シェアワールド「男性化ウィルス」作品
 

吉田一家の一週間

作:どせいさん


月曜日 その二

「おい、愛理!一緒に帰ろうぜ!こないだ言ってたゲーム手に入ったんだ!」
「ね、ねぇ翼ちゃん、ぼ、僕と一緒に帰りませんか?」
私たちのグループの二人の感染者は、相変わらず今日もよくモテる。
いつものテラスから校門までのほんの10分の間に、5人近い男子から誘われてる。
感染前のおとなしい性格から135度ぐらい変わった、さっぱりからっとした性格になってすっかりクラスの「姉貴」になった愛理は、女子や下心なしで純粋に女友達として仲良くしたい男子からも慕われ引っ張りだこだ。
中性的な外見の翼には男子はもちろん、そうとも知らず女子が言い寄る事も少なくない。
もちろん、煩悩丸出しの男子や感染者達からもエッチな勧誘が後を絶たないみたいだけど。
噂では、ウイルスに感染した人は体形がセクシーになって、フェロモンが多く出るという話だから、それが原因かもしれない。
「おいっ、愛理ぃ!相変わらずいい乳してんじゃねーかぁ!」
「お前もまたデカパイになって、爆乳街道まっしぐらだな!このこの!うらやましいぞ!」
愛理はこうやって感染者友達とじゃれる他に、たまに昔「女友達」だった感染者女子を相手に「遊ぶ」事もあるらしいけど、翼はそういった勧誘はむしろうっとおしいって言ってた。

