転身  (その43)
作:ecvt


そのまま彼女の真っ赤なスポーツカーに乗り込んだ俺は、マンションを後にしたのだった。
「うっひょー!速ぇ〜!今やこれが俺の車だもんなー!最高!さて、このまま病院に・・・と言っても病院は面会時間なんてとっくに終わってるしな・・・どうやって入るか・・・そうだ!」
彼女の記憶を読んだ俺は、体操着の香りを楽しみながら、真野みきが撮影している映画のスタジオに向かったのだった。
今の自分の記憶によると、自分が主演の映画の撮影中、演出の方針で監督と揉め、元塚宝歌劇団のトップスターであるプライドの高い彼女はスタジオから帰ってきてしまい、憂さ晴らしにドライブに行く予定だったのだ。
マネージャーからだろうか?先程からずっと電話が鳴っている。そのまま無視していると、やがて電話が鳴らなくなった。

スタジオに着くと、夜遅いというのにまだ撮影やセットの組換えが行われている。
「さて、今[私]がやってる役って女医だったのよね〜!」
俺は記憶を元になるべく人目につかないように衣裳部屋に忍び込むと、そこで声を掛けられた。
「あ、みきさん!帰ってきてくれたんですね!さっきからずっと電話を掛けさせていただいてたんですよ!」
と安堵した表情のマネージャー、黒田和也。慌ててやってきたプロデューサーと監督が揃って俺に土下座してきた。
「どうだろうか?ここはひとつ・・・」
監督の方針で、随所にお色気シーンを挿入したいと希望していたところ、シリアスな本格医療ものにしたがっていたみきがそれを固辞して今日の撮影は中断し、みきはスタジオから帰ってしまっていたのだ。
(大の男三人が俺に土下座かよ!こりゃ気分いいな!まぁ、映画には下世話だけどお色気シーンも必要でしょ!恥ずかしいのは俺じゃないし、みきさんがやりたくないって言うなら、身体を貸してもらったお礼がてら、俺が代わりにやってやるとしますか!)
「いいわよ!是非やりましょう!台詞は頭に入っているからすぐに撮影を始めましょう!」
俺がそう言うと、三人は歓喜の表情を浮かべた。
(こんなに喜んでもらえて、人助けっていいもんだなぁ!そうだ!)
「それと、妹を慰めるシーンだけど、あそこも一緒にお風呂に入って慰めることにしましょう!あと、あの止まってたシーンは水着シーンと更衣室での着替えシーンを入れましょう!あと、ライバルの女医と和解するシーンは、ただハグするだけじゃなくて、相手がレズだからその気持ちの裏返しとして嫌がらせをしていたっていう監督の意見を採用して、二人の濡れ場にしましょう!黒田っ!ペニバンを買って来なさい!」
俺はノリノリでみきの記憶から様々なシーンを監督の意や俺の好みに沿ってお色気シーンに変更するよう次々と提案していき、彼女の記憶を使ってその役を演じていくと、停滞していた今日の撮影はあっという間に進行したのだった。
(やっぱり、人助けすると気分がいいな!完成が楽しみだ!それにいろんな女優さんとエッチに絡めたな!ムフフフフ・・・)
そんな事を考えながら、ペニバンを装着したまま楽屋に戻った俺は、その姿を写メに撮って自分の携帯に次々と送信し、履歴を消去すると、鏡を見ながら自分の姿をニヤニヤしながら眺めていた。
その時、医療監修をしていた女医の吉田羊子がやってきた。
「あら、吉田さん、今日は遅くまでありがとうございました」
俺はみきになりきってそう言った。
「いえ、塚宝歌劇団の頃から憧れてたみきさんのお手伝いが出来て光栄です!ベルパラのオスカロは今も私の王子様ですっ!」
羊子は目を輝かせて俺の手を掴んだ。
(おっ、こりゃイケんじゃね?それにこいつ・・・!)
「私も貴方みたいな綺麗な方にそう言ってもらえると嬉しいわ・・・」
「そんな・・・綺麗だなんて・・・あんっ・・・」
楽屋の鍵を閉めてキスをした二人は、そのままエッチに突入したのだった。

「どう?憧れの元塚宝歌劇団トップ女優にハメられる気分は?」
「さ、最高です、みき様!」
「ハハハ、オスカロとお呼びっ!」
「はひぃ、オスカロさまぁ〜!」

鏡の前で、ペニバンを装着している俺は、みきの記憶から自身も最も思い入れの深いベルパラのオスカロ役になりきって、それに感激している羊子にバックから挿入し、激しいエッチを繰り広げた。それから絶頂に達した二人はグッタリと床に崩れ落ちた。

しばらくして羊子だけが気だるそうに立ち上がって鏡を見る。
「あー、面白かった!さて、この女医って、俺が入院してる病院の女医なんだよな!みきのまま女医の衣装着て忍び込もうと思ってたけど、この本物の女医の身体で行ったら難なく入れるな!コイツはいい拾い物だったぜ!あんっ・・・!お役に立てて、羊子、嬉しいっ!」
中身が俺になった羊子は、鏡を見ながら色んなポーズをとったり自分の胸を揉んだりしながらそう言うと、服を着てみきがペニバン姿のまま倒れている楽屋を後にしたのだった。

「これもナカナカいい車じゃん!じゃ、羊子、愛する貴方の眠っている病院に行くわね!」
羊子の車に乗り込んだ俺は、バックミラーに映る自分の姿に向かってそう言ってウインクすると、車を急発進させて俺本体が入院する病院に向かったのだった。

(続く)




inserted by FC2 system