こんにちは、新しい自分…
こんにちは、新しい自分…
御神木編
作:つるりんどう

***警告***

このものがたりはおとなのひとむけにかかれています。18さいになっていないひとはここでもどってくださいね。

この小説には、できうる限り過激な描写は抑えてあるものの、18歳以上向けのコンテンツが含まれています。ですので、申し訳ありませんが、18歳未満の方はここでお戻り下さい。


時は当に春爛漫…
山の上に見える某大学のキャンパスには桜が咲き誇り、入学式を迎える新大学生を祝ってくれているようだ。
そしてまた、桜が咲いているのは、そこだけに限ったことではなく、大学のある山の麓にあるこの格安物件アパートの庭先にも見事なまでの花を咲かせている。
だが、アパートの建物の方はといえば、この見栄えする桜に見劣りするのには十分過ぎるほどぼろい…
木造モルタル2階建て、築後25年といったところだろうか。
ベランダに干してある洗濯物を見る限り、明らかに大学生の一人暮らし連中ばかりが住んでいるようだ。

カツカツカツ…

音につられてふと視線を逸らすと、そのアパートのペンキも剥げ落ち、錆が浮き出てきている階段を軽快な音を立てて上っていく一人の女性が見受けられる。
彼女はパステルトーンのスプリングコートをはおり、ウンガロのハンドバッグを持っている。耳元のイヤリングや雰囲気からしてもお出掛け向けであり、デートにでも出掛けるつもりなのだろうか?

ファサッ…ファサッ

また、階段を1段1段上っていくたびに左右にゆれるポニーテールは、彼女を活動的に見せてくれている。
そして、なんといっても、彼女の顔はルージュをひくには、まだ幼く感じられるほど、若く美しい…
女子高生といっても通じるくらいの、その顔はちゃんと化粧を施されており、彼女が21歳であることを知っていなければ、大人に見えるように背伸びしているティーンエイジャーといっても過言ではない。

コンコン…

彼女は階段を上り切ると、2階廊下の一番奥の部屋のドアをノックした。

「やっほーっ、茂樹ーっ!!いないのーっ?」

どうやら彼女は、205号室の青山 茂樹を尋ねてきたらしい。
大声をかけてはみるが、部屋の中からの応答はないようだ。

「変だなぁ。茂ちゃん、5日には帰ってるはずなのに…」

彼女は、不審に思いながら、ふと腕時計を眺める。
時間は1時半、普段なら外食していたとしても、家に戻っている頃である。

「新学期の準備するのに買い物に出ちゃったのかな〜」

彼女の顔は、ミスッたかというような少し苛立ち気味な様子である。
せっかくここまで来たんだし、ものは試し…と、彼女は205号室のドアノブを回して見た。

ガチャ

「へっ!?」

自分でも期待してなかったものの、ドアには鍵はかかっていなかったようだ。

(え、うそ…まさか、鍵しないで出掛けちゃったわけぇ……まったく、不用心なやつね…)

彼女は取りあえず中で待たせてもらおうと、ドアを開けて中に入った。

バタンッ

カチャ

「ふぅーっ…え゛っ」

中に入って一息ついたはいいが、目の前に広がる惨状に思わず驚きの声を漏らしてしまう。

そう、青山 茂樹が帰郷する前に、彼女が時間を掛けて整理をしたのにもかかわらず、目の前に広がるのは、以前よりひどいのではないかと思ってしまうぐらいのゴミの山だった。
どこから出てきたのか、賞味期限の切れたパン。
彼の好きなオアシスのCD。
どこの古本屋で買ってきたのか、何やら虫の付いてそうな18禁コミック。
半年前の、「関○一週間」。
あげくのはてには、いつ脱いだとも知れぬトランクスまでが床に散らばっている。

「あ…あのっ、バカが…また散らかしたわね…」

彼女は怒りのあまり、こぶしを胸の前まで持ち上げると、

「ふんっ!!」

と一発壁にお見舞いした。

ドガサササッ

すると、複雑に積み重ねられていたゴミの山がスライドするように床の上に奇麗に散らばった。

(これで少しは整理しやすくなるでしょう…全く、また私にこの整理させる気ね。)

彼女は穿いてきたブーツを脱ぐと、ハンドバッグを靴入れの上に置き、手元の「関○一週間」に手を伸ばしたそのとき…

「はぁはぁはぁ…」

と奥の部屋から、人の激しく呼吸する音が聞こえた。

「ん?」

(あれ…茂樹いるの?)

奥の部屋に茂樹がいるようなので、彼女は手に本を持ったまま、奥の部屋とダイニングキッチンとの仕切る襖へと近づいていった。

(全く、いるんならさっさと返事しなさいよ…)

シャッ

彼女が勢いよく襖をひき開けると…
青山 茂樹…彼女と同い年の彼が下半身素っ裸のままで、ナニを擦っていた。

「て…はっ」

思いもよらぬ光景に、彼女は一瞬にして固まった。

そして、ナニを扱くことに集中していた彼も、突然の物音にはっと襖の開いた方を見上げる。

「の゛あ゛っ…」



「「ああ゛ーっ!!」」

二人はユニゾンしているかのように、同時にお互いを指差して叫んだ。

……



「なっ、なっ、何やってんのよ〜。真っ昼間から〜。」

彼女は慌てて後ろを向くと、茂樹に抗議する。

「おっ、お前こそ、何勝手に上がってきてるんだよ。」

茂樹も困惑しつつ、彼女に抗議する。

「あっ、あのねーっ。さっき、玄関ノックしたし、声も掛けたでしょう。それに、だいたい昼食べてからすぐ、家のドアに鍵も掛けずにオナニーしてるやつがどこにいるってのよ〜。」

