河童と嫁取り
 作:teru



2.チンコ奪回行

そして、翌日の早朝。


「さてと。それじゃ行くか」
俺はナップサックを背中に背負って、家の玄関に立つ。


「なんだ?高校の遠足か?」
俊秋あんちゃんが俺を見て呆れた様な顔をする。


「仕方がないだろ?着ていく物がこれしかないんだから。 体型が微妙に変わって切れる物がないんだよ」
俺はそう言って、自分の姿を見下ろす。


着ている物は高校時代のジャージ。他にも無理すれば着られる服はあったのだが、ダブダブだったり、窮屈だったりで無理なく着られる服はこれしかなかったのだ。
何しろ、これから山歩きをしなくちゃならないんだから、歩く障害になる可能性のある服は避けたかったからな。


背負っているのは中学の時に使っていたナップサック。中にはお弁当と乾いたタオルが多数、他にも山歩き用のアイテムが少々。


「ところで、清彦?少々聞きたいが、そのジャージの下は?」
「ん?Tシャツだけだけど?軽装過ぎるかな?夕べ、聞いた話だと清美沢はそれほど奥じゃないって話だけど?」
そう言いながらジャージとTシャツを一緒にペロンと捲ってみせると、すっかり白く変わり果てたお腹が顔を出す。


「ブラは?まさかと思うが、下は?」
俊秋あんちゃんがそう聞いてくる。


「しないよ!女じゃないんだから始めっから持ってないし!まさか、母さんの下着を付けるワケにも行かないでしょ?」
下もペロッと少しだけ下ろしてみせる。柄物のトランクスがちらりと見える。


「なんて色気のない……」
俊秋あんちゃんが顔を押さえて、残念そうに首を振る。


「いや、色気なんて要らないから? てか、なんであんちゃんがここにいるの?ついてこない様に夕べ、頼んだよね?」
俺は俊秋あんちゃんに抗議する。


「さすがに今の清彦を一人で山に行かせるわけにはいかないだろ?一人で行って、何かあったら困るだろ?林道のそばの作業小屋まではついていくからな。そこから先の沢までは清彦が一人で行けばいい」


そういって笑って、俊秋あんちゃんもリュックを背負う。


「作業小屋?」
「沢の上の方に、遠見さん家の作業小屋があるそうだから俺はそこで待ってるよ」


「遠見さん?あんなところにそんな小屋を持ってたっけ?」
「松一朗さんの方じゃないよ、弟の竹治朗さんのほうだよ。あの人は山歩きが趣味みたいな物だから、山で取ってきた物をあそこで保存したりしてるんだ」


「勝手に使っていいの?泥棒だと思われない?」
「大丈夫、ほら?竹治朗さんは夏場は……」


「あぁ……」
俺は納得する。竹治朗さんは温厚ないい人なのだが、股間に恥ずかしい病気を持っていて股間が蒸れる夏になると重傷で動けなくなるのだ。いわゆる陰菌持ち……。


そう言や、竹治朗さん、祭りの前に痒みに耐えられずにアソコを掻きすぎて病院に担ぎ込まれたって聞いたな、お気の毒に……(^^;




「そ、あそこの主は今は居ないし、小屋にも何も取られる様な物は置いてないはずだから問題はない。俺はそこで待ってるから、もし何かあったらこれを使え」
そう言って、あんちゃんが発煙筒を俺に渡す。


俺は素直にそれを受け取って、ナップサックに入れる。


「そうか。それじゃ好意はありがたく受け取るよ。実は一人で山に行くのは多少の不安があったんだ。ありがとう、あんちゃん」


「いやいや、可愛い妹分のためならこれくらい」
そう言って、俊秋あんちゃんが笑って歩き出す。


ちなみに、うちの本物のあんちゃんは青年会の副会長として、清音さんに昨日の祭りの後始末の補佐と打ち上げパーティの準備を手伝わされるので抜けられなかったのだ。


「あんちゃん?妹分って、俺を女にとして認めてしまってないか?俺は男だからね?妹でもなければ嫁でもないからね?」
そう言いながら、俺も俊秋あんちゃんの後を追いかける。




