mask!(前編)

 作:Howling




「おはようございます先輩」

「おはよう天城君。」

天城隆弥は、先輩社員である黒原美香に挨拶した。

「今日も一日頑張るわよ。」

「はい!」

美香は隆弥がこの部署に配属になってから指導係として一緒に仕事している。

クールビューティー。

彼女を一言で表せばこの言葉しかない。

彼女の評価は社内外問わず高く、その仕事ぶりにつられて隆弥もどんどん仕事を身につけていった。

半年も経てば、両者はプライベートにおいても親密な関係を築きつつあった。


「あの、先輩。」

「ん?何かしら天城君。」

「例の企画案も無事通りましたし、よかったら二人で飲みに行きませんか?」

「うーん・・・・いいわよ。」

「本当ですか!?ありがとうございます!」

「おーい天城!ちょっと!」

隆弥は課長に呼ばれてその場を離れる。

それを尻目に美香は自分の頬をさすりながら普段彼女がしないような薄ら笑いを浮かべた。

「ふふ・・・・・そろそろいいかしらね。彼なら・・・・・」





そしてその夜、二人はバーで小さな祝勝会を挙げた。こじゃれた雰囲気だ。

「乾杯。」

二人は酒を飲み交わす。最初は仕事の話に終始していたが、隆弥が不意に切り出した。

「いやでも嬉しいです。先輩とこうしてお酒飲めるなんて。」

「どうしたの急に?」

「いや、その自分が仕事できるのって先輩のおかげだと思うとなんか・・・・」

「そんなことないわよ。天城君の実力じゃない。」

「まだまだです。だから俺、先輩みたいになりたいんです。」

「私みたいに?」

「はい!」

「そう、よかったわ。本当に・・・・」

そのとき、隆弥は急な眠気に襲われた。

「あ、あれ?すみま・・・」

「あらどうしたの天城君。天城君・・・・・?」

薄れ往く意識の中で、隆弥はほくそ笑んでいるような表情を浮かべる美香を見た。




「・・・・?ここは・・・?」

隆弥が目を覚ますと、ベッドの上だった。

見覚えのない部屋だった。どこだろう?

「目が覚めた?」

そこに現れたのは・・・・・・

「は、はい・・・ってええ!?」

なんと、目の前にいたのはワイシャツをはだけ、下はノーブラ。

さらにガーターストッキングという出で立ちの美香だった。

「ここは私の部屋、ゆっくりしていって。」

「い、いやいや!先輩、その格好・・・!」

「気にしなくていいのよ。これからがもっとすごいんだから。」

「いや、でも・・・」

「とうとうこれを見せられると思ってね。驚かないでよ。」

自分の下着姿など気にしないかのように言って彼女は自分の顔の両端に手をやった。

何をしようというのか?



すると、美香の顔がべりべりと剥がれ始めたのだ。



「な・・・・!?」

隆弥はあまりの事態に声も出ない。

美香が両手で引っ張って自分の顔を剥がそうとしているのだ。

よく見ると、顔の両端がぺらぺらとした肌色のビニールみたいに変わっており

それが美香の顔にへばりついているようだった。

その間、美香の顔は目を閉じた無表情の状態であった。

そうしている内に、美香の顔に貼り付いていたそれは外れ、その仮面の下には・・・・・


「ふう〜っ・・・・・」


剥がれた顔の下は別人!・・・・ではなく美香のままだった。


「え?」


事態が飲み込めない隆弥を見て、美香は笑みを浮かべた。

しかし、その瞳はとろんとしており、知性を感じない。



「ふふふ・・・・・驚かせちゃってごめんねぇ〜。
 これが私の本性なの!
 あ〜ん!!もうこのこと初めて教えちゃったぁん♪
 でもいいよねぇ!君私のこと好きみたいだし
 あぁあ〜んそんなこと考えたらもう感じちゃうぅん!!!!」



美香はそう言って身につけた服を剥いで体をくねらせ、自分の股間に手をやり慰め始めた。

一体どうしたというのか!?

