながら今後のことを考える。 もし元に戻らず一生こんな身体で生活をするかと想像したら気分も当然落ち込んでいった。 不安だけが脳裏をよぎる。 そんな時ドアを誰かがノックする音が聞こえた。 このアパートは築年数が古いためインターフォンすら故障したままなのだ。 「はい、今行きます?どちら様?」 ドアを開けるとそこにいたのは昨日までの自分の身体だった。 学生服から着替えたのだろう私服姿で両手にはぱんぱんに膨れたスーパーの袋を持っている。 「よう元気にしてるか?」 「え、どうしてここに?」 突然の自分の身体の来訪にキョトンとしてしまう。 「どうしてって、元々ここは俺の部屋だろ」 男は部屋の中に遠慮なく入り荷物を置く。 袋から出てきたのはお酒やつまみや煙草だった。 「いやー、家にいると親がうるさいからわざわざここに買って持ってきたのさ」 「まさかお酒や煙草をここで?」 「そうだよ、何ならお前もやるか?」 少女の身体はビールを差し出す。 「私そんなのいらない。それより私の身体でそんなのやらないでよ!」 男は少女にかまわずプシュッと缶ビールを開けるとほのかなビールの香りが漂った。 少女はその匂いに不思議な感覚を覚えた。 (何だろう、凄く良い匂いな気がする。何だか美味しそうかも・・・) 男は少女の身体でいつものようにビールをグイっと飲んだ。 ゴクゴクと少女の身体の喉をビールを通っていくのが分かる 少女は自分の身体が美味しそうにビールを飲むのを見ていて唾をごくりと飲んだ。 一方の男はビールを飲み干すと微妙な顔になっていた。 「うえ、何だ? ビールってこんなに不味かったのか。それともこの身体のせいか?」 いつもと同じビールを同じように飲んだが、その味は全然違うように感じたらしい。 男は試しに買った女性に人気の甘いチューハイを飲んでみた。 「おお、これは飲みやすいぞ。はは、なるほどこりゃ女に受けるわけだ」 少女の身体はどんどん赤くなっていく、それもそのはずだ彼女は今までお酒なんか飲んだことすらなかったのだ。 当然アルコールに対する免疫もなかった。 「へへ、ほら、お前も飲めよ」 ほろ酔いになり気分を良くした男は少女に酒を飲ませようとする。 「いいわよ。私別に飲みたくなんか・・・」 言葉ではそう言っていたが、少女の内心では飲んでみたいという欲望が少しずつ芽生えていた。 それは男の身体がそうさせていたのかもしれない。 「へー、じゃあこうしようかな」 男は少女の身体でビールをぐいぐい口に入れていく。 「ちょ、ちょっと私の身体でそんなに・・・んぐ」 見かねた少女はそれを止めようとしたが、なんと近づいてきた少女に男はキスをしてしまった。 そして口移しでビールを少女の口に流し込んだのだ。 「んんん」 少女は抵抗しようとするが、ビールが口に次々に流れ込むと抵抗はやがて収まっていった。 そして自分から男の口から流れ込んでくるビールを口移しで飲んでいったのだ。 「んぐんぐ」 男の身体の喉がビールを次々身体の奥へと運んでいく。 「ぷはっ、はあ、はあ。何これビールってこんなに美味しいの。この身体なら飲んでも大丈夫よね。なら私も飲もうっと!」 少女は酔いのせいか、それまでの酒への拒否反応を忘れ自分から缶ビールを開けていた。 そして本物の中年の男性のようにゴクゴクとビールを飲んで顔を赤くしていった。 「へへ気に入ってくれて嬉しいぜ。じゃあ俺は煙草でも一服するか・・・けほけほ、何だ全然美味くねえ」 煙草を吸おうとした男は一口吸っただけで咳き込んでしまった。 「あはは、私の身体煙草なんか吸ったことないからね。近くで吸ってる人がいたら吐き気がしてたぐらいだし」 「それにしても私の身体こうやって見ると可愛いわね」 男の身体の少女は顔を赤くしながら男に近づくと、今度は自分からキスをしてしまった。 