呪術師・黒羽 第3話
 作:Howling


ふんふんふふ~ん・・・・

鼻歌を歌いながら部屋の掃除をする1人の女性。
彼女の名前は黒羽。

彼女はもともと異世界の住人だったが、この世界に流れ着いた際に
居合わせたサラリーマン・武俊に拾われて、以来彼の家に住み着いている。


今日の仕事が終わったら休みになると武俊に言われた彼女は、
徹底的に部屋を掃除して武俊を喜ばせようと思い立ったのだ。

黒羽自身、今の自分の心境の変化に少し驚いてもいた。
自分自身で誰かのために何かするのがこんなに楽しいとは思わなかった。

昔の自分なら皮人間を使役して部屋の掃除させてたっけ・・・・?

そんなことを思いながら黒羽は部屋の掃除をする。
誰かのために、武俊のために自分で部屋の掃除をするのがとにかく愉しかったのだ。

一通り掃き掃除と拭き掃除を終わらせてから今度は押し入れを整理する。

「あら・・・・???」

押し入れの奥、黒羽はある物を見つけた。



「ただいまー」

その夜、武俊が帰ってきた。

「お帰りなさいませ主様!」

黒羽が嬉々として出迎える。

「ただいま黒羽ー」

黒羽の笑顔に心癒やされる武俊。
誰かが家で待ってくれることがこんなに嬉しいことなんだなと武俊はしみじみ感じていた。

「お疲れさまです。荷物持ちますよ」
鞄を手に取る黒羽。

「あ、ありがと・・・・って、あれ!?」

武俊は家の中に入って驚く。

明らかに部屋が片付いていた。
あまりの綺麗さに心なしかいつもの部屋がまぶしくも感じた。

「今日お掃除させてもらいました!
 主様に快適に過ごして欲しくて・・・」

屈託のない笑みを浮かべて言う黒羽。
そんな様子に武俊は嬉しくなるばかりだった。

「あ、ありがとう黒羽・・・嬉しいな!
 何かお礼しないと・・・」

「いえいえ!お礼だなんて。私はもう十分すぎるくらい
 主様からいただいてますよ。」

黒羽自身、武俊には感謝してもしきれないほどに助けられていた。
この世界に追放された自分を何も言わずに助けてくれて、
さらに一緒に住ませてくれたのだから・・・・

「ご飯とお風呂、どちらにしますか?」


「そうだな・・・・じゃあ、ご飯で」

「分かりました!あ、主様・・・・」

「ん?何?」

「押し入れ掃除してたらこんなのがあったんですけど・・・・」

そう言って黒羽は2つの箱を出した。

「えっ!?あ、それは・・・・」

それは、武俊が押し入れに入れていたスケールフィギュアだった。

アメコミヒロイン・アメイジングガールをベースに創られたフィギュアで、
武俊自身が気に入っている作家のキャラクターデザインだったのだ。

金髪ロングに青を基調としたヘソ出しのスーツに赤いマント。ミニスカートからは引き締まった美脚が伸びる。
この美形に加えて顔立ちも自分好みのデザインだったことから武俊は衝動買いしてしまった。