彼女はもう顔を真っ赤にしている。

「…えっ、鍵掛けてなかった?」
「んもう、鍵を掛けてないから、私が今こうしてここにいるんでしょう。」
「あっ、なるほど…」

彼は納得しつつ、オナニーの途中で宙ぶらりんになった右手を慌てて引っ込める。

「もうさっさとトランクス履きなさいよ。」
「はいはい、分かったよ。」

茂樹はしぶしぶ立ち上がると鉄パイプのベッドの側に落ちているトランクスを拾い上げて、履き始めた。
そんな様子を横目で眺めながら、彼女は話し出した。

「全くぅ〜、あんたが5年前、あのミス・ひばりが丘に選ばれた深見 梓だなんて信じらんないわね。」
「んーっ、それはないだろ。こっちだって、お前の振りしてる間にこうなったんだからな。」
「ふーんだ、私は真っ昼間からオナニーするほどスケベじゃなかったもん。」
「なんだと、このーっ。」
「キャァーッ。ちょっとやめてよ。」

下半身はトランクス一枚でふざけながら襲い掛かる茂樹に彼女も笑いながら悲鳴を上げる。

ドタッ

「はぁはぁはぁ…」
「ふぅ…」

そのまま、床に倒れ込んだ二人は、体を重ね会いながら、改めてお互いを見詰め合った。

5秒…

10秒…



30秒

「いやはははは…」

なかなかいい雰囲気だったのだが、残念にも恥ずかしくなったのか、二人は起き上がると視線を逸らし合うように床に座り込んだ。



「そういえばもうあれから5年経ってるんだよね。」

彼女…深見 梓は、何かを思い出したように、しみじみとした口調で話し出した。

そう、実は…

梓…は本当の梓ではなかった。今の梓は…その中身は、5年前に入れ替わった茂樹の意識だった。
そして、同様に、茂樹もまた、その中身は5年前に入れ替わった梓のものだった。

二人は久しぶりに自分達の過去を回想し始める。
5年……言葉にしてみると短いようだが、生きてみるとそれはとても長く感じられたものだった。

もう二人は、5年前の入れ替わったときとは全く違った自分へと変化してしまっていることは百も承知していた。
でも、こうして二人だけでいると、余計に自分達の過去…忘れがたい記憶をどうしても蘇らせてしまう。

もし、5年前、あんなことが起きていなければ、こんなことにはなっていなかっただろう…
しかし、二人は5年前のあの事件のことは、どうしても怨めなかった。

なぜなら…



5年前…

梓は…確かに青山 茂樹だった。
ごく普通の男子高校生だった。
人並みに、遊び、勉強し、恋もすれば、そこそこの人望も獲得していた。
片思いでしかなかったが、そんな彼が恋に落ちていたのが、深見 梓だった。

茂樹は…確かに深見 梓だった。
ごく普通の女子高校性だったが、唯一特別なことといえば、演劇部でヒロイン役をよく演じるなど、特に人気が高く、高1にして、学園祭のミスコンで1位に選ばれたりしたことだろうか。
そしてまた、彼女の悩みは、男にモテ過ぎたぐらいのことだった。

そうお互い、それぞれの学園生活を送っている最中に、あの事件は起きたのだった。

梓がいつも通り、神社脇の細道を抜けながら家に帰る途中のことだった。
学校を出た頃から暗くなり出していた空が、とうとう大きな雷とともに大粒の雹を降らせ始めた。

「ひゃーっ、なんでこんなときに〜。」

彼女は鞄を頭の上に載せながら走り出したが、ふといいことを思い出した。

(そういえば、ここの御神木って、中が空洞になってて人が入れたっけ…)

慌てて彼女が神社の境内に入り、例の御神木の空洞の入り口に飛び込もうとした。しかし、中には黒い人影が…

「あっ、あれっ、青山君!?」
「って、深見さん?」

そう、中に先に入っていたのは、梓のクラスメートの青山 茂樹だった。

(どっ、どうしよう…)

鞄を頭に当てつつも、雹を浴びながら、梓は御神木の前で思わず立ちすくんだ。
そんな彼女を見て、茂樹は顔を真っ赤にしながらも、無理に奥に入りながら、スペースを作り、

「深見さんも中に入りなよ。そんなことにいると、危ないだろ。」

と声を掛けた。
そうは言われたものの、梓は迷った、いくら雨宿りみたいなものとはいえ、こんな狭い空間で男の子と一緒にいるなんて、何されるか分からないし、何も無くても、変な噂が立ってしまいかねない。
だが、天候は梓の気持ちを察してくれるはずもなく、より大きい雹が境内の土に突き刺さるように降り出した。

「ひーっ…」

梓も仕方なく、御神木の空洞へと飛び込んだ。

ピカッゴロゴロゴロ…

さっきから、ひっきりなしに雷が光る。
恥ずかしさを忘れるべく、梓はわざと入り口の方に顔を向けながら外の様子を伺った。


1分…

2分…

3分…


それでもやはり、こんな狭いところで男の子と密着しているかと思うと、落ち着かなくてたまらない。1秒が1時間のように長く感じられる。
そしてまた、彼の方も同様に黙っていられなくなったのだろう。梓が口を開こうとした時、彼の方が数秒早く口を開いた。

「いっ、いやーっ、全くこんなところで雹が降って来るなんて思っても見なかったよな。」
「うっ、うん…」
「深見さんもここの御神木に気付いて、飛び込んできたんだろ。」

そりゃあ、現にここに来ているのだから当たり前だ。

「うん…」
「全く災難だよな…」
「うん…」

茂樹は何か気の効いたことを喋ろうとしたのだが、好きな女の子をいざ前にしてみると、思うように言葉が出てこない…
あきらめた茂樹は再び黙り込んだ。

(どうしよう…せっかくいい機会だし、告白してみようか…)

茂樹は押し黙りながらも、ある決断をどう下すべきか悩み始めた。

ザァーッ

雹は若干小さくなりながらも、依然降り続けている。
しかし、いずれは止んでしまうものである。
告白するなら、今しかない!!

