teruさん総合







               『皮剥丸奇譚』




               2・遠い約束




ある日、鷹狩りから帰ってくると奥の座敷で女達の声が聞こえ、私はふと足を止める。


「どうですか、濃姫様。 京より取り寄せましたこの友禅は?」
「都で一番流行っているものだそうですよ?」
「お綺麗ですよ。濃姫様の魅力を更に引き立てる柄ですよ」
「そう……?」


「どうしたのですか、姫様?」
「いえ…… ちょっと。 私は今のままでいいのかしらと…… 毎日、綺麗な着物を着て遠くから取り寄せた美味しいお菓子を食べて……」
不安そうな声を出す濃姫。 すっかり女に染まったと思っていたが、まだ未練が残っていたか。


「大丈夫ですよ。前にも言いましたでしょう? こうやって濃姫様が着飾り、贅沢に暮らすことで信長様の嫉妬心を掻き立てる作戦ですよ」
「そうです。いくら信長様が今の身体に馴染んでいると言っても生まれは女。 優雅に暮らしておられる濃姫様を見れば内心は羨ましくて仕方がないはず」
「そうですよ。作戦は順調にいっています。 返って考えてしまうとわざとらしさが出て信長様に気づかれてしまいます。 濃姫様は何も考えずに無心で濃姫を楽しむ事で信長様の心を追い詰めているんですよ」
女達が三人がかりで濃姫を煽てあげる。


くくく、上手いことを言うなぁ。 私が濃姫のことを羨ましがる、か。 ……確かに。 いくら男が性に合っていたと言っても、私も本性は女だ。 実のところ、時々、脳天気にみえる濃姫が本気で小憎く思えることがある。 これは嫉妬というものだろうか? 


ふふふ、自らの罠に自分がハマってどうするの。 さすがは私の配下。いい仕事をするわね。 頭の隅にチラリと浮かんだ帰蝶時代の初恋の人の面影を振り払って、私は微笑みながら部屋に入っていく。


「帰ったぞ、濃姫」
「お帰りなさいませ、信長様」
私の姿をみとめた濃姫が三つ指を付いて挨拶を返す。


「おう。 お?新しい着物か? よく似合っていて綺麗じゃないか?」
濃姫を見下ろして、その着物を褒め微笑む。
横に座った侍女が「私の言ったとおりでしょ?」と言う風に濃姫に目配せをし、濃姫が侍女に軽く頷き返して少し顔を赤らめる。 ふふ、可愛いヤツめ。




夕餉が済み湯浴みもおわると夫婦の営みの時間が訪れる。


私は濃姫の胸を揉みしだきながら帯を解いていく。
「あ、あぁん、信長様、強すぎますぅ」
「ふははは、男ゆえどうして力が入ってしまう。 しかし、濃姫は多少強引に扱われる方が高まるであろう?」


「あ、あはぁん、い、嫌な信長様……」
顔を赤らめながらも私の手を拒もうとはしない事がそれが真実だと告げている。


帯を解き終わり、寝間着を剥ぎ取ると日に焼けた事のない真っ白なシミ一つ無い裸身が露わになる。
私が濃姫の背後から首筋を舐めると濃姫は軽く吐息を付いて身体を震わせる。


「どうだ?感じるか?」
背後から乳房に手を伸ばして耳元で囁くように尋ねる。


「……はい。 あ、あぁ…… 信長様、下も……お願い……します。 あ、あぁん!あぁぁぁ!」
濃姫の懇願に私は姫の股間に手を伸ばす。 まだ始めたばかりだというのに姫の股間はすでに湿り気を帯びている。


「なんだ? もう俺のモノが欲しくてたまらないのか。 だが、もう少し楽しませてもらうぞ?」
そう言ってワレメの上にできた突起を指でつまみ上げる。
「ひゃうぅ!だ、ダメです、信長様、痛い、痛いですぅ。 あ、あぁぁ!ひゃうぅう!」
涙目で悲鳴を上げる濃姫。 しかしその涙が苦痛によるものだけで無いのは先刻承知。


「それでは止めてやろうか?」
私はわざとらしくゆっくりと股間から手を放す。


「いや!続けて下さい! 信長様は意地悪です」
「濃姫が素直じゃないのだろ?やって欲しいなら欲しいと言え」


「そんな。恥ずかしい……」
そう言って顔を手の平で隠す。 可愛い。可愛いぞ、濃姫。 俺の嗜虐心が昂ぶる。


「何を言っている。 夫の求めに素直に応じるのが妻の役目。お前は素直に良い鳴き声を発していれば良いのだ」
そう言って濃姫の身体を本格的に弄び、悲鳴のように嬌声をあげさせる。


