僕色に染める Tira 3.誘惑 「ただいま」 「おかえりなさい。今日は遅かったのね」 「ああ。仕事が忙しくてな」 「ご飯、まだでしょ? 先に食べる?」 「いや、風呂に入ってからにするよ」 我が家に帰り、妻を目の前にすると少し気分が和らぐ。奥田は妻に服を預けると、風呂に入った。白い天井を見ながら目を瞑り、今日の出来事を思い出す。 他人の肉体を操り、本人の意図しない言動をさせる事が出来るなんて――。 現実味のない事実に翻弄される。これが彼女の演技ならば大した役者だ。そんな事を思いながら、奈津実のブラウスが肌蹴た姿を瞼の裏に映し出した。 若い女性の下着姿なんて、妻以外ではアダルトビデオでしか見た事がない。しかも、自分の部下であり、部署の中では一番の美人だと思っていた女性だ。彼女が好意を持ってくれていた事は嬉しかったし、もしかしたら……等と想像する事もあった。もちろん、妻を愛しているし、浮気なんてしたら奈津実自身も不幸になってしまう。そう思っていただけに、角谷が「二人だけの秘密」と称しながら彼女の肉体を思うがままに操り、見せ付けられた瞬間は怒りと興奮に苛まれた。 角谷が残した「彼女の肉体でオナニーをしながら記憶を書き換える」という言葉。 彼は奈津実の身体を彼女の目を通して見つめ、男性では想像出来ない女性の性感を欲望のままに手に入れるのだろうか。 白藤奈津実が裸体になり、オナニーするシーンを思い浮かべる。 彼女が切ない声を漏らしながら蜜壷から溢れる愛液を指に絡め、敏感になった小さな肉豆を弄り、ビクビクと全身を震わせオーガズムに達する。 「うっ! はぁ、はぁ、はぁ……」 彼女の淫らな姿を想像しながら肉棒を扱いていた奥田は、やるせない気持ちで湯船の中に漂う白濁液を眺めた――。 その頃、一晩留守にしていたワンルームマンションに着いた奈津実は、普段通り小さなクローゼットにスーツを片付けると、ブラウスと下着を洗濯機に入れ、化粧を落とした。一糸纏わぬ姿でポニーテールの髪を解き、頭を左右に振りながらコンビニで買ってきた弁当をレンジで温める。 「ごめんな白藤さん。いつもは栄養を考えて食べてるのに。さて、今のうちに……」 彼女はタンスの引き出しを一つずつ開け、綺麗に畳んで仕舞っていた下着や普段着を嬉しそうに眺めた。 「休日に僕とデートする時は、スカートよりもズボンにしてもらうか」 姿見の前で、白いスキニージーンズを身体に当てて楽しんだ奈津実は、座布団代わりに使っているクッションをフローリングの床に敷き、丸いテーブルに温めた弁当を置いて食べ始めた。 「全裸でコンビニ弁当を食べる白藤さんか。本人が見たらどう思うだろうな」 弁当を食べながら、両手で身体を撫で回すと、脇と尻の間に少しの湿り気があった。股を広げるとピンクの肉襞が露になる。角谷はその肉襞を彼女の指を使って左右に開くと、前かがみになりながら中に続く肉壷を覗き込んだ。 「待っててね白藤さん。昨日と同じ様に、後でここを気持ちよくしてあげるから。僕と白藤さんは一つなんだ」 ニヤリと笑った彼女は弁当を食べ終わると風呂で綺麗に身体を洗い、ベッドに寝転んだ。 「じゃあ……始めるか」 スマホを手に取った彼女は、テレビ電話の画面にすると電話を掛け始めた。 「もしもし。……角谷か」 リビングで寛いでいた奥田は眉を顰めながらスマホを手にすると、髪を解いた奈津実が映る画面を見た。 「はい課長。今、お時間大丈夫ですか?」 聞きなれた奈津実の声で角谷が話す。 「……白藤さんの部屋か」 「そうです。今から白藤さんの身体でオナニーをするので、良かったら課長も見てくださいね」 「なっ!」 奥田のスマホに彼女の顔が映り、その映像がゆっくりと下に移動する。ベッドに寝転がる彼女の胸が見え、すでに乳首が勃起している様子が伺える。更には下腹部、そして股間から足先までが惜し気もなく映し出された。 「どうです? これが白藤さんの身体です。ほら、会社で話していたほくろです」 細いフェストを捩じると滑らかな尻が現れ、小さなほくろが見えた。 「それに……見えています?」 今度は股間を拡大した映像が映し出された。非常に細い陰毛が薄っすらと生えているだけで、女性器が丸見えだ。 「角谷っ。お前……」 「見たくなければ電話を切ってくださいね。