そう思った茂樹は、梓の肩にどきどきしながら、手を乗せた。

「?…青山君?」

梓はそんな茂樹を振り返って見る。

「ふっ、深見さん。おっ、俺…」

そこまで呟いたときだった。

ピシャッ

ものすごい衝撃とともに目の前で光が踊ったのだった。
言葉をだそうにも出せない…
体を動かそうにも動かせない…
二人は全身がしびれながら、手足の先から感覚がなくなっていく。
そんな感じだった。

ピビッ

薄れゆく視界の中で二人の間にも火花が走った。

((死ぬ…))

そう思ったとき、二人は静電気で引き寄せられる下敷き同士のように、お互いが引っ張られるような力の存在を感じた。
まるで、体が吸着されるような…

いや、それはただ、二人の魂が…心が…
目の前の体に吸い寄せられていただけなのかもしれない…

だが、確かにその瞬間に、二人の体と二人の意識は入れ替わっていた。



……

気が付いて見ると、二人は病院に運ばれていた。
そして、見上げた天井に掲げた手は、いつもの自分の手ではなかった…


それから、二人の密着した生活が始まったのだ。


どうしていいのか分からない異性の体、そして他人としての生活…
二人は他人から怪しまれないために、恋人同士という関係をでっち上げ、できうる限り二人でいようとした。

丁度演劇部で男の子役を引き受けていた梓…元茂樹はなんとかうまい具合に、男っぽいところを活かすことができ、友人からも演劇の練習かと幸いにも不信に思われることはなかったし…
元々演劇の才能のあった茂樹…元梓も人前では無難に男らしく振る舞っていた。

だが、二人だけのときは違っていた。
いつ元に戻れるとも知れぬ不安…
梓は泣きすがる茂樹を必死に慰め、なんとかぎりぎりのところで演技を通した。

そうして、何時の間にか、でっち上げだったはずの恋人同士という関係は当に実質的なものに変わっていった。
お互い一緒にいないと落ち着かない…
側にいないとさみしい…
そう、二人は確かに恋人同士になっていったのである。


……

そうして、あっという間に数年が過ぎていった。

無論、その間、二人は元に戻ろうとする努力を重ねてきたのだったが、一向にうまくいかなかった。
入れ替わった原因と思われる場所…
その御神木は、二人を入れ替えた後、焼け落ち、切り倒されてしまった。
つまり、あの時と全く同じ状態を作り出すことはもはや不可能だった。

そして次第に二人の中にあきらめの気持ちが広がっていった。



……

3年前の2月、二人は見事同じ大学が受かった。
これで、また一緒にいられる…
二人は何か運命的なものを感じずにはいられなかった。
これも神様が仕組んだことだったのだろうか。



……

そして今も、二人はこうして側に一緒にいる。
もう二人は下宿生活にもすっかり慣れた大学4年生になろうとしていた。


回想から戻ってきた梓が口を開く。

「でもほんと、あの時あんなことが起きてなかったら、私達一緒になれてなかったよね。」
「そうだな…」
「私は…最初は最悪なことになったと思ったよ…でも今は神様に感謝してる。入れ替わったおかげで、こうしてあなたと恋人同士になれたんだもの…」
「…俺もそうだよ。」

二人はお互い笑顔で見詰め直した。

「あっ、そういや、聞いたことなかったけど…」
「何?」
「茂ちゃん、初めてその体でオナニーしたときのことって覚えてる?」
「なっ、何言い出すんだよ。」

少し驚いたような表情で茂樹が応える。

「だってさ…あんなところ見ちゃったから、なんとなく…」
「うーん…そうだな………いや、なんか照れるな、改めてそう言われると。」
「そう?」
「うん…初めてのオナニーか。あの頃は、まだまだ心は女そのものだったから、ショックも大きかったな。やっぱり、男は後がはっきり分かるから。」
「射精するから?」
「う‥ん…って、お前随分はっきり言うなぁ。」
「だって、私だって、男のときはしてたからね。」
「いやまぁ、それは当然か。でも、まぁ結局男の気持ちの良さは知っちゃった訳で、まぁだんだんエスカレートしてったって感じかな。」
「ふーん。」
「初めてのときはさ、確か風呂上がりにいじってたときになっちゃったんだけど。まぁ、我慢のしようが無くて、すぐ出しちゃってさ。その後、目の前に広がる惨状に泣いちゃうし、たいへんだったぜ。」
「まっ、当然かもね。」
「それより、お前はどうなんだよ?人にばっかり聞いてさ。」
「えっ…私?もう、レディにそんなこと聞くなんて失礼よ。」
「おっ、お前ね…」

茂樹は思わず冷や汗を流す。

「なんて冗談よ。そうねぇ…なんか恥ずかしいけど。やっぱり、あの頃は元気いっぱいの男の子のまんまだったし、女の子の体への興味は暴走状態だったから。すぐにいじちゃったかな。」
「……それが、人をスケベ扱いするやつのすることか?」
「仕方ないじゃん。男の子って、やっぱりそういうのは衝動的に止めようがないし、それは茂ちゃんだって今なら分かるでしょ。」
「まあな。」
「それで、初めてのオナニーだけど…確か、トイレに入ったときに変な気分になっちゃったのよね。やっぱり、男のときと感覚違うし、どうなってるのかって気になるでしょ?」
「そりゃあな。」
「で、そのままアソコの快感知っちゃった訳。後、胸はお風呂に…うーん、その前に、家に初めて帰ったときに触っちゃったかな。」
「おいおい、随分やっちゃってるじゃないか。そんなの一度も聞いてないぞ。」
「当たり前でしょ。そんなこと、あのとき言ってたら、あんたに殺されてるかも…」
「ひっ、ひどいこと言うな……」

