ポーン☆(時報の音)


オープニングテーマ曲 『魔法の巫女ももこ』


もしも魔法が 使えたら
鳥になって 空を飛びたい
愛も勇気も 希望も夢も
抱きしめ私が 運んであげる


もしも魔法が 使えたら
天使になって あなたに会いたい
胸に刺さった 心の傷も
ぜんぶ私が いやしてあげる


大丈夫!世の中 矛盾だらけ
世界が望んで 生まれたあなた
いつも通りに 歩いて行こう
一緒だったら 奇跡だっておこせる


ももこ ももこ 魔法の巫女
ももこ ももこ 魔法の巫女



               §


魔法の巫女ももこ

第8話「ココロノツナガリ(1)」

作・JuJu



《怪人ナメクジ男、完成マデ後三十分デス》
 女性を模した無機質な音声が、薄暗い研究室に響く。
 秘密結社オーフルの地下十階。プロフェッサーKの研究室。
 まん中に白衣を着た背の高い、やせ形の男が立っている。
 プロフェッサーKだ。
「やっと完成したか」
 苦い顔をしていた彼は微笑んで頷いた。
 彼は数歩あるいてカーテンを開く。部屋の奥にある、大きな水槽が出てくる。
 水槽の中には、ナメクジの頭と人間の体を持った怪人が眠っている。
 プロフェッサーKは、水槽に自分の姿が映っていることに気が付いた。
(老いたな)
 今まで歳のことなど考えたことはなかった。
 梅雄に桜のことを言われて、初めて自分の容姿のことが気になっていた。
 このまま年老いて死んでいく自分。永遠の生命と若さを持った竜姫。
 いや。その事はいい。私は竜姫様のおそばにおれれば、それだけでいい。この基地を作った時も、今も、その想いは変わらない。
 まもなく私と竜姫様だけの世界が出来るのだ。
 それを妨害する奴は、誰であろうと許しはせん。
 プロフェッサーKは竜姫に報告に行った。
「お喜び下さい。ついに最強の怪人が完成します
 今までの怪人は桃子の体を傷つけないために大した攻撃も出来ず、結局桃子に倒されて来ましたが今度の怪人は違います。
 今度こそ竜姫様に新たな……」
 コンピューターの声が遮る。
《怪人ナメクジ男、マモナク完成イタシマス》
「それでは、桃子を捕まえに参ります」
「期待しおるぞ」
 竜姫は言った。
 プロフェッサーKが司令室を出ると、怪人ヘビ男が頭を下げてひかえていた。
 プロフェッサーKは、怪人達にノートパソコンを見せた。ディスプレイには、地図と点滅する光が映っている。
「先程完成させた霊力探知機{ソウルレーダー}だ。霊力を持つ物の位置を表示する」
「この光が点滅する場所に、桃子の奴がいるわけですねヘビ」
「うむ。このソウルレーダーがある限り、世界の果てにいようが見つけだせる」
「出撃準備にはいりますヘビ」

