「秋山家の陰謀 04・奔走する日常、双葉編」
清彦様が迎えの山下さんの車に乗り込まれるのを確認してから私も徒歩で帰る。 途中、山下さんに携帯を掛ける。 「あ、山下さん? 僕。今日、遅くなると言ったけど、帰りは自分で帰れるから今日はもういいです、ご苦労様でした。 え?双葉が帰る時に夕食の準備があるから連絡するように? わかりました、帰る前に双葉に連絡します。 すいません、お手数掛けさせて。 では」 ほほう、夕食の準備ですか、清彦様が? 私を食べてって? いいでしょう、頂かせてもらいますよ。 うぅ、自分ってこんなに黒かったのかしら?自己嫌悪に陥るわね、思わずしゃがみ込んで頭を抱える。 ・ ・ ・ お屋敷について、そっと中をのぞき込むと清彦様が掃除をされているのが見えた。 まだ、少し早すぎたわね?自分の屋敷を覗き込んでいるを近所の人に見られるワケにもいかないし。 私はそっと中に忍び込んで屋敷の中から見えにくい場所に身を隠し、中の様子を伺いながら時を待つ。 ・ 暫く待つと玄関に鍵が掛けられる音がする…… やっと、行動を起こされるのね?清彦様。 二階に上がって行かれる気配を待って、持っていたカギでそうっと中にはいる。 上の気配を探るとお部屋のドアを開けようとされている。 あ、降りてこられた、応接間に身を隠す。 応接間に入ってきた清彦様は鼻歌を歌いながらテーブルの上の小物入れを探って、そこからカギを持って出て行かれた。 こんな所にも鍵を放置しておられたのか? カギの意味がありません、清彦様。 それにしても、明かりを点けられなくてよかった、丸わかりになっちゃいますからね。 見つかったらすごくバツが悪いったらなかったでしょうね…… 上の方ではゴトゴトと音がする。 そろそろ頃合いのようね。 そっと階段を上がる。 ・ ドアを開けると案の定、清彦様があちこち探しておられる。 おや、ベッドの下をのぞき込んで固まった。 そうか、今朝、あれの参考に読んだ時にいつもはそのまま置いておくのに、うっかり揃えて戻しちゃったから…… あ、立ち直って動き出した。 ・ それじゃ、そろそろ行きますか。 うふふ、心臓がドキドキしちゃう。 ドアを開けて中に入り、ノックをする。コンコン。 ……宝探しに夢中ですか?清彦様?よし、力一杯。 ゴンゴン! あ、やっと気付いて下さった。 ビックリした顔で硬直される清彦様。 「ノックの音にも気付かないほど夢中でなぁにをしてるのかな〜、双葉ちゃんは?」 「え?あれ?な、なんで清彦様が……」 「は、はい……」 「入れ替えの証拠を探していました。すいません、ごめんなさい、もうしません」 「……わかりました」 ・ 腕によりを掛けて夕食を作り、清彦様と食事を取る。 あれ?そう言えば終わった後にお風呂の用意をしておいた方がいいのかな?シャワーで事足りる? ・ 食事が終わり、洗い物をしている清彦様に声を掛ける。 「双葉、それが終わって、風呂を入れたら言いに来るようにな」 「ん、なんだ?」 「なんだ?癖になったのか?ひょっとして一緒に入りたいからあんな事をしたのか?」 「そうか、なら一人づつでいいじゃないか」 ベッドの上に体を転がす。そ のまま手をベッドの下にやり、清彦様の秘蔵本をランダムに取り出し、ページを広げる。 心臓がドキドキと跳ねる。落ち着け、落ち着け、一度だけ…… 清彦様だ!私は慌てて本を下に放り込み、机に向かって勉強しているフリをする。
ドアがノックされ、清彦様が中に入って私に声を掛ける。 「清彦様、お風呂の準備が整いました」 「そうか、ご苦労だった。双葉、もう一つ仕事を頼もうか。 下のリネン室に言ってお客様用の奥にある敷き布団を持ってきてくれないか?行ったらわかるところにある筈だから。あ、シーツも忘れるな?」 それじゃ、こっちの新しい布団は畳んで下ろしておきましょ。 ・ しばらく待つと清彦様がお布団を持ってきて下さった。それをベッドに敷いてもらう。 さて、本番開始。
