リサイクル彼女 ゆな
   作・JuJu


 ◆ 11 ◆

 おれはりこのぬいぐるみを着たまま、三階の衣装部屋に向かった。
 衣装部屋に入ると、さっそくあえかの水着を取り出す。両肩から胸の谷間を通ってお腹にかけて大胆なVの形をした縦の切り込みのあるワンピースとか、小さな布で細い紐で繋いで局所だけがかろうじて隠れているマイクロビキニなど、男心を刺激するようなさまざまな水着がそろえてあった。
「これが全部、おれの物なのか……」
 悩んだすえ、黒のマイクロビキニを手に取って二階のあえかの部屋に戻った。
 りこのぬいぐるみを脱いで元の姿に戻ると、替わりにあえかのぬいぐるみを着ることにした。
 あえかのぬいぐるみを着るのも初めてだった。このぬいぐるみは非常に丈夫で破けることはないと理解はしていても、やはり着るときは気を使ってしまう。ただあえかの場合は背が高いので、ほかのぬいぐるみよりは安心して着ることが出来た。ただし彼女の長い髪を掻き分けて着なければならず、その点は苦労した。長い髪を掻き分け、背中の切れ目から腕を入れる。
 最後に頭を被ると、すでになれた全身にぬいぐるみが張り付いてくるような感覚があった。ただ、あえかの場合、いつもと違う感覚があった。
「む、胸が重い……」
 胸の重みにおれは驚いた。ゆなのぬいぐるみを着た時にも胸の重みを感じたが、あえかの胸の重さは比べ物にならなかった。マニキュアの塗られた細い指で胸を下からすくい上げると、手のひらからこぼれるほど大きかった。
 化粧台まで歩き、鏡にあえかの裸を映しだした。甘えるような半開きのタレ目に、艶やかでふくよかな唇。男を誘うような顔には、ブルーのアイシャドウと真っ赤な口紅が似合っている。なによりも目立つのが日本人離れした巨乳だった。ゆなの胸も大きかったが、あえかの胸はまさに巨乳だった。そのくせ腰が驚くほど細い。脚もゆなの引き締まったスポーツウーマンっぽい足と違い、まさに女の色気を醸し出すようなふくよかな脚線だった。
 おれには、大人の成熟した裸体はまぶしすぎた。恥ずかしくてとても見ていられない。慌てて化粧台から離れると、衣装部屋から持ってきたビキニを着た。
(これで大丈夫だろう)
 そう思って、ふたたび化粧台に向かった。
 着ているのはマイクロビキニと呼ばれる、小さな布で大切な場所だけをかろうじて隠しているような水着だ。局所は隠されたものの、そのためにますます想像力をかき立てられる。水着がほんのすこしでもずれれば、大事な場所があらわになってしまう危うさが、おれの男の心を揺さぶる。しかも、水着姿なのに、しっかりと化粧をしているところがまた色っぽかった。
 色気は全身から発せられていたが、その中でもひときわ目立つ胸におれの視線は釘づけられていた。
