今日からあたしは風俗嬢 作:verdsmith7 私はその日急いでいた。 学校に遅刻しそうだったのだ。 私は香苗、高校2年の女子高生。 部活は帰宅部だが勉強はできる方だ。 顔やスタイルは良い方だと自分で思っているが、異性との付き合いはまだない。 この黒くて長い髪も私の自慢だ。 私は学校へ近道するために近くの歓楽街を通ることにした。 そこにはいかがわしいお店が立ち並んでいるから学校の規則で近寄らないことになっているのだけど、今日はそれを守る余裕はなかった。 少しスピードを出せば間に合う、その余裕が不注意を招いた。 ドンッ! 私は角から飛び出た女性を避けることができずにそのまま身体をぶつけてしまった。 「あいたた・・・すみません、急いでいたので」 「うう、ちゃんと前見なさいよ。痛いわね」 私はぶつかった人を見た。 髪は茶髪で私の髪の半分ぐらいの長さ、服はキャバ嬢が着ていそうな服だ。胸元が開き大きな胸が見える。 年齢は20代後半から30代くらいだろうか、化粧でよく分からないが私より年上なのは確かだ。 「ごめんなさい」 私は申し訳なく、素直に謝った。 「まったく・・・」 ぶつぶつと女は私に何か言おうとしたが、急にまじまじと私の方を眺めてきた。 まるで品定めをするように私の顔から足先までをジロジロと見ている。 「うふふ、向こうでちゃんと謝ってもらいましょうか」 ようやく口を開いた女の人の表情は、何かよくない事を企んでいるように見えた。 「え?」 私は困惑した。もしかしたらぶつかった事で変なことをされたりお金を取られるのではないかと思ったからだ。 「大丈夫よ。むしろ良いことよ」 自分が原因の事故だったので、その時私は素直に女の人に付いて行ってしまった。 そこは人通りが少ない路地裏だった。 「あの、ここで何を? あいにくお金なんてほとんど持ってないんですけど・・・」 私はお金でも要求されるのではないかと思って内心不安だったが、女の人が要求してきたのは私が予想していなかった物だった。 「お金なんていいわよ。欲しいのは貴方の身体なんだから」 そう言うと、女の人は急に鞄から取り出した薬を飲み始めた。 「え? 身体?」 女の人の言っている意味が分からず私が困惑していると、薬を飲み干した女の人が私に近寄って来た。そして・・・ チュッ! 私は突然の事に何が起こったか分からなかった。 自分の唇に何かが重ねられている。そう、私はこの女の人と今キスをしているのだ。 「うー! うー!」 香苗は自分の唇に重ねられた女の唇を引き離そうとるすが、女は香苗の頭と腰を手で力強く掴んでいるため香苗の力では中々振りほどけない。 そうこうしているうちに香苗の口の中に生暖かい物が入って来るのが分かった。 (やだ!これってこの人の舌?) 口の中にネットリとした物体が自分の口の中に入り込んで来るのが分かった。 (き、気持ち悪い) そして女の舌は香苗の口の中で香苗の舌にからみついてきた、まるで香苗の事を逃がさないというようにその絡みはとても強烈だった。 「うー!うー!」 香苗は必死で女から離れようともがくが、そんな事におかまいなく女は香苗とのキスを続けた。 すると香苗の意識が急に遠のいていくのが分かった。まるで女のキスで魂が抜き取られていくような、そんな感覚だった。 香苗は次第にトロンとした虚ろな表情になっていった。 キスのテクニックが上手いだけではない。女の人から漂う香水の匂い、密着していることによって身体に触れる香苗より大きな胸が、香苗を快楽に引きずり込んでいった。 (何これ? この女の人凄い) 最初は嫌がっていた女とのキスだったが、やがて香苗自身快楽を楽しんでいるようだった。 いつの間にか香苗の舌も女の口の中へ動いていった。まるで自分の全てを捧げてしまうかのように。 今の光景を第三者が見れば、レズのカップルがディープキスをしているようにしか見えないだろう。 香苗の意識はさらに薄れていく。