服に宿った思い出
 作者:なつのさくら


とある兄妹がおじいちゃんとおばあちゃんの青春時代を体験するそうです

俺と妹の茜はおじいちゃんちに来ていた。
街からは少し離れていてちょっと山や綺麗な川が近くにあるので長期休みの時にはおじいちゃんの家へ訪れて妹と遊んだりしている。

「茜ちゃんは元気にしておったかい?」
「うん!今年まだ風邪ひいてないよー」
「そうかいそうかい。そりゃあよかった」

おばあちゃんがいつもの笑顔で話している。
遊びに来るのを待っていたんだろうな。
とても嬉しそうだ。

「ねえおばあちゃん!お庭で遊んでもいいかな?茜ボール遊びしたい!」
「いいよ。ただし怪我はしないようにね」
「はーい!お兄ちゃん行こう!」
「え、あ・・・俺もか」

茜は小学六年生になってはいるがまだまだ子供な部分がしっかりと残ってる。
身長は俺の肩ぐらいか?
小さすぎてまだ小学生と言われてもおかしくないし顔もあどけない。

そのまま引っ張られるように庭に連れて行かれ倉庫にたどり着く。
その倉庫は家と同じように木造であるが頑丈な質のいいものでそんなに腐敗は進んでいない。
電気をつけないと中の奥まで光りが見えないくらいそこそこ大きいためにいざ中に入ると圧迫感が強い。
普通の一軒家のリビングほどの大きさはあるのだろうか?
そこにはお父さんが子供の頃遊んだのであろう遊具が並べてある。
野球のグローブと硬式のボール、バットとユニフォーム一式がきちんと揃っている。
背中には背番号とTOSHIOと刺繍がついている。
これは高校時代のだろうか。
ユニフォームは現役時代の練習の時につけたと思われる濃い汚れがついている。
洗濯しても落ないものは落ないものだ。
何しろお父さんのだったとしても30年前くらいのものだろうし。
おじいちゃんも野球やってたのかな?

「お兄ちゃん、ボール見つかった?」
「ん?」

いつのまにか俺は手に硬式のボールとっていた。

「もう、そんな硬いのじゃ痛いし私取れないに決まってるじゃん!」
「ご、ごめんな茜」

顔を赤く染めて怒りを顕わにしている。
そこまで機嫌損ねなくてもいいじゃないか。
でも去年はお父さんかおじいちゃんが倉庫をいじっていたから倉庫を見るのは初めてなんだ。
お母さんとお父さんは夕飯の買い物に行ってしまっているしおじいちゃんは町内会というものに行っているらしいからまだ会っていない。

「これなんだろう・・・?服かな」

いつのまにか茜が奥の方にいてなにか白いものを抱えている。
近寄って確認する。

「ん?これは・・・チアの服か?」
「チアってなに?」
「えーっと、チアリーディングって知ってるか?」
「あ!応援する女の子が着てるやつ?」
「そうそう。でもなんでこんなところに・・・」

ここは倉庫なのに野球のユニフォームやらチアの服やら押入れとかに入れておいても良さそうな気がするけどな。

「靴も靴下もあるね」
「その服ちょっと貸して」
「うん。」

茜は俺に疑問の表情のまま手渡す。
ビニール袋に包まれたチアの服を裏返してみると小さく[あきこ]と書いてあった。
おばあちゃんの名前は[としこ]だからおばあちゃんの服じゃないのか。

「もう着ないからここに置いてあるだけとか?」
「でもビニールに入れっぱなしってのは服が痛むからやめたほうがいいんだよなぁ・・・」

タタタっと妹が入口近くの野球の道具が置いてあった場所に移動した。

「お兄ちゃん、チアリーディングって野球選手応援するんだよね?」

茜はビニールに入ったユニフォームを俺に見せるようにかざした。
すると開け口が下向きになってしまったのかバサっと音を立てて地面に落としてしまった。
地面はコンクリートだからあまり汚れはしないだろうからそんなに心配はない。

