「秋山家の陰謀 番外編 継ぐ者たち、騒動する日常」 継ぐ者達 「発端」 「アキ、ちょっといい?」 夏休みの初日、家の食堂で遅い朝食を取っていると幼馴染みの青葉が声を掛けてくる。 「あのさ、相談があるんだけど…… って、何を嫌そうな顔をしてんのよ?」 「イヤイヤイヤ、何をおっしゃる清秋さん。私がいつ迷惑を掛けるような事をしたとおっしゃいますやら」 「いつと言われれば、一年365日殆どだけど…… で、相談ってなに?話だけなら聞くよ?」 「えへへ〜、あのね?体を交換しない?」 ぶふっ!げふ! お茶が喉の変なところに入ってむせ込む。 「はいぃ?!なんて?」 「青葉って時々意味不明な事を言うのは知っていたが……」 「いや、だからコレ」 「なに、これ?」 「俊彦爺ちゃんに?またおかしな物を渡すなぁ、つっか、また爺ちゃんの冗談だろ?担がれてんだよ、青葉」 「ンなバカな」 「信じてないなら、試しにやってみてもいいじゃない?何も起こらないと言うのなら何の問題も 「なぁ、青葉?お爺ちゃん他に何かこの薬について言ってなかった? 入れ替わったら戻れないとか?」 「却下!」 「なんでよう!薬が効いて体が入れ替わっても元に戻れるんだからいいじゃない?」 「うむむ、さすがは幼馴染み。こちらの考えはお見通しか?」 しかし、青葉はイタズラっぽく笑いながら言う。 「ふっふっふっ、アキくん、全ては手遅れなのだよ、この薬はすでにそのお茶の中に……」 「な、なに?おい、こら青葉!冗談だよな?」 * * * 「いやぁ、すごいわ、本当に入れ替われるとは思わなかった。すっかりアキの体よね、これ?」 そして、僕の体には胸に二つの重りと股間の喪失感があった。 ちなみにミニスカートで素足を晒している感じが大変心許ない。 「はい、はい、薬は本物でした。わかった。わかったからもう元に戻ろうね、青葉?」 「思わないよ!さっきの薬瓶はどこにやった?さっさと出せよ?」 「そう言いながら、なんで青葉はテーブルを回り込んでくるのかな?」 「知りたくない!だから薬瓶!」 テーブルを挟んでじりじりと睨み合う僕たち。 「アキちゃ〜ん、さぁ、こっちにいらっしゃ〜い」 「ばか言ってないで!さっさと体を戻せよ!」 「何を痛くしないんだよ?!怖い事を言うな!」 「何を痛くしないって、年頃の女の子に言わせないでよ、アキったら。ふふふ」 「大丈夫、アキは私に全てを任せて天井のシャンデリアの飾りの数でも数えてて。その間に全て終わらせてあ・げ・る」 その時、食堂の扉が開いて誰かが入ってきた。 「あらあら、何か楽しそうね?」 「清香婆ちゃん!助けて!」 「あら、どうしたの?青葉ちゃん?アキちゃんと喧嘩でもしたの?」 指さした先の青葉はというと、ありゃ〜と言うような顔をして笑っている。本当にこの娘は! 「え?清秋?え?青葉ちゃん? ……ひょっとして、爺ちゃんから何か渡された?」 今度は清香婆ちゃんを間に挟んで牽制しあう僕と青葉。 「ふふふ、そうなんです。 さぁ、アキちゃん、だから最後の仕上げをしましょうね〜、こっちにいらっしゃ〜い」 「あれ?」 「どうしたの?ばあちゃん?とにかく青葉をなんとかしてよ」 青葉がワケが分からないといった顔をするが、すぐに僕に向かって命令をする。 僕は反発して清香婆ちゃんの陰に隠れる。 「あぁ、そう言う事。 さすがに爺さんも”支配”を付加する方の呪文は教えなかったんだ? 「なに、支配権って?まだなにかあるの?」 「あ、青葉に支配される!? そ、そんな怖ろしい効果が!爺ちゃんの一片の良心に感謝したほうがいいんだろうか?」 「そうすると、青葉の言ってる事も本当? 処女を奪われると薬が効かなくなるって言ってるんだけど?」 「いや、男と寝る趣味はないから。で、戻る為には同じ事をすればいいの?」 青葉はその薬の小瓶を右手に持って、左手でおいでおいでをする。 「ね、婆ちゃん。青葉、本気で僕を襲うと思う?」 「う〜ん、微妙なところね。 でも、あの薬には催淫効果みたいな物があって、性衝動が抑えにくくなるから意思に関係なく襲ってくると思うわよ?」 