               §

 桃太郎の父梅雄は、湯沢の神社に来ていた。
 邪心竜を封印できる神器があると聞いて来たのだが、なかった。
 神主は言った。
「神器の話しは私も聞いてます。
 もしかしたら昔の神社に置いてあるかも知れませんよ。
 この神社は明治の初期にこの場所に移したのですが、ガラクタは下ろすのに手間がかるので、古い神社に残したままなのです」
 梅雄は早速山の中にある昔の神社に向かった。
 蝉がうるさかった。
 ワイシャツが汗をかいた肌にまとわり付いて気持ちが悪い。
「もうすぐ秋だと言うのに」
 口から愚痴がこぼれる。
 これほど暑い所が、あと数カ月もすれば豪雪に覆われるなどとは、とても思えなかった。
 コケ蒸した階段は、やがて山道となる。1時間程登る。
 訪れる者もいないのか、朽ち果てた神社があった。
 神主に借りた鍵で中にはいると、埃にまみれたガラクタの中に桐の小箱があった。
 神器だ。
「よし。これならば大丈夫だ」
 梅雄は山を下りた。神主は持っていって良いと言った。
 確かに若月家の者以外が持っていても、古くて汚い木箱に過ぎない。
 梅雄は礼を言うと、神社を去り、駅に向かった。
 若月家は代々邪悪な龍を倒しては封印してきた。だが時が経つと邪心竜は復活した。その度に歴代の若月家の巫女が封印をしてきた。
 龍を封印する箱「神器」は、千年の昔に数多く作られた物らしい。
 昔は今のように交通機関も発達していなかったし、スペアと言う意味もあるのだろう。神器は日本中に散らばっている。
 ただ、ほとんどの神器は過去の戦いで使われ、現存する物は僅かだった。置いてある場所も永い歴史の中で分からなくなり、梅雄は全国を捜し回っていた。
 日本には、とにかく神社仏閣が多い。朽ち果てた神社、ただのほこらなども調べるのでぼう大な数になる。
 見つけても、割れていたり、穴が開いていたりして使い物にならなかった事もあった。
 だが、梅雄はあきらめずに探し回った。
 亡き妻、桜の仇を討つため。桜の意志をついだ息子の桃太郎のため。
 15年捜し続けて来た神器が、今俺の手の中にある。
 梅雄に喜んでいる余裕はない。
 邪心竜は甦った。
 こうしている間にも、桃子は死闘をしているのかも知れない。
 新幹線の中で、梅雄は神器を大切に抱えていた。

