最高の彼氏 作:verdsmith7 「なあ、俺に構うのもう止めてくれないか」 俺は静かな口調でそう言った。 「だ、だって、私あなたのことが・・・」 彼女の言葉を遮るように俺は言った。 「それは前に聞いたよ。でも俺好きな子が他にいるんだ。だからお前とは付き合えない」 俺の名前は武。そして俺の前にいる女の子は美緒といって、俺が通っている高校のクラスメートだ。 元々彼女は不登校になりがちで、たまに来てもいつも一人だった。 だから俺は親切心で彼女に声を掛けたり困っていることがあれば手伝ってあげたりした。 しかし、美緒はそれを俺からの彼女への好意だと誤解してしまった。 その後俺は彼女に付きまとわれるようになってしまい、内心うざいと思っていた。 俺の事が好きだと言うのは分かっていたが、俺にはすでに付き合っている凛という女の子がいたんだ。 だから今回きっぱり彼女と縁を切ろうとした。 本当は美緒が俺に告白するために人気のない校舎裏に呼ばれたのだが、俺はその場で彼女の告白を断ったのだ。 断られた美緒はポロリと涙を浮かべた。 それを見た俺は内心彼女を傷つけてしまったと罪悪感に駆られたが、仕方のないことだと割り切った。 そうしないといつまでも彼女は俺に付きまとってくる。 「ひ、酷い、私武君のおかげで学校に来れるようになったのに。何で私を捨てちゃうの?」 彼女の言葉からはいつもの彼女からは想像もつかない怒りを感じた。 そんな彼女に気後れしないよう俺も言い返した。 「別に最初からお前の事が好きだったわけじゃないんだ。それはお前が勝手に勘違いしていたんだ。だから俺に付きまとうのはもう止めてくれ!」 その言葉を聞いた途端彼女の涙は更に増えて、頬をつたって流れ落ちていった。 「そ、そうだったんだ、ご、ごめんなさい」 彼女は涙を流し身体をふらつかせながら校舎へと戻っていった。 俺も内心傷ついたが、これでやっと彼女から解放されると思っていた。 翌日学校に彼女の姿は無かった。 「あれ美緒さん今日来ないんだ? 最近ずっと来てたのにね。」 俺の隣から話しかけてくる女性が俺の彼女、凛だ。 「また具合でも悪くなったんじゃないか?」 俺はそっけなくそう答えた。 しかし、内心俺は確信していた、おそらく昨日のあれが原因だろうと。 「ふーん、最近ほぼ毎日学校に来て元気そうだったのにね」 何気なく彼女はそう言うが、俺にはそれが自分のせいで彼女が来なくなったのではないかと非難されているように感じた。 「別にいいだろ、あいつのことなんか!」 俺はつい彼女に強く当たってしまった。 「何なのよもう」 俺に何があったか知らない彼女に罪はないのだが、俺はこの時腹が立っていた。 それから1週間美緒は学校に来なかった、その分俺は美緒に振り回されずに済むから楽だったが、心の奥で少しもやもやしていた。 そんなある日、彼女の家にプリントを届けてほしいと先生に頼まれた。 俺の家の方向は偶然にも美緒とほとんど同じだ。それまでは別のクラスメートが届けていたのだが、その日に限って学校を休んでいた。 俺はせめてもの罪ほろぼしに美緒へプリントを届けることにした。 もしかしたら、美緒に気の利いた言葉を掛けてやりたかったのかもしれない。 俺は美緒の家に付いてインターホンを鳴らした。 中から女性の声が聞こえてきた。美緒の母親らしい。 「あら? 今日は男の子が持って来てくれたの? ありがとうね」 インターホン越しに母親と会話をしていると、聞き慣れた声がしてきた。 「武君来てくれたの」 その声はとても明るかった。 まるであんな事が無かったかのように。 「プリントを届けに来ただけだ」 俺がそういっている間に玄関の扉が開いた。 出てきたのは勿論美緒だ。後ろには美緒の母親もいた。 美緒は地味な私服で俺を出迎えた。 「き、来てくれてありがとう。さあ、上がって」 美緒は嬉しそうに俺を家に入れようとする。 「言っただろ、今日はプリントを届けに来ただけだ。