「んぷ」 突然の強引なキスに、男はあたふたしてしまう。 「もう暴れないでよ。ほら今度は私が飲ませてあげるから」 少女はチューハイを口に入れると再度男にキスをして口移しで飲ませる。 男もそれを口移しでぐびぐびと飲んでいった。 すると男は自分の胸に違和感があるのを感じた。 見ると少女が自分の胸を揉んでいたのだ。 「んん、んんん」 キスをしながら男は胸から沸き起こる快感を全身で感じた。 自分で触るのも気持ち良いが、他人から触られるのもまた違った快感を引き起こしていたのだ。 触られた胸からビリビリとした感覚が湧き上がるのと共に、どんどん自分の身体が熱くなっていくのが分かる。 少女にされっぱなしだった男はお返しだと言わんばかりに少女の股間をぎゅっと掴んだ。 「んん、ぷは」 股間を掴まれた瞬間、少女はたまらずキスを離してしまった。 「あうう、何それ。そこを握られると変な気分になっちゃって。あんん」 「ほら気持ちいいだろ。もっと気持ちよくしてやるよ」 お互いに服を脱いで二人は更なる快感を求め始めた。 男は股間をゴシゴシと前後に揺すり始めた。 「あああ、凄く気持ちいい。凄い、私が私の股間を握って気持ちよくしてるよ。あはは」 酔いの勢いのせいか少女は男のなすがままになっている。 そしてかつての自分にまたもやキスをしてその胸を揉み始めたのだ。 「ああ、私って本当可愛い。それを私がキスをして胸を揉んで、こうやって股間を触られてると思うと・・あうう」 もうそろそろ彼女も限界のはずだが、彼女は更に男に意外なお願いをしてきた。 「はあ、はあ。ねえ、お願いその口でしゃぶってよ」 「じゃあ、いくぞ。んぐ!」 俺は彼女の股間を口に入れてなめ始めた、クチュクチュと口の中であれが動くのが分かる。 シラフの俺なら正直自分のでも嫌だったろうが、その時俺は酒の力でやってしまった。 「あはは、気持ちいよー、ああ、私が私のあそこ舐めてる」 彼女はその快感と自分の身体が自分を犯しているという光景に興奮していた。 「ああ、凄い何か来る、あうう、だめ、もういきそう」 彼女は腰をかくかくと動かす。 「あああ!」 その時ぶしゅっとした液体の噴射が俺の口に広がった。 「こほこほ、全く盛大に出してくれたな、この変態」 俺は咳き込みながら近くのティッシュで口元を吹いた。 少女は初めての酔いと絶頂からか、すぐに深い眠りに入ってしまった。 俺も少ししか飲んでいはずだが少しくらくらしている。 俺は少し繁華街を通って帰ることにした。 するときらびやかな風俗店が見えてきた。 俺は酒の勢いと、もっとこの身体で楽しみたいという欲求から、ふらふらと店へと入っていった。 店内に入り貼ってある風俗嬢の写真を見回し、俺好みの女がいるのを見つけてすぐに俺はそいつを指名した。 どうせ入れ替わるならこんなガキじゃなくてこんな女だったらよかったと思えた。 「なあこの姉ちゃんいいかな?」 俺は受付の男に声を掛ける。 「かわいいお嬢ちゃんだね。でも子供はダメって決まりなんだ」 「なら、これでどうだ。子供がこんなに持ってるかな? それに大めに見てくれたらあんたにも1枚ぐらやるよ、ほら。あの姉ちゃんが今忙しいならもう少しはずんでやってもいいんだぞ」 俺は財布から札束を何枚か受付に見せつける。 元の俺がこんなに金を使えるわけがない。勿論それは少女が稼いだバイト代だった。 金を何枚か受付に余分に渡すと、俺は奥へと案内されていった。 部屋に案内された俺は落ち着く間もなくお目当ての風俗嬢にキスをした。 俺好みの女で、できれば男の身体で楽しみたかったが、女同士というのも悪い気はしなかった。 風俗嬢は慣れた動作で俺のキスを受け入れる。 お互いの舌を舐め合い深いキスをした。 