しかも、お気に入りのキャラクターということで、通常版と
悪堕ちした設定のダークアメイジングガールのフィギュアもしっかりと揃えていた。

通常版が青を基調としているのに対し、こちらは黒を基調としてきつめで暗めなメイクが
悪堕ち感を際立たせていた。
フィギュアも邪悪そうな笑みを浮かべている。

「これは・・その・・・・」
しどろもどろになる武俊。
女性に見られるのはさすがに恥ずかしかった。

しかし、黒羽からは意外な言葉が返ってきた。

「この世界の人形ってこんなに綺麗なんですね!」

「その・・・・って、え!?」

黒羽の反応に驚く武俊。

「その・・・・引かないの?」

「とんでもないです!この世界ではこんな人形が普通に手に入るんですか?
 ボディラインとか本当綺麗ですよ!芸術です!」

目をきらきら輝かせてフィギュアを見つめる黒羽。
なんだか、相当気に入ってるようだ。

「・・・そんなに珍しいの?」

「はい!私のいた世界じゃこんな造形が綺麗な人形なんてありませんでしたから・・・
 本当生きてるみたい・・・・!!!あの、箱から出してみてもいいですか?」

「あ、いいけど・・・・・」

黒羽は嬉々として箱から2体のフィギュアを出し、360度すべての角度から見回し愉しむ。

そんな黒羽の様子に安堵する武俊。

「あ、主様!」

急に黒羽は武俊の方を向いた。

「ん?何?」
「ちょっと面白いことを思いつきました。」
「え?」

そう言う黒羽の目にはこれからやることが楽しみでしょうがない、という雰囲気が見て取れた。
何をしようというのだろう?

「その、すいません。少しだけ玄関で待っててもらえますか?」
「い、いいけど・・・・」

聞いても仕方がない。黒羽に言われるまま、武俊は玄関の外に出た。

「さて・・・・」

黒羽は、にんまりとした笑みを浮かべた・・・・・・・





「主様~・・・もう大丈夫ですよ」
5分後、中から声がした。
武俊は、そのまま中に再度入り直した。

「黒羽~、一体・・・・・!?」

居間に入った武俊は目の前の現実が受け入れられずに固まった。

黒羽の両脇に、金髪美女が2人立っていた。
しかも、その顔はうり二つ。
違いといえば、服の色が青と黒で違うのと、表情の雰囲気がメイクと相まって違うことくらい。
そんな美女2人が笑みを浮かべて武俊の前に立っている。