「できました、清彦様」 「うん、いい出来だ。綺麗に敷けてるね。 うんうん」 さて、それじゃあ…… 「それじゃ、まずショーツを脱いでベッドの上に四つん這いになってもらおうか?」 「聞こえなかったのかい?双葉」 「あの、清彦様。ショーツを脱いでベッドの上にって……」 「なんだ、聞こえてるじゃないか。うん、そうだよ、早くしなさい」 「決まってるじゃないか、お仕置きだよ。 二度とあんな事をしないようにね」 『はい、さっさとショーツを脱いで!』 「待って!二度としません!しませんから許して下さい、お願いします!」 「何を言ってるのかな? 昨日、あれだけの目に遭いながらもあっさりと誓いを破った人の言葉にどれだけの意味があると言うのかな?」『さぁ、脱いだらベッドに上がって四つん這いになる!』 「清彦様。一体、何を……」 うわっ、自分のあそこをこんな形で見ることになるとは夢にも思ってなかったわね? でも、私のあそこって結構、綺麗よね? 「ちょ、ちょっと待って下さい!」 『動くな!』 さて、それじゃぁ私の性器を観察するという貴重な体験を続行させて貰いますね、清彦様。 「あ…… だめ。 や、止めて……ください、き、清彦さ、まぁ!ふぅん」 「止めて……くだ、さい…… これ以上…… は」 清彦様の嘆願をスルーして、そのまま続行。 「い、痛い? ……痛いって ……きゃう!な、なにを?……」 「そ、そんなぁ…… お願いし、ます。 ハァ 許して下さい。 もう 二度と…… 絶対にしませんから……」 「ひぃん!で、でも…… なんで、お仕置きが…… これ、な、なんだ…… ハァハァ」 「あ、そっか。教えて欲しい?体を取り替えた呪方ってね、もう僕にできないんだよ?」 「あれはね、女性にしかできないんだよ?だからね、現在、体を取り替える事が出来るのは双葉ちゃんの方なんだ」 「うん、すぐに戻れるね」 「でもね、覚えてる?条件さえ満たせば何度でも出来るって言った事?」 「はぁはぁ、ひ。 は、はい」 「ひぇん!そ、それって……」 えっと…… なんだっけ? 何か大事なことを忘れているような気がするんだけど? 私は自分の言ってることの意味さえ深く考えられずに、清彦様に夢中になっていった。 「え?」 そう言いながら、私は今は自分のモノになっている限界まで膨張した清彦様のモノをズボンを下ろして取り出すと清彦様が向けて近づく。 「待て、待って!はう、違う、そ、それは違う……はぁはぁ、犯るのはいいけど、犯られるのは……」 清彦様の背中に手を伸ばしメイド服のファスナーを下げると露わになった背中のブラのホックを外す。 「はい、腕を上げて。 はい、もう片方も」 「やめて、止めてくれ!お願いだから」 「だからダメだって。これは双葉の自業自得なんだからね?さぁ、覚悟はいいかな?」 「い、いやぁぁぁ!勘弁してくれ、たのむ!たのむから!」 私は私の物となった清彦様のモノを今は清彦様が入っている私の身体へとゆっくりと侵入させる。 「ひぃぃぃぃ!痛っ、痛い、痛いから!あぁぁぁぁ!嫌ぁぁぁ!」