香苗は消え行く意識の中、女の顔を見た。ほぼ密着していたからどんな表情か分からなかったが、目だけは笑っているのは分かった。 そして香苗は意識を手放してしまった。 「うー」 やがて香苗の意識がはっきりしてきた。 (そうだ! 早くこの人から離れないと!) 香苗は今度こそ女から離れようと身体に力を込めた。 すると香苗はさっきまでとは何かが違う事に気付いた。 (あれ? 何で私が女の人の身体に手を回して抱きしめてるの?) 今、香苗の右手には女性の後頭部の感触、左手は女性の腰を触っている感触がある。 (え? 私さっきまで女の人に抱き着かれていたのに・・・これじゃあ私がまるで・・・) 「ううー! うー! ぷはっ!」 私はやっと女性から離れることができた、というより私が女を解放した。 「こほっ! こほっ! いきなり何をするんですか?!」 香苗はやっと引き離した女性を睨んだ。 あんな事をされたんだ、警察を呼んでやると心に思ったが、目の前の光景を見てその考えはすぐに消えることになった。 「!!!」 香苗の目の前には、あり得ない人物がいた。 目の前の女は香苗が通っている高校の靴、ブレザー、ニーソを着ていた。 さっきまでの女はそんな服装じゃなかった筈だ。 すると香苗の目の前の女は顔を上げた、少しずつその顔が見えてくる。 「な・・・何で私がそこに?」 「ふふ、貴方の身体と交換したのよ」 「交換? 嘘! そんな事・・・」 私は信じられなかった。入れ替わるなんて。 でも今目の前にいるのは明らかに自分自身だ、それにこの身体から出てくる声もいつもの自分の声と違うような気がする。 「じゃあ、今の自分の身体を確かめてみたら?」 私は錯乱しつつ今の自分の身体を確認した。 (入れ替わったなんてそんな事・・・) 私はもやもやとした気持ちを抱きつつ自分の服装を見た。 今朝私が着ていたはずの学校の制服も鞄もそこにはない。 上半身には主に黒色で白いラインが入ったスーツだ、さっき見た時より自分が着ていると身体にピタッと貼りついているようだ。 スーツと言っても水商売の女性が仕事用で着る、いかがわしい服だ。 (何これ? 私こんなの買ったこともないのに、何で私がこんなの着てるの?) 胸元を見ると、さっきまでの自分とは違う大きな胸が服から弾けんばかりに膨らんでいた。 しかもこの服の胸元が大きく開いているため胸の上半分は丸見えだ。せいぜい乳首と胸の下半分ぐらいしか隠せていない。 (これ私の胸なの? こんなに大きくなかったし・・・それに重い) もしかして作り物なのでは? と思いそっと触ってみた。 「ひゃん!」 ぷにぷにとした柔らかい感触が手に伝わってくると共に全身がに急に電気が走った。私はつい声を出してしまった。 (これ本物だ・・・) 私も自分の胸を触ることはあるけど、今のような感覚は初めてだ。 そして下半身に目を移す。 学校の規則に沿った裾まで隠れるスカートからは程遠いミニスカートが目に入った。 あまりにも短すぎて、少しでも動けばスカートの中の白い下着が丸見えになってしまう。 「や、やだ!見えちゃう!」 私はすぐにミニスカートを手で押さえて少しでも裾を長くしようとするが、手で押さえた分スカートの後ろ側が引っ張られて、今度は後ろからスカートの中が見えそうになった。 私は慌てて両手で前と後ろのスカートの位置を元に戻した。 スカートを気にしながら更に視線は下の足元に向かった。 靴は学校指定のローファーではなく、踵がかなり高いハイヒールのようだ。 「わわ、バランスが上手く取れない」 履きなれないハイヒールと身体に不釣り合いなぐらい大きな胸のせいで、私の身体はユラユラとふらついてしまう。 まっすぐに立つことさえおぼつかない私だったが、最後に残った確認すべき場所、つまり顔を触った。 私は普段ほとんどメイクをしないが、今の顔は化粧が塗りたくられた顔だ。指で触るといつもの肌ではなく人工的な水気を感じた。 