TS(トサ)えもんーーだれでもきぐるみ 第二話 作:お茶か牛乳 「TSえもーん」 突如、部屋の中央にあるミカの姿で直立していたきぐるみが発光したかと思ったら、ファスナーを下ろしてこっちに戻ってきたヒカルは、いつもの困った時にあげる情けない声を響かせた。 「んあ、なんだいヒキタくん。君、ミカちゃんに成り済まして、これから出掛けるんじゃなかったの」 「それがねえ、シャワー浴びるまではやる気満々だったんだけど……出掛ける準備がさあ、めんどくさいんだよ。ねえ、なんで女の子ってさ、そのまま普段着で行っちゃダメなのかな」 そもそも君の場合、男でも友達と約束して出掛けたことなんてないじゃないか。と、TSえもんは思ったが。さすがに可愛そうなので黙っていることにした。 それにしても流石十年弱ひきこもり。出不精すぎて、ちょっとやそっとTSしたくらいでは、その勢いで身支度して外出とはいかないらしい。 「ねえ、TSえもん、このきぐるみにはさ、着たまま本人の意識を起こして勝手に体を動かしてもらう機能とかないのかしら。ほら、よくあるじゃない、そういうの」 「ああ、そういうのねえ。まあ、無くはないけど」 「もう、なんだよ。要はあるってことだろ。もったいつけないで教えてよ」 「はいはい」 よくもまあ、他人から道具を借りている立場でそんな偉そうに指図をするもんだ。と、TSえもんは思ったが、それを言うと居候をさせてるんだからそのくらいで文句を言うなとこの屑が言い出すのが目に見えていたので、TSえもんは素直に応じた。 ひきこもりが家主気取るなとか、言い返すこともできたけれども。 まあ、これもTS普及のためだとTSえもんは懐に手を突っ込んだ。そしてすぐに目当てのものを掴むと、ヒカルの目の前に掲げて見せる。 「体感アイマスクー」 それは見た目からすればただのアイマスクだった。 「これはそのきぐるみのオプションでね。きぐるみを着て、ただしファスナーはあげないまま使うんだ」 「するとどうなるの?」 と、問いかけながらも、どうやら予想がついているらしいヒカルの顔はにやついている。お約束になっているやり取りを律儀にやるあたり、ヒカルもTSえもんとのこの関係を楽しんでいるのだ。 「意識が覚醒した本人が体を動かすけど、その五感を自分のこととして体感できるのさ。ただし、五感だけだから、何を考えてるかはわからないけどね。まあファスナーさえあげちゃえば、意識を交代して、記憶から読み取れるし」 「へぇー。ねえ、オプションってそれだけ?」 「オプション自体はまだあるんだ……同じ状態で心も読み取れるようになるとか、意識に割り込みをかけられるとか……でもどれもぼったくり価格だし、皮の基本性能で補えそうだから、ぼくは二つしか買わなかった」 これら、TSえもんが使うTS道具を、TSえもんは未来TS堂から買っている。だがほぼ全ての道具が人権とかそういうのを無視するスレスレ……いやむしろ大きく踏みにじるようなものが多いので、裏ルートを通さないと手に入らない。おかげでかなり価格が高い。 「じゃあ、オプションはこれともう一つあるの?」 「うん。それはそのきぐるみそのものにつけてもらってある」 「え、もうついてるの?」 「そう。ていうか、そのアイマスクはおまけみたいなものなんだよ。皮につけたオプションのほうが高くてね」 はぁ、とTSえもんは息を吐いた。ほんとはもっと色々つけたかったが、手が出せなかったことを思い出したためだ。しかしもう過去のことなので説明に戻る。 「それで、ついてるのは本体への感覚フィードバック装置。まあ、触感しか伝わらないけどね。他の感覚は別にいらないし、また高くなるから」 「ああ、そういうこと。あ、それで さっき僕がミカのきぐるみを触ったら、ミカになったTSえもんが声をあげたんだ」 耳敏く覚えていたらしい。つまりは、きぐるみ全身の触れた感覚が本人に伝わる機能だ。TSのみならず、アブノーマル系のプレイそのものへも興味が高くなっているヒカルはそれをすぐに察した。 「じゃあ、今のままでもこのきぐるみを触れば……?んっ」 その手は早速、全裸のままのミカのきぐるみの胸へと伸び、いやらしく触りだした。同時に、 『ひあっ!?』 ミカの部屋の方から驚きが混じった……単刀直入に言えば嬌声が響いてきた。 「あはは、ミカのやつ、びっくりして口を押さえてるや。ふふふ、ようし、なら僕のテクで一回イかせてーー」 「ヒキタくん、ヒキタくん」 オプションがえらく気に入ったらしい高笑いするヒカルの肩を、TSえもんは叩いて呼び止めた。 