帰蝶の場合は信長への反感もあって声を出さないようにたとえ無駄に終わろうと歯を食いしばっていた
が、濃姫は遠慮会釈なく悶え叫ぶ。 


帰蝶と濃姫の最大の差がここにある。 男に敵愾心を燃やす帰蝶。(芝居のつもりで)男に媚びる濃姫。
同じ身体でも中身が違うとこうも違うものか。


「よし、頃合いか。 濃姫よ。四つん這いになって尻をこちらに向けるんだ」
そう言って腰に両手を掛ける。


「え?それは……」
「それは、なんだ?」
私は濃姫の腰を持ち上げて身体を裏返す。 真っ白な臀部が私の目に飛び込む。


「その姿はまるでケダモノのようで恥ずかしいのです」
「ふはははは、何を言っている。 そこがいいのじゃないか? ほれ、俺のコレがこのように猛り狂っているだろう?」
私は自分の男根を掴み、濃姫に見せつけるように持ち上げる。


「ひっ!」
その目には恐れと悦びが浮かんでいる。
「どうだ、欲しくはないか? 欲しければ素直にそう言って尻を上げて俺のコレを受け入れろ」
そう言い放ってニヤリと笑う。 濃姫もそろそろ我慢の限界だろう。


「信長様、私のここに信長様のお情けを頂戴しとうございます」
潤んだ目で私を見上げて尻を突き出し、涎を流し続ける下の口をこちらに向ける。


「うむ、よく言った。 それでは俺の子種を分けてやろう。 一日も早く孕むがいい」
そう言って容赦なく私の男根をつきあげる。


「あ、あぁぁぁ! すごい、すごいです信長さまぁ! ください、もっと下さい!あ、あはぁ!いい!
固くて太いモノが私の中で暴れ回ってまふぅ! ひゃん、ひゃん、ひゃん!信長様の大きなモノが出入りして私の中をかきまわふのぉ、あはぁ!いいれふぅ!」
私の男根に突かれ、何の遠慮もなく鳴き叫ぶ濃姫。 その姿に私は更に気を昂ぶらせ濃姫を弄ぶ。




「はぁはぁ……」
私に散々貫かれ絶叫を上げ続けた濃姫が息も絶え絶えの布団の中で力なくへたり込む。
私はとても満足をしていた。 本当にこの濃姫は最高だ。 しかも中身は私を夜な夜な弄び続けた信長だと思うと気味のいい爽快感を感じる。


私はふと悪戯心が沸く。
「お濃よ。気持ちは良かったか?」
「はい」
私を見上げて嬉しそうに答える。


「お前を見ていると女の悦びというのも満更でもなかったかと思えてくるな」
「はい。本当に女がこんなにいいとは私も昔は思いもしませんでした……」
そう言って嬉しそうに微笑む。


「しかし濃姫よ。 本当はお前はこの身体を返して欲しいのだろ?」
「え?」
濃姫の顔に戸惑いの色が浮かぶ。


「わはははは。 そうか、手放したくはないか。 そんなにその身体が気に入ってしまったか?」
私は途惑う濃姫の顔を見て大笑する。


「え、あっ! 違います、気に入ってなどおりません! お返し下さい、私の身体をお返し下さい!」
自分が対応を間違ったことに気づき、慌てて私に縋りつく。 それでも日頃からの腰元達の教育の成果か口調が男に戻ることはない。


「ははははは、嘘を吐くな。 今のお前の顔がこの身体を返したくないと雄弁に語っていたではないか? 安心しろ。お前は濃姫として一生、そのまま暮らさせてやるからな」
そう言うと私は縋りつく濃姫の身体を両手で抱き寄せ、口を合わせて黙らせると再び火照りの収まっていない濃姫の身体を弄ぶのだった。


「あ、あぁ、あん!あひぃ!りゃ、りゃめれす、信長様ぁ!」
「ん?何がダメなんだ濃姫よ?愛撫がたりんと申すか?」
そう言って最近は更に豊満になった濃姫の胸を乱暴に揉みし抱く。


「いや、あはっ! な、なにも考えられなくなって…… あはぁ!」
「だから、お前はもう何も考えなくて良いともうしておるだろう?」
私は笑いながら形ばかりの抵抗をする濃姫を心ゆくまで弄んだのだった。




               *


「斎藤道三が会いたいと?」
「はい。娘婿の殿との会食をしたいと美濃からの使者が。 子細は書面に、と……」


会議の席で家臣が書状をもってくる。
受け取った書状には確かに父の字で同じ事がしたためられている。


「美濃のマムシめ。 殿を美濃に誘い出し、討つ気では?」
「たしかに。油断の成らない男ですからな。 いくら娘婿と入っても殿はマムシにとって目の上のたんこぶ……」
書面を読んでいる私のそばで家臣達がヒソヒソと囁きあう。


「最近の殿が尾張の領主として頭角を現してきたと言う噂を聞いて不安になってきたのでしょう」
「間者として殿の嫁へと送り込んだ娘の濃姫様があの様ですし……」
そう言って家臣の一人が、渡り廊下の向こうを笑いさざめきながらゆく濃姫と腰元の一団を苦笑して眺める。


