teruさん総合







               『皮剥丸奇譚』




               1・野望への序曲




とあるお城の奥で一つの会話がされていた……




「父上、お呼びでしょうか?」
「帰蝶よ、そなたの輿入れ先が決まった」
そう言って父上が私を見てニヤリと笑う。


「ほほう?それで甲斐ですか?越後ですか?それとも近江?」
自分の嫁入り先か…… いつかは来るであろうと覚悟はしていたが。


今の戦国の世において女は政の道具として扱われるのは当然の話。 今更どこは嫌だ、あそこは嫌だ。等とダダを捏ねたところで何が変わるわけも無し。 女は言われた家に人質として嫁ぐ。 ただ、我が父、道三は娘の私をただの物言わぬ道具として使うほど目は曇ってはいない。


私はどこの勢力を懐柔させればいいのか、または自滅させてしまえばいいのか。むしろ楽しみだ。
女としての私の戦いはここから始まるのだから。 直接、兵を率いての戦いでないのは残念だけど。


「お前の輿入れ先は隣の尾張に決まった」


「尾張?今更、尾張ですか?」
「尾張では不満か?」
私の顔がよほど不満そうだったのだろう。父上がニヤニヤと尋ねる。


「あそこの領主、織田信長のうつけっぷりは私の耳にも入っている程です。 まして、反感を持つ身内も
数多いと聞きます。 放って置いても尾張は勝手に自滅するではありませんか?」
「それがなかなかしぶとそうでなぁ。 それにあれだけの領地はなかなか惜しい。 今のまま、放っておけば今川に半分以上持って行かれてしまうだろうしな?」


「だから自滅の際に領地が少しでも美濃に行くように私を信長の嫁にしておくと?」
「そうすれば信長の味方をする大義名分が立つからな。 尾張領内の反乱を抑える為に婿殿の加勢に尾張
に兵を送れる。 まぁ、その際、信長殿は事故で戦死なされるかもしれんが」
そう言って父上が畳んだ扇子で口元を隠してクククと笑う。


「なるほど。理解しました」
私はそんな父上を見てニヤリと笑う。


「ただし、そなたの父はそれが自然に起こるまで悠長に待つ気はない」
「私に早めろと?」


「手段は問わん。 それと万が一の為に面白い物を貸し与えてやろう」
そう言って懐の手を入れると一振りの短刀を前に置く。


「懐剣ではないようですが?これで私に婿殿を刺せと?」
私は前に置かれた短刀に手を伸ばして鞘を抜く。 妙な紋様が入った二寸にも満たない刃が現れる。


「迂闊にその刃に触るなよ?皮が剥ぎ取られてしまうぞ?」
「皮が剥ぎ取られて? ひょっとして父上の里の一族の誰かが作り上げた呪具の一つですか?」
私はその妖しい紋様の入った刃を見つめながら尋ねる。


「あぁ、その通りだ。見るがいい」
そう言うと父は私から短刀を取り上げ手首の周りに刃を入れた。


「ひっ」
流石の私もその光景に見入ってしまう。手首に走った切れ目からは血が一滴も出ない。
更に父がその指先を引っ張るとまるで手袋のようにすっぽりと皮が抜けてしまったのだ。後には父の皮も爪もない桃色の手が残るだけ……


「ち、父上。痛くはないのですか?」
「痛みは感じん。それがこの皮剥丸の呪力だ。 人の身と皮を分けてしまう。 皮を剥ぎ取られても身に害はない。 そして分けられた皮の方も生きておる」
そう言って右手で抜き取ったばかりの左手の皮をつまみ上げてみせる。父上の言った通り、皮はまるで生きているかのように蠢いていた。


「これは?」
「自分が生きる為に中身を欲しておるのだ」
そう言って父は桃色の指先を皮に向けて乗せて見せる。皮はまるでその手を飲み込むかのようにじわり
じわりと包み込んでいった。 暫くすると皮と手は完全に一体となる。継ぎ目どころか切られた跡さえ見つけられない。


「なかなかすごい呪具を作り上げたものですねぇ? しかし、これで何を?」
「わからぬか? これの能力は腕一本の話ではない。 これを用いて首から下まで切り裂けば全身の皮が剥ぎ取られてしまう。 もし、尾張でお前の思い通りにできないヤツがおればこれを使って皮を奪うがいい。 そして美濃から付いて行く配下の誰かに着せて取って代わらせればどうなると思う?」


「私の思い通りに動く忠義者が尾張に生まれますねぇ」
父上の意図を悟り、私はニヤリと笑う。
 
私の部下と代わった尾張の者は美濃に送り返してしまえば、その者から尾張の情報を引き出すのにも役立つだろう。 そして気づけば尾張のウツケの周りには私の息の掛かった者で固められているワケか。
それも面白い趣向かもしれない。


「この呪具も他の呪具と同じように里の者にしか使えない呪が施されておるが、お前はその才能があるのか里の外で生まれたにも拘わらず、里の呪具を扱えるから、これも問題はあるまい」
そう言って皮剥丸を私の前に置く。


「ウツケ、ウツケと噂されているが本当はどうなのか。実はウツケは世を忍ぶ仮の姿でかなりの切れ者か、本物のウツケか。 楽しみではありますね」
そう言って皮剥丸を受け取り微笑む。


