クラブ「ワルプルギス」 番外編
 作:teru


ジッ…… パンッ!
目覚まし時計が鳴ろうとした瞬間、手がそれを止める。
「ふふ、今日も勝った」
私は伸ばした手で時計を完全に止めると、横で寝ている山口を起こさないように布団から抜け出る。
ベッドの中で山口が心地よさそうに寝ている。
その顔を見て微笑みながらネグリジェの上にガウンを羽織るとそっとドアを出る。

バスルームに入って夕べの名残を洗い落とす。
「ふふ、ふふふ」
夕べ、山口に思う存分に愛された身体…… 山口俊彦…… 私の……
いいのだろうか?こんなに幸せで?
「ふふふ」
笑みが止まらない。 

身体をタオルで優しく拭くと、持って来た真新しいショーツとブラを身につけて、ブラウスと膝下丈のフレアスカートを履く。 軽く薄化粧をすると、その上にエプロンドレスを身にまとい寝室に戻る。

「俊彦さん、朝ですよ?」
私は布団の上から山口を優しく揺する。
「うぅん…… もう少し……」
そう言いながら寝返りを打つ。
仕方が無いなぁ……
「あぁ、やっぱり夕べは無理させすぎちゃいましたか? 申し訳ありません、お疲れでしたか。 もう少し手加減をしておけば……」
自分の額に手を置いてわざとらしく残念そうに首を振る。
「疲れていない!」
山口が布団をはね飛ばして起きる。
ふふふ、可愛いなぁ。 負けず嫌いなんだから。
「ダメですよ?無理しちゃ。 私が本気で求めたら俊彦さんなんて腰が砕けちゃうんですから」
「へん、僕が本気で責め立てたら双葉なんて数秒で失神してしまうんだからな?」
山口がそう言ってニヤリと笑う。
「はいはい、それではそういう事にしておきましょう。 起きられたのならシャワーを浴びて下さい。
汗臭いと女性社員に嫌われますよ」
そう言うとバスタオルを山口に渡して背中を押してバスルームに促す。
「なぁ?それ、裸エプロンという選択肢はないのか?」
山口が私の服装を振り返って見ながらつぶやく。
「ありませんね」
そう言って微笑む。
「僕はあってほしいなぁ……」
「だったら服を着る前に言って下さいな? 疲れて寝ておられた俊彦さん?」
「疲れてないって」
いつもの朝の恒例行事。 ……まぁ、朝からエロトークで始まるのもちょっと問題ではあるけど。
               *
「それじゃ着替えはここにおいておきますね」
シャワーを浴びている山口に私はそう声を掛けて、キッチンで朝食の用意に掛かる。

朝食の用意ができた頃に山口もバスルームから出て来る。
今朝は味噌汁に焼き魚、玉子巻き、おひたしと典型的な和食メニューだ。
娼婦をしていた頃に"お泊まり"の客用のサービスとして朝食を提供していたのでこういうのは得意だ。
手料理というのは貰えるチップに差が出る。 最初はチップ目当てで覚えた手料理だが、何が幸いするかわからないものだ。
「双葉は料理も美味いな」
山口が口に運びながら褒める。
「そんな事はありませんよ。 どれも簡単なモノばかりですから」
いつものようにたわいない会話をしながら取る朝食。 昔の朝食一つを取るにも緊張を強いられていた上杉家の生活からは夢のようだ。

朝食が終わると山口の身支度を調えて、玄関まで見送る。
「今日の帰りは?」
「大丈夫。 何も予定は無いからいつも通りの時間に帰ってくるよ」
「合コンとかは入っていませんか?」
「入ってないねぇ…… てか、君が合コンの予定を聞く?」
山口が笑う。
「あはは、冗談ですよ。 それじゃいつもの時間に夕食を作ってますから」
「はい、了解」
笑顔で山口が出て行く。