「たしかに。 美濃より来られた頃は油断の成らない目をされていましたが今では……」
「殿にぞっこんですからなぁ? 女も惚れた男の前ではあぁも変わるものですかなぁ」
そう言って笑いあう。


「そうそう。 この間も新しい着物ができたとか言って、それを殿に見せようと腰元共を引き連れて城の中を"殿ぉ?殿はどこにおられますかぁ?"とまるで幼児が母親を探すように歩き回っておられた」
「あぁ、あれは可愛かったな。 殿でなくても庇護欲を掻き立てられる姿だった」
「始めの頃の雰囲気とは雲泥の差だ。 そうして考えてみればあの頃は緊張されていたのかもしれないな。 なにしろ尾張は濃姫様にとって敵地だ。 そこに女一人。数人のお供だけを連れて乗り込んできたのだからな」


「今では誰も、あの濃姫が道三の間者だとは思ってませんからねぇ」
そう言って一同が笑う。


私も書状で顔を隠して笑う。
そりゃ、そうでしょ。 あなた達が可愛いと言って笑う濃姫は、あなた達のお殿様なんだから。


あなた達のお殿様が父上の間者なワケがないでしょう。 その父上の味方はあなた達の目の前にいるんだから。 ほくそ笑みながら横目で向こうの部屋に入っていく濃姫の一団を見やる。


「それでどうしますか。 仮にも奥方の父親からの要望ですので会見は避けられないでしょうから。 
場所をこちらにするように交渉しますか?」
「それが無難だろうな。 こちらからノコノコと敵地に出掛けていくような愚かなマネをする事はあるまい」


家臣達の話を聞いているうちに、私はふと父上にイタズラを仕掛けてやろうという気になる。
「いや。 会見場所は向こうに任せると返事をしろ。 日程は任せる」
そう言い放つと私は場を立つ。


「いや、殿! それは不用心すぎます!」
「会うのはかまいませんが、せめて場所はこちらに!」
「大丈夫だ。 俺の言ったとおりに使者に伝えろ!」
慌てる家臣達に私は不敵に笑って見せる。


               *


「殿?悪巫山戯が過ぎませんか?」
馬を並べて歩く藤吉郎が私に困った顔で尋ねる。


「何が? 会見場所で正装で居ればそこまで行くのはどのような格好をしていても問題はあるまい?」
笑って答える今の私の姿はかつて信長が野山を駆けまわっていた薄汚い着物姿だ。


多分、どこかに父上の密偵が潜んでいて今頃は報告がいっているだろう。 尾張のウツケが何も考えずにバカな姿で会見場所の寺に向かっている、と。


ふふふ、久しぶりに会う父上の顔を思い浮かべ心の中で微笑む。


会見場所の寺に着くと私は大急ぎで正装に着替えてすました顔で父上を待つ。


二人きりで会いたいと最初から人払いはしてある。
暫くすると障子が開けられ、父上が悠然と姿を現す。


「お義父上様におかれましてはご健勝そうでなにより。 織田信長、お招きに預かり本日はまかり来させて頂きました」
そう言って平然とした顔で頭を下げる。


ウツケだと思っていた娘婿の立派な姿と挨拶に父上が気押される。
「お、おう。 婿殿も健勝そうでなにより……」


そう返して途惑うように私の前に座する。
「ふ、うふふふ」


「ん?何がおかしい?」
私の様子に憮然とした顔で聞き返す父上。


「父上、これはすでに用済みとなりましたのでお返し申し上げます」
そう言って皮剥丸を前に置く。


「これは帰蝶に渡した皮剥丸……」
「わかりませんか、父上?」
私は悪戯っぽく笑う。


「お前…… まさか、帰蝶か!?」
父上が驚いて尋ねる。


「はい。 尾張のウツケ。 あまりにも大ウツケだったので私が皮を剥ぎ取ってしまいました」
そう言って私は得意気に笑う。
「なんと。 婿殿の皮を奪ってしまったのか?」
父上が釣られるように思わず笑う。


「今では私が尾張の領主ですよ」
「では、本物の信長は?」


「私の皮を代わりに着せて濃姫と名乗らせています」
「後腐れがないように殺してしまわないのか?」


「まだ、織田信長の情報が必要になる事があるといけませんので生かしてあります」
「それではお前のことがバレてしまう恐れがあるだろう?」


「ふふふ、大丈夫です。 今ではあの大ウツケ、心身共に濃姫です。 すっかり女へと成り下がっており、夜ごと私に抱かれて"殿ぉ、殿ぉ"とよがり狂っておりますので」
「なんと!それは…… 愉快だな? 尾張の領主が美濃の姫に夜ごと鳴かされておるか」
二人で爆笑する。


