代行屋・瀬名伊織編(後編)

 作:Howling


伊織が代行屋に奈美の姿でのプレイを依頼してから数日が流れた。

表面上は生き生きと仕事に打ち込んでいる伊織。
しかし今、彼女にある問題が起きていた。




「伊織ちゃん、おはよう。」

奈美がいつものように伊織に声をかける。


「あ、おはようございます、おね・・・・・はっ!!!!」

思わず口を手で塞ぐ伊織。

「?どうしたの伊織ちゃん?」

何があったのか伊織に尋ねる奈美。


「い、いいえ!大丈夫です!」

足早に自分のデスクへ入っていく伊織。

「?・・・・・どうしたのかしら?」

そんな伊織を、奈美は不思議そうに見つめるだけだった。




一方、伊織は思い切り焦っていた。

危うく奈美に対し、「お姉さま」と言ってしまうところだったのだ。
数日前にプレイしていたように・・・・・


『ど、どうしよ・・・・・!!!あんなことしちゃってからというものの、
 奈美さんの顔をまともに見れない・・・・・・!!!』

伊織にとって、奈美の皮を被り、奈美になりきった祐介とのプレイは
最高の快楽を与えたが、逆に最悪な猛毒にもなっていた。

奈美のことをまともに見れない状態になっていたのだ。

『絶対まずい!!絶対まずいよぉ!!!!!』


終始赤面状態で、伊織は黙々と仕事に打ち込むのだった・・・・・・






仕事終わり。伊織は足早に会社を出た。
少しでも早く奈美と距離を置きたかったのだ。

数日前、欲望の赴くままに絡み合った祐介が成りすました奈美と現実の奈美。
実は会社にいた奈美も祐介が成りすましていたら・・・・・・


と、妄想が妄想を呼ぶ状態に苛まれていた。

『一旦リセットしないと!!!!』

伊織はスマホを取り出し、連絡を入れる。
妄想の連鎖をリセットするために。



−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−



「・・・で、私が呼ばれたと。」


伊織の自室。
そこには、二人の瀬名伊織が向かい合って座っている。

急遽、「SUBSTITUTE AGANCY」に依頼して、来てもらったのだ。

もはや伊織にとっては代行、という目的以上に性欲発散の方が重要になってきていたが・・・・

伊織は、自分自身に相談しているこの状態に不思議な感覚を覚えていたが、逆に話しやすさも覚えていた。
自分自身に話すものだと割り切ると、言葉が次々に出てくる。

「うん・・・・こないだのプレイ、確かにすごかったけどあまりにのめり込みすぎて
 仕事に影響出ちゃうというか・・・・・
 今、奈美さんをまともに見れなくなってどうしようかってなるくらいで・・・・」

深刻そうに話す本物の伊織。
代行屋が成りすます伊織は、それを親身に聞いていた。

「そう・・・・確かに仕事に影響が出るのはよくないわ。」

「だから・・・・一回リセットしたくて・・・・
 自分同士のプレイなら、上書きできるかな、なんて・・・・」

俯く伊織。

「ねぇ・・・貴女にとって、奈美さんってどんな人?」

ふいにもう一人の伊織が尋ねてくる。

「え?どうして急にそんな・・・・」

「いいから答えて。貴女の悩みを解決できるかもよ。」

有無を言わせない自分自身の表情に押し黙る伊織。やがて、考えた後に口を開いた。

「憧れです。仕事もできてスタイルも良くって、ほれぼれしちゃうというか・・・・
 こないだプレイしたのはそんな奈美さんに愛されたい!って欲求をそのまま
 ぶつけちゃったというか・・・・・
 本人には絶対に言えないけど・・・・」

「そう・・・でもその感情は無理に抑え込めばいいってものじゃないわね。 
 憧れることは何か行動を起こす原動力になるもの。
 要は1回強烈な刺激を味わって一度悶々としてる自分自身に一定の見切りをつけたらいいのよ。
 だから・・・・・」