「んもう、なんだよ。気が削がれるじゃないか」 案の定、ヒキタはぷりぷり怒っていたが、TSえもんはそれに怒るでもなく言って聞かせた。 「いいのかい。ミカちゃんと友達の約束の時間。あんまりミカちゃんの邪魔をしすぎると、約束そのものがフイにされるよ」 「あぁー!そうだった!折角あんなかわいい子と約束してるんだ!絶対会わせてファスナーの金具をつけさせなきゃ!」 どうやら状況を把握できたらしい。そのヒカルに、一応説明を続けた。興味が完全に移ったようだから、聞き流されそうだったけれども。 「フィードバックはオンオフまでつけたらさらに高くなるから、常時発動してるからね。金具を誰かにつけて、変化したきぐるみを誰かが着てる限り、ファスナーがあがっていても下がっていても」 「おーけーおーけー。もうわかったからさ」 すっかり用無しとばかりに扱われ、これで自分の役割は果たしたかな、とTSえもんは、やれやれとまたもや中断されたTSエロ漫画の読書へと戻っていった。 最後にちらっとヒカルの様子を見ると、とりあえず妹の生活を盗み見るだけにしておくことにしたらしいヒカルは、アイマスクをつけたまま寝転んでにやにやしていた。 ◆◇◆◇◆ 最寄り駅から乗車し、割りと都会っぽいこの辺では一番大きな駅で、ミカは降りた。そのまま改札を抜けてすぐの出口で待ち合わせをしているらしい。 だがミカのが先についたようで、相手の姿はまだなかった。 そもそも何用でミカが塾の友達と街まで出てきたのか。ヒカルは記憶を読んで知っていた。なんでも、塾で同じ仲良しグループに所属している、また別の友達への誕生日プレゼントを探すことが目的らしい。 その誕生日が近い友達もヒカルは知らない子だった。そして、少々ぽっちゃりしているが、この子もまたかわいい。かわいい子ばっかり友達にするとは流石我が妹だ、とヒカルは満足していた。まあ、ヒカルがその辺の判断基準にちょっと細工をしているためだが。 しかしまずは今日会う子だ。どうしよう。とりあえず待ち合わせまでミカ本人に行かせたが、今のうちに体の主導権を奪っておくべきだろうか。 チャンスは何時やってくるとも知れない。その時にいちいちファスナーを上げてなんてやっていたら、逃してしまわないだろうか。いや…… ヒカルは思い直した。確かに、ミカの記憶は皮を完全に着れば把握できるが、演技をするのは自分なのだ。勝手に体がオートで動いてくれるわけではない。そのような状態で、自分がへまをやらかさないなんて保証はどこにもない。むしろ、へまする可能性のほうが大きい。 ここはじっと観察をして待ったほうがいいだろう。皮を着ればどんだけへましようが、体は本人には違いないのだから少々変に思われても問題はないだろうが、何もなくスムーズに金具を取り付けたいし、それになにより……絶対に今日のうちにあの子をものにしたい! その欲望がヒカルを突き動かしていた。 「お待たせー」 そうこうしているうちに、その子が来た。 「エリちゃーん!」 ミカよりも大人っぽいが、幼さも同居した美しい顔立ち。すらっと伸びた手足。実際に見れば(体感アイマスク越しだが)、余計に彼女の体が欲しくなった。エリというその少女の皮を。 ◆◇◆◇◆ ミカとエリはぶらぶらと近くのモールへと入っていくと、またぶらぶらとあてどもなく色々な店を見て回って行った。 あっちでは小物がかわいいと言い、こっちでは服を愛でる。その様子から、エリという少女の性格を観察した。 エリはどうやら、ミカの仲良しグループのリーダー格のようだ。 仲良しグループに所属しているのは全部で四人。そのうち一人がもうすぐ誕生日。ここで買い物をしているのは二人。じゃあもう一人は?となるが、別にハブっているわけではない。 もう一人は、誕生日の子と今日は全く別のところに出掛けているらしい。それというのも、折角のサプライズを、何かの偶然でたまたま買い物をしている現場で誕生日の子と遭遇なんてことにならないように、エリがもう一人の子に別のところへ連れ出すように提案したようである。 そしてもう一人の子のプレゼント買い出しの時には、ミカが誕生日の子を連れ出し、もう一人の子にはエリが付き添うという。 なんというか、めんどくさいことしてんな、とヒカルは思った。確かにこの辺で一番でかく店も多いここらには若者が休日集まるが、だからと言って、別にそこまで徹底しなくても別に会わないだろうと思うし、プレゼントなんてそれぞれで買って祝う側同士も当日までお互いのプレゼントを知らんとかでもいいと思う。 