ほら、これで済んだから俺は帰るな」 多少冷たい所もあったかもしれないが、俺はもう美緒となるべく関わりたくなかった。 それを聞いた美緒は、一瞬顔を下げてしまった。 「そ、そう。でも、ありがとう。お礼にこれ、あげるね」 美緒は俺に何かを差し出してきた。 それは緑色をした結晶のように見えた。 「そ、それ私の宝物なんだ。これは今までのお詫びも兼ねてるの。だから部屋に置いてくれればいいわ」 俺は鉱石に興味は無かったが、美緒が素直に今までの事を謝ってくれた事に少しホッとした。 「分かった。じゃあお言葉に甘えてもらうよ。明日は学校に来いよ」 そう言って俺は美緒の家を出た。 「うん。わかった。必ず行くよ」 いつになく美緒は明るく見えた。 俺は美緒に別れを告げて家に帰った。 ふと後ろを振り返ると、俺を見送る美緒が笑っているように見えた。凄く嫌らしい顔で。 俺は家に帰ると、美緒の贈り物を机の上に置いた。 別にどうでも良いが美緒の宝物らしいし、明日から学校に来ると言ってたから良い意味で机の上に置いておけばいいと思った。 「それにしても疲れたな。今日はもう寝るか」 美緒の事で方が付いたと思った俺は今までの疲れがドッと出てきた気分になっていた。 その日は疲れのせいか眠るまで一瞬だった。だから美緒の贈り物が机の上で怪しく輝き始めても、気にもできなかった。 その光は武を包み込むように更に輝き始めた。 すると武の身体からフワッとした煙のような物が飛び出してきたのだ。 光はそれを吸い取ると導かれるように外へと流れていった。 やがて一軒の家の2階へと辿り付いた。 そこにも同じ色をした結晶が置かれている。 そして同じように部屋の住人に光を包み込んでいたのだ。 やがて武の部屋から来た煙はその布団の方へと流れていった、それと同時にその住人の煙は外へと流れていってしまった。 するとそれまで輝いていた結晶の光も次第に弱まっていく。 やがて光が完全に消え、煙も収まっていくと「パキッ」とした音と共にその結晶はこなごなに砕けてしまった。 「うーん」 煙を取り込んだ住人は一瞬うなされていたが、やがて静かな寝息へと変わっていった。 何だか昨日は変な夢を見たような気がする。 チュンチュンと鳴く鳥の鳴き声で俺は目を覚ました。 「ふあー! 何だか昨日はよく眠れなかった気がする」 俺は布団から起き上がろうとすると違和感を感じた。 そこは俺がいつも寝ている部屋ではなかったのだ。 「ここどこだ?」 俺は辺りを見回してみた。 家にこんな部屋はなかったはずだ。 まず布団がアニメのキャラになっていて、壁もアニメのポスターだらけになっている。 俺もポスターは飾っているが、どちらかというとスポーツ選手や映画が主で、こんなオタク趣味ではない。 他にはぬいぐるみやピンクの家具とか女の子が持ってそうなものばかり置かれていた。 俺は一人っ子だから姉や妹はいない。だとすれば誰のだ? すると誰かが部屋に向かって来る足音が聞こえてきた。 俺は一瞬どうすればいいか分からなかったが、とりあえず布団に隠れることにした。 男が知らない女の子の部屋で寝てたと知られたら一大事だ。 俺はその足音がこっちに来ない事を祈りながら布団を被った。 やがて足音は部屋の前で止まった。 (やばい、誰か来た!) トントンとノックの音と共に誰かが入ってくる。 俺は布団を被っているから誰かは分からない。 その人物はやがて俺の布団の前で立ち止まった。 「もう、今日も休む気? そろそろ学校に行かないとダメでしょ美緒!」 その人物はそう言って、俺の布団を剥ぎ取ってしまった。 俺を守っていた布団はなくなり、慌てた俺は何かを言おうと必死になった。 「わ!あ、あの、これは・・・」 俺はもう駄目だと思いあれこれ言い訳を考えていたが、その間に俺の前にいる人物は話を続けた。 「朝ごはんも用意してるから。取り敢えず食べちゃって!」 俺の顔を見ながらそう言うと、その人は再び部屋から出て行ってしまった。 俺は訳が分からなかった。 