尾張のウツケが私の夫になるのか。どのような男だろう? せめて噂と違い、深謀遠慮に長けた男ならよいのだが。


そう。私の従兄弟で父上と同じ隠れ里の生まれの光秀様のような……
父上はその昔、才能がありながら権力に阿ることを拒み、京の都を追われた陰陽師や呪術師、薬師などが隠れて暮らす里に生まれた。 
何世代かは得ているがその子孫である父上達もまだその里に隠れ住んでいるのだ。


しかし、父上は隠れて暮らすことを良しとせず、里を出てその才覚で一国の領主となったのだ。 里の者をもう一度、京に戻す為に……


そしてもう一人、里を出て世の情勢を見て回っているのが光秀殿だ。 何度か父上の城に来られた事があるが、その知的で理性的な姿に憧れたものだ。


「どうせ、嫁になるのならあの人のような所に行きたかったわね。 ま、無理な話だろうけど」
ため息をひとつ付くと私は婚儀の準備の為に部屋へと戻った。




そして数日後、私は尾張へと輿入れしたのだった。 野望を胸に秘めて……


               *


しかし……
「朝から夜まで遊び歩き、誰の諫めの言葉にも耳を傾けないわ。 それどころか意地になって遊び廻る
し…… 噂は世を忍ぶ仮の姿かと思えば天然だったとは……」


私は最初の計画が無駄に終わると知って途方に暮れた。
輿入れしてみれば、織田信長という男はただの粗野なガキ大将に過ぎなかった。


周りを私の息の掛かった者で固めようと他人の意見を聞かないのではどうしようもない。
そのくせ、指示を出すマツリゴトは適当なのに運よく経済は廻っているし、部下は不思議と有能な者が多い……


「なんでこれで滅びないのかな、尾張……」
私は脇息に肘を突き、ため息を付く。
いや、美濃に利が無いまま滅んでもらっても困るのだが、私の立場が無くなるし?


「帰蝶!帰ったぞ!」
今日も殿は一日馬で駆けまわって来たのか泥だらけで私の寝所へと入ってくる。 最近のお気に入りの種子島と言われる火筒を片手に持って…… 女の寝所に無粋な…… そして夕餉が済めば、私を抱いて寝るのが日課のようなものだ。 まぁ、それは殿は私を気に入っているようだからいいのだが。


てか、完全に私は敵方の人間なんだから油断のしすぎだと思う。 周りの人間が口を酸っぱくして注意しても耳を貸さないのはありがたいのだが…… どうしたものか。




そして陽も暮れ、いつものように夜伽が始まる。


この男の数少ない取り柄の一つが夜伽だ。 
「上手いのよねぇ…… あれも固くて大きいし…… あ、あぁん」
「どうだ、帰蝶。気持ちいいか?」


「あ、あぁん、はい。信長様…… い、いいです、あはん、あ、あ、あぁ、あん」
「ははは、よい顔だぞ。 マムシの娘と言っても所詮は女。 俺の逸物の前ではただの娘だな」
悔しいが確かに今のままでは私はただの娘になってしまう。 父上に信頼されて尾張の地を美濃に併呑する為に来たというのにこれでは和睦の為に美濃から差し出されたただの人質では無いか?


私は尾張に来て何をしているのか…… 本来なら敵将である筈の織田信長に組み伏せられ、よがり狂っているだけではないか…… 私は粗野な男は嫌いなのだが、これはまた別……
「あぁ、あはぁん、あん、あん、あん……」


「しかし、お前はいいよな。 マムシ殿の娘として輿入れしてきたから粗略に扱われる事も無く、毎日、綺麗な着物を着て美味い物を喰って、夜はこうやって、寝所で俺に可愛がられてよがってさえいれば役目は果たせるのだから、羨ましい限りだな。わはははは」
そう言って私に逸物を突き立てて笑う信長。


プチッ、その時、私の中で何かが切れた。 このままでは私は信長殿の言った通りの存在でしかない。
何とか父上が尾張を攻略しやすくする為に何かを成さなくては……


しかし、信長は他人の意見に耳を傾けない。 いくら周りの人間を味方に付けたところで聞く耳を持たないのではどうしようもない。 つい先日も幼い頃から信長の面倒を見ていた平手と言う忠臣が態度を改めるようにと抗議の切腹を行ったがそれで態度が改まった様子もない。 誰かこの男を意のままに操ることができる人物はいないものか……


「どうした、帰蝶。 むづかしい顔をしているぞ? 俺のコレは満足いかないか?」
そう言って巨根が私の胎内の奥を激しく突く。


「あ、あぁぁぁ! ひゃぁん!や、らめれす、そんな…… あ、あぁん!」
「あはは、そうだ。 お前はそうやってなにも考えずによい声で鳴いていればいい」
楽しそうに笑いながら私の中に突きいれる。


悔しい、この気持ちよさに流されてしまう自分が悔しい。 お前だって、私の立場になればなにも考えることが出来なくなる…… あれ?


