好きよ好きよも今のうち(021 - 025)

作:夏目彩香(2003年9月17日更新)

021

「なんなの?絵奈。後で遊ぼうって言ったのに、祐介に言ってちょっとこっちへ来たんだけど……」
そう言いながら恵美はバッグを持って絵奈の部屋に入っていく、コーラルピンクで統一された部屋の中は祐介の部屋とは違って可愛い雰囲気だ。クローゼットの前には絵奈の制服がかかっていて、当の本人はベッドの上で携帯と睨めっこをしていた。
「恵美。やっと私に会いに来てくれたんだね」
携帯をちょっとよけると絵奈の顔が見えた。
「絵奈の部屋って可愛いわね。私の部屋もこんなに可愛かったら勉強できたかも知れないなぁ」
大きな机が置いてあって、ちょこんとパソコンが置かれていてる。無造作にデジカメが置いてあるのを見ると、恵美はそのデジカメを手に取った。
「あっ。デジカメだ。これって絵奈のものなの?」
「うん。そうだよ。私のもの。中の写真見ていいよ」
すると恵美は再生モードに切り替えてから電源を入れる。思ったよりも起動が早かった。
「あれっ。これって部屋の中で写真撮ってない?絵奈しか写ってないじゃない」
写真に写っているのは絵奈ばかり、しかも部屋の中で何かポーズを撮りながら写っていた。ちょっと目を横にやると三脚が置いてあるのがわかる。
「これに載せて撮ったのね」
すると、絵奈は突然ベッドから飛び上がって恵美を抱きしめた。
「私って可愛いでしょ。恵美みたいに色っぽさには負けるけど、若さ溢れる18歳だからね」
そして、絵奈は机の上にあったデジカメのメモリーに交換しはじめた。
「こっちにはもっと面白い写真が入ってるよ」
そう言われて恵美がのぞき込むと、そこに写っていたのは絵奈のパンチラ写真だった。
「えっ。絵奈ってこんなのに興味があるの?」
すると、絵奈はニヤけた顔をしながらうすら笑いをしている。
「そうなんだ。恵美もやってあげよっか。結構お金にもなるし〜」
そして、何枚か写真を見ている内に最後に出てきた写真を見て、恵美の表情が固まってしまった。ちょっと青ざめたような表情をしている。
「これって何なの?」
そこに写ったのはなんと、小さな小瓶に入った裸の絵奈を撮った写真だった。

恵美は冷や冷やしながら、絵奈の口から出てくる言葉を待った。
「えっ?どの写真?」
そう言うと恵美は絵奈に小瓶の写真を見せてやる。
(あっ。やべぇ、消し忘れた)
恵美に聞こえないくらいの小さな声で絵奈は独り言を言った。
「何なのこの写真?」
執拗に聞いてくる恵美に対し、絵奈は何も言おうとしなかった。そして、絵奈は黙りこくったままドアの方へと向かい、鍵をしっかりと閉めた。絵奈の部屋にはライトアップピアノが置いてあるため、部屋の防音設備はしっかりとしている。何か重要な話をしはじめるようだ。
「もしかして、あなた絵奈じゃないわね」
恵美の口から出たの一言に、絵奈はすぐにビクっと反応する。すると、絵奈はこう反論して来た。
「あなたも恵美じゃないのよね」
今度は恵美の方がビビってしまった。
「そんなわけないでしょ。私は後藤恵美よ。誰が見たってそう思うじゃないの」
すると、絵奈は鋭い目線で恵美を睨み付けてきた。
「いや、誰が見たっては嘘でしょ。同じことやってればわかるじゃない、康夫ったら鈍感!」
絵奈の口から康夫の名前が出てきたのだ。