はたから見ればレズカップルのキスにしか見えないだろう。 「んん、んん・・・」 やはり仕事柄か風俗嬢のキスは上手かった、さっき自分の身体でした時とは比べ物にならない。 俺はそのまま彼女の胸に手を伸ばすと彼女も俺の胸に手を伸ばしてきた。 風俗嬢の胸はとても大きく俺の手に収まりきらない、だからその柔らかな感触を手を広げて味わった。 そして俺の胸を揉んでいる手は俺の気持ちの良い所を的確に揉んできた。 「どう、気持ちいいかしら?」 「あ、あ、凄く気持ちいい、最高だ」 俺の手からムニュムニュとした風俗所の大きな胸の感触を味わう。 だが、風俗嬢の方が一枚上手のようだ。俺の胸はどんどん感じ始めていたのだ。 「ああ、いい。はあ、はあ、ぐ、ぐう、凄い・・・」 他人に胸を揉んで貰うのがこんなに気持ちいいなんて・・・酔った少女に揉んでもらったのとは全然違う感覚だ。 やがて俺たちは服を脱いでお互い裸になった。 今の俺は女の身体だったが、相手が女でも興奮することができた。 息は荒くなり、風俗嬢の整った大人の身体を求めてしまう。 そして俺は風俗嬢の胸にしゃぶりついたのだ。 「チューチュー」 胸を吸う音が聞こえる。 「ふふ、まだまだ子供ね、あん」 俺は風俗嬢の乳首を少し噛んでやった。効果はあったようだ。 そしてもう一度俺たちはキスをした。 そして今度はお互いの秘所へと指を入れていった。 「んんん、んんん」 股間から男の象徴とは違う快感が襲ってくる。 まるで電気が走り抜けるかのようなそれは、すぐに俺を虜にした。 「はあ、はあ、凄い、女の快感」 「ふふ、じゃあもっとサービスしてあげるね」 そう言って風俗嬢は俺の股間をぺろぺろとなめ始めた。 ぺちゃぺちゃと俺の股間からイヤらしい音が響いてくる。 「あ、あ、これが女のイクってことなのかすげえ。やばい、ああ」 俺は自分でも胸を揉んでその快感に没入していった。 段々と自分の中で快感が膨れ上がっていくのが分かる。そして自分の中でも何かが変わっていく気がした。 これは初めて少女がオナニーをした時の記憶だろうか。 トイレで顔を真っ赤にしながら指を動かしている。 まるで今の俺と同じように・・・ 「ああ駄目。いくいく」 そして絶頂が近づいてくると身体をガタガタと動き始めた。 もう全身で快感を味わっているようだった。 「あ、俺・・・私、いく、あ、あ、あああん!」 絶頂に達した俺は、また昔の思い出し始めていた。 あの男の子を見て好きになった日のことを・・・ その男の子に告白して付き合い始めた日のことを・・・ そして初めてのデートに行ってファーストキスをした時のことを・・・ 「はあ、はあ。ありがとう、凄く気持ちよかった」 俺は風俗嬢に感謝しながら家に帰ることにした。 「今日はもう泊っていけば、ふらふらよ」 「だ、大丈夫よ。それに明日は学校もあるし・・・」 その言葉を風俗嬢は何も聞かなかったふりをしていた。 ただ「そう、じゃあね。ばいばい」と行って俺を部屋の外まで見届けてくれた。 俺は風俗嬢の行った通りフラフラとした足取りで家に帰ることになった。 酔いのせいかさっきのレズセックスのせいか分からない。ずっと頭はボーっとなったままだ。 もう早く帰って俺は寝たかった。 何だか俺は頭がリセットされたような気分になった。まるで自分が自分でなくなっていくようなそんな気がした。 フラフラと家に帰ると、俺は倒れ込むように布団の中に入って眠ってしまった。 翌朝も俺は早く起きた。 彼女がおっさんと入れ替わってしまって、俺はとても心配していたのだ。 彼女の身体に何かあったのではないか、おっさんにエロい事をされていないか。 だから俺は時計が鳴る前に目を覚ましてしまった。 そして昨日と同じように彼女の身体になったおっさんを迎えに行った。 