佳代さん 番外編 私の掴んだ幸せ



「俊彦ちゃんかぁ?可愛いわねぇ、この子を清彦君が産んだんだ?」

ベビーベッドに寝かせた赤ん坊を覗き込みながら俺の姿の佳代さんが微笑んで話しかける。

俺が俊彦を産んで一ヶ月、久しぶりに佳代さんが訪ねてきた。


俺と佳代さんが入れ替わって七年の時間が経っていた。
さすがに、これだけの歳月が流れるともう元に戻る事は諦めていた。そして、ついに俺は先月、俺の旦那様である俊秋さんの赤ちゃんを出産した。


「可愛いでしょ?本当だったら佳代さんが産むはずだった赤ちゃんですよ。そう思うと余計に愛しくなりませんか?」
俺は佳代さんに向かって微笑みながら、持ってきたお盆の上からアイスティーの入ったコップをビスケットと一緒にガラステーブルの上に置く。

「う〜ん、可愛いとは思うけど、そう言う感慨はないわねぇ。この子は間違いなく俊秋さんと清彦君の間に出来た子供で、私は何も関わってないもの」
寝ている俊彦の頬を指先で優しく撫でながら答える佳代さん。

「でも身体は佳代さんですよ?」
「清彦君には悪いんだけど、私はもう自分の事は清彦君だと思ってるの。だから、その身体はもう私の身体じゃないわよ。全て、清彦君のものよ」
そう言って笑う佳代さん。

確かに、俺もそうは思うけど、そう思ってしまう事が何か寂しい気がする……

「それよりさ?」
佳代さんの声に振り返ると、佳代さんが悪戯っぽい目をして俺を見ていた。

「なんですか?」
俺は佳代さんの横に移動してベビーベッドで眠る我が子を眺める。

「どうだった?初めての出産は?」
くひひ、そんな笑い声が漏れてきそうな笑顔だ。

「初めての出産って……」
俺はその時の事を思いだし、顔を赤くする。

「ね?ね?やっぱり痛かった?」
横を向くと、佳代さんが好奇心一杯で目をキラキラさせて聞いてくる。


俺は少したじろぎながら答える。
「痛いなんてもんじゃなかったですよ。死ぬかと思いました。分娩室で絶叫しまくりましたよ。俊秋さんによるとワケのわからない事を叫んでたそうです。俺は女じゃない!男なんだぁ!って」
いや、事実なんだけどね……

「ふふふ、貴重な体験だったよね?ずっと男の子をやってたら絶対に出来なかった経験だよ?」
そう言って隣の俺を見て悪戯っぽく笑う。

「一生、経験したくは……」
「なかった?」

「…………」
佳代さんの問いに続きが止まる。

目の前にいる我が子。
自分のお腹の中で大きくさせて、あんなに痛い思いをしてこの世に生を受けさせた我が子。
初めて対面した時は、本当に感動した。自分が産んだ赤ちゃん。意味もわからず涙が出た。

「経験したくなかった?」
佳代さんがもう一度訪ねる。今度は真面目な顔で。

「いえ、経験して良かったと思います。 俊秋さんもすごく喜んでくれましたし……」
「うんうん、清彦君もすっかりお母さんねぇ」

「お母さんだなんて……、俺はまだまだですよ」
そう言って佳代さんに笑いかける。 

……でも、確かに七年に及ぶ歳月は俺を完全に"俊秋の妻"にした。
愛する人の赤ちゃんが欲しいと切実に願うまでに、俺を心身共に女性化した。

ふと、視線を感じて目を落とすと目を覚ました俊彦が俺たちを見上げていた。
「あらら、近くで話してたからうるさくって目が覚めちゃったのかな?ごめんね」

「いえ、多分ご飯の時間でお腹が空いたんでしょう」
そう言って、俺は俊彦を抱き上げるとそばの椅子に座る。

「あぁ、赤ちゃんはすぐにお腹が空くらしいわね」
「えぇ、3時間おきにお乳をあげないといけないから大変ですよ」
俺はそう言いながらブラウスのボタンを外し、ブラを持ち上げて胸を出すと俊彦に乳をふくませる。