 水着の上から胸を揉んでみる。それだけで激しい快感が全身を襲った。ゆなの時とはあきらかに感度が違う。布の上から軽く揉んだだけなのに、これほどの快感が走るのだ。もともと男のおれは、その快感だけで理性が飛んでしまった。思わず両手をビキニのブラジャーの中にすべりこませ胸を鷲づかみにした。ゆなの時は乱暴にいじれば痛かったが、あえかの胸は、乱暴にされてもすべてを快感に転換していく。しばらく胸を揉んでいると、股間がうずいてきた。おれはたまらず、マイクロビキニのパンツに両手を滑り込ませる。左手の指であそこを開き、右手の中指をあそこの中にいれる。あえかのあそこは、すでにぐっしょりと濡れていた。入り口をこすったりいじったりするのももどかしく、一気に中指を奥まで突っ込む。
 ゆなの体でオナニーをしたとき女の快感のすごさに驚いたものだが、あの時のゆなの快感でさえ、この快感からくらべればママゴトのようなものだった。それほどあえかの体は、その快感の強さも深さも段違いだった。
 性欲を抑えきれず、あそこに入れる指を二本に増やす。指を二本にしたのに、あえかの体はもの足りないとおれに訴えていた。おれはあそこを広げていた左手の指を離し、その指をあそこに挿入した。合計三本の指が、おれのあそこに入っている。膣のなかで、三本の指をうごめかせる。これでようやく満足したようだった。なんて体だ。女の細い指とはいえ、三本もの指をこうも簡単に飲み込むなんて。
 そのとき、アナルにうずきを感じた。もしかしたら、あえかの体はアナルも開発済みなのかもしれない。おれはアナルには触る気はないし、あそこの快感だけすでに限界だ。だがいつか、この快感に慣れたとき、さらなる快感を求めてアナルの方も使ってしまうかもしれない。そしてそれは、それほど遠い未来のことではないような気がした。
 あえかの体でオナニーを初めてから長い時間が経ったように思うが、なかなか絶頂まで届かなかった。どれほど激しく指を動かしても、体はさらなる快感をもとめつづけるだけだった。絶頂を迎えることもできず、かといっていまさらオナニーをやめることもできず、おれはただ、体の求めるままに指を動かす。このままでは生殺しだった。底知れない体に恐ろしくなってくる。
 おそらく指ではものたりないのだろう。もっと太くて長い物を、おもいっきり奥までつっこんでほしい。そうあえかの体が訴えているのが理解できた。
「そうだ!」
 おれはおぼつかない足取りでタンスに近づいた。さきほどタンスの奥で見つけた例の箱を取り出す。期待に震える手で箱を開ける。吟味(ぎんみ)している余裕はない。箱に手を突っ込み適当な道具を取った。取り出すと、それはバイブと呼ばれる男のものの型をしたものだった。おれの一物よりもはるかに大きなものだったが、躊躇(ちゅうちょ)している余裕はなかった。
 ビキニパンツをずらす。マイクロビキニなので、わずかにずらしただけて、あえかのあそこがあらわれた。
 バイブを股間にぶち込む。そして、バイブから伸びたリモコンの出力を最大にしてスイッチを入れる。
「ああああ…………!!」
 体が海老(えび)ぞりになる。あえかの体がよろこんでいるのがわかる。
 快感が頭の中でいっぱいになり、バイブからの快感をむさぼること以外、何も考えられなかった。
 そしてようやく、待ち望んでいた絶頂が、全身を走り抜けた。