何で知らない部屋で寝てて、知らない人が俺に当たり前のように声を掛けるんだ。 俺は少し冷静になろうと努めた。 あの人はどこかで見た気がした、そう最近だ、そして思い出した、昨日美緒にプリントを届けた時にいた美緒の母親だ。 「・・・という事はここは美緒の家?」 でも何で俺美緒の家で寝てたんだ? 泊まった覚えもないし・・・ そうこう考えているうちに、次の疑問が湧いてきた。 なんで美緒の母親は俺に美緒と言ったんだ? それを考えた瞬間、俺は嫌な予感がした。 今俺が着ているパジャマはピンクの兎が描かれた少女趣味なものだ。 当然俺にこんなのを着る趣味はない。 そして俺は妙に胸が重い事にさっきから気になっていた。 俺は自分の胸部にあるものを触ってみた。 はたから見れば自分の胸を触っているなんてとんだ変態だろう。ましてや男なら・・・ 「はは、ある・・・」 俺は自分に胸が付いている事実を認識した。 なら、こっちはどうだ・・・ 俺は男としての最後の証拠を探し始めた。 股間に手を入れてみる。 男ならあるはずだ、ましてや朝なら立派になっているあれが・・・ 「ない・・・」 10年以上一緒に過ごしてきた大事な部分が無くなっているというのは、長年連れ添った妻がいなくなったようなものだ(まだ結婚すらしとことないが) 「何でないんだ? って事は今の俺は女?」 そして横に大きな鏡があるのに気がついた。 ここまで来れば最後まで確かめてやる、そう意気込んで俺は鏡を覗き込んだ。 いつもの短髪で、スポーツで鍛えた筋肉はない。喉仏も消えていた。 そこには、長髪だが傷んだ髪の毛、目元には大きなクマ、ふっくらとした唇に少し大きな胸の少女がいた。 「み、美緒!」 俺は鏡に向かって叫んだ。 鏡の中の美緒も同じ動きを繰り返した。 「ど、どうなってるんだ? 何でお、俺が美緒に?」 そうこうしているうちにまたもや美緒を呼ぶ声が聞こえた。 「もう早く食べちゃってよ!」 美緒の母親が呼ぶ声だ。 俺は不審に思われないように部屋を出る決意を固めた。 「やっと起きてきた。今日は学校にちゃんと行くの?」 美緒の母親は不機嫌そうに俺に聞いてきた。 「う、うん」 俺は取り敢えず美緒のフリをした、おそらく美緒じゃないと言っても信じてもらえないだろう。 俺はテーブルの食事を食べた。 他人の家の食事は食べなれた味と違うから、食べ辛いのかと思っていたが、意外とすんなり喉を通ってしまった。 「お、おいしかったです。ご、ごちそうさま」 「あら珍しいちゃんと食べて。ふふ、お粗末様でした」 食事をちゃんと食べただけで褒めらるなんてどんな家庭だと思いつつ学校へ行く準備を始めた。 最初は学校へ行く準備に苦労するのではないかと思っていた。 何せ他人の家だ何がどこにあるか分からないし、今の俺は女だ。 どうやって着替えをすればいいんだ。 そう思っていたが、準備は意外とすんなりできてしまった。 教科書や鞄がどこにあるのか導かれるように取り出せたし、制服もいつも着ているみたいにすんなり着替えることができた。 「こ、これって、美緒の記憶のせい?」 学校へ行くまでにまだ少し時間があった。 俺はもう一度鏡を見てみた。 そこには制服姿の美緒が映っていた。 美緒は決してブスでは無かったが、性格が暗かったので平均以下に見られることが多かった。 しかしこうやって見ると、隈が大きいとは言えパッチリした目、ふっくらして柔らかそうな唇、制服のせいでよく分からなかったが、大きな胸のある可愛い女の子に見えた。 俺は何となく美緒の身体をもう一度触ってみた。 やっぱり男とは違って肌はスベスベだ。それにこの胸・・・結構大きいな。 俺は男の頃に無かった象徴的な部分が気になってしょうがなかった。 女性の胸だ。 美緒の手で俺はそれを触ってみた。 ふわふわとした感触が手に伝わる。 「き、気持ちいいな」 そして触っているうちにもっと触りたいと思ってしまった。 手の中で胸を更に動かしていく、すると段々乳首がピンと立ってきたのが分かった。 