記録 作:Necro 夕方の学校、教員と遅くまで部活動をやっている人以外は全て帰宅して学校はほとんど無人だ。 そんな人気の無くなった学校の隅っこにある空き教室に、部活動をやっていない生徒が2人いた。 「ほら、もっと頑張って」 栗色のストレートロングヘア、整った顔立ちのブレザーを着た美少女はそう言う。 彼女の目の前には全裸の男が自らのペニスを握って自慰行為をしていた。 「うっ――、くはっ――、あぁっ!!」 男は絶頂を向かえると前のめりに倒れる。 同時に男の体中にたるみができ、わずかに体が膨れる。 「時間が無いから、早く」 女は男を急かす。 男は肩で息をしながら立ち上がり、背中に手をまわし自らの皮膚を掴んで左右に思いっきり引っ張った。 男の背中は割れ、ビリビリと音を立て皮膚に裂け目が走る。 裂け目が広がるにつれ、皮膚がずり落ち床へどさっと落ちた。 男の皮膚が脱げ落ちると、中から同じ男が出てくる。 それは脱皮であった。 「ご苦労様」 女は満足気に男が脱いだ皮膚を受け取り、それと同時に女も自分が持っている人間の形をした皮膚だけの物――皮を渡した。 「それじゃあ、着よ」 女はそう言ってブレザーを脱いで全裸になり、男から受け取った皮を女は着始めた。 女は脱皮した男の皮を着ながら、脱皮した男に手で自分が渡した皮を着るよう指図する。 指図されるよりも前に男も同じように女から受け取った皮を着始めた。 皮の外見は人間、ただ中身は何もない、まさに皮そのもの。 男の皮を着た女は、女の皮を着た男へ向かって言った。 「これで元通りだ」 1週間前。 単純な結論。 その男は、悪魔だった。 学校の帰りに女、理恵(りえ)はその悪魔に掴まった。 その男は先日学校へ転校して来たばかりで、女は何の疑いも無くその悪魔に接近を許してしまった。 「この街の事教えてくれないか」 男は理恵に向かって軽く微笑みながら言った。 理恵も快く引き受け、街を案内する。 学校の周辺、商店街、大通り……。 一通り案内が終わると、男は言った。 「近くに公園はある?」 理恵は男を公園に案内した。 その公園は行政の緑地化計画の一環でとても広く大きい。 公園の敷地内に野外劇場、図書館、美術館、テニスコート、野球場があるほどだった。 理恵は男に、良くこの公園に来る、と話し掛けると男は優しそうな眼で返事をした。 ぐるっと公園を一回りして、公園の入り口に面した広場に戻る。 男はぽんっと理恵の肩に手を乗せ、笑顔を見せた。 「案内ありがとう、じゃあ帰ろうか」 そう言って帰ろうとした時、理恵は突然尿意に襲われた。 あまりに突然だったので我慢出来ず、理恵は男にちょっとお手洗いに行くと言ってトイレへ駆け込んだ。 理恵は個室に入り、便器に座る。 しかしそこで少し違和感を覚える。 尿意は確かにあったはずなのに、理恵は全く尿を出さなかった。 そこへカツカツと誰かがトイレに入って来る音がし、次の瞬間にトイレのドアが突然開いた。 まさか誰か入ってくるなどとは思わず、とにかく尿意が強かったので理恵は鍵をしていなかった。 理恵の目の前には、男が立っていた。 転校して来たばかりの男、街の案内を頼んできた男が立っていた。 男は獲物に狙いを定める獣の眼を見せつけ、次の瞬間には理恵の唇を自分の唇で塞いだ。 抵抗する事も出来たかもしれない。 ただ、唇を塞がれ何かが口を通じて流し込まれると同時に理恵は急激に意識が朦朧として来た。 理恵はさっきまでの男の優しい眼と獣の眼を見比べる、明らかに異常、そう判断したと同時に眠りについた。 男は理恵の頬を数回ぺちぺちと叩いて眠った事を確認する。 何をされても寝息を立てているだけの理恵を見て、男は微笑みながらトイレのドアを閉めた。 男は鞄から黒い液体の入った瓶と空き瓶を取り出すと、理恵に黒い液体を飲ませた。 