私のオチン〇ンが清彦様の中へとすっぽり入り込む。 あぁ、私の中ってこんなに暖かいんだ? ふと、清彦様の様子を伺うと涙目で息も荒くハァハァと口で呼吸しておられる。 清彦様は口を開くのも億劫そうだ。 「何を言ってるんだい、双葉?今からちゃんと中に出して確実に呪方が使えなくして上げるからね」 最初はゆっくりだった動きを少しずつ早くしていくと、清彦様の膣壁が私のモノをキュウキュウと締めつける。 ・ やがて、清彦様の口から漏れる小さな悲鳴が甘いものに変わっていく。 「くぅん、はぁん、や、ふぅぅん………」 意外と清彦様もこの状態に満足されておられるんじゃ? あ、だめだ。 私のオチン〇ンが限界かも? その先から何かが飛び出しそう…… 私の言葉が言い終わらない内に我慢の限界が切れ、清彦様の胎内に熱い物が放出される。 「あ、あぁぁぁぁぁぁ!」 ・
………… えっと? あれ? 気を失われた清彦様を見て、精を放ち終わった私は正気に返る。 ・ そして、終わったばかりのセックスに股間をひくひくさせて気を失っておられる清彦様を見る。 指で清彦様の股間のその白濁をすっとなぞって目の前に持ってくる。 ……えっと、私が清彦様の中に出した子種…… え?え?え? ちょっと待って?! 私、清彦様を犯しちゃったのよね? えっと、処女じゃないとあの薬は効果を発揮しないって…… え? あれ? ダメじゃない! 清彦様の身体は週末には返すつもりだったのに? それなのになんで私、清彦様を犯しちゃったの? そうよ、確かに昨日は先っちょだけ清彦様に入れてみようかな?とか思っちゃったりはしたけど……
それがなんで? えっと、あれ? 思い出せない。 いつの間に私は清彦様を犯すことを目的にしてたんだろ? 夕べからの私の行動が熱に浮かされたようにもやが掛かって明確に思い出せない。 頭から血の気が引く。 取り返しのつかないことをしてしまった。 清彦様はこれから一生、私?双葉? なにをどう言いわけしようと、この事態を招いてしまったのは私だ…… 私は私の意志で清彦様を犯した…… 呆然としてると清彦様が身じろぎをする。 いけない、清彦様が目覚められる。 謝ろうか?『すいません、清彦様。 ついうっかり犯しちゃいました。 清彦様は一生、双葉の身体に固定されてしまいました』…… いくら、ヘタレで温厚な清彦様でも怒るだろうな。 軽蔑されるかも知れない…… ・ 誤魔化そう! 私は『ついうっかり』なんてやってない! 私には何か考えがあって犯ったんだ! そうなんだ! 私には何か深い考えがあって、何もかも計算づくで行動したんだ! どういう計算での行動だったかは後でゆっくり考えよう! そうして、清彦様が双葉として暮らす為のベストな道を考えよう!
そう腹を決めた時、清彦様の目がゆっくりと開かれていった。 ・ ・ ・ 「ふふふ、そんなによかったのかい、双葉。 いい顔で失神していたよ」 清彦様の目がハッとして見開かれる。 「うん、そう。 双葉の股間から垂れ出している物が証拠♪ それ、気持ち悪くないかい?先にお風呂を使っていいよ?」 清彦様は起きあがり、ベッドに腰掛けるようにして自分の股間を確かめられる。 そこには処女を失った確かな証が…… とりあえず、お風呂に入って身体を洗い流して貰おう。 私の言葉に清彦様がくやしげに私を睨む。 ・ 「お風呂、使わせて頂きます……」 少しの間、私を睨んでいた清彦様は力無くそう言うと部屋を出て行った。 その姿を見届けた私は思わずベッドの端に座り込み、息を吐く。 私は清彦様の様子を見る為に静かに部屋を出た。 ・ そっと反対側の階段から下におり、先回りをして風呂場の隣の洗濯場に身を隠し、清彦様の来るのを待つ。 清彦様は幽霊のように廊下をゆっくりと歩いてこられる。常夜灯しかついてない暗い廊下をゆっくりと素っ裸のままで、着替えを手に引っ掛けるように垂らして…… ん?笑ってる?真っ青な顔して笑っておられる?怖い、怖いです、清彦様。
やがて清彦様は私の隠れている前を通り過ぎ、お風呂場に入られた。中からは体を洗っておられる気配がする。 自殺とかは大丈夫なようね?