まてよ?射るべき将が手の届く場所にいるのになんで私は射る将の乗る馬を探しているんだ?
私を上から見下ろしている織田信長のマヌケ顔を見た途端、熱く火照った頭の中が冷めてゆく。


別に私の部下が信長の側近と入れ替わらなくても私自身が信長になってしまえば……
「うふ、ふふふ……」


「ん?どうした帰蝶? そろそろイくぞ」
「いえ、ちょっとした名案が浮かんだもので…… あはぁ、あ、あぁぁぁ!」
信長の巨根から熱い汁が私の胎内にぶちまけられ、話の途中で私はイってしまった。
気を失う寸前、私は頭の中に浮かんだ自分の計画に笑いを浮かべて……


               *


翌日、いつもの夕餉に私はクスリを仕込んだ。 小者の藤吉郎に美濃の父上の元に取りにやらせた里の薬師が作り上げた強力な睡眠薬だ。 これを飲めば一日は目覚めることはない。


「う?」
「どうしました、殿? 昼の遠乗りでお疲れがたまっているのでは?」
私は椀の汁を飲みながら信長を気遣うふりをする。 薬が効いてきたようだ。


「そうかな?何か急に眠気が……」
そう言いながら手から椀がこぼれ落ち、身体が横に崩れ落ちる。


「いいわよ」
私の合図で隣の間で控えていた付き人達が入って来る。女が五人、男が二人。共に美濃から私に着いてきた父上の腹心中の腹心達だ。


「これでちょっとやそっとでは信長は目覚めません。信長の服を脱がせなさい」
「しかし、いいのですか?帰蝶様が信長に成り代われずとも私達の誰かが代わりに……」
信長の着物を脱がせながら男の一人が私に問いかける。


「いえ。私もこの戦国の世で殿方のように生きてみたいと思っていたのです。 私が信長になれば尾張一国を自由にできるのです。素晴らしいと思いませんか? 私は女の役目が子を成すだけと言う生き方には不満がありますから」
そう言って着物を脱がされた信長を見下ろしニヤリと笑う。


やがて全裸にされた信長は男達の手によって隣の寝所の布団の上に運ばれる。


「それでは私が呼ぶまでまであなた達は隣に控えていなさい」
私は男達を下がらせ、女だけになると文箱の中から皮剥丸を取り出す。


「それが皮剥丸ですか?」
女の一人が私に尋ねる。


「そうです。父上のいた隠れ里の一族が作り出した、人の皮を生きながら剥ぎ取る呪具」
鞘から短刀を抜きだし、刃を裸になった信長の喉元に突き立てる。


「うっ」
眠っている信長が少しだけ苦痛のうめき声を上げるが起きる気配はない。 私はそのまま、刃を下半身の方に下ろしていく。 信長の身体に一直線に朱の線が走る。


「「「おぉ」」」
女達の口から声が漏れる。 やがて信長に付けられた傷口がパックリと割れる。


「今です。 信長の身体から皮を抜き取りなさい」
私の命令に女達が動き、あっけなくすっぽりと皮が剥ぎ取られる。 後には皮を剥ぎ取られ全身を桃色に照らされた人形のような信長が布団の上に残される。


「それでは次は私の番ですね」
私は自分の喉元に皮剥丸を突き立てると同じように下半身まで引き下げ、自ら皮を脱ぐ。


「ふふふ、さすがにこのままでは少し気味が悪いですね。 信長の皮を寄越しなさい」
私は女の一人から信長の皮を受け取ると代わりに私の皮を渡す。


そして私は受け取った皮に足を通す。 代わりに私の皮は女達に寄って信長に着せられて行く。


やがて、何も知らずに眠る帰蝶を含み笑いで見下ろす信長の光景が隣の間から入って来た男達の目に映るのだった。


帰蝶になってしまった事も知らずに眠る信長に布団を掛けさせ、私は指示を出す。
「この男は今から帰蝶で私が織田信長です。間違えないようにして下さい。 明日の夜まで起きることは無いはずですが、夜まで見張っているように」


「帰蝶様、いえ、信長様はどうされるのですか?」
男の一人が尋ねる。


「とりあえず、明日一日は信長として行動してみます」
「大丈夫ですか?尾張の家臣達に見破られては……」
男が心配気に尋ねる。


「普段から信長は行動も言動も唐突で意味不明なものが多いので、今更私が多少おかしな言動をしても強気に出ていれば不審に思われることは無いはずです」
要は自信満々でいれば向こうの方で納得するしかないのだ。


「なるほど、さすがは尾張の大ウツケ様ということですか」
男の感想に周りの者達が小さく笑いさざめく。 何も知らずに眠り続ける今は私の姿となり果てた織田信長を見下ろして。




やがて、夜は明け……


               *


そして日が沈み……


「殿、お帰りなさいませ」
私は腹心の家来達に迎えられて屋敷に戻った。


「如何でしたか、信長の身体は?」
「うん、最初は途惑ったが今はすっかり馴染んでいる。 馬も一人で乗り慣れてはいなかったが、少し経てば思う様に操れるようになったしな。 乗馬があれほど爽快なものだとは思わなかったよ。 今日一日は尾張の大ウツケとして存分に楽しませてもらった」
背中から下げた種子島を手に取り、そばの松の木を狙って見せる。


「男というものはいいな。 全てが自由で。 それで、自由を失った帰蝶はどうしてる?」
そう言って種子島を家来の男に渡して微笑む。


「ずっと、お休みになっておられますが、そろそろ目覚められるころだと。 それで正体がバレる事はなかったのですか?周りには信長様の忠臣が付いているはずですが?」
「まったく疑問にも思われなかった。 普段からの行いというのは大事だな」
私は笑いながら玄関を上がり、ズカズカと本物の信長の眠る奥の間に歩いて行く。