陽が高くなった頃、俺たちは作業小屋に着いた。


車で来ると早かったのだが、林道に車を駐車しておくだけのスペースが無い上に、作業小屋まで車で来ると、そのエンジン音を聞きつけて河童が逃げてしまわない様にする為に麓に車を止めて歩いたから、時間が掛かってしまったのだ。


林道を外れてここまで来る間、俺たちはなるべく音を立てない様に、声を出さないようにしてきた。


そっと、小屋の扉を開けて俺たちは中にはいる。


「さて、ここからは清彦一人で沢に降りていく事になるけど、大丈夫か?」
俊秋あんちゃんが小さくそう声をかける。


「大丈夫、少し笹があるけどそれほど難所じゃないから。ここからでも沢が見えているし、急勾配も無いと思う。音さえ立てる事に気を付けていれば大丈夫だよ」


「そうか?婆ちゃんの話だとここから少し上流に行ったところに小さな滝があって淵になってるから、河童はそこで良く座っていたそうだ。婆ちゃんの頃と地形さえ変わっていなければ、そこにいるらしい」
俊秋あんちゃんが小声で婆ちゃんから聞いた情報を教えてくれる。


「わかった。それじゃ行ってくるから、あんちゃんはここで待ってて」
そう言って、俺はそっと手を振って作業小屋をでる。


沢に降りて河童に見つかってしまうと水の泡になるので、沢に沿って静かに上流を目指していく。


「しかし、本当に居るんだろうな、河童のヤツ。これで捕まえるどころか見つける事も出来なかったら俺ってすっごくマヌケなマネをしてる事になるんじゃね?」


ぶつぶつと小声で愚痴をこぼしながら、沢に沿って上流に上っていく。
道が悪い為に身体が揺れるのはいいが、そのたびに胸がぷるんぷるんと上下するのがなんとも気になって仕方がない。


「我慢して洋品店によってブラを買った方が良かったかなぁ?でも、店のおばちゃんに聞かれて事情を話すのも恥ずかしいし、面倒だったからなぁ」


胸を気にしながら、川を上がっていくと水音が次第に大きくなり、3m程度の高さの滝というより段差が前方に見えてくる。


「あそこか?」
俺は慎重に沢の方に降りていく。音を立てない様に、気配を気取られない様に……


笹を揺らさないように、音を立てないようにして、慎重に沢全体が見渡せるところまで降りると滝の周りを観察する。


「河童ってんなら、やっぱり水の中に潜んでるのかな?」
周りを身ながら水辺に近寄ろうとした時に、俺はそれに気づく。


滝のそば。大きな石の上に緑色の生き物が昼寝をしている。よく見れば石の下には一升瓶が転がっている……


「マジでどこかの家から酒を盗んできたのか。しかし、酔っぱらって寝ている様だからチャンスと言えばチャンスだな?」
俺はナップサックをそぉっと地面に下ろすと、中から乾いたタオルを何本か取り出し、河童を捕まえる為に持ってきたロープを肩に乗せる。


川の音で歩く音が上手い具合に消せるが、それでも慎重に砂利を踏む音を立てない様に慎重に近づいていく。


川の中に逃げられたらおしまいだ。例え捕まえても、河童は怪力だから放っておいたら力業で川に逃げ込まれる。捕まえた瞬間、タオルで頭の皿の水を引き取って、河童を無力化させるんだ。


婆ちゃんの話によると、皿の水さえ無くなってしまえば河童は幼児程度の力しか出せなくなるそうだ。


慎重に、慎重に…… 河童はこちらの存在に全く気づくことなく昼寝をしている。
俺はタオルを握りしめて、中腰で石のそばまで近寄る。


もう少し、もう少し…… 俺は慎重に河童の腕に手を伸ばす。


がつっ!


俺は河童の腕を掴むと、川に飛び込まれない様にこちら側に落とし、河童の頭を抱え込む様にしてからタオルで頭の皿をグリグリとなで回す!


