魔法の巫女ももこ 第4話「潜入! 神石小学校!(前編)」 作・JuJu 「学校にね、変なおじさんが出るの。桃太郎お兄ちゃん助けて!」 雛ちゃんは言った。 「今日は雛子もおじさんに見られて、気持ち悪かったー。友達もみんな困ってるの」 「うむっ! その話なら俺も聴いているぞっ!!」 いきなりダイニングキッチンのドアが開き、オヤジが現れる。また盗み聞きして、雛子ちゃんと会話するタイミングを見はからっていたな? 「近頃神石小学校に変質者が現れるそうだ。そいつは物陰に隠れて、双眼鏡で女子生徒を一人一人丹念に眺めているらしい。 神石小は可愛い娘が多いからな。制服もマニアの人気が高い」 オヤジ、どうしてそんなに詳しいんだよ。 「しかもだ! 神石小は体育の授業にブルマーを採用しているのだ! 今時ブルマーとは嬉しい限りじゃないか!! なあ桃太郎!!」 もういいよ。消えて下さい。 「だが安心していいぞ雛子ちゃん。 家の親戚に桃子と言う女の子がいてな、滅法つよいんだ。桃子に頼めば変態を退治してくれるぞ? なあ桃太郎?」 「桃子? あ、ああ」 雛ちゃんは喜んで帰って行った。 「オヤジ! 桃子は母さんの仇を討つ為に開発したんじゃなかったのか? こうしている間にも、邪心龍はのさばっているんだぞ? 力を蓄えて新しい怪人を作っているかも知れないのに」 「雛子ちゃんが困っているんだ。ほってもおけないだろう?」 「確かに変態に見られる気持ち悪さは、身にしみて分かっているけどな」 「だったら話は早い! お前の言うとおり無駄な時間はないぞ? さっそく明日、神石小に転校生として潜入しろ。 転校生が入れば、変質者は品定めの為にお前に注目するだろう。よく見るために近づいて来る。そこをお前がとっちめるわけだ」 「どーして、変質者の心理にくわしいかな?」 「小学校は俺から連絡しておく」 次の日、雛ちゃんが来たので俺は桃子に変身した。 「おはよう雛子ちゃん。アタシ、若月桃子って言います」 ミニスカ巫女装束が恥ずかしい。 「え? お兄ちゃんの親戚の女の人って、巫女さんだったの?」 「うむ。若月家の巫女は強いから安心していいぞ」 「桃太郎お兄ちゃんのお母さんも巫女さんだったって言うし。巫女さんいいなー。あたしあこがれちゃう」 「ありがとう」 「所で雛子ちゃん、昨日頼んで置いた学校の制服は用意してきてくれたかい?」 「ちゃんと持ってきたよ」 「うむ。桃子さっそく着替えなさい」 パパの手回しの良さに感心しつつ、雛子ちゃんから制服の入った紙袋を受け取った。 アタシは自分の部屋に向かった。 部屋に入って、帯をほどこうとすると、パパがいる。 「ちょっと! 着替えなのに、なんでパパがいるのよ!」 「いいじゃないか。あっ、お前だけずるいぞ! 俺だって見た……」 「いーから、さっさと出ていく!!」 アタシはやっと、パパを部屋から追い出した。 まったくパパってばエッチなんだから。 帯をほどくと、朱袴みたいなスカートが足元に落ちる。 白装束の胸を広げて脱いだ。 そうか、肌襦袢なんだ。これでは制服は着れないから、肌襦袢も脱ぐ。 雛子ちゃんから制服の入った紙袋を開けた。 ふと姿見を見ると、パンツだけの裸の女の子がアタシを見ていた。 これがアタシの体なんだ。 パパがあれほど見たがっていた、アタシの裸。 アタシの部屋に、裸の女の子が一人で立っている。 アタシはなんだか恥ずかしくなって、慌てて紙袋から制服を取り出した。 最近は小学生でもこんなに短いスカートはくのねー。 下着を持っていないので、肌の上に直接白いブラウスを着る。 リボンタイを絞める。 さっきのプリーツのスカートをはく。 紺のニーソックスをはこうとして、足を伸ばす。 スカートが短いため、足が根本までさらされていた。 恥ずかしいな。 髪をリボンで縛る。 ベレー帽をかぶった。 自分の姿を姿見に映して、おかしな所がないか確かめる。 パパの借りてきてくれたランドセルを背負う。 おっと、革靴と上履きも忘れちゃいけない。 アタシが部屋から出て、居間に行った。 『キャー! 桃子ちゃん可愛い〜!』 スモモが言う。桃子になるとスモモとも話せる様になる。 「よし! これならば変質者も一目置くだろう」 パパが言う。 