もう一人の伊織は、いきなり本物の伊織の顎を掴み、そのまま唇を重ねた。

「んっ、んむっ、んんっ・・・・・・・」
「くちゅ・・・・んむぅっ・・・・ぷは・・・・んむ・・・・・」
互いの舌を絡め合わせ、唾液を交換し合い、唇を貪る。

情熱的なキスに目をとろんとさせる本物の伊織。

もう一人の伊織は、そんな本物の伊織の両手首を掴み、押し倒した。

間近で伊織の目を見つめる。

「私が、全部叶えてあげるわ。今はただ・・・気持ち良くなりましょ・・・・・」






「ああっ・・・・んああっ・・・・・い・・・いぃ・・・・」


ベッドの上、あちこちに伊織の服が散乱している。

本物の伊織は、全裸にされていた。

手首はベッドの柱にスカーフなどで固定され、抵抗することはできない。
いや、伊織自身に抵抗の意思は最初からなかったのだ。

もう一人の自分にされるがままとなっている。

「ふふふっ、いい感度ね。興奮してるのが分かるわよ。」

もう一人の伊織はそんなことを言いながら、体中を愛撫していく。

「ああっっ!!!」

それに合わせて、伊織は快楽の悲鳴を上げる。
体をびくびくと震わせ、内側から愛液をじゅぶじゅぶと溢れさせていく。

「ふふふっ、か・わ・い・い♪」

もう一人の伊織がいやらしい笑みを浮かべながら愉しそうに言う。
そのまま、伊織のすでに濡れそぼった秘部に舌を這わせた。


「ひゃあああああっっっっ!!!!」

伊織は思わず悲鳴を上げた。
快楽に身を任せ、理性を捨てて喘ぐ。
自分の中にしこりとして残る感情、に見切りを付けるために。


「さ、イキなさい。伊織ちゃん♪」

もう一人の伊織は、秘部に指を激しく出し入れし、さらにクリトリスをも愛撫した。

防ぎようのない快楽に、伊織はただただ圧倒されるばかりだった。

「んあああああああああああっっっっっっっ!!!!!!」


伊織は、体を大きくのけぞらせ、絶頂を迎えた。




「はぁ・・・・はぁ・・・・はぁ・・・・・」

手首の戒めを解かれた伊織は、ベッドの上で深呼吸をするしかできなかった。
快感の余り、頭が真っ白に近い状態だった。

そんな伊織にもう一人の伊織が問いかける。

「ふふふ、伊織ちゃん、今の気分はどう?」

「はあ・・・・はぁ・・・・・はひぃ・・・・・ 
 忘れられそうです・・・・・」

若干呂律が回らない部分もあるが、伊織は何とか応えた。

「ふふふ・・・・・伊織ちゃん・・・・・」

もう一人の伊織は、伊織のおなかの辺りにのしかかった。

「忘れる必要はなくってよ。伊織ちゃん。だって・・・・・・」

もう一人の伊織は、後頭部に手をやり、普段のように皮を剥がす動作をした。
しかし、次の瞬間、伊織は驚きのあまりに目を見開いた。

「え!?う、うそ・・・・・・・?」

伊織の皮の下から現れたのは・・・・・・・

「だって、もう本人に筒抜けなんだから・・・・・」

何と、伊織の皮を着ていたのは祐介ではなく、奈美だった!!

抜け殻となった伊織の皮から、豊満な奈美の体が現れる。

汗をかいたのか、奈美の肢体はきらきらと光を反射している。

その表情も、普段の凛とした奈美のそれとはかけ離れたゆるみきったものだった。

「はぁ・・・・他人になってみるのって結構気持ちいいわねぇ〜!」


奈美は全裸のまま伊織に成りすました感想を愉しげに語っていた。

「な・・・・なな・・・・・・」

一方、伊織は固まりきっている。今目の前で起きていることが理解できていないのだ。

「ん?どうしたの伊織ちゃん?おーい・・・・」

奈美はおどけたように伊織に問いかける。

「はっ!?な、なな何で奈美さんなんですか!?どうして・・・・」

「ふふふ・・・順番に説明してあげるわ。」

奈美は、伊織の言葉を遮るように言った。



「実はね、私もだいぶ前から貴女に興味があったのよ。

 貴女とエッチな関係になれたらいいなぁって。
 
 いつか代行屋のことを紹介しようって決めてたの。

 それに、ちょっと前まで貴女死んだ魚の目になってたから、
 
 なおさらあそこ紹介するちょうどいい機会だって思ったわ。

 そしたら、貴女も思った以上にハマってくれたみたいで。

 祐介君に私のふりをさせたって話を聞いたとき、嬉しかったわ。
 
 あぁ、伊織ちゃんもそうゆうの望んでたんだな〜、って。」


奈美の話を、伊織はただただ赤面したまま聞くばかりだった。

「ここ最近私の事避け気味だったのも、私の皮着た祐介君と遊んだ後だったから

 そのときのことを想像してまともに見れなくなったってところじゃないかしら?

