ぼくだけの☆亜里紗LIVE(アリサライブ)!
 作・JuJu


【STAGE7 人形を返して!】

 春に亜里紗の人形を拾い、ぼくはアイドルになった。

 季節は過ぎ、夏が来た。

 ぼくは亜里紗として過ごすこともすっかり慣れ、アイドルとして活動することが日常になっていた。。

 そんなある日のことだった。いつものように路地裏で亜里紗に変身し、商店街を雀翔プロに向かってを歩いていると、突然ひとりの女子小学生が飛び出して来てぼくの行く手を遮った。

 女の子はいきなりぼくに向かって叫ぶ。

「人形を返して!」

「きみは……あの時人形を落とした……」

 忘れもしない。彼女は以前ぼくとぶつかって亜里紗の人形を落としていった子だった。

 女の子はその通りだと言うようにうなずくと、ぼくに向かって語り始める。

「人形をなくして、一生懸命捜したけれど見つからなかった。

 その後、誰かが私に成り代わって亜里紗をしていることを知った。

 私の人形を勝手に使われていることもショックだったけれど、それ以上に偽物の亜里紗でもファンのみんなが楽しそうなことがつらかった。亜里紗の正体は誰でもよかったんだ。別に私でなくてもよかったんだ……と思った。

 ――でもすべて人形をなくした私が悪いんだ。誰が人形を使っているのか分からないけれど、ちゃんと亜里紗を演じ続けてくれればそれでいいと……思ってあきらめた。

 本当にあきらめるつもりだった……。

 だけれど……、ある日街角で、亜里紗がエッチな水着を着たポスターを見つけた。水着はNGだったのに! その後も水着姿が続いた。それもかなりきわどい水着ばかり。

 それだけじゃない! 綾子さんと女同士の怪しい関係があるとかいううわさがインターネットで話題になっている。週刊誌では〈亜里紗とマネージャーの行き過ぎた女同士の仲〉とか書かれているのを見たし。そこにはどう見てもスキンシップではすまされない写真まで載っていた。

 その写真を見たら、いてもたってもいられなくなった。そこでここならば人形の持ち主が現れると思って、こうして待ち伏せをしていたの。

 あなただって亜里紗は水着は着ないとか、エッチなことはしないってこと分かっているでしょう?

 ――亜里紗を使ってそんな事をするなんて! 私の亜里紗にそんなことさせないで!」

 そこまでいうと、女の子はぼくを怖い視線で睨み付ける。

「私の人形を返して!」

「やだよ! それは人形を拾ったときは返してあげようと思っていたけれど……、でも今はもうぼくが亜里紗ちゃんなんだ」

「ぼく!? もしかして男の人が亜里紗に変身しているの? 男の人がエッチな水着を着たり、綾子さんとエッチな関係をしているの!?」

「そんなのぼくの勝手だろう? 今はぼくが亜里紗ちゃんなんだから!!

 ……だったら亜里紗ちゃんの体でもっと色んなことをしちゃおうかな? ぼくの体じゃないから、どんな恥ずかしいことだってきるし!」

 そういって脅すと、女の子は怒った顔から急に泣き顔になった。

「お願い。亜里紗の人形返して……」

 そう言って懇願する。

 これにはぼくも参った。

 ぼくだって亜里紗になった楽しみを知ってしまった以上人形を手放したくはない。しかし女の子……それも小学生の女の子に泣かれてはかなわない。それに冷静に考えてみれば、もともと亜里紗の人形は彼女の物だ。返して欲しいというのは正当な要求だし、彼女に返して上げるのが道理ってものだろう。

 しばらく考えたすえ、ある提案がひらめいた。

 ぼくは女の子に言う。

「わかった。人形を返してあげてもいいけれど、条件がある」

「条件?」

 女の子は泣きやむと、ぼくを見つめた。

「条件というのは、返してあげる代わりに亜里紗ちゃんになってぼくとセッ○スをして欲しいんだ」

 そうだ。亜里紗の初めてをぼくがもらうのだ。アイドル亜里紗との夢にまで見たセッ○ス。恥ずかしながらぼくは童貞だ。亜里紗で童貞が捨てられるのならば人形を返してもいい。

 小学生の女の子相手に自分でもひどいことを言うものだと思ったが、ここがぼくのギリギリの妥協点だった。

「そんなこと出来るわけないでしょう!」

 それを聞いた女の子は、今度は顔を真っ赤にして叫んだ。怒りと恥ずかしさが混じった目でぼくを見ている。

「嫌ならば交渉は不成立だ。亜里紗ちゃんの人形は返さない」

「そんな……」

「これでも精一杯譲歩しているつもりだ。ぼくだって亜里紗ちゃんを手放したくないんだよ。亜里紗ちゃんになってアイドルをする楽しさは君にもわかるだろう?」

「……」

 彼女も亜里紗になることの楽しさを知っているだけに、ぼくの提案もわからないではないようだ。だからといって提案を飲むことはできないのだろう。

 彼女が黙りこんでしまったため、ぼくから再び語りかける。

「ところでその反応を見ると、君……ええと……」

「まどかよ」

「……まどかちゃんは、セッ○スのことをは知っているみたいだね?」

「そんなこと、あなたには関係ないでしょう!?」

「答えてくれないと、人形は返してあげないよ」

「……わかりました。それほど詳しく知っているわけではないけど……。でもクラスメイトとの秘密の会話などで、おぼろげながらエッチな行為をすることだけは理解しています」

「じゃあ、セッ○スできるね?」

 どうしてこんなことを訊ねたのか――もちろん好奇心もあったのだが――一番の理由は、このまどかという女の子がどこまで誠実かが知りたかったのだ。なぜなら人形を返したあとセッ○スをせずに人形を持って逃げ去ってしまうことも考えられたからだ。でもこの子は素直で正直な性格をしていると思った。きっと約束は守ってくれる。そう確信できた。









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