俺は彼女の家のインターフォンを鳴らしておっさんが出てくるのを待った。 しかし、インターフォンを鳴らしても、なかなかおっさんが出てくる気配がない。 俺は貧乏ゆすりをしながら奴が出てくるのを待った。 しばらくするとやっとドアが開いた。 「遅いぞ、何でそんなに・・・」 俺は一瞬声を詰まらせた、なぜなら今日のおっさんは寝ぐせはなく身なり整っていてどう見ても入れ替わる前の彼女だったのだ。 見た時に一瞬本物の彼女が出てきたのではないかとさえ思えた。 「ごめん、支度に時間が掛かっちゃって。どうしたの、私何か変?」 「あんた、本当におっさんだよな? どうしてそんな・・・」 「うん、悪いけどまだ元に戻ってないよ。私も分からないけど目が覚めたらこうなってたの」 俺は彼女いや彼の変わりように目を丸くしているとおっさんの方から俺に声を掛けてきた。 「ほら、彼女も待ってるんだから早く行こう」 おっさんに急かされるまま俺たちは彼女が待つアパートへ向かった。 昨日と同じようにアパートのドアをノックする。しかし中からは何の反応もない。 俺は彼女に何かあったのではないかと心配になって、更に激しくドアを叩いた。 「うるせえな、開いてるから勝手に入れよ」 中からおっさんになった彼女の声が聞こえてくる。 俺たちは恐る恐る中に入る。 中は電気がついておらず暗くなっていた。電気を付けると部屋は散らかっているのが分かった。 ビールの空き缶が散らばっている。 彼女は床の上で布団もかけずに眠っていた。そして俺たちが中に入るとやっとその身体を起こした。 「なんだお前らか、今日もご苦労だな」 まるで俺たちの相手が面倒そうに話す。 そしておっさんの身なりを見ると、再び身体を横にしてしまった。 「んあ、何だもう支度できてるじゃないか。ならもういいだろ。使いたいなら勝手に部屋を使えよ。俺は二度寝してるから」 仕方なく俺たちは部屋で学校までの時間を潰すことにした。 部屋に座っているとおっさんは妙に顔を赤くしてそわそわしていることに気付いた。 何かから目線を逸らそうとキョロキョロしているのが分かる。 俺はそこに視線をやると部屋に置かれていたエロ雑誌だと分かった。 表紙に裸の女性がイヤらしいポーズを取って男を誘惑している写真が載っていた。 「あの、私こういうの見ると何だか恥ずかしくて・・・」 おっさんは恥ずかしそうに俺にそう告げた。 学校に行くと昨日はボーっとしていたおっさんは真面目に授業を受けていた。 先生の話を聞きノートへ色々とメモを取っている姿は以前の彼女そのものだった。 するとおっさんは俺に気付くとニコッと笑いかけてきた。 俺はそんなおっさんの笑顔を見て顔を赤くする。 (何だこれは、あれじゃあ本物の彼女みたいじゃないか) 俺は内心混乱していた。今日のおっさんはまるで入れ替わる前の彼女そのものにしか見えない。逆に彼女はおっさんみたいになってた。 もしかして戻っているのではとさえ思えたが、当人が否定するのだから元っているわけではないのは間違いはないだろう。 俺は詳しく聞くためにおっさんを放課後屋上に呼んで話を聞いた。 「なあ、一体どういう事だよ。今日のおっさん見てたら入れ替わる前の彼女みたいにしか見えないけど」 俺はおっさんに理由を聞いた、するとおっさんは彼女の顔で困ったような表情で俺に語った。 「うん、私も前の彼女みたいだなっていうか彼女そのものになったみたいな感じなの」 「ん、どういう事だよ。言ってることがよく分からないだけど」 「何だか昨日までは自分の事をリストラされたばかりのおじさんという認識だったの。でも今日目が覚めたら、私は女子高生で貴方の彼女だと自然に思うようになったの。でも自分があのおじさんだって自覚もあるの。