               §

 桃太郎と雛子がスモモの散歩していると、突然スモモが吠え出した。
 桃太郎達の前に車が止まり、プロフェッサーKが出てくる。
「貴様が桃子……なのか?」
「桃子? 俺の名は若月桃太郎。桃子じゃない」
「桃太郎お兄ちゃん」
「大丈夫だ雛ちゃん。スモモを連れて下がっていてくれ」
「若月? そうか、お前が桜の子供か! だからレーダーに映ったのだな」
「母さんを知っているのか」
「そんな事はどうでもいい」
 博士はパソコンの様な物を示した。
「これは私の最新の傑作、霊力探知機{ソウルレーダー}。
 霊力を持つ者の位置を表示する物だ。
 世界中、どこにいようが桃子を見つけることが出来る。
 だがレーダーには、お前とその犬しか映っておらん。
 いったい桃子はどこに居るのだ」
「俺は桃子じゃない!」
「うぬぼれるな! 貴様のような弱々しい霊力の奴が桃子のはずがあるまい。
 桃子はどこだと聞いておるのだ!」
「知るか! スモモ、雛ちゃん、いくぞ!」
「待て。
 その犬は、桃子の守護竜だったな。なぜお前と居る?
 そこの娘は小学校で桃子と一緒にいたな?
 言え! 桃子の居場所を!!」
「知らないと言っているだろう!!」
「そうか。ヘビ男、捕まえろ」
 桃太郎は雛子を連れて逃げ出した。
「待つヘビ」
 物陰からヘビの頭を持った怪人が現れた。
 全身を茶色のウロコが覆っており、尻から生えたヘビのシッポを引きずっている。
「力ずくでも答えてもらうヘビよ」
「わかった。これが俺の答えだ!」
 桃太郎はヘビ男のウロコに覆われた顔めがけて殴りかかった。だがヘビ男は首だけ振って避ける。
 桃太郎はヘビ男を見た。大量のドーピング薬を使ったと思われるマッチョな体格。鋭い牙と爪。
 桃太郎は勝ち目は少ないと思った。
 だが桃子に変身をするわけにはいかない。雛子にもプロフェッサーKにも、正体がばれてしまう。
 桃太郎が雛子を見ると、恐怖でしゃがみこんだ雛子に、プロフェッサーKが近づいて、縄で縛った。
「人質? 卑怯だぞ!」
「安心しろ。勝負が付くまで手はださん。
 お前が勝てたら、この娘は返してやる。
 負けたら、この娘は私の好きにさせてもらう」
 桃太郎の目の前に、ヘビ男の足が飛んできた。土色に濁った爪が迫ってくる。
「よそ見している暇はないヘビよ」
「回し蹴りか? 当たらないぜ」
 腕力はマッチョにはかなわないが、その分ヘビ男より俊敏に動く自信があった。
 だが回し蹴りを避けた後、何かが桃太郎の目の前をかすめて、彼の身体に巻き付いて来た。
「人間にはないこのシッポ。素敵ヘビねー」
 ヘビ男の回し蹴りで飛んでくるのは足だけではなかったのだ、奴の長いシッポが伸びて、桃太郎の体に巻き付き締め付けていた。
 勝利を確信したヘビ男は、頬まで裂けた口を開き、炎の様な二股に割れた舌を嬉しそうにチロチロと出した。
 桃太郎は意識が遠ざかる意識の中で思った。
(俺が女に生まれていたら……、もし俺が若月家の巫女として生まれていたら勝てたのだろうか)
 ヘビ男のシッポがほどけて、桃太郎は地面に崩れ落ちた。
(ちがう、たとえ男だって、俺は母さんの子供だ! 邪心竜には負けない!)
「言え! 桃子はどこにいるヘビ?」
「知らん!」
 近づいてきたヘビ男の腹を蹴飛ばした。
 ヘビ男は泡を吹きながらうずくまったが、立ち上がる。
「まだ動けるヘビか〜? しぶといヘビねー? でも殺したら桃子の居場所が聞けないヘビし〜。
 ま、殺さなければいいヘビね。
 こいつムカつくし!!」
 ヘビ男は何度も腹を蹴った。桃太郎は腹を抱え、赤ん坊のように丸くなる。
(やはり無理なのか……桃子でないと……巫女でないと怪人には勝てないのか…。女に生まれたかった……)
 遠くからスモモが走ってくるのが見えた。
「来るな!! 逃げろスモモ!!」
 だかスモモは近づいてくる。スモモは背中に背負ったリュックを桃太郎の前に持ってくる。
 スモモのリュックの中には、桃子に変身するための魔法のステッキが入っている。
 桃子に変身すれば勝てる。
 だが正体を明かす訳には行かない。
 俺が桃子だと分かれば、邪心竜の攻撃はオヤジやスモモ、雛ちゃんにも及ぶだろう。
 桃太郎は首を横に振った。スモモが不安そうに彼を見ている。
「大丈夫」
 桃太郎は腕に力を込めて体を起こした。
 震える足に力を込めて立ち上がった。