「あっ。落としちゃった」

茜は拾おうと屈んで手を伸ばし、落ちたユニフォームに手をかけた。

「ひぅっ・・・」

刹那、茜は短い悲鳴を出して身体を痙攣を起こしたように見えた。

「茜!どうかしたか?」

心配になり声をかける。

「お・・・おにいちゃ・・・」

茜の目が涙目になっていてきょどっている。
なにか見たのか?虫でもいたのか?
茜を見ていると涙目のままユニフォームに目をやり、一度地面に置くと手を腰にやった。

「な、なにをするつもりだ?」
「おにいちゃん・・・なんか変な気持ちなの・・・」

そう言って茜はスカートを足下まで下ろした。
手や足は震えているがその行動は実にスムーズだった。
まるでいつもの着替えを淡々とこなしているかのように慣れた手つきで上着を脱ぐ。
そりゃあ毎日スカートを脱ぐのだって上着を脱ぐのだってやっているが・・・。

「茜、なんでこんなところで裸に・・・」
「わかんない、わかんないけど私なんかこの服を着てみたい気持ちでいっぱいなの」

そう言って人差し指を向けた方向は野球のユニフォーム。
俺は嫌な予感がした。
まさかそのユニフォームには呪いがあるんじゃないだろうか。
触れた人物に着たいという欲求を産ませるような呪い。
その言葉を聞くと着るだけなら何の問題も内容になるかもしれないがそれだけじゃないかもしれない場合も考えて茜の行動を止めようと近くに寄る。

「来ないでっ!」

茜の言葉と共に俺は止まった。
否、止まってしまった。
体が思うように動かない。
茜はいままで俺に見せないかった、そしてほかの誰にも見せてきたことのないような先ほどの可愛い怒りと比べきれないほどの憤りがわかる表情をしている。
これは服によってもたらされた呪いの力なのか。
現実ではないなんらかの強制力によって身動きが取れない。

「あ、茜。それを着たらなにか起こるかもしれない。だから着ないでくれ・・・」

幸いにも口は動くようだ。
しかし首から下の自由が効かないのは変わっていない。

「この服が着て欲しいって言ってる。また野球をしたいって」

茜の目が虚ろになっりうふふと微笑んでいる。
綺麗な白の上着を脱いだ茜は最近大きくなってきたのであろう、子供向けだと思われるブラジャーをしていた。
ほとんど裸になった茜は地面に座り込んで足に手をやる。

「んしょんしょ」

と、声を漏らしながら右足、左足とピンク色の可愛い靴を脱いでまた右足、左足と靴下を脱ぐ。
茜の着ているパンツもブラジャーも俺は見たことがなかった。
立つ拍子に見えたパンツは後ろにくまのデザインがあってそのほかはシンプルなようだ。
俺は茜と5歩手前で身体を動かせないでただ眺めているだけだがなにかいけないことをしているような。
そう、しているわけだが・・・。
これは自分の意思ではない。
それだけは確かだ。・・・うん。
ついにブラジャーにも手をかけた。
肩が柔らかいのか簡単に背中のホックを取ってしまう。
そしてパンツも・・・。
俺は目を離した。

「もうやめてくれ・・・茜」

この声は茜の心には届かないとわかっていても言うしかなかった。
おばあちゃんは俺たちが元気にボール遊びをしていると思っているだろうし両親は出かけたばかりだからこの状況が覆ることはないだろう。
ん?あれは男物のパンツか?
どこから出したのか無地のボクサーパンツに足を通しゆっくりと上に引き上げる。
順にやけに長い白の靴下を取り出して履いた。

「お兄ちゃん・・・なんか体が熱くなってきちゃったよ」

小さかった茜の体が少し大きくなったように見える。
錯覚なのか、靴下を纏っている足には少女とは思えない筋肉がついていた。

「まさか、本当に服が身体を変えているのか」

目を疑いたかった。
パンツはもっこりと形を作っていて男性器もあるように見える。
俺の妹、茜が男になってしまった。
何もできない自分に苛立ちが起こった。
一瞬で下半身はむくむくと成長し肉眼でわかるくらい膨張している。
しかし茜はユニフォームの誘いに従うように黙々と着替えている。
顔はニヤついていて嬉しそうだ。
なぜ、なぜ茜は笑っているんだろう。
下半身はスポーツで鍛えられた様な肉体と浅黒い肌に変化している。
パンツから上は少女に似合った白い肌と華奢な体、頬と肩は火照っているのか若干ピンク色に染まっている。
頭から黒色のアンダーシャツを被り袖を通す。
ひと回りもふた回りも大きなサイズの服にすっぽりと収まってしまったかと思うと少女の上半身に厳つい下半身で不気味な姿だった茜はだんだんと違和感がなくなってきた。
悪い意味でな。
少し茶色く汚れが残っているズボンを履き、ベルトを締める。