「さぁ、アキちゃん。いい子にしてたら後で可愛いお洋服を買って上げる。 お友達とプールに行くための水着も買って上げる。 それで男の子を悩殺出来るわよぉ。 だから、こっちにいらっしゃ〜い」 「いや、それ”ご褒美上げる”って風に聞こえるけど、明らかにイヤガラセだよね?どちらかと言うと拷問だよね?」 「とりあえず、青葉ちゃんの魔の手をかいくぐってお薬を取り戻しましょうね。 それからでないと話が始まらないから」 「青葉ちゃん、そのお薬をお婆ちゃんにくれない?」 「アキちゃん、婆ちゃんは全力を尽くしたけど、力及ばなかったみたい。ごめんなさいね?」 僕は清香婆ちゃんを盾にして、扉に尤も近づく位置に来ると全力で外に駆けだした。 ・ 逃げ先は決めてあった。 自分の部屋が一番いいんだろうけど、青葉を閉め出し損なった場合、最悪になる。 そうなると、後はリビングだ。 今の時間ならまだあそこでは母さんズがお茶をしてるはず。 ・ 追いかけてくる青葉を巻いて、僕はリビングに飛び込む。 いきなり飛び込んできた僕に驚く母さん達。 僕は慌ててスカートの裾を治すと、清香婆ちゃんにしたのと同じ話を母さん達に話す。 ・ 「まぁた、あの爺さんはワケの分からないイタズラをして!」 「そうだよ、なんとかしてよ、母さん達」 「あ〜!母さんズに助けを求めるとは卑怯だよ、アキ」 「え?僕は清秋だよ、ほら?ほら?」 「何を言ってるの!さっさとその体をアキちゃんに返しなさい」 「う〜ん、さすがにアキの体を上げるわけにはいかないけど、暫く交換するだけならアキ次第だね。 青葉ちゃん、もうアキを襲わないと約束するなら僕は干渉しないよ?」 「襲わない、襲わない。 暫く借りるだけ。 薬のせいで襲いたくなっても理性で止めて見せます!」 「そんな!ほら、アキ。澄んだこの目を見て?嘘を言ってる目?」 「若葉母さん、何とか言ってやって下さい」 「ほら、青葉。アキちゃん嫌がってるじゃない。さっさと返して上げなさい」 「でも、ほら…… 母さん言ってたじゃない? 家のお手伝いを積極的にしてくれる娘が欲しかった、って?」 「でもね、私がアキの体を借りてる間は私の体に入ったアキがウチに来るんだよ?」 青葉に説教していた若葉母さんが僕の方を振り向く。 「ここに二人の娘が居るの。二人とも学業は学校で1,2を争う優秀さで文句なし。 ただし、片方の娘は服は脱いだら脱ぎっぱなし、洗濯すら自分でしない、料理をすれば焼け焦げだらけ、部屋は散らかり放題。 もう片方の娘は家事全般なんでもこなして、とくに料理はとても美味しいの。 その上、部屋はいつもキチンと片づいていてゴミ一つ無い環境が保たれているの。 さて、普通のお母さんはどっちの娘と暮らしたいと思うでしょう?」 えっと…… 気持ちは分からなくもないです、若葉母さん。 でも、いまはあえて…… 「えっと、前者の方が生活に張りが出ていいんじゃないかな〜〜?って……」 顔が笑ってますよ?若葉母さん? 「ね?満場一致。いいでしょう、アキ?襲ったりしないから暫くアキにさせてよ?」 「……暫くってどれくらい?明日まで?」 「ざけんな!一年も貸せるか!」 「それでも充分長すぎだよ! 確かに学校に行く日はあまり無いから支障はないかも知れないけど、友達と遊びに行ったりする約束はしてあるんだから」 「それは大丈夫。 アキの友達は私の友達でもあるんだし、私の友達もアキの友達だから一緒に行動しても何の問題も無し!」 あっさり、却下ですか。 そうだよね〜、僕が遊びに行くと何故かいつも青葉も一緒に付いてきてるんだから…… 迷った時点で僕の負けだった。 その夜、帰ってきた父さんズ&爺ちゃんも青葉に言いくるめられて、僕は高一の夏休みの間、青葉として生活するハメになった。 しかし案の定というか、何度か青葉には寝込みを襲われた。 こっちも相手の行動パターンは読めるから危機は回避出来たが恐るべし、青葉。 約束通り、元の体を返してもらったのは夏休みの終わる3日前だった。 若葉母さんは余程、僕の入ってる青葉が気に入ったのか、僕が元の体に戻るのを引き留めた。 