「こ、これが胸で感じるってやつか?」 男では味わえない感覚に、俺は更に女体への興味を引いてしまう。 「あそこはどうなってるんだろう?」 俺はスカートを下ろして鏡の前に立った。 次に下着をゆっくり下す。 他人の身体という罪悪感と背徳感、そして好奇心という複雑な感情が入り混じっていた。 すると美緒のあそこが露になった。 「こ、これが女子の裸か・・・」 女性のあそこを初めてみた俺は好奇心を抑えられなくなっていた。 女性の裸を初めて見た俺は我慢ができなくなっていった。 自然と指が美緒の股へと運ばれていく。 まだ薄い陰毛を掻き分け、中へ中へと手を入れていく。 「ヒャン」 女みたいな情けない声を出してしまったが、手を動かし続けた。 その中が暖かいのはもちろんだが、動かす指につられてあそこの快感が広がっていくのだ。 「す、すごい」 男の快感とは異なる初めての快感に、俺はすっかり酔ってしまった。 もう自分でこの指を止めることすらできない。だから最後までイってしまう事に何の躊躇もなかった。 「あーん!」 美緒のアソコから液体が部屋中に飛び散った。 その飛び散り様が、俺がどれだけイってしまったかが物語っていた。 「はあ、はあ、やっちゃった」 俺は終わってから美緒の身体を弄んだことに罪悪感を覚えた。 「はあー、もう学校に行かないと」 罪悪感を少しでも忘れたいのと、早く自分の身体を取り戻すために、俺は学校へ行く決意をした。 俺は部屋に散った汚れをふき取ると、学校に出発した。 「今日は学校へちゃんと行くのね、行ってらっしゃい」 「い、行ってくるね、お母さん」 美緒の母親に見送られ、俺は家を出た。 すると不思議な事に、なぜか妙に自分の足取りが重いことに気づいた。 いつもなら普通に歩いている道が今はとても重く感じる。 (お、俺、学校に行くのを嫌がっているのか?) 教室へ着くと周囲がざわつき始めた。 「美緒ちゃんが久しぶりに学校に来た」と皆口を揃えて俺の事を言っている。 本当は毎日学校へ来ていたのだが、この姿では誰も信じてくれないだろう。 皆が自分の名前を言う度に心臓の音が大きくなるような気がした。 嫌だ、ここにいたくない そんな考えが俺をの思考を支配する。 それを振り払うかのように鞄を机に置くと、俺は急いでアイツを探し始めた。美緒だ。 俺の姿をした美緒は凛と話しをしていた。 「ご、ごめん」 俺は普通に美緒を呼ぼうとしたが、なぜか出てきた言葉は謝罪の言葉だった。 「ん? あれ美緒学校に来たんだ。どうしたの」 美緒は俺に気づかず、凛のほうが俺に気づいて話し掛けてきた。 (凛! こいつは偽物だ、俺が武だ!) と本当は凄く言いたかった。でもこの状況を誰が信じてくれる? 例え俺の彼女であったとしても・・・ 「あの武君と・・・」 「ああ武ね。武! 美緒が呼んでるわよ!」 凛が俺の身体を呼んでくれた。本当は大きな声で自分で呼びたかったのだが、なぜか教室に入ってから酷く緊張して何をするにもちぐはぐになっていた。 「あ、あの校舎裏に、すぐ、来て」 そう言って俺は走って教室から出て行ってしまった。 なぜか分からないが俺は凄く混乱していた。何だか俺が俺じゃないみたいだ・・・ 「何だったのかしら?」 「ふふ、まあ呼ばれたから仕方ない、行ってくるよ」 しばらく校舎裏で待っていると、俺の姿をした美緒がやってきた。 「き、来てくれたんだ・・・」 俺は自分の身体がちゃんと約束の場所に来てくれた事にホッとした。 「ああ! 来たぜ美緒ちゃん」 「あ、あの美緒はそっちよね?」 俺は恐る恐る目の前の俺に質問する。 「ップ! あはは、なるほど私って他人の目から見るとこんな感じなんだ」 急に目の前の俺は笑い始めた。 「や、やっぱり、そっちが美緒なんだ、よね?」 俺は間違っていないか不安になりつつ聞いた。 「そうよ。それにしてもどうしたの、柄にもなくこんな所に呼び出したりして。もしかして告白かな?」 