山口が出社した後、私は洗濯をしながら部屋中を掃除する。


家事が終わり、何を観るという目的の無いままTVを付けて、お茶をいれてソファに座る。
『ワルプルギス』に戻れなくなったあの日。 私は山口のマンションに転がり込んだ。
私の財産はその時に持っていた財布と着ていたドレスだけ。 住所不定、無職。
山口の言葉に甘えて、家事労働とエッチ三昧な生活にどっぷりと浸っている。
「う〜ん、家政婦と言うより山口専用の娼婦って感じか?」
いや、別に嫌じゃないんだけど。 
この三年ですっかり娼婦としての性が身に付いてしまったので男と寝る事に全くの抵抗がないどころか、積極的に女の快楽を求めている。 山口と寝るのが楽しい……
「かつては上杉商事の社長の座にまで登り詰めた上杉清彦も、今じゃ、社員のマンションに転がり込んで衣食住を頼る身……」
ブラウスの上のボタンを少し外して胸元を覗き込む。 そこにはブラジャーに包まれた脹らんだ胸がこの身が女である事を主張している。
「男に未練が無いと言えば嘘になるけど、女である事に不満も無いんだよなぁ……」
ため息を付いて、お茶をすする。
ただ…… この暇なのが問題なのかも知れない。 炊事、洗濯、掃除は昼までに余裕で終わる。
その後は夕方までずぅっと暇なのだ。
「赤ちゃんでも居れば退屈しのぎに……」
そこまでつぶやいて、自分の口にした事の意味に気づく。 自らが産んだ赤ちゃんを笑顔で抱く自分……
「ばかな! 確かに私の身体は女で、男と寝る事も平気だ。 でも、出産は別だ。 私は最後の最後の所ではまだ男だから……」
顔を真っ赤にして誰に言うともなくつぶやく。
「……それに私の身体が赤ちゃんを産めるとは限らないし。 そうだよ、ワルプルギスにいた時にだって一度も避妊した事がないけど、妊娠なんかしなかったし……」
自分で言って自分の言葉に傷つく。 妊娠なんてしない。 それでいい筈なのに……
「あ〜、クソ。 暇だとロクな方に考えが行かないな。 やっぱり何かする事が無いとダメだな」
そう言って、頭を掻きむしる。
「スポーツジムでも通うか? それにはお金が無いか? そこまで山口には頼るのも悪いし。 パートにでも出るかな? スーパーのレジ打ちとか……」
ほとんど主婦のような愚痴をこぼす。
プルルルル……
電話がいきなり鳴る。
「あ、電話、電話。   はい、山口です」
『本当に山口の家に居るんだな、双葉』
電話の向こうから横柄な声が掛けられる。
「失礼ですが、どなた様でしょうか?」
むっとしながらも山口の顔を潰さないように丁寧に返す。
『もう、自分の声も忘れたか? 社長の上杉だ』
「社長…… 今更、なんの用ですか?」
『なんだ? 何の用とはご挨拶だな? 戸籍を欲しがったのはお前だろう?』
電話の向こうで笑いを含んだ声が答える。
「戸籍! 本当に作れたんですか!」
『わざわざ作ってやったんだぞ、お前の為に。 と言うか、幽霊に実体を与えずにいて化けて出られちゃかなわないからな。 "身体を返せ〜"と恨みがましくな。 だから、さっさと戸籍を与えてお前の女としての存在を世の中に定着させないとな。 わはははは』
ご機嫌で笑う社長。
「ご機嫌ですね、社長?」
『当たり前だ。 お前がそれで大人しくなるなら儂は安心して"上杉清彦"としてやっていけるんだからな。 それでどうする?』
「どうするとは?」
『これからのお前の詳しい履歴だ。 口頭で話してもいいが、それでは困るだろ? 書類にしてあるが、山口に預けていいのか?』
「いや、それは……」
山口に預けられて万が一、中身を見られたりするのはちょっとイヤだ。 山口は私について、なにか問題がある事は気づいてはいるけど、それをはっきりとした形で知られたくない。 
『だったらどうするんだ? 直接取りに来るか?』
「直接?」
『ここまで来るか、と聞いているんだ。 儂も忙しい身だからな。 13時までならここに居る』
「ここというのは上杉商事の社長室ですか?」
『そうだ。 それとも女の姿でここに来るのは抵抗があるか?』
「まぁ、多少は。 それでも来いと言われるなら行きますよ」
『ふん?いい根性をしてるじゃないか。 受付には話を通しておく。 12時半までに来い』
そう言うと電話は一方的に切られる。