私はそのまま、洗濯場の隅で体育座りになって考え込む。 本当になんでこんな事をやっちゃったのかなぁ? 浮かれすぎだよね、双葉…… って、言うか頭が冷えてみれば、私自身も元の身体に戻れなくなっちゃたのよね? 私の身体の中には清彦さんが固定されちゃったワケだから…… いや、この際、私のことはどうでもいい。 私の場合は自業自得なんだから…… さて、どうしようかなぁ? 考えてみれば、これって旦那様が望んだ展開よね。 旦那様なら笑って『そのままでいい』って言われそうよね? 帰ってらしたら謝って元に……戻す手段がないのよねぇ…… このまま清彦様が私の身体で生きて行く為のベストな選択…… 悩んでいると湯船から清彦様が出てこられる気配がする。 いけない、いけない、見つからないうちに戻らなくっちゃ。 そっと、洗濯場を出て階段を足音を立てずに上がる。 ・ ・ ・ 部屋に戻り、お布団を元に戻して雑誌を読んでいるフリをしていると清彦様が上がってこられる。 「清彦様。お風呂先に使わせて頂きました。 あとは何かありますでしょうか?」 なに?その洗いざらしの乱れた髪は? 幽鬼のよう…… さっきよりも怖くなってる。 私は清彦様をソファに座らせ、自分の部屋に櫛を取りに行くと清彦様の御髪を直す。 「あの…… 本当に僕はもう元に戻せないんですか?」 「う〜ん、戻せないねぇ。少なくとも僕の知ってる方法では無理。僕が双葉に話した事は全て本当」 髪を梳き終わると清彦様が次の指示を聞いてくる。 今日はもう解放しようと思ったが考え込む。 「……寝てもいいのでしょうか?」 『そこのベッドで寝るように』 「えっと、まだ何かお仕置きの続きが……?」 『そこで寝るように!』 布団に潜り込む清彦様をみて、私は再び雑誌を読んでるフリをして清彦様が寝られるのを待つ。 清彦様が寝息を立てられている事を確認して、雑誌をテーブルの上に置き、そっと近寄り見つめる。 目尻に涙の後がある…… まいっちゃったよねぇ? 軽い悪戯が悪戯ですまなくなっちゃった。 私の身体で眠っておられる可愛い清彦様の顔を見ながら考える。 ・ わかった、もういい! 清彦様にはこれから女性として、双葉として私の婚約者として幸せになってもらう! 私は清彦!貴方は双葉! これからは手に入れられるだけの名誉名声をこの体に刻みつけてやる! これは傲慢な私の我が儘だ! 清彦様に拒否権なんか認めてあげない! 私の心中を清彦様に気付かれるな、明日の朝起きたらわたしはいつも通りの双葉な清彦だ! そう決意すると、私は清彦様の横に潜り込み、眠りについた。 ホント、これって図らずも旦那様の狙い通りの展開よね?
* * * 朝。 ゆっくりと目を覚ます、隣に人のいる気配がする。顔を反転させるとそこには私の眠る顔があった。 清彦様の顔を眺めていると、寝返りを打って向こうを向いてしまわれる。 寝ていてさえも嫌われた? くそう、そうまで私を拒否りますか?清彦様。 私は清彦様に優しく声を掛ける。 振り向かれた清彦様は私の顔を見るなりベッドから飛び出した。 体をまさぐっておられる清彦様。 寝ている間に襲われたと思っていらっしゃるのだろうか。 えぇ、そうです、そうです、そう思われても仕方がない事を双葉はしてしまいました。 あ、だめだ、反省はしても一朝一夕に癖は直らない。気が付いたら清彦様に話しかけていた。 あ、飛んで出ていってしまわれた。 可愛いなぁ、清彦様。 とにかく、私もベッドから出て着替えよう。 ・ ・ ・ 今日はどうしよう?土曜で学校はお休みだし、とくにすることもないし。 清彦様は…… う〜ん、私の姿のままでは家の中に引きこまれるだろうなぁ…… この広いお屋敷の中で私と二人っきり…… あぁは決心したものの、なにかすごく気まずいわ……