うまく説明できなくてごめんね」 おっさんも何だか理由がよく分かっていないように見えた。 恐らくあのおっさんが故意に彼女に成りすまそうとしているわけではないのは確かだ。 「あの、それで貴方に言いたい事があるの」 急におっさんはもじもじしながら俺に何かを言おうとした。 まるで本当に恥ずかしがっている女の子のようだ。 「ん、何だ? 勿体付けずに言えよ」 俺は言いたいことがあるならさっさと言えといわんばかりに急かした。 「私、実はあの子にこの身体を返そうと思うの」 「何だって、そんな事ができるのか」 おっさんの意外な言葉に驚いた。 そもそもそんな事ができるのか? 本当に返せるのか? 「うん、だから最後に私のお願いをひとつ聞いてほしいの」 「お願い? なんだ?」 俺はもしかしたら『やばいお願い』をされるのではないかと身構えそれに備えた。 「あ、あの、わ、私と一度でいいからデートに行ってほしいの」 「え・・・」 そして俺たちは次の日曜日にデートをすることになった。 入れ替わる前と同じように、俺は彼女とのデート向けの服装に着替えて待ち合わせ場所の駅へ向かった。 俺はあの時の話を思い出していた。身体を返すという話ももしかしたらおっさんのデタラメかもしれなかったが、何となく俺はあの話を信じてみたくなった。 俺は時間通りに待ち合わせの駅へ到着した。 するとおっさんは既に駅で待っていたようだ。 辺りをきょろきょろと見回し恐らく俺が来るのを待っているのだろう。 「おい、こっちだ」 俺はそんなおっさんに手を振って俺が来たことをアピールする。 「ごめん、遅れたか」 「ううん、私も今来たとこ」 その言葉は嘘だろう。前にも彼女とデートをした日に待ち合わせの時間より大幅に早く来ていたことがあった。 「ねえ、その服装を見るの久しぶりかも。それって私と前にデートした時に買ったんだよね」 俺が着ている服はおっさんが彼女と入れ替わる前に彼女が買ってくれた服だった。 まさかおっさんの為にこうやって着て来ることになるとは思ってもみなかったが。 「じゃあ、行こうか」 彼女は俺の手を繋ぎ駅の中へと向かった。 久しぶりの彼女の手の温もりを感じたような気がした。 入れ替わってからもしかしたらもうこんな事はできないかもしれないと思っていたから、俺は自然にその手を強く握った。 俺はもうその手を放したくないと思ったのかもしれない。 デート場所は遊園地だ。しかもその場所は俺と彼女が初デートをした場所でもあった。 俺にとっては思い出の場所だが、おっさんにとっては初デートの場所になるわけだ。 しかし、おっさんはあの時のデートを全部知っているかのようにあの時と同じように乗り物にのったりアトラクションを見たりした。 「あはは、これ懐かしいね。ほらアイスを私に買ってくれたのに私がアイスをこぼしちゃって」 アイスクリーム屋を見て彼女は懐かしそうに俺に思い出させてくる。 その笑顔は確かに彼女のものだった。 楽しい時間はあっという間に過ぎ去った。不思議だ、最初はおっさんの頼みに仕方なく付き合っているだけのはずだった。 それが今では俺も楽しいと思えてしまった。 最後に俺たちはあの日と同じように観覧車へと乗ることにした。 観覧車はゆっくりと上がっていき夕日の赤に染まった綺麗な風景を俺たちに見せてくれた。 俺は何となく言った。 「今日は楽しかったな、あの時みたいに」 すると俺の唇は急に暖かくなるのを感じた。 俺はキスをされていたのだ。 柔らかい彼女の唇と体臭が漂ってくる。 そして彼女の手が俺の背中に回ってきた。 俺は今彼女に抱かれている。例え中身が違っても身体は彼女のものだ。 だから俺は彼女のキスを受け入れた。 「前にもここでキスしたんだっけ、でも今の私にとってはファーストキスなんだよね」 確かに以前彼女とキスをした。 