ガラッと寝所の襖を開けると昨日までの私があどけない顔で眠っていた。
「よく眠っているな」


「はい。夕べから一度も目覚めておられません」
中で正座して夕べから信長の様子を見ていた腰元の一人が返事を返す。


私は信長の頭の横にどかりと胡座をかいてその寝姿を見下ろす。
こうしてみるとなかなか可愛いモノじゃないか、私の寝顔は。


じっと見ているとこの寝顔をメチャクチャにしてみたいという衝動に駆られる。 私の身体が織田信長の皮に影響されてきているのだろう。
信長が夜ごと、私の身体を求めた気持ちがわかるな。ふふふ……


「おい、起きろ」
私は片手を信長の肩に当てて軽く揺らしてみる。


「う、ん……」
信長が軽く声を漏らして寝返りを打つ。


ふふん?可愛いじゃないの。私はニヤリと笑うと信長の下の枕を払いのける。


ゴチッ
「痛っ」
「帰蝶、目が覚めたか?」
薄ぼんやりと目を開けた信長に声を掛ける。


「ん?お前は誰だ! くせ者!」
目の前に男がいることに気づき、布団をはねのけて片膝立ちになって枕元の刀を探す信長。


「慌てるな、帰蝶。 よく見てみろ」
「どこのどいつかは知らないが…… ん?俺に似た顔だな?オヤジの隠し子か!」
私の顔を見てトボけた事を言う信長。


「俺は尾張の領主、織田信長だ」
「はぁ?巫山戯るな!尾張の領主は俺だ」


「まだ気がつかないか。自分の顔をよく見るがいい」
そう言って私が後ろに手を伸ばすと腰元が銅鏡を手渡す。それを私は信長に翳して見せる。


「な、なんだ、この顔は!」
私の手から鏡をひったくり、そこに映った顔に驚愕と共に見入る信長。


「わかったか? 今日からはお前が美濃から俺の元に嫁に来た帰蝶で、俺が尾張の領主の織田信長という事だ」
「ふ、巫山戯るな!お前、帰蝶か!? 俺の身体をどうした?返せ!」
そう叫んで信長が私に両手で掴みかかる。 しかし私はその手を逆に軽くつかみ取る。


「クソッ、放せ!」
「ふふふ、色白の肌に華奢な身体。 いくら抵抗しようと男に手も無くつかみ取られる。 どうだ?女というのはか弱いものだろ?」
振り放そうと必死に腕を動かすが、私の男の力の前にはまったく無力だ。


「うるさい!早く俺の身体を返すんだ!」
「今も言っただろ?今日からは俺が織田信長でお前が帰蝶だ」


「俺と入れ替わってなにをする気だ!」
「とりあえずは天下統一ですかね?」


「天下統一?何を言ってるんだ尾張の領主が天下統一などできるわけが無いだろ!」
ホント、この男には野望というものがないのだろうか? たかが田舎の一領主で終わる気でいるのか?


「男と生まれて天下を目指さないでどうするのだ? だから、俺がお前に代わって天下を取ってやると言っているのだ」
私は自信満々で信長を見下ろす。 私に両手を拘束されたまま、悔しげに私を見上げる信長。


「それに……」
「それに? なんだ?」


「あまり、俺に逆らうようならそのまま斬り捨ててしまってもいいんだぞ? 信長という男はそういう暴挙に出ても誰も不思議に思わないからな?」
そう言って、私は握っていた信長の両手をそのまま持って布団の上に身体を投げつける。 布団の上に投げ出される信長。


私が手を後ろに向けると藤吉郎が意図を察してその手に刀を渡す。 そのまま鞘を投げ捨てると抜き身の刃が光る。


「妻に不手際があったので斬り捨てる。 これで文句を言う者はいない。知っているぞ?家臣の中には美濃から来た姫はマムシの娘だから信用出来ない。何かおかしな事をしないウチに誅殺してしまえ、と進言してくる者が居ることを?」
そう言ってニヤリと笑って、信長の喉元に刃を向ける。


「ひっ!ウソだろ!?冗談はやめろ」
信長が布団の上に投げ出された状態のまま腕を使ってあとずさる。


「あぁ、冗談は言ってない。今この場で刀のサビになるか。 俺に従うか決めろ」
そう言ってもう一度、信長の喉元に切っ先を向ける。


「俺に…… 俺に帰蝶のマネをしろというのか?」
「マネをしろと言ってるんじゃない。帰蝶になれと言ってるんだ。 なに、簡単なことだ。自分が帰蝶である事を自覚して生きていけばいいだけの話だ。 お前も言っていただろう?綺麗な着物を着て美味い物を喰って、私に抱かれているだけでいいんだ、簡単だろう?」
ゴクリ、緊張してるのか、信長の喉が鳴る。


「そんな事が俺に出来るわけが……」
「それでは死んでもらおうか。 仮にも夫婦だった縁で、お前を生かしておいてやるという私の慈悲は無駄に終わるか」
そう言って刀を引くと大上段に持っていく。