「ふ〜ん?」
その様子を面白そうに佳代さんがみつめる。

「なんですか?」
俊彦に授乳をしながら顔を上げて佳代さんに尋ねる。

「すっかり、お母さんよねぇ。どう?子育ては大変?」
微笑みながら佳代さんが聞いてくる。

「まぁ、そうですね。大変ですよ。こうやって3時間事にお乳をあげなくっちゃいけないし、オシメも代えて、ウンチだらけのお尻も拭いて……、この身体もね。色々と…… 胸が張って痛いし、放っておくと胸からお乳が溢れてくるんですよ?」
そう言ってブラと乳の間に挿入れて置いたパッドを佳代さんに見せる。

「ほら?こんなに。うわっ、お乳臭い!」
自分の胸に入れておいたパッドを鼻に近づけて顔をしかめる。

「……楽しそうね?」
テーブルの前に座ってアイスティーを飲みながら佳代さんが笑う。

「ははは、そうですか?」
授乳の終わった俊彦の背をポンポンと叩いてゲップをさせるとベビーベッドの戻して、服を元に戻して佳代さんの向かい側に座る。

「まぁ、わからないところだらけですけどね。6年も佳代さんをやってきて女性としては完全に慣れたつもりでいましたけど、出産は別ですよ。妊娠してからこっちの一年は混乱の連続でした。 佳代さんの実家に頼ればいいんでしょうけど……」

「私ならあそこには絶対に頼りたくないわねぇ」

「残念ながら、俺もです。遠い上に針のムシロですからあの格式にこだわる家は。逆にストレスばかり掛かりそうで。 だから、わからない事がある度に本やネットを検索したり、恥ずかしいけど俺の母さんに頼ったり」
そう言って笑う。

「ね、本当に幸せ?」
佳代さんが尋ねる。この時になって、佳代さんの様子がいつもと少し変な事に気づく。

「幸せですよ?どうしたんですか、佳代さん?」


「う〜ん……えぇっとね……」
何かを口にするのを躊躇している。いつものさっぱりした佳代さんには珍しい事だ。

「なんですか?言って下さいよ?」
そう言って笑いながら、カラになった佳代さんのコップにアイスティーのおかわりを注ぐ。

「えっとね…… 結婚する事になったの……」
佳代さんが俺から視線を反らして、指先で頬をポリポリと掻きながら恥ずかしそうに答える。

「へぇ?結婚ですか?それはおめでと…… ぶっ! え?え!誰が!?え?」
俺は口に持って行ってたアイスティを吹き出す。

「う〜ん、……わたし」
佳代さんがテレ臭そうに言った……

「佳代さんが結婚? えぇ!!どこの男性と?」
佳代さんの意外な報告に俺はちょっとパニクってしまう。

「いや、私は男だから相手は女の子に決まってるでしょ」
そう言って佳代さんは笑った。

いやいやいや、笑い事じゃなくって、佳代さんが結婚するって事は俺の身体が結婚するって事で……

「えぇ!!誰と?てか、佳代さんまだ大学生でしょ?なんで!?」

「双葉ちゃんと…… 実は赤ちゃんが出来ちゃって……」
ははは、と恥ずかしそうに頬を押さえて笑う佳代さん。

佳代さんの口から出た女性は俺の幼なじみの女の子だった。
幼稚園からの付き合いで、佳代さんと入れ替わるまでは俺が仄かな想いを抱いていた女の子……

双葉も俺の事は好きだと言っていてくれた……、小学生のオママゴトと言ってしまえばそれまでだが、佳代さんほどの積極さには欠けるだろうけど、本当なら今頃は俺が双葉と……

「やっぱり、複雑よねぇ……」
俺が黙ってしまっていると、佳代さんが申し訳なさそうに呟く。


「佳代さんは…… 俺から全てを奪っていくんですね…… 母や父や、友達。幼なじみまで……」
思わず俺の口から恨み言のような言葉が漏れる……


「うん、ごめんね」
佳代さんが謝る。

「やっぱり、元に戻れるものなら戻りたいでしょうね」
佳代さんが俺に尋ねる。

元に戻れたら俺は幼い頃から想いを寄せていた幼なじみをお嫁さんに出来る……
でも、それは愛する旦那様を失うという事。愛しい我が子と決別するという事……

両方を手にすると言う事は不可能だ。現在、俺が手にしている幸せは佳代さんが手に入れていた筈の幸せだ。佳代さんは一方的に俺から奪っていったワケじゃない。俺だって佳代さんから大事なものを奪っている。