 全身に杭を打ち込まれるような痛みが走ったが、負けるわけには行かない。
「驚いたヘビ。人間の割にはいい根性ヘビ!」
 ヘビ男は、自分のシッポの根本を掴む。シッポの先を鞭の様に桃太郎に向かって振るった。
 鞭が当たる度、桃太郎のシャツやスボンが筋のように破け、その下から血がにじみ出た。
「ヘビヘビヘビ!! 人間にはないこのシッポ!」
 だが桃太郎は何もしなかった。
 桃太郎の作戦だった。
 ヘビ男は俺が動けないと思うだろう。その時がチャンスだ。
 反撃がないと悟ったヘビ男は、今度は近づいて顔めがけてムチを叩き付けた。
 頬が切り裂かれる。桃太郎は気にとめることもなくシッポを見つめつづけた。
 再度顔をめがけてムチが飛んできた時、彼は飛んできたシッポをつかむと、思いっきり引っ張った。
「ヘビーーーーー?」
「掴んだぜ! 離さないからな」
「助けてヘビー! シッポを引っ張られるのは弱いヘビー!」
 今までの威勢が嘘のように、ヘビ男はおとなしくなった。
 桃太郎はズルズルとシッポを引っ張った。
「ああ、どんどん引っ張られるヘビー!! もうだめヘビー!!」
 ヘビ男を手元まで手繰り寄せ、拳を叩き付けようとすると、ヘビ男が振り向いた。
「なんちゃって! 喰らえヘビ!」
「何っ?!」
 ヘビ男は口を開け、桃太郎の頭をかじり始めた。
 桃太郎は両手で口をこじ開けようとするがびくともしなかった。
「なら、これはどうだ?」
 彼はヘビ男を押した。驚いたヘビ男もあわてて押し返えそうとしたが、すでにバランスを失っていた。
「ヘビー!!」
 地面にに浴びせ倒されるヘビ男。頭を打つ。ショックで桃太郎も口から離す。
 桃太郎は額の痛みから、牙で何カ所か穴を開けられたことが分かった。顔にたれてきた血を拭う。
「今度は俺の番だな?」
「ヘビ?」
 桃太郎は飛び上がると、ヘビ男のシッポをめがけて踏みつけた。
 ヘビ男はのたうち回る。口から泡を吐く。潰されたシッポから青い血が流れ、地面が染まってゆく。
「もうだめヘビ……ヘビの負けヘビ。お前強いヘビ……。もう許して欲しいヘビ」
「もう人を襲わないか?」
「襲わなければゆるしてくれるヘビか……?」
「約束するならな」
「約束する、約束するから堪忍してほしいヘビ……」
 ヘビ男は弱々しく立ち上がると、桃太郎のそばに来てひざまづいた。
「ヘビはもう、人間を襲ったりはしないヘビ」
「本当だな、だったらゆるして……ひっ!」
「なんちゃって〜! 油断したへびね?」
 突然立ち上がったヘビ男が、両手で彼の首を締め上げた。
「ヘビの大切なシッポをこんなにして、生きて帰れると思ったヘビか? やっぱりバカヘビ!!」
「ぐぐぐ」
「死ね!!」
 突然、ヘビ男の首から手が離れた。
 スモモがヘビ男のシッポに噛み付いているのだ。
「いたた……この犬なにヘビ?」
 ヘビ男はスモモを踏みつけた。
「スモモ!!」
 ヘビ男はスモモを蹴り飛ばした。
 空中に飛ばされるスモモ。
 地面に叩き付けられたスモモは、激痛に顔をゆがめながら、ヘビ男に唸っていた。
「よくもスモモを!!」
 桃太郎はスモモに近づいてスモモを抱くと、スモモのリュックから魔法のステッキを取り出した。
 今まで傍観していたプロフェッサーKは、お祓い棒を見て叫んだ。
「桃子のお祓い棒? どうする気だ?
 まさか、貴様が……!?
 ヘビ男、そのお祓い棒を振らせてはならん!」
 お祓い棒を奪おうとヘビ男が迫ってきた。
 だが、桃太郎は素早く、お祓い棒を天にかかげて振った。
 桃太郎の体が光に包まれる。
「魔法の巫女ももこ! 見参!」
 光の中から魔法の巫女ももこが現れた!
「え? えっ? どうして桃太郎お兄ちゃんが、桃子ちゃんになったの?」
「若月家の者は、巫女の姿になってこそ霊力を発揮できる。
 そこで若月家の血筋を引く息子を女……巫女に変化{へんげ}させて、霊力を引き出していた訳か!!」
「桃子に変身した以上負けないんだから!!」
 桃子はお祓い棒でヘビ男を指差す。
「えへっ。決まったかな?」
「ゲッ、桃子?」
「さ、覚悟なさい!!」
「まつまつ……待つヘビ……もう悪い事はしませんヘビ! 約束するヘビ! 本当ヘビ」
「それ、アタシが桃太郎だった時にも言ったでしょう! もう騙されないよ!!」
 桃子は人差し指と中指で懐にある護符をつかむ。護符を目の前に持っていくと、静かに目を閉じて念を込めた。