「お兄ちゃん私ね、この服と一緒に野球がしたいの。応援してくれる?」

茜は少女の顔のまま、いつもの口調で俺に問う。
首から下、アンダーシャツの内側は鍛えられた胸筋があり腕はしなやかさのかけらは微塵もなく野球少年のからだそのものだった。
ニコっと笑い、俺に近づく。

「お兄ちゃん、小さくなっちゃったね」

俺は今年高校生になってからそこそこ身長も伸びてきたとは思うのだが成長した茜のカラダは俺を見下ろしていた。
175はあるだろうか、体自体俺より年上のようだ。
小学生の容姿をした妹に見下ろされている感覚は不気味で、不思議で、恐怖で・・・。

「もちろん私のこと応援してくれるよね?」
「ひっ・・・」

恐怖で喉から小さな悲鳴が溢れる。
このままではまずい。直感がそう感じた。
いや、すでに茜がこうなってしまっている以上まずいではすまないのだけれど。

「そうだ!お兄ちゃんにはあれを着て応援してもらおうかな」

茜はスタスタと俺の横を通り過ぎて何かを拾った。

「じゃじゃーん。チアリーダーだよん」
「ま、まて。落ち着いてくれ。もしかしたらその服にも呪いがかかっているかもしれない」
「呪い?もしかして私みたいに体が変わるような?」
「そうだ。もしそうなったら俺は女になっちまう!」
「えへへー。」

ドサッ。

「へ?」

いきなり身動きが取れるようになって体が地面に崩れた。
振り返ると茜が目の前に来ていて。

「女の子に応援された方が嬉しいからお兄ちゃん女の子になってよ」

立ち上がり逃げ出そうとしたが腰が抜けて立ち上がれそうにない。
茜がビニールからチアの服を取り出して俺に渡そうとしてきている。
急いで手と足で後ろに退く。
一歩、また一歩と近づかれその度に退く。
ドン、ととうとう壁際まで追い詰められた。

「ひ・・・うぁ・・・やめ・・・」

足元に服の一式が落とされた。
その瞬間奇妙な感覚に陥った。
「私を着て」とそう聞こえた。
俺は我を忘れ顔にまとわりついた服をどかす。
着たい。とても着たい。
「私、あの人を応援したい。毎日頑張ってたあの人に少しでも力になってあげたいの」
俺に何をしろと言うんだ。Tシャツを脱ぐ。
「私を着て、そして私と一緒に応援して欲しい」
嫌だ。ダメだ。ダメだダメだ。俺は茜を取り戻す。ズボンを脱ぐ。
「チアで、一番あの人に熱い応援をしたいの」
俺は女にならないぞ。こんな呪いにも負けない!!茜を取り戻すんだ!

俺は立ち上がり服を地面に叩きつける。

「お兄ちゃん。」

背後から茜の声がした。

「応援してよ。茜のこと嫌いなの?」
「茜・・・。俺はお前を取り戻す」
「嫌よ。私はこの服に誓ってまた甲子園を目指すの。でもそれにはお兄ちゃんに応援してもらいたくて」
「くっ・・・。助けを呼んでくる!」

