清彦伯爵についてのいくつかの事柄 後編 作:teru 「伯爵、何を…… 今、こいつが破くのを見たでしょう?」 男爵が縋るような声を上げる。 「いえ、見てませんが? 私はエリス嬢が床からそれを拾い上げようとしたら破けてしまったように見えましたけど? お前はどう見えた?」 伯爵が私に尋ねる。 「私にもそのように見えましたが?」 私も同意。確かに男爵の目論見には腹に据えかねるものがある。 「そ、そんな……」 男爵が対処に困るような顔で途惑う。 「それでどうしますか?」 エリスが男爵に尋ねる。 「どう?どう、とはなんだ?」 「これからの男爵様の行動の選択ですよ? 全てを公表して共に滅ぶか、今起きた事に口を紡ぎエリスとして生きるか、ですよ?」 「それはお前が俺に成り代わると言う事か?」 「ですから、選択枝を提示しているのですよ。私は赤ちゃんが殺されるのなら生きていても仕方がないので公表して処刑されても構いませんし?」 淡々と語るエリス。 それほど赤ちゃんが大事なのだろう。たとえ好きでもない男の子供であっても…… 「公表すれば親戚共に寄ってたかって家名を奪われ家を追われる。貴族としての権力を奪われる……」 「"よくて"ですね。ヘタをすれば秘密裏に暗殺。または一生、どこか日の当たらない地下室にでもに幽閉……」 「しかし、公表しなくても変わらないのではないか!?お前が俺に成り代わるのなら俺はお前になると言う事だろう?! 俺に性奴隷になれというのか!」 伯爵がエリスに向かって叫ぶ。 「まさか? 私の子供が性奴隷の子供と言われるのを我慢できるわけがありませんよ。 男爵様には私の正式な妻になってもらいます。幸いにも男爵様は私を形だけ養女にして表にはまったく出していないから世間的には公表していないのも同然なのでどうとでも言い繕う事はできます」 「お、俺をお前の妻に!?」 「男爵夫人ですよ? 貴族としての地位は保全されるので悪くは無いと思いますが? それどころか仕事は私に任せて自分は遊んでいられますよ」 毒でも流し込むように優しく囁きかけるエリス。 「遊んでいられ…… いやいや、それでは女遊びや美酒が飲めなくなるだろ!」 「女には女の悦びというものがありますよ。 それを知ったら男の遊びなんて下らなく思えてきますよ?」 そう言いながら男爵の胸に手の平を当てて軽く揉みしだく。 「あ、……」 軽い吐息を吐く男爵。 「如何ですか?今の私の胸は敏感になってますでしょ?」 「や、やめろ…… 気持ちよくなんか……」 男爵は抵抗を試みるが、お座なりな抵抗しかできない。 拒否する心とその先にある好奇心がせめぎあう。 「ふふふ、これはまだ女の序の口。本当の女の悦びはまだ先にあるのですよ?」 甘く優しく毒を含んだ声で囁きかけるエリス。 「お、俺はそんな悦びなど……」 戸惑うような声でエリスの言葉を否定しようとする男爵。 「私は知っているのですよ?」 「な、なにを……」 「男爵様は自分よりも弱い者に対しては限りなく強気になられますが、相手の方が強いと知れば絶対に敵対したりしません。 それどころか従順ですらあります」 「なかなかのクズな性格のようですね」 黙って成り行きを見ていた伯爵が誰かを思い出したように苦笑する。 「それがどうした!弱肉強食はどこの世界であろうと当たり前ではないか!」 「そうですよ。だから今度は私が男爵様に新しい弱肉強食の掟を教えて差し上げますわ」 そう言うとエリスが男爵の腕を取る。 「何をする気だ」 「誰が強者で誰が弱者なのか。男爵様は誰に対して従順で居るべきなのかを教えてあげますよ。 伯爵様?」 「ん?なんだい?」 突然エリスに声を掛けられた伯爵が問い返す。 