   *

 どうにか、絶頂を迎えられた。そう、これでやっと一度目なのだ。体はさらなる快感を求めていた。体力の続くかぎり、何回でもオナニーを続けていたいと欲している。このまま体力の続く限りオナニーをつづけたら、いったいどれほどの快感が味わえるのだろう。

 あのハムスター宇宙人は、三姉妹のぬいぐるみを地球人の生態を探るために作ったといっていたが、おそらくあえかは、女の武器を使って男をたぶらかすことに特化したぬいぐるみなのかもしれない。

 三姉妹の体を操ってオナニーをさせて絶頂を迎えさせたことで、おれは三姉妹全員を犯して征服した気持ちになれた。
 三姉妹の体はおれの物なんだ。
 彼女たちを、自分の物にしたという気分があふれていた。
 いまだあえかの快感さめやらぬ心の中で、おれは思う。
 おれは三姉妹の体を自由に扱って良いんだ。
 三姉妹はぬいぐるみで、三姉妹は自分なんだと、本当に、心の底からそう思えた。

   *

 翌日の午後。
 おれはゆなのぬいぐるみを着て喫茶店キャンディーブルー・スカイブルーで働いていた。三姉妹はどれも魅力的だけど、やっぱりおれは、今着ているこのゆなの体が一番好きだ。
 客を待ちつつ、(せっかくスタイルがいいんだから、足を出さないのはもったいなよな。スカートの丈はもっと短くしようかな)などと思っていた。
 そんなことを考えていると、ドアベルが鳴って今日も尊志が一番乗りで店に入ってきた。
 昨日プールで胸を見せてしまうという失態があったので、尊志と顔を合わせるのはちょっとだけ気まずい。尊志の方も同じ気持ちなのか、いつもはキッチンそばのカウンターにすわるのだが、今日はキッチンから一番離れている、外が見える窓の脇にあるテーブル席を陣取った。
 おれはトレーを手に取ると、尊志のもとにオーダーを取りに行く。尊志は顔を赤くしながら注文をする。おれもつられて顔が赤くなる。
(くそっ。この空気は堪えられん)
 おれは、いそいで更衣室に入って、ゆなのぬいぐるみを脱いだ。
 元のおれの姿になって、店に戻る。
「お、慧一。こんどからは店には顔をださないんじゃなかったのか?」
「メインの仕事が奥の仕事になったってだけで、まったく店に出ないわけじゃない」
 そう言いながら、おれはキッチンで尊志の注文である紅茶を淹れた。
「お待たせいたしました。ご注文のアップル・アイスティーと、本日のケーキのレアチーズケーキです」
 おれは尊志のテーブルに、紅茶とケーキを置く。
「だから、なんでゆなさんではなく貴様が紅茶を運んでくるのだ。しかもこれは、お前が淹れたお茶なのだろう。お前の淹れたお茶など飲めたものではないと何度言わせれば気がすむんだ」
「まあ、そういわずに飲んでみろよ」
 おれがそういうと、尊志はしぶしぶカップに口を付けた。
「……なるほど、すこしは腕を上げたようだな」
 おれだって、ゆなのぬいぐるみが勝手に紅茶を淹れてくれるからといって、ぼんやりと体の動くままにしているわけではない。彼女の淹れ方を覚えようとしていたのだ。
「なにしろ、ゆなさん直伝だからな」
「まだまだ、ゆなさんにはかなわないがな」
 そのあと、おれはその場にとどまり紅茶をすする尊志をながめていた。
「なに、おれのことを見ているんだよ。気持ち悪い奴だな。さっさと仕事に戻れ」
「いや。今日の尊志はやけに楽しそうだからさ。昨日は本当に楽しんできたんだなと思って。プールに誘ってよかったよ」
「なんだそのことか。たしかに昨日ほど心底楽しいと思った日はなかった。慧一とこの幸せを分かち合えなかったのが残念だがな。すまんな、同じ男としてこの幸せを分かち合いたかったんだが」
「気にするな。おれが勝手に抜けたんだ」
「そう言ってもらえるなら、おれも安堵できる」
「……そんなにゆなさんの水着姿はよかったのか」
「よかったなんてもんじゃない! おれはあのとき、今まで生きていてよかったと、本気で思った」
 それから、尊志のゆなの水着姿を褒め称える話が続いた。
「やっぱり、お前にも見せてやりたかったな」
 それを聞いて、おれは内心で苦笑する。
(水着姿どころか、おれはゆなの裸だって見ているんだ。オナニーまでしたんだ。なにしろ、ゆなはおれなんだからな)
 尊志が心から楽しんでくれたことにおれは満足して、店のキッチンに戻るために尊志に背中を向けた。
 そのとき、尊志がつぶやく。
「なあ、すべては慧一がくわだてた策略だったんじゃないのか。
「ん?」
 おれは振りかえって尊志を見る。
「昨日のことだよ。最初から、おれとゆなさんを二人きりでデートさせるつもりだったんじゃないのか。もしも、おれが慧一に先にゆなさんに告白する権利を譲ったことを気にしているならば、そんなことまったく気にしなくてもいいんだぞ」
「そんなわけがあるか」
「そうか。ならば前言撤回だ。だが慧一、告白したくらいで優位に立ったとおもうなよ。おれだってゆなさんとプールでデートしたのだ。そして思わぬハプニングで、ゆなさんの……」
 ここまでいうと、昨日のことを思い出したのだろう、尊志の顔がスケベな表情にゆがんでいく。きっと水着のブラジャーが外れた時に見た胸とかを回想しているにちがいない。
 スケベ顔になっていることに気がついた尊志は、わざとらしい咳払いをひとつすると、ふたたび語りだした。
「と、とにかく、これでおれとおまえは、ゆなさんをめぐる恋敵として、ふたたび同位置に立ったわけだ。
 どちらが先にゆなさんのハートを射抜くか、たのしみだな」
「ああ。そうだな」
 そう応えながら、おれは心の中で苦笑した。
(尊志の奴、ゆなの正体がおれだともしらずに)