茂樹はあの頃の自分を思い返しながら、顔を引き攣る。

「ね、それで女のときと男のとき、どっちが気持ち良かった?」
「えっ…うーん、そんなの考えたことなかったけど、男の方がいいんじゃないか?」
「うそぉ、私は女の方がいいと思ったけど。」
「どうして?」
「だって、胸とアソコの快感一度に味わえるじゃない?男だったら、アレ扱くしかないでしょ?」
「そうかなぁ、アレ一ヶ所に集中する快感がたまんないんだと思うけど…」
「えぇ?女の子なんか、胸2ヶ所に、アソコでも気持ちいいし、その他でもくすぐると気持ちいいところって色々あるのよ。」
「でも、女だと射精する瞬間の開放感は味わえないだろ?」
「うーん、それ言われちゃうと…でも、どんなのだったのかな、射精って。」
「なんだ、もう忘れたのか?」
「だって、5年も女やってると、実感としてどんなだったのか、思い出し難いのよね。」
「ふーん、そんなもんかな。」

改めて男の体と女の体について話し合ってみると、随分意見が変わったものだ。
しかし、やはりお互い異性の方がよく感じるものなのだろうか。

「さっ、変な話はそれぐらいにして、部屋を片づけましょ。全くもう一体何時の間にこんなに散らかしたのよ。」
「これもお前の演技してる間に身についたんだけどな…」
「むっ、なんですってぇ?」
「だって、お前の部屋って、初めて行ったときからこんなんだったぜ。今じゃあ俺の部屋だけど、俺もだんだん片づける気が失せてきてよ。」
「くぅ〜っ、そんなこと言うんだったら、もう片づけてあげないわよ!!」
「誰も片づけてくれとはいってないだろ。ほんとにお前もおせっかいな女になったもんだよな。世話好きというか。」
「ふんだ。誰のせいでこんな性格になったと思ってるのよ。あんたのせいでしょ。いつも…いつも心配ばっかり掛けて…」

梓は一気に泣き声にまでなる。
全く、この二人、仲がいいのか悪いのか…
まぁ、喧嘩するほど仲がいいとも言えるのだが…

「うっうっ…だって、あんたが泣いてばっかりいたから…私がしっかりしなくっちゃって…」
「あっ……悪かったよ。」

さすがにまずいと思ったのか、茂樹は素直に謝った。

「もう知らないっ…」

だが、禁句に泣きながら怒った梓は、部屋を出て行こうとした。
そのとき…

スリッ

梓がたまたま踏みつけたバナナの皮が、梓の足をスリップさせた。

「キャッ!!」

梓はそのままバランスを崩し、転倒しそうになる。
やばっ…
そう思った、茂樹は全力で梓に飛びつき、下敷きになった。

ズテーンッ

「たたたた…」

「しっ、茂樹?だっ、大丈夫?」

思わず心配になった梓が茂樹に声を掛ける。

「だっ、大丈夫だけど…」

茂樹は何やら顔を赤らめながら、梓の腰に手を回した。

「…茂樹?」

何かを意識したのか、梓も顔を真っ赤に染める。

「ごめん。ついつい言うつもりもなかったこと言っちまった。ほんと男って不器用だよな。」
「…茂樹。もういいよ。別に怒ってないから。」
「そうか、ありがとう……なぁ、いきなりこんなこと言ってなんだけど、いつになったらアレする?」
「へっ!?」

思わぬ言葉に梓は驚いた顔をする。

「ほら、高校のときに約束しただろ。元に戻らなかったら…二十歳になったら、アレ試してみようって…」

興奮のあまり、鼻孔が広がっていくのを茂樹は感じながら言った。

「あ、アレって……したいの?」

さすがにアレの意味が分かったのか、どきまぎしながら梓が応える。

「だって、俺、オナニーの途中でやめちゃってたし、それにせっかくお前がここにいるんだし…」
「そ……はぁ、せっかくデートの準備して気合入れてきたのにこんなことになるなんてね。」
「そっ、それじゃあ、いいのか?」
「そりゃあ、私もいずれはしなきゃって思ってたし、あんたがその気になってるんじゃあ仕方ないでしょ。」
「じゃあ、いいんだな。」

すっかり興奮して息巻きながら、茂樹は梓のスカートに手を掛けた。

「えぇーっ!!ちょっと、シャワー浴びなくていいの?」
「そんなもん、構うかよ。」
「…茂ちゃん、よく本当の自分相手にそんなに興奮できるわね。」
「お前だってOKしたんだろ。それなら、お前も同じじゃないか?」
「そっ、そうかもしれないけど。私は、本当はこわいのよ。」

すっかりのっている茂樹に不安になりながら梓は応える。

「なぁ、下一気に脱がせちゃっていい?」
「あのねぇ、普通は上からがセオリーなんじゃないの?」
「そうか…」

そういうと茂樹は梓の、スプリングコートの下に着ていたブラウスのボタンを外し始めた。
一方の梓といえば、さすがに恥ずかしいのか視線を横に逸らしている。

パサッ

ブラウスとスリップが一気に脱がされ、梓の上半身はブラ1枚になる。
ブルッ…
春になったとはいえ、いきなり脱がされて寒く感じたのだろう、梓は身震いした。
その途端、大きな胸がプルンッと揺れる。