「男爵様に新しい現実を認識して頂くためにしばらくここに逗留させて頂きたいのですが。 このままでは王都に帰れませんので」 「あぁ、確かに困るだろうね。いいでしょう。今は来客の予定も無いからどこか部屋を用意させましょう」 「ありがとうございます。出来ればあまり人が近寄らない部屋で防音がしっかりした部屋が良いのですが」 「それなら離れにあるお客様専用の屋敷の二階の端の部屋がいいでしょう。 防音には音響結界を張っておきますよ」 そう言うと伯爵は書斎机の上のベルを鳴らす。 「お呼びでしょうか、伯爵様」 しばらくするとメイド長が現れる。 「あぁ、しばらくの間、男爵夫妻が逗留されるので薔薇館の青薔薇の間を用意するように」 「わかりました。男爵様、すぐに支度させて頂きますのでしばらくお待ち下さい」 メイド長は男爵(エリス)に深々と頭を下げると部屋を出て行く。 「ちょ、ちょっと待て、お前。 何をする気だ!? 俺はすぐに王都に帰るぞ!」 我に返った男爵がエリスに噛みつく。 「何を言っているのです? 今の状態で王都に帰れば男爵と私に異変が有った事が皆に知られてしまいますよ。いいのですか?男爵の魂が貧民街で拾った女の身体に閉じ込められている事がバレても? 親戚の方達はそれを知ったら驚喜するでしょうねぇ?」 「うっ」 そう言われてしまうと言葉を失う男爵。 「ですから、暫くは伯爵様の館にお世話になってそれが知られないように私に化ける練習をしてもらいます。いいですね?」 半ば強引に言い切るエリス。 その言葉には男爵に有無を言わせぬ力があった。 「し、しかし……」 「い・い・ですね! それとも貴族としての特権を手放したいのですか?」 そう強く言われてしまうと肯くしかない男爵。 本当にチョロいな、こいつ。エリス嬢の手の平の上で簡単に転がされている。 「わ、わかった…… 俺はどうしたらいい?」 「それをこれから教えてさしあげますよ。男爵様が自然に私として演技できるように、ね?」 そう言ってエリスが男爵の肩を優しく掴んで引き寄せる。 やがて、メイド長が部屋が整ったと報告に来て、エリスは男爵の手を取って部屋へと案内されて行く。 * * * 「いいなぁ。これからあの二人はどうなるんだろう?」 私は出て行く二人も背を見送ってつぶやく。 まぁ、きっと男爵は意志が弱そうだからエリスの都合のいいように調教されてしまうだろう。あの様子ではエリスも相当鬱憤が溜まってたんだろうな。 「なんだ、双葉。お前も調教して欲しいのか?」 振り返ると伯爵が呆れるように笑っていた。 「いえ、別にそういうワケでは……」 「嘘を吐け。お前、さっきの紅茶に何を入れた?」 そう言って私が男爵達と伯爵に出したティーカップを指さす。 「えっと、軽い媚薬を少しばかり…… いえ、別に他意は無いんですよ? 少々、あの方達が正直になれるように…… ほら、きっと今頃、男爵達は獣のようにお互いを求めあってるんじゃ……」 私は伯爵に釈明をする。 「ほほう?だったら、なぜ……」 「"なぜ"?」 「私の紅茶にもそれが入ってるんだ!」 伯爵が立ち上がって自分の目の前に置かれている空のカップを指さす。 「えっと…… お裾分け?」 私はお茶目な顔で舌をちょろりと出して見せる。 「巫山戯るな!先ほどからズボンの中の自己主張が強くなってるんだぞ!」 「あ、やっぱり?軽い悪戯のつもりだったんです。すいません。おトイレで存分にスッキリしてきてください」 そう言って私はトイレのある方向を指さし、伯爵に頭を下げる。 「く、くくく。巫山戯るな、どんな強力な薬だ?これ以上刺激を与えるとどうなるか」 そう言って伯爵がズボンを脱ぎ出す。 「あの?伯爵様?