食堂に降りて、朝食の用意をする。 どこかへ出掛けようかな?でも、清彦様を屋敷に置いておくのは心配だし…… あ、これクラスの女の子達が言ってたラブロマンス映画。
……今なら清彦様と行けるんじゃない? どうせ、行く所も思いつかないんだし。清彦様に付き合ってもらおうかな? ………初めてのデート?いや、そんなこと頼める分際じゃないんだけど、清彦様が誘って下さる可能性なんてゼロ以下なんだから…… いいよね?一回だけ、もう一回だけ我が儘を聞いてもらっちゃおう。 それにしても清彦様遅いなぁ。 朝食の用意もとっくにできたというのに。 朝食が冷めちゃうじゃない?何をやっておられるのかしら? また、家捜ししてるのかな? もう好きに捜されても双葉は止めませんけどね。 でも、朝ご飯にはキチンと来て欲しいな? 保管場所お教えした方が手間が省けるかしら? あちこち散らかされても困るから。 旦那様に言われた地下の倉庫に返しちゃったから、この屋敷内をいくら捜されても出てきませんもんね。
そんな事を思いながら、清彦様探索の旅に出ると玄関のお掃除をしておられた。
清彦様と朝食を取りながら、外出の件を話すとなんだか躊躇しておられる。 ・ 「えっと、行っていいんでしょう ……か?」 「いいから、教えたんだが?不服か?」 「ま、昨日なら教えなかったけど、今日ならもう教えたところでなんの差し支えもないからな、できればさっさと諦めて今の状況を受け入れてくれると嬉しいんだがな」 「そう言う事で10時には出かけるからな。それまでは好きにしていていい」 あ、その服で倉庫の中を歩き回るのは無理かな?汚れちゃうし、スカートの端でも引っ掛けられて陶器でも棚から落とされてはかなわないですね。 「しかし倉庫に行くなら、あそこは埃だらけだからその服は脱いで上下をジャージに着替えて行けよ、そう何着も汚すとクリーニングが追いつかなくなるからな」 「ほほう、僕のせいだと……?」 いや、だからなんでそこで謝ってしまわれるんですか?ヘタレな清彦様。もう!知りません! ・ 朝食が済んで上で時間をつぶしを含めて教科書を広げていると清彦様がやってきた。 「失礼します。清彦様?あの〜倉庫のカギはどこにあるのでしょう?」 「で、カギの場所がわからない、と?」 地下倉庫のカギは旦那様の部屋の金庫に返そうと思っていたのに、忘れて清彦様の机の引き出しに仕舞ったままだった事を。 えっと、清彦様? 確か夕べ家捜しされた時に自分の机の引き出し最初に調べられませんでしたっけ? カギを清彦様に渡すと踊るように駆けて行かれた、ブルマ姿で…… ・ 再び、教科書を広げていると、また清彦様がやってきた。 「あの〜、清彦様?」 うわっとぉ!なに?それ?申し訳なさそうに上目遣いで私を見つめるそのお姿は! だめだ、にやけちゃダメだ。多少ぶっきらぼうに聞こえるような声で返事する。 「で?今度はなに?」 あぁ、そういえばミミズ文字でしたっけね、それ。 清彦様にそこに書かれてある文字にそって、旦那様の受け売り情報を教える。 「あきらめ、ついた?」 顔を下げたまま、微動だにされない。 でも、清彦様は何も行動を起こされない。それが清彦様の短所で長所。 「さて、そろそろ出かけるから、用意をするように」 「え?」 そして、ドアの所まで歩いた清彦様が振り返る。 「あの、清彦様?」 「外に出かける言う事ですが、メイド服のままでしょうか?それとも制服?」 「私服ってあったんですか?クロ−ゼットの中はメイド服と制服しかありませんでしたが?」 まずは埃だらけの清彦様にシャワーを浴びるように指示する。 ……しかし、なんでそこまで汚れますか?よくよく見れば満遍なく汚れまくりですよ? 清彦様がシャワーを浴びているうちに私は着替えを用意すべく自分の部屋に行く。 ……あれ?本当に私服持ってない、私?