「変わらないな。 あの人は……」
受話器を置いてつぶやく。
私の身体を盗ったのがタダの"双葉"であれば、私はなんとしても自分の身体を取り戻そうとしただろう。
だが、あの双葉はタダの双葉では無かった。 
その正体は私の義父であり、前社長の上杉俊秋だったのだ。
「あの事実だけで私は戦意を喪失してしまったからなぁ…… あの人には絶対に勝てる気がしないし」
私はエプロンを外してタンスから上着を出して、ブラウスの上から羽織る。
時計を見ると針は両方とも天辺を目指そうとしている。
「うわっ、急がないと。 あの人は時間に厳しいからな」
軽く髪にブラシを入れると財布の中身を確かめてバッグに入れ、マンションのドアに鍵を掛けて大急ぎで階段を駆け下りる。
通りに出てタクシーを拾う。
「すいません、上杉商事のある上杉ビルまで」
そう告げるとタクシーは走り出す。 なんとか時間には間に合いそうだ。 
               *
タクシーをビルの前で降りて、改めてビルを見上げる。
かつてはここのトップに君臨していたのが夢のようだ。
私は意を決してビルの中に入っていく。
奥のエレベーターに進もうとすると声が掛けられる。
「すいません、どちらのお越しでしょうか?」
見ると警備員がにこやかな顔で立っている。 考えてみれば、商事会社に普段着の若い女性が訪ねてくると言うのもおかしい話だ。
「あぁ。 社長の所に。 アポイトメントは取ってあります」
あえて笑顔で答える。
「それではあちらで受付をして貰えますか?」
警備員が笑顔で受付を指さす。 そう言えばそういうシステムだったな。 外部の人間として入った事が無いから失念していた。
「すいません、ありがとうございます」
笑顔で警備員に礼を言うと受付に向かう。
「すいません。 双葉と申しますが、社長と会う約束をしていたのですが?」
そう告げると、受付嬢が社長室に電話を掛ける。
「はい、わかりました。  双葉様、お待たせしました。 奥のエレベーターで最上階までどうぞ」
そう言うと来客用のバッジを私に手渡して笑顔を向ける。
「ありがとう」
私は礼を言ってバッジを受け取り胸に付けると奥に進む。
エレベーターに乗ると最上階のボタンを押す。
途中の階で何人かが乗り降りする。 中には見知った顔もあるが、誰も私の事を気にも留めない。
最上階に着くと馴染んだ社長室へと向かう。 今は主の変わった社長室へ……
コンコンッ
ドアをノックしてドアを開ける。
中には机が並んでいて二人の女性秘書がいる。 そのさらに奥のドアが社長の居る社長室だ。
「こちらは社長室ですが?」
秘書の一人が場違いな感じの女性の登場に不審の目を向ける。
「アポを取っていた双葉という者ですが」
そう告げると秘書はインターホンで中に確認を取る。
「社長、双葉さんといわれる女性がお見えですが?」
『待っていた、通せ』
インターホンから社長の声が聞こえる。
「どうぞ」
そう言って立ち上がると奥のドアの前まで私を誘導する。
重厚なデスクの奥に社長は座っていた。
「よく来たな、双葉。 岸田、お前は暫く出ていろ」
そう言ってそばに立っていた秘書長の岸田を退室させる。 岸田は一礼して外に出て行く。
私は岸田が出て行ったドアを振り返りながら口を開く。
「大したものですね? あの岸田に何も口を開かせずに出て行かせるとは? 私の時だったら来客と二人っきりにさせろと言えば、一言、二言返ってきましたよ?」
「お前は甘いんだよ。 部下に口答えを許していたらつけ上がるだけだろ? まぁ、座れ」
そう言って応接用のソファを指さすと自分の椅子から立ち上がって出て近づいてくる。
「いえ、書類を頂いたらすぐに帰りますから」
「儂は座れと命令してるんだ。 どうせ暇なのだろ?半時間ぐらい儂を楽しませろ。 それともこの書類は要らないのか?」
そう言って書類ケースをこれ見よがしに振ってみせながら私の対面にどっかと座り、私の前のソファを指さす。
私は仕方なくソファに座る。
「わはははは、座る時にスカートを整える仕草が様になってるじゃないか、双葉。 いや、清彦」
「私を笑い者にする為に呼んだのですか?」
「それもあるな、なにしろお前は大事な儂の娘を裏切ったのだからな。 そのお前が今は女の姿で暮らしているかと思うと愉快でたまらない」
そう言って怒りの交った目で私を睨む。 
正直言って、自分の顔にこれほどの恐怖を抱く事ができるとは思わなかった。 
睨まれた私は身を竦まされる思いだった。
「……妻と娘は元気ですか?」
「"奥様"と"お嬢様"だ」
「え?」
「あれはもうお前の妻でもなければ娘でもない。 今は私の妻であり、娘だ。 呼び方に気をつけろ」
奥様とお嬢様か…… 私にはもうまったく赤の他人というワケか。
「奥様とお嬢様は元気ですか?」
「あぁ、元気だ。 娘なんか元気すぎるほどだ」
そう言って嬉しそうに笑う。 その笑顔は今までとは別人のようだ。
性格はともかく、この人は家族は大事にする人だ、その言葉に嘘は無いだろう。
「そうですか……」
「まぁ、お前は私の娘を裏切りはしたが、私にこんな若く素晴らしい身体をくれた。 それはそれで評価してやる」
そう言って私の目の前に書類ケースを投げる。
私はそれを受け取ると、中から書類を出して確かめる。
そこには女性の戸籍と経歴が書かれていた。
「井上双葉…… これが?」
「お前のこれからの名前だ。 おかげで多少、無茶をした。 身寄りのない老人の戸籍に存在しない娘の経歴を登録させた。 今はその老人もあちらに逝ってしまったがな」
そこには戸籍の他に幻の少女の経歴が記されていた。 次々と書類を捲っていく。
「完璧ですね……」
「当たり前だ。 儂を誰だと思っている」
社長が素っ気なく答える。

