三つの願い1 「河原のプラトニックカップル編」 作:jpeg 僕は山田一郎。名前からして地味で冴えない高校二年生の男子だ。 ある晴れた日の下校中、河川敷の石畳に座ってぼんやり川を眺め、最近できたニキビを気にしながら、 (あ~、モテたいなあ…。結衣花ちゃんとセックスして童貞捨ててえなあ) などとクラス1かわいい憧れの女の子との軽いエロ妄想に浸っていたその時。 下流の方から上流の方へ、どんぶらこ、どんぶらこっこと壺が流れてきた。 ん?下流から上流?流れに逆らって? 壺はスーッと僕の足元まで流れ着いた。 これは興味を持つだろう。僕は壺を持ち上げ、軽く振ってみた。 すると突然、壺の中から褐色の肌でオリエンタルな衣装に身を包んだ、僕と同年輩ぐらいの女の子が出てきた。 「おめでとうございま~す!あなたは私!壺の魔人ティファールに選ばれました~!どんな願いでも三つだけ…って、え?」 たまげて腰を抜かす僕の眼前1メートルのところで、女の子は宙に浮かんだまま静止し、僕を凝視した。 へたり込んだまま、僕も無言で女の子と見つめ合う。 ちょっとつり上がった大きなアーモンド型の目、ターバンから覗くボーイッシュな黒髪。耳には大きなリングのピアスをしている。すごくかわいい女の子だ。 でもよく見ると悪魔みたいな尻尾がついていて、尻尾の先はハートの形の矢尻になっている。 「は、は、はんさむ~~~!!!」 女の子は目をハートマークにして僕に抱きついた。 「ええっ!?」 生まれて初めて女の子と密着した。温かくて柔らかいからだ、いい匂い…ってんむっ!? 女の子は僕の首にしっかり手を回してロックし、そのまま激しくキスをした。 んむむっ!?思い切り舌を僕の口の中に差し入れてグルングルンと回し、いやらしい唾液の音をクチュクチュと響かせる。 こ、これは!なんという…き、気持ちいい…。こ、これがキスの味… あまりの興奮と快楽に僕の頭は次第にぼんやりし始め、女の子はそのまま5分以上も僕と超濃厚なディープキスを続けたのだった…。 「ティファ~ルねえ、10000年生きてきて、ご主人様みたいにカッコ良くてステキでイケメンで眉目秀麗でイケメン(重複)な殿方に初めて会いましたぁ! ご主人様ぁ!ティファを支配してっ!好き好き大好き!ご主人様ぁ!ティファご主人様のおよめさんになりたぁ〜い!ウフフフ♡♡♡」 僕にとっての(濃厚すぎる)ファーストキスのあと、女の子、ティファールはベタベタと僕にくっつき甘えまくってきた。 なんでか知らないけど、ティファールにとって僕は好みのど真ん中、どストライクな男だったらしい。(どこにでも掃いて捨てるほどいる冴えない高二男子なのだが…) 「ティファ、拾ってくれた人の三つの願いをなんでもかなえてあげる魔人なんですけどぉ、ご主人様だ~い好きだから、いくらでも願いをかなえてあげますっ♪」 「ハハハ…」 「あ!その顔!信じてないですね~!?もう!プンプン! でも仕方ないですよね。誰でも最初は同じリアクションだから。じゃ、ティファの力を見せてあげますから! あそこの若いオスとメス、よく見てくださいね!」 ティファールの指の先には、僕と同年代ぐらいの初々しいカップルがいた。 白いカッターシャツを着て日に焼けた純朴そうな少年と、夏服のセーラー服を着た色白の大人しそうな美少女。 二人は絶妙な距離を空けて並んで座り、川を見つめながらモジモジ俯いたりお互いをチラ見したり、 同時に 「あ、あのっ!」 「あ、あのっ!」 「あ、健二くん、先に…」 「あ、由香ちゃん先に…」 みたいな甘酸っぱすぎて胸焼けしそうな青春120パーセント濃縮果汁の空間を作っていやがる。 よーやるわ。はいはい、世界は2人だけのためですよね。クソ~~~!!!うらやましいです!!! ティファールは二人に向かってフワフワと宙を飛んで行った。 二人の目の前で手をヒラヒラさせたり、女の子…由香ちゃんかな? 由香ちゃんの鼻に人差し指を当てて押し上げブタ鼻にしたりしているが、由香ちゃんは気付いているそぶりはない。 どうやら僕以外にはティファールは見えていないし、認識もできないようだ。 ティファールは僕の方を向いて、ニターッという擬音が聞こえそうなぐらい、たくらみ満面に笑い、尻尾の先端のハートを由香ちゃんの頭にチョンと刺した。 「ヒッ!?」 由香ちゃんの体がビクンと痙攣した。 「由香ちゃん、どうしたの?」 健二くんがおずおずと聞いた。 由香ちゃんは、ポカンとした表情のまま遠くを見つめている。心ここにあらずといった感じだ。 「由香ちゃん?」 健二くんがおずおずと由香ちゃんの肩に手を置こうとした瞬間、 「ゲハハハハハ!!」 突然、由香ちゃんがおっさん顔負けの下品な大声で笑い出した。 大口を開けて鼻の穴をこれでもかと開き、見開いた目はに寄り目になっている。 完全に向こうの世界にイッちゃってる表情だ。