「あ・・・・ああ・・・・・」

武俊は唖然とする。無理もない。
武俊が気に入っていたアメイジングガール達がフィギュアの造形そのままの姿で目の前にいたのだ。

「よろしくね。ご主人様」
「よろしく~」

2人が自分のことを「ご主人様」と呼んで挨拶する。

「く・・・・・くくく黒羽!?これって・・・・」

「んふふ~。どうですか主様。私、実はこんなことできるんですよ」

「そうなの!?」

そう、黒羽は自らの術で武俊のフィギュア2体を人間サイズで実体化させたのだった。

話は少し遡る・・・・


武俊が表に出た後、2体のフィギュアを立たせる黒羽。

呪文を唱え、指先をそれぞれのフィギュアの額に当てる。

すると、フィギュア2体が鈍い光を放つ。

そのまま、2体は大きさが変化し始めた。

さらに、プラスチックの質感が人肌のそれへと変化を遂げていく。
同じように服装のところも本物の布素材に変化していく。

2体は、人間のそれと変わらぬ姿に変化していったのだ。

黒羽が笑みを浮かべ、指を鳴らす。

すると、2人が目を開く。
その目は、一瞬鈍く紫の光を放つ。
2人は黒羽の前に恭しく跪いた。

「「黒羽様、何なりとご命令ください」」

同じ声が部屋に響く。流暢な日本語だった。

黒羽は、おもむろにアメイジングガールの胸を揉んだ。

「んあっ・・・・・」

突然のことに反応できず喘ぐアメイジングガール。

「んふっ。感度も良好ね。成功だわ」

黒羽は、自分の術の出来に満足した・・・・・・




「・・・というわけなんです」

「す・・・・すごい・・・・!
 人間じゃなくてもできるんだ・・・・」

「ええ。これだけ綺麗な形をしていたんでうまくいきましたよ!
 この世界の人形は素晴らしいですよ」

黒羽は心底嬉しそうに言った。

すると、ダークアメイジングガールが武俊の方に近づいた。

武俊の顎を指で掴んでくいっと上げさせる。
黒いメイクを施した彼女の目が刺さる。
彼女は目を見開いて言った。

「と、いうわけで今日は愉しんでねぇご主人様♪」

そう言って彼女は武俊に軽くキスをした。

「ちょっと、ご主人様に失礼よ」
本物のアメイジングガールがダークアメイジングガールをたしなめる。

「あらいいでしょう?減るもんじゃなし・・・」

悪びれもせずダークが言う。

「ご主人様申し訳ありません。私のことはアリシアとお呼びください」

アメイジングガールはそう言って武俊に挨拶する。
作中の設定そのままだ。

「じゃあアタシはエヴァ。その方が呼びやすいでしょう?」

ダークアメイジングガールも続けてそう言った。
これも作中の設定どおりだ。
「じゃ、じゃあそれで・・・・」

理想のフィギュアが実体化したことでタジタジになりながらも、武俊はなんとか答えた。

「さ、主様食事にしましょう。用意できてますよ!」

黒羽はそう言って食事の準備にさしかかった・・・・・




「はいご主人様。あーん♪」

「ご主人様ぁ。酒飲みなよ~」

居間で、武俊は高身長の美女2人に囲まれて接待を受けていた。

両サイドに日本人離れした美女2人。ヘソ出しルックに艶めかしい美脚。
時折組み直したりしているのがより一層官能的だ。
そんな2人が流ちょうに日本語をしゃべり、武俊を接待している。

世の中でこんな体験をした人間がいるだろうか?

武俊はこの世の春を感じていた。

これは鼻の下を伸ばしてもしょうがない。武俊はこの上なく顔を緩めていた。

そんな武俊の様子を、黒羽は楽しげに観察していた。しかし・・・・

『主様・・・・・嬉しそう・・・・でも、ちょっと妬いちゃう・・・・』


黒羽は、武俊がデレデレしている武俊を見て、嫉妬心を募らせる。

その黒い欲望は、次に何をするべきか、色々考えを巡らせていた。

そんな黒羽の様子など露知らず、武俊はお酌を受けながら左右に伸びる美脚を見つめていた。

(すごい・・・・綺麗すぎるな・・・・)

しなやかでいて、張りのある太腿が左右に。
しかも双方が同じ躰をしているのだ。
目線をそらすのもままならない。

そんな武俊の様子を、エヴァは見逃さなかった。
「んふっ♪ご主人様ぁ、私達の脚触りたいんでしょう?いいわよぉ、思い切りさっ!」

エヴァが武俊の手を引っ張って自らの太腿に引き込む。

「なっ!?」

武俊の手には、引き締まりながらも柔らかな太ももの感触があった。
その上手触りもまた格別だった。

「ふふふ・・・どう?脚だけでも気持ちいいのぉ?」
挑発的にエヴァが声をかけてくる。

「あ・・・あわわ・・・・」

どぎまぎする武俊。そんな様子をみてエヴァは楽しげだ。

「それじゃぁ・・・・・えいっ!」

今度は武俊の手を自らの太腿で挟み込んだ。

「うあっ・・・!?」

武俊は、手で美脚の感触を強制的に味わうことになった。

(や・・・柔らかっ・・・・!?)