「これで…… 就職も結婚も……」
何の問題も無くなる。 私は一個の個人として存在できる。 思わず書類を抱きしめて涙を一粒流す。
「ふん? 本当に女だな? 男の時は他人を押しのけてでも上へ行こうとする気概があったのに。 失望したぞ、清彦。 そんな事で感傷的になるとは」
社長がつまらなさそうに言う。
書類を顔から離して社長の方に顔を向ける。
「確かに…… 自分でも時々おかしいとは思うんです。 自分はもっと男らしかった筈なのに、この三年の間に精神状態まで……」
「恐ろしいな、ワルプルギスの魔力というのは。 それともただの調教の結果か?」
腕を組んで感心したように私を見る。
「3年間、娼婦として暮らしましたからね。 正直、男としての記憶はあるんですが、経験が殆ど女側に移ってしまってるんでしょう」
そう言いながら書類ケースに書類を仕舞おうとすると、中にまだ小さなカードが残っている事に気づく。
「これは?」
「ん?お前の保険証だ。 それが無いと医者にもかかれないだろ?」
「あ、そうですね。 助かります」
そう言って、保険証を持ってしげしげと"井上双葉"と書かれた保険証を眺める。
「まぁ、これでお前もいつ妊娠しても安心というわけだ。 ふはははは」
そう言って意地が悪そうに社長が笑う。
「…………妊娠」
私の身体は妊娠なんてしない……
「ん? どうした?」
保険証を見て落ち込む私に社長が声を掛ける。
「私は妊娠なんてしませんよ? 知ってるでしょう?」
「はぁ? 何を言ってるんだ、お前は?」
「何をって、私の身体はご存じの通り、オーナーが作ったホムンクルスですよ? 妊娠なんてするわけがありませんよ」
「はぁ? 何を馬鹿なことを言ってるんだ? 例え、オーナーが作り上げたホムンクルスでも、その身体はリッパに生物として完璧にできてるんだぞ? その証拠に生理もちゃんとあるだろ?」
……確かに。 
ちゃんと生理もあったから、今まで私はホムンクルスであるという事実を知った後でも、この身体が女性である事に何の疑問も持たなかった。
「でも、私はナマで…… 避妊具を使わなくても妊娠なんて一度もしませんでしたよ?」
私は社長に疑問をぶつけてけてみる。
「ワルプルギスの中ではな。 前にも言ったとおり、あのオーナーは性エネルギーを魔力に替える悪魔だ。 あの店の中で行うお前の性行為は全てオーナーの力となる」
「まさか……」
「胎内で性エネルギーを吸われた絞り滓同士では着床はするわけが無いだろ? お前、そのくらいの事も知らなかったのか?」
「じゃ、私も赤ちゃんを産めるんですか?」
思わず立ち上がってテーブルに手を付いて社長に尋ねる。
「当たり前だ。 それよりワルプルギスと同じ調子で中出ししてると簡単に孕むから気をつけろよ」
「え?」
私の身体が思わず硬直する。
あれ? 山口とは毎日のように寝ているが、まったく避妊行為をしてない。 
だって、妊娠なんてしないと思っていたから……
え? え? 前に生理が来たのはいつだっけ? 頭から血の気が失せていく。
「…………」
「あん? なんだ? ひょっとして心当たりがあるのか?」
無言でテーブルを見つめている私に社長が声を掛ける。
「ふはははは、これは愉快だ! 男のお前が子供を身籠もったとはな。 山口の子か?」
社長が心底から面白そうに笑う。
「多分……」
私は自分の下腹をさする。 ここに山口との赤ん坊が……
「どうだ?男のくせに子供を身籠もった気分は? お前もこれで完全に身も心も女というわけだ?」
「……面白そうですね?」
「あぁ、愉快だ。 これでお前も、男に捨てられる事に恐怖する女の立場ってモノを理解できるという事だ。 若葉の心情を身を持って知るがいい」
「若葉の……」
「そうだ。 お前がワルプルギスで双葉と寝ていた時の若葉は不安に覚えていたんだぞ? 気丈に振る舞ってはいても心の中ではいつお前に捨てられるかとな」
「え? でも若葉は社長に私との婚約を決められたから結婚しただけで、本気で私が好きな……」
「バカか、お前!!!!」
私の言葉が終わらないうちに社長の怒声と共に灰皿が私の横をかすめる。
バキッ
私の横をかすめた灰皿が壁に激突して、その音に隣の部屋から秘書が驚いてドアを開けて顔を出す。
「何でもない、ひっこんでろ!」
秘書にそう言って退散させると、再び私に向き直る。
「お前な? 儂が娘を自分が好きでも無い男と婚約させると思っているのか?」
立ち上がった姿勢のまま、私を見下ろして睨みつける。
私はその恐怖に身を竦ませる。

