私の名前は山口希恵(きえ)といいます。ごく普通の会社に通う、ごく普通の女性のつもりだったのですが・・・
 ある日を境に、私の人生は大きく変わってしまいました。会社へ行くのさえも嫌になってしまうほどの出来事があったのです。
 その出来事とは・・・・


やめてください!
作:Sato


 私はいつもの通勤列車に乗って出勤していました。7時25分発、大阪行きの新快速。最近は「女性専用車両」というものがありますが、この路線ではそれは導入されてはいませんでした。
 高校時代は自転車通学していた私は、今まで電車で通ったことはありませんでした。社会人になって、大阪へ引っ越してきて初めて、電車での通勤を体験することになったのです。
 最初は「痴漢が出るんじゃないか」と内心、ビクビクしながらの通勤だったのですが、意外なことに、それほどの被害にあうことはなかったのです。電車が揺れた拍子に、誰かの手がお尻に触れたりする、といった程度のことはありましたが、そういったものを除けば、「痴漢だ」と確信できるほどのものはありませんでした。
 田舎から出てきて、都会に対して恐怖に似た感覚を抱いていた私でしたが、こうして、3ヶ月ほども何事もなかったので、すっかり入社当時の緊張感のようなものがなくなってしまい、油断していました。

 1駅停まるごとに、どんどん乗客の数は増えていきます。ほとんど全ての人が大阪駅で降りるのですから、それも当然なことです。
 とはいえ、新快速だけに、途中、5回ほどしか停まりません。あと20分ほどで大阪に着きます。立ちっ放しなのもあと20分だけだと思うと、正直、ほっとするものです。

「おっと・・・失礼」

 列車が発車した時に揺れ、私の胸に、男の手が触れたのです。男の手には、皮製のかばんが握られており、今の出来事が、意識的に引き起こされたものではないことを主張していました。私もこんなことは日常茶飯事なので、全く気にしませんでした。
 しかし、事件はこの後起こったのです。

(えっ!)

 少し眠気でぼうっとしていた私は、突然襲ってきた気持ちの悪い感覚に、一瞬に目を覚まされてしまいました。私のお尻に誰かの手が・・・!!
 今までのように、電車の揺れなどの何かの前触れがあったわけではなく、それは唐突にやってきました。しかも、手はいまだに私のお尻を撫で回しているのです。いつもの事故的なものであれば、瞬間的なものなのですが・・・

「!!」

 私はハッとして、うしろをぐるりと見回しました。そのときの私は、きっと恐ろしい顔をしていたのでしょう。私の目に入った人たちは、一様に虚を突かれたような表情をしていました。――私が見た人――

 私と同じくらいの年に見えるOL風の女性。
 50代ぐらいに見える、でっぷりと太って禿げ上がった頭のサラリーマン。
 セーラー服姿のコギャル風の女子高生。
 30前後の職業不明の普段着の男。

 このうちの誰かが・・・?

 しかし、私が振り向いた瞬間、お尻にあった手の感覚がなくなってしまいました。私が見たことで、痴漢は攻撃をやめたようです。と、いうことは、やはりこの4人の中にいたに違いない、私はそう思いました。
 みな、一様にどうして私が急に振り返ったのか分からない、といった顔をしています。誰が犯人か知りませんが、相手はなかなかの演技派のようです。私はあきらめて振り返るのをやめ、再び前に向きなおりました。

(!!・・・・ま、まただ・・・)

 1分もしないうちに、再び犯人は触ってきたのです。またもお尻を撫で回してきています。手は先ほど以上に、いやらしい動きをしてきました。私はもちろん、そんなものに快感を覚えるはずもなく、ただ、寒気に似た感覚に襲われるだけです。
 私は意を決して、その手を取り押さえようと考えました。しかし、今、私の手にはバッグが握られており、それを持ったまま実行するのは難しそうでした。もちろん、ここでバッグから手を離せば、問題なく取り押さえられるでしょう。しかし、この満員列車の中で、手荷物を取り落としてしまったら、回収するのは不可能に近いのです。私はその危険を冒す勇気がありませんでした。

「あっ!」

 私は思わず小さくではありますが、声をあげてしまいました。いつの間にか、痴漢の手がスカートの中に差し入れられて、ショーツの上から触られていたのです。
 痴漢は自信をつけたのか、その手の動きはさらにエスカレートしてきていました。私のお尻の感覚を楽しんでいるようです。一体誰が・・・!?
 私は再びうしろを振り返りました。さきほどと同じ顔ぶれがそこにはありました。そのうちの一人、私が一番怪しいと思っている、50がらみの太った男が、私が振り返った瞬間、ぷいっと顔をそむけました。まるで、何か気まずいことでもあるかのように・・・
 私は最初から男二人のどちらかではないかと思っていました。最近は「痴女」なんていうのもいるらしいですが、やはりこういうことは男のやりそうなことだからです。