さすがに下半身を露出させてトイレまで行くのは他の召使いの目もありますので……」 「誰が下半身丸出しでトイレに行くと言った?」 怒りを抑えた声で伯爵が私を睨む。 「でも、媚薬の効果が……」 「トイレに行かなくてもここに便利な肉便器があるだろ?」 「いや、えっと軽い冗談だったんですよ?」 私は伯爵から距離を取るように後ずさる。 「ははは、軽い冗談?軽い冗談でも責任は取る必要はあるよな?」 下半身丸出しの伯爵が私の腕を強い力で掴む、女の力では抗えない。 私の腕を掴んだ伯爵は隣室につながるドアを開けると引っ張り込む。 そこは伯爵の寝室。 私はベッドに放り投げられる。 「いや、えっと、あの……?」 「こうなる事は判っていて媚薬を盛ったんだな?いいだろう。だったら希望通り犯してやろうじゃない?」 あれ?本気で怒ってる? 「えっと、本気で怒っておられます?」 ベッドの上で馬乗りになられて動けないように両手を頭の上で押さえつけられる。 「ふはははは……、愚問!」 そう言うと伯爵は片手で私の両腕を拘束したまま、あいた手で私のスカートを捲り上げ、下着に手を掛ける。 「いや、ちょっと待って!前戯とかは?」 「あるわけないだろ、私は今すぐスッキリしたいんだよ!」 下着を引きずり下ろされ、露出した下半身に凶悪な剣が突きつけられる。 ズブリ、問答無用でソレが胎内に挿入されていく。 「い、痛い!痛い、痛い。ちょ、ちょっと待って!マジで!マジで反省してますから仕切直しを!」 「何をどう仕切り直すつもり?私のコレに余裕はないよ?」 「だったら、魔法で元に戻して……」 「無駄。お前は一度使った魔法は無詠唱で唱えられるけど、それは精神が安定してる状態じゃ無いと無理なのは知ってる。今の状態で魔法は使えないだろ?大人しく罰を受け入れろ」 ニヤリと笑うと更に深く挿入てくる。 「痛い、痛い!アソコから脳天までを杭に打たれているよう……」 「そりゃ、処女には堪らない痛みだろうねぇ?でも、それだけの事をお前はしたんだから当然の罰だ。いくら私でも我慢の限界ってものがある事を知ってもらおうか」 強引な挿入に本気の怒りが見え隠れする。 「まさか、こんなに痛いなんて…… あ、あひぃ〜!」 「ははは、どう?ご希望のセックスの味は?」 「悪かったから…… もうやめ……」 「はい、フィニッシュ。あなたが盛った薬のせいですぐに出ちゃうから、長持ちしなかったね」 ドピュッ、胎内のアレが膨れあがり、何かが大量に発射されて中が満たされる。 「あ、あぁぁぁ!」 「ふぅぅ」 満足げな吐息とともに私を解放する。 「酷いですぅ」 私は両手で顔を被って訴える。 股間が痛い。未だに私のアソコに伯爵のアレが入っているようなズキズキが残っている。 しかし…… 目的は果たした。 ……思わず口元が緩む。 バフッ!! 私の頭に柔らかい何かがぶつけられる。 「な、なにを……?」 見上げると伯爵が怒った顔で羽根枕を振りかぶっていた。 バフッ!バフバフバフッ! 連続で叩きつけられる羽根枕。 「ちょ、ちょっと、伯爵さま?」 「なにが"伯爵さま"よ!このバカ!」 なおも振りかぶられる羽根枕。 「えっと、今の私は伯爵さまに凌辱された被害者ですよね?」 腕で枕を防御しながら、訴える。 「被害者?今、アンタ笑ったよね?口元が上がったのを見たんだからね!」 そう言って"俺"を睨みつける。 「アンタ、わざと媚薬を盛って私を挑発して犯させたでしょ!私に"私"を犯させるなんて悪趣味にも程があるわよ! いくら何でも我慢の限界よ!!」 「えっと、それなら"俺"だって、俺の童貞を奪ったんだからおアイコと言う事で……」 バフバフバフッ! 言い訳を口にしかけた俺の頭を再び振りかぶられた枕が襲う。 