全体が見えるように、ここに置いておきますから」 彼女は丸いテーブルを引き寄せ、その上にスマホスタンドにセットしたスマホを置いた。ベッドが横から映し出されるアングルで、彼女が仰向けに寝転がっている姿が見える。 「どうしたのあなた?」 「えっ! いや……何でもない。会社の部下が電話を掛けて来たんだ。明日の会議について確認しておきたいんだと……」 トイレに行っていた妻に話し掛けられた奥田は、あわててスマホの音量を下げ、画面を隠した。 「そうなの。それじゃあ私は先に寝ててもいい?」 「ああ、電話が終わったら寝室に行くよ」 「おやすみなさい」 「ああ、おやすみ」 心臓が止まりそうになった奥田は、妻が寝室へ移動した事を確認すると、改めてスマホの画面を見た。 そこには、内股に足を閉じ、両手で胸を弄る裸体の女子社員がいた。 「あっ……はぁ。んっ……んん……」 音量を上げると、普段は聞く事のない奈津実の切ない喘ぎ声が聞こえる。 「はぁ、あっ……。角谷先輩……。もっと弄ってください。私の感じるところ、全部触って欲しいんです」 いやらしく身体を撫で回す彼女の両手が、大きく開いた足の付け根に迫りそのまま股間へと移動する。 「んっ! あっ、ああっ。そこっ……角谷先輩っ。あはっ…大好きっ」 少し尻を上げながら快感に酔いしれる彼女は身体を横に倒すと、片膝を立て、股間をスマホに映し出した。 「ここ……クリトリス。ほら、こうして皮を剥いて……あんっ!」 左手の二本の指で赤く充血した肉豆の皮を剥き、愛液で滑った右手の指で擦る。その様子を見ていた奥田は、ソファーに座ったまま下半身を晒し、勃起した肉棒を扱き始めた。 「んっ、んっ。角谷先輩っ、角谷先輩っ!」 右手の動きが早くなる。左手の指が勃起した乳首を力強く摘み、捻じる様に刺激している。 「ああっ! 和弘先輩っ。イクッ…和弘先輩に弄られてっ……。私っ!」 彼女の脳裏には、角谷に弄られるシーンが映し出されていた。彼のテクニックに打ちのめされる自分の姿がインプットされ、角谷和弘という先輩が自分の彼だと言う認識を植え付けられる。 「イックゥ!」 奈津実の身体がビクンと跳ねた。 「あっ、あっ、あああ〜っ」 額に汗を滲ませ、クリトリスによるオーガズムを得た彼女は、何度か身体を震わせながら大きく息をしていた。 その一部始終を見ていた奥田も、風呂に続いて二度目の射精を終えた。妻が二階の寝室にいると言うのに、部下である女子社員のオナニーを見て射精するなんて――。 罪悪感と興奮が入り乱れる中、もう一度スマホの画面を見ると、奈津実がスマホに尻を向け、四つん這いになりながらオナニーを始めていた。今度は二本の指を肉壺に捻じ込み、グチュグチュといやらしい音を立てながら何度も出し入れしている。 「あっ、あっ、和弘っ! 和弘っ! 気持ちいいのっ。そうやってオマ○コをグチュグチュされたらっ……あっ。またイッちゃう」 内腿に愛液が滴り、肛門がヒクヒクと動いている。肉体を支えていた肘が折れ、敷布団に顔を押し付けながら必死にオナニーをする奈津実の姿に、またしても奥田の肉棒が反応し、血液が急速に充満した。 「何ていやらしい姿なんだ。あの白藤さんが裸であんなに足を開いてっ」 「んっ! あっ、ダメッ。激しっ! あっ、あっ、んあっ!」 スマホには映っていないが、激しい喘ぎ声から甘美の表情が容易に想像できる。会社で見ている彼女とは全く異なる妖艶で淫乱な姿は、奥田の理性を消し去るに十分な破壊力を持っていた。 「イッちゃう。イッちゃう。あっ、んっ、ん、ん、んっ……あっ……あああっ!」 両足の爪先に異常なほどの力が入っている様子が伺える。肉壺を掻き回していた右手が存分に濡れ、手首からは粘り気のある透明な愛液が何度も布団へと滴り落ちていた。 「あはぁ〜。和弘ぉ〜、気持ちよかったのぉ……」 ビクビクと身体を震わせ、鼻に掛かった甘えた声で角谷の名前を口にした奈津実がゆっくりと起き上がると、スマホの前にしゃがみ、快感に火照った顔を映し出した。 「んふっ。私のエッチなお汁がいっぱい付いた指だよ。甘酸っぱくて美味しいの!」 乱れた髪をそのままに、奈津実が奥田に見せ付けるように指を咥え、いやらしく舐め回る。 「私、もう和弘しか見えないからね。明日はもっと激しく和弘に愛してもらうの。すごく楽しみ! じゃあねっ」 そこで電話が切れた。 