そして私が今の自分の顔を気にしている事は、目の前の女もお見通しだった。 「ほら、鏡よ。これで今の貴方の顔をよく見るといいわ」 私の身体をした女は、彼女が持っていたコンパクトを私に渡した。 そこには黒髪で目鼻口が整ったノーメイクの美人女子高生ではなく、茶髪で濃い化粧をしピンクの口紅を塗ったさっきの女が映っていた。 どこから見ても女子高生ではなく、水商売をしている色気たっぷりの女にしか見えない。 「・・・これが私?」 私は今の自分の顔を触りながら、今の私のありえない姿に私は呆然とした。 「そうよ。今のあなたの姿よ」 「何でこんな事したの? 返してよ私の身体!」 少し冷静になれた私は目の前の女に問いただした。 なぜこんな事をされなければならないのか? 私はかつての自分の身体に向かって叫んだ。 「さっきも言ったでしょ。貴方の事、ひと目で気に入っちゃったの。だから貴方にはあたしの身体をあげたってわけ。どうその身体? 貴方ほど若くないけど綺麗でしょ?」 「そ、そんな事で! よくも私の身体を!」 私はさっきからの彼女の身勝手な発言で怒りが爆発しそうになった。 「いい加減にして!」 私は怒りに任せて彼女に飛び掛かった、力尽くでも自分の身体を取り返したかった。 しかし、大きな胸と履き慣れてないパンプスでバランスを崩してしまい、私は彼女に飛び掛かる前に地面に倒れこんでしまいそうになった。 危うくの所で何とか私は体勢を立て直した。 「ふふ、あまりその恰好で無茶はしちゃダメよ」 必死でバランスを取っている私を彼女が笑う。 「う、五月蠅い!」 身体をふらつかせながら、私はせめてもの罵声を浴びせた。 「ふふふ、身体を返してほしい? なら私の家に来てくれない? そこに元に戻る薬があるのよ」 私に選択肢はなかった、私はしぶしぶ彼女の家に行くことになった。 彼女の家までは少し歩かなければならない。いつもならすんなり歩いている道も、今では富士山に登っている気分だ。 私は歩く度に不安定なハイヒールで倒れないか心配だった。しかも今の私にはこの巨乳が身体に貼りついているのだ。一歩踏み出す度に胸が揺れバランスが不安定になり、自然と一歩一歩が慎重になった。 「早くしないと日が暮れるわよ」 私より数歩先を歩く女が言った。 彼女は歩きやすいローファーに大きすぎない胸を持った身軽な女子高生なので歩くスピードも速い。彼女が私の身体を得た嬉しさのあまり駆け出してどっかに行かないか不安だった。 彼女の名前は江美という女で、この近くで働いているそうだ。仕事は何かはっきり言わなかった。ただ接客業と言うだけだったが、恐らくロクな仕事ではないのだろう。 私が目指している将来就きたい仕事とは程遠い仕事で、本来接することなんてなかったはずだ。 「あんたが今すぐにでも私に身体を返してくれれば早く行けるんだけどね!」 愚痴の一つや二つ言いたくなってくる、そもそも全部この女が悪いのだ。 「そうカッカしないで。ほら頑張って、もうすぐよ!」 私が一歩歩く度に私にくっついている胸はブルンと大きく揺れた。胸の上半分は服から出て見えてるから、その光景は当然周りの男性の注目を集めた。 (凄く恥ずかしい。この恰好もこの胸も・・・) 最初は激しく揺れる自分の胸を必死で隠そうと手で隠していたのだが、前のめりになると今度は後ろからミニスカートの中が丸見えになってしまったので香苗は諦めてしまった。 さっき下着を確認してなかったが、この女が着ている下着はTバックだったのだ、そのせいで彼女の股間に下着が食い込んできた。 辛い歩行に精神的な羞恥心が香苗の心に突き刺さっていく。今朝まで普通の女の子として過ごした香苗にはその刺激は強すぎた。 以前はこんな格好で歩いている女性が格好いいと思ったりしたが、今自分がその立場になるとそんな思いが馬鹿に思えた。 (はあ、早くこんなの脱ぎたい) 「さあ着いたわよ」 彼女が示す方向にアパートが見えて来た。 