「ん・・・」

 私はまた声をあげてしまいました。今回は振り返っても、手の動きが止まらなかったのです。いつの間にか、手はショーツの中に入り、直接お尻を触ってきます。最初はおぞましさしかなかったのですが、不覚にも、徐々に感じてきているようです。いえ、この手の持ち主はやはり、常習犯なのでしょう、私が感じやすいように動くのです。

「えっ!」

 とうとう手が、私の前のほうに回り込んできたのです。前のほう、つまり私の・・・
 手は、見事なまでの動きで、私の恥毛を掻き分け、秘裂を指で刺激し始めました。

「ぅぅぅん」

 私は声を殺すことだけで必死でした。もはや、犯人をどうこうする、といったことは考えられなくなってきています。
 そこが熱くなっているのが、自分で直接触らなくても分かります。手はそれを感じ取ったのか、秘裂の付け根、つまり女の身体で一番感じるところに矛先を変えてきたのです。

「んふ・・」

 私は腰が砕けてしまいそうになるのをこらえるので精一杯でした。もはや、どうすることもできないところまできている・・・・それが正直な感想でした。

「ん・・・ふ・・・・あくっ」

 私の押し殺した声が列車内に響き渡ります。もはや、周りを見ている余裕すらないですが、周りの人には聞こえているでしょう。ですが、誰も助けてくれる様子はありません。私は改めて都会の怖さを痛感していました。

「あ・・・」

 手の動きは最終段階に入り、とうとう秘裂の中に指を差し入れてきたのです。それもどうやら二本・・・

「んんっ」

 手はゆっくりと私の膣内でピストン運動を繰り返してきます。その度に私の身体はびくびくと反応してしまうのです。
 ですが、私はやめてほしいとは思わなくなってしまっていました。もはやここまできたら、最後までイカせてほしい、そう思うようになってしまっていたのです。

(あ、すごい・・・段々と何も考えられなくなって・・・・くる・・・!)

 痴漢の手が動くごとに、私に耳に、ぐちょぐちょという、いやらしい音が聞こえてきます。私の耳に入るほどですから、周りにも聞こえているに違いありません。しかし、最早、私にはそれを隠したりする余裕は全くありませんでした。ただ、されるがままになり、感じるままに声を出してしまっていました。

「あん・・・いい!・・・」

 とうとう、私の旅も終わりを告げるときがきたようです。下半身から、何か熱い波のようなものがせり上がってきて、私の頭の中に入ってきました。

「い、イクーー!!」

 私はとうとうイってしまいました。自力では立っていられなくなり、目の前の、さっき胸を触った男の人にもたれかかってしまいました。

「大阪〜、大阪〜」

 その直後、列車が大阪駅に着きました。ぞろぞろと降りていく乗客。私も足が思うように動きませんでしたが、押されるようにして降りることができました。
 それにしても、まさか電車の中で・・・私はいまだに火照っている身体を感じながら、駅の階段を下りていました。
 そのとき、何気なく時間を見ようと腕時計を見た私は、恐怖に取り憑かれてしまいました。

「な、何、これは!?」

 私の見たもの――それはべっとりと着いた粘液でした。特に人差し指と中指を中心に着いているようでした。
 私は思わず匂いを嗅いでしまいました。

「こ、これは・・・・」

 それは、私の怖れたとおり、私の「愛液」だったのです。

(どうして私の手に私のものが着いて・・・??)

 答えは一つしかないのは分かっています。ですが、その答えを理解し、受け入れることなどできるはずがありませんでした。
 私は現実から目を背けるようにして、駅のトイレに入り、手を洗い流しました。あっという間に、愛液は流れ落ち、まるで何もなかったかのように、いつもの自分の手に戻りました。
 その日はそれ以降、何も起きることはありませんでした。


 ですが、電車の中でのことは、あれから毎日起こったのです。そのたびに私は絶頂を迎え、手は愛液で濡れそぼってしまうのです。
 もちろん、私は自分の手がそうやって自分自身を攻めているのをこの目で確認しました。ですが、それでも信じられませんでした。
 どこの世界に、自分の手が勝手に動いて痴漢を働いたなんていう話を信じる人がいると思いますか?こうやって現実に見せられても信じられないんですから。


 私はとうとう会社を辞め、実家に帰って家の商売の手伝いをすることにしました。
 もちろん、親には本当の理由はいわず、「都会の水に合わなかった」といって帰ってきました。
 あの事件は一体なんだったんだろう?今でも不思議な気持ちでいっぱいです。
 皆さんも、満員列車にはお気をつけて。


(おわり)



あとがき

toshi9さん、「TS解体新書」開設、おめでとうございます!
遅ればせながら、開設記念作品として遅らせて頂きました。
本当にお世話になりっぱなしでした。
これで少しは報恩できたかなと喜んでいます。

それは置いておいて。

今作は真相は闇の中で終わっていますが(爆
犯人が誰かはともかく、これは「部分憑依」です。
誰かが左手に憑依していた、と言う事です。
あの後ろの4人かどうかも不明ですね(なら書くなよ!)

それでは短いですが今回はこの辺で。

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