「ははは、それでその本人は今日は連れてこなかったのか? 是非とも会いたかったぞ?」
目に涙が滲むほど笑った後、父が尋ねる。


「用件が私にだけ会いたいという話でしたので。 それに今日は月のモノが重いと床に伏しておりますゆえ。 まこと、女というのは不便な生き物でございますなぁ」
そう言うと、又、二人で申し合わせたようにもう一度、爆笑する。


ひぃひぃと腹を抱えて笑ったあと、私は居ずまいを正して父上に向き直る。
「父上。 これからは私も尾張一国を率いて父上の本懐を果たす手伝いをさせて頂きます」
そう言って両手を付いて父上に頭を下げる。


「……そうか。 お前にだけは幼き頃に儂の密かな野望を聞かせていたのだったな」
そう言って顎に手をやり考え込む。 父上は私にだけ心を許して下さっていて、その胸のウチを密かに私にだけは語り聞かせてくれていた。 いつしか父上の野望は私の野望ともなっていた。


そして今、この身体を得たことにより父上と共に歩む事が可能となった。


「二人でなら天下統一はもっと早く成りましょう?」
「いいのか?」


「父上のお役に立てるのなら!」
意気込んで答える。


「そうか。 なら、儂の野望はお前に託す。 お前が天下を目指し、儂の野望を叶えるのだ」
「え?私が?」


「そうだ。残念ながら儂はもう歳だ。 道の途中で倒れる事もあるかもしれん。 若いお前ならこの後も大丈夫だろう」
そう言って私の両肩に手を置く父上。


「そんな……」
「それに儂は最近、里の者達に目を付けられておる」


「里の者達に? でも父上は里の為に……」
「考え方は人それぞれだからな。 光秀のヤツが時々儂の所に顔を出しに来るのは儂の考えを探ろうとしているのだろう」


「光秀兄様が?」
「そうだ。だからお前に託す。今のお前の姿なら里との縁はわかるまい。 だからお前が天下を目指すのだ。 天下統一の先にある野望を果たす為に」
父上の目に期待の火を認める。 父上が私を頼ってくれている。


「わかりました。しかし、あくまでも天下は二人で目指しましょう」
そう言って父上の手を握る。


こうして密かな同盟は結ばれたのだった。


「いいか?今後、お前の所にも光秀が現れるかもしれん。くれぐれも正体は絶対に悟られるな。 光秀がお前の正体に気づけば、どんな障害になるやもしれん」
「わかりました、父上」
別れ際に父上から受けた忠告を胸に、私は尾張へと帰った。


               *


しかし、私達親娘の野望はすぐに暗雲がさす。
よりにもよって、兄が父上に反乱を起こしたのだ。 そして父上は野望半ばで倒れた……
私にいくつかの呪具を託して……


父上の無念と遺志は私が継ぐ。 この事により、私は固くそう決心したのだった。




「明智光秀と……申します」
「うむ、儂が織田信長だ」
平伏する光秀兄様に少し尊大に挨拶を返す。 


「この度は道三殿には無念なことでございましたでしょう」
「無念?そちは義龍につかなくても良いのか?たしか、義龍は従兄弟と聞いているが?」
沈痛な顔で悔やみを口にする光秀兄さんに冷たく言い放つ。


「従兄弟と言うなら信長様の奥方、帰蝶様も私の従姉妹でございます」
「ほぉ?と言うと明智殿は濃姫の婿である儂の味方をすると言われるのか?」


「はい。 是非とも」
手を付いて私を真剣な目で見つめ頭を下げる光秀。
本当に光秀兄様が尾張についてくれるのなら心強いのだが…… 


『くれぐれも正体は絶対に悟られるな。光秀がお前の正体に気づけばどんな障害になるやもしれん』
父上の残した言葉が気にはなる。 光秀兄様を我が陣営に迎えると言う事は諸刃の剣になる危険を孕んでいる…… 我が野望を実現させるか、潰えさせるか。


追い払うか、迎え入れるか……
気づかれなければ問題はないか。 濃姫にはよく言い聞かせ、美濃時代の私の事は今まで夜伽話として教えてある。 濃姫の方も今更、信長に戻る気など持っていないので自らシッポを出す気配はない。


すでに先に濃姫とは顔を合わせている。 腰元の話ではそつなく面会を果たして、光秀兄さんは濃姫に微塵も疑いを持った様子は無かったという……


「わかった。 そなたの事は道三殿から聞き及んでいる。かなりの知将の器とか? 是非とも我が陣営に加わり、共に道三殿の遺志を継ぎ、天下統一といこうではないか」
そう言って初めて光秀兄様に笑いかける。