それでも恵美は平静を装うかのようにしているが、目の前の絵奈が絵奈では無いことはわかったし、康夫のことを知っている奴と言うこともわかった。もしかして、こう言うことができるのは……そう、康夫の中に思い浮かんだのは真矢直樹の姿だった。
「お前。ひょっとして直樹か?」
絵奈はヒョロンとしたまま嫌らしい表情で恵美を見ている。
「康夫。ようやく分かったな。お前とさっき電話したばかりの俺だよ」
すると直樹は枕の後ろに隠してあった直樹の携帯電話を取り出した。
「お前いつから?絵奈に変身してたんだよ」
康夫はすっかり恵美の演技を忘れている。
「ん?それなんだけど、結構前からだぜ。この娘がプールにやって来た時にたまたま通りかかって、俺がちょっと話しかけてやったんだよ。すぐにひっかかって、駅のトイレで変身してやったってわけだ。お前からここ最近連絡が無いから、もしかしてたらと思ったらお前も同じことやってたなんてな。それに、なんて世界は狭いものか。さっきまで全然気づかなかったぜ」
絵奈は女子高生に似合わない口調で話した。
「そうか。お前からもらった小瓶を使って、女子社員になってみたんだけど、まさかお前も一緒に小瓶を使ってたなんて知らなかったぞ」
「それはこっちの台詞だって、俺だってお前がこの娘の兄貴の彼女になってるなんて思ってもいなかったからな。さっき、トイレで電話して来た時にようやく気づいたってわけだ」
「じゃ。さっきのはどうやったんだ?」
端からみると恵美が絵奈に向かって話しかけている。
「何が?」
「お前の電話に出た時は、絵奈の変身して無かったじゃないかって」
「そんなの単純なことだろ。この部屋には誰も入れねぇんだ。電話がかかって来たら変身を解くだけでいい。蓋をちょっとゆるめればすぐに変身は解けるからな」
ちょっと考えてみればすぐにわかることだったが、恵美に変身している康夫にとっては不思議なことだった。
「あぁ。そっか、そっか。それで、さっき」
「そうそう。トイレから出て来た時には、すぐに絵奈に変身し直してお前を呼び入れたってわけだ」
「お前って、見かけによらず頭が冴えるよなぁ」
すると、絵奈の長い髪をちょっと横に流してから絵奈らしい座り方に座り直した。
「だって。こんなに可愛い絵奈ですもの」
恵美もそれに応えるように言った。
「そっか。絵奈ってものすごく可愛いものね。あのね。お願いがあるんだけど、今度は私が絵奈になりたいの。変わってもらえるかな?」
すると、絵奈は再びニヤリとした表情を取り戻した。
「もちろんいいわよ。私も恵美のような大人の女になってみたいもの」
そうして、俺たちはお互いの変身を入れ替えることにした。

ベッドから立ち上がった絵奈はクローゼットを開けて、何かを探しはじめた。恵美はバッグの中から本当の恵美が入っている小瓶を取り出し机の上に置いた。絵奈もすぐに本当の絵奈が入っている小瓶を机の上に置いた。

小瓶が2つ揃って、中に入ってるのは裸の女性、しかもその女性に変身してる自分たちがいる。これだけでもかなり興奮しそうな状況だった。
「そう言えば。お前にはまだ教えてなかったよな。こういう状況でお互いの変身だけを入れ替えることができるって方法」
絵奈が恵美にそう言った。
「そんな方法があるのか?俺はてっきりお互いに変身を解いてからやるのかと思ってたよ。で、どうすればいいんだ?」
恵美は目の前にある2本の小瓶をよくみてやる。2人の女性は小瓶の中に長い時間入っているためか、動く気力すら無くなっているらしい。目の前に同じようにされているお互いの体を見たらなおさら気落ちしたことだろう。
「それはだな。簡単なことだって。まずはお前が絵奈の小瓶を左手の掌で掴むように持ってくれ。そして、俺が恵美の小瓶を同じように左手の掌で掴むように持つ。この時に右手で小瓶を持っても何も起こらないからな。そして、そのままお互いの右手で握手をしながら3回縦に振ると、3回目で変身した体同士の入れ替わりが起こるようになってる。簡単だろ」
そして、絵奈が言うようにお互いに相手の小瓶を左手の掌で掴んだ。
「直樹。このまま右手で握手して3回縦に振ればいいんだよな」
「その通り。じゃあ行くからな」
「わかった。やってくれ」
「いち」……「にぃ」……「さん」
右手を3回降ると、二人は一瞬頭の中が真っ白になって行くのがわかった。そして、それはこれから始まろうとしていることへの始まりでもあった。

