愛しい恭二さん。
あなたがこの手紙を読んでいるということは、わたしは、あなたのそばから去っているということでしょう。
わたしが、まだ、“わたし”でいられる間に、この手紙を書いています。恭二さん、愛しています。この思いも、
もうすぐすると、変ってしまうのかもしれない。怖い、わたしは、それが怖い。
あなたのことを、わたしが愛したあなたのことを、今度あったときにどういう風に思うのだろう。あなたを愛し
たことを、わたしは、嫌悪するかもしれない。それが、わたしは怖い。
あなたのあの優しい目、力強い腕、厚く温かな胸、キリッとひきしまったりりしい口元。決しって優しい声を
かけてくれないけど、あなたの瞳からは、あなたの優しさが、あふれていた。
あの忌まわしいウィルスが、わたしを変えていく。
サヨウナラ、恭二さん。わたしを探さないで・・・・

                                あなたを愛したサヨリより


「これで、あいつから、もう少し搾り取れるだろう。まったく、女のフリをするのは楽じゃないぜ。」
「そういうな、あの牧場主からは、絞れるだけ絞らないとな。これで、あいつは、おまえを探し回って、必ずこの病院に来る。」
「そして、治療費としてたんまりと・・・か。ワルだなあ。先生よ。」
「そういうおまえもな。これで、何人目だ。」
「6人目かな。けっこういい稼ぎになっているけどな。」
 高そうな個室のベッドに横になったサヨリのそばには、若い女医が、立っていた。
「でも、先生よ。本当に、元には戻れないのか。」
「ああ、原因となるらしいウィルスへの抗体が、発見されてないからな。俺たちが、生きているうちは無理だろう。もとにもどりたいのか?」
「冗談だろう。こんないい女を、ほかの奴に触らせてなるかよ。こいつは、俺のものさ。それに、もうしばらくしたら、おんなのフリをしなくちゃいけないんだからな。しっかり、楽しまないとなぁぁぁぁんんん〜〜〜ぁああああ〜〜〜」
 そういうと、サヨリは、その形のいい胸をわしづかみにして、揉みだした。
「俺もダメか?」
 サヨリの横に立つ、若く美しい女医が心配そうにつぶやいた。
「先生は特別だ。俺の大事な主治医だからな。それに、先生は、飛び切りの・・・」
「美人で、大事な仕事の相棒か。」
「いや、淫乱だ。わははははは・・・・」
「ぎゃはははははは・・・・」
 ウィルスによって、以前は、しとやかで、優しい娘だったが、完全に精神が、変調してしまい、平気で結婚サギを行うサヨリと、以前は、真面目な医師だったが、研究中の事故により、通常のウィルス以上に強力になったウィルスに感染し、自らも精神が変調してしまい、サヨリのサギの片棒を担ぐ女医は、お互いに顔を見合わせて、大声で笑いあった。
 笑いながら、恭二への手紙を、封筒に入れているサヨリの瞳になにか光るものがあった。が、それは、なんなのか。サヨリ自身もわからなかった

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