   *

 おれはキッチンで皿洗いをしながら、窓際で紅茶をすすっている尊志をぬすみ見た。
 尊志の奴、またにやけてやがる。昨日のプールは本当に楽しかったんだな。それでこそ、おれもゆなになって水着姿を披露したかいがあったというものだ。そうだよな。あんなに可愛くてスタイルのいい、しかも憧れの女の子とデートができればうれしいよな。おれも同じ男だからよく分かる。
 とはいうものの、正直これほど喜んでくれるとは思わなかった。こんなによろこんでもらえるならば、これからもときどきならデートしてやってもいいかな。その時は、またちょっとだけエッチなサービスもしてやろう。

   *

 おれも昨日のプールで、女として男をたぶらかす面白さを知ってしまった。もっともっと、男をたぶらかせて遊びたいと思った。とはいうものの、見も知らずの男を相手にする気にはなれない。ナンパ男など素性がしれないし、そんな軽い男は相手にしたくない。その点尊志ならば気ごころが知れているし、なによりからかいがいがある。
「そうだ!」
 おれはひらめいた。
 ゆなだけじゃなくて、あえかやりこの姿でサービスしてやるのもいいかもしれない。その時、尊志がどんな表情をするのか。いまから楽しみだ。

 おれの、三姉妹としての人生は、始まったばかりだった。

(おわり)








◆眠りを覚ます【あとがき】で眠るがいい!◆

※あとがきには、本編の〈ネタバレ〉が含まれています※
※なるべく、本編を読んだ後にお読みください※


 にゃんぱすー! ジュジュでございます。


 TS解体新書さん、この度は800万ヒットおめでとうございます。


 さてさて。この作品のネタは、十年以上前に書いたネタ帳のアイデアからでした。


 ネタ帳には、「バケルくんのようなTSコメディ」みたいなことが書かれています。
 他にも、「喫茶店名はキャンディー・ブルー」「美人三姉妹が運営する喫茶店」「三姉妹の正体は、人間型のぬいぐるみを着て地球の調査していたハムスターっぽい宇宙人」「その宇宙人が宇宙にもどるので、主人公はいらなくなったぬいぐるみをもらう」「主人公はそのぬいぐるみを着て、水着姿になり親友をたぶらかす」などがつらつらと書かれていています。
 物語の前半部分は、ほとんど当時のアイデアそのままですね。


 当時、作家の心得として「アイデアが浮かんだら必ずメモしておけ」ということを作家のジェイムズ・ガン氏が言われておられて、「へー。なるほどー」とか思ってメモに書いていたのですが、ほんとうに十年後に役に立つとは思いもよりませんでした。(ふつう、おもわないですよね?)


 ということで、将来SSを書いてみたいという思われている方。おもしろそうなアイデアが浮かんだら、めんどくさがらずにメモしておくと、いいことがあるかもしれません。


 ちなみに「キャンディー・ブルー」というのは、音楽ビデオゲーム(音ゲー)「ポップン・ミュージック」のなかにある曲のタイトルです。なつかしいなあ「ポップン・ミュージック」。アイデアを出した当時が忍ばれますね。


 最後になりましたが、作品の発表の場を作っていただいた、Toshi9氏ならびによしおか氏に感謝いたします。


 さて、次はどんなのを書きましょうかねぇ。
 それでは、よろしければ次回作でお会いしましょう。


 それではチャオ!
 JuJu拝




 クランクアップ
 二〇一四年十月十六日



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