精神移動(その2)

作:マロエ




「あぁー、楽しかった。やっぱりレズはいいなー、ふひひひ」
栗色でパーマのかかった髪、白のダウンジャケット、ショートパンツを履いた童顔美人がトイレの鏡に向かって一人で喋っている。
吾郎はたっぷりとレズエッチを楽しんだ後に優香から抜け出し、童顔美人の坂本絵里に精神を移動させたのだ。


「あ、やっぱり、絵里ちゃん、おかあさんと買い物にきてたんだ。ごめんね?」
絵里の記憶も今は自分のものになった吾郎は鏡にむかって謝る。
「いいよ、優香さんとエッチなことできたんだから! おかあさんとの買い物なんてどうでもいいの! 吾郎さんのおかげだよ!」

そんなことを絵里に言わせた吾郎は、自分のお尻を撫で回しながら女子トイレを何食わぬ顔ででていくのであった。

(ふーん、絵里ちゃんって女子高生だったんだ)
デパートを絵里の記憶を読みながら歩く吾郎。その姿を見つめる男達。
その視線を受けながら、吾郎は今にもスキップしそうな気持ちを押さえ込んでいた。
(見られるのも悪くないよな、ふふ、うらやましいだろうな! お前達が見てるこの女は俺の思うがままなんだからな!)


ふと時間が気になった吾郎は、ダウンジャケットから絵里の携帯を開き、時刻を確認する。
可愛らしい待ち受け画像の時計が6時を示している。
「そろそろ帰らないと、俺の身体がやばいな」

携帯をポケットにしまい歩きだした絵里はエレベーターに目がいった。――正確にはその中にいたエレベータガールだ。
デパートの制服だろう。白のシャツに赤いベストと膝丈の同色のタイトスカート。
白い手袋、黒のタイツ、赤いパンプス。
流れるような黒い髪の上に、赤いベレー帽を斜めにかぶっていた。
(よく、ずれないものだな・・・・・・)
「あ、なるほどピンでとめているのか」
絵里の記憶で、吾郎の疑問はすぐに解決した。

(ちょっと遊んでいくか……)
「のります、のります〜、のりますよっと〜」
吾郎がそのエレベーターに乗り込むと、扉は閉まった。
「上へまいります」
数人の客を乗せたエレベータの中で、吾郎は精神体の人差し指をエレベータガールの頭へ、ぬぷっと差し込んだ。

『スカートをめくれ…めくれ…めくれ』

吾郎の意思がエレベータガールの意識を混濁させていく。
エレベータガールは自らの意思で、その場でタイトスカートをまくりあげた。
当然客は呆然と彼女を見つめる。

「ふへへ」
忍び笑いをもらす絵里。
混乱した雰囲気のままエレベータは止まる。

「3階でございます」
清楚な声で案内する姿勢は、黒タイツ越しに白い下着が見えていることが目の錯覚かと思わせる。
降りる人も、乗る人もその場で動けなかった。だれもが動かぬまま扉は閉まった。
お腹を抱えて笑いをこらえてる絵里に誰も気づくことはなかった。

「もういいかな」
十分楽しんだ吾郎が人差し指を引き抜くと、エレベータガールは慌ててスカートを下ろした。
そして、恥ずかしそうに俯き、次の階で止まると、仕事中にも関わらず出て行ってしまった。

「あ、ちょっと待って!」
吾郎はその後を追う。
関係者以外立ち入り禁止の扉を開ける瞬間。吾郎の精神体の手が捕まえた。

まるで泳ぐ魚を捕まえるような勢いで精神を頭に挿したせいか、エレベータガールはつんのめり苦しそうにその場で両膝をつくと、息を乱しながら頭を押えた。

「んっ・・・くぅ!」

何が起こったからわからないエレベータガールはガクンと身体の力が抜た状態になって、廊下に女座りをしてしまった。
苦しそうに頭を押えてた手をだらんと身体の横に垂らした。
『強くさしすぎたか・・・・・・まぁいい・・・・・・君の仕事は今から大人のおもちゃを買って、俺の家に届けることだ。一番の優先事項だからね』