「おおっ…」

それを見て思わず茂樹が歓喜とも、驚嘆ともとれる声を漏らす。

「なっ、何?そんなに元の自分の胸が珍しい?」
「だって、お前。5年ぶりだぜ……それにしても、ミスひばりが丘の頃より、胸大きくなったな。」
「そっ、そうかな。私は毎日見てるからあんまり思わないけど、そんなに大きくなった?」
「なったなった……な、触っていいんだろ?」
「えっ…」

茂樹は梓の返事も待たずに、梓の胸に手を触れた。

「やん…」

なつかしい自分の胸を感じようとしているかのように茂樹は梓の胸を揉み扱く。
確かに梓の胸は、自分が梓だった頃よりずっと成長しており、その幼い顔に似合わず、大人の色気で満ちていた。

(女の…自分の胸って、こんなに柔らかかったのか…)

茂樹は自分の固い胸板と見比べながら、その柔らかさを味わった。
そして、そんな元の自分の胸に次第に欲情するような感じを覚え始めていた。
それを実証するかのように、下半身の自分の象徴が固くなっていく。

また梓の方も、元の自分のしっかりした手で胸を揉まれ、自分でしてきたとき以上の快感に包まれていた。

(気持ちいい…他人に揉まれるのがこんなだなんて……うっ、やだっ、濡れてきちゃう…)

茂樹も男としての興奮が押さえられなくなったのか、梓の背中に手を回すと慣れた手つきでブラを外す。

ポロリ

ブラが外されたことで顕わになった胸は、もう既に張ってきていて、その先端は茂樹の下半身のソレのように固くなっているのが見て取れた。

5年ぶりの自分の裸…
それはもう他人の裸だった。
そして、今の茂樹にとっては、異性の裸として映るようになっていた。

茂樹は本能のままに、梓の胸にむさぼりついた。

「やっ、やだっ…うひゃん…」

あまりもの猛攻撃に梓は身をよじらせる。

自分では絶対に得られない感覚…
これが女としての喜びなのだろうか…
梓はぼぅーっとし始めた頭の中でそんなことを考えていた。

「はぁはぁはぁ…」
「ふぅふぅふぅ…」

二人の息は、荒くなり、お互いに自分の興奮を伝えている。

「なっ、なぁ、下行くぞ。」
「…うっ、うん。」

梓はやはり戸惑いがちな声で応える。

だが、暴走し始めた茂樹にはそんなのおかまいなしらしく、一気にスカートを脱ぎ下ろさせると、ショーツをめくった。

「やっ、やんっ…」

梓の顔には、明らかに羞恥心が浮き出ている。もう既に5年間女の子としてやってきたのだから、自分の裸が暴かれるのには、抵抗があるのだろう。
その辺は多少意識していたのか、茂樹はショーツはすぐには脱がさずに、そのまま手を上から入れている。
しかし、濡れ始めたショーツの方が、ある意味、余計に恥ずかしいものかもしれない。

「うぅぅん、うはぁーあ…」

梓は襲って来る快楽に耐え切れず、もだえ声を漏らす。
そして、とうとう茂樹も限界に来たのか、思い切って、ショーツも下ろさせた。

「うおぁ…」

あまりにも久しぶりな、本物のアソコに茂樹は声を出さずにはいられなかった。
5年ぶりの女の子のアソコである。
5年前までは当たり前すぎて、じっと熟視することもなかったが、今こうしてみるとその作りに驚かずにはいられなかった。
もうエロ本の写真の中でしか見ることのできなくなっていた、ソレが目の前にある。
それだけで、頭の中がオーバーヒートしそうだった。

梓の方は、5年前に自分のものになったアソコがじっと見つめられているかと思うだけで、下半身の熱さが全身に広がっていくのを感じていた。

茂樹はショーツを下ろす前と同様に、今度はアソコを見つめながら、愛撫を加え出した。

「あぁぁん…」

梓は、的確に的を付いてくる茂樹の攻撃に、体がとろけそうな気までしてきていた。

こんな感触だったのだろうか…
茂樹は、5年前まで自分がしていたのと同じようにアソコをいじくる。
だが、確かにアソコの感触は確かに手から伝わっては来るが、5年前まで感じていたはずの快感までは伝わってこなかった。

これじゃあ、物足りない…
梓が一方的に快感を感じている様子に、茂樹は不満に思った。

「なぁ、梓、今度は俺の方もしてくれよ。」
「う…うん?」

快感に酔いしれていたらしい梓は、分かったとも分からぬともつかぬ返答をする。
茂樹はがまんできず、自分でトランクスを脱いだ。

5年前に自分のものとなったソレは既に完全膨張し、まだかまだかと愛撫を待っているかのようだ。
茂樹は取りあえず、自分で扱いてみたが、やっぱり梓にしてもらいたい思いがあるのか、すぐに手を放し、梓の方を振り向いた。

「え…」
「梓、分かるだろ。頼むよ。」

突然目の前に現れたソレに、梓は驚いた顔をする。

「これ…するの?」

5年前まで自分のものだったとはいえ、今こうして見てみるとソレはグロテスクにしか思えない。
自分もコレでオナニーしていたのかと思うと不思議な気さえする。
そうはいっても、今まで自分がしてきてもらった以上、お返しはせねばなるまいと恐る恐る梓はソレに手を伸ばした。