理恵の体は時折痙攣し、陸上げしたばかりの魚のようにのたうちまわると理恵は口から粘着質の液体を吐いた。 男はその液体をビンに受け取り蓋を閉める。 液体を吐いた理恵の体は内臓を失い厚みを無くし、空気の抜けた風船のように単なる皮となった。 次に男は理恵に飲ませた黒い液体を自ら飲んだ。 男は理恵の皮の唇に自分の唇を合わせ、自らが吐く液体が彼女の皮の中に流れ込むようにした。 「うっ……ごはっ………うぷっ………」 液体が自分の体から流れ出す音と、自分の体に流れ込む音を同時に聞きながら男は眼を閉じる。 男が目覚めると、理恵の体を支配していた。 両目を開き、自分の状態を確認する。 目の前には皮となったさっきまでの自分の体がある。 男は理恵の体から出た液体を受け取ったビンを持ち、その液体をさっきまでの自分の体の中に流し込んだ。 理恵は意識を取り戻した―― そして目の前の自分に気付き驚いた。 目の前にいる自分が語り出す。 「今日から私が理恵と言う女、貴方が祐樹と言う男になるの」 祐樹は泣いて理恵に嘆願した。 元に戻して、何でもするから。 理恵が優しく言った。 本当に何でもする? 祐樹は誓った、何でもすると。 理恵は祐樹に服を全部脱げと言った。 祐樹は戸惑いながら服を脱ぐ、ズボンとパンツに手を掛け下へ降ろす。 何もしていないのに堅くなった赤黒いペニスがぽろんっとズボンから出てる。 すると理恵は突然祐樹のペニスを両手で掴み、上下運動を始めた。 祐樹は驚きながら、 「や、やめて!」 理恵はゆっくりと唇を動かし、何でもするんでしょ?と優しく祐樹の耳元でささやく。 祐樹は口を閉じ、ただただ押し寄せてくる快感を我慢する。 何をするつもりなんだろうと考えながら。 そして理恵は口を開け、祐樹のペニスを咥えた。 ひっ、祐樹は恐怖を感じ同時に快感に耐えるために自分の後ろの壁に手をついた。 ぐちゅ、ぷちゅ、ちゅっ。 祐樹のペニスは理恵の口の中で暴れ理恵の唾液でぬるぬるになる。 ちゅぅぅぅ……。 ペニスを咥えたまま思い切り理恵は吸い込んだ。 「あっ、あっ、あっ、あっ、あー!」 なさけない声を出し、祐樹は両手で理恵の頭を押さえ込む。 「んんっ!んぐっ、あぐっ」 理恵の苦しそうな声が祐樹の欲情をかきたてる。 快感を抑えきれず祐樹は遠慮無く理恵の喉にまでペニスを強引に押し込み、白い液体で染めた。 ペニスを口から吐き出し、げほげほっとむせる理恵。 次の瞬間、祐樹は違和感を覚えた。 急に服を着込んだような感覚がある。 自分の姿を見下ろすが全裸だ。 理恵は祐樹にがばっと抱きつき、祐樹の背中に指を食い込ませた。 そして思いっきり左右に引っ張る。 祐樹は痛っ……と声に出したが、実際には痛くなかった。 そして祐樹の目には、皮となった祐樹が映っていた。 「一度液体になった人間が宿った皮は絶頂に達すると、脱皮するの」 理恵はそう言って祐樹の皮を丁寧に畳んで床に置いてある鞄の上に載せた。 「じゃあ、今度は私をいかせて」 そう言って理恵は服を脱いで裸になると祐樹に抱きついた。 祐樹のペニスもまた反応し、抑えきれない衝動がこみ上げてくる。 理恵は自らの股に祐樹のペニスを挟み、挑発をする。 「早く……」 理恵は祐樹の自制が効かなくなるまで挑発を続け、とうとう祐樹は理恵の乳首に噛み付いた。 「あっ!」 理恵は思わず声も上げるも、自分の胸に噛み付く祐樹の頭をそっと撫でた。 祐樹は泣きながら自分の体だった物を揉みくだし、舐めまわし、しゃぶり、時に軽く噛んだ。 そして祐樹は理恵の体を掴み、強引に壁に押し付け、後ろからペニスを挿入し、理恵の体を下から突き上げる。 「うあっ、あうっ!」 ぱちゅん、ぱちん、と体と体がぶつかる音がし、何回か繰り返すと水っぽい音が出てくる。 ぐちゅ、ぶちゅ、ぷちゃ……、ぴちゅ……ぱちゅ……。 