 なら潮時かな〜って思ったの。

 伊織ちゃんの本心も聞きたかったしね」

顔を真っ赤にして俯く伊織。
伊織が考えていたことは、完全に図星だった。

そんな伊織を、奈美は抱きしめる。

「・・・・!?」

奈美の体温が、伊織に直接伝わる。
何故か、こうされると妙に落ち着いていくのが伊織には分かった。

「伊織ちゃん、ごめんね・・・・・」

奈美は伊織に囁く。

「こんな回りくどいやり方して。何か騙すみたいな形になっちゃったわ。」

「そ、そんな・・・・・私も、ごめんなさい。
 私も奈美さんで色々妄想しちゃってこないだ奈美さんの恰好、彼にしてもらってましたし・・・・・
 じゃあ、これから・・・・・」

「ええ、もっと色んな事しましょう。
 二人で気持ちいいことたくさん。お互いの妄想を満たして愉しみましょう。」

「ありがとうございます。嬉しい・・・・・」

伊織と奈美は互いに抱きしめ合う。

互いの体温を直に感じ、妙な安心感に包まれる。


「・・・・・それでなんだけど、伊織ちゃん。
 そこの鞄開けてみて。」

奈美は、伊織にそう促した。
言われるがままに、伊織は奈美が持ってきていた鞄を開ける。
「え?これって・・・・・あっ!?」

中に入っていたのは、肌色の物体だった。
手触りは、人肌そのもので、髪の毛や爪までついている。
髪の色や形は、伊織には見覚えのある物だった。

「まさかこれって・・・」

「そう、私の皮よ。借りてきちゃった。」

奈美の皮。その事実に伊織は思わずつばを飲み込んだ。

これを着たら奈美さんに・・・・・奈美さんに・・・・

「ふふっ、伊織ちゃん、着てみて。」

「えっ!?い、いいんですか?」

「もちろんよ。私は伊織ちゃんのを着るわ。
 中身が入れ替わった状態でのエッチって興奮しないかしら?
 自分自身に責められるのってゾクゾクするでしょ?」

「ええ、分かります。やってみたいです。」

「ふふっ、じゃあ決まり。早速着ましょ!」

奈美は、伊織の皮を着直した。

伊織は、改めて、奈美の皮を広げる。

今まで何回か祐介が自分の皮を着ている姿を見てきたが、
自分自身が皮を着ることになるとは思っていなかった。
奈美の皮の顔部分が囁いてるように感じた。


着てぇ・・・私を着てぇ・・・・・


伊織は、自分の内なる欲望を抑える理由を失った。

背中の切れ目を開いて、ストッキングを穿く要領で脚を通し始めた。
あっという間に両脚を穿き終えると、今度は腕を通す。
首から下までを奈美の皮で包み込むと、まだしぼんだままの豊満な胸が目に入った。
そして、仕上げとなる顔の部分にかかった。

奈美の皮と一体化する、奈美とひとつになる・・・・・

そんな妄想が、伊織をよりいっそう興奮させた。

そのまま、頭を顔の皮の中に入れた。
目や鼻の位置を調節していく。

着終わった瞬間、伊織は自分の体つきが変わっていくのを感じた。

半ばしぼんでいた胸が膨らんでいく。

奈美の体つきに矯正されていく感覚を初めて味わっていた。

「ふうっ、できたわね。」

奈美もまた、伊織の皮を着終わっていた。

「ふふふ・・・・・」

伊織(奈美)は、奈美(伊織)をじっと見つめる。

「え?何ですか・・・・?」

「ふふふ、もじもじする自分の姿ってカワイイなぁって。」


「そ、そんなぁ・・・・」

「ねえ、お互いになりきってみない?」

「え?」

「記憶がどんどん入ってくるでしょ?簡単よ。」

伊織の皮に包まれた奈美の言うことは正しかった。

奈美の皮に包まれた伊織の脳内に、奈美の記憶や癖がインプットされていくのが直感的に分かった。

「そ、そうね・・・・・・」


「ふふっ、それじゃ・・・・・・ねえ奈美さん。私、ずっと奈美さんとこうなりたくて・・・・
 だから今日とっても嬉しいんです・・・・」


奈美は急に伊織の口調でしゃべり出した。

「え、ええ・・・?」

伊織は混乱した。自分の皮をまとった奈美が急に自分の口調で話してきたからだ。
自分の顔、自分の声、自分の仕草・・・・・・完全に人格が変わったかのようだった。

「だから・・・・受け取って下さい!私の気持ち!」

「え!?きゃっ・・・・!?」

伊織はまたしても押し倒された。

しかし、実際は中身が逆なのだ。

奈美の姿で戸惑う伊織に対し、奈美は完全に"瀬名伊織"になりきっている。

「あぁ・・・・・お姉さま・・・・・好きぃ・・・・・」

伊織に成りすました奈美は、もとの自分の姿になった伊織の体を執拗にペッティングする。

指先で、舌で・・・・さらには太ももや胸など全身を巧みに使って愛撫する。

どこをどうすれば感じるのか、本来の体の持ち主である奈美は完全に理解していた。

(ふふっ・・・私の胸に比べたらちょっと小ぶりだけど、感度が新鮮。それに、ヨガる自分の顔を客観的に見るのって
やっぱりいいわぁ・・・・・)