「ま、待て!俺を殺すと美濃と尾張は大変な事になるぞ!今の俺は美濃の斎藤道三の娘の姿なんだから織田信長に殺されたとなると斎藤道三に尾張を攻める口実を与えることになるぞ!」
おや?少しは頭が回るようですね? でも、それくらい私も考えてますよ。


「そうか。だったら、お前をそこの腰元と入れ替えてから斬るとするか」
「私は帰蝶様になるのですか? 光栄です。 私が帰蝶様として生きていけるならこの身体が斬られても後悔はありません」
私に指名された腰元が笑顔で応じる。


「それでは帰蝶と腰元を入れ替えてから斬ることにするか。 帰蝶付の腰元を斬ったところで斎藤道三は気にもしないだろう」
そう言ってニヤリと笑うと刀の峰で肩を叩きながら信長の腕を取って立たせようとするが、信長は激しく首を振って抵抗を試みる。


「まて、やめろ!俺を今度は腰元にする気か!」
「お前が選んだのだろう?自分の死を?」
そう言って酷薄に笑って立ち上がらせようとする。


「待て!待て待て!斬られるのはいやだ!」
「だったら大人しく帰蝶として生きていくか?」


「ちょ、ちょっと考えさせてくれ」
真っ青な顔で信長が懇願する。
「何を考える事があるというんだ?嫁か、死か。 単純な二択だろ?」


「信長様」
そばで控えていた藤吉郎が私に声を掛ける。この男も美濃から連れてきた隠れ里とは無縁の小者だが、機転が利き私の意図を的確に察して動く事が出来るのである程度の事情は知らせてある。


「なんだ?」
「帰蝶様もいきなりの事で混乱されておられるのでは? ここは一つ、少し冷静になって考える時間を与えられては如何でしょうか?」
そう言って私に頭を下げる。


「ふむ?」
そう言って信長を見下ろすと涙目で必死になって藤吉郎の話を肯定するようにうんうんと頭を上下させている。 


「時間を与えたところで結果は変わらないのだが…… そういえば腹が減ったな?夕餉の支度はできているか?」
腰元に声を掛けると「できております」と返事が返ってくる。


「それでは俺はメシを食ってくるから、お前たちはこいつがおかしな事をしないように見張っていろ」
と言い捨てて腰元と家来の二人を残して部屋を出る。


私が部屋を出た後、藤吉郎が信長に声を掛ける。
「信長様、災難でございましたなぁ」


「え?」
布団の上で振るえていた信長が顔を上げて藤吉郎をみる。


「帰蝶様は道三様の気性を色濃く受け継いでおられるので言った事は本当にやられますよ?」
「このままでは信長様は帰蝶様に斬り殺されてしまいますよ」
腰元達も信長に同情的な声色で声を掛ける。


「お前たちは一体……」
「私達は帰蝶様の家来ですので正面切って逆らうことはできませんが、信長様にも死んで頂くわけにもいきません」
「ここは一つ、帰蝶様の言葉に逆らわずに受け入れてもらえませんか?」


「俺に帰蝶になれというのか!」
「信長様は女子供に信長様の代わりが出来ると思いますか?」


「えっ?」
「帰蝶様に天下統一などと言う覇業が本気で成せると?」
藤吉郎と腰元が信長にそう問いかける。


「それは……」
「無理でございましょう? 帰蝶様は今、信長様になれた喜びで舞い上がっておられるのでございますよ。 女の帰蝶様に天下が取れるわけがないでしょう?」


「それはどういうことだ」
「今すぐとはもうしませんが、暫く信長様をやられれば信長様の苦労がわかって根を上げられると思いませんか?」
「多分、信長様に助けを求めてこられるのでは?」
二人がそう言って信長を持ち上げる。


「た、たしかに……」
「"信長様、助けて下さい、帰蝶に信長様の代わりは無理でございました"」
「"身体はもうお返しいたしますので浅はかな帰蝶をお赦し下さい" そう言って、泣きついてくるとは思いませんか?」


「……言ってくるだろうな。 しかし俺の身体を元に戻せるのか?」
「はい、戻し方は帰蝶様だけが知っています。 そうなったら後は信長様のものですよ」
「後は帰蝶様に身体を戻させ、信長様の大きな度量を浅はかな女に示すだけ……」
二人が交互に信長を煽て持ち上げる。


「そうだな、うん。 しかし、なぜお前たちはそんな事を俺に教えるんだ?」
「我らは帰蝶様の家来でございます。 その時は帰蝶様を少しばかり叱って赦して頂ければ」
「その為ならば、我ら両名は信長様を陰ながらお助けさせて頂きます」
そう言って信長に頭を下げる二人。


「つまり、帰蝶の命乞いをしていると言うことか?」
「「はい」」
二人の返事に信長は何かを考え、その顔には笑いが含まれる。 頭の中では何を考えているのか。


「それで俺はこのまま帰蝶の振りをしろというのか?」
「しばしの間です。 帰蝶様はあの通りの性格です。 今はヘタに帰蝶様に逆らうと信長様は本当に斬り殺されかねません」
「それでは帰蝶様はもう自分の身体に戻れなくなってしまいますし、先程の話通りに信長様は私として斬り殺されてしまいます」
先ほどの私の振る舞いを思いだしたのだろう、信長の身体が恐怖にブルッと震える。