「よく似合っているよ」 雛ちゃんが言う。 「どうだ、サイズがピッタリだろう? お前と雛子ちゃんが同じスタイルだと見抜いた俺の目は、やはり確かだった」 パパ、そんな特技、自慢にならないって。 『ごめんね桃子ちゃん。あたしは一緒に行けないけどがんばって』 「学校は動物が入っちゃだめだもんね。任せて、アタシだけでだいじょうぶ!」 「桃子ちゃん、早く行かないと遅刻するよ」 「うん、じゃパパ、スモモちゃん、行ってきます」 アタシ達は学校に向かった。 「なんか桃子ちゃんって、初めて会った気がしないね。なんか、ずっと前からお友達だった見たい。仲良くなれそうだよね」 「アタシもそう思うよ。雛子ちゃんの事は、桃太郎から話は良く聞いているし」 「そうなんだ、雛子の事をお兄ちゃんが……。お兄ちゃん、ちゃんとわたしの事見ていてくれているんだ」 学校に着く。クラスの中は生徒がいっぱいいた。 「この雰囲気。懐かしいわー」 「え? 懐かしい?」 しまった! つい地が出てしまった。 ごまかそうとしたけど、アタシの回りに小学生達が集まってきた。 「雛ちゃん、この娘だれ?」 「スゲー可愛いじゃん!」 「転校生?」 クラスにいつもとは違う生徒が入ってきたので、興味津々見たい。 「この娘は桃子ちゃんと言って、私の友達。今日はあの変態を倒す為に来て貰ったの」 「こんにちは、若月桃子です」 「変態って、学校に出る変態? 本当?」 「でも倒すって、相手は大人だぜ? 勝てるわけないじゃん」 生徒たちはアタシを見ては、勝手な事な批評をした。 ふふん! アタシって強いんだから。 チャイムが鳴って先生が入ってくる。 「はい、みなさん席について。あ、若月さんは、こちらに来てね」 生徒達は席に座る。 「はい、先生を注目〜」 一斉に先生を見る。 う〜、素直で可愛いなー。 「最近校内に出る変態を懲らしめるために、今日は若月神社さんから、若月桃子さんに来て頂きました。みんな拍手」 「わー。パチパチパチ」 なんか幼稚園見たいな紹介をされる。 「先生、その子本当に強いんですか?」 気の強そうな男の子が質問する。 「強いわよー! 変態なんて一撃で倒しちゃうんだから!」 アタシがそう言うと、生徒たちは凄いとはやし立てた。 「はいはいー。一時間目は体育です。みんな着替えてねー」 「体育?」 「若月さん、体育の時間は変態さんが一番出やすい時間だから、気を付けてね」 先生が言う。 「はい、これ桃子ちゃんの体操着」 雛ちゃんから、巾着袋を渡される。 「体操着って……」 中の服を出すと、シャツとブルマーが入っていた。シャツの袖には「木村」と書いてある。 「これ、雛子ちゃんの?」 「あたしの替えを持ってきたの」 「雛子ちゃんの……」 アタシは体操着を見つめた。 これ、いつも雛ちゃんが着ている体操着なんだ。 それをアタシが着るんだ。 いいのかな? アタシ、本当は男の子なのに。 「大丈夫、ちゃんと洗濯してあるよ」 体育着を見つめていたアタシに、雛子ちゃんは言った。 「あ、うん。そういうんじゃなくて」 アタシはあわててスカートとブラウスを脱いだ。 ニーソックスも脱いで、パンツだけの姿になる。 雛子ちゃんを見ると、スカートをはいたまま、ブルマーをはこうとしていた。 たしなみのつもりなのか、同性でもパンツを見られると恥ずかしいからなのか分からないけど、せっかくスカートのままブルマーをはいても、スカートをまくり上げているのでパンツが丸見えだった。 スカートをまくって見える白いコットンパンツ。それがブルマーに包まれていく姿は、かえっていやらしく感じる。 アタシはブルマーを手に取った。 雛子ちゃんのブルマーを、アタシがはく。 いいんだよね? 体は女の子なんだから。 回りを見る。いつの間にか男子生徒は教室からいなくなり、カーテンが閉められていた。 そうだ! 洗濯をしてから返すと言えば、お家にブルマーを持っていける。アタシの部屋で思う存分楽しめる!! 姿見の前で、制服を脱いで、裸になって、それから体操着を着る。その姿を想像するだけで、アタシの胸は熱くなった。 ――え? どうして? アタシどうしてそんな事思っているの? お祓い棒で身も心も女の子になっているはずなのに! パパだってそう言っていた。 