「あんたねぇ?本当に女の処女と男の童貞が対等だと思ってるわけ?」 枕をさらに大きく振りかぶった体勢で問いかけてくる。いや、出来る返事は決まってる。 「女、女女女!女の処女の方が遙かに重要です!だから被害者は私……」 ばふん!羽根枕が高速で振り下ろされる。 「アンタねぇ。いい加減に私の身体を返しなさいよ!もう三日よ! 一度命令される側の立場を味わって見たいからって言うから入れ替わりを了承して上げれば調子に乗って!」 「いや、だって。俺の領地の中では俺が黒と言ったら白い物でも黒くなるんだぞ?どんな我が儘を言ったとしてもそれが通ってしまうんだ?つまんないだろ?誰かに命令される快感を味わいたいと思うだろ?」 「知らないわよ、そんな事」 「その点、メイドっていいよな?御主人様に無理難題を言われても逆らえずに泣く泣く従わざるをえないんだ。最高だろ?」 そう言って今の状況を見せつけるようにか弱そうなポーズを取ってみせる。 「あんたのメイドに対する認識について一度じっくりと話し合う必要がありそうね?このド変態」 「酷いなぁ。双葉姉ぇだってノリノリだったじゃないか?男爵の件。アレって俺の身体にカウンターマジックを掛けてる事を承知で俺をターゲットに指定したよな?男爵程度の魔力ならほぼ100%跳ね返されるのを承知で?」 「あら、なんのことかしら?カウンターマジック?そんな魔法が存在するの?知らなかったわぁ?」 わざとらしい声で俺から目を反らす双葉。 「嘘をつけ」 「だったら言わせてもらうけど、男爵の不完全な入れ替え魔法を跳ね返した時に完全版に補完したでしょ?」 「はぁ?なんの事やら?初めて受けた魔法を完全版にってできるわけないよ?」 「嘘を吐きなさい。そこの書棚に魂入れ替えの魔法書が収まってるのは知ってるのよ?大体、ウチにも同じような魔法が伝わっているから私達の魂も入れ替えられたんでしょ!とにかく、もういい加減に元に戻してよ!」 そう訴える双葉姉にぎこちなく笑って返事する。 「今はちょっと無理」 「なんでよ?魔法を掛けたのがあんただから元に戻せるでしょ?」 「えっと…… おこらない?」 「なに?」 「さっきから股間がズキズキと痛くって精神の集中が出来ない」 そう口にした途端。 「このバカァ!」 羽根枕が思いっきり俺の頭に直撃した。 「そうか、そうか。私の身体が処女を失った上に元に戻せない?」 「いや、戻せるよ。戻せるけど痛みが治まるまで時間が必要というか……」 「そうか、そうか、だったら痛みになれてしまえば早く戻せるのよね?」 そう言って俺の腕を掴む双葉姉。 「えっと、ちょっと、なにを?」 俺は掴まれた腕を振り払おうとするが女の力で男に敵うわけもなく…… 男の力ってこんなに強いんだ? 「理不尽な無理難題に無理矢理従わされるシチュが好きなんでしょ?私がその望みをイヤと言うほど叶えてあげる。どうせ失った処女は戻ってこないなら、男のコレを受け入れ易い身体にしてしまいましょうね、伯爵様?」 にっこりと笑って股間の凶器を取り出す双葉姉。 「いや、戻す、戻すから少し待って。待ってくれたら精神集中もできるから。 あ、というか、呪文を唱えれば普通に発動させられるから……」 「問答無用」 必死に弁解をする俺の双葉姉の身体を双葉姉の俺の身体が押さえつける。 「いや、待て。御主人様の命令だぞ」 「ははは、何を言っているのかな。このメイドは? やめた、やめた。大人しく御主人様の言う事を聞くメイドなんて私のガラじゃなかったのよね。これからは昔通り私らしくやるわ。 さて、お仕置きの時間の始まりよ」 そう言って双葉は俺のスカートを捲り上げ、下着を器用に引き下ろす。 「い、いやぁ!」 