「帰蝶が根を上げるまで俺は帰蝶のふりをするしか無いのか」
「なるべく帰蝶様の機嫌を損ねないようにしてもらうほかは……」
「しばしの間、帰蝶様のお戯れに付き合うと思っていただければ」


「帰蝶のふり…… 俺にできるのか?」
考え込む信長。


「大丈夫です、我らがお手伝いさせて頂きます。 その間はお気楽に女性というものを楽しんでいればよいのですよ? 殿方が女性に成るという体験など誰にも経験ができるものではありませんよ?」
「女というのも楽しいものですよ? 先ほどの話ではありませんが、好きな物を食べて着飾って暮らしていればいいのですから。 いつもお忙しい信長様に与えられたしばしの戯れと思って頂ければ」
そう言って頭を下げる二人。


「なるほど。 戯れに遊んでみる女の生活も一興か……」
落ちたか? 信長にわからないようにニヤリと笑う二人。


私も陰で三人の会話聞いてニヤリと笑ってその場を立ち去る。
この辺りは夕べ、打ち合わせ済みだ。私が信長を恐怖で追い詰め、その後に二人が信長を安心させる。


後は二人が信長を上手く誘導するだろう。計略通りだ。


               *


「どうだ、帰蝶。 覚悟はできたか?」
私はしばし刻を置いた後、寝所へと帰ってきて仁王立ちで座っている信長に尋ねる。


「わかりました。今日から私は帰蝶として生きます」
神妙な顔をして私に向かって頭を下げる信長。


後ろの方で二人が私に向かって信長に気づかれないように笑いかける。


「俺が信長だと言う事に異論はないな?」
「はい、あなたが織田信長様です」
二人に芝居を打つように言いくるめられたのだろう。 それが芝居で無く本当になるとも知らずに……


「ふふ、、判ればいい」
「あの…… 一つ伺ってもよいでしょうか?」
上目遣いでおずおずと言った風に私に尋ねかけてくる信長。


「何だ、言って見ろ?」
「もし、信長様が何かの理由で織田信長を演じるのを嫌になられた場合はどうなるのでしょう?」


「俺が織田信長を嫌になるワケないだろう?尾張の領主だぞ? そしてこれから天下を目指そうというのに嫌になるワケが無いだろう?」
そう言って気を悪くした様に刀の柄に手を伸ばす。


「いえ、万が一の場合です! 信長様が天下をお取りになる事を微塵も疑っておりませんが、万が一」
信長が私を必死に宥めようとする。


「ふん。まぁいい。 万が一か? そうだな、万が一にも信長をやるのが嫌になったらこの身体はお前に返してやるかな?」
そう言って笑ってみせると信長が密かに笑うのがみえた。 


私が言質を与えたことで自分が元に戻れると思い込んだのだろう。 多分、心の中では元に戻った後に私にどうやって復讐をしようかと考えているのかもしれない。 こうやって少しだけでも希望を与えておけば意地になって私に刃向かったりはしないだろう。 


逆にこれからは私の機嫌を取ろうと自ら進んで私の振りをするはずだ。


「ん?なんだ?ひょっとして元に戻れると思っているのか?」
「いえ、そ、そんな事は……」
信長が慌てて否定する。


「怪しいな?何か企んでるんじゃないのか?」
私は心中を隠して意地悪く信長を睨みつける。
「何も企んでなんかいませんって。 私は織田信長様の妻、帰蝶ですよ」
そう言って卑屈に白々しい小芝居を打つ。


「ふん?まぁ、いい。本当かどうかはじきにわかるだろうからな」
そう言って私は座り込んでいる信長の前で膝立ちになると寝間着の帯に手を掛ける。


「あ、なにを」
信長が慌てて帯をおさえようとするが、私はその手を強引に振り払って帯を解いてしまう。
信長の寝間着の前がはだけて胸が露わになる。


「うわっ」
慌てて寝間着の前をかき寄せる信長。


「ふふ、どうした? 俺とお前は夫婦なんだから裸なんか見られても大丈夫だろ?」
「いや……、でも……」
顔を赤くして私から顔を背ける信長。 ふふ、その表情が私の嗜虐心を掻き立てるのよね。
今の信長は昨日までの私。 昨日まで信長が私を抱いていた気持ちが痛いほど判る。


「まさか、口先だけで自分は帰蝶だと言っていたのではないだろうな? まさか、俺を騙そうとしていたのか?」
殊更冷めた口調で信長を詰問する。


「いえ、そのような!」
私が刀に手を伸ばしたのをみて信長が私に抱きついてくる。


「だったら、夫婦が夜の営みを行う事に異存は無いな?」
「……はい」
真っ青な顔で信長が力なくうなずく。
身体を人質に取られているとはいえ、もう少し反抗するかと思ったがそれほどの気概もないらしい。


「では、その寝間着を脱ぐがいい」
私の言葉にのろのろと信長が寝間着を肩から落としていき、真っ白な裸身が露わになる。


「どうだ、女の乳房を持った感想は?」
「は、恥ずかしいです」
座った格好で顔を真っ赤にして胸を隠すように腕を組む信長。
私は信長の腕を掴むと男の力で強引に胸から引き離す。