心まで女にならないと霊力は発揮できない。 だから、アタシは桃子に変身すると、心も女になる。 § 桃子は、初めて父からお祓い棒を渡された時の事を思い出していた。。 梅雄の調べによると、若月家千年の間には、当然女が生まれない時があった。 その時に邪心竜が出現した時には、若月家の男を女に変えて闘ったと言う。 男を女に変える力、それが家宝のお祓い棒の真の力なのだ。 ただし霊力を最大限に引き出すためには体が女になるだけではだめだ、心まで女になりきらなければ成らない。 「そんな、俺は女性の振りなどはできないぞ?」 桃太郎は言った。 「安心しろ。」 梅雄は言った。 「戦いに置いて、集中力の乱れは大敵だ。女の振りをしながらでは、集中力も乱れるだろう。 そのために、変身すれば心まで自然に女になれるように出来ている。 性別は意識するな、いつも通り振る舞えばよい」 まさかその時は、ミニスカートの10歳の女の子になって、魔法の巫女ももこと言う名称まで付くとは思っても見なかったのだが。 § どうして、男の人の感情が? 桃子に変身すれば、いままでは女の子の裸見たって、どうって事なかったのに……。 意識しなくても、女の子になりきれたのに。 どうして……? もしかして、アタシの本当の心、男としての性欲が、お祓い棒の力では押さえきれずに漏れてきたって言うの? ダメ! エッチな事、思っちゃだめ!! ママの敵を討つまでは! 邪心竜を倒すまでは女の子になりきらなきゃ!! アタシは目をつむった。 アタシは桃子。アタシは女の子。 呪文のように、なんども唱えた。 大丈夫。 性欲が静まり、心の底に消えていくのを感じた。 目を開くと、下着姿になっているクラスの女の子達が目に入った。 大丈夫。小学生のせいかもしれないけど、性欲は襲ってこない。 それにしても、パパが見たら泣いて喜びそうなシーンね。 アタシはブルマーに足を通した。 落ちついて、落ちついて。 うん。大丈夫。もう性欲は襲ってこない。 「あっ、体育の授業でもやっぱお祓い棒もって行くんだ?」 「これだけは絶対手放せないのよ」 「やっぱり巫女さんなんだー」 そう。アタシは若月家の巫女。邪心竜を倒すのが目的。その為に、この姿に変身したんだ。もう二度と、エッチな事を考えちゃいけない。 アタシは決意を新たにした。 アタシ達はグラウンドに出た。授業が始まって、アタシ達は整列した。 「今日の体育の授業は跳び箱ですよー」 先生が言う。 隣にいた雛子ちゃんが、アタシの肩を叩く。 「ほら、あそこ」 グラウンドに植えられている大樹に隠れる様に、二人の人間の影があった。 体格からいって男だろう。 「あれが変態……」 パパの言ったとおり、アタシをに向けられた視線を感じる。 変態に見られるのはパパで慣れているけど、やっぱり気持ち悪い。 § 「今日の体育の授業は跳び箱ですよー」 小学校のグラウンドから、女の先生の声が響く。 プロフェッサーKと怪人ネズミ男はグラウンドに植えられている大樹に隠れていた。 「生徒たちが出てきましたチュウ」 人の体にネズミの頭と足を付けた怪人ネズミ男は言う。 「どれどれ」 プロフェッサーKはネズミ男から双眼鏡を受け取ると、体育の授業をしている女の子を見た。 「でも本当に、桃子はこの学校にいるのですかチュウ?」 「桃子がこの周辺をテリトリーとしていることは間違いがない。ハト男ですぐにあらわれたのだからな。 あの年齢なら、この時間は学校に行っているはずだ」 「そんなに、つごう良く見つかるものですかねぇ……」 「ん? 見ろ!! 桃子だ!! ついに見つけたぞ!! 私の推測は正しかった!! やはり私は天才だ!!」 「本当ですか? ではさっそく作戦にはいります」 「よし。私は基地に帰るが、分かっているな? 桃子は強い、間違っても戦おうとはするな。 お前はただ、使命を果たすことだけを考えるのだ」 「おまかせ下さいチュウチュウ」 ☆つづく☆ 〈次回予告〉 え〜? 変態の正体って怪人ネズミ男だったの! 覚悟しなさい! ネズミ男! アタシの攻撃から素早く逃げ回るネズミ男! なんて素早いの!? アタシが手間取っている間に、ネズミ男の手が雛子ちゃんに迫る! 次回第5話「潜入! 神石小学校!(後編)」 お楽しみにね☆ |