見るからに安いアパートだった。私が今住んでいる家とは天と地の差だ。 「ここに住んでるの?」 「意外だったかしら? でも今日からここが貴方の家よ」 「ふざけないでよ!」 「ふふ、冗談よ」 江美の一言一言が癪に障った、本来なら学校で授業を受けているはずなのに、何で私はこんなことをしているんだろう? 錆びた階段を上がらなければならなかったが、今のこのハイヒールではバランスを崩してしまいそうだった。 仕方なく私はパンプスを脱いで階段を上がった。もういっそ脱いで素足で来ればよかったと思った。 「どうぞ、いらっしゃい」 江美は私を部屋へ招き入れた。 アパートの見た目通りの薄汚れた部屋だった。荷物はそんなに散らかっていないが、江美の服が壁中に掛けてあったり床に所狭しと置かれている。 恐らく商売道具なのだろうが、もう少し片付け方はないものか、はたまたこの洋服代で良いマンションを借りれば良いのに。私は呆れつつ部屋に上がった。 「さあくつろいでいて、薬を取ってくるから」 江美は部屋の奥へと向かって行った。 私は部屋にドサッと座り、疲れた足を床に投げ出した。 「はあー、疲れた!」 私は両手を上げて背伸びをした。今日はとても疲れた。ふと視線を下に向けると大きな胸が下を向いた私の視界に大きく広がった。 「はあ、これのせいでも疲れたわ」 身体を横にするとミニスカから下着が丸見えになってしまうが、もう誰も見てる人はいないので気にすることもなかった。 「はあーこの格好落ち着かない。何か他に着るものないの?」 香苗は周囲を見てみた。 江美はまだ戻らないが、今の私が江美なんだから知った事かと思い勝手に漁った。 これよりましな服があれば何でもいいと思ったが、あるのは着ているスーツに似たタイトなスーツや派手なワンピース、スクール水着やメイド服などのコスプレ衣装、胸元が大きく開いている服もある。こんな服では乳首は丸見えだ、どんな時に着るのだろうか。 「はあ、もう戻れるんだし、これでいいや」 単なる江美の商売衣装なのか趣味なのか理解できなかったが、香苗は服の事を諦めて江美を待つことにした。 「お待たせ。さあこれを飲んで」 江美が差し出したのは錠剤だった。見た限り普通の風邪薬にも見えた。 「ふう、これで元に戻れるのね。ゴク」 私はやっと戻れると思った安心感から彼女の言葉をそのまま信じて薬を飲んだ。 するとすぐに効果が出始めた、私の視界が世界がグニャリと歪んで見える。 しかし、なんだか様子がおかしい。 入れ替わりが起こった時のような魂が吸い込まれる感覚はなく、強烈な眠気が香苗を襲った。 「な、何を飲ませたの?」 もう座ることすらできな香苗は床に崩れてしまう。薄らぐ意識の中で香苗は江美に尋ねる。 「ふふ、心配しないで、ただの睡眠薬よ」 「!!!」 ここで私は江美にだまされていた事を知った。 「そ、そんな・・・身体を返してくれるって言ったのに」 もう何を言ってもあとの祭りだろう。今は悲観にくれることしかできなかったが、強烈な眠気がそれさえもかき消していく。 「うふふ、折角若くて綺麗な身体を手に入れたのにそう簡単に返すはずないでしょ。そんなに悲しまないで、目が覚めたらきっとその身体を気に入るようになるわよ」 「どういう・・・?」 「ふふ目が覚めたら分かるわよ」 そういうと江美は私の口にキスをした。 若く張りがあって、水気がある。化粧では作ることができない唇の感覚が私の唇に伝わってきた。 「じゃあね、あたし」 その言葉を聞くか聞き終わらないうちに、私は深い眠りへと落ちていった。 私は深い眠りに落ちていく。 夢なのか現実なのか分からないそんな世界だ。 私は今日も高校へ行く準備をしている。 いつもの制服、髪を整え終わり出発する準備ができた。 この通学にも慣れた、今日もいつも通りと変わらない登校をする。 「貴方が行くのはそっちじゃないわよ」 ふと女性の声が聞こえてきた。 