「あっ」
小さく悲鳴を上げるが、あえて逆らおうとしない。と言うかできないのだろう。
私は信長の乳房に口をつけ、少し吸い上げてみる。


「あう……」
「感じたか?それが女の乳房を持つと言う事だ」
そういいながら片手で優しく乳房を揉みながらもう片方の乳房を口で攻める。


「ひゃ、あ、あぁん……」
目を閉じて喘ぎ声を上げる信長。
それを合図に控えていた腰元と家来の二人が寝所をそっと出て行く。


「どうだ、お前が仕込んだ女の身体は?いいものだろ、女というのは?」
「だ、だめだ。や、やめてくれ」


「お前は俺の妻なんだろう? なんだ、その男のようなしゃべり方は?」
「やめてください…… 胸が、胸が……」


「胸がどうした?乳首が立ってきたのか?」
私は笑いながら信長の乳首をつまみ上げる。


「あひゃ、やめて、やめて下さい!」
そう懇願するが、自らの手で私の腕をどかそうとはしない。 昨日まで自分の身体だったのだからよくわかる。 信長は今、自分の身体から受けている快楽に途惑っているのだ。


乳首からの痛みと快楽の両方に戸惑い、私の手を払いのけたい気持ち、その先を感じたい誘惑、両者が信長の中で葛藤しているのだ。 だから口では否定しても行動には出ない。 だから私は信長にさらにその先を教えてやることにした。。


「やめてくれと言っても……」
私は空いている方の手を信長の股間に伸ばす。
「身体は正直だぞ? ほら、本物の女のように股間はこんなに濡れぼそっておるわ」


そう言って私は信長の股間を撫で上げた指を信長の目の前に示してみせる。 その指先は愛液で濡れ輝いていた。
「いや!」


「何が嫌なんだ?お前の股間にはもう竿は付いておらん。 その代わりにお前の竿を受け入れる孔が開いておるだけだ。 しかもこのように俺の竿を欲しい欲しいと涎を垂らしておる」
そう言って片手で胸を揉みながら、もう片方の手を股間のワレメに持っていく。


その奥に指が入った瞬間、信長の身体がビクンと小さく震える。
「やめて…… お願いですからやめて下さい」
目に涙を滲ませて懇願する信長。 しかし、ここで止めては私が不完全燃焼になってしまう。
初日だからあまり追い詰めるような営みはしないが、ヤる事だけはやらせてもらう。


「ほらほら、本当に嫌なら本気で抵抗してみるがいい」
そう言いながら私は信長への愛撫を続ける。 その間も信長は形だけは抵抗を試みるが、私の男の力と信長の身体が求める快楽への欲求はそれを許さない。


「どうだ?そろそろお前の孔が私の竿を求めているのがわかるだろう?」
そう言って私は信長の股間の正面に膝立ちになり、両手で膝を大きく開かせる。 そこには昨日まで私が信長に翻弄されてきた女陰が蜜を溢れさせていた。 それは昨日までの私の姿だ。


「い、いや。 こ、怖い……」
震える声で信長が自分の股間を守るように両手で押さえる。
「大丈夫だ。その身体はお前自身が私のコレを気持ち良く受け入れるように仕込んだ身体だからな。 
その成果を自分自身で試してみるがいい」
そう言うと私は自分の男根をつかみ、信長の手を払いのけて女陰へと導く。


「あ、あ、あぁ、ひや!あ、あぁぁぁ!」
ずぶずぶと私の男根が信長の股間へと入って行く。


「おぉ!これが男の感じ方か。 お前の身体が私の竿をグイグイと締め付けて…… おぉ!」
これが男が女を征服する悦びというヤツ…… 目の前では信長が目を見開き、空気を求めるようにパクパクと口を開ける。


私はゆっくりと信長の胎内の肉壁を竿で擦りつける。 その度に信長は呆けたように口を開けて何かを叫ぼうとする。
「ひ、ひぃぃ、ひぃぃ……」


「どうした、帰蝶?何か言いたいのか?」
「ひゃぁん…… らめ。なにも考えられない。 抜いて。抜いて下さい信長様」
息も絶え絶えにやっとそれだけを口にする信長。


「ははははは。 何を考える事がある? お前はもう一生、その事だけを考えていればいいんだ。 楽だろう? 俺が与える綺麗な着物を着て、美味い物を喰って、夜はこうやって俺に極楽浄土を味あわせてもらっていればいい。 こんないい事はなかろう?」
そう言って笑いながら信長の深いところを一突きする。


「ひゃぁ! で、でも私は尾張の……」
「尾張の信長の嫁に来た帰蝶だ。 だったらそれでいいではないか?」
そう言いながら信長の身体を弄ぶ。 あぁ、男ってなんていいんでしょう。


「私は帰蝶……」
「そうだ。 ……いや、お前はこれからは濃姫と名乗れ」


「濃……姫?」
「そうだ。 美濃から来た姫である事を自ら認める為に美濃の姫、濃姫と名乗れ。 いいな?」
そう言って更に胸を揉みしだき、股間を責め立てる。


「あ、あぁぁ、ひゃぁ、あん、あ、あ…… わ、わかりましたぁ、私の名前は濃姫ですぅ!」
嬌声を上げながら私の言葉を受け入れる信長。いや、濃姫。


「ふふふ、どうだ?女というものは?」
「あ、あ、あ、あ、あん……、頭がバカになるぅ……」


「元からバカだっただろ?何を今更。 それにお前はこれからなにも考える必要はないのだからどんなにバカになっても問題はないだろ?」
「ひゃうぅ!ひゃん、ひゃん…… いやぁ」
涙目で声を上げる信長。