022

ここは祐介の部屋。ちょっと行ってくると言った割にはなかなか恵美が戻って来ない。女同士で何をしているというのか、恵美が俺よりも絵奈のことを気にしているのなら気に入らない。一人部屋に残された祐介はちょっと気分が悪いようだった。

しかし、そんなことを考えている矢先に、恵美が部屋に戻って来たのだ。待ちかねていた祐介は恵美の前に立ちふさがる。

「今まで何してたんだよ」
「絵奈ちゃんとちょっとだけ話してました。祐介さん怒らないで」
そう言いながら、恵美は祐介の唇に自分の唇を重ねた。突然のことに祐介も戸惑ってはいたが、舌を入れてくる恵美の濃厚なキスにしっかりと応えていた。二人はそのままベッドの上に倒れ込んだ。

祐介の上に恵美が乗っているような形、恵美はキスをやめると祐介の体をまたいで座りだした。

「ねぇ。祐介って我慢してない?」
「我慢って。何を我慢してるってことかな?俺にはさっぱりわからないけど」
祐介はそう言っているが、恵美は祐介のモノが興奮状態にあることがわかっていた。
「これでも、我慢してないって言えるの?」
恵美は祐介のモノをズボンの上からさすっていた。
「どう?気持ちわよね。でも、もっと気持ちよくさせてあ・げ・る」
そう言うと、恵美は祐介のモノを社会の窓から取り出して、スベスベの手で直接さわりはじめた。

「恵美ったら、昼間っから何をするんだよ。絵奈だっているんだし」
「祐介が気持ちよくなるために協力してるのよ。絵奈はさっきでかけたから大丈夫よ。これからは二人っきりですごせるの。祐介のその表情ってことは満更でもないのよね」
黄色いワンピース姿の恵美が祐介の足にまたがり、祐介のモノを直接さすっている光景がそこにはあった。

「ねぇ。このワンピース邪魔なんだけど、脱がしてくれる?」
恵美がそう言うと、祐介は更に興奮しはじめたようだ。
「脱がしてやるよ。後ろ向いて」
恵美は祐介に言われるがままに後ろを向いた。首元にあるファスナーを腰のあたりまでおろすと、恵美の柔肌が露呈してきた。そして、祐介は恵美の着ているワンピースを強引に脱がして言った。

「祐介も脱いで」
恵美の一言で祐介はあっと言うまに服を脱いでしまった。さっきまで精神的なガードをしていたようだったが、恵美が心を開いたと思った途端に、そんなものが解き放たれてしまったようだ。

二人は祐介のベッドの上で裸の体を寄せ合うと、更に激しい交わりをするようになった。祐介の部屋の中で恵美と祐介の快楽を伴う声が響いていた。祐介が恵美の体を嘗め尽くすと、恵美の方も逆に祐介の体を嘗め尽くしていた。

「ねぇ。祐介。これつけてよ」
しばらく体の交わりをしたあとで、恵美は突然ゴムを取り出し、祐介のモノにはめていく。出会って間もない二人にしては至ってハイペースだ。ゴムの皮に包まれた祐介のモノが恵美の体へ挿入されて行く、二人の交わりはまだまだ続くのであった。

023

祐介の部屋に恵美が戻る前のこと。そう、直樹が変身していた絵奈と康夫が変身していた恵美がお互いの変身を入れ替えたばかりだった。さっきまで絵奈に変身していた直樹は恵美に変身して、恵美に変身していた康夫は絵奈になった。客観的に見ればお互いに入れ替わったように見えるが実際にはそうでは無かった。

その証拠に着ている服はさっきのままであった。恵美になった直樹はさっきまで絵奈として着ていたグレーの部屋着を着ている。サイズが小さいためかストレッチ素材がずいぶんと伸びている。そして、絵奈になった康夫はと言うと、恵美の着ていた黄色のワンピースを着ていた。絵奈の方もサイズが大きいようだ。

とりあえず二人はお互いの着ているものを全て交換することにした。二人は恥ずかしさを見せることも無く、服を脱いでいる。もちろん下着もである。お互いに何も付けていない、全身素っ裸の状態になった。二人は不気味な笑いを浮かべながら、お互いの白い肌を見つめ合っていた。均整のとれたスタイルの恵美と、まだ成長途中の絵奈のスタイルが絵奈の部屋にある大きな鏡に映し出された。

