迷いうさぎの恩返し
 作・JuJu


◆ 6

 それから陽子の体に憑依したひかるは、ベッドの端に座っていた僕の前まで歩いて立ち止まると、その場でひざ立ちになった。

「それではさっそくですが、ご主人様が望むご恩返しを始めるとしますね。……と言っておいてお恥ずかしいのですが、わたしもこんなことをするのは初めなので、あまりうまくできませんが許してください。できれば、どこが気持ちいいのか教えてくれるとうれしいです」

 そういうと陽子は、いきなり僕のズボンに手を掛けるとパンツと共に一気に下ろした。

 下半身がさらし出され、僕の陰部が露わになる。

「なっ!?」

 僕は言った。

 陽子は僕の男の部分を握ると、口を近づけて先端部分を舐め始める。

「こうすると男の人は嬉しいんですよね?」

 仰天して縮こまっていた僕の下半身も、刺激を受けてどんどん大きくなっていった。

「ほら大きくなってきましたよ。陽子の知識は本当だったんですね」

 陽子の知識? などと考える間もあればこそ。今度は陽子になったひかるが僕の一物を口でくわえて、舌でしゃぶり始めた。

 陽子のフェラチオ。僕の目の前で行われている行為に目を奪われた。一心に僕の男の部分にしゃぶりつく陽子を見ていて、夢みたいだと思った。そう。ひかるの言うとおり僕は、陽子に会ってからずっとこんな淫靡なことをしてくれる日を夢みていたのだ。

 欲望には逆らえず、僕は陽子の口が送ってくれる快感に酔った。

 やがて下半身に限界がおとずれ、僕は彼女の口の中に欲望を吐きだした。

 なんと陽子はそれを、ごくごくと飲み干してくれた。

 もしもひかるが憑依していなかったら、男のこんな汚い部分を陽子がしゃぶってくれただろうか。しかもこんなに熱心に一生懸命気持ちよくなってもらおうと献身的にやってくれたかどうか。そう考えると、そんなことは絶対にあり得ないという答えが僕の中に返ってきた。

 陽子には悪いが、ひかるが取り憑いたことで、これからも彼女がエッチなことをしてくれるはずだ。いや、この分ならばあんなこともこんなことも、もっとすごいこともしてくれるはずだと思うと、これはこれでそんなに悪くはないのではないかと思えるようになってきた。

 とりあえず、二回戦を楽しもう。

 などと期待していると、ひかるがこんなことを言いだした。

「すみませんご主人様。そろそろ時間切れのようです。わたしの意識がもたなくなってきました。

 でも安心してください。わたしの意識が表に出ている間は陽子の意識はありませんので、陽子はわたしが操っていた時のことはわからないはずです。

 ――それではお休みなさい」

「時間切れ? ちょっとまて、これからって時に……」

 僕は陽子の両肩をつかむと激しく前後に揺すった。

「ちょっと、やめてよ! なにするのよ!」

 揺するのをやめると、陽子が驚いたように僕を見ていた。

「え? 陽子か? 目を覚ましたのか?」

「目を覚ます……? ああ。もしかてわたし、寝ちゃっていたの? 