だがしかし、おかげでちょうどよくエリを皮にする機会に恵まれたのだから、不満はないが。 きゃっきゃと戯れるガールズトークを横目に、ヒカルはただ待った。絶好の機会というものを。気分はハンターだ。若い牝鹿たちは、その存在に気づくこともなく油断しきっている。 そして、ついにその時は来た。 左右に服がかけられた狭い道で、二人とも、よりいい服を見つけようと目の前に夢中になっていた。 そっと、ヒカルはファスナーをあげた。 ヒカルの部屋は光に包まれただろうが、一瞬でミカ本体の体内に移動したヒカルの意識にはその光を見ることはできなかった。 目の前には、服がずらーっと並んでいる。体感アイマスクで先程までも見ていた光景だったが、今度はミカの体を自分で動かせる。視線を、体の向きを、移動させられる。 ゆっくりと、相手に気づかれないように、ヒカルは振り向いた。 エリは、まだ服を品定めしていた。ミカの変化になんて、気づいてもいない。 無防備にうなじをさらしていた。 ヒカルは、身じろぎの僅かな音を立てることもないよう慎重に、今は自分のものとなったミカの首筋からファスナーの金具を外した。 ミカの鼓動が、どんどん高鳴るのを感じる。息が荒く乱れるのを抑えなければ。 そして、あとは一刻も早く行動しなければならない。今、服が選び終わり振り向かれでもされたら、元も子もない。 (ええい!行け!行くんだ僕!それっ!) 勢いよく出されたミカの手は、エリの首もとへと、吸い込まれるように直進した。そして、 「あれ、今、なんかした?」 はぁはぁと、別に疲れたわけでもないのに、荒い息をしてしまう。 「え、何が?」 目の前には……ミカの顔が見えた。 そう、体感アイマスクを通しているが、ミカの顔が目の前にある。 一先ずアイマスクを外して、自分の部屋に帰還したヒカルは、TS時のためにわざわざ部屋に置いている、大きな姿見の前へと移動した。 そこに、エリが映った。全裸のエリが。 ニヤニヤとした笑みを浮かべた彼女が、一回転をする。その背中には、閉まっていないファスナーがあった。 ◆◇◆◇◆ 「でぇ、彼氏がーーんっ」 「……大丈夫?さっきから変だよ?」 「んん、な、なんでもないよ。あはは。でも、体調悪いのかもぉ、うぅ」 (くくく……) いくら金具をつけることに成功したからといって、その場ですぐエリをきぐるみにして、ミカとバイバイということにはしなかった。 その衝動にかられなくもなかったが、それは後で十分時間が取れると自分に言い聞かせた。それよりも、今しかできないことをするべきだ、と。 今しかできないこと。ミカとの買い物を続けさせ、体感アイマスクで監視をしながら、ヒカルはエリへと変化したどこでもきぐるみの性感帯を弄り、その快感が容赦なくフィードバックされて身悶えるエリの姿を見て、黒い愉悦に浸っていた。 プライド高いからなのか、エリはおかしいと思っているようだが、その感覚を我慢し、ミカには気づかれないようにしているのが、ますますヒカルの嗜虐心を煽る。 だからと言って一気に絶頂へと至らせるわけでもなく、じわりじわりと、エリの快感のポイントを探るような手つきでヒカルはエリの体を弄ぶ。 この状況を、エリはいったいどう考えているだろうか。いきなり誰かに触られているような感覚が体を走る。それは止むことはなく、性感を溜め、むしろもんもんとさせるかのように絶え間ないのだ。 同じ快感に浸るヒカルは、そろそろ一度イってしまおうかという気になってきた。 そしてそれは、どうやらエリも同じだったらしい。 「ごめん、ちょっと」 「あ、うん」 ミカに一言そう断ったエリは、トイレへと向かっていった。 「お、オナるつもりか?」 まあ、実際は違うだろうが、そうであってもおかしくないくらい、きぐるみの体でさえ疼いていた。 「うわ……」 女子トイレの個室へと足早に入っていったエリは、すぐに己の下半身の状態を確認した。そこは下着をはいたままでも分かるくらい濡れそぼっていた。 「なによ……これ」 不快感に顔をしかめーーしかめた顔が、急に目尻は下がり、口角があがった、にやけ面へと変貌した。 「さぁーて、ちょっと楽しませてもらおうかな」 ヒカルがファスナーをあげたのだ。 「でも、その前に、ちょっと記憶をチェックしとこ」 目を瞑って数秒。エリの記憶の海にダイブする。