「あっ、あっ、ああんっ、や、やぁあああんっ、い、いい・・・・・・」
一方、伊織は奈美の体の快楽に翻弄されていた。


(あっっ!!!す、すご・・・・いぃ・・・・こんなの・・・・

それも、奈美さんの体・・・・・・・本当に一体化しちゃうぅ・・・・・)

伊織は、奈美の姿でベッドのシーツを掴み、快楽に喘ぐ。

「ああん、お姉さま、好きです。愛してますぅ。もっとヨガってぇ・・・・・」

伊織の姿で奈美は、本来の彼女が言わないようなことを平然と言ってのける。
その姿に、奈美の姿でいる伊織も興奮を隠せない。

(あああ・・・・・奈美さんったら私の顔でそんな・・・・・
今まで言いたくても言えなかったことを・・・・・・
なら、私もいいよね?お姉さま・・・・・)

「ああん!!!伊織ちゃん!!!嬉しいわぁ!!私もぉ!!
 伊織ちゃんともっとエッチしたい!まぐわいたいのぉ!!!
 もっと気持ち良くしてぇ!!!!」

伊織は、奈美の姿で声を上げた。

互いの姿で快楽に溺れる二人の女。
もう、止める者は誰もいなかった。
伊織は、自分の姿をしている奈美の体を同じように急所のみを狙って愛撫していく。
互いの弱点を完璧に理解しあっているこの二人に隠し事は存在しなかった。

「ああああああんんっ!!!イイ!!!イイのぉ!!!!!」
「しゅごい!!!しゅごいよぉ!!!ああああああああ!!!!!」


やがて、二人の女は絶頂を迎えた・・・・・・





事が終わって、互いの皮の顔部分のみ外して、二人はベッドで横になっていた。

「はぁ・・・・はぁ・・・・・お姉さま・・・・ありがとうございますぅ・・・・」

伊織が、奈美に向かって感謝の言葉を告げる。

「え?何が・・・・?」

「私に、こんなすごい世界を教えてくれて・・・・・」

「うふふっ、いいのよ。これからもっと愉しくなるわね。」

「ええ、お姉さまのおっぱいって大きくて綺麗・・・・うらやましい。」
伊織は、自分の体になっている奈美の胸を揉んだ。

「あら、伊織のおっぱいだってちょうどいい大きさと柔らかさだわ。」

奈美がそう言って自分の体についている伊織の胸を揉みし抱く。

「もう、お姉さまったら・・・・・・」



−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−




〜エピローグ〜




「では、このプロジェクトはこの内容でまとめましょう。」


翌日。オフィスで、事業計画をまとめる奈美の姿があった。
その姿勢はビシッとしており、威厳すら感じられる。


「課長、書類まとめ終わりました。」

一方、伊織もまた仕事に打ち込んでいた。
その表情もいきいきとしている。

「お!伊織ちゃん、この書類ばっちりだよ。
 この調子でよろしく〜。」

伊織の上司も、仕事の出来に上機嫌だった。


昼休み。


「伊織ちゃん、ちょっと。」

奈美が、伊織を呼び止めた。

「はい、奈美さん。」

奈美に言われるまま、伊織はついていく。


二人の行き先は、人気のない事務室だった。
後から入った伊織が鍵を掛ける。


それを確認して、奈美が自分の後頭部に手をかける。


すると突然、奈美の頭がべりべりと音を立てて裂けた。

「ふうっ、どうでしたお姉さま?」

中から現れたのは、何と伊織だった。
伊織が二人!?

「ええ、上出来よ。」

伊織もまた、急にため口になった。
同じように後頭部に手をかける。
ベリベリと音を立てて裂けた皮から奈美の顔が現れた。

もうお分かりだろう。
伊織と奈美はこの日は朝からずっと互いに入れ替わっていたのだ。 

互いが互いに成りすます。

記憶や癖、仕草も完璧にコピーしてしまうSUBSTITUTE AGANCY製の皮の技術をもってすれば造作もないことだった。

「これって、ゾクゾクしますね。お姉さまの記憶もどんどん入ってくるから、
 やったことない仕事も簡単に分かっちゃいました。」

「そうね、私も簡単な仕事に色をつけて仕上げてるわ。経験の上乗せね。」

「それじゃ、終わったらまた・・・・・」

「ええ、今日が皮の返却期限だからそれまでは愉しみましょう。」

そう言って、二人は皮を着直した。


「それじゃ、午後も頑張るわよ!伊織ちゃん。」

「はい!奈美さん!」

二人の女は、互いの口調で、互いになりきって言った。


その後も、二人は都合の悪いときに代行屋を依頼したり、
互いの皮をレンタルしてアブノーマルなプレイに興じたりと、
代行屋を巧みに利用して生活(性活?)を充実させるのだった。


代行屋〜完〜





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