理恵は栗色の長い髪の毛をばさっと上下に大きく揺らし、天上を見上げて達した。 祐樹もあと少しで達すると言う所だったが、理恵に突き飛ばされ壁に背中を激しくぶつける。 「はぁ……はぁ……」 理恵は深呼吸し落ち着くと自分の背中に指を食い込ませ左右に思いっきり引っ張る。 理恵の背中が割れ、中から理恵が出てくる。 そして外側の理恵の皮が剥がれ落ちた。 「この皮を被れば、貴方は理恵に戻れるわ」 女はクスクスと笑った。 その女の顔は確かに理恵の顔だが、理恵の笑いではなかった。 ある喫茶店に、男と女が居た。 「悪魔が居ないことの証明、出来る?」 女はコーヒーに入れた砂糖をスプーンでかき混ぜながら聞いた。 「悪魔が存在しない事の証明は、この世の全ての悪魔以外の存在が『存在する』事の証明をしなければならないから無理だな」 男は淡々とそう答え、容貌には似合わないアイスクリームメロンソーダを飲む。 「悪魔が居なければ、良いでしょうねえ。でも……」 そう言って女は自分の隣にある空いた椅子に置いてある鞄を見る。 男も女の視線に従って鞄を横目で見た。 「証拠が見つかったんですね」 「残念ながらね」 理恵は口を開け、ぼーっとした。 何が起きてるんだろう、頭の思考速度が現状理解に追いつかない。 目の前にいる男、祐樹は既に制服を着て出る準備をしている。 「何してるんだ。行くぞ」 自分の言葉に何も反応しない理恵に腹を立てたのか、祐樹はトイレのドアを開けてでようとした。 考えがまとまらない内に事態が進む、判断が出来ないまま理恵は立ち上がって、 「だめ!待って!」 「早く着替えろ」 理恵が着替え終えると同時に祐樹がドアを開けて出た。 理恵は慌てて鞄を持ち、祐樹を追う。 「あ、あなたは……一体……」 「僕が誰なのか……知りたいか?」 祐樹が理恵の肩に手を置いて抱き寄せる。 傍目には恋人同士に見えるかもしれないが、理恵は小刻みに震えている。 「な、なにが……さっき何が起きたの……」 「僕の言う事さえ聞けば、今までと何ら変わらない自分で生きていけるさ」 「あ……じゃあ……」 「僕の言う事を聞かないと、君は君を一生失うよ」 その言葉がどう言う意味なのかは良く分からなかった。 ただ本能的に危険を感じ理恵は顔を真っ青にして、祐樹を抱き返す。 「や……やだ……」 「僕から離れちゃだめだよ」 眼に涙を浮かべ、無言で必死に理恵は頷いた。 「君は僕から離れないと、君自身がそう決断した……そうだね?」 理恵はさらに強く祐樹を抱きしめ、頷く。 「僕が君を罠に陥れ、君に強制したと……」 祐樹がそう言いかけたところで、理恵は大声で言った。 「違う、私の意思で、私、一生ついていくから!」 再び理恵の眼から涙がぽろぽろと零れ落ちる。 「君は本当に愛らしいね、僕は君のことが好きだよ」 泣きじゃくる理恵を祐樹は優しく抱き締めて、理恵の家まで一緒に歩いていった。 祐樹は自分の電話番号を彼女に伝え、夜電話するように伝え、自らも家へ向かった。 「えーと、暗証番号は……っと」 オートロックのマンションにつき、暗証番号を入れ施錠されている扉を開ける。 6階の603号室の前まで来て、家の鍵を出す。 普通の鍵と電子鍵の二つを挿しこみ鍵を開け、彼は家の中へ入っていった。 「ただいま」 靴を脱ぎ、鞄を玄関に置いて居間にまで進む。 居間の電気をつけ、ソファーにどかっと座った。 新聞を手に取り、ざっと眼に通す、特に変わった出来事は無い。 読み終わった新聞を古新聞入れにぽいっと投げ込み、衣装箪笥の前まで来て、扉を開ける。 そこには様々な服がかかっており、自分の通う学校の女子生徒の制服を一着、女子用体操着を一着、女子用私服を二着手に取った。 一式揃った四着の服と下着類、そして蓋付きの小さな空瓶と黒い液体の入った瓶をたくさん袋に収め玄関に置く。 トイレに行き用を済ませ、軽く食事をして風呂に入り体を洗ってテレビを見た。 