別に記憶すべてを一気に把握する必要はない。主な人間関係や、日常の情報さえ分かればいい。 「家族構成は、姉一人の四人家族かぁ。お、お姉ちゃんも美人だねえ、ぬふふふ」 エリより四つ上の、女子大生の姉だ。エリとよく似ているが、エリが美しく成長すればこんな感じだろうという容姿をしている。そしてなにより、スタイルが段違いだ。 「家は……ほーん、あの辺なのか。学校は……ふんふん……よし」 あっという間にエリのプライベートを丸裸にして、ヒカルは満足げにうなずいた。これでいよいよ、お楽しみだ。 「はぁー、やっば、なにこれ。ぐしょぐしょじゃん」 便器に座ったまま、下着の中へと手を滑り込ませ、明らかにいやらしい感じで動かしながら呟く。折角なので、エリになりきってオナニーしてみることにした。 「ミカがいるってぇのに、さっきから疼いて仕方ないんだもん。うわ、やらしー」 さっきまでエリの秘所をいじっていた手を目の前にまで持ち上げた。そこから溢れだした汁にまみれ、濡れた指がてらてらと光っていた。 さらに迷うことなく、その指を鼻の前に持ってきて、臭いを嗅いでみる。 「あは、んー、ちょっと匂うねー。こんなだらだらさせながら、さっきまで人混みの中を歩いてたんだ、あたしって……んっ、ちゅぷっ」 臭いを知ったあとは、今度は味をと、指を舐める。ヒカルは別に、女性の排泄物に性的興奮を覚える嗜好はないが、それを本人のふりをして美少女にさせていることに、たまらなく興奮していた。 「ふぅ、あ、今度は胸見てみよっかなあ」 今はもう、冬も近い十月も終わりだった。トイレの中で脱ぐのは少々肌寒くもあったが、そんな少々の寒気では収まりがつかないくらい、ヒカルもエリの肉体も興奮していた。 迷うことなく上着の前を開けていき、ついにブラジャーに包まれた胸をさらした。ちなみに完全に脱がないのは寒いからではなく、半脱ぎが好きなヒカルの趣味だ。 「んー、手足は長いけど、ここはミカとそんな変わらないくらいかな。まあ、JCだしねえ」 実際に胸に触れ、揉み心地を確かめながら、何度も触れたことのあるミカのものと比べ、感想を述べるヒカル。まあ、もとから別に、そんなに大きさは重要ではないが。むしろ、 「……ん、あたしのも、もうちょっとしたらお姉ちゃんのくらいになるのかなあ」 こうして遊べるので問題はない。 「あ、やだ、おっぱい揉んでたら、こっちがまた切なく……んっ」 体の欲求に抗うつもりなどまるでなく、ヒカルは片手は胸を揉んだまま、下へも手をやった。 そろそろ小芝居もいい頃だった。あとは、この体の果てをみるだけだ。 「あっ、やっ、なかなか、感度っ、いいじゃん……下も、あんまてい、こう、ないし……」 下をいじる手はどんどん激しくなっていっていた。いつの間にか指が二本ほど膣へと入り込んで出し入れされている。 一方胸をいじる手は、ついに乳首をいじるようになっていた。 「そういや、んふっ、彼氏、いるんだっけ……こいつ……えっと」 手の動きは止めないまま、記憶を確認する。上手く集中はできなかったが、知りたいことは分かった。 「うわ、彼氏ともうやってんじゃん……んん、最近のJCめ……なら、容赦いらん、な」 最初から別に、優しくしようとかはヒカルには別に頭に無かったが、なんかむかついたのだ。実際、手の動きは更にはげしくなった。 もう、意味のある言葉を発する余裕も無くなるほどに、激しく。 入る時は無人だったこの女子トイレだが、もし今入ってきた人間がいれば、すぐにエリがなにをしているか分かるくらい嬌声もあげていた。 「やあ、いく、いっちゃう!すごいぃぃ、こんなとこなのに、あたし、皮にされて、トイレでいっちゃうぅぅぅぅ」 最後はもう、絶叫だった。激しい感覚がエリの体を貫き、ヒカルはしばし放心した。 倦怠感でダルい体をなんとか動かして、自慰の痕跡を消していく。別にやったまま抜け出ても良かったのだが、これからなにをしようかを考えながらエリの体を動かしたかったのだ。 トイレで乗っ取っていた空白の時間の記憶は、普通にむらむらしたから自慰をしたという記憶を作っておくことにした。 妙にすっきりしていたし、変に取り繕うよりもいいかなと思ったからだ。 そこでふと思った。空白に間の記憶を捏造する時に、自分が抜け出た後、エリ本人にさせたいことをしなければと強く想っておけば、させられるのではないかと。 そこでヒカルは、エリ本人に、オナった手を舐めたくなる、という暗示を残して試してみることにした。