「この野郎!捕まえたぞ!俺をさっさと戻せ!!」


「うわっ!なんだケロ!一体何が起こったんだケロ?」
目を覚ました河童が俺の腕の中で暴れる。
しかし、すでに頭の皿の水を拭き取られた河童に逃れるだけの力はない。


俺は肩からロープを外して河童をぐるぐる巻きに縛り上げる。


「何をするケロ!放すケロ!」
河童が俺を睨みつけて抗議する。


俺はそれ以上の怒りの目で河童を睨みつける。
「うるさい!俺の身体を元通りにしろ!」


「え?」
河童が俺の剣幕にたじろぐ。


「夕べの前にチンコを盗られたせいで俺はこんな身体になっちまったんだぞ!」
俺はふん縛った河童を川から離れたところまで引っ張っていき、ロープの先を木にしっかりと括り付ける。


「え?お前、誰だケロ?」
河童は心当たりがない様な顔で尋ねてくる。


「だから、夕べお前にタマとチンコを盗られた男だよ! お前にチンコを盗られたせいで身体がこんな風に変わってしまったんだよ!知らないとは言わせないぞ?」
俺は河童を睨みつける。


「……知らないケロ? ……夕べは村が明るくって賑やかだったから様子を見に村に降りていったら、留守の家が多かったので何軒かの家の中に入って、お酒をもらって…… それを飲んでるウチに気持ちが良くなって…… やっぱりお前とは会って無いケロ?」


お婆ちゃんの想像が大当たりかよ?それにしてもこの野郎、酔っぱらって夕べの事を覚えていやがらねぇ!


「会ってんだよ、夕べ!そしてお前は俺のタマとサオを尻子玉とキュウリだと言って持ってちまったんだよ!そのおかげで俺の身体は何故かこんな女になっちまったんだよ!」
俺は顔を近づけて怒鳴りつける。


河童がたじたじとなって聞き返す。
「オラが?アンタのタマを?え?アンタ女の子じゃないケロ?」


「男だよ!だからさっさと元に戻せって言ってんだろ!それとも戻せないのか?」
「いや、オラが本当にアンタのモノを盗ったのなら、それを付け直す事は出来るけど…… 本当にオラが?男のモノをとったケロ?」


「盗ったケロだよ!元に戻せるんなら結構。さっさと元に戻してもらおうか?」


「でも、勿体なくないケロ? 見たところ、顔は可愛いし、胸も大きいし、お尻も魅力的だケロ?男なんかに戻るのは勿体ないケロ?」


「巫山戯るな!俺は女なんかにはなりたくないんだよ!お前のおかげで俺は夕べ、嫁ぎ先を決められそうになったんだぞ?まさか、本当は元に戻せないなんて言うんじゃないだろうな?」
そう言って河童の頭に乾いたタオルを乗せる。


「ひぃ!やめるケロ!思いだしたケロ!確かに昨日、誰かの尻子玉を抜いたような気がするケロ! 戻せるケロ!取ったモノをそこに当てればひっつくケロ!」
河童が頭を動かして頭の上のタオルを振り落とす。


「だったら、さっさと戻せ?嫌なのか?」
「嫌じゃないケロが……」


「だったら、戻せ」
「取ったモノさえあれば戻せるケロ」


「じゃ、戻せよ?」
「戻せるケロ。 取ったモノがあれば……」


「…………」
「…………」
俺と河童がじっと無言で顔を見つめ合う。


「…… 無いのか?俺のアレ?」
「…… 無いケロ」


「…………」
「…………」
俺と河童が再び、じっと無言で顔を見つめ合う。


「なんでだよ!!お前が持ってたんだぞ!どこかに捨てたのか!探し出して拾ってこい!」
俺は河童に怒鳴りつける。


「ひぃぃ!捨てたモノなら拾ってこれるケロぉ!」
河童が俺の怒りの目から顔を反らして、涙目で叫ぶ。


「? どういう意味だ?」
俺は河童の言葉に嫌な予感を覚える。


「酔っぱらって食べちゃったケロ……」
気まずそうに河童が口を開く。


「……巫山戯るなぁ!河童に俺のチンコが食われただぁ?!信じられるかぁ!」
「巫山戯てないケロぉ!夕べ気が付いたらよく判らないモノがそばにあったケロ!食べ物だと思ってお酒のおつまみにしたケロ!」


「チンコなんて食えるわけないだろ!」
「でも食べちゃったケロ、薄切りにしてポン酢を掛けて食べちゃったケロ」
河童が一升瓶の転がっているそばを顎で示す。


そこにはポン酢の容器が包丁と一緒に転がっていた。 
……あ?あんちゃんの好みのメーカーのポン酢だ。……って、そうじゃない!