『やはり娘っていいものなのよね〜』って……いや、青葉が正真正銘本物の娘で、僕は男なんですが? さすがに、もうプールサイドや浜辺をビキニで歩いたり、夏祭りを浴衣姿で連れ回される経験はもういいです。 『来年の夏休みもアキちゃん貸し出してくれない?』と双葉母さんに相談する声は聞かなかった事にします。 ・ ・ ・ 元の体に戻ったのはいいけど、副作用でしばらくの間は青葉を襲いたくなる衝動に駆られるのには参った。 そして、例の薬瓶は再び爺ちゃんの元に戻った。 家族は、もうそれは使う必要がないからと廃棄するように言ったけど、『面白いから』と言う理由で爺ちゃんはまだ保管しておくようにしたようだ。 とりあえず、青葉の方も1ヶ月以上も僕をやったら、それなりに満足したようだ。 E N D *************************************************** 継ぐ者達 「浴衣」 「アキ、用意出来た?」 「おぉ!アキの浴衣姿だ。かわいい!ねぇねぇ、アレやっていい?」 「おい!こら!帯に手を掛けるな!」 「あ〜れ〜、ご無体な。クルクルクル…… ってバカ!脱げちゃったじゃないか。どうするんだよ!」 「何を騒いでいるの?あれ?やだアキちゃん、何?その格好は? 青葉!またアキちゃんを襲ったの!あれほど言ったのに!」 「うん、まぁ…… 今回に限っては襲う意図はなかったかな?」 「はい、わかってます。泣き寝入りはしませんから」 「強姦魔でしょ!すぐにアキちゃん襲いたがるんだから。 それじゃアキちゃん帯を結び直して上げる」 「「ダメよ!アキちゃんは浴衣がいいの!」」 「親娘でハモりますか? どうせ毎年、青葉が着てるじゃないですか?今年くらい着なくっても変わらないでしょ?」 「……えっと、若葉母さん?今年は中身が男なんですが?」 END *************************************************** 継ぐ者達 「図書館」 「青葉!図書館に行こう!」 「うわっ!何よ、突然? 図書館って、確か朝、会ったときに課題の調べ物に行くって言ってなかった、アキ?」 「あぁ、それで男連れなら大丈夫と?私は用心棒代わりなんだ?」 「うん、まぁ行ってもいいけど…… その格好で図書館に行ったの?」 「いや、ヘンじゃないよ、よく似合ってる。さすがは青葉ちゃんの体、白い清楚なワンピースがお嬢様って感じだね」 「いや、母さんと買ったときはノリでね…… でも冷静になるとちょっと恥ずかしい感じが」 「え?ふ、ふん?アキ?ちょっと回ってみてよ?」 「うん、いいよ。 そうか〜、アキは今日はピンクのブラかぁ、ははは」 「うん、ピンクの線がくっきり」 「あ、ダメだよ。そのワンピースじゃなきゃ図書館に付き合ってあげない」 「まぁ、今はアキの体だしね。それにやっぱり図書館デートなら女の子はかわいい方がいいもん。だから、そのまま。さ、行こう」 「いや、待て!引っ張るな!やっぱり図書館は明日でいいから!今日はいいから!」 END *************************************************** 継ぐ者達 「水着」 「アキちゃん、はい、お土産!」 「なんだ、突然?」 「いや、僕は泳がないから普段着のままでいいよ」 「いや、ちょうどアノ日で……」 「でも、人の見てる前で水着になるのは…… うわっ!何、この水着!ビキニじゃないか?」 「いや、上がらされるのは僕だから…… うわぁ、派手じゃないのか?」 「う〜ん……」 「……出てけ、わかったから」 ・ 「ほら、似合うでしょ?」 「ダメ!せっかく私が買ってきたんだから!」 「どうしたの?どこかヘンだった?」 「言ったよ?それが何か?」 「うん、それを選ぶのにもあちこち回って、最後は一時間くらい迷ったよ」 「あぁ…… そう言う事になるね?大丈夫。私は気にしてないから」 「大丈夫、皆、笑顔だった」 * * * 「ア〜キちゃん!お風呂に入ってるの?」 「違う違う!襲いにきたんじゃないって。