でもその時よりも今回のキスの方が良かった気がした。 「ごめんね、こんなことになって・・・」 おっさんは申し訳なさそうな表情で俺に謝った。 「だってあれは不可抗力だったんだろ、じゃあ誰の責任でもないだろ」 ぶつかったから入れ替わるなんて誰も想像できるもんじゃない、あれはただの事故だ。 確かにおっさんがイチャモンを付けたのもあるが、それに関しては俺はそれ以上責めるつもりもなかった。 「違うのよ、前の私の記憶が流れてきて分かったの。もうすぐ私たち受験でしょ、前の私は凄く疲れてたの。だから以前行った神社で別の誰かになりたいって願ったの。それがあの入れ替わった日の少し前。それで頭をぶつけた時に入れ替わったのみたいなの」 それを聞いて俺は何とも言えない気持ちになった。おっさんの言ってる事も嘘には思えなかった。 確かに以前の彼女は時折疲れている感じもしていたのだが、まさかそんな事を神社で願ってたなんて・・・ 「教えてくれてありがとう、おかげで彼女の事がまた一つ理解できたよ」 俺は笑顔でおっさんにそう言った。 「本当にその身体を返すのか?」 疑うわけではないが最後に確かめたかった。 するとおっさんは彼女の顔で寂しそうな表情になりながら言った。 「うん、だってこの身体も人生も私のじゃないもの、本当のあなたの彼女に返さないと・・・ね」 その顔はとても悲しそうな表情だった。 「なあ、俺さ今日本当楽しかった。来てよかったよ」 「え?」 彼女の言葉を待たずに今度は俺からキスをした。 手を回して唇を引き寄せて最初のデートの時のようなキスをした。 長い、とても長いキスのような気がした。だが終わるとそれがとても短いような気もした。 キスを終えると彼女は俺に笑った。 「満たされるってこんな感じなんだ、凄く気持ちいいね・・・」 見るととその目からは涙が溢れていた。 「もうお別れだね、この身体とも君とも・・・」 観覧車はゆっくりと地上へと戻ってきた、そして出口が開いた。 「ありがとう、私を彼女として愛してくれて。じゃあ、この子に身体を返してくるね。じゃあね、ばいばい」 そして彼女、もといおっさんは立ち去っていった。 「元気でな・・・」 俺は小さく見えなくなっていく彼女に向かって小さな声でそう呟いた。 エピローグ 大学の合格発表の日俺は人混みをわけて番号を確認した。 「やったー、俺たち二人とも合格してるぞ」 俺は彼女の元に駆け戻り二人の合格を報告した。 「やったね、これで私たち同じ大学に行けるよ」 彼女も嬉しそうな表情で喜んでいる。 元々彼女の成績は優秀だったから不安材料があるとすれば俺の方だったんだ。 だけど受験の間、彼女は俺の勉強まで見てくれたおかげで俺も地元の難関大学に受かることができた。 俺たちが家に帰ろうとしていると、誰かと肩がぶつかった。 「すみません」 ぶつかった男性は俺に謝る。見るとその男性には見覚えがあった。 あの時彼女と入れ替わったおっさんだったのだ。 配達の作業着を着て荷物をいくつか持っていた。 「き、君は、・・・久しぶりだな。今日はこの大学の合格発表の日だっけ、合格したのか?」 恐る恐るおっさんは俺に聞いてくる。 「ああ、俺も彼女も、二人ともここに受かったよ」 それを聞いたおっさんは、俺と彼女にニコッと笑ってこう言った。 「そうか良かったな、じゃあ俺はまだ仕事があるから。じゃあな、ばいばい」 そう言っておっさんは荷物を抱えて走って行ってしまった。 「おっさん、仕事が見つかったのか・・・」 俺は彼女の顔を見るとニコッと笑い手を繋いだ、そしておっさんが向かった方向とは逆の道を歩いて帰っていった。 俺は誰にも聞こえないぐらいの声で呟いた。 「じゃあな、おっさん」 |