「戻れるものなら…… ダメですよね。身体だけ戻っても、培ってきた時間までは戻せませんから。
小学校を卒業したばかりの俺には、国立大2年の清彦はできません。 それに俊彦は俺が産んだ息子ですから、他人に渡したくはないし…… ごめんなさい、変な恨み事を口走ってしまいました」
そう言って、佳代さんに頭を下げる。

「いえ、清彦君の言う事は間違ってはいないから謝る必要はないのよ。私の方こそごめんなさい」
佳代さんが優しそうな笑顔で俺に謝る。

「あははは……、それじゃお互い様って事で。 それで双葉に赤ちゃんが?」
「うん、今4ヶ月、あと半年もすれば産まれる。俊彦ちゃんと同い年になるかな?それでお腹が目立つ前に結婚する事になったの。今、お父さん達と向こうの両親が式場を探してくれてる」
佳代さんが楽しそうに話す。

「2回目の結婚式ですか?」
「え?あぁ、そうね。一回目は新婦で二回目は新郎だけど。こんな経験した人って他にいないでしょうね」

「俺はおかげで一度も結婚式は出来ませんけど」
「え?清彦君もやっぱりウェディングドレス着たかったの?俊秋さんと離婚して再婚すれば結婚式はできるわよ?」
そう言って悪戯っぽく笑う。

「いやですよ。他の男の人と結婚なんて。それに俺は俊明さんを女として愛してますから…… そういえば、佳代さんは双葉の事をどう思ってるんですか? ちゃんと異性として好きなんですか?それとも同性愛?」

「同性愛って…… いや、さすがに昔は妹っぽい意識だったけど、7年も経てばちゃんと異性として双葉ちゃんを好きになったのよ?今だって、清彦君と話してる時は女性言葉で話すけど、それ以外はもう男として思考して、男言葉で話すもの。それは清彦君も同じでしょ?」

「まぁ、そうですね。普段は女言葉が自然ですし、思考は完全に主婦ですね。 それじゃあ、双葉はちゃんと男性として愛してるんですね。よかった。幼なじみが変な愛され方されてなくって」

「いやだ。まるで人を変態みたいに……」
「ははは…… それにしても双葉と佳代さんが……」
気持ちを落ち着ける為にアイスティーをグビッと飲む。

「うん、そう言う事になっちゃった。それで清彦君にちょっとお願いがあるの」
佳代さんが頬をさすりながら僕に微笑む。

「お願い?なんですか?」
「そう言うわけで来月に結婚式を挙げた後、双葉ちゃんはお嫁さんとしてウチに来るんだけど、母親の先輩として清彦君に相談に乗って上げて欲しいんだ。ダメかな?」
首をかしげる様にして俺に頼み込む佳代さん。 いや、19にもなった男が可愛い子ぶっても……

「てか、はぁ?母親の先輩?俺が?」
佳代さんの話に言葉を失う。

「先輩でしょ?俊彦君を産んだばかりの?ほら?清彦君なら今、経験してる真っ最中だからわかるでしょ?出産と子育てって不安で一杯だって?だから双葉ちゃんの力になってあげて欲しいの。 この近所で若いお母さんは清彦君だけだし、清彦君は"佳代さん"としてでも双葉ちゃんと知らない仲じゃないでしょ?」

「そりゃ、まぁ…… おばさんとはお母さん達と一緒の主婦仲間で、双葉はその娘としての付き合いですけどね……」

「ね?だからお願い。双葉ちゃんをよろしくね。これからはお互いに色んな意味で助け合えると思うから」
そう言って顔の前で手を合わせる佳代さん。

「俺と双葉がお母さん同士になるわけですか……」
「そう。イヤ?」

「イヤじゃありませんけど、複雑ですね」
俺の頭の中に、俺と双葉が赤ん坊を背負って隣と垣根越しで笑い合う姿が浮かぶ。
おばさんを介してではなく、直に双葉と知り合える。