そのままテレビをぼーっ眺めていると電話がかかってきた。 『あの……理恵です……』 理恵に公園まで来るよう伝えて電話を切る。 再び制服を着込み、四着の服と小物を納めた袋を手に持ち、彼女の待つ公園まで向かう。 理恵の体を奪った広大な公園で再び彼女に会う。 「何するの……」 疲れきった目をした理恵が尋ねる。 「こっち来て」 理恵を連れて祐樹は公園内の売店の前に来る。 売店のシャッターはもちろん閉まっているので、裏側にある扉を開けて中に入る。 どうしてそんな所の鍵を祐樹が持っているのか理恵は尋ねようとしたが、 あまりに手馴れた一連の動作に怖くなって聞かない事に決めた。 売店の中に入ると、祐樹は電気をつけ、裏口の扉を閉めた。 「じゃあ脱いで」 理恵は一瞬戸惑うが、祐樹の目が真剣なので、言われたまま従う。 全裸になった理恵を祐樹が後ろから抱きついて押し倒した。 理恵をうつ伏せにしたまま、祐樹は上から被さる。 「や、やだ!!何を……」 「今日直ぐに成功するとは思ってなくて、準備してなかったんだ。 君が家に帰って電話をするまでに準備をしたから、これから実行に移そうと思って」 そう言って祐樹は下半身に纏う服を脱いで、己の性器を理恵の性器に押し込む。 「うぐあっ!あがあっ!」 悲鳴が理恵の口から零れ落ちる。 「叫ぶのはいいが、噛み付くなよ」 口を大きく開け、歯を剥き出しにして叫ぶ理恵。 理恵の状態を無視し祐樹は強引に何度も出し入れを繰り返す。 「い……がっ……う……えう……」 理恵の声は段々と小さくなり、断続的になる。 祐樹は理恵の耳元にそっと近付き、 「楽になってきたかな」 「……ふぁ……あふ……っく……」 顔を赤くして喘ぎだす理恵、もっと欲しいと思った矢先に祐樹はペニスを抜いた。 「……?」 振り返って祐樹の顔を確認しようと、理恵が体を傾けようとしたが、 強引に祐樹は理恵の体を再び組み伏せてうつぶせにし、彼女の性器に手を突っ込み、クリトリスを思いっきりつねる。 「いぎゃああああああああああ!!!」 思いっきり理恵が叫び、体を何回かびくびくさせたのを確認して祐樹は手を引いた。 理恵の体はわずかに膨らみ、たるみが出来てくる。 祐樹は再びペニスを理恵の性器に押し込み、理恵が言葉が発せないほど体全体を動かし激しく打ち付ける。 「あっ………がっ………ふっ………ふあっ………」 理恵が言葉を出そうと息を吸おうとした所に祐樹がペニスを挿し込む。 理恵が言葉を出そうと息を吐こうとした所に祐樹がペニスを挿し込む。 意味のある言葉を理恵は出せず、ただ息をすることしか考えられなかった。 最後に祐樹は理恵の腰を掴み、奥へ挿し込む。 「うああああっ!!」 祐樹が腰を引き、ペニスを外に出すと同時に祐樹も体がわずかに膨らみ、だぶだぶとたるみが出来た。 口元をわずかに緩ませ、祐樹は自分の体のたゆんだ部分を掴み思いっきり引っ張った。 背中からバリバリと皮膚が裂け、中から理恵が出てくる。 祐樹の皮を脱ぎ捨てた理恵は、もう1人の理恵の頭を右手で掴んだ。 「いや、いやぁあ……」 「皮なら、後で幾らでもあげる、今は言う事を聞きなさい」 頭を捕まれた理恵の後頭部に割れ目が出来、背中をつたい腰まで裂ける。 理恵の皮が破れ、中から祐樹が出てきた。 「うっ……ううっ……」 泣き崩れる祐樹を置いて、理恵はぺろっと舌を出し、唾液を指につけた。 「これから、貴方の家に行く」 祐樹は懇願する眼で理恵の方を向く。 「大丈夫」 そう言って理恵は自分が唾液をつけた指で自分の背中に突き刺す。 「貴方1人にはしない、一緒に家まで行きましょう」 びーっと裂ける音がして、理恵の背中が割れる。 「ひいっ!!」 祐樹は恐怖に包まれて理恵から離れた。 「どうしたの?」 そう言って理恵は自分の背中を祐樹に見せつける。 