そして、そこから尾張軍の進撃はつづいた。 情けも容赦なく、父上の無念を晴らすべく。


優秀な家臣にも恵まれた。 とくに光秀兄様と美濃から連れてきた藤吉郎の働きは目覚ましかった。
天下に向かって織田軍は破竹の勢いで登り詰めていった。 
特に父上から譲り受けた呪具の一つ「雨下がり」は意図通りに戦場に雨を呼び、種子島を武器として使う戦において素晴らしい威力を発揮した。


やがて都の鼻の先、近江の琵琶湖のほとりに巨大な城を建築し、天下取りへの布石を打ったのだった。


しかし、残念だったのが城が出来たばかりで濃姫が流行病に冒されて逝ってしまったことか。
戦が重なり連戦していたせいで死に目に会えなかったのは残念だったが、その死に際は安らかであったと聞いたのが救いだった。


「とうとう、戦国の姫として逝ってしまったか、"織田信長"よ」
まぁ、本人は満足して逝ったらしいからいいが…… 多分、私は濃姫を愛していたのだろうな。
天下統一など無理だ、と言った信長に見せる為に私はこの城を作ってやったと言うのに……


「殿!一つお聞きしたい事が」
城の天守で下界を眺めていると後ろから声が掛けられる。


「おう?光秀か、何だ」
「天下取りまで後一歩となりましたが、殿のおかれましてはその先はどこに向けておられるのでしょうか?」
光秀が神妙な面持ちで尋ねてくる。


「ん?そうだなぁ?"天下"を取った後かぁ。 まぁ、都の整備と新しい体制の発布……」
「都の整備と新しい体制? それは一体……」
ふふふ、少し喋りすぎたか。 手の届く場所に望みが見えてきたから調子に乗りすぎた。


光秀が私の真の目的に感づく前に、都から遠ざけておいた方がいいのかも知れない。
「光秀、お前は今から軍を率いて西国の秀吉の応援に行け」


「え?今からですか? しかし、私には都で帝を迎える準備等がありますゆえ?」
「そんなものは誰にでもできる。 秀吉の補佐はお前でないと無理であろう? 行け!」
私は光秀に半ば強引に命令する。


私の剣幕に押されて、光秀が下がっていく。


              *


屍山血河の果てに勢力図を都へと伸ばし、天下統一を目前にした時にそれは起こった。


「寺が敵に囲まれています!」
「明智殿、謀反!」
警護の侍達がばたばたと駆けていく。


夜半、宿泊していた都のとある寺の中で目を覚ますと、周りはすでに蟻の這い出る隙もないほどの兵達に囲まれていた。


「どういう事だ!」
「明智光秀様の謀反です!」
私の声に警護の兵が悲鳴のように応える。


「光秀が謀反?」
確かに最近は光秀の様子に違和感を持つことはあったが、謀反などとは……


門の方からは兵達が戦う音が聞こえ始めている。 油断だった。 ただの茶会の催しをするだけと兵を殆ど連れずに泊まった私の失策だった。


「それにしても光秀が謀反とは…… 何故だ?」
「それはあなたの望みが天下統一の先にあるからですよ、信長様。 あなたを止めるには懐刀の秀吉がそばにいない今しかありませんでした」
私の問いに答えるように一人の若い兵が寝所に入ってくる。


「誰だ!」
「光秀ですよ」


「光秀?光秀はそんな顔をしておらぬわ!」
私の声にその兵は懐から短刀を取り出し、私の方に見せる。 


その短刀は……
「皮剥丸……」
「配下の兵の顔を借りました。 今、外で指揮を執っているのは私の首から上を着けたその者です。
この短刀の名前を知っていると言うことはそういう事でようござりますね、帰蝶様?」


「な、なんのことだ?」
「先年、病で身罷れました濃姫様より言づてです。 "私は信長様からこの身体を頂いて幸せでした"と……」
そう言って私を見つめる光秀。


そうか、臨終の席には光秀も居たのだったな。 濃姫め、最後の最後でヘマを…… このところ忙しく、その死に立ち会えなかったのを残念と思っていたが。 ……死の間際でどうしてもそれを私に伝えた
かったか。 しかし、よりにもよって光秀に言伝るとは…… 


かと言って私は今更、濃姫を恨む気にはなれなかった。 事はすでに起きてしまっているのだ。


「俺が帰蝶だから裏切ったのか?」
「いえ。 あなたが織田信長として単純に天下を狙っておられるだけなら私も裏切ったりはしません。
しかし、あなたの目的はその先にある。 違いますか?」


見抜かれていたか。 私が斎藤道三の娘と知れた時点で聡明な光秀様ならそれもあるだろう。 父上は里を出る時にたった一度だけ里の民に向かって宣言していたと聞く。


「里の民を隠れ里から解放し、都に凱旋させることのどこが悪いというの!」
「我々は誰もそれを望んでいません。 元はと言えば初代の方々は権力に諂う事を嫌って自ら都を出て里を作ったのだ。 今更、都に未練は無い」


