笑の侵略者2

作:Zyuka




『やめて、やめて!!』

 体育教師の逞しい胸元に、幼い顔立ちの少女の仮面がつけられる。

 逆に、体育教師の仮面は幼い一年生女子の胸元につけられてしまう――

「サア、コレデウルサイノハイナクナッタ。サア、オマエノヨクボウヲカナエテヤロウ!」

「ハイ、ワタシノヨクボウハコノヒンソウナカラダヲリッパナスポーツショウジョノニクタイマデニキタエルコトデス!」

「ヨカロウ、コノオレノヨクボウハセイトトモットフレアウコト! オマエガムキムキニナルマデワンツーマンデキタエテヤル!」

「ウレシイ! ヨロシクオネガイシマス! センセイ!!」

 自分以外の肉体につけられた仮面は、動くこともしゃべることもできなくなる――しかし、意識はあるらしい――よく見ると、瞳が動いている。ほとんどの仮面が、勝手に動く自分の肉体を悲しそうに見ている。




 茨の量は膨大だが、人に絡みつき襲う時にはそこに集中していくので、その隙に逃げる事が出来る――逆に言えば犠牲者を出しながら進めば、助かるという事だが……


 胸元に美少女の顔をつけた男子生徒が、変な踊りを踊っていたり、胸元に男の顔つけた少女がちょっと書けないようなことをしていたり、担任教師さえも犠牲になってしまってるようだった。

「キョウシダカラトカセイトノタメダトカイッテコクハクヲガマンシテイタヤツハイナクナッタ! コレカラオレハエークミノスズカセンセイニコクハクスル!!」

 黒い服の胸元に、女子生徒の仮面をつけた先生が教室を出ていこうとするのを、胸に先生の顔をつけた女子生徒が押しとどめている。

「ジカイノテスイトモンダイヲオシエテクレルマデハナシマセン! ワタシハドンナテヲツカッテモ、ツギノテストデヒャクテンヲトラナキャイケナイノヨ」

「アイシテル、ブチュウ!!」

「ダイスキ、チュパチュパ!」

 男子生徒と女子生徒がいちゃいちゃしている。だが、男子生徒の胸には女子生徒の仮面が、女子生徒の胸には男子生徒の仮面がつけられている――

「「アイシアッテイルノニヒトメヲキニシテイチャイチャデキナイナンテコノカラダノアルジトハミトメラレナイヨネ」」

 二人は鋭く細めた目で見つめ合い、三日月のように笑いの形に固めた口でキスをする――本来の恋人たちの意識は、お互いの体につけられた仮面の中でその異様な愛の営みを、何もできずに見つめているだけだった――


 男子生徒に絡みつく!

『オレダケデモニゲタイ! オレダケデモタスカリタイ!!』

 その男子生徒の胸に現れた仮面が、そんな事をしゃべりだす!!

「おい、それじゃ俺がまるで他人を犠牲にしても逃げ出す卑怯者みたいじゃないか!!」

『オレハ、ソウイウヤツダ!』

 仮面が光り、男子生徒と仮面の意識が入れ替わる!!

「サア、ニゲルゾ!! オレダケハ、タスカルンダ!!」

『や、やめろ!!』

 周りに、取り替える仮面がなかったからだろうか? その男子生徒の体はとっととその場から逃げ出すしてしまった。


「センセイ! ワタシ、グレテイタジブンヲハンセイシテイルンデス! コレカラモウベンキョウシテリッパナコウコウニハイッテオヤヲアンシンサセマス! ダカラベンキョウヲミテクダサイ!」

「ヨクイッタ! オレノチシキヲゾンブンニキュウシュウスルガヨイ!」

 中学生にしてみればはっきり言って派手と言わざるを得ない化粧を顔にした女子生徒が、1年D組の担任教師に教えを願っていた。

 もちろん、女子生徒の胸元には教師の仮面が――そして、教師の胸元には女子生徒の仮面が張り付いていた。


(すごく強く揉まれている……これなら俺のおっぱいも大きくなるよなぁ)

 女子生徒の胸を揉んでいるのは、その胸元の仮面にある男子生徒も意識の、本来の肉体だ。

 だが、男子生徒の意識はおっぱいを大きくしたかった女子生徒の欲望に飲み込まれていき、おっぱいを揉まれるのが女子生徒の欲望なのか、自分の欲望なのか分からなくなっていた……

(女の子の胸を揉むのって楽しいな)

 女子生徒の意識も、男子生徒の胸元で本来の自分自身の体の胸を揉み続けている感触を味わいながら、ゆっくりとしかし確実に男子生徒の欲望に同化していく……

 やがて仮面は……仮面の中に閉じ込められていた本来の意識は……唯一開いていた瞳さえ閉じ、完全に、仮面の中にあった意識に支配されてしまう。


 自分をスポーツレディにしたかった女子生徒も、そんな彼女の密着コーチを引き受けていた体育教師も、意識はその入れ替えられた肉体に溶けてゆき、仮面の意識の支配下に落ち、瞳を閉じる――


 黒い茨にとらわれ、そこから生まれた仮面の意識に体を乗っ取られ、他人の体に押し付けられた意識は、自由にならない肉体の中でその肉体の欲望などにさらされて――やがて溶け込み、完全なる支配を受け入れてしまう――









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