俺は必死に片手を引きはがし、下半身を守るべく手で被う。 「ふっ。無駄な努力を……」 更にその手をかいくぐり、その下に手が強引に侵入する。 「あ、あふっ!」 股間に痺れが走り、防御に使っていた手が浮く。 「大丈夫。今度はちゃんと受け入れ易いようにしてから挿入てあげる。 耳元で双葉姉ぇが息を吹きかけるように囁く。 「あ、あぁん、りゃめぇ。あ、あたまが、あたまがはたらなくなるぅ!」 「ふふふ、なにも考えなくていいのよ。女のセックスが気持ちよくなるまでその身体に教え込んであげるから」 悪い笑い顔で双葉姉ぇが凌辱される俺を見下ろしてくる。 「いやぁ、マジで。マジで引き返せなくなったらどうするのぉ!」 「まぁその時は私が清彦を継いであげてもいいかな?」 そう言って俺の身体を裏返しにして背中越しの両腕を掴まれる。 「いや、冗談はいいから……」 「ふふふ、それではお仕置きを始めましょうか?」 準備が整った俺のアソコに双葉姉ぇのアレが背後からズブズブと侵入を果たす。 「あひゃあ!痛い、痛い痛い!やっぱり痛い!」 「大丈夫。最初だけ。すぐに慣れるから。 ……多分」 「あ、あは、あはぁ!た、多分ってなんだよ!」 「だって、私は精神的にはまだ処女だから聞きかじりの知識でしか知らないからね。 あ、でも童貞は卒業したか?」 「ふざけるなぁ!!」 双葉姉に後ろから犬のように四つん這いになり、パンパンと打ちつけられながら涙を流しながら抗議する。 * 「うっ。うっ、うぅぅ」 ベッドにうつ伏せになって凌辱された屈辱に涙を流す俺。まぁ、真の目的は果たせたんだから文句はないのだが…… 「ははは。まぁ、軽い冗談だから」 腕を腰に当てて笑って見下ろす俺の身体の双葉。 「軽い冗談で何度も犯されてたまるか」 「何度もって三回、中出ししただけじゃない」 「童貞の俺の身体が三回も射精した事に驚きだよ」 「溜まってたんじゃない?」 「うるさい」 「それで?」 「"それで"?」 「なんでこんな事をしたのか、って聞いてるのよ!」 「軽い悪戯」 「ほほう? 清彦という男は軽い悪戯でこういう事をすると言いたいの? だったら、その悪戯にもっと乗ってあげましょうか?」 双葉が立ち上がると股間の凶器が鎌首をもたげる。 いや、待て元気すぎるだろ俺の一人息子!媚薬の量を間違えたのか? 「い、言います、言います。だから待って!」 「だったら素直に言いなさいよ」 「前から双葉姉に何度も求婚してたのに双葉姉は主従でそれは出来ないって断ってたじゃないか?」 「そりゃ、伯爵様とメイドでは身分違いもいいとこだからね」 「でも、ここでは俺が白と言ったら黒い物でも白に出来るんだから主従関係なんて問題はないだろ?」 「私の心の問題よ」 「そう言っていつも断るから、強引に結ばれようと思ったけど俺が双葉を襲うと嫌われそうだろ?」 「嫌われそうと言うより確実に嫌うわね。 男に無理矢理に力づくでモノにされるなんて最低だもん」 「だから、双葉から俺を襲うように仕向ければいいかな?と…… 責任取ってね?」 可愛く首を傾げて上目遣いに双葉を見上げると……… バフン!!!羽根枕が飛んで来た。 「あんたねぇ!そんな目的で二人の身体を入れ替えて私に媚薬を盛ったの? こんなのノーカンよ、ノーカン!無かった事にすれば問題なし!」 真っ赤になって俺を怒鳴る双葉姉。 「でもノーカンには出来ないと思うよ?」 「なんでよ?」 「双葉姉の身体は今日が危険日なのを知ってるから…… 一度だけでは収まらずに三回も中出しされたからほぼ確実に孕んでると思……」 腹を撫でながら俺が告げると。 「巫山戯るな、巫山戯るな、巫山戯るな!私の身体が清彦の子を孕んだだぁ?」 首を絞めながら俺をガクガクと揺さぶる双葉姉。 