「おまえぇぇ!マジかぁ!!!!俺のチンコはナマコじゃねぇぇぇ!おかげで俺はずっと女のままかぁ?!」
俺は河童の肩を掴んで睨みつける。


「ち、珍味だったケロ。それに大丈夫だケロ、赤ちゃんはちゃんと産めるケロよ……?」
河童が俺の剣幕にたじろいで、怯えた目でそんな事をほざく。


俺は怒りのあまり、近くの石を握りしめる。


「貴様の罪を数えろぉ!お皿ブレイクゥ!!」
問答無用で河童の皿に石を握った拳を叩きつけようと振り下ろすが、河童が転がって身をよける。


「あ、あぶないケロォ! お皿に当たって割れたら、いくら河童でも死んじゃうケロよぉ!」
俺の行為に河童が目を丸くして驚く。


「一度目が避けれたからって二度目、三度目が避けれると思うなよ!!」
もう一度、俺は拳を振り上げる。


「わ、わ!そんな思いっきり振りかぶっちゃ駄目ケロ!わかったケロ、わかったケロ!何でも言う事を聞くから勘弁して欲しいケロぉ!お願いだケロ!お皿だけは勘弁してケロ!」
河童が必死に赦しを乞う。


「なんでも?」
俺は振り上げた腕を下ろして河童を睨みつける。


「なんでもだケロ!何でも願いを叶えるから赦してケロ」
泣きながら河童が頭を下げる。


「だったら、俺を男に戻せ。このままじゃ俺は本当にどこかに嫁に行かされてしまうんだぞ」


「わかったケロ!戻すケロ!戻すからもう少し待って欲しいケロ!」
「戻せるのか?嘘じゃないだろうな?」


「近いモノに戻せるケロ」
「近いモノ?」


「もうすぐ、夕べ食べた物が出てくるからそれをくっつければ元に戻るケロ。ただし、お湯に浸かったりすると溶け出してしまうから注意するケロよ?」


「……な」
「な?」
河童が首をかしげて、俺の続きを待つ。


「何が哀しくて河童のウンチを股間に付けて生きて行かなくちゃならねぇんだ!しかも風呂に入ったら溶ける?俺は河童のウンチを付けたまま一生、風呂に入れないのかよ!」


「あ、あはははは、行水も注意して欲しいケロよ?あと、乾燥しすぎも良くないケロ?」
河童が引きつった笑い声を上げる。


「あはははは……」
俺は同じように笑いながら木に括り付けたロープの先を解く。


「あははは……、えっと?何をするケロ?」
河童が、河童の小柄な身体を持ち上げた俺に尋ねる。


「お前が俺のモノを食べたんなら、俺だってお前を食っていいよな?村の居酒屋に持っていって、鍋にして貰う。お前の生き血って精力増強の薬になるんだってな?」


「ま、待つケロ!!オラはスッポンじゃないケロ!食べても美味しくないケロ!マル鍋にしても無駄だケロ!!」
俺の肩に担がれた河童が藻掻く。


「あはははは、謙遜、謙遜。聞けばお前、元は水神様っだったそうじゃないか?スッポンなんて比べものにならないほど美味いし、効能も抜群だって。 案外、チンコも生えてきたりするかも知れないだろ? 何しろ、腐っても神様の端くれだったんだから?」