その声の主に私は振り返る、そこにいたのは香苗である私だった。 しかし、なぜか目の前の香苗はキャバ嬢の恰好をしている、顔も過剰なほど化粧をしているのが分かった。 「貴方はこっちに行くのよ」 香苗が指さした方向はいかがわしいお店が立ち並ぶ歓楽街だった。 「嫌よ! それに、学校に行かないと・・・」 私は目の前の自分にそう言って学校へ行こうとする。 「それは私が行くわ、私が香苗なんだから。貴方は江美でしょ、貴方が学校に行く必要なんかないでしょ?」 「私が・・・江美? そんなわけないでしょ!」 「じゃあ、貴方の身体を見てみなさいよ」 私は持っていたコンパクトで自分の姿を確認した。 するとそこには香苗・・・ではなく江美の顔が映っていた。 「え?」 今私が着ている服は学校の制服に間違いはない、しかしそれを着ている私は異様だった。制服がはち切れんばかりの胸、私の胸はこんなに大きくなかったはずだ。 まるで大人の女性が制服を着てコスプレしているようにしか見えなかった。 「そんな私は・・・江美なの?」 私の顔は間違いなく江美だ、でも私は香苗として今まで生きてきたはずだ。 私は一生懸命過去の事を思い出そうとした、私が香苗であった日々のことを。 古い記憶が蘇ってくる、子どもの頃勉強が全然できなかったこと、不良とつるんで学校を退学になったこと、その事が原因で家族と喧嘩して家を出た事、友人に誘われて水商売の世界に入ったこと。 毎日男どもとセックスをしては金を集めるそんな毎日だった。 「こ、これ? 私の記憶なの?」 私は今までの江美としての人生を思い出していた。江美として生まれ江美として成長したことを。 私は突然気付いた。私の香苗の記憶が次々に闇の中へ消えていくことを。いや違う、記憶は目の前にいる香苗に吸い込まれているようだった。 「い、嫌! 私の記憶を奪わないで! 私の人生を奪わないで!」 私は必死に香苗に叫んだ。次々に自分の思い出や記憶が江美のものと置き換わっていく、そんな今の状態に私は恐怖した。 家族と共に過ごした日々、頑張って勉強して合格した高校、友達と遊んだ日々、それらの記憶は香苗の記憶とは程遠い江美の記憶になっていく。 香苗が私の側に近寄って来た。 私の顔をした香苗がニコッと私に微笑んだ。 私はその表情にゾクッとしたものを感じた。 すると、突然香苗は私の服を脱がし始めたのだ。 「キャア!」 私は悲鳴を上げて抵抗しようとするが、身体が自由に動かない。 「私は香苗、貴方は江美。お互いに相応しい恰好にならないとね」 香苗は嬉しそうに私の制服や下着を脱がし始める。 私は自分の意思に反して香苗が服を脱がしやすい体勢に身体を動かした。まるで香苗に身体を操られているように。 そして私は来ているものをすべて脱がされてしまった。 「まずは私からね」 そういうと香苗も自分の服を全部脱いで、そして先ほど私が着ていた制服を着始めた。 私がいつもそうしているように、香苗は慣れた手つきで学校の制服を着終えた。 「これももう要らないわね」 そう言って香苗が顔を拭くと、さっきまでの厚化粧が嘘のようにノーメイクのいつもの香苗になってしまった。 制服を着終わると香苗はクルっと私の前で回った。 「ふう、これでいつもの私ね。ふふ、今度は貴方の番よ」 香苗は持っている服を次々私に着せ始める。 「止めて! 私こんな服着たくない!」 そんな私の願いを無視して香苗は服を私に無理やり着せていく。 その服を着せられる度に、私の中から香苗としての心がなくなっていくのが分かった。 (何だろう、こんなの着て恥ずかしい筈なのに、むしろいつも着てたみたいに思えてくる) 服が全部着終わる頃にはすっかり水商売をする江美にぴったりの恰好になっていた。 「これでやっと今の貴方にぴったりの姿になったわね」 香苗は自分が持っているコンパクトを開いて私に見せた。 ぴっちりと身体に密着したミニスカートに、身体のラインと大きな胸を強調させるキャバスーツ、底の高いハイヒールを履いた女がそこには映っていた。 