男が初めて女の快感を体験するというのは肉体的にも精神的にもかなりの衝撃なのだろう。
昨日までの私が私の腹の下でせつなそう顔で喘ぐ。 昨日まで信長はこの顔を見て楽しんでいたのか。
これは確かに笑いが止まらないはずだ。 気の強そうな女が自分の前でだけ見せる特別な泣き顔がたまらない。 


自分の意思とは裏腹に私の男根をキュウキュウと締め付けてくる。 そろそろ頃合いか。


「それではお前の中に私のお情けを放ってやろう。 よい子を孕めよ? うっ!」
そう言って信長の胎内に熱いモノをほとばしらせる。


「孕む?俺が? ……ひいぃ、イヤ、あ、あ、あぁぁぁ!!」
腹の中に私の子種が放たれたその瞬間、信長はイってしまった。


「ふふ、どう女の身体で言ってしまった感想は? すごく気持ちがいいでしょう?と、言っても気を失っているから聞こえないか」
そうつぶやきながら私は信長の中から男根を引き抜く。


まぁ、お互いの皮を着てまだ一日。 身体は馴染んではきているが、まだそれを受け入れる胎内もできてはいないから孕むことはないだろうけど。
私は信長の股間から流れ出してきた白濁を見て微笑む。


まぁすぐに身体は出来上がるし、完全に馴染んでしまえば私の男根ももっと威力を発揮するだろうし、信長の身体も女として反応がよくなるだろう。


「今夜の快感はまだ序の口だぞ、濃姫。 お前はこれからどんどん女へと堕ちていく。 だが、安心するがいい。 お前が俺に逆らわない限り、お前のことは俺がちゃんと面倒を見てやるからな」
私は着物を着ながら、絶頂を得て素っ裸で気を失っている濃姫を見下ろして微笑む。





暫くして目覚めた濃姫に寝間着を投げて宣言する。
「お前は明日から濃姫としての立ち居振る舞いをこの者達から習え」


寝所に入ってきて濃姫の着付けを手伝う女達を指さす。


「立ち居振る舞い…… 私に女の真似事が……」
濃姫の口調がちゃんと女なのはいつ私が激高して刀を抜くかわからない恐怖があるからだろう。


「俺の妻として当然だろう。 それに…… お前は俺が"織田信長"に飽きて元に戻る事を考えているのかもしれないが、万が一そういう事があったとしても気がふれていると噂されている女の身体に戻る気はないぞ?」
そう言って笑う。


「気がふれている?」
「自分が織田信長だと言って見たり、男のような言動をしてみたり、がさつな振る舞いをするような姫は気がふれていると言われても仕方がないだろ? 俺はそんな不名誉な噂がある女になる気は無いぞ」


「…………」
「だからお前は精一杯、濃姫である事を自覚して一国の領主の姫として相応しい存在になれ。 俺が元に戻っても大丈夫だと安心するような姫にな?」
私の言葉に、自分が織田信長に戻れることを前提に考え込む濃姫。 もっとも、戻れることなどは全くないのだが。


「わかりました、信長様」
やがて、私の言葉に納得し、そう言って頭を下げる濃姫。


「大丈夫ですよ、濃姫様。 私達がどこに出しても恥ずかしくない姫様にして差し上げますから、安心してください」
先ほどの腰元が濃姫の肩に掌を掛け、耳元でそう言って妖しく微笑む。


               *


翌日から私は尾張掌握の為に動いた。 周りに疑惑を持たれるかと思ったが「殿がまともになられた」
と家臣団からは逆に積極的に受け入れられてしまった。


そして濃姫は腰元達の飴と鞭を使った巧妙な指導により、昼は貞淑な姫、夜は妖艶な遊女のように織田信長の妻として仕上がっていった。


「どうだ、濃姫。 最近の気分は?」
夕餉を食しながら濃姫に問う。


「はい。最初は何枚もの着物で身体を締め付けられ身体動かすのが大変でしたが、今では殿方のような身軽な着物は逆に裸でいるようで……」
そう言って羞じらう様に微笑む濃姫。 うん、私好みのなかなか可愛い女になったものだ。


「そうか。だったら俺の前で裸になるのはイヤか?」
私は椀を傾けながら意地悪く笑う。


「い、いえ…… 殿の前で裸になるのは恥ずかしいですけど、嫌ではないです……」
俯き加減にメシを口に運びながら答える濃姫。


「ふふふ、今夜も可愛がって欲しいのか?」
「……はい」
濃姫が顔を赤らめて俯き加減に小さな声で応える。


くくく、これが少し前まで馬を駆って山野を思うままに走り回っていた男か。 今では自分の皮を着た
者に夜ごと太く固い男根で刺し貫かれる事を求める女……


つくづく、尾張に嫁に来て良かった。 まさか私が自分自身で一国を率いて戦場を駆けまわることがで
きるようになれるとは。 これで父上の夢を直接叶える手伝いができるようになる。




私はここでついに私の夢を手に入れた!







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