目の前の元俺は、今の俺をちゃかすように話した。 「ち、違う、そ、そんなんじゃない」 俺は何とか言葉を出そうと必死になった。 いつもはすらすら出てくる言葉が、今では枯れた雑巾から水を絞るようにしか出てこなかった。 「か、身体、か、返して!」 全身に力を込めて俺は目の前の俺に言った。 「五月蠅い!」 突然の怒声に、俺は思わずビクッと身体をこわばらせる。 その言葉を聞いた瞬間、俺は視界がグラつき一瞬足元がふらついて倒れそうになった。 「え?!」 一瞬頭が真っ白になった俺は何か言おうとするが、適切な言葉を頭で上手く作れなかった。 ただ、今起こった出来事に慌てふためいて、あやふやな言葉しか出せなかった。 「あれれ、どうしちゃったの? そんなにビクついて。もしかして今の怖かった?」 俺はその言葉を聞いて、初めて身体がぶるぶると震えている事に気が付いた。 「ふふ、ごめんなさいね。まだこの身体に慣れてないからつい今までの自分ができなかったことをしちゃうのよ」 「そ、それって、もしかして・・・」 俺はなおも身体を震わせながら、何とか質問してみる。 「そうよ、単に身体を入れ替えたんじゃないわ。思考のパターンや知識も入れ替わったのよ」 「う、嘘。そ、そんなこと」 「現に今の貴方はこの身体の時に比べて随分大人しいじゃない。私のほうは今なら何でもできる気がするんだけどね」 美緒の話が本当なら、入れ替わってから俺の調子が変なのも分かる。 今、俺は美緒の身体だ。だから考え方や記憶もこの身体の影響を受けているんだ。 何をしようとしても躊躇して、いざやってみても混乱するだけ。それが今の俺なんだ。 「も、元に戻・・・」 「それはやだね!」 俺が言い終わらないうちに、美緒はまたもや大きな声で俺の言葉を遮った。 俺はまた全身の震えが大きくなるのを感じた。 嫌だ、怖い、今の俺にはそんな恐怖や不安しか頭に浮かび上がらなかった。 「ご、ごめん」 自然と出た言葉がそれだった。 俺は何も悪くないはずだ、なのに何で俺はこいつに謝っているんだ・・・いつもならそう思えるはずが、今は(ごめん、許して)としか考えられなかった。 「私は一生懸命に貴方に告白した。でも貴方は私の思いを踏みにじったのよ! あの後だいぶ絶望したわ。初めて好きになった人から裏切られて・・・。このまま消えてしまおうかとも思った。でも考えが変わったの。貴方が私を愛してくれないなら、いっそ貴方になってしまおうってね」 美緒はこの身体の時には考えられないぐらい俺にはっきりと伝えてきた。 内容は自分勝手な思い込みも良い所だが、今の俺にはそれが酷くこたえた。 「そ、そんな事知らなったから。その、ごめん、なさい」 「はは、そんなに素直に謝られたら、許さないわけにはいかないわね」 俺が素直に謝った事に美緒は凄く嬉しそうだ。 美緒は俺の後ろに回り込むと、急に抱きついてきた。 「ヒャア!」 美緒が俺に付いている胸を後ろから鷲掴みにした。 「ふふ、男になって自分の胸を揉むのも悪くないわね」 俺の身体の美緒は、その大きな手の平で俺の胸をおおっている。 「な、何を・・・?」 「貴方の事、許すって言ったでしょ。こうしてね」 そういうと、美緒は俺の両胸を激しく揉み始めた。 力を込めて離れようとしても美緒の身体と男の身体では力の差は歴然だった。 「や、いや!」 俺は強引に美緒の愛撫を受けていたが、やがて男の時とは違う快感が湧き上がってきた。胸に性感帯があるかのように、そこから快感が走ってきたのだ。 今朝も自分で胸を触ってみたが、男性に触られる胸の感覚はそれとはまた違ったものだった。 「ああ、や、止めて」 俺は必死に美緒に懇願した。他人の身体に入れられて元自分の身体にやられるなんて嫌だ。なのに・・・俺の胸はそんな事を知ってか知らずはピンとまた大きくなっている。 「そんな気持ち良さそうな表情で言っても説得力ないわよ。まあ元々私の身体だから気持ちの良い所は全部お見通しなんだけどね。