トモダチコレクション 作:シクノレ |
ニンテンドーDSというゲーム機のゲームソフトで、「トモダチコレクション」というのがある。 ゲーム内に自分や友人、家族にそっくりなアバターを作成し、マンションに住まわせてその暮らしぶりを眺めるといった他のゲームとは違った趣向のゲームである。 これが中々にシュールな内容で、本人とアバターのギャップによく笑わされる。 彼、三島九朗もまた、「トモダチコレクション」にハマった人間の一人である。 ある日の高校の休憩時間、九朗は家から持ってきたDSで「トモダチコレクション」を楽しんでいた。 アバターが喋るので、音が漏れないようイヤホンをしていた。 「おーい」 故に誰かから話しかけられても簡単には気づかない。 それ程までに集中しているのだ。 「おいったら」 ドンと肩を押され、九朗はやっと自分に話しかけてきた少年の存在に気がついた。 「何だ、冨士田か」 「何だはねえだろ……」 小学校からずっと一緒の悪友、冨士田十治である。 十治は軽く溜息を吐くと、九朗のDSを覗きこんだ。 「トモダチコレクションか」 「知ってるのか?」 「知ってるというか、持ってるぜ」 十治はニヤリと笑うと、DSを取り出し、電源を入れた。 起動されたゲームはやはり「トモダチコレクション」であった。 「おお、お前も持ってたのか!」 「ああ、通信しないか?」 「勿論!」 今まで一人でやっていたため、九朗は仲間が出来たことが心底嬉しかった。 早速通信画面に切り替え、メンバーを募集した。 すぐに十治と通信が始まった。 「Miiの交換で良いんだよな?」 「ああ」 ちなみにMiiというのは「トモダチコレクション」の中で使われているアバターの総称である。 これを通信で交換することによって、互いのMiiが互いのマンションで生活するようになるのだ。 「まずは、俺を送ってやろう」 十治がそう言うと、九朗の元に十治そっくりのMiiが送られてきた。 「そっくりだな」 「だろ?九朗のも送れよ」 「わかったよ」 九朗は最初に作った自分そっくりのMiiを十治へ送った。 「すげえ! お前のもそっくりだな!」 「我ながら良く出来たと思ってたんだよ」 九朗は調子に乗って得意気に笑った。 それから何人か交換している内に、休憩時間が終了した。 九朗はDSをバッグの中へ納めると、授業道具を用意した。 担当の教員が到着し、授業が始まる。 しばらく大人しく授業を受けている時、ふと十治の方を見る。 「アイツ……DSしてるな……」 十治は両手を机の中に隠すようにしている。 恐らく中でDSをつついているのだろう。 「見つかったらヤバいぞ……」 九朗は呟くと、軽く溜息を吐いた。 「ゲ、九朗の奴服が欲しいとかほざいてやがる」 十治はボソリと呟いた。 ゲーム内の九朗が十治に服をねだっているらしい。 しかし、先程大量に食べ物やインテリアを購入したため、残金は一万程度だ。 「まあ、買ってやるか……」 仕方なく、十治は服屋のボタンを押す。 何を買おうか考えている時、ふと十治の中に一つの疑問がよぎる。 ―――――女物の服を男に渡すとどうなるんだろう? 気になり始めるともう止まらない。 十治は既に試してみたくて堪らなくなっていた。 「買って……見るか」 十治はセーラー服を購入すると、早速九朗へ渡してみた。 「うわ、着替えたよコイツ」 授業中なので、教員にバレぬよう、必死に笑いをこらえる。 まるで九朗が女装しているかのようだ。 「十治の奴、何笑ってんだ……?」 必死にこらえながらクスクスと笑う十治を見て、九朗は首を傾げる。 何かシュールなイベントでもあったのだろうか。 「……!?」 不意に、異変を感じた。 足元が異様にスースーする。 ズボンでは有り得ない感触だ。 「どうなって……」 呟いて、足元を確認し―――絶句した。 セーラー服だ。 自分は今、セーラー服を着ている。 スカートから伸びる逞しい足に生えたすね毛がなんとも気色悪い。 「何でこんな……!!」 十治はやっとのことで落ち着くと、九朗のMiiの編集画面へと入った。 「いっそのこと女にしてやろうかな」 十治はクスリと笑うと、髪型をまず変えた。 「な、なんだコレ……!!」 凄まじい勢いで髪の毛が伸びている。 元々ゴワゴワした髪質だったハズなのに、今の九朗の髪はまるで女性のように美しく、しなやかだった。 九朗の髪は肩の所でピタリと伸びるのをやめた。 毛先が頬に触れてくすぐったい。 しかし、異変は止まらなかった。 「―――ッ」 突如、視線が下がった。 慌てて手を見ると、小さくなっており、指も自分では有り得ない程にキレイになっていた。 ちなみに、本人は気づいていないのだが、彼の顔は既に女性の物となっている。 この有り得ない事態にも関わらず、九朗の股間の相棒は凄まじい勢いでスカートを押し上げている。 妙な興奮状態になっているのだろう。 気が付けば、クラス中の視線を集めていた。 「三島……お前……」 隣の席の友人が九朗をまじまじと見つめる。 「お、俺にも訳わかんなくて……!?」 ハッとなって口元を押さえる。 声が高い。 「一体、何がどうなって……」 そして、最後の変化が彼に起こった。 スカートを不自然に押し上げていた相棒は突如として姿を消し、代わりにC程度の大きさの乳房が、セーラー服の胸元を押し上げていた。 「な、ない……でも上は、ある……」 股間と胸を同時手で押さえ、九朗は驚愕に表情を歪める。 そこにいるのは既に三島九朗ではなく、セーラー服姿の女子高生だった。 完 |