「ふふふ、いくら双葉姉が俺を拒んでもお腹の赤ちゃんに罪はない、この子を双葉姉と同じ目にあわせたくなかったら俺と結婚してくれるだろ?」 俺は自信満々に双葉に宣言する。 「はぁぁぁぁ、こんな卑怯な求婚って聞いた事ないわ」 呆然と俺を見た後、ガクンとクビを折って諦めたように深い溜息を吐く双葉姉。 よし、落ちた。心の中でガッツポーズ! 「…………わかったわ。ただし、結婚を受け入れるには条件があるの?いい?」 ずっと考え込んでいた双葉姉が一転、にっこりと俺に微笑みかける。 「俺に出来る事だったらなんでも飲むよ」 求婚を受け入れられた喜びのあまり俺は双葉姉に抱きつく。 「この子は清彦が産んでね?」 俺の首に腕を回し、抱きついた俺の下腹を優しく撫でながら双葉が微笑む。 「………… はい?」 一瞬、双葉の言った事が理解出来なかった。 「孕んだのは清彦。孕ませたのは私。だったらその子の出産義務は清彦にある。ちがう?」 にっこりと俺に笑いかける双葉。 「いや、違ってはないかも知れないけど…… 冗談だよな?」 「冗談だと思う? さすがに今回の無理難題は主従の範囲を超えてると思うの? 偶には命令される側の理不尽を味わって見たいというのは小さい頃からの清彦の性癖を知っているから、判らないでもない。 本当に身体を入れ替えるのはどうかと思うけど。 まぁ、入れ替えられたからには多少身体を弄ばれるのは覚悟のうちだったけどね」 「いや、本当にイヤらしい気持ちは…… 少ししか?」 夕べ、胸は揉んだりしたけど…… 「うん、それくらいは想定のうち。 でもね?"孕ませる"ってのはアウトでしょ?その場の事で済まないのよ?ましては私は乙女。いままで殿方のお手つきになった事なんか無かったのよ」 「はい、それはさきほど……」 「主従の繋がりを考えなければ確かに清彦の事は嫌いじゃない。 確かに妊娠してしまったら結婚も有りだと思う。 けどね、やっぱりこの方法は理不尽すぎるし納得できない。 だ・か・ら、これは私から清彦への試練と罰」 「試練と…… 罰?」 「そう、罰。 それが私が清彦の求婚を受け入れる条件。私は身に覚えのない赤ちゃんを産むのはイヤだけど、そのお腹には確かに私の赤ちゃんがいる。 清彦の言う通り、私の心には堕ろすという選択肢はない。」 「だから、その子は清彦が産んで。二人目からは私が産む。 そして、今から出産が…… ふむ?そうよね? 出産が終わって授乳期が終わるまで二年間は清彦が双葉。私が清彦に成りすます。 それを周囲にバレずにやり過ごせれば結婚は受け入れてあげる。 それが私が清彦に与える"試練と罰"」 にっこりと笑う双葉。 「マジ?」 俺は上目遣いに双葉姉を見上げる。 「マジ、だからそんな条件飲めるかぁ!!って言うのなら今すぐこの身体を元に戻しなさい。 そうしたら、私はその足で部屋に戻り、荷物を纏めてここから出ていくから」 笑ってはいるが目は真剣だ。本気だ。 双葉姉は本気で言ってる。 幼なじみで昔っからの遊び相手。芯が強くってケジメを大切にする今も好きな俺の初恋の人。基本的に性格はSより。つまり、双葉姉が口にしていったと言う事は…… でも、俺が双葉として二年間?メイド?妊婦?その後は赤ん坊にお乳をやる経産婦?男の俺が? 「条件を飲むのね?」 途惑う俺に双葉がニヤリと笑う。 「いや、まて。 さすがに即答は少し、元に戻って考える時間を……」 「なに言ってるの、清彦。 そんなに嬉しそうにニヤついてる癖に」 Sっ気たっぷりに笑う双葉。 「え!?俺が笑ってる?」 思わず手が両頬に手を添える。頬が熱い?あれ?俺、マジで笑ってる? いやいやいや、待て待て。 双葉として二年も過ごさないといけないんだぞ? 