それにあそこも濡れ濡れじゃない」 「ああ、あんあん」 俺はいつの間にか喘ぎ声を自然に出していた。止めようと思っても快感が俺の口から嫌らしい言葉を次々と吐かしてしまう。 「私、その身体の時いつも貴方の事を想像してオナニーしてたんだ。だからこうしてると凄く興奮するのよ。それに私も貴方の喘ぎ声を聞いてたらますます興奮してきちゃった」 胸からの快感で分からなかったが、俺のお尻の辺りでどんどん大きくなっている物があると気づいた。 「そ、それって!」 あの位置で男が大きくするものと言えば一つしかない。 「ああ、これが男の勃起なのね。どんどん力が湧いてくるみたい。熱くて大きくて本当に勇ましい」 今、俺の後ろにあるそれが、更にビンビンと膨張して熱を帯びてくるのが分かる。 「はあはあ、できれば貴方にこの役をやってほしかったけれど、自分でやるのも良いわね」 男の興奮を得た美緒は既に野獣だった。 男だった俺でも男の興奮を理性で鎮めるのに苦労していたが、男になりたての美緒にあれをコントロールするのは無理だろう。 「ま、まさか、それを!」 「決まってるじゃない。でもその前に」 そう言うと、美緒は俺の胸から手を離して更にその下へと位置を移した。そこにあるのは女のあそこだ。 大きな手がスカートの中を移動して俺の股へと動いていくのが分かる。 男に触られるのなんか気持ち悪いと思うはずだが、美緒の身体だからかはたまた記憶がそうさせるのか、俺の身体が触られる度に更に興奮していくのが分かった。 「ここはもっと気持ちいいわよ」 美緒はそう言って俺のクリトリスに指先を伸ばす。 「あ! 何これ!」 「はあ、はあ、ここを、こうやって弄るとね」 自分でやった時とは違う手の動きで俺のあそこを弄る美緒は、的確に俺の気持ちの良い場所を攻めてきた。 その瞬間、俺の全身に稲妻が走り衝撃を受けた。 「あー!」 股間から何か噴き出している。どうやらイってしまったようだ。 オナニーとは全然違う、しかも相手は自分の気持ちの良い所を分かってやってくる。これが快感じゃないはずがなかった。 「はあ、はあ、気持ちよすぎて・・・」 それ以上何も考えられなかった。 「はあーはあー、私も、もう我慢できない」 俺が女の快感の余韻に浸っていると、美緒が激しく興奮しているのが分かった。 どうやらさっきの私の様子を見て理性の限界に達したのだろう。 美緒は強引に俺を仰向けにして身体にのしかかってきた。 そして俺に強引にキスをした。 俺は黙って美緒のされるがままにされた。 さっきイッた時に体力も精神力も消耗してしまったのだ。 もうどうにでもしてくれ・・・俺はその時全てを諦めていた。 「はあ、はあ、あれ抵抗も諦めちゃった? ちょっと肩透かしだけどいいか」 美緒は俺が何も抵抗をしようとしないことが分かると少し残念そうにしたが、エッチの手を緩めようとはしなかった。 ブレザーを無理やり脱がされ、さらに下着も全部脱がされると俺は裸の状態になった。 美緒が裸の俺をジロジロ見て更に興奮しているのがわかる。 「ああ、元々自分の身体だけど可愛いわね。それを自分の手でやれるなんて。さあ、行くわよ」 太くて大きい物が俺のヴァギナにあてがわれ、グイっと侵入してくるのが分かった。 「あうう」 俺は喘ぎ声を出す力しか残っていなかった。 そしてブチっとした衝撃を受けることになる。 「痛い! これって?!」 「あら、膜が破れちゃったのね」 美緒は些細な事だと感じているのか、俺には構わずセックスを続けた。 「い、痛いよ」 「はあはあ、ごめんね。でも動きが止められないの。それに私、凄く気持ちよくって」 痛みに俺が悶えても、なお美緒は腰を振り続けた。 「ああ、もうすぐ終わりが来るわ。分かるの」 美緒はそろそろ絶頂が来るのだろう。腰の動きがどんどん早く激しくなっていく。 その腰の動きと連動して俺の身体も揺さぶられた。 「う、うう」 しかし俺は快感でなく痛みで泣くしかなかった、快感よりも激痛が走っていたのだ。 