「なぁ。康夫。このまま写真でも撮らないか?」
恵美の姿をした直樹が絵奈の姿をした康夫に聞いてきた。
「そっか。デジカメがそこにあったよな。これってホントに絵奈のなのか?」
「それって俺のモノだよ。この機会にたくさん撮っておこうぜ。」
二人は小瓶の中に入っている二人を目の前にしてやりたい放題だった。

絵奈のデジカメでお互いに裸の姿を写すと、お互いに自分の下着を身につけた。絵奈は出かけることにしたので、なぜかクローゼットの前にあった制服に手を取った。絵奈の制服は典型的な紺のセーラー服だった。スカートはもちろん紺のヒダスカート、足を入れてファスナーを留めると腰でひっかかった。絵奈の膝頭が見える膝上丈だった。

そして、上着は中間服だったので白をベースとした長袖に紺の襟がついて、そこには2本の白いラインが入っている。横のファスナーを開いて頭からかぶると、ファスナーを留めてやる。着替えている間、恵美はじっと見つめていた。最後に、紺のスカーフを手に取ると、慣れた手つきで襟の下に結び目をつくってやる。この上に紺のカーディガンを羽織って着替えが完成した。

さすがに康夫だけあって、絵奈の能力を完全に引き出すのはお手のものだ。最後にクローゼットの中から紺のハイソックスを見つけて、それを履いた。着替えを終えると、まだ下着姿の恵美の前でクルッと一回転してみせた。

「どう?恵美。これで完璧でしょ」
すると下着姿のままで恵美は答えた。
「さすが。どこから見ても絵奈にしか見えない」
「だって、私は絵奈だもん。当然よ」
そう言って絵奈は軽く高笑いをした。
「今度は、恵美の番よ。着替えるの見守ってあげるから」
「康夫ったら。すっかり絵奈に成りきってるな」
直樹は恵美の体にまだ慣れていないようだった。

それでも恵美の体に変身した直樹は、さっき絵奈がベッドの上に脱ぎ捨てた黄色のワンピースを手に取り、背中のファスナーに足をゆっくりと入れた。右手を後ろに回して、ファスナーを上まで上げようと思うが、上まで上がらない。

「康夫。ファスナー上げるの手伝ってくれないか?」
絵奈の方を見ながらそう言ったが、絵奈は助けてくれる気配がなかった。
「康夫って誰?私は絵奈なんだけど」
「ん?あっ。絵奈。ファスナーあげてちょうだい」
「うん。わかったよ。恵美」
そう言って恵美のファスナーを完全に閉めることができた。

ワンピースの着心地を確かめながら、目の前の鏡に立つ恵美。
「これで私も完璧ね。端から見るとさっきまでと同じように見えるだろうけど、私たちってさっきまでと違うのよね。フフフ」
恵美は軽く笑っていると、絵奈が隣にやって来て、同じように笑った。
「私たちって姉妹みたいだね。恵美」
「そう?絵奈の体、気に入ったの?」
恵美は絵奈になんとなく気になって聞いてみた。
「うん。恵美の時よりも若いなって」
「そりゃ当然じゃない。でも、私だって若いのよ」
「そっか。大人の女性が好きだもんね」

このままだとお互いの会話が絶え間なく続きそうだ。絵奈は恵美から絵奈の入った小瓶をもらうと、空の小瓶を3本もらった。
「とりあえず、今は3本しかもってないから、それで我慢して。それと、この3本は新しい効果があるからね、使ってみてからのお楽しみってことにしておくわ」
直樹もどうやら恵美の体に慣れてきたようだ。

「恵美。ありがと。私これからでかけて来るからね。セーラー服を着て外出するの子供の頃の夢だったしね。あなたのおかげでその夢がようやく叶うんだなって」
「そうよね。絵奈ちゃんには悪いけど、私たちの願いのためにはちょっと我慢してもらうわね。気を付けて行って来てね」

