あれからどれくらいの時間がたったのだろう。俺が感染したのはごく最近のような気がするが、俺の目の前に居る正志が感染したのは、俺よりあとでこいつはすでに5ヶ月が立っているから、俺はそれよりも前になる。
今ではこの状態にすっかり慣れたが、いまだ、男の意識で女の体というものには戸惑うことがあった。
今では、美少年になった正志だが少し前までは、女装した変態と言った感じだった。奴を見ていると俺も同じ過程を通ったのかなと思って考え込んでしまう。
「どうしたんですか。光(みつる)先輩」
俺は正志の声に現実へと引き戻された。
「正美…いや、正志か。どうだ、今の自分は・・・」
「どうって、やっぱ変です。だから受けようと思っています。」
「そうか・・・」
俺は、奴の顔を見つめてうなずいた。
男性ホルモンの投与、そして、男性器形成手術。つまり男性への性転換。
意識は男で体は女という今の俺達の現状は、感染した当時は新鮮なものだったが、時間がたつにしたがって苦痛そのものになってしまった。
いくら女の体が自分のもので、好きなときにできるといってもオナニーの息を脱せず、性の快楽を味わうには限界があった。同病者との交わりを進める人もいたが、同性同士ではやはり、同じように限界があった。
男とはどうだということになりそうだが、それは、このウィルスに冒された頭が許さなかった。男でも女でもない俺達が行きつくところは、この頭に会った体になることだと、彼女の結論は達したのだ。
感染する前の愛らしい彼女を知る俺は、彼女が男性になるのを止めたかったが、彼女の意思は固かった。
彼女は2ヶ月後に男性に生まれ変わるのだ。
「先輩はしないのですか。あのうっとうしい生理なんかともおさらばできるのですよ。」
奴の目は血走っていた。このウィルスに冒されてから、彼女の女性ホルモンは異常に増え、それの抑制と、男性化の為に、かなりの男性ホルモンを投与されているから、情緒不安定なところが出てきてはいた。彼女は、このウィルスの進行が進めば進むほど、体への女性ホルモンの分泌が増えていったのだ。そのことがより一層、彼女の男性への性転換の願望を強くしていったのだった。
「いや、俺はこのままでいいよ。」
「そうですか、それならなぜ、名前を男のようにしたのですか。」
「それは・・・」
そう、このウィルスに冒されたものの中には、女の時の名前を嫌い男名前にするものも少なくなかった。俺も元の名前(光江)がいやになり、初めの一字だけをのこして光(みつる)にしていた。
「やはり先輩も女でいることがいやなんですよ。僕と一緒に男になりましょう。」
正志が俺に詰め寄ってきたとき、俺の後ろから声がした。
「あら、正美ちゃんに光江さんじゃないの。どうしたの女同士で・・・
まあまあ、正美ちゃん。結構美少年になったじゃないの。男装の麗人のあなたってステキよ。それに、光江さんもキレイだわ。宝塚のトップスターを見ているみたい。」
振り返るとそこには・・・

 

inserted by FC2 system