『皮り種』
作:嵐山GO


第10章 帰巣(前編)

「夏休みになったらね、女の子たちだけで海に行く事にしたの」
 オレは孝明の部屋で、セックスをし2人で絶頂を迎えた後、
ベッドの上で言った。
「海?」
「うん。2年生の神谷美樹さんていう先輩がいるんだけど、
一緒に行かないかって誘われたんだ。行ってもいいよね?」
「うん。それは構わないけど、他には誰が行くの?
女の子だけで大丈夫?」
「大丈夫だよ。後は安藤加奈さんと、太田麻衣子ちゃん。
それに同じクラスのチヨ、私を入れると5人も行くし」
「ああ、時々一緒に帰ってる市合千代子さん?」
「そうよ。土曜日はいつも彼女に勉強を教えて貰ってるの」
(実はその後に、お楽しみがあるんだけど)

「神谷さんがいるんなら大丈夫か…たしかグループの
ヘッドだったよね?」
「うん、そう。怖いけど、結構いい人よ」
「分かった。瑞希を信じてるよ」
 2人はいつしか相手を呼び捨てで呼ぶようになっていた。
「孝明、ありがとね」
 ちゅっ
 起き上がって、恋人の唇に口づける。

「あのさ、今度僕も瑞希の家に行ってもいいかな?」
「いいよ。でも前もって言ってね。片付けておくからね」
「エッチできる?」
「うーん…どうかな。私の部屋でしたいの?」
「うんっ!」
「パパとママが留守だったらいいわ」
(ま、誰もいる訳ないんだけどな)

「そういえば最近、瑞希。お母さんの話ししないね」
「あ、え?そうだっけ?だって、ほら、私だってもう子供じゃ
ないし」
「そっか…そうだよね」
「それよりさぁ、、もう一回エッチするでしょ?」
「うん。もちろん!」
「じゃ、今度は私が立って壁に手をつくから、後ろから入れて」
「あ、それいいね。なんなら窓際でやる?」
「ええっー?外から見えちゃうよー」
「それがいいんじゃん。興奮するでしょ?」
「恥ずかしいなー…うん。でも、いいわ。ここでいいの?」
 オレは二階の部屋の窓際に立ち、外からは顔だけが見える
ようにして言った。

「オッケー。じゃ、入れるね」
 孝明は細い腰を掴むと、そのまま一気に奥までペニスを
挿入した。
 ずぶりっ
「はんっ!!」
「ほら、見て。瑞希、向こうから人が歩いてきたよ」
「ああ、やっぱり駄目ぇー。恥ずかしい…見られちゃう。
あんっ、あんっ」
 ぎゅっ、ぎゅーっ!
「うわっ、凄いや。いきなり締まってきた」
「あーん…やーん、だって見られてるかと思うと…」
 2人は16歳という若さで、早くも変態的な領域に足を
踏み入れていた。

明けて土曜日、いつも通りチヨを呼び勉強を教えて貰った後で
言った。
「もうすぐだね。海」
「うん…私、泊りがけで海なんて初めて」
「ああ…そういえば私もそうかな?」
(考えてみればウチも家族3人で泊まりの旅行なんて、一度も
行ってないな)

「あ、そうだ!チヨ。ちょっと待っててね」
 オレは机から離れて、部屋の片隅の置いてあった紙袋を
開けた。
「何か買ってきたの?」
「うん。チヨが来る前に駅前のデパートに行って、これ買って
きたんだ」
 取り出したのは、柄違いの2人分の水着。

「はい。片方はチヨのだよ。どっちがいい?」
「え…いいの?」
「うん、いいよ。でも言っとくけど、どっちもビキニだよ。
パレオは付いてるけど」
「パレオ?」
「腰に巻く布みたいなもんかな?ほら、着てみたら。私も
着るから」
「ええー、ビキニなのー?恥ずかしいなー。ビキニなんて
初めて」
「誰にでも初めてはあるよ。大丈夫。私も初めてだから」
 オレとチヨは洋服をベッドの上に脱ぎ捨てながら、水着を
着る。

 チヨはパステルブルーを選んだ。ハイビスカスの絵がプリントされ、
ブラとショーツの縁には幅広のフリルが施されている。
「どう?似合うかしら?」
「うん、いいよ。私は?」
 デザインは全く同様で、色はベビーピンク。小さなパイナップルが無数に描かれている。
「可愛いー!やっぱ瑞希はピンクが似合うよね」
「ありがと。ねぇ、今日はこの格好でエッチしようよ」
「ええ?いいけど…シミが付いちゃうかも」
「洗えばいいじゃん。ほら、こっち来て。早くー」
オレは、いつものようにベッドにチヨを招いた。

「あふーんっ、これってなんだか…コスプレエッチみたいね」
「うふふ、そうね。でも今までだってセーラー服着たままとかで、
したじゃない」
「セーラー服は私たちの制服だもの。コスチュームプレイじゃ
ないわ」
「あはは、そうだったね」
(でもオレにとってはセーラーも体操服もスクール水着も全て
立派なコスプレなのさ)