それはそれで嬉しいけど。 ……同性だもんなぁ? ……母親同士としてだもんなぁ。


その後、色々とたわいのない話を佳代さんとした。


          * * *


夕食の支度をしながら色々と考える。

双葉と佳代さんが結婚かぁ…… まぁ、外見だけでいえば双葉と清彦…… お似合いと言えばお似合いだよなぁ。 途中で中身がバトンタッチしてるとはいえ、幼なじみ同士だから、周りからも祝福されるだろうし……

刻んでいるタマネギのせいで視界が歪む。

いやいや、わかってる。両方の幸せを手に入れる事は不可能だ。"俊秋さんからの愛"と"双葉への愛"理屈ではわかってる。 ……わかってるけど。

いつの間にか、手が止まってる。

ダメだ、俺は子供だ。身体は大人でも精神は未だに入れ替わった時の小学校を卒業したばかりの時のままだ。どうしても無い物ねだりをしてしまう。

そんな俺の持つ空気が伝播したのか、俊彦が目を覚まして泣き出す。

「ほぎゃぁ、ほぎゃあ」

「あ〜、起きちゃったか、俊彦。ほ〜ら、どうしたんだ?」
俺はベビーベッドで寝ている俊彦を抱き上げる。

「あ……」
俊彦のお尻の当たりが……

「お前なぁ?夕飯の支度中は勘弁して欲しかったぞ?」
俺はガスの火を弛めて、俊彦を抱きながら隣の居間に移動すると俊彦のオシメを外して、お尻を拭く。

「くちゃいぞぉ、俊彦ぉ。ほぉら、お尻をもっと上げないと綺麗にならないぞぉ」
そう言いながら、俊彦のお尻を綺麗にする。

 − 本当に佳代は子煩悩だよね。昔はそれほど子供好きには思えなかったけど。これならもっと早く
   赤ちゃんを授かっておけばよかったね。

俊彦の世話をする俺の姿を見て、にこにこと微笑みながら言った俊秋さんの言葉が浮かぶ。

わかってる、わかってるんだ。俺は一生を佳代さんとして生きていくのが幸せだって。

新しいオシメを取り出して、俊彦に装着。
「ほら。気持ちよくなっただろ? ついでにメシもいっとくか?その方がこっちも後で落ち着いて夕飯に専念できるし……」

そう言いながら、胸を出して俊彦に乳をふくませる。俊彦は喜んで俺の胸に吸い付く。まぁ、赤ちゃんは寝る事と食べる事が仕事だから食欲があるのは結構な事だ。


一生懸命、俺のお乳を飲む俊彦を見ながら考える。

もし、俺が「実は清彦だ」って主張したらどうなるだろう?誰も信じないだろうな。入れ替わりを信じてもらおうにも入れ替わった当事者の片割れ、佳代さんは敵に回るだろうな。 入れ替わった当初から"清彦"を嬉々としてやってるみたいだし…… 時々、思うんだよね。この"入れ替わり"に犯人がいるとしたら佳代さんじゃないのかって……

もし、何らかの方法で入れ替わりが証明されたとして……

元に戻る方法があるとは限らない。いや、たぶん戻る方法なんて無いのだろう。有れば、この7年の間に何かヒントの欠片のひとつも見つかるはずだ。

佳代さんの姿のまま、俺が清彦であることが証明されたら…… 

双葉と結婚…… 出来るわけがねぇ、身体は女同士なんだから…… 
このまま、俊秋さんと生活…… してもらえるのか?中身が男だと知られて…… ヘタすりゃ離婚……

ぞわっ! 自分のした想像に頭から血の気が引く。

全てを失ってしまう。双葉はおろか、今の幸せの元である俊秋さんさえ…… 絶対に知られちゃいけない。俺が清彦である事は口が裂けても言えない。

恋人としての双葉に未練はある。
でも、今の俺の姿ではどうしようもない。だったら、やっぱり女として、主婦として、新たな関係を築いて行こう…… 俊秋さんの妻として、隣の奥さんの双葉と大事に付き合っていこう……