結果は…… 「なんでこんなとこであたし……んっ」 予想通り、上手くいった。すばらしい。これでさらにヤりたいことの幅が広がった。 さて、なにをしよう。 このきぐるみの機能でできること。それを最大限に活用して、このままエリでしたいこと。そうだ、エリの姉もいい。 エリ、エリの姉、どこでもきぐるみ、TSえもん……エリには彼氏が…… 暗い自分の部屋へと戻っていたヒカルは、エリのきぐるみを着たまま、にやっと笑った。 思い付いた。だが、これを叶えるためには、TSえもんの更なる協力がいる。 「TSえもーん」 猫なで声でヒカルはTSえもんへと擦り寄っていった。TSに関することならば、そんなことをしなくてもTSえもんはふしぎなTS道具で叶えてくれるけど。 ◆◇◆◇◆ エリの母、サユリが二階のベランダで洗濯物を取り込んでいる時だった。ぴんぽんと呼び鈴が鳴った。誰だろう。今日は来客の予定なんてなかったのに。 そうこう考えている間に、さらにもう一度鳴った。 「はぁーい」 一先ず降りようかしら、と思っていたら、 「あたし出るー!たぶん友達ー!」 娘がそう言って部屋から出ていった。それならいいか、と再びサユリは残りの洗濯物を取り込んだ。 いっぱいになった洗濯籠を持って二階の廊下に入ると、ちょうどその娘の友達とやらが娘と連れだって娘の部屋に入るところだった。 その時ふと、なんだろうか、違和感を覚えた。見たことのない娘の友達だったが、すごくその子のことを知っているような……そもそも、今部屋に入っていった二人のうち、どちらが自分の娘だっただろうか…… 思考の網の中に捕らわれそうになって、突然その網が断ち切られた。そんなことよりも、自分はこの後買い物に行かなければならなかったことを思い出した。 それもたっぷり二時間は家を空けなければならないのだから。 ◆◇◆◇◆ 「ただいま、エリ」 それは、キーワードだった。その言葉を聞いて、エリの目に意思の光が点るのが見えた。 エリの顔を正面から見ている。 鏡ではない。 別の誰かをきぐるみにしたわけでもない。一旦エリの母親をきぐるみにはしたけれど、すぐに金具はエリへと戻した。 今、ヒカルは、エリのきぐるみを着て、だがファスナーはあげないまま、エリの家へと来訪してきた。 エリには、チャイムが鳴って来た人物は大事な友人であり、すぐに自室へとあげるように暗示を与えて。 ファスナーをあげていないエリのきぐるみを着たままでも、さらにその上に服を着てしまえば、誰もヒカルに違和感を感じる様子も無かった。 あとはエリの記憶から知ったエリの自宅へと、これからしたいことに必要な荷物を持ってやってきたのだ。これは結構すごいことだった。 なにせエリのきぐるみを着ていたとはいえ、ヒカル本人が自分の意思で自室から、自宅から外出したわけだから。だが、これもすべてやりたいTSシチュエーションのためだ。 「へ、あれ……え、あんた誰?」 「なに言ってんの。あたしじゃん」 そう言って、目深に被っていたフードを取る。取らなくても、エリは薄々感づいていただろうが、それに決定的とどめを与える。 「あたしも、エリじゃん」 「……は?」 正気に戻ったエリは、事態の理解が追い付かず、目を白黒させている。だがそれも当然か、いきなり自分とそっくりな子が目の前にいたのだから。 「久しぶりに外出たから疲れちゃった。ま、その顔見れただけでも、その甲斐あったけどねー」 「なに……なんなの……え?」 「わけわかんない?そうだろね。ま、その間にやることやっちゃうから、よろしく」 そう言うと、ヒカルは服を脱ぎだした。今着ているのは、女体化などをした時に、自分で買った服だ。 エリの友達と会った時に気づかれると厄介なので、エリの趣味とは違う系統で、顔が隠れるようなのを選んできた。 そんなに凝ったものでもないのでするっと裸になっていく。ブラジャーはしてなかった。パンツははいていた。 「よ、よろしく?つかなに、なんで裸!?なんであたしと同じ顔!?」 「それはぁ」 光が、エリの光を塗り潰した。ぱぱっと裸になったヒカルは、ファスナーをさっとあげたのだ。 「君のきぐるみだからだよ」 言葉の続きを、入り込んだエリの本体に言わせる。視点は百八十度切り替わって、不動のマネキンとなったエリのきぐるみをヒカルは見ていた。 「くふ、くふふ」 笑いがこぼれる。顔がにやついてしょうがない。これからする楽しいことに想いを馳せて、部屋から出てきた甲斐があったと歓喜した。 