そう言うと絵奈は本物の絵奈の入った小瓶と空の新しい小瓶を3本、それにデジカメと勉強道具をカバンの中に入れると部屋から出て行きました。

玄関で黒いローファー型革靴を見つけると、それに絵奈の小さな足を入れていきました。玄関の扉を開けると風がスカートの中に入って来てスースーとした感じ、絵奈になった康夫は図書館へ向かいました。

024

図書館は駅のすぐそば、絵奈になった康夫はさっきと逆の方向へと歩き出しました。憧れのセーラー服と言うこともあって、気分はノリノリ、軽く飛び跳ねるかのように歩いています。周りからはちょっと大胆かとも思えるステップを踏んでいるに違いありません。すれ違う人たちが絵奈の方をじろじろと見てくるからです。

それでも康夫はそんな感覚がとても心地よく思えて、更には絵奈の若さがとてもいいものだと歩きながら感じていたのです。歩くたびにプリーツスカートがふわふわと揺れて、風が強くなると足にべったりとついてきます。

絵奈は図書館への道を歩きながら携帯電話をかばんの中から取りだし、メールを打ち始めました。絵奈の友達の田島由奈(たじまゆな)と佐伯奈美(さいきなみ)の2人に対して宛てるメールだと言うのが送信先を見て分かります。

内容はどうやら図書館で一緒に勉強しない?とのこと、夕方の図書館に集まって勉強をするなんてことで、絵奈も集まってくれるのか不安があったようです。しかし、すぐに返事が返ってきて、二人とも「オッケー」の返事が返ってきました。このメールが送られて来た時に、絵奈は思わず軽くガッツポーズをつくっていました。

道を歩きながら、ガッツポーズを出してる時には誰にも見られていませんでしたが、これからはもっと絵奈らしく振る舞おうと、自分に向かって注意を促しているようでした。

 

そして、10分ほどで図書館の前に到着しました。図書館と言っても青少年向けの図書館で、高校生が利用しやすい環境のため、この図書館には高校生の利用者が多いのです。絵奈は土曜日で学校へ行かないにも関わらず制服を着たまま図書館の前で二人の友達を待っています。

春先とは言っても、図書館の前で待っていると少し肌寒さを感じる絵奈。スカートの中に入ってくる風は心地よいよりも冷たく感じているようでした。結局、先に図書館へ入ってしまうことにした絵奈は、まずはトイレへと向かいます。女性用のトイレに入ると、一番奥の個室にノックして、誰もいないのを確かめてから中に入りました。しっかりと鍵を閉めて、便座を閉めたままその上に腰を下ろしました。

携帯電話で二人に中で待っていることを伝えると、それぞれちょっと遅れるとすぐに返事が返ってきました。時間があるので、絵奈はさっきかばんに入れてきたものを確認することにします。本物の絵奈が入っている小瓶と、新しい空の小瓶3本があることを確認すると新しい空の小瓶の中から1本を取り出して、直樹が言っていた新しい小瓶の秘密を思い出しました。

その内容を要約してみると、新しい小瓶は前のものと違って外からは透明に見るのですが、実は中からはただの鏡にしか見えません。外の様子をうかがい知ることができなくなるため、安心して変身することができます。名前を呼んだ人が近くにいる場合に小瓶の中に入れることができるのは同じで、小さくなりながら裸の姿で中に入って行きます。服は小さくならないので、その場に残ることになります。

そして、キャップを閉めても変身は始まりません。小瓶を飲み込むことで中に閉じこめた人と同じ姿に変身できるのです。小瓶が体の中に入ってしまうので、小瓶を隠す場所に困ることも無いのです。あとは、その場に残された服や靴を着替えればいいのです。しかし、自分の着ていた身につけていたものが残るので、これは白い小瓶の中に入れておくことができて、同様に飲み込んでしまえば隠し場所に困りません。小瓶は体の中から好きなときに取り出すことができて、それは口から出て来ます。

更に、新しい小瓶だと重ねて変身することも可能。絵奈の姿のまま違う人に変身をすることが可能なので、変身を一度解かなければならなかった点が改良されていた。ちょっと使い方が難しくなったが、絵奈は新しい小瓶をすぐに使いたくてしょうがないような表情をしていた。トイレの中で笑いが止まらなかったのです。