「いいよぉ~好きに触っても」

エヴァに言われて調子に乗った武俊は、エヴァの太腿の中で手をもぞもぞと動かす。

「やぁ~ん、ご主人様エッチぃ~♪」

エヴァはふざけ気味に言った。

「もう・・・エヴァったら・・・・」

アリシアは不満そうに言った。
それは、単純に嫉妬心からだった。

「ご主人様。私も・・・・」

今度はアリシアが武俊の手を取って同じように自らの太腿に挟みこむ。

それも、さらに奥、太腿の付け根に向かって・・・・

「あんっ・・・・・」

「え!?ちょっ・・・!?」

積極的なアリシアの様子にさらに驚く武俊。
何と彼女は自分の秘部に武俊の指を当ててるのだ。

「ご主人様・・・・もっと・・・」

耳元で囁くアリシア。その表情もどこか上気している。

「うそ・・・」

ドキドキが止まらない武俊。

「あらら~・・・アリシアったらちょっといやらしいんじゃなあい?」

アリシアの積極的な様子にエヴァはからかうように言う。

ヒロイン2人の奉仕を受けて武俊は完全に表情を緩めきっていた。



一方、そんな様子をただ見ていた黒羽。その表情からは、不満が見え隠れする。

『やっぱり何か面白くないですね・・・・・そうだ!』

黒羽は指を鳴らした。

その瞬間、アリシアとエヴァは雷に打たれたように目を見開き、突如無口になって立ち上がる。

そして、黒羽に背を向けた。

黒羽は指を鳴らす。

「!?」
すると2人の衣装が脱げ落ち、生まれたままの姿をさらけだす。

そこから黒羽は彼女たちの背中に指を伸ばす。

すると、彼女たちの背中が裂け始めた。

「んっ・・・・んんっ・・・」

「あ・・・・あはぁ・・・・・」

2人はその瞬間気持ちよさそうな声を上げた。

「く、黒羽・・・?」

武俊は黒羽の行動に少し驚く。

「主様・・・ずるいです」

頬を膨らませて黒羽は言う。

「え?」

「私を置いてけぼりなんてずるいです」

このとき武俊は黒羽が妬いているのを初めて理解した。
本当はやきもちやきなんだ・・・・
武俊は黒羽の性格をまた理解した。


「あ、いや・・・その・・・・すいません」

謝る武俊をみて、黒羽は表情を戻した。

「分かればいいんですよ。ですから、今度は私も混ぜてください。
 彼女達を着て遊びましょう」

黒羽の突飛な提案に息をのむ武俊。

黒羽との生活は驚かされることばかりだ。

「ご主人様ぁ~。私たちを・・・着てぇ・・・」
「はやくぅ~・・・」

アリシアとエヴァが切なそうな表情と声でつぶやく。

いずれも黒羽が操作している。

「どちらにします?」
黒羽が笑みを浮かべて言う。

「じゃ、じゃあ・・・・」

武俊はどちらか選ぶことにした。
しかし、どちらも良さがあるゆえに武俊は迷った。

「んふふふ・・・主様は優柔不断ですね?」

黒羽は笑みを浮かべながら指摘する。
「ですから私が先に選びます。こっちです」

そう言って黒羽はエヴァを選んだ。

「黒羽様・・・ありがとうございます」

エヴァは嬉しそうに言った。

「じゃ、じゃあ・・・・」

武俊は残ったアリシアを選ぶことにした。

「ご主人様・・・うれしいです。私の身体、隅々まで愉しんでください」

アリシアは嬉しそうだ。

その瞬間、アリシアとエヴァ、2人の目が空洞になっていく。
まさに着ぐるみ状態へと変化した。

「それじゃあ主様、一緒に着ましょう」
黒羽に促され、服をすべて脱ぐ武俊。
黒羽もまた、瞬時に服を脱ぐ。
魔術の類なのか、雲散霧消するかのごとく彼女の普段着が消えた。

「それじゃあまず私から・・・」

黒羽が慣れた動作で右脚を差し込んでいく。

「あはっっ・・・!!!」

エヴァが気持ちよさそうに声を上げる。
黒羽が右脚を差し入れた瞬間、ぶるっと震わせる。
快感に感じているのだ。

「く、黒羽様っ、す、すんごい・・・こんなの今まで感じたこと・・・あはぁっ・・・・・」
エヴァが快感に打ち震えながら呟く。
その反応を愉しむかのように、黒羽は左脚を入れて、腰まで引き上げた。

くきゅっ、くきゅっ・・・とエヴァの皮が音を立てて黒羽の肌と擦れる。

腰まで穿いた瞬間、その内側で蠢き、エヴァの脚と融合する。
その影響で、黒羽の視点が上に上がった。
身長が伸びたのだ。

「黒羽様ぁ・・・アタシをすべてあげますぅ。アタシを着てくださいぃ・・・・」

快感に溺れたような声で言うエヴァ。
皮になった状態で抵抗がなくなったのか、首を180度回転させて黒羽の方を向いていた。
若干グロテスクにも見えたが、黒羽はお構いなしだった。

「もちろんよ。私も興奮してるんだから。それじゃ・・・えいっ!」

黒羽は一気にエヴァを着込んだ。
腕を通し、首から下まで融合する。
そしてエヴァと軽くキスを交わしてから、頭を被りに掛かる。
その前に、黒羽は唾液を皮の内側に一滴だけ垂らした。