「今日の生物の授業、どうだった?僕はよくわからなかったよ〜」
「ああ、この遺伝子はここで組み替えが起こるのよ。それで発言する形質が変わるの」
それでさぁ、こないだのバラエティ番組でさぁ〜。
「あの芸人だろ?マジありえねえよなww」
駅前のファーストフード店でハンバーガーを食べる、この風景も日常そのものだ。
ふと駅前の時計のオブジェを見ると、もう五時半だ。
「げっ!!電車が来るまで後五分じゃん!?オレ、今日は用事があってさぁ」
「私もそろそろ帰らないといけないわね。じゃあ愛理、また明日会いましょう」
じゃあ、そろそろ帰ろっか。
違う路線に乗らなければならない愛理と別れ、幼なじみである私たちは電車に乗った。
私と里奈は女性専用車両に、翼は感染者専用車両に向かう。
ドアのすぐ近くの座席がたまたま空いていた。ラッキー!
「そういえば、里奈と知りあったのは、小学校だったよね?」
「何よ今更。そうね、クラス分けの後にすぐ貴方たちと仲良くなって、それからお互いがすぐ近くに住んでるって知って驚いたたのは今でも良く覚えているわ」
「最初、里奈は翼の事を男の子だと思ってたんだよね。初めて一緒にプールに行ったとき、大騒ぎしてたっけ」
里奈と他愛ない話をしていると、すぐそばの座席から、ひそひそとした話し声が聴こえてきた。
「体だけ見たりセクハラしたりするだけなら、んんっ、感染者専用車両でもいいんだが、俺達と同じでギラついた目つきの奴しかいないから、はっ、イマイチそそられないんだよな〜」
「ああ、やっぱり同じ女の園でも大違いだぜ。例えうぶな女じゃなくっても、おふっ、男じゃないのに違いはないからな。ふぁぁっ、女の立ち振る舞いってやつが良いんだよ」
「あそこでぺちゃくちゃ喋ってる、ふひゅ、女子高生達のあどけない顔、表情、髪型、若々しい太もも、んはぁ、もうたまんねぇ。めちゃくちゃにしたくなるな」
「あそこで雑誌読んでる女も、くはぁ、太ももの肉付きとか化粧の具合がなかなかそそられるぜ」
気付かれないように何気なく振り返って見ると、女の人が二人、お互いの体を求め合っていた。一人はミニスカートで、胸元の露出が大胆なネック、もう一人は制服を着たOLって感じ。
たまに、こうやって感染者が女性専用車両に紛れ込んでいる事がある。
身体は女性だから男性と異なって即座につまみ出される事はないし、予防もし辛いみたい。
私は感染者差別とかはしないし、翼達の友達として感染するリスクもある程度は覚悟し受け入れてるんだけど、そんな人ばかりでもないからやっぱり感染者専用車両に行って欲しい。
隣に座っている里奈は額に青筋を浮かべてるし、周りの乗客もあまりいい顔をしていない。
最悪の事態を防ぐために警報ベルを・・・ええっ!?「修理中」って・・・そりゃないよぉ。
仕方ない、もう一方のドアから逃げだして・・・
「あの人たち、感染者じゃないですか!?まったく、あんな連中が紛れ込んでるなんて、たまったもんじゃないですね・・・全く、こっちに来ないでほしいな。僕があんな連中になったらと思うと、ぞっとす・・・あ、あれ?ぼ、私、どうしたんだ?いきなり自分のことを、「僕」、だなんて、それになんだか、胸が、胸が、いつもと同じはずなのに、大きい、わた、僕の胸、膨らんでる・・・そ、それになんだか、胸元が締め付けられてるような、ブラジャーが、変にきつい感じがする・・・わた、ぼ、僕の胸、や、柔らかいな・・・、僕の胸・・・っ!わ、私、どうして自分の胸を人前で!?なぜだ!?僕、わた、僕は、女、女なのに、どうして自分の胸を、これ、胸、この胸、なかなか魅力的だよなぁ・・・たまんないよ」
「えっ?あなたもなのか・・・なんですか?ホントのところ、ぼっ、わ、私もそうなんだよ。た、たぶんこれが例のウイルスって奴じゃないか・・・ううん、ないかしら?ぼ、私、電車に乗り込む前は、私は、普通の女、女でこの子の母親だったのに、さっきから股間がさみしい感じがする。触ってみても、あんっ!!なぜだ、僕にそんなものが付いている訳がない、付いてない所からこの子を産んだのよ。そんなはず無いのに、どうしてだ、んうっ・・・アレが、付いて、付いてるはず、いや、そんなわけ、そ、それに、女のアソコ、物凄く、いい・・・男のアソコとは大違い・・・?なんで、わ、僕こんなこと思ったんだろ・・・あふぅん!いっ、一度も自分のをしごいたことなんて、ないはずだぞ・・・ないはずよ!?そっ、それに、なんか普段よりもパンストが締め付けてきて、しかもパンストの肌色を見てるとムラムラ変な感じがしてくる。くっ、お、落ち着かない・・・わっ、ぼっ、僕は一体どうなっちゃったんだ!?」
「ママ、どうしたの?だ、大丈夫?話し方とかがまるでパパみたいな感じだよ?ぼ、私と違って、ママはちんちんがついてない女の人なんだし、そんなの変だ・・・ええっ?ぼ、私にそんなのくっついてないのに、私、今どうしてそんな事言ったんだ!?ま、ママぁっ、へ、変だよ!わ、僕ね、い、今いきなり自分のことが男の子みたいな感じがしてきてね、それで、僕、わた、僕、おちんちんがついてないんだ、ついてないのが変な感じで、髪はなんか長いし、服はなんか女子みたいな、ぼ、私、この服お気に入りだったのに、なんかひらひらした女の子の服が、嫌なんだ。スカートも、さっきまで好きな色でうれしかったのに、なんかスースーするし、スカート、ぼっ、僕のスカートに女の子のアニメが描いて・・・僕がスカートをはいてる・・・?ま、ママ、なんか変な感じだよぅ」
・・・何があったのかわかりやすく一言で説明すると、ドアの近くにいた女子大生風のお姉さんと、そばに座っていた若い母子が同時に発症したの。
近くにいる人は一斉に車内の中央に避難した。これで実質上退路は塞がれてしまった事になる。