−双葉、お前ねぇ、もう少し服を買ったらどうだ?年頃の女の子なんだからさぁ。 −いや、そのメイド服は私服って言わないだろ? −清彦に何を言われたか知らないけど、そこまで着続けなくてもいいだろ? −そうかぁ?まぁ趣味でもいいけど、オーダーメードでメイド服を何着も作って −いや、それ明らかに清彦の目を意識してるだろ? ……まぁ、お前に渡してあるキャッシュカード
ですよね〜、旦那様。まさか、あの時はこのような日が来るとは。 ・ ・ ・ シャワー中の清彦様に着替えを渡し、玄関で清彦様を待っていると山下さんが通りかかる。 「あれ?今日はどうしたんですか、山下さん」 「そうなんですか。 ……まぁ、悪いからいいです、ゆっくり歩いて行きます」 「は、ははは。そんなもんじゃないですよ、ちょっと映画を見に行くだけですよ」 「はい、じゃあ」 ・ 清彦様が着替えて来られたのを待って屋敷を後にする。 山下さんに言われた言葉が頭の中をリフレインする。 デート、デート、デート…… ・ さて、映画にはまだ時間があるし…… 清彦様の服を買おうかな? さすがに私服の少なさはなんとかしたいわね。 どこのお店がいいのかしら? ・ 適当なお店に入り、清彦様の服をあれこれ選ぶ。試着させられまくった清彦様はお疲れの様子。 一番可愛いワンピースを購入。 でも、今日はお財布は返しません。 返すと自分で払うって言われるに決まってるから。 お金を支払っていると後ろから清彦様の声が掛かる。 「メイドのお給金っていくらもらってたんですか?お小遣いとかは……」 えっと……、やはり忘れておられる? 私のメイドは趣味なんですよ?職業じゃありませんよ? 私は元々、清彦様の学友になるように言われてきたのを何もしないのも居心地が悪いからと、旦那様に成績を下げない事を条件に家の家事をさせて貰うようにしたんですよ? もう忘れておられるんだろうなぁ、この生活長いから。
−ねぇ、父さんうちもこんなに大きいんだからメイドさんとか居てもいいんじゃないかな?
−あれ?双葉、どうしたの、その服。
う〜ん、さすがにあの一言だけで四年間着続けてるのも問題ですよね。 そんな事を考えていると清彦様から追い打ちが…… 「ひょっとして、私服はこれしか持ってなかったり……」 「いえ!なんでもないです!わーい、清彦様にお洋服買ってもらっちゃった!嬉しいな」 勘定を済ませると映画の開演が近いので清彦様の手を取って映画館に向かう。 ・ ・ ・ 映画はとっても良かった。凄く感動的な映画だった。 どうやら、気に入ってもらえたようで私は嬉しかった。 映画館を出ると、遅い昼食を取る為に入った喫茶店で清彦様と映画の話で盛りあがってしまった。
そのあと、もう少し清彦様の私服のレパートリーを増やすべくショップ巡りをしていくつかの服を買い、夕食まで済ませてからお屋敷に帰った。 ・ 部屋に戻った私はベッドに寝ころんで今日の出来事を思い起こしながら幸福感に浸り、今日も清彦様の横で眠った。 * * * 朝。 今日はいよいよ旦那様の帰国の日。
旦那様が帰ってこられたら言うんだ。 全ての責任を取って私は清彦様として生きていきます、清彦様の幸福の為なら全てを投げ出して生きていきます、と。 隣で寝ていた清彦様の方を見ると、なんだかおかしな顔をしておられる。 「なにをおかしな顔をしてるんだ、双葉。 さぁ、起きるぞ」 二人で朝食をたべ、それぞれが好きな事で過ごす。 ……しかし、清彦様。すっかり私をメイドだと思ってらっしゃるんですね? ・ リビングの前を通りかかると中で清彦様がTVを見ておられた。 ふと、中を見た時にその姿はとても自然で違和感がなかった。そんな事を感じていると清彦様がこちらを振り向かれ目が合う。 えっと、目を逸らすのも不自然なんだし、かと言って何か話す事があるわけでもないし…… 「なにか?」 私はなんとなくリビングにはいり清彦様の対面に座る。 「昨日から感じていたんですけど、ひょっとして本当に女の子に、双葉に馴染んできてませんか?」 「そう?なんかそうやってTVを見ている姿が凄く自然に見えたんですけどね」 そうなのかな? 女の子に自然に馴染んで下されれば、申し訳ないけど私は少しだけ救われるんだけどな? 女の姿がいやなままで生きていかれるより。
「あのですね、私の事を憎んでますよね?こんな事をして」『正直に思った事を自由に言って下さい』 「憎んではないかな?怒ってはいるけど、なんでこんな事をしたんだ? 僕か秋山家が憎かったのか?