理恵の裂けた背中の向こう側には……皮膚が見えた。 理恵の体の中身は何も無かった。 「一度液体になった人間の意志や命は皮に宿るの、つまり、もう人間じゃなくなるって事。 中身は空っぽ、交通事故起こして病院送りになんてならないでね。大騒ぎになるから。 今まで通りの生活がしたかったら、私の言う通りにした方が幸せになれるよ」 そう言って理恵は両手で裂けた皮膚の両側をぐっと掴む。 「さぁ、私の中に入って」 ふらふらと祐樹は立ち上がり、理恵に近付く。 理恵は祐樹の手をとり、自分の体の中に祐樹を誘った。 自分の体の中に別の人間が入って来る、自分の皮膚が内側から押され波打つのを楽しむ理恵。 祐樹の体が入った事を確かめると、理恵は再び唾液のつけた指で裂けた背中をなぞる。 裂けた皮膚はじわじわとくっつき始め、中に入った祐樹を理恵の皮で包み込んだ。 持ってきた袋から下着と制服を取り出し、理恵はそれを着た。 「可愛い、私の僕」 理恵は子供のような天真爛漫の笑みで自分の胸を優しく撫でた。 どこかの研究室の一室で、白衣を着た女と男の2人が居た。 「我々は限られている可能性を最大限利用しなければならない」 女は短剣を取り出し、椅子の上でぐったりとしている水色のロングヘアーの少女に突き立てた。 「当たりか、外れか」 短剣が刺さった少女は、出血する事も無く眼を閉じている。 短剣をそのまま下へずらし、少女の皮膚を切り裂いた。 「無い……やはり……」 少女の体は皮膚のみで、体の中身は全く無かった。 「新たな被害者を1人確認した」 「これで5人目ですね」 白衣の男がパソコンにデータを入力しながら答える。 部屋には椅子にもたれ腹部を裂かれた皮膚だけの少年少女の体が5体ある。 「そろそろ、情報のまとめに入らない?」 そう言って女は白衣の男の肩からパソコンをのぞく。 男はパソコンを見たまま答える。 「どうやら人間の皮膚に宿る生命体みたいですね。対象者の皮膚に宿り、内臓や骨、筋肉、脂肪を全て吸収してしまう。 外見は普通の人間ですが、中身は全く別個の生命体です。皮膚を重ね着する事で別人になったり、 逆に自分の体の中に別の人間をしまって隠蔽したり人間の運搬に使っているようです」 「皮膚に宿る生命体………、焼いちゃったら倒せるのかな?」 「動かなくなった……生命体が抜けてしまった皮膚を見分けるならともかく、 生きて動いている皮膚生命体を判別するのは困難ですよ」 「食事や排泄もするの?」 「するようですよ。原理は不明ですが」 「声はどうやって出してるの?」 「生きている状態で捕獲してみれば良く分かるでしょうね」 「それで、これはどこの星の生命体?」 「宇宙から来たと?さぁ、分かりません」 「貴方、さっきから分からない事だらけね」 「だって、そうでしょう、こんなわけの分からない生命体」 「明らかに異常、異質な生命体ね」 「ええ、異常です」 「存在を確認出来た以上、対策班を作り排除します。有能そうな人連れてきて」 「分かりました」 理恵は家に着くと、自分の内側にいる祐樹の誘導で自分の部屋まで移動した。 家族には誰にも遭遇しなかった、既にみんな寝ている。 部屋に到着し鍵を閉め、理恵は早速服を脱いで全裸になる。 唾液のつけた指で背中を裂くと、中から祐樹が後ろ向きにぼてっと転げ落ちた。 祐樹は不信の表情を強く顔に出して尋ねた。 「これから……どうするの……」 「そのこれからの為に、主従関係を覚えようね」 そう言って理恵は顔をわずかに傾け、片目を閉じ可愛らしく舌をぺろっと出す。 祐樹の顔は困惑で満ちる。 「……え?」 理恵は裂けた背中をくっつけながら、 「貴方は、私の忠実な僕……自分から選択した……、だから一緒に楽しもっ!」 祐樹の手をとって、ぶんぶんと理恵は振り回す。 「明日は学校で。祐樹ちゃんも協力してね」 |