「さあ、これで終わりだ!」 美緒はそういうとガッと私の身体を掴んだ。 「うう、いやー!」 その瞬間、私の中で暖かい物が身体中に広がっていくのを感じた。 「はあはあ、本当男って最高だな。何でもできて」 美緒は男の余韻にひたっている。 私はその間もずっと泣いていた。 「美緒、またやろうな!」 そう言って彼は私に向かってニッと笑った。 私は涙を腕で拭きとると、彼の方を見て小さい声こう言った。 「ま、また・・・やりたい」 私は顔を赤く染めながらそう言った。 エピローグ 今日も武君が迎えてに来ている。 「あら武君、いつもありがとう」 母親が出迎えているのが分かる。 あれから毎朝武君は私を迎えに来てくれるようになった。 家族はおかげで娘が学校に行くようになったと喜んでいた。 「待っててね。すぐ美緒を呼んで来るから」 母親が俺を呼びに来るのが2階からでも分かった。 「美緒、武君が迎えに来てくれたわよ」 「う、うん。分かった、すぐ行く」 私はすぐにオナニーで汚した部屋を掃除した。今日も武君の事を考えながらしていたのだ。 そして私は鏡を見て今日の姿をチェックした。 ボサボサの頭ではなく細く長く綺麗な髪、武君が買ってくれた髪飾りを今日も付ける。 あれから美容室に行ってイメージチェンジをしてみた。勿論武君の好みに合わせてだ。 元々女子としては綺麗な方だったのだろう。イメージチェンジは成功してクラスの中でも一目置かれる可愛さになった。 武君とはあれからずっと一緒に登校した。何かあれば彼はすぐに飛んできてくれた。だから私は安心して学校に行くことができた。 唯一、気がかりなことがるとすれば・・・ 「あら? またこんな所でイチャついているの? 学校の中よ、いい加減にしてよ!」 私と武君が廊下でキスをしていると、凛さんが注意してきた。注意というか、その口調には怒りや憎しいが混じっているのが分かる。 あれから武君はすぐに凛さんと別れてしまった。そしてその直後、武君と私が付き合っている事を知られてしまった。 私は何度も凛さんに謝ったが、彼女は私を許してくれそうになかった。 それからは、私から凛さんに話しかけても相手にするどころか避けられるようになってしまった。 彼女の友達もまた私を避けるようになった。その事で私は学校に来るのが嫌になった時もあった。 「ご、ごめんなさい」 私は凛さんに謝った。 「悪い悪い。美緒も謝ってるし許してくれよ」 「ふん」 そう言って、凛さんは私達の元から立ち去ってしまった。 凛さんは当然私が彼を奪ったと思っているだろう。 「美緒、大丈夫か?」 武君が私を気遣かってくれる。その言葉を聞くと、昔のことなどどうでもよくなってしまった。 私が凛さんの事で落ち込んでいる時も、彼は私を勇気づけてくれた。 「お前には俺が付いている」と。 「う、うん、平気」 彼がいれば私は何でもできる気がした。 「ねえ、これからも私を守ってくれる?」 凛さんの事で少し不安なった私は、つい彼に尋ねてしまった。 すると武君は力強く私に宣言した。 「当たり前だろ! ずっと美緒を守るよ」 そう言って彼は私にキスをした。 そう、これから先ずっと私は武君と一緒だ。 キスしていた唇を離すと、私は涙を浮かべて言った。 「嬉しい。私、武君のことが好きで本当に良かった」 それを聞いた武君はとても嬉しそうに言った。 「俺も嬉しいよ。これからも一緒だ。ずっと、ずっとな・・・」 私達はそう言って共に前へ歩き始めた。これからの人生を共に歩むように。 ふと廊下のガラスが目に入った。 そこには私と武君が並んで歩いている。 私は鏡に映る武君の顔を見た。 「どうしたんだ?」 武君が私に尋ねる。 「う、ううん、な、何でもない」 私がガラスに映った武君を見た時、その顔は凄く嫌らしい笑みを浮かべているように見えたのだ。でもその事は言えなかった。 そして私は気づいてしまった。それを見た瞬間から私の全身が震え出していたことに・・・ |