「しかし、父上は不満を持っていた! 飛騨の山奥に強大な結界を張り、そこから出る事も無く暮らす生活に!」
「誰も里から出ること自体は禁止していません。道三殿や私のように。 里の事さえ話さなければ!」
二人は火矢を射掛けられて燃えだした堂内で睨みあう。


「制約がある事自体が問題なのです!」
「里にある様々な呪具は外の世界では脅威です。 その存在が明らかになれば、いくら結界が張ってあるとは言え、その欲望の前には結界すら破られるかもしれません。 例えば、あなたが隠し持っていると思われる"雨下がり"。 あれがあればどれだけの農民が助かると思います? そして、領主は兵糧の調達に困る事なく戦ができる!」


「な、なんの事かな?」
「濃姫様の言葉で帰蝶様の事に気づき、里の者の持っている呪具を調べました。 道三殿が生前にいくつか呪具を持ち出して返還がされていない物がありました。 皮剥丸はこうして里に返されていましたが、雨下がりのような雨乞いの呪具などは行方不明のままです。 織田信長の戦は天候が味方するものが多い理由がわかった気がします」


「しかし、里の呪具を持ち去ろうとしても呪具は里の民しか使えない呪が施されているだろ!」
「だったら、彼らは里の民ごと呪具を持ち去ろうとします。 あなたがやろうとしている事は里をさらに混乱に陥れます!」


「だから、里は私が守る!私が天下を取り里の民を都に移し、絶対的な力で守る!」
「天下を取ったくらいで守れると思いますか!」


「だから私はその上を目指す!!」
「それは何を意味する言葉ですか?」
私の叫びに、光秀の目が射るように細まる。


「そうか、気づいているのか。 父上の最終目的に」
私は光秀の態度に私達、親娘の目的がバレている事を悟った。 
だから、織田信長を殺す暴挙に出たのか……


「やはり…… 狙いは帝」
「と、その一族を全て皆殺しにして帝位自体を奪う」


「一族全て…… そこまで!」
光秀が絶句する。 さすがにそこまでは考えが及んでいなかったようだ。 


この国の権力掌握の条件は都に対し自分の力を示して、それを帝に認めてもらう事で「天下」を取る事ができる。 そこが頂点であり、そこで「天下取り」は完了する。


しかし、天下にはまだ上があるではないか? 何故、誰もそこに目を向けない? 何故、天下を目指す
と言いながら、その上に存在する権力を許す? 天下を取ると宣言したのなら全てを奪い取ってこその『天下取り』


「それだけはなりません! 帝は日の本の頂点、この国を統制する為の必要不可欠の存在です!」
「何をいう? 元はと言えばヤツがいたから父上達は山奥の里に隠れ過ごす事になったのだぞ? だったら私がその座を奪い取り、代わりに収まれば全てが上手くゆくだろう?」


「そんな事が許されるわけが無いでしょう。 成り上がり者が帝位を奪ったからと言って素直に皆が認めたりはしないでしょう!」


「だからこその天下取り。 私の力は帝に見せる為に示したのではない。 全国の武将にこそ示したのだ。 そして、この織田信長に禁忌が無い事も叡山焼き討ちの寄って示してある。 都の鬼門はすでに開かれている事に気づかないヤツらがウツケなのだ。 鬼門の守りを破壊した信長という鬼を都に招き入れている時点でヤツらの死は確実だったというのに……」
火が回り始めた境内を見回して嘆息する。


「それがよりにも寄って……」
私は光秀を恨みがましくみる。 すべては無に帰した。又、最初からやり直す事に……


「あなたは道三殿の言霊に操られている。 帝達を滅ぼした後に来る地獄をまったく考えていない!
帝を討ち、都を火の海にすれば後は今の世よりも悲惨な世が現れるでしょう!」
「父上の言霊?なんの事だ?」
私は光秀の言葉に引っ掛かるものを感じた。


「貴方は幼い事に聞かされた道三殿の言霊に捕らわれてしまっているのです! その証拠に"帝を討つ"事は他に気づかせないほど用意周到なのに、その後の計画は杜撰に尽きるではありませんか!」
「だから、それは私が帝位について……」


「目を覚ましなさい! 道三殿は里の中でもかなりの力の持ち主でした。 その娘の貴方が里の外で生まれたにもかかわらず、呪具を扱えるほど。 だから、道三殿の何気ない一言に呪が込められ、それに貴方は当てられてしまった……」


「ウソだ! これは私の意思で父上の志を継いで……」
「では、里の者を都に返すと言われるのなら、貴方は里の場所を覚えておいでか!」


「何をバカな事を…… えっ?!」
わからない。 昔、父上に何度も連れて行ってもらったと言うのに…… 里がどこにあるのか……


「里には結界があって、里の場所は里の者と里の者に案内された者しか受け入れない。 信長になって何十年も立つアナタの頭からは里の情報は失われているでしょう」
「違う!ど忘れしただけですぐに思い出す!」


