『家庭訪悶』
 作:嵐山GO


その4

「ひ、酷いわ…こんなの」
 幸子は絶頂に達しても、身体は痺れたまま動かす事は
出来なかった。
 一方、ミチルの皮を被った侵入者は「ふうっ」と満足げな息を
漏らし、立ち上がって言った。
「まだ、身体は動かないみたいね。じゃ、見てて。今度はママに
化けるから」
 少女は股間のペニスを仕舞いこむと、後頭部に両手を回しまるで
被り物でも脱ぐかのようにして新しい頭部を露出させた。

「!!」
 その顔は寸分変わらぬ幸子の顔だった。そして首の辺りの
途切れた皮を掴んで一気に引き下ろすと小柄だった少女の身体に
異変が現れる。
「どう? これなら貴方そっくりでしょ?」
 背も伸び、胸も膨らんで肉付きのいい幸子の身体が完成する。
「ば、化け物…」
「だから、これは皮なんだってば。でも、良く出来ているでしょ? 
声も同じですものね」
 男は幸子の姿に変身が終わると、喋り方も変えていった。

「じゃ、ランジェリーとお洋服をお借りするわね」
 ベージュ色ののブラジャーとパンティを穿き終わると、御丁寧に
ストッキングまで穿いた。
「警察に通報しても別に構わないけど、私は止めた方がいいと思うわ。
だって頂いたのは全部、貴方の私物だし…それに、ね。私たち、
セックスまでしてしまったじゃない? どう ?二人だけの内緒って
事にしましょうよ」
「そ、そんな事…」
「いいのよ、私は別にどっちでも。だって私の方はバレっこないもの。
でも貴方は大変かもね。考えてみて。可愛い年頃のお嬢ちゃんも
いるし」
「うう…」

 男は洋服を着終え、鞄を手に持った。
「薬はあと1時間くらいで効き目が切れるはずよ。私だったらまず
服を着て、それから家の後片付けをして誰が帰ってきても、
おかしくないようにしておくけど。あ、そうそう…ミチルちゃんの
部屋もちょっと下着とか洋服を借りるのに荒らしちゃったから
綺麗にしておいてね。じゃ、お願いね」
 男は出て行った。
 幸子の身体が完全に元に戻ったのは正に1時間を要した。

(もう、お金も引き出されているだろう…そろそろ娘も学校から
帰ってくる)
 幸子は男に言われた通り身なりを整え、リビングと娘の部屋を
片付けると何事も無かったように夕飯の支度にかかった。
 バタンっ!
「ママー、ただいまー。お腹空いちゃったー」
「ミチル、おかえり。今、ご飯にするわね」
 いつものように娘を出迎え、そして、いつものように時間が流れていく。


       (終わり)



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