「神様を食べちゃ駄目ケロ!神殺しは大罪ケロぉ!!」
「大丈夫、大丈夫、東南アジア系では唐揚げにして普通に食ってるから」


「オラはカエルじゃないケロ!」
「ケロケロ鳴いてるじゃないか?」


「わかった、わかったケロ!本当に元に戻すケロ!完全な男に戻せばいいケロ?元に戻すからこのロープを解いて欲しいケロ!」
俺の肩の上で暴れる河童。


「巫山戯るな、ロープを解いた途端に逃げ出す事くらい子供でもわかるぞ?」
「逃げないケロ!河童は悪戯はしても嘘は吐かないケロ!自由にしてくれたら、男に戻すケロ!」


必死に懇願する河童の様子に俺は少し考えて、河童を肩から下ろす。
「本当に戻せるんだろうな?変な代用品で誤魔化したりしないだろうな?」


「しないケロ!ただ、用意があるから少し待ってて欲しいケロ」
ロープを弛めてやるとそんな事を口にする。


「言っておくが、もしお前が逃げたりしたら俺にも考えがあるからな?」
「考え? なんだケロ?」


「ここらの山はウチの村の大地主の持ちものだ。次期当主の清音さんは人集めの為なら何でもやる人だ。お前が逃げたら清音さんをそそのかしてここから河童淵まで観光レジャー施設を建てさせて、人で一杯にしてやる。河童なんて棲む余裕も無いほど人で一杯にしてやる」


「イ、イヤなマネをするケロ…… 大丈夫ケロ、おいらは約束した事はちゃんと守るケロ。少しの間、ここで待ってるケロ」
そう言って、河童は沢に飛び込むと下流に泳いでいってしまった。


「本当に信じていいんだろうな?」
俺は河童が昼寝をしていた石に近づくと、よいしょっとその上に腰掛けて沢の方を向く。


沢に流れる水を眺めながらポツリとつぶやく。
「あの野郎、自信満々に言ってたから戻れると思っていいんだろうな」


そう思うと今の自分の身体に興味が出てくる。


そっと、ジャージの胸元を引っ張る。
その中には見事な白桃が二つ。


「いや、なんか余裕が出てくると自分の身体に興味が出てきたり……」
ジャージの上からそっと手を当てて押してみる。水風船を二つ入れてる様な弾力が心地よかったり……


「夕べは半分パニックに陥ってたから自分の身体を落ち着いてみるよゆうなんてなかったもんな?風呂だって、お湯をかけてすぐに湯船に飛び込んじゃったし、自分の身体なんて殆ど見てないし、さわってないもんなぁ?」


きょろきょろと周りを見渡したあと、ジャージの上をペロンと捲りあげる。真っ白なお腹が出てくる、その上にはふくよかな肉まんが……


捲ってもジャージが邪魔で全体は見えないなぁ?いっそ脱いじまうか?どうせ、周りには誰もいないんだし?
腕をクロスさせてジャージを頭から引き抜く。


誰もいない河原で半裸で日向ぼっこをする痴女が一人……


「本当に女の子だよなぁ?他人だったら、俺が嫁さんにもらいたいくらいだよ。畑仕事でかなり陽に焼けてたはずなのに、見事に白くなってるよなぁ?これも河童の神通力の仕業か?」
両手で二つの固まりを下からすくうように持ち上げる。


タプタプとした男には味わえない感触を楽しむ。


「下の方も……」
暫く胸の感じを楽しんだあと、ジャージの下の方に手を伸ばそうと視線を下に向け……ようとしたら、端っこの方で岩に手を掛けて、沢から身を出している生き物が一匹……


「…… 何をしている?」


「あ、気にしなくていいケロよ?おいらの方は待ってるから続けてケロ?」
そう言って、手を振る河童。


「続けてケロじゃねぇよ!帰ってきたなら言えよ!馬鹿野郎!」
俺は恥ずかしさに顔を赤くして怒鳴る。


「いや、青空の下で健康的に自慰行為に励むのを邪魔しちゃ悪いかと気を使ったケロ。もういいケロか?」
そう言いながら河童が石の上に這い上がってくる。


「いいよ、馬鹿!おかしな気の使い方をするんじゃねぇ!それより本当に俺を男に戻せるんだろうな?」
俺は脱いだジャージを頭から被りながら確認する。




「せっかく綺麗なお乳なのにもう隠しちゃうケロ?勿体ないケロ。というか、戻しちゃうともう楽しめないケロよ?」


「楽しめなくって結構!ちょっと好奇心が湧いただけだ!戻せるのかって聞いてんだろ!」
俺は服を整えながら河童に再度確認する。


「戻せるケロよ。ほら、この通り?」
河童が差し出した手の平の上にはナマコ……もとい、チンコらしき物が乗っていた。


「これをお前の股間に合わせれば、たちまちひっついてその身体は男に逆戻りするケロ」
そう言って河童が得意げな顔をする。


「そうかわかった。それじゃ早速、元に戻してもらおうか?」


「わかったケロ。それじゃ下を脱いでお股をこっちに向けるケロ」


「え?股をお前の方に?」
「当たり前だケロ。それとも他の場所に付けて欲しいケロ?ちなみに元々あった場所より上目に付けると"女の子"の部分が塞がらずに残って男女両方の感覚が楽しめるケロよ?」