「ひゃううん!!!!」

エヴァは悲鳴を上げた。

「な・・・なひほれぇ・・・・わらしののうみそ・・しひれて・・・しゅこい・・・・・」

エヴァは呂律が回らない状態で呟く。
黒羽の唾液が皮の頭の内側に入った。
それがエヴァとしては脳みそを直接揺さぶられるほどの快感になっていたのだ。

仕上げとばかりに黒羽はエヴァの顔部分を被った。

『ああああああ・・・・黒羽様がわらひとひとつに・・・・いいよぉ・・・・・』

黒羽の頭に直接快感に溺れるエヴァの声が響き渡った。
エヴァを纏った黒羽はしばらく目を瞑った。
隅々までエヴァと融合するために・・・・・


「さ、ご主人様どうぞ」

アリシアはお尻を振って武俊を誘惑する。
とても中身がない皮とは思えない動きだった。

我慢の限界を迎えていた武俊は一気にアリシアを着ることにした。
右脚を入れていく。

「ああっ!!!ご主人様が・・・・荒々しく私を着てくださってる!! 
 私で興奮してくださってるんですね!! 
 私の身体や脳内や心の隅々までご主人様と融け合うなんて素晴らしいわ!!
 もう正義のヒロインじゃなくなってもいい!!このまま、キモチヨクナリタイワ!!!!」

理性を完全に崩壊させたアリシアが叫ぶ。
武俊もまた、強引にアリシアを纏っていった。
ゴツゴツとしていた男の脚がすらっとしたアリシアの脚へと変化していく。
腰も極端にくびれ、そして武俊は頭をアリシアの皮の中に押し込んだ!!!

『あひぃぃぃ!!!全部蕩けて・・・キモチイイのぉぉぉぉぉ・・・・!!!』

この瞬間、アリシアの意識は完全に武俊の中に溶け消えた・・・・・


3分ほど、2人は直立して目を閉じていた。
そして、ほぼ同時に目を覚ます。

「ふふふ・・・・気分はいかがですか主様?」

エヴァ、いや彼女を着た黒羽が尋ねる。

「う、うん・・・すごい・・・この身体・・・今までのと違う・・・・」

アリシア、いや彼女を着た武俊が楽しそうに言う。
それも無理はない。武俊は西洋の、それも架空の人物の皮を着ているのだ。
驚かないはずはなかった。

黒羽が指を鳴らすと、2人の衣装は元通りとなる。

「さて主様、私いいこと思いついたんですけど・・・」

「いいこと?」

「はい、そのために主様の"スマホ"を貸してもらえますか?」

「スマホ?いいけど・・・・」

武俊は、黒羽に自分のスマホを渡す。

「ありがとうございます。それじゃ・・・・」

黒羽は、スマホを少し操作した後、念を込めた。

次の瞬間、スマホはひとりでに宙を舞い始めた。

「こ、これって・・・」

「今主様のスマホを動画撮影モードにして浮かせました。
 自由に動きます。つまり、あとで鑑賞会だってできますよ。」

「か、鑑賞会・・・・」

確かに、アメイジングガール・アリシアを思い通りに動かしたのが映像として記録されるのは面白そうだ。
武俊はわくわくする気持ちが抑えられなかった。
しかし、黒羽のやろうとしていることはそれだけにとどまらなかった。

「ねえ主様・・・今私が着てるのって主様の着ているキャラクターが悪に堕ちた存在、みたいなものですよね?」

「そ、そうだけど・・・・」

「せっかくだからなりきって遊んでみませんか?
 しばらく主様と私はアリシアとエヴァになりきって演技してみる。
 こんなこと私抜きには絶対出来ませんよ。」

黒羽はエヴァの顔で笑みを浮かべている。

武俊は黒羽の言いたいことをなんとなくで理解した。

「じゃあ・・・せっかくだし・・・」

「やった!それじゃ・・・・」


次の瞬間、武俊の脳裏に衝撃が走る。

何かに染められていくような感覚だ。
自分という意識が薄れ、代わりにアメイジングガール・アリシアとしての自我に塗り変わっていく感覚。
それを、武俊は心地よく受け入れていた・・・・


「な、何・・・?今私・・・」

自然に"私"と女言葉が出ていた。武俊は、うっすらとした自我の中で"アリシア"に染まっているのを自覚した。
おそらく、エヴァを纏った黒羽も同じなのだろう。

次の瞬間、エヴァを纏っていた黒羽がいきなり押し倒してきた!!