その下卑た笑いを浮かべたままで、エリの本体にもストリップさせていく。目の前にあるきぐるみと同じ姿へとさせていく。 「裸になったら、どっちがどっちだかわかんないねぇ」 全部脱ぎ終えて、ヒカルはきぐるみへと近づいた。じろじろときぐるみの全身を見渡した。 「立体感のある鏡みたいだけど……」 そして、手を伸ばした。 「こっちに触ると、本体にも感覚がある……んふ」 胸に触れ、揉んだ。TSえもんの言う通り、ファスナーをあげてもきぐるみに触れた感覚は、本体にフィードバックされた。 これを利用しない手はない。ヒカルはそう考えたのだ。 「ふふふ、さあて、お楽しみお楽しみ。ちゅっ」 エリ自身で口づけし合った。両方の唇がふれ合う感覚はーーよくわからなかった。同じところが触れ合ったせいか。 ならばと、ヒカルはきぐるみの胸を揉んだ。 本体のエリと、なんら遜色ない柔らかさを手で感じながら、同時に胸を揉まれる感覚が沸き上がった。キスは続けたままで、両手ともで両胸を責めた。 「んっ、あっ、んん」 胸を揉まれているのに、きぐるみのエリは直立不動のまま、表情さえ変えない。逆に揉んでいるエリは、ぴくっぴくっと身もだえしていた。 「このまま、立ったままじゃやりづらいな……移動させよう」 きぐるみのエリを抱き上げて、なんとかベッドへと運んでいく。 重いヒカルの体が入っているはずのエリのきぐるみは、体重もエリ本体と同じになっていくのか、エリのあまり筋力がない細腕でも、引きずりながらなら移動させることに成功した。 動かないエリのきぐるみをベッドへと寝転ばせて、ヒカルはその上からのし掛かった。 再びキスをしようとする前に、今度は口が開かないかと指を口に入れてみると、なんとか押し開けることに成功した。そこで口づけを再開し、今度は舌をからませる。 同時に胸を揉みしだいた後は、ディープキスを止めて胸にしゃぶりついた。 胸から、鎖骨や、首筋、耳も舐め、再び胸の、今度は乳首へと舌を這わしていく。 どの行為をしても、きぐるみには反応はなく、舐めているエリ本体が快感にうち震え、その中にいるヒカルに倒錯した興奮を与えた。 夢中で乳首を舐め、あまがみしている時にヒカルは気づいた。きぐるみは直立不動の体勢のままだが、きぐるみの乳首が勃っていることに。 もしやときぐるみの下に触れてみる。そこは、濡れていた。動かなくても、このきぐるみも快感を感じているのだ。その事実がますますヒカルを煽った。エリ本人に快感を与えている気がしたせいだろう。 ヒカルは、その波に乗って、ついにきぐるみの秘所へと舌を這わすことにした。 だが流石に躊躇が起きて、恐る恐る、舌先を触れさせる。 「んひっ」 少女の舌で、少女の女性器に触れられる感覚、それがヒカルの脳天を貫いた。その事実が、かっとヒカルの頭を熱くした。 ただ、皮ものでTSをしただけではない。美しい少女が、自分の似姿を慰め、その快感を少女自身が感じる。その倒錯したエロスに、自分が一番深い所へ浸り、自分が主導権を握っている。 ああ、なんと素晴らしきTS! そう自覚した瞬間から、ヒカルは己の衝動を止めることもできず、いや止めるなんて判断も浮かばずに、一心不乱、犬のようにきぐるみのそこを舐めだした。 舐めれば舐めるほど、その快楽はエリ本体の中にいるヒカルを高ぶらせていく。絶頂へと、導いていく。 そのために、ただ単調に舐めるだけは無くなっていった。 クリトリスを執拗に責めたり、舌を膣にねじ込んでもみた。興奮のまま、きぐるみに再現されたエリの肛門まで舌でほじくった。 だが、まだ果てにイかない。イけない。 何かが足りない。 ヒカルは思った。少女にして、既に彼氏と行為経験があるような肉体なのだ。太いものを埋め込んでやらねばならぬのでは、と。 そうしてヒカルはいったんきぐるみへの愛撫を中断すると、自分が持ってきた荷物を漁った。 こんなこともあろうかと。 TSに関しては忘れ物などあり得ないヒカルは、以前TSした時に手にいれていた道具を持ってきていたのだ。それはーー 「双頭ディルドー~」 両先端ともに、男性器の形を模した道具、まさしくこんなこともあろうかと、いや、こんなことのためだけにヒカルはこの道具を持ってきていたのだ! 「きゅふふふ」 この、淫靡極まりない道具が突っ込まれる感覚が。しかもどっちも突っ込まれる感覚が。今から自分自身を襲うのだ。そう考えるだけで、発情しきったエリの体は、子宮がきゅんきゅん唸った。 