「はぁい。もうお腹は一杯か?だったらゲップして寝ような」
俺のお乳から口を離した俊彦を抱いて背中を軽くポンポンと叩いてゲップをさせるとベッドに戻す。

嬉しそうな笑顔で俺の方に手を伸ばす我が子をじっと眺める。
この子は俺が望んで産んだ俊秋さんとの愛の結晶だ。

「……久しぶりに ……俊秋さんにおねだりしてみようかな? 俊彦を出産してからはずっとご無沙汰だったし?」

          * * *

そしてその日の食卓。

「へぇ?清彦君、結婚の報告に来たんだ?」
食事をしながら俺は昼間の事を俊秋さんに話した。

「はい、"双葉さんがお嫁さんに来るからよろしく面倒を見てあげて下さい"って」
「清彦君も出来婚とは、やるよねぇ」

「やりますねぇ。あっけらかんとした顔で報告するんですから、こっちが驚きです」
味噌汁に口をつけながら答える。

「でも、お隣は大変みたいだったよ。僕もお隣のご主人と帰りが一緒になって愚痴られたけど、双葉ちゃんの妊娠を報告されて大騒ぎで、清彦君を引きずって相手の家に謝りに行ったそうだよ?清彦君の顔が腫れてなかった?」

「え?顔?ひょっとして父さんに殴られたとか?」
「思わずビンタしたって言ってたよ。無責任な事をするな!って?」

そう言えば、佳代さん顔にやたらと手をやってたな?うわぁ、それはちょっと見たかった様な……
あの物に動じない佳代さんが父さんにぶたれるシーンなんて……

「まぁ、お隣もこれから人が増えて大変だね。来月にお嫁さんが来て、半年後には赤ちゃんが生まれる。佳代も隣のお母さんには色々とお世話になってるから、お返しをしないとね」

「えぇ、清彦君にも頼まれましたから」

「そうかぁ、俊彦も近所にいい友達が出来るな。男の子かな?女の子かな?」
「ははは、まだ4ヶ月じゃわかりませんよ」

「そうだね」
そんな事を話ながら食事を続ける。


本当に俺は幸せだ……、余計な欲をかかなければこの幸せはずっと続く ……筈だ。
「ねぇ、俊秋さん」

「ん?なんだい?」

「俺…… 私は俊秋さんの奥さんよね?」
自分の身分を確かめる様に尋ねる。

「ん?当たり前じゃないか?佳代は僕の大切な奥さんだよ?」
「私の事を愛してますか?」

「? 今日の佳代はおかしな事を聞くね?当たり前じゃないか? 僕は佳代が大好きだよ?この世の何よりも愛してる。佳代は僕の大事な愛妻じゃないか?」

「例えば、悪い魔法使いに化け物に姿を変えられても愛してくれますか?」

「う〜ん、外見も確かに大事だけど、僕は佳代がどんな姿になっても大丈夫。 そうだね……、例えば今の佳代が実は中身が男の子と姿が入れ替わってしまっていた、とか言われても僕の愛した佳代は君だ。その愛は絶対に代わらないと誓えるよ?」

そう言って、俊秋さんが私に微笑む。でも、俊秋さんは知らない。冗談で例えとして偶然に使った話がどれだけの真実を含んでいるか。本当に私が男の子だと知っても愛してもらえるのだろうか?

そんな事を考えてしまったら、逆にすごく不安になってしまった。
赤ちゃんを産んでしまった男の子を気味悪く思われないのだろうか?
中身が男の子と知っても本当に愛してもらえるのだろうか?