そこには、普段の隆弥が知る尊敬する先輩社員の姿はなく

自分の欲望のままに快楽をむさぼる雌の姿があった。

「あ、あの・・・・・黒原、先輩・・・・?」

「え?ああごめんねぇ。これが本来の私よ。」

そう話す美香の顔は、自分の指についた愛液を啜りながら微笑む。

しかしそれは普段の彼女から想像できない下卑た笑みだった。

手には無表情の彼女のお面が・・・いやお面と言うよりそれはリアルな顔の皮だった。

「これが何か気になるんでしょう?いいわよぉ、触っても。」

美香に促され、隆弥はそれを手に取る。今まで美香の顔についていた顔の皮を。

「うわっ、生暖かいし、手触りも・・・・」

「本当の顔みたいでしょぉ。それはね、私の本性を隠すための貞操帯みたいなもの。

 その顔マスクをつけると人格を変えられるの。

 それで普段の欲求を抑えてるの。アソコにずぼずぼしたいって欲求をね。」

再びそのマスクとやらを手にとって顔にあてがった。すぐに吸い付き、境目が消えていく。

元々その状態だったかのようだ。やがて、あてがったマスクの顔が動く。

「こんな具合にね。びっくりさせてごめんね。」

落ち着いた表情で言いながら椅子に座る。

今までよく見知った知性のある美香がそこにいた。

「天城君、こんな私は嫌い?幻滅した?」

不安そうに美香は尋ねる。

隆弥は今自分の目の前にあることを理解しきれないでいた。

しかし、

「・・そ、そんなことありませんよ。」

「え?」

「人に言えない秘密とかって色々あるじゃないですか。

 それに、そんなことで先輩嫌いになれないですし。

 むしろそんな先輩も新鮮というか・・・・」

「本当に!?」

「先輩のこと、好きですから・・・・」

「信じていいの?」

「はい。」

美香はこれを聞いて安堵した。

二人はいつしか両思いだったのだ。

そのことがはっきりした今、安堵や歓喜といった感情が美香を支配した。

「よかったわぁ。ありがとう隆弥君。」

「ええ、まあ・・・・・ところで、その顔マスク、すごいんですね。

 つなぎ目全く分かりませんし・・・・」

「ああ、これのこと?」

美香は自分の顔マスクが貼り付いた顔に手をやり、頬を引っ張る。

異様に伸びたりとかはなく、あくまで普通の頬のようだ。

隆弥を見つめる。

「これのこと、知りたい?」

「まあ・・・・あれだけのもの見せられたら気にはなります。」

「じゃあ・・・・とっておきをさせてあげる。」

美香は再び自分の顔マスクをはぎ取った。

自分の顔に吸いついている顔マスクを強引に引っ張り剥がす。

顔マスクをはぎ取った後の美香はまさに痴女というべき妖しい笑みを浮かべる。

「はぁ〜!やっぱり本当の自分さらけ出せるのはいいわぁ。

 せっかくだしぃ、私とこの顔のこと、全部教えてあげるわ。」

そうして美香は先ほどはぎとった自分の顔マスクの頬を舐めて、自分のあそこにあてがった。

「ああ・・・そうよぉ・・・もっと吸ってぇ。」

無表情で動かないはずの顔マスクから「ちゅうちゅう」と音がする。

一分もしないうちに、愛液でべとべとに濡れた美香の顔マスクができあがった。

「私のエキスをたっぷり吸った顔マスクのできあがりね。」

無表情の美香の顔が愛液できらきらと輝いていた。

「これにはもう一つ使い方があるの。それはね・・・・・」


美香は隆弥の顔に、先ほどの自分の顔マスクを貼り付けた!