「アハハ・・・捕まえたよアリシア・・・もう1人のアタシ・・・」

黒羽は、この時点で完全にエヴァになりきっていた。

武俊、いやアリシアは反射的に抵抗しようとするも、力が全く出せない。

「エ・・・エヴァ!?離しなさい!!一体何を・・・」

アリシアはエヴァに強引に唇を塞がれた。
エヴァは美味しそうにアリシアの唇を貪る。

「ぷはっ・・・・あのさぁ・・・・アタシとおんなじになろうよぉ・・・・」

「え!?」

「正義のヒロインなんて辞めてさぁ・・・アタシとおんなじ悪に染まろうよぉ」

「な、何言ってるの・・・私はそんな・・・ああっっ・・・・!!!」

アリシアの内側で、とめどなく溢れる何かがあった。

それは、黒い欲望とも言える何かだった。

「ふふふ・・・今飲ませたのは私のオーラ。
 このままいけばアリシアもアタシとおんなじ悪事が大好きな素敵なレディになれるんだよぉ」

「そ、そんなこと・・・ありえ・・・ないっ・・!!!」

「えぇ~・・・そう?じゃあたあっっぷり身体に聞かないとね♪」

「身体って・・・・あああっ!!!」

エヴァは、より一層大胆にアリシアの身体を貪っていく。
首筋を舐めたり耳をかんだり、スーツの内側に手を差し入れて胸を揉む。
ぴっちりしたスーツ越しに、手の動きが見える。
柔らかな胸の感覚がエヴァの手に伝わる。
あっという間に、アリシアの乳首が硬くなった。
ぴったり身体にフィットしたスーツに乳首の突起が浮かび上がる。

アリシアは何故か抵抗すらできなかった。

「な、なんで・・・・」

「何で抵抗できないかってぇ~?それはねえ・・・・貴女が本当はもっとして欲しいって思ってるからだよ♪」

「な!?」

「素直になっちゃいなよ・・・・・アタシみたいになりたいって」

「い、いや・・・・はうっっ!?」

エヴァはスーツ越しにアリシアの乳首を甘噛みする。

「んふふ・・・あまぁい♪」

エヴァはうっとりした表情を浮かべながら乳首をちろちろと舐め、そして吸い付いた。
そのままの体勢でもう片方の乳房を揉みしだく。

力を入れる度にアリシアは激しく喘ぐ。
発汗が激しくなり、端から見ても分かるほどにスーツがびっしょりと濡れていた。

「こ・・・こんなの・・・・」

「キモチイイんでしょう・・・このままぁ・・・どんどん染まっちゃえばいいんだよぉ・・・」

「そんな・・・・ひゃううっ・・・!!!」

快楽に喘ぐアリシア、その瞳は徐々に精細を欠いていく。
彼女の気づかぬ間に、唇は普段の彼女より色濃く染まり、アイシャドウが際立っていく。
少しずつ、そして確実にエヴァに近づいていた。