「うっ…」

ビクンッ

とそれが波打つ。
梓は思わず手を放し掛けたが、気を取り直したように再びソレを握る手をゆっくりと上下させる。

茂樹は、その一点に集中する快感にもだえる。

「うっ、うぅっ、出る…」

自分のソレが、元の自分の柔らかい小さな手で扱かれている。
そう思うとなんともいえない倒錯的な快感が茂樹を襲った。

ピュワッ、ビュワッ…

「わっ!!」

とうとう頂点に達してしまった茂樹はソレのさきから男の欲望そのものを吹き出してしまった。
元の自分が射精する様子に、梓はこわがるように引いてしまった。

「はぁはぁはぁ…」

そして、茂樹は男の快楽の余韻にそのまま浸っている。

「…男って、こんなんだったのね…」

そんな茂樹を見ながら、昔の自分のオナニーする様子を重ねあわせていたのか、梓は感心しながら言った。

「あん…そんなにおもしろかったか?元の自分が射精するところって。」
「だって、自分がオナニーするところなんて普通、客観的に見れないでしょ。」
「まぁ、確かにな。」
「ねぇ、茂樹って、どれくらいしょっちゅうオナニーするもんなの?」
「何、またその話?そうだなぁ、確かに俺が梓だったときよりは増えてるから、一週間に2・3度ぐらいかな。」
「へぇ〜、男ってやっぱりそれぐらいなんだ。まっ、私もそれぐらいしてたと思うけど。」
「で、今のお前はどうなんだよ?」
「そうねぇ…月に5回ぐらいじゃない。」
「…なんか少ないな。」
「えへっ、私だって、女のオナニー知った頃は毎日のようにしてたんだけど、慣れちゃうと男のときより性欲が減ったみたいでね。」
「ふうん。じゃあ、俺は性欲が強くなったのかな?」
「何言ってんの。今日だって、真っ昼間からやってたくせに。あの泣き虫な女の子はどこにいったんだか…」

梓のあきれたような指摘に、茂樹は頭を掻く。

「いやーっ、そうはいってもなぁ、一度ヤり始めたら止まらないし。気持ち良いもんな。」
「ふーん。」

梓は茂樹の返答に応えながら、部屋を見回した。

「ねぇ、パンキョウ(般教…一般教養)の健康科学受けた?」
「ううん。」
「それの参考書に載ってたんだけどさぁ、オナニーするときの男のオカズと女のオカズの違いって知ってる?」
「いや…」
「うーんと、あっ、あったあった。茂樹の好きなエロ本!!」

梓はすばやく周囲に散らかるものの中からエロ本を探し出すと、開いて見る。

「わーお、茂樹、こんなの見てんの?」
「悪いかよ?俺だって、長年女の体見てなかったら見たくなるもんなんだよ。」
「ふーん、誰もそんな事言ってるんじゃないのに…でね、男のオカズでは写真とか、コミックでも直接的な描写が多いでしょう。」
「そうなのか?」
「うん。でも、女のオカズの方は、同じようなシーンでも心理的描写が多いの。例えば、レディースコミックなんかにしても、シーンごとの心理変化とかで女は萌えるらしいのよ。」
「へぇ〜、お前、レディースコミックなんか買ってんだ?初耳だな。」
「えっ…いや、そういうことじゃなくて…その…」

ニヤニヤする茂樹に梓はしどろもどろする。

「だーかーらー、女の子は気持ちを大事にするの、で、男は単に行為そのものにしか興味を示さないの。」
「ほほぉ、それは勉強になったな。」
「何よ、ちゃんと聞いてるの?ふんだ、茂樹はすっかり男の性欲に染まってんじゃない、こんな本ばっか買ってきて。」

茂樹がちゃんと話を聞いてくれないので、再び梓は機嫌を悪くする。

「ごめん、悪かったよ。なっ、梓、そろそろ本番行こうぜ。俺もいつまでも待ってられないし…」
「えっ、そんなぁ…」

梓は急に困惑したような顔をする。もしかすると、梓がこういう話を持ち出したのは、本番までの時間稼ぎをしたかったからなのかもしれない。
いずれにせよ、実際問題、やはりバージンの梓には、本番にはかなりの恐怖心があった。

「ほっ、ほんとにするの?」
「今更何言ってんだ?そのつもりでここまでやってきたんだろ。」
「でもなんか、私、こわいな…」

梓は、急に怖じ気づいたように、体を震わせる。


この5年の間に、梓は確かに女性としての振る舞いや感性を会得していた。
そして、その体で自分で自分を慰めることも覚えていた。
しかし、そのことが直接男性のソレを自分の体に受け入れるということにつながってはいないのだ。

それとこれは別…
自分の性欲の満たすためにアソコに何かを挿入することはあっても、男性のソレを入れたいなんて思ったことなど一度もない。
でも、茂樹と1つになるには、それを認めなければならないだ。
今の自分で本当にそれに耐えることができるのか…
梓は自分が壊れてしまいそうな不安にかられていた。


「梓…」

茂樹はそんな梓を見ていて、昔の自分を思い出した。


入れ替わる前の自分…自分が深見 梓だったとき。
自分は男嫌いという訳でもなかったが、男性に対しては一定の距離を置いていた。
それは男の子の考えていることが分からなかったからだった。

なんとなく男の子と一緒に居るとこわい…

そんな漠然とした不安すら、梓の心の奥底では確かに存在していた。

自分が、男の子としての自分に慣れてしまっていたせいで、忘れていた昔の自分…
茂樹は何時の間にか、昔の自分と今、目の前にいる青山 茂樹の入っている梓とを重ねあわせていた。


茂樹はそっと梓の肩を抱いてやる。

「ごめん、俺、ついつい今の自分のことだけ考えて、お前と昔の自分を見失ってたみたいだ。」
「えっ?」

先程はあれほどヤる気まんまんだった茂樹の急変に梓は驚いて見上げる。

「そりゃあ、俺だって女の子だったんだ。お前の今の気持ち分かるよ。したくないんだったら、それでいいと思うし…それに俺もなんか昔の自分を犯すみたいで気分よくないからな。」
「茂ちゃん…ほんとにそれでいいの?」

梓は、自分をいたわってくれた茂樹を見て、ふとさっきまで気持ちとはまた違う気持ちが生まれてきたのに気付いた。

どんなに否定したところで、茂樹を、彼のソレを受け入れるのがこわいことは認めざる得ない。
でも、自分はこの人と一緒にいることを選んだんじゃないか。
もう目の前にいるのは、元の自分の体ではなく、自分が大好きな新しい茂樹という男性じゃないか。
そして、私はもう深見 梓という一人の女性じゃないか。

だから、私はこわがっちゃいけない。
私は梓として、彼を受け入れ、本当の梓に生まれ変わらなくてはならない。
いつまでたっても、こわがって前に進めないようじゃ…昔の自分を捨てられないようじゃ…私達が本当の幸せなんて掴めるはずがない。

そう私には、もう茂樹としての自分はいらないのよ!!