「むぐっ!」

とっさのことに隆弥は美香の顔マスクを剥ごうとするが、皮膚に癒着したのか

つなぎ目もなく、外れる気配もない。

その間にも、美香は笑みを浮かべながら説明を続ける。

「他人にかぶせるとその体を顔の持ち主の体に変えることができるの」

「つまりね隆弥君、君はしばらく私になるの。」

「ふむぐっ!!!!」

突如、隆弥の脳内に強烈な刺激が襲いかかる。

しばらくしてそれが快感であると気づく。

あまりの気持ちよさに隆弥はその場にへたり込む。

自分に貼り付いた美香の顔を剥ごうとしていた両腕も力をなくし、だらんとその場に下ろした。

「そうよぉ。受け入れればいいのよ」

すると今度は顔マスクの皮膚が広がり始め、隆弥を包み込んだ。

美香の肌と同じ色をした肉塊に包み込まれた隆弥はその内側でびくびく震える。

「ふふっ、そろそろかしらね。」



くにゅ・・・・・くにゅ・・・・・ぐにゅ


異様な音をさせうごめくその肉塊は、隆弥の体に変化を与えていた。

隆弥の体はたちまち女性の体へと変わっていく。

それはやがて、美香の姿を形作っていった。

髪の毛のない美香の姿だ。

そのまま、髪の毛が伸び、元の美香と寸分変わらない姿になった。


パチッ


無表情の顔マスクの眼が開きまばたきを始める。


「ふふふ・・・どうかしら、『私』になった気分は?」


「どうって・・・・え!?何これ・・・!?」

隆弥は自分の変化に戸惑いを隠せない。

髪が長い。胸がある。そして声も・・・・

美香は、自分の姿になって戸惑う隆弥の手を引っ張り、姿見の前に連れて行った。

「さあ、これが今の貴女よぉ」

「な・・・!?」

姿見には、全裸で戸惑った表情の美香と、ニヤニヤと笑みを浮かべる美香が映っていた。

一方は戸惑っているのに対し、もう片方の彼女はどことなくいやらしい雰囲気を醸し出す。

「どう?私になってみた感想は?」

そう言って鏡を見ながら、全裸の美香と化した隆弥の耳に舌を入れた。

「ひゃうううん!!!」

「あははっ♪いいでしょう?元は自分の体だから、どこが感じるか分かってるのよ。ほらぁどお?」

そこから、美香の執拗なペッティングが始まった。

まずは姿見の横にあるベッドに押し倒す。

そのまま入念に胸を揉んだ。男にあるはずのないそのたわわに実った胸を。

「あああんっ!!!」

「んふふぅ〜♪キモチイイでしょお。女の特権よねぇ。

 それっ、それっ。おっぱい同士もっと擦らせてぇん♪」

お互いの乳首を擦り合わせる。弾力のある胸同士、互いを押し合う。

Eカップはある魅力的な胸。どちらも自分の体なのだ。このことが美香をさらに興奮させていた。

さらに美香は脚を絡めていく。

「いやっ!こ、こんなにすべすべなんて・・・・」

隆弥は女性の脚がもたらす快感に夢中になっていた。

男の脚と言えば毛深かったりするものだが、女の場合は毛もなくつるつるとした脚なので、

擦り合わせてもつるつるした感触を味わうことができる。

そのことが、隆弥に新鮮な驚きと興奮を与えていた。

「なあにぃ?隆弥君脚フェチだったのぉ?」

隆弥は言葉を発しにくいのか、こくこくと頷く。

「そうなのぉ?私知らなかったわぁ。

 隆弥君が私の脚で興奮してたなんて。

 何回くらい抜いたのぉ?私の脚に興奮した?」

問いかけられた隆弥はしばしうつむく。

事実、隆弥自身美香の美脚に興奮してしまうことが時々あった。

もし、その脚で悪戯されたなら。仕事中、机の下でパンストに包まれた脚で股間を愛撫されていたなら・・・

思わず恥ずかしくなった。

「あ〜ん、こんな恥ずかしそうにしてる私も新鮮ねぇ。ゾクゾクしちゃうわぁ。」

「あっ、やっ、こ、こんなの・・・・気持ち良すぎて・・・・」

「ふふっ、自分を犯すなんて最高に楽しいわぁ。ねえ隆弥君、女の快感ってすごいでしょ。

 今の隆弥君ほんと女の子みたいで可愛いわよぉ」

「ひやぁっ、ああん、あん、あん、あふうんっ!!」

隆弥は、美香の体に包まれて、初めて美香の、女性の快感を味わっていた。

「あはは、まともな言葉にならないくらい気持ちいいのねぇ。ほら、大好きなスベスベの女性の脚よ。

 もっと擦り合わせましょ♪」

美香は隆弥に対し、脚と胸の愛撫を続けた。しばらくして、

「それじゃ今度は・・・・」

美香は自分の姿をした隆弥の両手と両足首を手錠で縛り、固定した。

「え?」

「もっと気持ちよぉくなるわ。」

美香は、自分の股間を隆弥の顔に向け、逆に自分の頭を自分になった隆弥の股間にうずめた。

いわゆるシックスナインだ。

「私の躰、たっぷり味見させてもらうわ。」

そう言ってすぐさま、隆弥の、いや自分の股間に舌を入れた。

「あああああああんん!!!」

未知の快感に絶叫する隆弥。その勢いで美香の頭部を自らの太ももで挟み込む。

「ふむっ!ふほぅう!!!むふううんん!!!」
(ああんいいわぁん!これが私の匂いなのねぇ。太ももで圧迫されて余計いやらしい匂いが充満して最高よぉ!!)

お返しとばかりに、美香は隆弥に自分の股間を押しつけた。

「ふむっ!ふほぅう!!!むふううんん!!!」
(さあ、隆弥君もいいわよ。私の、ううん今の貴女の股間よぉ。貴女の大好きな太ももで圧迫してあげるからたっぷり味わってぇん♪)

言葉は通じなくても、隆弥は本能で美香の股間に舌を這わせた。

くぐもった嬌声が部屋中に響き渡った。

「ふむんっ!ふほぅう!!!むふううんん!!ほふん!!」

「むんむんむむむうううううん!!!!」

互いが互いの躰に密着し、固められたまま躰を愛撫される。

逃げ場のない快楽。

そこにはもはや理性など存在しなかった。


「「むっふうううううううううううううううううううううううううううううううんんんんんん!!!!」」


互いの股間に食いついた二人はあっという間に絶頂を迎えた。

隆弥にのしかかっていた美香が一度離れる。

「はぁ・・・・・はあ・・・・・・はぁ・・・・」

「ひっ・・・・はああ・・・・・あはあああ・・・・・・」

絶頂のあまり、互いの眼に光はなく、よどんだ表情をしていた。

「じ、自分とのレズって興奮しちゃう・・・・♪あん、また濡れてきたぁ」

美香は自分の下腹部に手をやり、さらに股間をいじくる。

一方、隆弥は肩で息をしていた。突然のことの連続で頭が真っ白だった。

よほど気持ち良かったのだろう。

それを見た美香はあることを思いついた。


「ねえ、もっと『私』になってみない?」









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