自業自得とは言え妊婦だぞ? 赤ちゃんにお乳をやるんだぞ? 今、目の前にいる俺の姿をした双葉姉の奥さんを二年も演じさせられるんだぞ? この王国でも最強と噂される辺境伯爵である俺が? しかもバレれば双葉は出て行き、貴族である伯爵がメイドに成り代わっていたという噂が広まれば貴族としての地位も名誉もズタボロに…… 「さて、どうするの? 私の試練を受け入れる? それとも諦めてこんな条件を出す私をクビにする? うん、私はお給金を充分に貯め込んでるから街に下って酒場でも雑貨屋でもなんでも出来るしね?」 そう言ってなおも迷う俺の顎をクイッと持ち上げ不敵に笑う。 * * * 五日後。 「伯爵様、オリバー夫妻をお連れしました」 双葉がオリバー夫妻を連れて執務室に入ってくる。 「清彦伯爵。どうもお世話になりました。ほら、お前も挨拶をしろ」 「伯爵様。先日は大変失礼をしました。どうぞ、お赦し下さい」 入ってきたオリバー男爵に促されてエリスが深々と頭を下げる。 「これはこれは。すっかり男爵の奥さんに成りきっておられるようで」 私はソファを勧めながら私も前のソファに座り、エリスの姿を見て感心する。 前の男爵の面影は微塵も見えない。エリスは男爵の腕に寄りかかるようにしてソファに腰を下ろす。 「ははは。こいつの持っていた魔法書には"入れ替え"以外にも精神系の魔法が少しばかり載っていましてね。試しにこの数日、女の悦びを教え込みながら"魅了"の魔法を掛け続けていたらこの通りですよ?なぁ、エリス。俺の事をどう思う?言って見ろ、俺は誰だ?」 「はい、男爵様は私に女の悦びを教えて下さった大事な旦那様です。 私は旦那様のペニスにのみ満足感を得られる淫乱妻です」 ポッと顔を赤らめて俯き羞じらう様に口を開く。 「それではお前は誰だった?」 「私は旦那様に拾って頂いたエリスというただの平民の女でした」 双葉が男爵達と私の前に紅茶を置きながら耳打ちする。 「元男爵は完璧にエリスに取り込まれてますね。元々、エリスに才能があったんでしょう」 「それでこれからどうされるのですか?」 私は男爵に尋ねる。 「王都に帰って、こいつが傾けてしまった男爵家を立て直しますよ」 「すいません、旦那様……」 「いいさ。それもやりがいがある」 そういて隣で情け無さそうな顔をするエリスの頭を撫でる。 「私も微力ながら手伝わさせて頂きます」 「お前は綺麗なドレスを着て、美味しい物を食べて赤ちゃんを産む事だけを考えていればいい。 後はベッドで俺に奉仕する事もだな」 そう言ってエリスの頭をクシャクシャと愛おしそうに笑って撫で回す。 「はい、旦那様。一生懸命お仕えしますのでよろしくお願いします」 その声にエリスが嬉しそうに頷く。 二人がもう一度頭を下げて執務室を出て行く。 しばらくすると、玄関から二人を乗せた馬車が王都へと帰っていく。 * それを二階の執務室から見下ろしながらつぶやく。 「あの二人はこれからどうなるのかな?」 「大丈夫ですよ。エリス嬢はなかなかしたたかな女性……もう男性か? ですから男爵家を立て直せると思いますよ」 双葉がそう言って微笑みながらティーセットを片付ける。 「それで?」 「それで?」 私の言葉に双葉がオウム返しで尋ねる。 「お前!またお茶に媚薬を盛ったな!」 「いえ、今度は伯爵様のお茶にだけしかいれてませんよ?」 「俺のお茶に入れるだけで充分だ!何故、入れた!」 「いや、婚約しちゃったから普通に肉体関係があってもOKかなぁ?と。 ほら、前にやってから一度も求められてないし。喉元過ぎれば熱さを忘れると言うか、痛かったけど、また犯されるのも面白……」 「ふざけるなぁ!