その様子を確認した後、エヴァは次のステップに進んでいく。

「ねえ・・・これ見てよ・・・もうひとりのわ・た・し」

エヴァは手鏡をアリシアに向ける。

「・・・・!?い、いやっ!!」
アリシアは目を背けた。
一瞬目にした自分の顔は、エヴァそのものになっていた。

「あはは・・・これでもう見た目は私そのものだわ。もうそのメイクは取れないわよ」

「そ、そんな・・・・」

「あとは・・・・その顔に似合うこ・こ・ろを植え付けるだけ」

そう言ってエヴァはアリシアにしがみつき、耳に舌を這わせる。

「ひうっっ!?」

アリシアは耳からくる得体の知れない何かに身体を震わせる。

目を見開き、口をぱくぱくさせる。

その得体の知れない何かは、アリシアに、今まで感じたことのないような快感を与えていた。

「ぷはあっ・・・キモチイイでしょう?今こうして貴女に植え付けてるのよ。
 "私"らしい考えや嗜好をね。このままいけば、身も心も"私"に変わることはできるわ」

「ああ・・・・あああああ・・・・・」

アリシアは抵抗しようにも言葉にならない声を呻くだけだった。
がくがくと身体を震わせている。

「相当気に入ったようで嬉しいわ。それじゃ、一気に仕上げてあげる。
 正義のアメイジングガールは消えて、これからは悪のアメイジングガール2人で世界を変えるのよ」

そう言ってエヴァはアリシアの耳からエネルギーを注入していく。

「------------!!!!!」

アリシアは声にならない悲鳴を上げた。

そのまま、気を失うアリシア。




「あはは・・・これで仕上がったわね・・・・」

エヴァはアリシアを見下ろす。彼女からは、黒く澱んだオーラが全身からにじみ出ていた。

エヴァは指を鳴らすと、アリシアは目を覚ました。
すっと立ち上がる。その表情は無表情だった。

「気分はどう?」

エヴァは尋ねる。

「気分はどうって・・・・」

次の瞬間、アリシアはにたっと邪悪な笑みを浮かべた。

「最高に決まってるじゃない・・・・」

この瞬間、アリシアの精神は完全に邪悪へと堕ちた。

身も心も、目の前のエヴァと同じになったのだ。

アリシアは、エヴァに抱きつく。そして自ら積極的に濃厚なキスを交わした。

「んふっ、んっ、んっ、んっ・・・・・」
「んぅぅ・・・んむっ、んはぁっ・・・・」

アリシアはエヴァの、自分とうり二つの舌を、唇を貪った。
それに応えるように、エヴァも舌を絡ませ合う。

「ぷはっ・・・私の舌、おいしぃ・・・・」

「そうでしょう?でもいいのかしら?さっきはあんなに嫌がってなかったぁ?」

「何言ってるの?これが本当の私よ。それ以外の何者でもないわ」

アリシアは、先ほどまでエヴァと絡み合うことをあれほど嫌悪していたことなど、とうに忘れているかのようだった。

「それにしても、私のこの服、ダサいわね。こんなよい子ぶってる服装、私には似合わないわ」

「それじゃあ、服を交換しましょうよ。今私が着てる服を着たらもっと気持ちいいわよ」

「いいわねそれ!じゃあ早速・・・・」

2人は着ていたスーツをその場で脱ぎ、交換していく。

身体特徴がまったく同じ2人。互いのスーツを交換してもぴったりなのは明白だった。

「んああ・・・・この服本当いいわ・・・・」

アリシアはエヴァが着ていたスーツを纏い、気持ちよさそうに自らを抱きしめる。
このスーツを着ている自分自身が本来の姿なのだということを実感し、堪能していた。

一方エヴァは、アリシアが着ていたスーツを着こなしていた。

「ふふふ・・・・」

エヴァは自らの顔の前で手をかざす。

すると次の瞬間、エヴァのメイクがナチュラルなものに変化し、先ほどまでのアリシアの姿になっていた。

「しばらく、さっきまでの貴女の格好でいるわね。この姿で悪事を思いきり愉しむの」

「素晴らしいわ。私達は2人で1人。理想の世界を作りましょう・・・・」

アリシアは心底嬉しそうにささやき、またしても濃厚なキスを交わすのだった・・・・


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「・・・・んあ・・・?」

気がつくと、武俊はベッドの上で寝転がっていた。
元の姿に戻っている。

「あ、気がつきました?主様」

傍らには黒羽がいた。そして、アリシアとエヴァもフィギュアの状態に戻っていた。


「あれ・・?いつの間に・・・」

「あれからすごかったですよ。2人で時間を忘れて絡み合って、
 気を失うくらいにイッちゃいましたから・・・」

黒羽は当時のことを思い返しながら笑みを浮かべている。

「あ、あと、スマホでバッチリ録画できてますから鑑賞会もできますよ」

黒羽は腕を組みどや顔をしてみせた。

「いや~、黒羽って本当すごいな・・・」

「そうですか!?主様嬉しいですぅ~♪」

キャッキャと悦ぶ黒羽。


黒羽が来てから、本当すごい体験ばかりしてるな~、


と武俊は今さらながら天を仰ぎ思うのだった。














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