肉体に引きずられるヒカルの精神も、男性のナニを模した道具だというのに、見ているだけでいとおしくて仕方なくなった。思わず、先端を舐めてしまうくらい。 実際、今から自分の膣内に入るのだから。と、ヒカルは丹念にそれを舐めあげた。黒いシリコンが唾液で光るまで舐め続けた。 そして、それをまずは己自身となっているエリの本体に入れていく。力を抜いて、息を吐きながらゆっくりと。 いくら彼氏がいて、何度も性交しているのであろうというエリの体でも、それはかなりの存在感を持っていた。それでも止めるつもりなどさらさらないヒカルが、エリの膣を蹂躙させていく。 やっと片側が根本まで入って一息ついたが、もう半分がこれからまた入るのだ。しかも、力を抜くなんてこともできない不動のきぐるみに入れなければならない。 それなのに感覚だけがフィードバックされてくるという。 だがヒカルはそんなことで臆するような男ではなかった。 まずは手で再びきぐるみのそこへと触れる。先程までの愛撫でそこは大洪水、十分ほぐれていた。本体に片側が入ったのだ、これできぐるみ側が入らないわけなどない! 快楽で湯だったヒカルの頭は、もう焦らすようなことをするつもりは微塵も起きなかった。ただただ快楽の高みへとイきたい。それだけしか頭に残っていなかった。 双頭ディルドの先端をきぐるみの秘所に合わせ、今度は一気に腰を突き出した。ずんと、ディルドが見えなくなるくらいまで埋まる。 「うお……かっ……は」 自分でした事とはいえ、衝撃で口がぱくぱくした。だが、呆けたのは一瞬だった。 ふんっと鼻息荒く気合い入れて腰を引き、また突き出す。今度は止まらない。 ぱんぱんと抽送音が弾け。少女の部屋で、その部屋の主たる少女が、自分自身とも言える少女の似姿を犯していく。 悶えているのは、腰を動かしている少女だけだった。ベッドに寝かされた少女は、股間に女性同士用の玩具を埋め込まれても、眉一つ動かさない。 「あひっ、うっ、ううううっ」 響く声も、一人分だけ。 「すげっ、これっ、自分で、突きたいとこ、突けるから、男とするよりも、絶対っ、あっ、感じる、うぅっ!」 言葉通り自分の当てたいところに突くためか、ヒカルは腰の動きを微妙に変えていき、快感のポイントを探っているようだ。 自分で自分を犯しながら、その快感は全て自分に降りかかってくる。まさしく究極の自慰であった。 「んはっ、こ、ここぉ!このままっ、あっあっあっ!」 ついに一番感じるポイントを探り当てたのか。ヒカルは一点に突き込むように腰の動きをさらに激しくした。 それによってもたらされる果てしない快楽の果てへと誘われ。ヒカルはついに、エリの体で絶頂を迎えた。 「あは、すごかったぁ」 ベッドにはきぐるみを寝転ばせたまま、エリの本体を着たままのヒカルもベッドへと腰かけた。というか立てなかった。まだ腰ががくがくしている。 「ここまでのは、エリちゃん本人も経験したことないんじゃないか」 実際そうだろうと思う。ちょっと記憶を見てみると、エリは今の彼氏に処女を捧げたようだが、まだ高校生の彼氏は、猿のように腰を振っているだけのセックスしかしてこないとエリは思っていた。 「じゃあ、残念だねえ。エリちゃん自身は味わえないなんてさ……ん、いや、待てよ」 ヒカルは考え込んだ。 「ああすれば、できるんじゃ。よし」 自分の素晴らしい思い付きを実行するため、ヒカルは立ち上がった。まずは再び双頭ディルドーを自分の中へと導いた。 ◆◇◆◇◆ 目が覚めると同時に、エリは激しい性感の中にいた。 「んひっ?な、なにっ、これ、うぅ」 ベッドに寝ているらしい自分の股間から、今まで感じたこともないようなオーガズムが、自分に襲いかかってきていた。 エリが目を開けた先には、まず光があった。自室の天井と、そこから降り注ぐ光。その光源と自分との間に、揺れる頭があるのが見えた。 「はっ!?ちょ、なに、あんた」 女だ。全裸で、だが何故かアイマスクをした女が、跳ねていた。 視線をその女の下の方へーー同時に、自分の下半身の方でもあるーーある一点へと集中した。 自分と女は、繋がっていた。下半身の一点で。ちらっと見える道具によって。頭が一瞬だけ真っ白になった。 だが、すぐさま現実へと引き戻された。激しい快楽は、絶え間なくエリを責め立てていた。 「やめっ、やめろっ!どけっ、どけっての!なんなの、あんたぁ」 身を起こそうにも、体は言うことを聞かない。自分はどれくらい犯され続けていたのかと、ぞっとする。体は完全に腑抜けきっていたから。 