「娘はお前に本気で恋をしていたんだぞ? だからこそ、儂は課長にしかすぎなかったお前を娘に会わせたんだ。 他にも良家の縁談が山ほど合ったにも拘わらずな」
え?本気で私に惚れていた? そりゃ嫌われているとは思ってはいなかったが……
「え? だって若葉の態度は……」
「不器用なんだ。 娘はつんでれというヤツなのだ!」
つんでれってア〜タ…… でも……
「女が好きでも無いヤツの子供を産みたいと思うか? 今の心も女のお前ならわかるだろ? 私が居ない時のお前達の行動は全て把握してる。 儂の娘が好きでも無い男の尾行を依頼して浮気を調査させると思うか?」
「それは……」
「あいつの性格なら、お前が好きでも無い男だったら疑いを持った時点でとっとと屋敷から放り出してるだろ?」
「確かに……」
お嬢様育ちで優秀だが社長が我が儘に育てたせいで自分の気に入らない事ははっきりと口にするし、実行する女性だった。
「ふん、まぁいい。 もうお前にはなんの関係も無い話だからな。 今は儂が上杉清彦として娘や孫を愛しているんだから」
そう言って社長がソファに座り直す。 私には関係の無い話……ですか。
「しかし、そう思うとますますいい気味だな。 山口は女好きな男だ。 そんな男に惚れて、赤ん坊まで孕んでしまったお前のこれからを考えると愉快でたまらん」
そう言って本当に愉快そうに笑う。
そうして一頻り笑ったあと、真面目な顔になる。
「とはいえ、お前にはこの身体を貰った恩も忘れてはいない。 儂には娘を裏切ったお前を罰する気持ちと、お前がこの身体を提供してくれた事への感謝の気持ちの両方を持っている」
社長は社長で私に対して単純に妻への裏切りを怒っているわけではなさそうだ。
私に対して怒りと恩の二律背反の感情があると言う事か。
「お前が女として生きていく為の最低限の手は貸してやろう。 それが儂のお前に対する恩返しだ。 そしてお前はその女の姿で一生を生きていく事が儂のお前に対する罰だ」
そう言って社長は私に向かって指を突き出す。
「……そうですか。 でも、私は妻に対して確かに裏切り行為をしましたが、考えてみればそれが社長に身体を奪われる正当な理由にはなってないような気がします。 社長が自分の身体を無くしたのは自分のミスからですし、それに妻が私の身体を奪ったのなら、それなりに納得もできますが?」
「ふふん? 言うじゃないか? まぁ、確かにそうだが、何か文句があるのか?」
私の言う事を認めながら、まったく悪びれずに開き直る社長。
「……ありません。私はもうこの身体で生きていく事にしましたから。 それに社長からその身体を奪い返せる気がしませんから」
そう言って私は苦笑する。
「自分の身体の事なのに諦めがいいな? やはりそれは好きな男ができたからか?」
「…………」
コンコン
私が返事に迷っているとドアがノックされる。
「入っていいぞ!」
社長がそう声を掛けるとドアが開いて岸田が入ってくる。
「社長、そろそろ出るお時間ですが?」
「ん?もうそんな時間か? よし、もう話は終わりだ。 帰れ」
そう言って立ち上がる。こっちの都合も何も無い。 とりつく島も無く私との話を一方的に打ち切る。 
本当に唯我独尊な人だ。 でもなんとなく本心から憎めないのは何故だろう。
私は黙ってソファから立ち上がると社長に一礼をして書類ケースを手に社長室から辞去する。

隣の秘書室を通ると先ほど驚いて入ってきた娘と目が合う。 
かつては私の下にいた秘書の一人、樋口だ。 確か、山口はこの娘とも寝たと言っていたな?
「あの? なにか?」
じっと見つめていたら樋口が笑顔で尋ねかけてくる。
……可愛いじゃないか? いかにも山口の好みだ。 その容姿は今の私とどこか被る。
「いえ、別に。 可愛い人だなぁと」
そう言って私は秘書課の皆に向かって軽く頭を下げると廊下に出る。

樋口、おかしな顔をしていたな。 考えてみれば私は設定上は22歳で彼女よりも年下だ。 見かけだけでも二十歳を超えたばかりと言っても疑う者はいないだろう。
「年下から可愛いと言われるのも変だったか」
つぶやきながら廊下を歩く。
それにしても、彼女と私の差はなんだろう?  もし、私に何かの不都合があれば山口は樋口を選ぶのだろうか? それとも山口は私にだけ特別な感情を持っているのか……
じわじわと社長の吐いた毒が私の心に染みこんでくる。 疑心暗鬼と言う毒が……
受付で来客用のバッジを返して外に出る頃には時間は13時を廻っていた。