もとがもの静かな美少女なだけに、そのギャップは凄まじかった。 「「ゆ、由香ちゃん…!?」」 僕と健二くんの声がハモり、二人は思わず目を合わせてしまった。 「あ~!アンタみたいな手も握れない根性なしフニャチンの相手なんか由香もう飽きちゃったぁ~!あたしみたいな超~美少女とウンコ健二はぜんっぜん釣り合いまっしぇ~ん!大便ブ~リブ~リ! 浮気したぁ~い!健二以外のオトコと今すぐブッチュブッチュ!ネッチョネッチョ!ズッコンバッコンしたぁ~い! 誰でもいいからあたしのユルユルマ×コに極太ガチガチバズーカぶち込んで、中のビラビラゴリゴリしてぇ~ん!マコチネ!マコチネ!指でこすってマン臭事変っ!サトちゃんペッ!」 「ゆ、由香ちゃん…!」 健二くんは純朴そうな目に涙をためて由香ちゃんを呼んだが、由香ちゃんはそれを完全無視して 「あっ!ねえ~ん!そこのハンサムなお兄さぁ~ん!今すぐあたしとセックスしよ♡♡♡ ズッコンバッコンズッコンバッコンしましょうよぉ~ん!♡」 橋桁の下でシンナーを吸っていたヤンキーに駆け寄り土下座したが、シンナーがキマりすぎているヤンキーはドロ〜ンとした目のまま由香ちゃんを見つめ返すだけだった。 そんなヤンキーにはお構いなしに由香ちゃんは立ち上がり、セーラー服を泥まみれにしたまま 「ズッコンバッコンズッコンバッコン激しい~ん!あたしあなたのトリコよぉ~ん♪ 嬉しいなったら嬉しいな!由香クルクルパーになっちゃった! ズッコンバッコンズッコンバッコン激しい~ん!あたしあなたのトリコよぉ~ん♪ 嬉しいなったら嬉しいな!由香クルクルパーになっちゃった! ズッコンバッコンズッコンバッコン激しい~ん!あたしあなたのトリコよぉ~ん♪ 嬉しいなったら嬉しいな!由香クルクルパーになっちゃった! ズッコンバッコンズッコンバッコン激しい~ん!あたしあなたのトリコよぉ~ん♪ 嬉しいなったら嬉しいな!由香クルクルパーになっちゃった! ズッコンバッコンズッコンバッコン激しい~ん!あたしあなたのトリコよぉ~ん♪ 嬉しいなったら嬉しいな!由香クルクルパーになっちゃった! ズッコンバッコンズッコンバッコン激しい~ん!あたしあなたのトリコよぉ~ん♪ 嬉しいなったら嬉しいな!由香クルクルパーになっちゃった!」 と、バカ丸出し、IQゼロの歌を、誰もいない方向を向きながら大声で無限ループで歌っている。 あまりの事態に呆然とする僕の背後にいつの間にかいたティファールが、 「どうですかぁご主人様ぁ。信じていただけましたかぁ?あたしが魔法の力であのメスにバカなことをさせましたぁ♪お楽しみいただけましたかぁ?」 「お楽しみいただけましたかぁ?ご主人様ぁ♪」 なんと由香ちゃん自身までティファールと同じセリフを言い、スカートをまくりあげて白いパンツを丸見えにし、そのパンツを中途半端にずり下ろして半ケツになると、 「ラジコン由香号!発進!」 「ケツだけ星人!パオーンパオーン!」 と叫び、反復横跳びのように素早い動きでガニ股になって左右にシャカシャカ動いたあと、バカでかい音で放屁し、おしっこを撒き散らし始めた。 (放屁があまりにもデカかったので、ちょっと実が出たようだ) 「ゆ、由香ちゃん…!」 健二くんはもう精神崩壊寸前だ。さすがに気の毒すぎる。河原で青春を謳歌していただけの二人なのに。 「ちょっ!い、今すぐ戻してあげて!」 ティファールはキョトンとした可愛らしい表情で小首をかしげ、 「え?どうしてですか?この世の全てはご主人様のモノなのに?」 …住宅街を歩いて帰宅する僕の頭上をティファールがフワフワ浮かびながらついてくる。 「ねえ、ご主人様ぁ、どうしてあのオスとメスを元に戻せって言ったんですかぁ?お好みに合いませんでしたか?」 …あのあと、必死でティファールに由香ちゃんを元通りに戻させ、健二くんと目撃者全員の記憶を消させた。 (シンナーヤンキーだけはその必要もなかったが) さっきまで下品な言動をしまくっていた由香ちゃんが、また物静かな恥ずかしがり屋さんになり健二くんと見つめあっているのを見て、 (おいおい、アンタさっきまで気が狂いまくり、ケツ出しまくり、放送禁止用語言いまくりだったのに、今更?) と呆れたりしたが。 (実はそのギャップにちょっと興奮したのは内緒だが。僕って変態かな?) ティファールは僕が焦っていた理由を最後まで理解できなかったようで、 「世界のオスとメスは全部ご主人様の道具なのに…」 とブツブツ言っていた。この子は善悪の区別が全くつかない、と言うか、まだ信じられないが、この子は本当に魔人で、僕ら人間とはあまりに価値観が違いすぎるようだ。 「あ!でも、ご主人様の初めてはティファのものですからね!他の女に目移りしたり、他の女に初めてをあげたら、私、ご主人様を殺しますから…」 この日から、ティファールと僕の短くも激しい喜悲劇の日々が始まったのだった。 |