家にいるはずのおばあちゃんに助けを呼びに行けばこの服のこと、なんとかなるかもしれない。

「ダメっ!!」
「ぐっ」

肩を掴まれて押さえ込まれる。
そのまま体制を崩してしまい背中から倒れる。

「お兄ちゃん危ない!」

力が制御できていないのか茜は俺の身体を倒したかと思うと次はそっと背中に腕を回し受け止めてくれた。
でもこの体勢は茜に覆い被さられる形になって・・・。

「きゃあっ!?やめてっ」
「どうした?」

いきなり茜の様子がおかしい。
茜は地面に倒れた俺を支えていた腕を隙間から抜いて、そのまま頭を抑えている。

「くるしい、私の中に誰かが・・・」

どうやら精神を乗っ取られそうになっているみたいだ。
しかし俺は茜の四つん這いに挟まって抜け出そうにも動けない。

「はぅ・・・せっくす、したい・・・?」
「なっ!?」
「ナにコのきモチ・・・。抑えらレない・・・」

ビリッ
茜は俺のパンツを素手で破った。

「何してる・・・。」
「お兄ちゃん。これ着て。はやく」
「さっき嫌だっていっただろ」

「はやくきてよぉ!!!!」

大声で叫ばれた。
どうやらほかの手段はないらしい。
女にされたら先程の茜の発言からすると犯されるのだろうか。
渋々地面に叩きつけてあったチア服の中からパンツを手探りで手に取る。
やけに小さい。
それに気づき茜が俺から乱暴に奪う。
茜は息が荒く視線が安定していないし冷や汗を掻いている。
パンツは伸縮性が強いらしく簡単に俺の足を通過し、股間まで運ばれた。
また先程のような奇妙な感覚に襲われる。
比べ物にならないくらい強い力で何かが俺に迫ってくる。

「ありがとう。願いが叶います」
「お前のためじゃねぇよ。茜が苦しそうなんだ」

服の魂みたいなやつがどう思おうが勝手だ。
股間の感覚が変わりお腹のかなでぐるぐると何かが蠢いているような感じだ。
それにおしり周りがやけに太った感じがする。
そうか、女になってるんだ・・・。
あぁ、早く楽にしてやりたい。
お兄ちゃんとして妹を不気味な危険から守ってやれなかったんだ。
俺も報いを受ける覚悟で・・・。

「はぁ・・・、はぁ・・・。」
「あなたには迷惑をかけるんですもの。やりやすくしてあげるわ」と服の声。
「それはどういうことだ?」
「あなた、妹さんのことがお好きなのよね?」
「あぁ、いまも呪いから開放させてやりたい気持ちでいっぱいだよ」
「そう、なら彼女の呪いを解くように現実に対する願望を叶えてあげなくちゃなの。そのためにあの身体を癒してあげて」
茜がこちらを見ている。

「ねぇ、これもつけてよ」

声変わりしている大人の男の声にブラジャーを差し出された。
茜の顔が男だ。
ははは、結構イケメンじゃないか。
それとなく面影もある。
自分の成りに気づいていないのか。
それとも操られているのか。

「いいよ、喜んで」

俺はもう決心した。
どうせ戻るには妹に取り付いた呪いの欲望を満たすまでは解決しないんだろう。
茜は立ち上がって手を差し伸べてきた。
その手に捕まる。
ゴワゴワとした手だ、妹のものではない。
腕には鍛え上げられた筋肉がはっきりと見て取れる。
俺も立ち上がると焦点の合わない茜の表情をみた。
苦しいんだろう。辛いんだろう。
急いで形の合わないブラに手を通した。
手が震えているせいか中々ホックがハマらない。

「止めてあげる」

俺は茜に背を向けてブラのホックを締めてもらった。
ブラは重さで俺の肌に触れると吸い付くように張り付いてきた。

「はぁ・・・はぁ・・・」

ガッとうしろから羽交い絞めにされたかと思うと胸を揉まれた。
乳首がチクっとしたなと思ったが未来は予想できていた。
平らだった俺の胸は揉まれるたびにだんだんと膨らんできた。
何回か揉まれ続けて気づいたら拳くらいのサイズにはなったのだろうか、結構な大きさだ。
それにつられ俺も呼吸が荒くなってきた。

「もうちょっと優しくしてぇ・・・」
「ごめん、でも」
「もう大きくならないよ・・・」
「そうだね」

体から離れた茜はすぐにチアの服を持ってきた。
まあ、着るんだろうけどさ。

「スパッツはいらない」

上を着てスカートの前にスパッツを履こうとしたらそう言われた。

「私以外誰も見てないから平気」

スカートを履いてスニーカーも履いた。
二人は誰かが見ていたら青春真っ盛りの野球少年とチアの少女にしか見えないんじゃないか?
いつの間にか俺の髪の毛は女の子みたいにさらさらとした綺麗な髪を垂らしていた。