「う〜ん!」
陽光の下に出て思いっきり伸びをする。 狭っ苦しいビルの中にいるから思考も暗くなるんだよな。
それに…… 社長に昼前に呼び出されて急いできたから昼食もまだだったし……
「久しぶりに残り物での昼食をやめて、外食にしようかな? たまの贅沢もいいかな」
私は久しぶりに昔なじみだった定食屋に足を向ける。
昼食タイムを完全に外してしまったので中は殆ど客がいなかった。
私はお薦め定食を注文した。

「そう言えば、腹が空いてりゃ思考も暗くなるよな」
注文した定食がきたので、箸を割ってご飯を口に運ぶ。
「ここ、よろしいでしょうか?」
迎えの席からどこかで聞いたようなセリフで声が掛かる。 顔を上げるまでも無い。 ずっと聞き慣れた声だ。
「他にも席は沢山空いてますよ?」
私は顔を上げないまま、ご飯を口に運びながら悪戯っぽく笑ってそう返事をする。

「どうしたの? こんな所でお昼とは?」
そう言って山口が対面の席に座って私と同じ定食を注文する。
「うん…… ちょっとね」
そう言って脇に置いてある鞄にチラッと目をやる。 中には私の新しい戸籍と履歴の書いた書類が入っている。
「それよりそっちは? もうお昼はとっくに過ぎてますよ?」
「うん、ちょっとトラブルがあってね。それで遅れたんだ。 お昼を食べたらすぐに戻らないと。 中間管理職はつらいよ」
そう言って笑う。
「大変ですね」
そう言って同じように笑う。
そうこう言っているウチに山口の方にも定食が運ばれてきたので一緒に食べ始める。
「………」
「………」
「ねぇ?」
「ん?なに?」
「私のどこが好き?」
「なんだい突然に?」
「ちょっとね…… さっきまで社長にあってたの。 その時に嫌な事を言われてね」
「あ? ひょっとして山口は女にだらしがないから、すぐに捨てられるとか?」
そう言って笑う。
「えっと…… まぁ、そのような……」
ちょっと口籠もる。 さすがに本人を目の前にして女にだらしがないというのは…… 事実だけど……
「まぁ、女にだらしがないと言うのは自覚してるけど、双葉と付き合いだしてからは他の女の子に手を出してないよ? 大勢の女の子達とお酒を飲みに行ったりはするけど、個人でおつき合いはしてないし?」
「えっと、ちょっと微妙? で、私のどこが好きなんですか?」
「全て!」
「即答ですか? もう少し考えてから答えて欲しいですね?」
箸を咥えて不満そうに答える。
「今から考えるまでも無いよ? 君への思いはワルプルギスに乗り込むまでに散々考えた。 結果はすでに出てるからいつでも即答できるんだよ」
「あ…… あ、そうですか……」
そう言えば3年間考えたとか言ってたっけ……
「それより君は? 双葉は僕の事は好き?」
「…… 好きですよ?」
「う〜ん、ちょっと間があったねぇ?」
そう言って笑って味噌汁を啜る。
「いえ、好きですよ、本当に」
「どの辺りが?」
そう言って悪戯っぽく私と同じ質問をしてくる。
「う〜ん、全てかなぁ? 俊彦さんの顔も身体も性格も……」
ご飯を食べながら考える。
「"アレ"も?」
「"アレ"も!」
 『ぷっ! ふふふふふ』
同時に笑い合う。
「ヤだなぁ、双葉。 まっ昼間っからエッチなんだから」
「ひどい! 自分から振ったくせに!」
 『ははははは』
お互いに顔を見合わせて笑い合う。
やっぱり、私はこの人が好きだ。 話していても息が合う。 
それに…… 
私はこの人と居ると"オンナ"になれる。 社長に盛られた"毒"さえ気にならなくなる。
"男に捨てられる事に恐怖する女の立場"なんてどうでもいい。 
"捨てられる事への恐怖"を"一緒に居る幸福感"が駆逐する。
笑いあった私は冗談めかして山口に尋ねる。
「俊彦さん、俊彦さんは子供は好きですか?」
「ん?どうしたの。急に」
口に運んでいたエビフライを飲み下して尋ねてくる。
「いえ。ちょっと頭に浮かんだもので」
微笑みながら答える。
「あれ? ひょっとして妊娠?」
「してませんよ。 ちょっと遅れてはいますけど」
内心の動揺を隠して笑いかける。
「おや、残念」
そう言って剽軽な顔をする。
「残念と言う事は私が妊娠してしまっても良いと言うんですか?」
「僕は子供は好きだよ? 女性が好きだからセックスの邪魔になる子供が嫌いって男性もいるらしいけど、僕は好きだよ? とくに愛した人が僕の子供を産んでくれるなら最高に嬉しいよ」
そう言って私のお腹を眺める。
私は真っ赤になってお腹を押さえる。
「あ、あは、あはははは。 何を言ってるんですか。 恥ずかしい事を言わないで下さいよ」
「あれ? ………… ひょっとして本当に赤ちゃんができたんですか?」
そう言って私の目を覗き込む。
「いえ、違います! 本当に遅れてるだけですから」
そうだよ、本当に遅れてるだけかも知れない。 予定よりも少し遅れてるだけに決まってる。
「そうかぁ、残念だねぇ。 双葉が妊娠すれば結婚も承諾してくれそうな気もするんだけどねぇ」
「俊彦さん…… 上昇志向はあるんですよね? 会社で?」
ご飯を食べながらにこやかに話す山口に聞いてみる。
「上昇志向? あるよ? 僕だって男と生まれたからには頂点を目指したいからね」
山口は30で総務部長になっているんだから相当エリートと見て間違いないだろう。
「私と結婚なんかしたら足引っ張られますよ? 私はどこの馬の骨ともわからない女で、過去には人に知られたくないこともしてるんですから。 それよりも出世に役立ちそうな女性と結婚された方が……」
「僕は別に出世だけを全てにしてるワケじゃないよ? 君が居るから上に行くのも励みになる。 それに他人のコネを使って上がるより自力で上がりたいしね。 この辺りの考え方は青いかも知れないけど」
そう言って笑う。 かつて、社長の娘と結婚してその力で頂点に立った身としては耳が痛い。
「そうかぁ。 それでも私がいいのかぁ」
ちょっとニヤケ気味に笑う。
「あぁ、双葉がどんな過去を持っていようと僕には何のハンディにもならないよ。 君と共に駆け上がってみせるよ」
そう言って快活に笑う。
ランチを食べ終わって定食屋の前で笑顔で別れる。
「それでは昼からもお仕事、がんばってください」
「あぁ、君の為にがんばるよ」
そう言って軽く手を振って会社の戻っていく山口の後ろ姿を頼もしく見送る。
「あれが私の未来の……旦那様」
小さくつぶやく。

