吸 収 作:N.D 人通りの少ないT字路の隅で、男性は目的の人物が通るのをまっていた。 男性の肥満体型は壁に隠しきれているか疑問で、おそらく明日には不審者として近所中に伝えられるだろう。 …最も、今からする事が成功すればそんな心配などしなくても大丈夫だ。 「…きた!」 男性の目当ての女性がやって来た。 いつも人気の少ないこの時間に仕事から帰ってくる小柄なOLの美女。 毎日彼女が帰宅する姿を見ていたが、名前も家も知らない赤の他人だ。 無用心な事に女性は携帯を触りながら歩いており、一応ながら物陰に隠れていた男性に気づかずに通りすぎてしまった。 「……」 もう一度、辺りに人がいないか確認してから女性を追いかける。 それでも女性は携帯に夢中で、後ろにいる男性が上着のボタンを外してお腹を露にしているのに気付かない。 好都合だと思った男性は、思いきって後ろから女性を抱きしめるように取り押さえた。 「捕まえた!」 「んん!?……んっんぅ〜!」 突然の出来事に混乱し叫ぼうとするも口を押さえられうめき声しか出せない。 振り払おうにも男性と彼女には身長差がありすぎた。 自分の胸元位までしかない女性を自分の腹部に押し当てる。 「うひひっ!凄い!始まったぞ…」 男性のお腹が波紋をうったかと思うと、女性の身体がお腹にズブズブとめり込み始めた。 「っ!?んん!ん〜…!」 未知の現象に対する恐怖と混乱から半狂乱となり暴れようとするが、男性の腹部に触れた背面は服ごと「同化」していて満足に動かせない。 更に男性は口元を押さえている手に力を入れ、胸元に女性の後頭部を優先して沈めていく。 「んぐっんん〜んー!」 「うわ!そんな事してももう遅いって…」 男性の目的を察した女性は涙を流しながら今まで以上に激しい…無駄な抵抗を始める。 「ん……」 「っ…よっと…うわ!」 構わずしっかりと頭を押し込んで完全に飲み込んだ瞬間、首から下がビクンビクンと激しく痙攣し始めた。 驚きながらも迷わず女性の手足を自らの身体に押し当て同化させていく。 暫くすると今度はだらんと女性の身体から力が抜けた。 「頭が無くなったからなのかな?ひひひ!」 頭部と手足を吸収し、抵抗しなくなった胴体だけが残った女性の身体。 レリーフの様な状態のソレを、ふとした思いつきで撫でまわす。 「あ、凄い。もう感覚が繋がってきてる…ふひ、ひひ…」 最初のうちは、初めて胸を触った感触や触られる感覚を恐る恐る確認していたが、次第に馴れてきたのか手つきが大胆になり始める。 「はぁ、はぁ…柔らかい、はぁ…」 息を荒くしながら女性の胸を楽しそうに揉む。 意識がないはずの身体が嫌悪感を示す様に身をよじるが、逆にそれが男性の欲求を満足させてしまう。 「うっ…!…ふぅ…」 スッキリした表示で軽く身震いした男性は、満足したのか女性の残りの胴体を一気に押し込んだ。 咀嚼するかのように激しく波打つ腹部をポンポンと満足気に擦る。 「ひひ、ご馳走さま」 女性を完全に取り込んだ後、男性は一息つきながら自分のお腹を愛おしそうになでた。 「由紀って名前なんだ…一人暮らしで家も近い…」 自分の一部となった女性の記憶を読み取りニヤニヤと笑みを浮かべる。 男性は由紀という名前の女性の全てを手に入れたのだ。少し意識しただけで年齢やスリーサイズ、最近気になる事から初体験の相手まで自分の記憶と同じ感覚で思い出せる。 「えっと…こうかな?」 そう言って集中する仕草を見せた男性の身体に変化が起こりだした。 熱を加えた飴細工のように全身の輪郭が溶け崩れる。 グチュグチュとグロテスクな音をたてながら、全身の肉が服ごとお腹に集まるように移動し、吸い込まれるように消えていく。 