「どきどき表裏不同《Ver.2》」
(この作品を怪人福助氏に捧ぐ)


4.ショッピング!ショッキング?
   作:貴人福助
   日本語訳:よしおか、夏目彩香


Eマートに入ると、お店の中には、様々な魅力的な商品が溢れていた。
周りにあふれる商品に目移りしながら歩いていると、あちらこちらのコーナーの店員が声をかけて来た。
「お嬢様、何かお探しですか?」
「お嬢様、こちらでお試ししてみませんか?」
店内のコーナーの店員が、あちらこちらで、わたしをお嬢様と呼びかけて、誘ってくる。

お嬢様と?
フフフ、わたしの容姿の下に隠されている姿を見ても、そんなことを言えるだろうか?
このチャーミングな顔と、スリムなスタイルのわたしの中に、実は、40才代の中年男が入っているとは気づかないだろう。
まさか、わたしの外見を見て、この外見の下には、全く別の姿をした別の姿が隠れているとは、絶対考えないだろう。
まったく、外見が変わっただけで、世の中の人たちの態度が変わるだろうとは思っていたが、これほどだとは、全く世の中はわからないものだ。

わたしは、こんなわたしのことを『お嬢様』と声をかける店員らの態度を面白がりながらショッピングを楽しむことにした。


わたしは、まずは靴を物色することにした。
さすがに、こんな美しい若い女性のわたしが、こんなダサい男物のスリッパを履いているのに、違和感を感じていたのだ。
でも、ベテランの店員はさすがに違う。
わたしが靴を探しているのに気づいたようで、靴売り場の店員が、わたしのそばに近寄ってきた。
「お嬢様、靴をお探しですか?」
「はい、適当なものがあればと思いまして」
「そうですか、で、どんなモノをお探しですか?」
突然言葉に詰まってしまった。

今のこの姿に似合う靴ってどんなのだろう?
そして、その靴の名前はなんて言うのだろうか?
ブーツ? ヒール? スニーカー?
それに、わたしの今の足のサイズはどれくらいなんだろう?
22cm? 23cm?
ひょっとすると、女物の靴のサイズは55とか66とかだろうか、もしくは、また別の単位で呼ぶのだろうか?

ここで下手のことを言うと店員に怪しまれないだろうか
と考え、なんとか誤魔化すことにした私は「もう少し、見て回ります」と店員に言った。
「それでは、いろいろ取り揃えてありますので、どうぞごゆっくりご覧ください」
そう言って、店員はわたしの側から離れていった。
わたしから去っていく店員を見送りながら、さっきのことは、わたしの考えすぎではなかったのかと思った。
それでもわたしは、靴を選ぶフリをしながら、他のお客と店員の会話をこっそりと盗み聴きした。
彼女たちの会話から、女性の靴もサイズは、23cmと、男物と同じように、単位は、センチで表すことと、パンプス、ローファー、レインブーツのような、男には少し聞き覚えの無い靴の名前を聞くことができた。


今回、女のフリをして、意外なところで緊張することがわかった。


それらを踏まえて、わたしは、注意深く履物を選んだ。
だけど素敵な履物が多くて、なかなか決められなかった。
自分の靴のサイズがわからないので、足にピッタリと会うサイズの靴を、ひとつずつ、履いて探した。
それで、わたしの足のサイズが23.5cmなのが分かった。
本当のわたしの足のサイズは27.0cmなのに、いまは、23.5cmだなんて・・・
縮んだ足のサイズから、今のわたしの身長が縮んでいることを実感した。
足のサイズがわかったので、本格的にショッピングを開始した。
店の中を見て回り、まずは、楽に履くことができるスニーカーと、サンダルを選んだ。
あとは、ヒールかな?


女は何といっても、かかとの高いハイヒールだよね、と考えて、ヒールが陳列されているところに行った。
そして、気になったヒールを手に取ると、履いてみた。
こういうヒールは、若い頃、女装にはまっていた時でも、履いたことがなかった。
でも、今は、誰はばかることなくハイヒールを履くことができる。
わたしは、ヒールを履いて、立ち上がろうとした瞬間、重心を失って、わたしは後ろにバタンと倒れてしまった。
その音に、売り場にいたお客や店員たちの視線を集めてしまった。
店員の一人が、慌ててわたしに駆け寄ると、わたしの肩に手をかけて起こそうとしたが、フーフーと息を荒くして力んだが、起こすことができなかった。
わたしも、慌てて身体を起こそうとしたが、ハイヒールを履いていたので、また身体のバランスを崩してしまい、今度は、起こそうとしてくれた店員の上に倒れてしまった。

恥ずかしかった。

顔があまりの恥ずかしさに火照ってしまった。
あまりにも恥ずかしくて慌てて起き上がると、倒れている店員を起こした。
「ああ、わたしのために・・・本当にごめんなさいね。」
「いいえ、大丈夫です。ともかく、お客様・・・おケガはございませんでしたでしょうか?」
いや、皮をかぶっているとあざができたとしても、外観からはわからなかった。
わたしは、大丈夫だと告げると、もう少し気軽なヒールがないか尋ねた。
その店員がすすめてくれたのは、ヒールは高いが、あまりカカトの尖ってはいないパンプスというものだった。
幸いパンプスは、ヒールと違って靴底とカカトの付く部分が広く、歩きやすかった。
その靴を選んでくれた店員がささやいた。
「お客様、お足が本当に可愛いですね。羨ましいですわ。ところで、ヒールを一度もお履きに成られたことがないようですね」
「えっ?」
驚いて、店員を見ると、彼女は驚いたような表情をした。
私は、店員が言った意味を考えた。
彼女が言った二つの言葉は、明らかに反するもののようだった。
足がキレイ・・・ヒールを一度も履いていない・・・
この二つの事が、どう繋がるというのだろう?
そのうち、わたしは、ふと女性たちの足がヒールのために、変形する場合があることに気づいた。
その足に比べると、わたしの足は、とてもなめらかで、真っ直ぐにしっかりとしていて、別の見方をすれば、生まれながらの足をしているということだ。
「は、はい・・・」
わたしは、選んだ靴を店員に差し出した。
店員は、それを受け取り、確かめると、同じ靴の入った箱を収納ボックスから取り出すと、レジへと向かった。
買い物の計算をしてもらうとスニーカーに履き替え、履いてきたスリッパを箱に入れてもらった。
会計を終えて、帰りかけると、後ろで店員たちの話し声が聞こえた。
「ところでアナタ、さっきなぜお客様を起こすのに苦労してたの?」
「それがね、なんだかあのお客様、意外と重かったのよ。まるで男の人のようだったわ」
「まさか・・・???」
ささやくような声だったが、わたしにははっきりと聞こえた。
『重い・・・まるで男の人みたいだった・・』という言葉が、わたしの耳に残った。
わたしはこれ以上ショッピングを続けることができなくなり、Eマートを出た。

(続く)




toshi9より:
貴人福助さんからいただいた第4話です。
今回から、いただいた作品を@機械翻訳Aよしおかさんが意訳B夏目彩香さんが最終確認という流れで翻訳作業を進めております。機械翻訳は私とよしおかさんは別なサイトを使用していますし、意訳する言葉の用い方も違いますので、少し印象が違うかもしれません。そして夏目彩香さんには今回も最終チェックでお世話になりました。
よしおかさん、夏目彩香さん、ありがとうございました。
貴人福助さんの原作第4話のテイストを、日本語訳で楽しんでもらえたら幸いです。



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