               *

薬局に寄って、妊娠検査薬を買って帰る。
マンションに帰ると早速トイレに入って検査薬の箱から説明書を取り出して目を落とす。
「えっと? オシッコをここに掛けて1分間待つのか?」
スカートを捲りあげてショーツを下ろすと自分の女性器を見ながら判定機を差し出す。
「なんだかドキドキするな」
股間に判定機を差し出しながら股間の力を弛めると尿道からオシッコが出始める。
先端にオシッコを掛けながらその様子をじっと眺める。
かけ終わるとキャップをして検査薬を脇に置く。 判定が出るまでの一分間が長い。
股間をペーパーで拭いただけでショーツもあげないまま、検査薬を見つめ続ける。

……
………
なにも出ない……
「陽性だ。 妊娠してない。 本当に遅れただけだったんだ ハハハッ」
私は笑って、前屈みに座った体勢で膝を台にして両手で顔を覆う。
………… 
あれ? がっかりしてる? なんでだ?
え? えっと…… ちょっと待て? 妊娠してた方が良かったのか? え? あれ?
そして…… そのままの体勢で私は一緒に持ち込んだ社長から渡された書類ケースを見て考え続ける。
私は女だと言いながら心の隅で男である事を捨て切れていなかった。
だから戸籍が無いのを理由に山口との結婚を断ってきた…… つもりだったんだけど……
今はちゃんと偽物ながら戸籍を手に入れた。 結婚に障害は無い…… 
私は自分で思っている以上に女だったのかもしれない。 私は思ったほど男である事に執着してなかったのかもしれない。
私は便器に座ったまま自分の股間を眺めながら考え続けた。
本来、赤ちゃんが出て来る為にある自分の特別な器官を眺めながら……

社長は私のこの身体を娘を裏切った罰だと言った……
でも、私はこの身体をそれほど罰だと思っていない。 でも社長にとっては、この身体に閉じ込められていた2年間は地獄だったのだろう。 だが、私は違う。 この身体を私は気に入っている。 
ブラに包まれた形の良い胸を服の上から揉んでみる。 張りのある胸だ。
股間だって陰唇を指で広げてみると、男と数知れず関係を結んだとは思えないほど綺麗なサーモンピンクのワレメが見える。
この身体はあのオーナーが性エネルギーを取り込む為に作り上げた身体だ。 男を虜にする為のあらゆる条件を備えているのだろう。

多分、社長は私がこの女性の身体で居る事にやせ我慢をしていると思っているのだろう。 更に妊娠する事が悪夢だと思っている。 だが、私はこの身体が好きだ…… 
自分本来の身体を盗られてしまった事は悔しいが、それとはまた話が別なのだ。
その認識の違いを社長は理解できないらしい。

それにしても…… 妻が本気で私に惚れていたとは…… それと知っていたら、私の行動も違っていたのかもしれない。 変なストレスを溜める事も無く、そのまま意外と幸せな家庭を維持していたのかもしれない。
そうなると、社長はワルプルギスで私と入れ代わる事なく"娼婦の双葉"という地獄を味わい続ける事になったわけだけど……
「運命ってわからないよね。 何にしても、はっきり口で言わないと伝わらない事ってあるよなぁ……」
………
……