025

「ねぇ、祐介。気持ちよかった?」

康夫の変身した絵奈が図書館へ到着した頃、直樹の変身した恵美と祐介はベッドの上でゆったりとした時を過ごしていた。ベッドの中に二人は抱き合ったまま寝ている。祐介の中に恵美が包み込まれているような状態。祐介は気持ちよく寝ていた。

「祐介。眠っちゃったの?……睡眠薬ようやく効いたみたいね」

祐介が眠っているのを確認しながら恵美はゆっくりとベッドの中から出た。下着すら着けていない姿のまま祐介の顔をじっ〜と見ていた。

「こいつ、本気で恵美のこと好きみたいだな。恵美の本当の気持ちも知らないくせに……」

そういうと恵美のバッグの中に隠していた本物の恵美が中に入っている小瓶を取り出した。中にはやることが無く退屈な恵美の姿が現れた。小瓶の中の恵美は目の前に全裸の自分がいやらしそうに見つめていることで、衝撃を受けているようにも見える。

「何々?小瓶の中で喚いても誰にも聞こえないって、恵美さん」

そういうと、小瓶を寝ている祐介の目の前まで持って行った。

「こいつが祐介だよ。まだ本当の恵美とは会ったことが無いのに、すっかり本物だと思って、一気に裸の関係まで……」

小瓶の中では目の前のことを見ていられない恵美の姿があった。

「どうせ小瓶の中にいる記憶は無くなるんだ。聞くも聞かないも同じだよ。せっかくだからあんたの言葉を聞かせてよ」

そういいながら、バッグの中に手を入れるとポストイットのようなものを取り出した。そして、小瓶にペタッと貼り付けると、ポストイットのようなものから音が聞こえてきた。すすり泣きのようだった。

「この小瓶用につくったポストイット型スピーカー。これを取り付けると小瓶の中の音声が聞こえるんだけど、泣いていちゃ君の大事な声が聞こえないじゃない、一緒に話そうよ」

すると、小瓶の中からはすすり泣きを抑えながら声が聞こえてきた。

『あなたって一体誰なのよ。こんなことして何が楽しいの?』

「楽しいんだって。あんたのように幸せそうに暮らしているのが気に入らない親友の頼みからはじまったことだからな」

『人の幸せを奪うようなことして偉そうに言わないでよ』

「一応、偉そうには言ってないんだけどなぁ」

『とにかく、あなたは誰?どうして、こんなことができるの?』

「ん?そんなに気になるか?まぁ、教えてやってもいいか、どうせ記憶は無くなるんだから」

『記憶がなくなってもいいから聞きたいの』

祐介がすやすやと寝ているベッドにゆっくりと腰をかけて脚を組んだ。もちろん全裸のままだった。

「そんなに言うなら教えてやるよ。この小瓶には中に入った人物に変身できる効果を持っていて、それを使ってあんたの姿に変身してるんだよ。だから、この身体はあんたの身体のように見えるけど、ただ変身してるってわけ」

『それで、あなたは何者?』

「まぁまぁ。時間はたっぷりあるんだから。あんたの会社にいる田口って知らないかい?」

『えっ?総務課に田口さんっているわ。あなたどうして知ってるの?もしかして、田口さんなの?』

恵美は小瓶の中で目を大きく見開いていた。

「ふっふ〜ん。そうって言いたいけど、今は違うよ。さっきまでは、田口があんたに変身していた」

『えっ。何ですって!?』

「ついさっきまではね。でもって、ちょっと事情があって俺と交代してもらったよ。君の身体にちょっと興味が沸いちゃってね」

『まさか、あなたって田口の親友ね』

「あぁ。そうだよ。俺、真矢直樹があんたの身体に変身してるってわけ」

『信じられない』

そういうと、小瓶の中にいる恵美は一気に力が抜けて気を失ってしまった。すると、恵美はゆっくりとポストイット型のスピーカーを剥がしながら不気味な笑みを浮かべていた。

 

あとがき




本作品の著作権等について

・本作品はフィクションであり、登場人物・団体名等はすべて架空のものです
・本作品についての、あらゆる著作権は、すべて作者が有するものとします
・よって、本作品を無断で転載、公開することは御遠慮願います
・感想はメールや掲示板でお待ちしています

copyright 2003 Ayaka Natsume.







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