「はぁ、はぁ、はぁ……」 リビングの床に、薄っすらと白い精液が散乱している。奥田はソファーから立ち上がると、息を弾ませながらウェットティッシュを手に取った――。 4.承諾 「課長、おはようございます」 「……ああ」 次の日、奥田がオフィスに入ると、昨日と同じ様に奈津実が仕事を始めていた。今日はライトグレーのパンツルックだ。 「電話、最後まで切りませんでしたね」 その言葉に、何も言い返せない。 「課長もかなり激しく扱いていましたね。まだまだ若い証拠ですよねっ」 「なっ!」 「テレビ電話ですから。相手の様子も見えてますよ。僕が奈津実の身体でオナニーしているところを見ながら、課長もオナニーしたんですよね。全部見えていました。良かったでしょ?」 「も、もう何も言わないでくれ。俺は……」 「素直になってくださいよ。僕だって逆の立場なら絶対にオナニーしてますから」 彼女の口から恥ずかしげもなくオナニーと言う言葉が出てくる事に、次第に違和感を覚えなくなってきた。まるで、角谷が奈津実の肉体を支配している事が当たり前の様な錯覚さえ覚え始めた。 「なあ角谷。もう記憶の書き換えは終わったのか?」 「まだ……もう少し掛かります。でも、奈津実は僕の事をかなり素直に受け入れてくれる感覚はありますね。こうして下の名前で呼んだ方がしっくりきます」 「奈津実と和弘……か」 「ですね」 「じゃあ俺への感情は……」 「好きと言う感情は殆どないと思います。課長に……というか、年齢の離れた男性が好きだと言う感覚が無いっていう感じですね」 「……そうか」 奥田は席に着くと、深いため息をついた。 正直、気持ちが淀んだ。彼女と浮気がしたかったわけではない。最初から叶わぬ事、叶えてはならない事だと分かっていても、彼女とは淡い恋愛感情を持っていたかった。二人だけで共有出来る、とうに忘れていた甘い雰囲気を感じていたかった。 「おはようございます」 他の社員が出社すると、奈津実は普段どおり「おはようございますっ」と元気に挨拶をしていた。そして、女子社員には角谷と互いの肉体を求め合い、相思相愛である事を言い広めた――。 その日の夕方、煮え切らない思いをしていた奥田に奈津実が話しかけてきた。 「課長、今日は忙しいですか?」 「何がだ?」 「実は課長に協力してもらいたいと思いまして」 「協力?」 「はい。小会議室で話してもいいですか?」 「…………」 何を企んでいるのか。奥田は投げ遣りな気分で角谷の話を聞き始めた。 「座って話をしませんか?」 「座るまでも無い。早く言えよ」 奥田はズボンに手を入れ、彼女に背を向けた格好で立った。 「分かりました」 彼の後ろに立った奈津実は、両手を前で揃えて話を始めた。 「先ほども言いましたが、課長に協力して欲しいんです」 「だから何のっ」 苛立ちを乗せた奥田の声に、奈津実は動揺する事無く次の言葉を口にした。 「擬似的に僕の代わりをお願いしたいんです」 「……意味が分からん」 「僕の事が好きになるように記憶を書き換える効率的な方法なんです」 「あのなっ。どうして俺がお前に協力しなければ……」と強い口調で断わろうとした最中、「私とセックスして欲しいんです」という言葉が彼女の口から飛び出した。 「……何て言った?」 振り向くと、彼女は軽く微笑みながら視線を合わせてきた。 「それじゃあ白藤奈津実として話しますね。私はもう少しで和弘の事が好きになれます。でも、完全に記憶の書き換えが終了するには、彼とのセックスが必要なんです。でも彼は魂が抜けて肉体が動かない状態ですよね。だから奥田課長……彼の代わりに私を抱いて欲しいんです」 「な…何を馬鹿げた事……」 声が震えた。 「私は奥田課長の事を和弘と言います。奥田課長は私を奈津実と呼び捨ててください。私の部屋で……昨日、私がオナニーをしたベッドで犯してください」 「ほ……本気で言ってるのか」 「はい。必要なら……奥田課長とのセックスシーンを録画してもらっても構いません。もちろんその時は、和弘じゃなくて、奥田課長と言って喘ぎます。別に奥田課長の下の名前でもいいですよ」 「いや……しかし……」 心の中で返事は決まっていた。しかし、それを言葉にすると全てが壊れてしまう様な気がした。 「奥田課長が嫌なら、別の人にお願いするだけですけど。セックスできたら誰でもいいので。