そんな調子なわけだから、腕を張って女を押し退けることもできない。ただただ犯されていく。自尊心をずたずたに傷つけられ、涙さえ滲んできていた。 「あたし?」 女が、いきなり声をあげた。聞いたことがあるような、ないような。そんな声だった。 「あたしは」 女は急ににやっと笑うと、アイマスクを取った。光の下、女の素顔がさらされる。見たくもない真実が。 「あたしは、あんた」 女は、エリだった。エリと同じ顔をしていた。よく見れば、体も同じだった。鏡を見るように、見慣れた体つきをしている。 「あんたは、あたし」 女は再びアイマスクをつけた。なんの意味があるのかはわからないが。自分と同じ顔が隠されたことで、少し安堵したことは事実だ。しかし、そんなものは、なんの意味もなかった。 「あぐっ」 エリと同じ姿の女は、エリが気がついたからか、腰の動きをいっそう激しくすると、身を乗り出すように上体を前に傾けた。エリの顔のすぐ前に、女の顔がきた。 そんなの、見たくもない。と、エリは顔を腕で隠そうとしたが、女はエリの顔を手で押さえると……キスをされた。 (こ、こいつ、調子に乗ってっ!舌噛んでーー) しかし、女はさっとエリの唇から顔を話した。言ってくる。 「言っておくけど、あたしを傷つければ、あんたも痛い思いするんだからね」 「は?やり返そう……っての?」 女の言うことの意味を、エリはやったらやり返すということだと思った。当然の反応だった。だが。 「こういうこと」 女は、またにやっと笑うと、自分の胸を揉みだした。そう、女自身の胸を。それなのに。 「え、な、なんでっ」 その感覚が、エリにも伝わっていた。さわられていないはずのエリの胸が、揉まれる感覚がする。ちょうど、目の前で女が揉んでいるように。 「言ったでしょ。あたしはあんた。あんたはあたし。同じ感覚を、あたしたちは共有してんの」 そんなバカなことが。同じ顔をしているだけでもおかしいのに、感覚まで共有しているだなんて。 これは悪夢としか言いようがない。だが、現実的な感覚が、エリを忘我の淵に立たせることすらさせてくれなかった。 「そんなあたしらしか味わえない最高の快感ってやつをさ。今からあんたに教えてあげるよ」 「そっ、んっ、なのっ!」 頼んでいない!だが、どうしようもなかった。どうにかしようにも、エリには女をどかす力がない。 そもそもなんでこんなことになったのか。今日は、ミカと買い物に行って、家に帰ってきて、どこにも、“何も問題なんてなかったのに!” 「ほら、ここ!ここでしょ!?ここが一番くんでしょ!?」 「ううぅぅ」 せめて、イった瞬間、こいつの顔だけは見るもんかと顔を腕で隠し、目を閉じるが、それは逆に快感を鋭くさせるだけだった。 なんでこんなことになるのか。エリには、ただ頭をいやいやと振って 、女の言葉に対して見せかけだけの否定をするくらいしかできない。 「黙ってても無駄!あたしは、誰よりもあんたのことがわかんだから!あんたが、今までで一番今感じてんのもさ!キョウスケよりも!」 否定したいのに、言われていることは、確かに全て事実なのが、余計くやしかった。 「ほら!鏡見て見なよ!どっちがあんたか分かる!?」 女が指差した方向に、確かに鏡があった。本来そこにはないはずの、エリの私物の鏡が、ベッドに向けられ、ちょうど二人の姿見えるようになっていた。 どっちが自分だっけ。確かに、分からなかった。自分はこうしてベッドで寝転ばされて、犯されているはずなのに。なぜか自分自身を犯している感覚も、確かにあるのだ。 「あぁ、イく!イっちゃう!イけ!」 最後の瞬間叫んだのが、エリにはもはや、自分だったのか女だったのか、分からなかった。 ◆◇◆◇◆ 「ふぅ、いやあ、良かったねえ」 再びファスナーをあげてしまったため、部屋にはもう答えてくれるものはいなかったが、構わずヒカルは続けた。 「自分自身とセックスという、最高の自慰。これだけでもかなり満足だよ」 本当に満足そうにヒカルはそう呟いたが、まだやりたいことは残っていた。そのためにわざわざTSえもんに借りてきた道具もあるのだ。 ヒカルは持ってきた鞄を漁って、まち針の刺さった針山を取り出した。 「ま、これを使ってあれは試したいしね」 片手の中で針山をもてあそびながら、ヒカルは今度は、エリの携帯を取り出した。何をするかと言えば、当然電話するためだ。 「あ、キョウスケ?今日さー、うちこない?そう、夜、うんうん」 つづく |