茂樹のおかげで、ようやく決意を固めることのできた梓は、ほんの数十秒前、あの不安げな表情を浮かべていたのが信じられないくらい、凛とした表情とした顔で茂樹を見た。

「梓?」

梓の自信の篭った表情に、茂樹は何か心動かされるものを感じた。

「茂樹、お願いきて。」
「梓?」
「私、生まれ変わることにしたの。もう昔のことなんか関係ない。だって、私達…私は梓として、あなたは茂樹として、愛を育んできたんでしょ。だから、これで私は本当の意味で、梓になりたいの。」
「…そうか。」

女性の強さというのだろうか、彼女の心意気に茂樹も自分の心を後押しされるような気がした。

「じゃあ、俺も本当の青山 茂樹に生まれ変わるよ。」
「茂ちゃん。」
「それから言い忘れてたけど、生まれ変わる前に一言。」
「何?」
「青山君、長い間私を支えてきてくれてありがとう。これからは私が茂樹として、あなたを支えていくから。」
「茂…いや、深見さん。」

久しぶりに二人は元の自分に戻っていた。
そして、これで元の自分とのお別れにするつもりなのだ。

「でも、1つ訂正。」
「何、青山君?」
「俺が本当の梓になったとしても、君を支えていくのは俺も同じだよ。」
「そっか…青山君。」
「それにもう1ついいかな?」
「何?」
「実は俺、入れ替わる前から深見さんのことずっと好きだったんだ。」
「えっ、ほんと?」

茂樹の顔が、梓の心が浮き出ているかのように、真っ赤に染まっていく。

「もちろんさ。こんなことにはなっちゃったけど、いつも二人でいられて、俺、本当にうれしかったよ。」
「知らなかった…でも、私も、青山君のこと大好きになっちゃったんだ。いつもやさしくて、頼り甲斐があって。」
「ありがとう。……生まれ変わっても同じだよね?俺達、ずっと一緒だよね?」
「もちろん!!」

茂樹が梓を押し倒すように熱い口付けをする。

チュッ

チュッ

チュッ

勢い余って、唇だけでなく、相手の頬へも接吻を続ける二人。

「うふっ。うはははは…」
「あはははは…」

何か可笑しさが込み上げてきて、二人は一旦口を離した。

「うーん、久しぶりの男の言葉遣い、なんか恥ずかしかったぁ。」
「こっちも、5年も経ってるから、オカマになったみたいで恥ずかしかったぜ。」
「「えへっ」」

二人は同時に笑いを浮かべる。

「「じゃあ、しようか?」」

二人は自分に言い聞かせるように、その言葉を発した。

そして、その言葉に返答する、二人の笑み。
二人は元の自分との最後の別れを惜しむように、互いの顔を見詰め合った。

でも、もう二人には、元の自分には未練など残っていなかった。
これで、自分達は本当の恋人同士になれるんだ。
そんな気持ちが二人の視線を熱くしていた。



ドサッ

次の瞬間、梓が茂樹を見つめたまま、ベッドに倒れ込むように、横になった。

「さっ、茂樹、きて。」

『男性は女性の体を射抜くような視点に立つのが好き…』
例のパンキョウの教科書に書いてあった通り、梓は茂樹からの視点で丁度自分のアソコを射抜けるような体制を取る。

「梓…」

やはり、それは正しかったのだろうか。
茂樹の顔が余計に赤くなったように見える。


そう、確かに茂樹はそうした視点に立ったことで、男性として興奮していた。
茂樹にとってはじめてのソレ。

結局、女性としてのソレを体験することは無理になってしまい…
また、自分で元の自分のバージンを奪うという事態になってしまったことに全く心理的な抵抗感が無い訳ではない。

しかし、さっき自分達で決めた…自分は本当の茂樹に生まれ変わるんだ…
という意識が茂樹の興奮を今までに無いほどに高ぶらせている。


「じゃあ、いくぞ。」

そう応えると、既に生まれたまんまの姿になっている茂樹は、待ってくれている梓へと近づいていった。

ギシッ

梓に加え、更に茂樹の体重が加わったベッドは軋む音を立てる。

ベッドの上では、茂樹が梓の上に跨る。
すると、既に熱さでみなぎった二人の皮膚同士が触れ合った。

梓の皮膚は、柔らかく、それでいて木目細かい。
茂樹の皮膚は、ゴツゴツしていて、張りがある。

二人は皮膚同士の触れ合いを通じて、お互いの心を感じていた。




茂樹が腰を低くする。
それに合わせて、梓も茂樹のソレをうまく誘導できるよう、下半身に手をやり、受け入れる準備をした。

すっかり林檎のように頬を赤く染めた梓がそっと口を開いた。

「あまり痛くしないでね。」
「もちろん、分かってるよ。」

ドキドキが最高潮に上がっている茂樹は、十分すぎるほどに固くなった自分の象徴を梓のアソコに近づけていく。

5cm…

3cm…

1cm…

ピチュ

5年前にそれぞれ初めて手に入れた自分の性の特長たる部分が接合する。

「うっ…」

茂樹は初めてのせいか、触れただけで出しそうになるが、なんとか持ち直し、ゆっくりと自分のソレを梓の中に入れていく。

ズッ

「ひっ!!さっ、さけるぅ!!」

バージンの梓が初めて自分の中への侵入を許したソレが未開通の回廊を押し広げる痛みに悲鳴を上げた。
だが、ソレは梓の気持ちを待たずに、梓の奥へと侵攻していった。

「ぐぅ〜」

(こっ、これが女の子の痛みなのね…)