 ――って、なんなのよ!!」

 陽子は僕の丸出しの下半身に気が付き、顔を真っ赤にする。

 さらに自分が下着姿になっていることに気が付き、両腕で自分の胸を守るように隠した。

 僕も気まずくなり、陽子に背を向けた。

「まさかわたしが眠っているのをいいことに、わたしの服を脱がせて、エッチなことをしていたんじゃないでしょうね!?」

 陽子の罵倒を背に、僕はとにかくパンツとズボンをはく。

「服は自分で脱いだんじゃないか! この部屋が暑いとか言って……」

 ウサギが操っていたとはいえ、陽子が自分から脱いだことは確かだ。

 服を着たことで陽子もすこしは落ち着きを取り戻したようだ。怪訝なまなざしで僕を見ながら問いただす。

「本当に武が脱がせたんじゃないのね」

「僕は寝ている女の子の服を脱がせるような勇気はないってば」

「それもそうだけど……」

 僕の弁解を聞いて、陽子もどうにか納得したようだった。

「――なあ陽子。本当になにが起こったのか覚えていないのか?」

「あなたの部屋に来て、ウサギを見つけて、それからウサギを抱き上げてから……覚えていないわ。

 そう言えば、あのウサギはどこにいっちゃったの?」

 どうやら陽子は本当にウサギに憑依されたことを覚えていないらしい。

 まさかその探しているウサギに憑依されていると言えるはずもなく、また言ったところで信じてはもらえないことは明白なため、僕はウサギのことはごまかすことにした。

「ウサギなら探していた飼い主が来て、さっき連れて帰ったよ」

 苦しい言い訳だったが、急にはいい返事など思い浮かばなかったのだから仕方がない。

 陽子もさすがに疑っているようだったが、問いつめるほどのことでもないと考えたのか、どうにか自分を納得させたようだ。

「ふーん? もう少しウサギと遊びたかったなぁ。でも飼い主が迎えに来たんじゃしかたないよね」

 それから陽子は、急に頬を染めると思い出したように自分の体をながめる。

「どうした?」

 彼女はますます顔を真っ赤にすると、そっぽを向いてしまった。

「なっ、なんでもない。気にしないで」

 もしかしたらウサギが陽子の体を使ってあんなことをしたために、いまだに体が火照(ほてっ)ってしまっているのかもしれない。

 いずれにせよ、エッチに対して潔癖な陽子があんなことをしり、ましてやあんなことの後で何事もなかったかのように平然としていられるはずはない。ひかるの意識が出いるときは陽子の意識は眠っていて、その間のことを陽子は覚えていないという話は信じていいだろう。

    *

 翌日。

 ふたたび表に出てきたウサギにそのことを話すと、ずいぶんと得意気に「言ったとおりだったでしょう?」と胸を張られた。さらに「だからご主人様はなんの気兼ねもなく、この体で存分にエッチを楽しんでいいんですよ」とつけ加える。

 陽子にないしょで陽子の体をもてあそぶ。陽子には申し訳ないとおもったが、恋人なんだからこのくらいしたっていいじゃないかと、勝手な言い訳をして自分をあざむいた。それにこの背徳感が僕の性欲を強く刺激して、ますます興奮させる。

 それから、陽子が僕のアパートに訪れた日にはエッチなことをしまくった。陽子自身は相変わらず身持ちが堅いままだったが、ウサギの意識が出てきてサービスしてくれる。さすがに他人の身体を乗っ取って動かすというのは大変らしく、ウサギの意識がでてくるのは短時間だったが、それでもエッチなことを楽しんだ。

 まさか陽子も、自分の体を操られてエッチなことをされているとは思いも寄らないだろう。陽子の知らない間に、彼女の体は開発されていく。そんな日々が続いた。

 それだけではない。最初はウサギが表に出られる時間に制約があり、せいぜい僕の男の部分をしゃぶって一発やったら終わりという程度の短い時間しかできなかった。それがエッチなことをするたびに、少しずつだがウサギが表に出られる時間が伸びているのだ。

 ウサギが言うには、エッチなことをして陽子の体が開発されればされるほど、意識の表に出てくることができるようになると言う。

 ウサギの言ったとおり、やがて僕の陰茎を舐めるだけではなく、ついには僕の物を彼女の体の中まで挿入できる所まで発展していった。

    *

 この三カ月間、僕と陽子になったウサギはエッチなことをし続けた。

 そんなある日。驚くような出来事が起こった。あれほど身持ちが固かった陽子が、なんと自分から僕の体を求めてきたのだ。

「ねぇ……。これからすごく恥ずかしいことを言うけれど笑わないでね。

 武とはつきあって長いでしょ? だからそろそろ……。恋人らしいことを……ね」

 陽子が頬を桜色に染め、目を伏せながら言う。

「?」

 僕がわざと、なにを言っているのかわからないというふうにしていると、しびれを切らせた彼女が語調を強めて言う。

「男ならば察しなさいよ! エッチなことをしてもいいよって言ってるの! 女にこんなことを言わせないでよ!!」

 やはりそういうことか。それについては思い当たるふしがあるために、僕は内心で納得した。陽子の意識が眠っている間に、あまりにエッチなことをやりまくってしまったために、うさぎが操っていなくても彼女の体がすっかりエッチなことを求めるようになってしまったのだろう。そのことは容易に推測できた。

 その後。

 陽子は体に引きずられる形で僕のアパートにくればエッチなことをするようになった。

〈ウサギはいつも発情している〉とひかるが言っていたが、まさに陽子はウサギのように、僕の部屋に来れば発情をするようになっていた。


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