でも折角なら……慎二と……」 下の名前で呼ばれた奥田の鼓動が激しく高鳴った。 「奥田課長、今だけ慎二って呼んでもいいですか?」 「……あ、ああ」 「恋人同士の様に、タメ口でお話しても大丈夫ですか?」 「い、今だけならな……」 「ありがとうございます。それじゃあ少しだけ練習させてくださいね」 「練習?」 「はい。……ねえ慎二っ。慎二といたら身体が疼くの。少しだけでいいから慰めて」 「なっ……。おいっ、慰めてって……」 「上からでいいから摩って欲しいの。私も慎二のオチン○ン、摩ってあげるから」 彼女の手がズボンの前を摩り始めた。若い女性の滑らかな手が、生地越しに肉棒を撫で回っている。その信じられない光景に興奮する奥田だが、彼女の身体に触れる勇気が無かった。 「ねえ慎二。触ってくれないの?」 「い、いや……。そう言われても……」 「直接でもいいよ。ほら……」 奈津実は奥田の股間を撫でながら、空いている手でライトグレーのパンツのボタンを外した。更にファスナーを下げた彼女が奥田の手首を掴み、その中に差し入れようとする。 「お、おい……」 慌てて手を引いた彼に、奈津実はクスッと笑った。 「見てたでしょ、私の股間。殆ど毛が生えてなくて恥ずかしいんだけど……。慎二なら好きにしていいからね。はい、どうぞ」 彼女は肩幅ほどに足を開くと、手を入れやすい様にピンクのパンティを前に引っ張った。 「い…いいのか。俺が白藤さんの……」 「白藤さんじゃないでしょ。奈津実って呼んで。あ、ちょっと待ってね」 思い出したかの様な表情をした彼女は奥田の手を掴むと、「乾いていると痛いから」と言って、彼の中指を口に含んだ。 「うっ……」 少しラメの入っている、パステルピンクの口紅が塗られた唇。その唇に銜えられた指が生温かい舌で執拗に舐られる。指を舐められる事がこれほど気持ちのいいものだとは思っても見なかった彼は、奈津実の歪んだ眉を見ながら酔いしれた。 「んふっ。これでいいわ。ねえ慎二……」 彼女が目を閉じ、先ほど指を咥えていた唇を尖らせた。叶わない筈の事情が現実のものとなる――。奥田はゆっくりと顔を近づけると、彼女の唇に自分の唇を合わせた。 何て柔らかい唇だろうか――。マシュマロの様な弾力を感じていると、奈津実が彼の手をパンティの中へと導いた。手の甲には滑らかな生地の感触。そして指の腹には温かい彼女の下腹部がある。 奥田はそのまま指を動かし、更に奥へと手を忍ばせていった。 「んふっ。ん……」 指先に触れる小さな肉豆の感触。指の腹で円を描くように撫でると、彼女の腰が自然と前後に動き始めた。 「あっ、慎二っ」 奈津実が唇を開き、舌を入れ始めた。互いの舌が絡み合い、粘り気のある唾液が口内に溢れる。 彼女の手で扱かれる肉棒がはちきれんばかりになると、ズボンにその形状が浮かび上がった。 「んっ……。慎二のオチン○ン、おっきいね」 そう言って、もう一度ディープキスを始めた。奈津実の手がズボン越しに肉棒を掴む様に扱いている。 「あふっ。そこ、気持ちいい……」 パンティに忍ばせた指に粘り気のある愛液が絡み、動かしやすくなった。更に奥に忍ばせた指が、肉壺の中に入り込むと、奈津実は「んふぅ!」と篭った喘ぎ声を漏らした。 もう止まらない――。 右手を前後に動かし、彼女の下腹部を震わせる様に刺激する。相当気持ちがいいのか、奈津実は扱いていた手を、パンティに奥に忍び込んだ手に沿わせた。 「慎二っ。すごいっ……あっ。パンツが汚れちゃうっ」 「すごく濡れてるぞっ。気持ちいいのか?」 「うんっ! すごく気持ちい…いのっ。そんなにしたらっ」 ライトグレーのパンツに薄黒いシミが出来始めた。クチュクチュと水音が鳴り、爪先立ちになった彼女が奥田の胸に顔を押し付ける。 「はあっ、はあっ。あっ……んっ……。イ……イクッ!」 その言葉に夢中で手を動かした奥田は、オーガズムによって反り返った奈津実の身体を強く抱きしめた。 「あぁ……あっ。ああ……あはぁ……」 虚ろな目をした彼女の熱い息が顔に掛かると、奥田はまた唇を奪い、激しく舌を絡めた。このままテーブルに押し倒して、奈津実を奪いたい――そんな衝動に駆られたが、彼女は軽く奥田を突き放すと、「その気になってくれましたね。課長、後は奈津実の家に行ってからです。もちろん来てくれますよね?」と言い、悪戯っぽくウィンクした――。 (続く) |