「ほら化粧もちゃんとしないと」 香苗は化粧品を取り出して私の顔にメイクを始めた。 私の顔に次々と化粧品が重ねられていくのが分かった。 先ほど同じく、メイクが重ねられる度に今度は江美としての心をまるで自分に塗りたくられているような感じだった。 (何であたしさっきまで江美になることを嫌がってたのかしら、毎日男とセックスして快楽を得られるだけでなくお金も稼げるのよ。うふふ、良いことづくめじゃない。香苗なんてまだまだ子どもだし退屈な学生なんかやってられないわ) 「ふう、これで貴方は立派な江美ね」 その言葉と同時に私は身体が自由に動かせるようになった。 あたしはコンパクトで自分の顔を確認した。 茶髪の髪濃い化粧をし赤い唇をした女がそこには映っていた。 「あら、ここが違うわよ」 あたしはそう言うと、ピンクの口紅を取り出して唇に塗ってニコッと香苗に微笑んだ。 「ごめなさい、だって私は香苗だから」 「良いのよ、香苗ちゃんのおかげであたしが江美だって思い出せたんだし、これはお礼よ」 そう言ってあたしは香苗の口にキスをした。 今朝の無理やりなキスではない。私が江美として、目の前の女が香苗として行う逆転したキスであり、お互いを受け入れる最後の儀式でもあった。 だから今回はディープキスではなくソフトなキスだ。舌をお互いに相手へ入れることはせず、唇から感じる相手の感覚をかみしめた。 江美はかつての自分の唇の暖かさ、うるおった唇の感覚、香苗から漂ってくる匂いを他人のものとして受け入れたのだ。 やがてお互いにそっと唇を引き離した。 今まで自分の人生を共に歩んできた身体を優しく引き離す、お互いに自分の身体と最後の別れをするように・・・ あたしはコンパクトで今の自分の美貌をチェックする。 「さあ男どもがすり寄ってくるよう、美しく色気たっぷりに振舞わないとね」 「ふふ、今の貴方にはそれがお似合いよ。じゃあ、私は学校に行くわ。その身体で楽しんでね」 そう言って香苗はルンルンと鼻歌を歌いながら学校の方へ歩いて行ってしまった。 あたしは歓楽街へと向き直り、そして歩き始める。 コツコツと地面を鳴らす底の高いパンプスが、スラリとしたあたしの脚を強調させる。 ピッチリしたキャバスーツと今にも飛び出しそうな大きな胸が、周囲の男達の視線引き付ける。 ミニスカートからは見えそうな下着とスラっとした太ももが、それをさらに色気を添えた。 周囲の男性があたしに注目しているのが分かる。それはとても快感だった。 (この馬鹿な男どもから今日もお金を搾り取らないとね) やがてあたしは目的の場所に辿り着いた。 「やっぱりここが私の場所ね」 私の前に広がる歓楽街、ここが今のあたしに相応しい場所だった。 「どうやら落ち着いたようね」 先ほどまでうなされていた江美の寝顔が穏やかになったのが分かった。 横で寝ている元の自分に未練があるとすればあの魅惑のボディだけだ。この身体で楽しむにはまだ早すぎる。 (この身体に飽きることがあったら、またあの身体に戻ってもいいかもね、まあそれは無いだろうけど) あの身体は美しいと言っても、そろそろ美しさに陰りが見えるのは目に見えていた。だからこそ今回若い身体を得たのだ。 セックス三昧の日々も楽しかったが、人生を若くて綺麗な身体でやり直すのも悪くないどころか最高の気分だ。 「今度はこの身体でどんな人生を送ろうかしら?」 今の私には新しく輝ける人生が広がっている。 正直な所、学校も塾も勉学も面倒だし、この身体の友人達は真面目で退屈な奴らばかりのようだ。 また昔のようにやんちゃな事をしてもいいが、それは追々考えるとしよう。 「今日は取り敢えず今の私に相応しい場所に帰らないとね。じゃあね、香苗ちゃん、貴方の人生を私なりに楽しませてもらうわよ。代わりに私の人生を楽しんでね」 そう言って私はアパートを出て行った、今の私に相応しい場所へと・・・ |