「俺をフタナリにしてどうする!ちゃんと男に戻すんだぞ?」
俺は立ち上がってジャージの下だけを脱ぐ。


「おや?色気のない下着だケロ?女の癖に男の下着を付ける変態さんケロ?」
「男が女の下着を持ってる方が変態さんだろ!」
そう言いながらトランクスも脱ぎ去ると河童に向かってM字開脚で座り込む。


「本当に戻しちゃっていいケロか? 続きはしなくっていいケロ?女の自慰を味わい尽くしてないケロ?」


「いいんだよ!ほら、さっさと戻せ!このポーズが恥ずかしいんだから!」
河童に向かってオマンコを突き出すって行為は、いくら相手が人間じゃなくっても恥ずかしい……


「お前がいいって言うならオラはいいケロ。迷惑を掛けたお詫びにそれが要らなくなったらいつでも取ってやるから、ここか河童淵でオラを呼ぶケロ。お前の前にだけは出てきてやるケロ」


「絶対に呼ばねぇよ。ほら、さっさと付けろ!」
そう言って股間をズイッと前に突き出す。


「女の子がはしたないマネをしちゃ駄目ケロよ?」
そう言いながら、河童がチンコを俺の股間に持っていく。


「ちょっと待て!」
俺は河童を制止する。


「なにケロ?やっぱり女に未練が出てきたケロ?」


「そうじゃねぇよ!お前、向きはそれで合ってるのか?」
俺は河童の持つチンコを指さす。


河童の持つチンコの先端が俺のマンコを狙っている。
「え? ……あはは、違ってたケロ。これじゃチンコがお前のマンコに入り込んじゃうケロ。あぶないケロ。もう少しでチンコがお前のマンコの中に子種をずぅっと出し続けるところだったケロ?」


「お・ま・え・なぁ?それは笑い事じゃねぇだろ?」
俺は慌てて河童の持つチンコから腰を引かせて退避する。


「あはは、そうケロね。これじゃせっかく孕んでもチンコがマンコを塞ぎっぱなしで赤ちゃんが出てこられなくなるところだったケロ」
河童が爛漫な顔をして笑う。


「巫山戯るな。そう言う冗談はシャレになんねぇんだよ」
「場を和ませて温める為の軽いアメリカンジョークだケロ」


「河童がアメリカンジョークなんて言うな。それに俺はコメディアンじゃねぇんだから場を温める必要はねぇんだよ!」


「心に余裕がないケロねぇ? 現代人の世知辛さがこんな田舎にも蔓延してるケロ……」
河童がぶつぶつ言いながらチンコの向きを持ち返る。


「お前が俺の心を苛立たせてるんだよ!現代人の世知辛さは関係ねぇ!」
そう言いながら、俺は改めて岩の上に腰を下ろす。


「それじゃいくケロよ?今度は間違いないケロ。もっと股を開くケロ」
河童の持つチンコが俺の股間に近づいてくる。俺はドキドキしながら股を大きく開いて、それを待ち受ける。




「失敗するなよ?」
「大丈夫、オラを信用するケロ」
そう言いながら河童が俺の股間にチンコを置く。


ぺたり


「ひゃ!」
まるでゼリーを落とされた様なペッタリ感が俺の大事な部分を襲う。


ポワンと俺の股間に乗ったチンコが光を帯びたと思うと、チンコの周囲に光が収縮し収まったと思うとチンコが俺の股間に帰ってきていた。


「戻った!ちゃんと触感もある!」
俺は半日ぶりのチンコを川に向けて……


「こらこらこら、待つケロ!そんなところにオシッコしちゃ駄目ケロ!するなら草むらの方に行くケロ!」
河童が慌てて俺を止める。


「仕方がないなぁ」
俺は岩から降りて草むらに近づくと思う存分、放尿する。


「あぁ、やっぱり男はいいよなぁ。下半身全部、膝まで下ろして座り込むは。終わったら終わったで紙で拭かなきゃいけないは…… 女と比べて面倒がないもんなぁ」
俺は男の悦びに浸りながら放尿の開放感に浸る。