梓は思わず顔をしかめる。そんな様子を見ながら、茂樹はソレが2/3埋まったあたりで一休止した。

「…大丈夫かい?」
「はぁはぁはぁ…いっ、痛かったぁ…これが処女を失うときの痛みだなんて…」
「その様子だと、動くのはもう少し待ってからの方がいいみたいだね。」
「ううん。いいの。」
「でも、痛いんだろう?」
「やって、お願い。待ってたら、気持ちが揺らいでしまいそうだから…」
「分かったよ。」

茂樹は梓の気持ちを気遣いながら、肯いた。

今の自分は、もう女としての痛みも苦しさも気持ちの良さも分からない…
だからこそ、梓のことはしっかり考えてやらやらないと…

そんな思いが茂樹にはあった。

茂樹は、梓が痛みをできるだけ感じないように、ゆっくり少しずつソレを動かし始める。

しかし、実際動かし始めると、茂樹はもうすぐにでも関が切れてしまいそうな…我慢できないような状態に押しやられた。
自分のソレは、既に梓と一体化し、梓のぬくもりがソレを通して伝わって来るのだ。
しかも、1mm動かすだけで、オナニーの時では感じることのできなかったような、ソレ全体が熱さに包まれているような快感が下半身から湧上がって来る。

(うぅ〜、もう我慢できない…アレのときは、女より男の方が先にイくというのをまさか自分で体験することになるなんて…)

梓をいたわっているつもりが、次第に自分の本能に負け始め、茂樹は自分のペースでソレを出し抜き始める。

ズプッズプッ

「あっ…あっ…あっ…」

梓はさっき十分すぎるほどにため込んでいた涙をこぼしながら、茂樹の動きに合わせて声を上げた。
梓は痛みに耐えようと、思わずシーツを握り締める。

(あっ、あれ…?)

梓は確かに痛みを感じ続けてはいたが、ふとそれとはまた違う感覚がするのに気が付いた。
その感覚は、茂樹のソレが動くたびに体の奥から発せられているようだ。

(これは…)

梓は、全身の神経をそこに集めるかのように、そこに一切の意識を集中させる。
すると、まるで手押しポンプで汲み上げる井戸の水のように、何か気持ちのよいものが間隔を置いて湧上がってきているのが分かった。

茂樹のソレが自分の中でうごめく、その瞬間に湧く快感…
それに梓は目覚めようとしていた。

(そっ、そう…そして、これが女の子の快感なのね…)

梓は生まれて初めて知った女としての快楽に身を委ね始めていた。
そのせいか、梓の顔には、艶めかしい大人の女としての表情が浮かんでいる。

「くぅ〜」

茂樹の方も、そんな梓を見て余計に刺激されたのだろう…
男としての高みに向けてまっしぐらに突き進んでいく。

茂樹の腰の振りは、蒸気機関のピストンの圧力が高まっていくように、激しくなっていった。

「あぁんあぁんあぁん…」
「うっうっうっ…」

二人はまるでベッドの上で踊っているかのように、初めてのアレの快楽を貪るように楽しんだ。
だが、それも終盤に差し掛かっていた。

どんなに華麗な戯曲でも必ず幕が下ろされるように、それは一気に結末へと駆ける。

「ああっ…」
「くっ…」

二人の燃え上がるような行為は、最後の一声をこの狭い空間に響かせて事切れたのだった。



そして、二人の頭の中で、何かが真っ白になっていった。



さようなら、昔の私…
こんにちは、新しい自分…



<後書き>
がぁ〜、はっ、恥ずかしい…(_ _)
初めてこのようなものを書いて完全に上気している自分です。
今まで、できるだけ直接的な表現は避けてきただけに、こういう風に書くと恥ずかしくてなりません。
恥ずかしさのあまり、しばらく引っ込んじゃいそうです。
もし、しばらく私が出てこないとしたらそのせいでしょう。(^^; (ウソ………ほんと?)

それはともかくとして、本編について少しお話しましょう。
今回は入れ替わってから5年もの年月が経ってしまった男女を取り上げてみました。確かに、入れ替わったばかりの男女がアレをするというのもいいのですが、もうすっかり今の性に慣れてしまった二人が昔の自分を取り戻しながら、その行為をするというのもよいのではないかというのが、コンセプトになっています。
まぁ、5年も経っていれば、適応しちゃってて当然ですよね。でも、実際こうして自分の性に向き合ってみると、また別のものが見えて来るものなのでしょう。

これは元々短編して発案したのですが、書き出してみると、予定よりずっと長くなってしまったようです。
しかし、このような行為を盛り込んでは長くなってしまっても仕方ないかもしれません。

もし、みなさんが今後もこのような展開の話を望まれるならば、またこのシリーズを書くこともあるかもしれません。(実は一応、次回作のコンセプトはできています。 (^^; )
なので、ぜひご意見下さるとたいへんありがたく思います。
また、内容について、もうこのようなのを二度と書くなとかそういった反論もOKです。(^^;

それでは、またどこかでお会いしましょう。
さようなら…

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