こんな事ですか、本当になんでしてしまったんでしょうね。 私がヘンに羽目を外したせいですけど。 秋山家には……、旦那様や清彦様にはとてもよくしてもらってますから感謝する事こそすれ、憎む事は何もないんですけどね。 でも、こんな事をしてしまった私が言っても信じて貰えるか…… お話は帰国された旦那様からお聞きしてください…… でも、怒ってはいるけど、憎んではいないと言ってくださった。 どういうお心から出たかは知らないけど、そのお言葉だけは今の双葉には宝物です。 「そうか、憎んでおられないんだ。そうか〜」
そう言えば、奥様はどうだったんだろう?秋山家の後継者という座を清香様に奪われ、一ヶ月間も陵辱されたという話だったが、本当に笑って話せるほど、わだかまりを残されなかったのだろうか? ・ ・ ・ 昼食を清彦様と取り、お茶を飲む。昼前に山下さんが旦那様を迎えに行かれた。 もうすぐだ、もうすぐ。落ち着け、落ち着くの。心臓が踊ってる。私は旦那様が帰ってこられたら私は正式に清彦様を引き継ぐ事を旦那様に宣言するんだ。 * * * 玄関で待っていると旦那様が奥様を連れて入ってこられた。 「おぉ、清彦。留守中はどうだった?なにも変わった事はなかったか?」 清彦様と私が入れ替わっている事に気付かれておられないようだ、脱いだ上着を清彦様に預けられる。 私が清彦様と入れ替わった事を報告する前に奥様に昔の事を聞いてみたい衝動に襲われる。 「それで…… 母さん、ちょっと話があるんですが?」 「えぇ、まぁ…… ちょっと……」 「いいわ、なぁに?双葉さんに聞かせられない話?それならリビングの方に行きましょう。 ・ リビングにはいると奥様はお茶を入れて自分と私の前に置いてくださる。 私は意を決して口を開く。 それを聞いた奥様が怪訝な顔をされて、首をかしげられる。 それを聞いた奥様が笑い出す。 「実はそのことでご相談があるのですが……」 私が黙っていると奥様は全てを察せられたようだ。 「あのね、双葉。 あなたがしたことをあまり気に病む事は無いのよ?」
私は奥様の言われた意味がわからず問いかけた。 「え?それはどういう……」 「それは薬のせいだと思うから。あの薬を使うと魂が抜けやすくなると同時に体内に残った薬はなんて言ったらいいかな? 例えて言うなら、遅効性でアッパー系の媚薬?そんな効果を体に及ぼすみたい」 「はぁ!?それはいったいどういう事ですか? まさか、入れ替わった相手を襲いたくなるとでもいうんですか!?」 「さすが、双葉ちゃん。察しが良いわね〜。 うちの旦那様の時がそうだったのよ。 最初はね、私を座敷牢に閉じこめて反省したら元に戻ろうと思ってたらしいのよね?でも、閉じこめた私を見てるうちにイタズラしたくなってあちこち触りまくっているうちに段々興奮してきて犯したくなってきたみたいでね。 あはは、何考えてそんなお薬をつくったのかしらね、うちの先祖は?」 「それで乱暴されてしまわれたんですか?」 「一緒だ…… 私の時と…… じゃ、あれは薬の影響?」 「まぁ、そう言う事でしょうね? やっちゃた後、すごく落ち込まなかった? 旦那様は正気に返った後にすごい顔で落ち込んでたわよ?というか、自分でヘンだと思わなかったの? 双葉ちゃんって清彦命な娘だから厳しい事は言っても、普通は傷つけるような事はしないと思ったんだけどな?」 「言っておいて下さいよぉ!そう言う大事な事は! 知ってれば必死に耐えたのに。おかげで私は取り返しの付かない事を……」 「いや、でももう元に戻れないんですよ? 