わかった、お前もあの男爵のように二年と言わず一生女でいたいと思うまで犯してやる!」 私は双葉の腕を掴み、強引に寝室に続くドアに向かう。 「いや、ちょっと待って!軽い悪戯だから!さすがに一生女はイヤぁ!」 「黙れ、このドM伯爵!お前はもうずぅと双葉をやってろ!」 私は私の姿をした清彦をベッドに投げ出すとドアに鍵を掛け、服のボタンに手を掛ける…… 「いや、まじで!ちょっとした冗談ですからぁ!」 「黙れ。その言い訳は聞き飽きた。本当は私になりたいんだろ? 遠慮する事はない。 私もちょっと犯す側になれてきたからな。 しかし、なんで清彦は普段と違って私に対してだけこんなにも情けなくなるのかな」 「子供の頃に双葉姉にそう躾けられたからだよ!双葉姉のサドぉ!」 「マゾの伯爵様とお似合いだな。ははははは!さぁ、覚悟しろっ!」 *** 九ヶ月後…… 「あの…… 伯爵様?」 「なんだ、双葉。結婚式も終わって半年以上経ち、夫婦となったのに他人行儀だな。それで?」 「あの…… もう来月は産み月でお腹がかなり重いんですけど……」 「うん、順調に育っているようだな。結構、結構」 「それで…… そろそろ代わって頂けませんか?出産が……」 「なんだ。離婚がしたいのか?いいぞ、今すぐに身体を戻して。 私は出産どころかペニスすら受け入れた経験もないがな。 それでも私に出産させたいならな」 「……離婚ですか」 「そういう約束だろ?元に戻ると俺は孕ませられた記憶の無い赤ちゃんを産まさせられるんだからな」 「孕ませた覚えはあるクセに……(ボソッ)」 「ん?言いたい事があるならはっきりと言えよ。孕ませた覚えがあるからこうやって夫を務めてやっているのになにが不満だ? 孕ませられた者が産む、孕ませた者がそのフォローをする、当たり前の事だろ?」 「……あの。 本当に授乳期間が終わったら元に戻してもらえるんですよね?」 「魔法を使えるのはお前だけなんだから、いつでもお前の意思で戻せるだろ?なんなら今すぐにでも戻せば?」 「でも、今、すぐに戻したら……」 「即、離婚」 「ですよね〜? 本当の本当に授乳期間が終わったら戻しますよ?無論、その時は二人は夫婦で」 「あぁ、何度も約束してるだろ?それとも俺が嘘を吐いた事が…… 何度もあるか?」 「何度もは無いけど…… ほんっとうに信じていいんだろうな!?」 「当たり前だろ?俺を信じろ。 それよりも、今男言葉を使ったな? お仕置きだ向こうを向いて机に手を付くんだ、双葉」 「え?え?今のはつい……」 「ダメだ。妻の躾は夫の役目だからな。さぁ尻をこっちに向けるんだ。 俺もツライが夫の役目だ」 そう言って笑いながら、大きな腹の双葉に机に手を付かせて、スカートを捲り上げ、お尻を露わにすると、もうすっかり使い慣れた股間の凶器を手に取り双葉の女の子の部分に宛がう伯爵。 「あ、あぁん、だめぇ!赤ちゃんがビックリするからぁ」 「あははは、元に戻ればお前もこういう事が出来るんだぞ、楽しみだろ?」 それはそれで夫婦仲の良い二人だった。 * * * 数ヶ月後。 「うそつきぃ!元に、元に戻ってもいいって言ったのにぃ!」 「何を言ってるんだ?授乳期間中に二人目を孕む双葉が悪いんだろ? 俺は言ったよな?孕んだ者が産む責任があるって? だから、避妊をしてなかった双葉が悪い」 「で、でも……」 「言い訳無用。 次はちゃんと避妊しろよ? とにかく二人目の授乳期間が終わるまで期間延長な? それとも離婚する? 私はちゃんと孕まされて赤ちゃんを産みたいんだからね。 中途半端はイヤだから」 そう言って笑う伯爵と困惑した顔で見上げる双葉だった。 それは、生涯で五人の子宝に恵まれ、王国一のおしどり夫婦として名を馳せる清彦伯爵の物語。 |