「いい加減にしなさい!」
ぱぁん! 光秀の平手が私の頬に炸裂した。


この何十年、織田信長に手を出した者などいなかった。 正確には手を出そうとした者はことごとく、残虐に処刑された。 その信長に向かって……


「お、お前…… あ、あれ……」
怒りに燃えて光秀に掴みかかろうとしたのだが、逆に腰が崩れて尻餅をついた身体が小刻みに震える。


「早くに気づいていれば、もっと前に行っていたのですが…… 簡単な解呪です」
そう言って私に向かって手の平を見せつける。 その手の平には墨で何かの印が描かれていた。


本当に父上の呪に捕らわれていたというのか? 炎に包まれ始めているここに居るのが怖い。 まるで小娘に戻ったように……


「わ、私は無駄な事をしていたというの?」
震える声で光秀兄様に問いかける。


「いいえ。 この時点で終わっておけば織田信長という武人は戦国の世を終わらせる道筋を作った英雄として語り継がれるでしょう。 しかし、その先を求めれば本当に第六天魔王と成り果てるでしょう。
帰蝶様、織田信長を終わらせましょう」
「だから、私を殺しに来たのですか?」
私は諦めにも似た気持ちで光秀兄様を見上げる。


「いいえ、私は帰蝶様ではなく"織田信長"を討ちに来たのです」
そう言って光秀兄様が懐から何かを取りだして私に差し出す。


「これは…… 皮?」
「流行病で死んだ近くの村の娘の首の皮です。 皮剥丸は死んだ人の皮は剥げませんが、死んだばかりなら剥ぎ取れますから」


「私にこの皮を被れと? 村娘になれと? この織田信長に村娘に堕ちろと?」
身体がブルブルと震える。


「あなたは元から娘だったんですよ、元に戻るだけです。 そして私と共に里に帰りましょう」
光秀が私に優しく微笑む。


「私を里に迎えてくれると言うの? でも、里に帰って何をしたら……」
光秀兄様の声に顔を上げて尋ねる。


「私は里に帰って神社を起こそうと思う。 もっとも神社とは名ばかりで実際は里の技術と資産を保護管理する為の社だけど」
「呪具を管理する為の社…… 案外、光秀兄様も里の呪に捕らわれているのではないですか?」


「そうかも知れない。 呪具の類は防御用の呪が掛けられている物が多い。 迂闊に始末はできないし、里の民の中にはまだ陰陽の呪や、技を研究している者達もいる。 里の皆にそれらを止めて普通の村に戻れとは言えないですからね」
そう言って笑って私の手を取って引き起こす。


「だから一緒に手伝ってくれないか? 織田信長と明智光秀ではなく、ただの男女の村人として里を守りながら幸せに暮らそう……」
そう言って村娘の皮を持ち、私の首に皮剥丸を近づける。


周りはすでに火の海だ。 この部屋に火が入ってきてないのが不思議な…… 火除けの呪符か?


私はそんな光秀兄様の胸を両手の平でトンと押しのける。
「私はここに来るまで多くの人を殺しすぎました…… 武将や兵は愚か、僧や女子供すら容赦なく……それらを忘れて幸せになる事などできないでしょう?」
そう言って笑う。 


そうか、私は父上の呪に縛られてここまで来たのか。 光秀兄様にそれを気づかされてから心がただの娘のように弱くなっているのがわかる。 しかし、腐っても私は道三の娘だ。 ここで泣き叫ぶような愚は意地でも起こせない。


「全て理解しました。 ですから、私はここで織田信長として滅びましょう。それが死んでいった者達への私の最低限の礼儀です」
そう言って私は精一杯の笑顔で笑いかける。


「待て、帰蝶!」
光秀兄様が私に向かって手を伸ばす。 私は刀掛けの刀を取り、鞘を捨て去り抜刀する。


「大丈夫。 私は素直に死にません」
そう言うと私は懐からお守りを取り出し、その中に入っていた呪符を兄様に見せる。


「それは…… なんなんだ?」
多分、この呪符は兄様も観た事が無いのだろう。


「光秀兄様も知らないでしょう? 父上の最後の遺産"因果転生"。 死の間際に使う事により、自分の思い通りの転生を果たす呪符です。 つまり、自分の魂へ自ら呪いをかけて因果を作り上げ、目的へと導くのです。 無論、死の間際に使わないと実際に成功したのかわからないので実際の効力は未知ですが。 もし、道半ばで倒れる事があった場合には来世へとつなぐ為に父上から頂きました」


刀で兄様を威嚇しながら後ずさる。


「まだ生まれ変わって同じ事を繰り返すというのか?」
驚き、尋ねる兄様。


「いえ、私が間違っていた事はわかりました。 今度は私が兄様をお助けしましょう」
「私を…… 助ける?」


「私はこれから黄泉へと渡り神気を充分に練り上げ、そして時が満ちればこの呪符の力で再びこの下界へと生まれ変わり、里の呪具の全てを払い清めましょう」
「里の呪具を払う?」