段々と贅肉に覆われていた肉体が細身になり、比較的大柄だった身長も下がっていき、どんな原理なのか元の大きさより何回りか小さな肉塊へと変貌した。 更に変化は続く。粘土を捏ねて、整形していく様に、はっきりと方向性をもって形を変化させていく。 細くしなやかな手足、起伏のあるスタイルの良い身体… 「…ふぅ、成功した♪」 肉体の変化が終わると、そこには男性ではなく取り込まれたはずの女性が立っていた。 「うん、やっぱり由紀さんにして正解だった!」 整った顔に似合わない種類の笑みになりながら身体のラインにそって身体を撫で上げていく。 「ふひひ……続きは「私の」家でやっちゃお♪」 男性に取り込まれた由紀と言う名の女性は、軽やかな足取りで自宅へ向かう。 「「私の」身体ってスタイルが良くて凄く軽い!」 自分の本来の身体との違いに、悦びの声を出す。 普段の「自分は」歩く事すら体力を使ってしまう。ハイヒールでなければ悦びのあまり走っていただろう。 マンションの「自分の」部屋に足を踏み入れる。 部屋自体は、いかにも普通の若いOLが一人暮らししている部屋、といった内装だ。 しかし、部屋の主である女性は、自分の部屋に興奮を押さえきれずにいた。 「凄い…本当に記憶の通りだ。」 一度取り込まれた女性は、身体や記憶を男性の一部にされてしまう。 今ここにいる女性は、男性でありながら由紀本人でもある。 「ふひひ、いい匂い…」 早速、引き出しの中から下着を取り出して香りを嗅ぐ。 「自分の下着でこんなに感じちゃった。」 スカートをめくり上げると、下着がぐっしょり濡れていた。 ショーツを脱ぎ捨て、記憶を頼りに股関に指を入れる。 「あっ…あぁん…これが女の…」 そのまま割れ目の中に入れた指を掻き回す。 「あっ、あっ、…」 男にはない快感に、勝手に声が出る。 「ぁ、…はぁっ、はあぁぁぁんっ!」 声と同時に、ビクビクと全身を痙攣させながら絶頂を迎えた。 「はぁはぁ、」 荒い息を吐きながら指を引き抜くと、愛液が垂れて彼女のお気に入りのカーペットに染みを作った。 「へぇ…やっぱり指よりも、●ックスの方がいいんだぁ。」 記憶を読みながら呟く。 指だけでも簡単にイッたのに、更に気持ちいだなんて… 試してみたいが由紀に現在彼氏はいない。 それに、いくら由紀の意識を吸収したからといっても、男性の自分が見ず知らずの男とヤる気になれない。 「そうだ!」 と、そこで男性は思いついた。 「知り合いを探さなくても「自分と」ヤればいいんだ!」 床にうずくまり何かを試そうとする事数分、由紀の身に変化が訪れる。 「っ…ぁ…」 メリメリと音を立てながら、今度は背中が不気味に蠢く。 まるで昆虫が蛹から成虫になるように、由紀の背中が盛り上がってゆく。 「っぁ…、ふ…ああ…!」 ずるり、と中から出てきているのは由紀の背中から数倍はある巨体。 由紀と同化しその身体変えたはずの醜悪な男性だ。 「よっこらしょ……やっぱり、この身体は重いな…」 立ち上がり自分の姿を確認した後、由紀へと目を向ける。 男性と分離した由紀はー 「ふひひ…成功した。」 ー先程と変わらない下卑た表情と口調のまま男性を見る由紀。 分離したからといって彼女が解放された訳でも戻った訳でもなく中身は「男性」のままだ。 「「これでセッ●スが出来る。」」 同化し混ざり合った今の二人は一心異体。分離していても意識は共有している。 「ひひ…まさかこんな美人の…しかも「自分自身」で童貞捨てるなんて…」 「本当。世の中どうなるかわからないわね。」 双葉の口調を真似てはいるが、相変わらずニヤついた顔と声色はそのままだった。 |