信用ないなぁ」 「ん、っとね、ちょっとお願いがあるんだけど」 「お風呂の方が?なんで?」 「アキ、ビキニラインって知ってる?」 「わかるんだ、それじゃ、これ」 「うん、多分、アキが今想像したのでアタリ。ふふふ」 「さっき、水着を試着したじゃない?その時にね…… さすがに言うのが恥ずかしいな。 まぁ、何というか……」 「うげっ!出てないよ!あぶなそうだったけど。 ……ま、そう言うことで、お願いね?明日は海なんだから」」 「はみ出そうなとこだけ処理してくれればいいから」 「あまり良くはないけど、入れ替わったときに覚悟はできてたから大丈夫。 それともなに? 私が処理してもいいの? 「ひっどーい、お湯を掛けること無いじゃない?じゃ、自分でする?」 「じゃ頼んだわよ?お風呂から出たらチェックするからね?」 うぅ、何で僕がこんな事を…… ・ ・ ・ 「アキ?まだ、お風呂から上がってないの? ……アキ?(ガラッ)」 「うわっ!なに倒れてんの?湯当たり?のぼせたの?ちょっと、しっかりしてよ?」 * * * 「おっはよ〜、アキ。いい天気だよ。海に行くよ、起きた、起きた」 「そんなこと無いよ、アキも早く用意しないとみんな来ちゃうよ」 「もう、ゆっくりなんだからぁ、ここで待ってるから早くね」 ・ ドタドタドタ、バタン!! 「おぉ、本当に早かった!すごいね?新記録?」 「え?一体なに?血相を変えて?」 「うん、私が見つけたんだよ?大変だったんだから。アキを風呂場から出して体を拭いて、下着とパジャマを着せてここまで運んだんだから。 もちろん襲ったりしてないのは分かるよね?」 「でも?」 「うん、お風呂場で見たときはできてなかったよ、見ちゃったのは仕方がないことだとわかってくれるよね?」 「あ、うん…… そうだね、報告を忘れてた。介抱するときについでだから剃っちゃった。朦朧としてたけどアキったら言うがままに剃らせてくれたんだよ」 「いやぁ、言い声だったよ、アキ。 いやん、はうん って」 「自分の体を自分で処理しただけだから問題ないって。ははは」 「でも、放っておいたら処理出来てなかったでしょ?」 「きゃははは、うん、わかるわかる。だからもういいじゃない?海に行く仕度しよ?」 * * * 「あれ?皆は?」 「あ、いたいた。青葉は行かないのか?」 「そういや、今日は僕は青葉なんだから間違えるなよ?アキって呼んじゃダメだからな?」 「わかったよ、アキ…… ぷっ、なんかおかしい」 「ホント、アバウトだよな」 「そうかぁ?やっぱりハデじゃないのか?」 「まだ、ひきずりますか、それを?」 ・ 「ところでアキ、日焼け止め塗った?」 「私の肌って白いから日に焼けると大変な目にあうよ?大やけどみたいな」 「そうじゃないけど、体質?お日様は天敵?みたいな。いや〜、その点、今年は遠慮無くお日様に対峙出来るのが嬉しいよね〜」 「うん、だからはい、これ」 「う〜ん、前は塗れてるけど、背中がダメだね?塗ってあげるから腹這いになって」 「ダメだって、背中も塗らなくちゃ。私の体で背中焼いちゃったらブラが拷問具に替わるよ?痛いよ?、だから腹這いにな……る!」 「そうそう、最初から素直になればいいのよ」 パチッ 「おい!こら!今何をした!」 「ダメよ、まだ塗ってないんだから。ちょっとの間だから辛抱!」 ・ 「あの…… 青葉さん?」 「もう背中は塗り終わったように思うのですが?」 「ひゃ! だったら、もうブラを……」 「いや、それがないと立てないだろ?胸が見えちゃって!」 「はう!だから、内股は止めて!股間は日焼けしません!」 「うわぁ、さすがにクラス1のバカップル。公共の場でも遠慮無いな」 「あ、高橋に佐々木さん!助けて!青…… アキを引き離して!」 「うわぁ、秋山くんがエロ親父化してる」 「そうね、じゃ秋山くん、青葉ちゃん、ほどほどにね」 ……違うんです、本当に助けを求めてるんです。高橋、佐々木さん、行かないで〜 他の誰でもいいから助けて。 END
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