双葉の、女の子のまんまなんですよ? 犬に噛まれたで済ませる話じゃないです」 「あ、そうそう、その事をお聞きしたかったんです。奥様は旦那様に全てを奪われてしまわれたんですよね? それに対してのわだかまりとか、そのような物は無かったんですか? 旦那様に普通に接する事ができたんですか?」 「う〜ん、私の場合はね〜、取られて惜しい物ってそんなに無かったから。 姿こそ変わっちゃたけど、秋山家の人間である事は変わりないからね。 財産取られたという意識はないかな? 友人は秋山家の資産に付いてきた友人ばかりだったから惜しくなかったしね。 あはは。あの当時は喧嘩相手の旦那様さえいれば、後はどうでもいいかな?って」 「そうなんですか?ダメだ、清彦様とは精神構造が違いすぎてあまり参考には……」
「すいません。今後、清彦様とどう接したらいいのか助けのような物が欲しかったものですから……」 「奥様達と同じ? 教えて下さい、是非!」 「間違いを間違いと認めないで、そのまま清彦を拉致監禁して女の悦びに目覚めるまで犯し続けるの。 「バカな事を言わないで下さい!そんな事をしたら清彦様は壊れてしまいます!って、奥様そうだったんですか!?」
そんな会話をしているとリビングの隅の内線が鳴る。 「はい、えぇ、居ますよ。わかりました」 「それじゃ、奥様、失礼します」 ・ … 「いいです、ご自由に。 だめと言っても来るんでしょ?」 ・ ・ ・ 書斎のドアをノックして中に入る。 中には予想通り旦那様と清彦様。奥様は後から静かに入ってきて後ろのソファーに腰掛けられる。
旦那様の前に立ち尋ねる。 「双葉、清彦になにも言ってないのか?」 「当主の資質に欠ける清彦様の代わりに私が替わって清彦様になります、と説明は致しました」 「なんだ、言ってあるんじゃないか、清彦」 いえ、旦那様?そんな単純な話じゃないでしょ?補足して下さいよ?
「あぁ、そう言う事か。 いいか、清彦。我が秋山家には代々伝えられた秘薬がある。これを使うと魂の入れ替えができるというものだ。 実際に使ってみたんだから真偽のほどはわかるな? 秋山家では当主の資質に欠けるものが次期当主となって秋山の家を傾かせると現当主が判断した時、より資質に恵まれたものに魂の交換を行わせて、当主を任せる事になっている。 残念ながら清彦、当代ではお前がそれに当たる事になってしまった。 肉体さえあれば秋山家の血はちゃんと次に継がれていくというのが古来からの秋山家の考え方だ。残念だったな、清彦」 旦那様は清彦様にそう告げると、私の方を見て尋ねられる。 「で、どうだ双葉?これからも清彦をやっていくのか?やっていく自信はあるのか?」 「聞いたとおりだ、双葉。 これからは清彦を助け支えてやるんだぞ。 俺と清香のようないい関係を築けよ」 旦那様と奥様のような関係? それはちょっとヤかも…… 幸せそうなのは認めますけど…… 顔を上げられた清彦様と目が合う。 大丈夫、これからも私がついています。 双葉である事はどうしようもないけど絶対に不幸になんかはさせませんよ。 私は清彦様に安心してもらおうと微笑みかける。
しかし、その瞬間、清彦様の体が崩れ落ちる。 「ん?どうしたんだ、清彦は?」 「ショックだったんですよ。 貴方が頼みの綱だったのに、仕掛けた張本人だったと知って。 かわいそうに……」 「それより、清彦様です!どうなってしまわれたんですか?」
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