異聞・皮女(前編)(作・Howling)









「グフフフ・・・・これを着れば・・・・」

男は我慢の限界で、冷静になろうという気持ちは皆無だった。

これを着れば自分はあの写真の女性になれる。

そのことしか頭になかったのだ。

あっという間に着ていた服を脱ぎ、全裸となった。

貧相な出で立ちがさらに際立つ。

そして、皮を裏返し、首筋からお尻の部分まで伸びているファスナーを下ろした。

「うわ・・・・すごい・・・・中身は本当に空っぽだ〜・・・」

好奇心で、皮の内側を舐め回す。

甘酸っぱい匂いがした。この皮の匂いなんだろうか。

感慨にふけりながら、男は皮を着ていく。

右足を入れ、続けて左足を入れる。

そして、一気に腰まで伸ばしていく。

スキニーパンツのように窮屈ではあったが、もともと細身だったこともあり、難なく穿くことが出来た。

男は、一度自分の下半身を見つめ直した。

毛一つない、すべすべした女性の脚。これが今自分の躰になっているのだ。

だが、形は元の男のままで歪だった。サイトで見たような美脚とはほど遠い。



その時、彼の脚に違和感が襲いかかる。



「んな、何だっ、これっ・・・!?」

男は、先ほど自分の穿いた脚に変化が訪れているのを感じた。

「ミシミシ…ミシッ…」

足が異常な音を立て段々と身体が締まっていく。

元の形に戻ろうとしているように。

「ほわああっ!!す、すご。本物だぁ〜・・・・」

皮を着た男の脚は、ピンと張りのある女性の美脚に変化していた。

「す、すっげぇ〜、こ、これほんとの女性のあ、ああ脚だぁ〜・・・・」

男は今や完全に自分のものになった脚を手で楽しむ。

「は、はやく着ないと。も、もっと・・・・・・」

男は急いで上半身を着にかかる。

くびれのある女性の躰。さすがに窮屈で着るのに苦労したが、それでも何とか頭を残して着ることが出来た。

「お、おおおおお〜〜〜〜〜っ!!!!」

ところどころ角張って胸のしぼんだ貧相な上半身があっという間に変化し、Fカップの巨乳にくびれたウエストという

スタイル抜群な女性のそれに変わっていった。

「うわぁ〜、すっっすすすすすごいいいい〜〜〜!!!」

男は興奮のあまり、鏡の前でグラビア写真集で見た腰に手をやり、脚をクロスさせたポーズを取ってみた。

「うわぁ〜、ホントこの人美人だぁ〜。これ、俺なんだぁ・・・・・」

そのとき、興奮したせいか、下半身が熱を帯びるのを感じた。

「か、か感じるっての、これ・・・・???」

男の勃起とはまるで違う、じんわりと来る快感に男はうっとりしてしまう。

「じゃあ、いよいよ・・・・こ、こんな不細工な男のままじゃ・・・・・」

いよいよ最後に残った、頭を入れていく。

頭部分を強引にのばし、頭を入れる。

そして、ファスナーを下から一気に引き上げた。

そのまま鏡を見る。

もともとは美人であろうはずの顔が、男の顔にへばりついたような、不細工としかいいようのない顔だった。

しかし、男はこれからこれが美人の顔に変わるのだと思うと楽しみでしょうがないという気持ちだった。

そして、そのときは来た!