「ごちそうさま。今日も美味しかったよ」
そう言って、何も知らない俊秋さんは私に笑いかけると自分の食器を流しに持っていく。

私は思わず立ち上がり、そんな俊秋さんを背後から抱きしめる。

「ん?佳代?」

「抱いて下さい。私が俊秋さんの奥さんだと言うことをこの身体に刻みつけて下さい」
「えっと……、どうしたの?何かあったの?」
私の突然の行動に俊秋さんが首を廻して戸惑ったように尋ねてくる。

「べつに何もありません。ただ、急に私が俊秋さんの奥さんだって事を噛みしめたくなっただけです。
俊彦が産まれてから、夜の夫婦生活もありませんでしたし……」

私の様子に何かを感じたのだろう。俊秋さんが振り向いて逆に抱き返してくる。

「佳代は何があっても僕の奥さんだよ。君が言葉だけでは不安だというならいくらでも抱いてあげる。
何が君を不安にさせているのかはわからないけど、それで君の不安が払拭されるなら、今夜はいやって言うほど愛してあげる」

「俊秋さん……」
私が顔を上げると、俊秋さんが黙って私の唇を奪い、そして私は俊秋さんに身を任せた……




          E N D




「うわぁ!おっぱい!おっぱいに吸い付かれたぁ!」
「どうしたんだ、佳代?」
俊秋さんが私の胸から顔を放して聞いてくる。

「俊秋さんが私のおっぱいにぃ!」
「いや、いつもやってるだろ?」

「だって、だって、今の私の胸は……」
「うん、俊彦を産んでから爆発するんじゃないかと思うくらい膨らんだよね」

ちゅっ
俊秋さんが私の乳首にキスをする。

「ひゃあ!待って、待って!胸はダメ!そこ以外でぇ!」
「ふふふ、佳代は今は胸が弱点なんだ?」

「ち、違います。ほら、俊彦を産んでから胸はお乳がよく出るようになってるから……」
「うん、そうだね。今もほら胸の先から……」

ちゅうっ!
俊秋さんが再び、私の乳房を口に含んで吸い込む。

「ひゃぁん!やめて!恥ずかしいですからぁ。お乳が出ちゃうからブラを付けていいですか?パットを当てておかないと垂れてきちゃいますから」
「だぁ〜め!ブラなんか付けてちゃ興醒めするだろ?大丈夫、垂れてきたら吸い取ってあげるから?」

「だから、それが恥ずかしいんです。私の胸から出てるんですよ?汚くありませんか?」
「え?なんで?これを俊彦は飲んでるんだよ?汚かったら飲ませられないだろ?」
ちゅうぅぅ

「ひぃぃ、吸われた!また吸われたぁ!お乳、私のお乳を〜」
「あはは、大げさだなぁ、佳代は。それにこれが汚いと言うなら佳代だって、時々僕のモノをゴックンしてるよね?」

「あ、あれは……」
「あっちの方が汚いよねぇ?何しろ、あそこはオシッコも出る場所だし、あれは飲み物ですらないんだから」
俊秋さんが意地悪そうに笑う。

「ち、違うもん。俊秋さんのは汚くないもん!」
私は涙目で訴える。

「あはは、いくつになっても佳代は可愛いよねぇ。僕の自慢の奥さんだよ」
そう言って今度は私のおっぱいを両手で揉んでくる。

「だ、ダメ、ダメですって!出ちゃう!揉んだら余計に出ちゃうからぁ!勘弁して下さい!」
「俊彦のお母さんなんだから胸からお乳が出るのは当たり前だよねぇ」
楽しそうに私の胸を揉みほぐす俊秋さん。その度に私の胸からお乳が……

その後、俊秋の授乳をしている時に俊秋さんにまたお乳を吸われた…… まさか、元男の私が親子してお乳を吸われる日が来ようとは思いもしなかった…… 



その日、昼間の悩みが嘘の様に、私はきゃあきゃあ騒ぎながら俊秋さんに愛されまくった。
あの俊秋さんの痴態は、様子がおかしかった私を俊秋さんなりに忘れさせようとしてくれたのだろう。

俊秋さんには珍しい痴態に私は最後には笑いながら、久しぶりのエッチをしまくった。



私は佳代。愛する旦那様と息子と幸せに暮らす主婦。隣の清彦君は清彦君で、自分の幸せを掴んでいけばいい。 幸せは一つあればいい。 それでいいんだ。今も、これからも。

一生、自分に与えられたこの幸せを大事にしていくんだ。











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