「だめ・・・もう我慢できないよ」
「いいよ、その代わり試合頑張ってね」
「もちろん」

壁に寄りかかっていた俺は茜に覆い被されてしまっている。
茜から見ると俺は可愛い女の子なので無理もないか。
いつの間にか自分も準備できていたようだ。
服を着せられてすぐに剥ぎ取るってどういうことだよと思ったがまあそういう事なんだろう。
チアとして茜を心身ともにケアするってことか?
いいよ、もうすでに俺からは茜が妹ではなく幼馴染の男子のように思えてきているんだ。

ゴクンと喉を鳴らす音が聞こえた。
なんだ、襲うのかと思ったら茜も緊張しているのか。

「ここでしょ?」と茜の手を俺のあそこへ触らせる。
「や、やっぱり・・・」
「なに?ここまでさせて恥をかかせるつもりなの?」
「・・・ありがとう」

お礼を言われても嬉しくないし・・・。
ユニフォームから姿を現した茜のアソコはひどく生臭い匂いをしていた。
我慢しすぎたとか?もういいよ。と茜を気遣い無理矢理に心の準備を間に合わせた。
茜と体を混じり合わせた瞬間頭に誰かの記憶が流れ込んでくる。

「あ、あれ・・・?俺・・・」

急に体の力が失われた。
茜も電池が切れてしまったかのように俺に体を体を預けながら床にずり落ちる。
薄れゆく意識の中、流れ込んできた記憶はおばあちゃんの若い頃の記憶であることに気づいた。


目が覚めたのはおばあちゃんちの寝室だった。
茜はすでに起きてしまっていたようで布団にはいない。
リビングに行くとおじいちゃんとおばあちゃんと俺の姿をした茜がいた。

「茜・・・?」

ふと気がついた。
口から発された俺の声は幼い女の子の声、茜だった。

「何言ってんだ、茜はそっちだろ」
「寝ぼけているのね、さあさ朝ごはんおたべ」

なんだ?気を失う前の出来事が夢なのか・・・いや、現に俺はいま茜の体の中にいる。
じゃあ目の前の俺は茜なのか?とそう考えての発言も一蹴された。
ということは目の前の俺は茜じゃなくて普通の俺で・・・ってことは茜の体にいる俺は・・・。
朝ごはんを食べようと箸を持つと手が言うことを聞かない。
そういえば茜は左利きだったな・・・目の前の俺は右手で食べている。
っていうかこの状況はなんなんだ?
おじいちゃんは一向に目を合わせてくれない。
おばあちゃんは終始笑顔のまま朝ごはんを食べ終えた。
食が進まない。いつもなら朝ごはんなんてさっさと食べてしまえるのに口が小さくて少しずつしか食べれない。
やっとの思いで食べ終わり、食器を片付けた。
するとおじいちゃんが居間の方から手招きしているのが見えた。

「なあお前さんは茜ちゃんじゃないんだろう?」
「えっ」

驚いた。感づかれてしまったのか?目を合わせてくれなくて怒っているのかと思った。

「怒ってるんじゃなかったんですか?」
「怒っているさ。怒っても仕方ないがな」
「茜は・・・茜はどうしたんですか?」
「・・・すまない」
「・・・それはどういう?」
「いまはちと確信できないから詳しくはまた後日話す。すまないというのはその間茜ちゃんの体で過ごさなくてはならないということだ」

後日聞かされた話によるとおじいちゃんは過去に霊媒師の仕事で悪霊が逃げ出していてその際に二つの服に夢を見させる呪いをつけていたようだということ。
俺が体験した出来事は若い頃のおじいちゃんとおばあちゃんの思い出と入れ替えてしまう呪いによって起こったことだとわかった。
悪霊によって重度に取り憑かれてしまった茜は記憶の混乱により自分を俺だと勘違いしていたようだ。
全部が全部信じちゃいない。
おじいちゃんの話が本当か怪しい部分があるから。
しかし俺はいまだ茜の体でいる。
今後も戻れないでいるのだろうか。

おじいちゃんおばあちゃんの名前から入れ替わってることを瞬時に理解できた人は強者

完結のさせ方の無理やり感が否めない





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