流行前線(その1)

作:夏目彩香(2003年4月11日初公開)



桜の花が咲くと春の訪れを感じるのは誰もがそう思うことでしょう。そう、この時期になるとお花見をするのにはもってこいの時期であり、これから暖かくなることを願うのでしょう。

とある大学のキャンパスで、いつものようにお花見が始まりました。至る所で学生たちが騒ぎ出しているのです。大体がサークル単位や友達単位での集まり、キャンパスがそんな風に賑やかになるの桜が咲くのと同時に新入生が入ってくると言うことも理由の一つです。

こんな賑やかなキャンパスに桜山美野(さくらやまよしの)の姿がありました。美野はこの大学に入学したばかりの大学1年生。この3月までは高校生だったことを考えるとまだ幼さが残りますが、大学に入学したとたんに大人っぽさが出てきました。

美野があるサークルの前を通るとお花見中の彼らから声をかけられました。ちょっと寄っていかないかと誘われたのですが、美野は断りました。またしばらく歩くと別のサークルから呼びかけられます。大学の中の校舎を移動している途中なので、寄って行く時間も無いのです。

断ろうとしましたが、次のサークルはしつこく食いついてきました。美野が嫌だと言っているのにも関わらず無理矢理、自分たちが楽しんでいる桜の木の下まで連れてきて、ほんの一杯だけだと、グラスを勧められました。美野はお酒を飲んでいい年にもなっていないので、お酒は駄目だと言うと、代わりにジュースを差し出されました。

美野はとりあえず、これを飲んだらここから帰ってもいいということを条件に、このジュースだけ飲みました。何も変哲の無い味はオレンジジュースのようですが、初めて飲む味のようでした。美野はなかなかおいしく飲んでいました。

そのジュースを飲み終えると、そのサークルの人たちはえらくあっさりと美野を解放しました。さっきまではあんなにしつこかったのになぜなんだろうと、思うがほどにさっぱりしていました。

美野はお花見会場となっている学校のキャンパスの中を抜けると、ようやく自分が行こうとしていた図書館へ到着しました。ここまで来るのに思った以上に時間がかかってしまいました。さっそく提出しなくてはならないレポートがあるためです。

図書館の中で必要な本を探し出すと、自習室の空いている席を見つけて座ります。まだ試験の期間では無いので自習室はほとんど貸し切り状態でした。図書館の自習室にある椅子はなかなか座り心地が良くて、美野は気に入っています。

美野の席は自習室の隅の方の席。隠れた場所にあるので、なかなか他の人に見つかりにくい場所です。この席に着いて勉強を始めました。

勉強を始めて少しすると珍しく眠気が襲ってきました。机の上に手をついてその上に顔を伏せるようにして眠りについたのです。美野はすやすやと眠りはじめました。

美野が寝ているところに、さっきのさっきのサークルの勧誘をしていた一人の男がやってきました。美野が座っている席の横まで来ると机の上に置いてある持ち物から、桜山美野と言う名前を探し出しました。

ポケットの中から取りだしたのは小さな小瓶。それはまるで化粧品の試供品が入っているような大きさでした。サークルの勧誘をしていた一人の男はその小瓶の蓋を開けると周りに聞こえないように「桜山美野」と名前を呼びました。するとどうでしょう。美野の体が小さくなり小瓶の中に入ってしまったのです。男は小瓶の蓋を軽く閉め、再びポケットに入れました。

そして、自習室の席には美野の着ていた黄色のAラインスカート、ブラウンのカーディガン、白いブラウス、そして、下着が脱ぎ捨てられ、足下にはグレーのパンプスと白いストッキングが置かれていたのです。男はそれらと美野の勉強道具とバッグを自分が持ってきた大きなカバンの中にすべて詰め込むと何も無かったかのように自習室から出て行きました。

男が向かったのはサークル棟の中にある一つの部屋。男の所属するサークルの部屋なのでしょう。その部屋にはむさ苦しいほどに男の熱気で溢れています。お花見から撤収してきた1人の男が彼の帰りを待っていたのです。

彼が中に入ると、部屋の鍵を閉め。カーテンを閉めて、どこからも見えないようにしました。そして、ビデオカメラが用意されており、男たちはなぜかトランクス1枚だけの姿になりはじめました。2人がトランクス1枚だけの姿になったと言うのに、部屋の中は異常な熱気に包まれていました。これから何が始まると言うのでしょうか?

さっき、美野を小さな小瓶に入れた男がもう一人の男にある物を取り出すようにいいました。もう一人の男が出したのは小さな小瓶に取り付けるコンバーターのようなもの。ちょうどバームクーヘンのような感じで真ん中に小瓶を挿入したのです。

大きな蓋をはめ込むと、小さな小瓶の中身は全く見えなくなりました。2人はこの蓋に一緒に手を取ると、ゆっくりと蓋が密閉される方向に回し始めました。カチッと言う音がするかと思うと、2人の体に変化が起こり、なんと2人とも美野になっていたのです。

2人の美野で違いはトランクスの柄が違うだけ、端から見るとまるで双子の姉妹のように見えます。トランクスの柄から判断して、さっき小瓶を持ってきた男は、自分のカバンの中から美野の服を取りだし身につけ始めました。もちろんすべてがぴったりとフィットします。

もう一人の美野はそのままの格好なので、上半身がもろに見えてしまうことになるので、予め用意しておいたバスタオルで隠しています。2人が同時に小瓶の蓋を閉めたので一緒に美野になってしまったのでしょう。

服を着た美野がさっき声をかけた時の姿になりました。さっきと違う美野だなんてことは周りの誰もがわからないに違いありません。まずは服を着た美野が美野の家に帰って着替えを持ってくることになったのです。



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