「なぁ、それはそうとしてこの後どうする?」
「オレの家に来いよ。邪魔な奴はいないし、んへ、好きなだけ楽しめるぜ」
「けど、お前妹夫婦と暮らしてただろ。前に妹の旦那にバレそうになってやばかったじゃねえか」
「それがここだけの話、最近妹も感染してさぁ。あいつしょっちゅう女友達を連れ込んでは、んひゃ、感染させて、今じゃあオレ以上のヤリ手だよ。」
「マジでか!?前はオレ達をゴミを見るような目で見てたあいつが、おっ、おふぅ、『ウイルスに犯されちゃったぁ』ってか。たまんねぇなそりゃ。想像するだけで今からもう、んひゅあっ、ここが濡れてきやがる」
「妹の感染させた連中と五人がかりで、あはぁ、おもてなしするぜ」
セクハラされたらたまったもんじゃない。
私の地元までは後3駅もある。こっちに火の粉がふりかかってこない事を祈ろう。
そんな事を考えていると、電車のドアが開いてセーラー服姿の女の子が入ってきた。
私よりも二歳は年上のような体格で、黒い長髪だった。
女性専用車両だと思って、すっかり安心しきってるみたい。
彼女はよりによって、あの二人の座っている直ぐ側に座ってしまった。
「あら、貴方、学生?お幾つ?」
「え、ええ。私〇〇学園の二年生です。」
「あら、もっと歳上かと思ったわ。こんなに綺麗なんですもの・・・えいっ!」
「ひゃあっっ!!な、何をするんですか!?一体どういうつもりで・・・んうっ!!んんっ・・・む、むぅっ〜!!んむぅ〜〜っ・・・」
「んふ・・・。んっ・・んふふ・・・」
「ん、んふゅぅ〜〜っ!!んっ!ふゅぅ〜っ!・・・ぷはぁっ!!い、一体何なのっ!!」
「何なのって、そりゃあウイルスをうつしてやったのさ。男性化ウイルスをな。」
「え・・・?」
「こいつのウイルスはかなり感染力が強いからな。ま、ものの十分もしないうちに俺たちの仲間になるな」
えええええっ!?といった表情と共に、周りの女性客があたふたと逃亡する。もちろん、私達も逃亡する。というか、今の話がほんとだとすると逃げ遅れたら、というか逃げ遅れてもヤバいけど・・・
平凡な世界、そんな風に一変して欲しくなぁぁい!!
・・・それなりに距離を取りつつ、物陰からじっと様子をのぞき見、聞き耳を立ててみる。
「彼女」の言葉が本当なのか確かめないと、自分の精神が持ちそうにない。
感染させられたと思しき女性の抗議の声が聞こえてくる。どうやらまだ精神の変化は表れていないみたい。
「ぷはぁっ!はぁっ・・・はぁっ・・・なんで、なんで私なんかに!?あむっ・・!感染力が高いんだったら、私よりもきれいな「お友達」がいるんでしょうっ!?」
「そううまくいけばよかったんだけどな。んっ・・・こっちにもこっちの事情ってやつがあるのさ」
「俺のウイルスはどうやら粘膜や体液なんかで感染するタイプらしくってさぁ。あふっ、女の家族がいるけど、いまだに母親は普通だし」
その言葉を聞いた瞬間、張りつめていた緊張の糸がぷつり、と切れるのを感じた。
2人して思わず電車の床にへなへな・・・と座り込んだ。大きく安堵の溜息をついて、胸をなでおろそうとした、まさにその時、私達の背筋は凍りついた。
「あうっ・・・あ・・・あれ?な、何か私、胸を揉まれて嫌なはずだったのに、あんっ、き、気持ちいい・・・か、快感とは違う感じ、なんていうか、嬉しいような・・・そんなはずないのに」
「おっ、ようやく効いてきたな。これまでで一番発症が遅かったんじゃないか?」
「そ、そんな!い、嫌です!私、あんたたちみたいになりたくない!ふざけ・・・ああんぅっ・・・!な、何だ・・・?胸が、でっかくて、ぷるんって揺れて、肌がつるつるる・・・所々ぷにぷにして、これがおっ、わっ、私の肌・・・?」