手を引き抜くと、エレベータガールは立ち上がり、まだぼーっと焦点の合わない瞳をしたまま歩き出した。
「いそがなきゃ……バイブを・・・・・・」
清楚な声でエレベータガールはローターローターと囁きながら、制服のままデパートの外に出て行ってしまった。
(ちょっと激しく意識を飛ばしすぎたかな・・・・・・)


「まぁ、いっか、じゃあ帰ろうかな」
「吾郎さんの家にいけるなんて絵里楽しみ〜!」
絵里は身体をくねらせながら喜びの声を上げる。

「おっと、まだわからないよ?もっといい女がいたら、君の中からでていくからね?」
すぐに表情を変えて、動きを止めるように両手を突き出す。

「いやよ、絵里の中にいてよ!」
「まいったな、絵里ちゃんは独占欲が強いみたいだ」
頭をポリポリとかきながら絵里の可愛らしい唇からはずっと一人芝居が続いていた。
かわいそうな人を見るような視線など、吾郎は気にもしなかった。





デパートから吾郎の家までは、電車で30分、車で15分程度のところにある。
「んー、どうしようかな、適当な人を・・・・・・」
その時、ポケットの携帯が震えた。
着信音は友達の恵だと、記憶が教えてくる。
「もしもし、絵里、買い物終わった?」
どうやら、絵里は買い物の後は、同級生の恵とご飯を食べにいく約束をしていたみたいだ。

(うお! 恵、すげー美人じゃねーか)
恵に関する記憶を読み、話をあわせた。

「うん、今デパートの前、迎えにきてくれない?」
「オッケー、5分でいく」
恵は女では珍しくビックスクーターに乗っている。
二人でよく、この辺を走っているようだ。


「おまたせ」
恵は、高校の制服をきて現れた。
「恵、なんで制服なの?」
(俺的には最高に嬉しいけどな)

紺色のブレザーに、紺のチェックの入った灰色のミニのプリーツスカート。
首元は赤いマフラーに、紺のハイソックスに茶色のローファー。

「ちょっと、レポート作るのに時間かかっちゃって、今までしてたんだ」
「あはは、だからちゃんとしときなさいよって言ったのに」
「うん、そうなんだけどさ・・・・・・さっ、それより乗ってよ」
「うん」
吾郎は慣れた動作でヘルメットをかぶり、ビックスクータの後部座席へと座った。
恵の綺麗な髪の毛が見える。

「ねぇ、恵少し寄ってほしいところあるんだけど、いいかな?」
「うん、いいよ、どこ?」
「うん、そこ右にまがって」
吾郎は恵の柔らかい身体に引っ付きながら、少しずつ精神を絵里の中から恵に移していった。
(自分の胸が相手の背中に当たるのも変な感じだな)

初めは吾郎の家までの道を聞いていた恵だが、さっきの交差点を何も聞かずに曲がったことに気がついただろうか。
二人の女子高生、恵と絵里は無言でバイクに乗っていた。
精神が吾郎によって侵食されていることなど、誰にもわかるはずがなかった。



吾郎の家に到着する頃には吾郎は完全に恵の中に入っていた。
バイクを止め、鍵をかけ、ヘルメットを取る。
「到着っと、吾郎さんのお家」
「ねぇ、恵、私が行こうって言ったんだけど、なんで行こうと思ったかわかんなくって……吾郎さんの事も会ったことないはずなのに」
「ふーん、大丈夫だよ、吾郎さんに会って私達の身体愛してもらおうよ?」
「え、恵、何言って……?」
「だってぇ〜、私お腹空いてるから〜、吾郎さんの精液飲みたいんだもん」
「恵、おかしいよ? どうしたの?」
「おかしいのは絵里じゃない? 絵里が行こうって言ったんだよ?」
「そ、そうだけど・・・・・・」
「いいから、ゴーゴー!」

戸惑ってる、絵里の手を掴み強引に吾郎は自分の家へと誘う。
古いアパートのボロボロの階段を女子高生が二人登っていく姿は珍しく、違和感を感じずにはいられない。
恵はミニスカートなのも気にせず吾郎の家の前でしゃがみこみ、隠してある鍵を取り出すと、家の中へと堂々と入っていった。





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