「んあああああっ!!!」

突如、顔の部分が引っ張られる感覚に襲われた。

へばりついた皮が自分の体にひっついていく感覚。

それは甘美な快感になり、男は思わず顔を手で覆いうずくまる。

「はあ・・・は・・あああ・・・・・・」

疼きも収まり、深く荒く息をする男。

「はあ・・・ってこ、この声・・・・女!?」

男は自分の声が女性のそれに変わったことに驚き、鏡の方を見る。

そこには貧相な男ではなく、呆然とした表情をしたスタイルのいい美女がいた。



「うわぁ・・・・これ、これがおっぱいの感覚・・・・・!」

鏡には、一人の美女が額に汗を浮かべ、長い髪を張り付かせながら自慰に耽る姿が映っていた。

男は、鏡で全裸の女性(といっても自分自身なのだが)を見て興奮のあまり、

自分で自分を慰めていた。

「んはあっっ、こ、これ、すご・・・・・・・!!!」

すでに何回イッたのか、本人にも自覚がない。

快感を貪ろうと胸を揉みしだき、股間を弄くる。 絶頂を迎える度に躰は敏感になっていた。

「あっ、ま、また来る、来るぅ〜!!!!」

獣のような声を上げて、彼はまたイッた。



「はぁ・・・はぁ・・・・は・・・・ははは・・・・・」



全裸のまま大の字になって男は倒れ込んでいた。

慣れない女性の快楽に溺れきっていたのだ。さすがに疲れがどっと押し寄せた。

深く息をして呼吸を整え、再び鏡を見る。

「しっかしほんとすごいよなあ。俺がこんな美人の体になってるなんて。」

「ああん、貴方ってほんと素敵ぃ。もっと私の中に入ってぇ!色んなことしてぇ!」

一人芝居をしてみる。本当にこの女に言われてるようでどきっとした。

次は何をしようか・・・・考えていると、





「「そうよ。そのままアタシになりなさい」」







「ええっ!?」

男は一瞬自分の目を疑い、周囲を見やった。

一瞬、鏡に映るこの女が自分の意思に反してしゃべりかけてきたように感じた。

振り向くも、当然自分しかいない。

「ふう、気のせいか・・・・オナニーしすぎて、疲れたんだ。」

そう考えることにした。

「とりあえず、寝よう。」

しかし、この皮の姿のままでは落ち着いて寝られない。

ひとまず脱ぐことにした。

背中のファスナーをどうにか引き下ろし、元の姿に戻る。

皮は、とりあえずハンガーに掛けて布団に入った。

明日も休みだ。じっくりやりたいことをやろう。



吸い込まれるように布団に入った男、しかし彼は気づいていない。

ハンガーに掛けた皮の口元がニヤリとしていたことに。






「あっはぁ〜ん♪」

翌日、再び皮を着た男は自分の姿をカメラに撮影していた。

ネット通販で購入した様々な衣装をとっかえひっかえ着ては楽しむ。

ボディラインを強調し、少しかがめばすぐお尻丸出しになるような赤色タイトミニスーツ、

CAの制服を上だけ着て下はハイレグレオタード。

女教師を意識したブラウスとタイトスカート、そしてその下に全身網タイツ。

とにかく堪能する。

「いや〜、こんなの普通には見れないのに何でもやってくれて。

 本当に嬉しいな。」

「ええ!当然です。今貴方に私をやっていただいて本当に嬉しいですわぁ。

 もっと私のいやらしい姿を撮っておかずにしちゃって下さいっ!」

「いいんですかぁ?それじゃ・・・・・」

独り撮影会をし、その最中にオナニーをしようかと股間に手を伸ばした瞬間、



ぱしっ



「え!?」

なんと股間にのばした右手を左手が叩いたのだ。

自分の意思に反して。

「ど、どうゆうこと!?」

この異常な事態に一瞬混乱する。

何が起きたのか?

「なんか、変だな・・・・この皮着てから・・・・・

 ・・・・今日はこのへんにしとこうか・・・・・」

皮を脱ごうとしたそのとき、両手が動かなくなった。

「え?」

男は何が起きたのか理解できなかった。自分の体であるはずなのにそれが自由に動かせなくなったのだ。


「ちょ、どうなってんの!?」

動きを止めた両手は、しばらく硬直した後、なんと勝手に動き出した。

そのまま両手で乳房をもみしだき始めたのだ!

「うそっ!や、やめっ・・・・!!!!」

男の混乱や不安は頂点に達し、今やパニック寸前だった。

男は自分の体が言うことを聞かないこの状況に混乱しながらも、何とか切り抜けようともがく。

しかし、抵抗しようにも体が自由にならない。その間も両手は胸を揉み続ける。

もにゅ、もにゅ、くにゅっ・・・・・・

「や、こ、こんな・・・・・はううっ!?」

戸惑いつつも、自分に襲いかかってくる快感に力が抜けていく。

しかもその愛撫は的確に感じるところを突いてくる。

力加減と速さがちょうど良すぎる。

まるで最初からこの体のことを理解しているような・・・・・・・

「んっ・・・・・・・あはぁ・・・・・・・はぁ・・・・・」

自分の意思を離れて動く両手からの愛撫に、男は快感を覚え始めていた。

乳首がそれを主張するかのように勃っていた。

抵抗する意思は、徐々に薄れていった。

息が荒くなる。よだれが垂れる。鏡に映るその姿は眼が潤んで余計にいやらしく映る。

鏡を前にして行われるそれは、快感付きのオナニーショーを見せられているようだ。

女の汗やらフェロモンやらが充満し、男はさらに快感に溺れていった。

それを察してか、今度は左手が股間に伸びる。

すでにそこはしっとりと濡れていた。

「んふぁあああああああ〜〜〜〜〜〜〜!!!」

クチュクチュと弄くる度に愛液が垂れてくる。


しっとりと、時折緩急をつけて。

「あっ、あっ、ああっ、ああああ〜〜〜ん!!!!」

とめどなく流れてくる快感の波に男は翻弄され続けた。

(だ、だめ、このままされたら死ぬ、死んじゃう〜〜〜〜〜!!)

未曾有の快感を強制的に味わい続け、男の精神は限界だった。

そして、その快感がクライマックスを迎えた。

「ひゃああああああああああああああああああああああ!!!!!」

あっという間に絶頂を迎え、男はその場に倒れ込んだ。

意識が薄れゆく中、手だけは快感を貪り続けていった・・・・・











・・・・・・・・・はっ!!!

気づいたら、男は元の姿に戻っていた。

全裸である。

何があったのか・・・・・・・





「ふふふっ、ようやく気づいたみたいね。」





頭に直接声が響いた。どこからだろう?

いつのまにか壁に掛かっていた皮を見やる。

男は察した。その皮は、独りでに動いていたのだ!!

「アタシはその皮の女性本人よ。」

頭に響く素っ頓狂な事実も、現実に体験した男は難なく理解してしまう。

間違いなく、自分の体を動かしたのは、この皮の女性の意思だったのだろう。

「いかがだったかしら。女性になってみた感想は。」

後半に続く・・・・・・





あとがき



ドーモ、皆さん初めまして。Howlingです。
あさぎりさんの「皮女」から皮モノにはまって、このような作品を書くに至りました。
拙い文章ですが、最後までおつきあい頂ければ幸いです。






最後に本作品の著作権等について

※本作品はフィクションであり、登場する人物・団体名等はすべて架空のものです。
※本作品についての、あらゆる著作権は、すべて作者が有するものとします。
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