「そう、私とは別の意味で光秀兄様は里に捕らわれ過ぎておいでです。 私はその原因となる大本を消し去ります。 里の民は徐々にその能力を失っていくでしょうが、呪具自体はその力を保ったまま存在し続けるでしょう。 それが兄様の心を縛り付ける」
そう言って手に持った符を額に貼り付ける。


「あなたはそれを消し去れるというのですか?」
「消し去ります。 何十年、何百年掛かろうと私は再び転生してみせましょう」
符を張った額に力が集まっているのがわかる。


「……ですから。 待ってくれますか?」
私は兄様を見つめる。


「あぁ、寿命が尽きようと私の魂はあの里で君が生まれ変わってくるのを待つよ。 しかし、転生した君をどうやって見つければいいんだろう?」
私の真剣な決意を示す目に一緒に脱出する事をあきらめたのだろう。 優しい目で私を見つめる。


「ありがとう。 遠い未来、里の外で生まれ、呪具を使う事ができる女が里を訪れたらそれが私です。たとえ転生によって姿形が変わり自分の記憶も忘れていようと、この呪符が里への因果を結ぶのです」
そう言って光秀兄様に微笑むと呪符の効力が効いてきたのだろう。 私の身体が透け始める。


「帰蝶!」
光秀兄様が叫ぶ。


「大丈夫、別に痛くもなんともないですから。 それより忘れないで下さい。私の事を……」
「待っている! たとえこの身が果てようと、私の子孫達があなたを待ち続ける!」


「黄泉返ったらあなたの子孫のお嫁さんに迎えてくれますか?」
「あぁ、私の子孫はあなたを喜んで迎え入れるだろう」


「そうですか。 その言葉で私は安らかに旅立てます」
その言葉と共に私の意識は薄れていった。


               *


「それでは暫しの…… お別れ…で…す…」
目の前で私の従姉妹で帰蝶だった織田信長の姿が薄らぎ消えて行った。


全ては終わった…… 都を火の海に沈め、全てを灰燼に帰そうとした織田信長は向こうの世界へと旅だっていってしまった。


正直、道三殿の妄執が帰蝶殿をあそこまで走らせるとは……


「帰って来いよ、帰蝶。 私は里にお前の居場所を作っていつまでも待っているからな」
私は織田信長の消えた所に向かってつぶやき、柱に貼り付けていた火除けの符と人払いの符を剥がし取る。 途端に火に勢いがつき、人のざわめきが近づいてくる。




「おぉ!田中様、どうです。 信長様はいましたか?」
この顔を借りた侍大将の部下が入って来て私に尋ねかける。


「あぁ、この奥に逃げた。 だが、手傷を負っているから、逃げたところで焼け死ぬだろう」
私はお堂の奥を見ながら刀で指差す。


「そうか……」
殺気を感じて振り向くと男が刀を振り抜いてきていた。


がちっ 
私はそれを刀で受ける。
「なにをする!」


「ちっ。いや、なんだかよく判らないが、明智様が言うにはアンタを殺したら俺を侍大将に取り立ててくださるそうなんだ」
そう言ってニヤリと笑って刀を構える。


そうか。あの男…… 明智光秀を乗っ取りたくなったか。 私の代わりに織田信長を討ち、天下を取りたいというのか。 愚かな。自分の器という物を知らないというのは……


だが、都合はいい。 どこかで明智光秀も殺す必要があったのだが、自ら志願してくれるのならお前にその役目を託そう。 私の計画も織田信長を討つまでしか考えてない。 このまま行けばいく日も経たないうちに柴田殿に討たれるか、秀吉に討たれるだろう。


「ふふふ」
思わず笑みが浮かぶ。


「何がおかしい?」
「いや、人の欲はこうも破滅を呼ぶとは…… おもしろいな、人という物は」
そう言って刀を構える。




とりあえずは、ここを生きて脱出しよう。 


後はなるようになるだろう。


誰が天下を取ろうと知った事ではない。 


これで今まで通り、里は世間の喧噪とは無縁の桃源郷で在り続けるだろう。


そして、私は生きる為に刀を振り抜く……




               *


  遠い未来、この里にやがて外から一人の女性が訪れるだろう。
  その女性は里の外で生まれながら、里の呪具を操る事ができる。
  そして、その女性は里の呪具の全てを払い清める為にやってくる。


  我が龍神神社の者はその女性を娶る運命にある。 
  従って龍神神社の主は男性が継ぐべし。


      龍神神社、創設者の口伝より


               *





そして、10年、100年、400年と時は過ぎゆき……
隠れ里の人々は何世代と移り変わり……




  やがて隠れ里から遠く離れた都会の片隅で一つの事件が持ち上がる……







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