「ああーん、今日の瑞希って何だか荒っぽい…よ。あんっ」
「だって、水着姿見てたらもう我慢出来なくなってきちゃって」
(変態に益々、拍車がかかってきた。やっぱり中身は只の、
いい年こいたオヤジだからな)
 昨日も恋人と濃厚なセックスでイキまくったばかりだと
いうのに、今日は今日でレズプレイに興じている。
(それにしても、まったく女の性欲ってやつは際限がないな)
 中身は男だと自分で思ったばかりなのに、都合の悪い(?)
部分は『女の性欲』という表現で意味合いを架け替えていた。

あっという間に、一学期は終了し夏休みに突入。
 オレたちは朝、駅前の広場で待ち合わせし合流した。
 自分を含め5人は、それぞれ上はTシャツかタンクトップ、
下はミニスカートかショートパンツ姿だった。
(くおー、いいなー。はち切れんばかりの若さだ。今夜も
この子達とハメまくれるかと思うと、早くも皮の中でオレの
オトコが膨らんできちまう)
「ねー、瑞希ったら。何、デレっとしてんのよ?」
チヨに脇腹を突かれてオレは我に返った。
「あはは…ゴメン、ゴメン」

「みんな揃ったみたいね。えーと今日はバスで目的地に向かい
ます。
向こうに着いたらまずホテルに行き、チェックインしたら部屋で
着替えて海まで歩きます。その際、忘れ物をしないように自分で
ちゃんと確認して出てね」
 今回の旅行の発案者、美樹が言う。
「はーい」
 残りが、それに答えて返事した。

 皆、荷物を足元に下ろすと、それぞれにお喋りを始めた。
 次第にバス停の前にも自分達以外にも人が並ぶ。
「あ!バスが来たみたい。あれじゃないかな…?」
 ほぼ定時通りにやってきた大型バスが停まり、皆で乗り込んだ。


「大きいねー。これ高速バスって言うんでしょう?」
 麻衣子が大きなリュックにモタつきながら通路を進む。
「あんた、何でリュックをトランクに乗せなかったのよ?」
 バスは大きな荷物のみ乗車前に特別なトランクに乗せられる
ように出来ている。
「だって、これにはオヤツが一杯入ってるんだもん」


「通路も広いし、座席もゆったりって感じ?照明も明るいね。
本でも持ってくれば良かったかなー」
 加奈が麻衣子のリュックを手伝うように持ち上げながら言った。

「座る場所、決まってるのよね…あ、私はここだ。瑞希は?」
 先ほど、美樹から配られたチケットの番号を確認しながら
チヨが言う。
「私はその隣り。同じ1年生だから美樹さんが気を使って
くれたのね」
 座席は左右に3列ずつ。2年生はオレたちの後ろの座席に
3人座った。

 バスは満席という程でもないが、そこそこに埋まった。
 行き先は海だが近場には温泉もあるので、乗客たちは降りたら
それぞれの目的地へ向うのだろう。

 全員が座った事を確認するとバスはゆっくりと発進した。
「桃子ちゃんと、真須美ちゃんも来れば良かったのにね」
 麻衣子がさっそく袋菓子を取り出し、口に頬張りながら
言った。
「仕方ないわよ。桃子は親の実家に行ったし、真須美は家族
旅行だしさ」
 美樹が答える。

(親戚…か。妻と瑞希はドコに行ったのだろう…)

バスはやがて高速インターに入り、もう信号で止まることも無く
安定したスピードで目的地を目指した。

 ドリンク類を飲みすぎたせいか、オレはバスに備え付けの
トイレで用を足した。
「まさか、他の乗客がいる中でビールを飲むわけにも、
いかないしな」
 狭いスペースの中で不平を漏らし、出て席に向うとウチの
生徒達4人が窓に顔を押し当てて何やら騒いでいる。
(窓の外に何が見えるんだ…?)

「何が見えるの?」オレは席に着く前にチヨに聞いた。
「あれ、見て。男の人がこっちを見ながら手を振ってるの」
 言われて見ると、みんなの視線の先には派手な色のオープン
カーに乗った若い男がバスと並走しながら時折、手を振っている。
(なんて下手クソな運転なんだ。見てられない)

「危ねーなー。その内に事故るぞ」
 オレが強い口調で言うと、前の座席に座っていた老夫婦が
振り返って、こちらを見た。
「きっと、免許取りたてなのかしらね…あの人」
オレは慌てて女言葉で言葉を繋いだ。
「そうなの…?」
 チヨが聞く。

「金持ちのお坊っちゃんじゃない?あれはアウディのロード
スターといって新車だと500万円以上するのよ」
「そうなんだ。瑞希って車の事も詳しいんだね」
「そうでもないけどね…えへ」
(実はちょっと欲しい時期もあったんだが妻子持ちでツー
シーターってのも何だと思って諦めたんだよな)

「なんか、ずっとこっち見てるね」
「だから危ないんだ。高速道路だしスピードが出る車なんだから、
さっさと追い越して行っちゃえばいいのに」
(運転しながらナンパなんかしてんじゃねーよ。あー、しかし
格好イイよなー)
「運転してぇ…」
「え?なんか言った?」
「あ…ううん、なんにも」
 思わず漏らした一言だったが後日、それは意外な形で叶う事に
なる…。

(続く)





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