「気持ちいいだろ?ほら、どんどん男の心に変わっていくぞ・・・?」
「や、やめろっ・・・!は、離せよぉっ!くっ!スカートが引っかかって、スカートが、スカート、何だか足元に空気が入り込んでスースーする、女のパンツもぴっちりしてるし、どうしてだ、いつも履いてるのに、へ、変な感じ・・・なんだこれ、じっ、自分の体が、他人の体になっていくの・・・か?き、気持ち悪い・・・」
その時、ちょうど電車が駅に到着した。私達の街までは後2駅もある。早く着いてよぉ・・・
不幸にも、いやひょっとしたらむしろその方が良いのかもしれないけれど、乗客はほぼゼロだったし、その内女性専用車両に入ってきたのは20代ぐらいのOLの人だけだった。
それと入れ替わるように、大勢の乗客が一斉に避難する。
これでようやく、この地獄から解放されるんだぁ・・・
私たちはそう思って、思わず腰が抜けてしまった。・・・それが間違いだった。
電車は緊急事態に気づいて停止することもなく、そのまま走り始めちゃった!
「そうか、気持ち悪いのか〜。・・・じゃあ、遠慮なく脱がしてやるよ!」
その時、二人組の感染者の内1人が悦に入った様子で喋った。
それを聞いたOLのお姉さん、この異常過ぎる状況に気づいたみたい。
向こうの3人の方に向かって行った。だ、大丈夫かなぁ・・・?
「あ、あなたたち・・・いっ、一体何をやっているの!?」
「何って、こいつをウイルスに感染させてやっているに決まってるじゃないか。気持ちいいぜ、これ。自分がウイルスに侵されて、自分じゃなくなっていくときの気分ったら」
「な、なんてひどい・・・早くその娘を離さないと、人を呼ぶわよっ!」
「『その娘を離さないと人を呼ぶわよ』・・・か。古臭い言い回しだし、その必要は二つの意味で全くないな。一つ目の理由として、こいつはもうすぐこの状況を自ら望む様になる。二つ目の理由はなぜなら・・・こうしてやるからさっ!!」
そう言うとミニスカートの女は、いきなりOLのお姉さんに飛びかかった。
「んっ・・・げほっ、や、止め・・・んぷぅっ!!いやぁっ、離し・・・んっ、んんん・・・」
おそらくこの人も遠からず・・・普段、感染のリスクは覚悟して生活しているはずなのに、そう思うと震えが止まらない。あんな風に無理やりだなんて・・・
もう一人の感染者の女は、女子高生の人のスカートをずらそうとしている。ひどい!
「もうスカートの上からじゃ満足できないだろう?直接指をいれてやろう」
「ふざけんなぁっ!ふざ・・・ふざけないでよっ!電車の中で、わっ、私のスカ・・・あふううっ・・・!ぱ、パンツが・・・あ・・・パンツが・・・女のパンツ・・・しかも濡れ濡れになってる・・・んぁぅうっ!わ、お、俺の下着、愛液でグチョグチョな下着、すげえエロい・・・女の匂いでいっぱいだ・・・そっ・・・それに、さっきから俺のアソコ、チンチンが無いっ!無くなって・・・じゃなくて、無いのは元々じゃないっ!男の子のアレがずっとあったような、くっ、私がおっ、わっ、私じゃなくなってるっていうの・・・?そんなの嫌だ!い、嫌よ・・・だれか、助けてくれ・・・!」

あんまりにもひどくて、もうみていられない。私は目をそらすように逆方向のドアを見た。
そこでは、女子大生の人と主婦の人が、互いに口付けを交しお互いの胸を揉み合っていた。






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