恵美童話

作:夏目彩香(2002年11月28日初公開)


 

あるところに多岐川恵美(たきがわめぐみ)という女子大生がいました。山にたくさんあったはずの木々の葉が枯れ落ち、冬に向かって行く季節。こんな季節にあったお話です。

恵美は今年の学園祭でミスコンに選ばれたほどの美貌の持ち主です。しかし、高校時代の彼女の卒業アルバムからは想像ができませんでした。高校時代には「漫画アニメ部」に所属し、大学に入学してから入ったサークルも超常現象研究サークルというから普通に考えると暗い性格に思えたからです。

しかし、そんな恵美を変えたのはあることが切っ掛けになりました。

ある日の夜、ベッドの上でパジャマを着ていたかと思うと、次に目を開けた時には黒いタイトスカートにタートルネックのベージュのセーター姿で横になっていたと言う出来事です。あっという間に着替えているだけに恵美は本当に驚きました。

恵美があたりを見回すと部屋の隅にはヒールのきつい黒のブーツが脱ぎ捨てられ、褐色のロングコートにマフラーが落ちていたのです。ほとんど一瞬のことに思いましたが、実際には2時間も経っていました。

そして、恵美は普段はつけないコンタクトをつけたままになっていることに気づきました。時々つけることはありましたが、寝るためには必要が無いと思うのに……

いつもは縁無しの眼鏡をかけているのに、その眼鏡も枕元にはありませんでした。その姿のまま姿見の鏡をのぞき込んでみると、いつもとは違った自分がいるではありませんか。確かに自分の姿なんだろうけれど違う雰囲気が漂っていました。

それもそのはずです。顔をよく見ているとメイクの仕方が微妙に違うようでした。いつも薄いメイクしかしたことがなかったのに、誘惑的で挑発的な濃い目のメイクをしていたのです。

それにいつもとはちょっと違う髪型をしていました。黒のショートカットがいつもよりも揺れるようになっていました。いつの間にこんなことをやってしまったのか、これらの変化は自分が無意識のうちにやったことだとはとても思えない変化です。

恵美は未だに姿見の鏡をじっくりと見ています。今までなんとも思っていなかった自分の外見をちょっと気にしようかと思い始めたみたいなのです。自分の顔を見ながら自分の顔がとても魅力的なんだって初めて気づいているようでした。

そう、今の恵美には眼鏡を外し、いつもとは違うメイク、それに加えて微妙に変わった髪型を見て、自分に自信がすっかりついたのです。

この時以来、暗い性格もすっかりと明るくなりました。自分の魅力に気づき出すと、今までは選ぶことの無かったファッションセンスをすっかりと身につけてしまいました。

何があったのかわかりませんが、女子高生の時に見た去年の学園祭では、舞台の下で見学をしに来ていたミスコンに、今年は出場してこの大学のミスに選ばれたのだから不思議なものです。

自分の魅力に気づかせてくれた切っ掛けって果たしてなんだったのかは、いろいろと話題があるようです。今も恵美は寝たかと思うとすぐに起きて、あっと今に時間が経つことがあるとのこと、恵美は気にしていませんが一体何があったのか、その真相知るのはあなたなのかも知れませんよ。






 

本作品の著作権等について

・本作品はフィクションであり、登場人物・団体名等はすべて架空のものです。
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