               * * *

夕飯が終わり、一日の家事を終えて風呂に入り、いつものように山口にベッドにもぐり込む。
ベッドには先に山口が入っている。
「お疲れ様、双葉」
山口が優しく私の頭を撫でる。
「いえ、大したことはありませんから」
私は笑って答える。
一見、普通の会話だが私達には別の意味がある。 つまり……「ヤりたい。いいかな?」「いいですよ」
それから、いつものように互いの身体をむさぼるように求め合う。
私に中に精を解き放ち、口づけしあって休憩タイムに入った時に山口が私に尋ねる。
「それで?」
「それでって?」
「赤ちゃんができたんじゃないの? 確かめなかったのかい?」
山口が優しく問う。
「えっと、やっぱり早合点でした。 ちょっと生理が遅れただけだったようです」
ちょっと照れくさそうに舌をだして答える。
「そぉかぁ。 ちょっと残念」
そう言って私の下腹を優しく撫でる。
「あん…… 手が下に下がりすぎていますよ」
気づけば、山口の手がいつの間にか股間にまで降りてきていた。
「ふふふ」
悪戯っぽく山口が笑う。
「もう!仕方が無いなぁ。 ねぇ、俊彦さん?」
「ん?なんだい?」
山口が私の股間をクチュクチュと悪戯しながら聞いてくる。
「本当に私と結婚したいんですか? こうやって私に家事をやらせて、好きな時に好きなように抱いてる方が気が楽じゃありませんか? うっかり妊娠してしまうと好きな時に抱けなくなっちゃいますよ?」
悪戯っぽく尋ねる。 
が、内心はドキドキしている。 これを肯定されたら私は堪らなく失望してしまうだろう。 男を完全に捨てる勇気が萎えてしまう。
「僕はね。 双葉を絶対に手放したくない。 どうしようも無く双葉が好きだ。 理屈とかじゃないんだよ。 身体だけじゃ無く全てが好きなんだ。 それは双葉だってわかるだろ?」
「えぇ、まぁ……」
「そろそろ決めてくれた? 結婚? 僕の子供を産んでくれる?」
ゴクン
私は意を決して、つばを飲み込むとはっきりと言葉を口に出す。
「はい。 ……昼間からずっと考えてました。 私、俊彦さんの赤ちゃんが欲しいです。 大好きな人の子供が産みたいです! どうか、私に俊彦さんの赤ちゃんを授けて下さい。 私は俊彦さんと人生を共にしたいです」
私は顔を真っ赤にして恥ずかしい言葉を吐き出す。 男としての残っていた最後のプライドを捨て去る。
妊娠したい!俊彦さんに孕ませて貰いたい!大好きな人の赤ちゃんが産みたい! そしてこの人と生きて行きたい! 女としての欲望をはっきりと言葉にする。 私はいつしか泣きながら俊彦さんの胸に縋り付いていた。

その日、全てを吐き出した私は"謎の女"でも"娼婦の双葉"でもなく真の意味で俊彦さんの女になった。

               * * *

3ヶ月後、私は純白の花嫁衣装をまとって教会のバージンロードを歩いていた。 

母親代わりに花婿の元まで手を取ってくれるのは仲人をしてくれた上杉社長の奥様。 
つまり、なにも知らない私の元妻だ。 本当は男親が手を取るものだが、社長が嫌がらせでそう仕向けたのだ。 自分の妻に送り出される気分というのも複雑だった。
オマケにドレスの裾を持ってくれるのは私の娘だ。 なにも知らずに、綺麗に着飾った父親のウェディングドレスを嬉しそうに持って付いて来る。
「お姉ちゃん、綺麗だよ」
「そう?ありがとうね」
私はなにも知らない娘に優しく笑顔を向けて微笑む。

そう、私は妻と娘に送られて俊彦さんの元に嫁いでいくのだ。
そして、今の私のお腹の中にはまだ3ヶ月だけど俊彦さんの赤ちゃんが宿っている。 
社長がそれを楽しそうに見ている。 趣味が悪いといえば悪いなぁ。 まぁ、女である事を完全に認めた今ではそれも気にならないけど。

結局、私は男としての頂点は掴み損なってしまったが、女性としての幸せは手に入れたのだ。
私は純白のウエディングドレスに身を包み、妻に手を取られて付き添われ、娘に送られて新郎の俊彦さんの前に立つ。
「俊彦さん、双葉はとっても幸せです」
「ふふ、もっと幸せにしてあげますよ。 暖かい家庭を二人で作り上げていきましょう」
俊彦さんが優しく微笑んで唇に軽くキスをする。
「はい!」
私はとびきりの笑顔で返事をする。

               E N D
















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