 目を閉じている桃子を見て、ヘビ男は最期のチャンスと見たのだろう。立ち上がると桃子に向かっていった。
 彼女の全身から青い霊力があふれでた。護符に霊力が収束され、護符は青の光を放つ。
「桃子! 死ねぇ〜〜〜!!」
 その時、プロフェッサーKが言った。
「ヘビ男! 桃子を傷つけてはならん! 生け捕りにするのだ!!」
「もう我慢できませんヘビ! 桃子を殺すヘビ!!」
「竜姫様の至上命令だぞ!!」
「竜姫様!?」
 ヘビ男の動きが止まった。
 桃子はヘビ男に護符を投げつけた。
 護符は矢のように飛ぶと、ヘビ男の顔に張り付く。
「こんな護符取ってしまえばいいヘビ……熱ちちち!!」
 ヘビ男は護符を取ろうとしたが、護符が燃え始め熱くて手が出せない。
 桃子は刀で切り裂く様にお祓い棒を斜めに振る。叫んだ。
「破魔炎斬{ハマエンザン}っっっ!!」
 お祓い棒から炎が吹き出てにヘビ男を引き裂いく。
「ヘビ〜〜〜っっっ!!」
 炎は瞬時にヘビ男を包み、ヘビ男は燃え尽きた。
 桃子の背後から手を叩く音がした。
「見事だ、魔法の巫女ももこ。
 貴様が桃子になった時は驚いたが、おかげでさがす手間が省けた」
「約束よ、雛子ちゃんを返して!」
「私はまだ負けはおらんよ」
「だったら、あなたを倒すまでよプロフェッサーK!」
「ふん。貴様ごときに私は倒せんよ」
「それはどうかしらね?」
「やってみたまえ?」
 桃子は護符をプロフェッサーKに投げつけた。
 彼に当たる寸前で、何かが飛んできてお札を落とした。
 桃子が護符を落とした「何か」が飛んで来た方を見ると、ナメクジの頭をもった怪人がいた。
「紹介しよう。貴様を捕まえるために造った怪人ナメクジ男だ」
「ナメナメ〜」
「ウソぉ? まだ怪人が居たの?
 いいわ。ついでにそいつも退治しちゃうんだから!!」
 桃子はナメクジ男に護符を投げた。
 ナメクジ男は、桃子に合わせるように唾液を吐く。
 空中で護符は唾液がぶつかり、地面に落ちる。
 桃子は次々と護符を投げたが、すべて落とされてしまう。
「何度やっても同じ事ナメ。
 同じ手が通用するとは思っているナメ?」
「じゃあ、これならどう?」
 桃子はお祓い棒に念を込めた。
 お祓い棒から、紅の炎の様に霊力が吹き出た。
 お祓い棒を振ると、紅の炎が残像のように後を残す。
「ふむ。さすがにこれはかなわないな」
 プロフェッサーKは言った。
「お遊びはここまでにしておこう。ナメクジ男、捕まえろ」
「ナメ!」
 ナメクジ男は桃子に向かって、唾液を吐いた。
「そんなもの!」
 桃子はお祓い棒で振り払ったが、唾液は飛び散って顔や手に付いた。
「なにこれ? 汚い〜。
 ネバネバして取れないよー?」
 ナメクジ男は特大の唾液を吐いた。
『桃子ちゃん、あぶない!!』
「えっ?」
 顔に付いた唾液に気を取られていた桃子。気が付いた時には、ナメクジ男の唾液は桃子の体を包んでいた。
「ネバネバして……動けない……。気持ちわる〜い!」
「ふはははは!! 安心しろ、竜姫様の命令で傷付けはしない。
 さて、約束通りこの娘も頂いていこうか」
 プロフェッサーKは雛子を抱き上げると、車に乗せた。
「雛ちゃん!」
「桃子ちゃ〜ん!!」
「ナメクジ男、桃子を連れてこい!」
「了解ナメ!」
 ナメクジ男は軽々と桃子をつかむと、車に乗せた。
 唸っているスモモを見てナメクジ男は言った。
「犬はどうします?」
「放っておけ」
 プロフェッサーKの車は、桃子達を載せて走り去った。
 スモモは車を追ったが、車との距離はどんどん離されて行くばかりだ。
『桃子ちゃん! 聞こえる』
 桃子の頭にスモモの声が響いた。
『向こうに付いたら、おもいっきり気を放って。私がきっと見つけるわ!』
「うん」
『待っててね! 必ず、助けに行くから!』
「信じてる」
『必ず……必ず助けに行くから!』
 スモモは走りながら、叫ぶように霊力を出した。
 車は見えなくなっていた。
 返事もなかった。
 スモモと桃子の霊力では、お互いの言葉を届かせる距離ではなかったのだ。
「もっと私に霊力があったなら……」
 スモモはうなだれたが、すぐに顔を上げる。
 梅雄に助けを求めるため、スモモは若月神社に向かって走った。


 第8話おわり / 第9話 「ココロノツナガリ(2)」 につづく





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