「これでいいケロね?胸の方もすぐに萎み始めるケロ」


「なんだ?すぐに無くならないのか?」
そう言いながら俺はチンコの先を振って、トランクスの中にその大事な宝物を仕舞う。


「膨らんだ時も少し時間が掛かったケロ?逆も一緒だケロ」
「確かにそうか……」
俺はジャージのズボンを引き上げて、身体を改めてみる。
胸がまあ膨らんでいるが股間にあの安定感は戻ってきている。


「うんうん」
俺は満足げにうなづく。


「それじゃ、オラはもう行っていいケロね?」
「あぁ、もう悪戯はするなよ?」


「わかったケロ、河童鍋や河童の唐揚げにはされたくないケロ」
そう言って、水に飛び込もうとする河童を呼び止める。


「おい!もしコレに何かあったら呼べば出てくるんだろうな?」
俺が自分の下半身を指さし、河童に尋ねる。


「河童は約束は守るケロ〜」
そう言って河童は水の中に帰っていった。


後に残されたのは、まだ胸はあるが男の姿の俺。


「はぁ〜、これで万事解決だな。一時はどうなるかと思ったよ」
俺は安堵のため息をひとつ吐くと、踵を返して来た道を戻り始めた。





沢に沿って山道を小屋まで戻ってくる。


小屋の近くまで来て中に向かって声を掛ける。
「あんちゃん、お待たせ〜。無事に元に戻れたよ〜!」


………… あれ?返事がない?どこかに出掛けたのかな?


俺は小屋の戸を開けて中を見る。


「えっ?」
誰かが中でうつ伏せに倒れている! しかもズボンを半分ズリ下げて……って、おいおい、必然的にそれは顔が見えてなくっても俊秋あんちゃんだろ?




俺は慌てて、俊秋あんちゃんに近寄って、身体を仰向けにして助け起こす。
「あんちゃん!あんちゃん!大丈夫か?どうしたんだよ!?」


「う、うぅ…… 窓から突然、小さい影が飛び込んできて当て身を喰らわされて…… そこから先は……」
頭を振って俊秋あんちゃんが答える。


むにゅ
俊秋あんちゃんの胸に当たった手がありえない感触を伝える。


「あ、あぁぁ!俺の下半身が!アレが!アレがないぃ!」
俊秋あんちゃんが裸にされた下半身に気が付き叫び声を上げる。そこにはさっきまでの俺の股間と同じ物が……


「ない!ない、ないない!俺の身体が女になってるぅ?」
俊秋あんちゃんが身体中をまさぐって叫ぶ。


…… えっと、って事は今現在、俺の股間にぶら下がっている男の証は……動揺する俊秋あんちゃんを尻目に、俺の額に冷や汗が流れる。


考えてみれば、チンコなんてその辺に転がってるモノじゃないよな?山奥の木に生ってるとか、深山の清流を泳いでるとか? 取ってくるとすればやっぱり男の股間からで、あそこから一番近くにいる男と言えば……


俺はそっと自分の股間を服の上から撫でる。……短い付き合いだったかもな。




そして、俊秋あんちゃんが落ち着いてから、俺たちは再び清美沢を今度は二人で上がっていった。


            ・ ・ ・


結局、俺は呼び出した河童と再び一騒動起こして、チンコの予備は他の男から調達する以外に手はない事を納得させらされた。


つまり、俺のチンコはもうこの世のどこにも存在しない。男に戻りたければ、他の男に犠牲を強いるしかない。てか、他人のチンコを自分の身体に付けるってのも抵抗があるよな、知ってしまえば。




そして、俺は股間のチンコを俊秋あんちゃんに返した。


いや、まさかこの歳になるまでチンコってこんなに気軽に貸し借りできるものとは知らなかったよ?




            ・ ・ ・




そして、その年の秋、俺は俊秋あんちゃんの元に嫁いでいった……




           おわり










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